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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20230925BHJP
   F24C 7/04 20210101ALI20230925BHJP
   F24C 15/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F24C1/00 330A
F24C7/04 A
F24C15/02 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019189308
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021063621
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 和広
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-093091(JP,A)
【文献】特開2008-025896(JP,A)
【文献】特開2013-076473(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029873(WO,A1)
【文献】特開2014-001901(JP,A)
【文献】特開2006-023008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
F24C 7/04
F24C 15/02
H05B 6/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱室を有する調理器本体部と、
前記調理器本体部の前面側に設けられる前扉であって、前記加熱室の開口部を当該前扉の下端部側を中心として開閉可能に塞ぐ前扉と、
前記調理器本体部の下方に設けられた水受部材と、を備え、
前記前扉の筐体は、後面が開放された前後方向に薄い箱形状を有し、前記調理器本体部と対向する内側の下部に当該筐体と一体に成形された第1水ガイド部を備え、
前記第1水ガイド部は、前記前扉の筐体における、下壁と前壁下部とで構成され、前記前扉の開状態にて前記前扉の内面を伝って流れ落ちる結露水を受け取って貯留する樋形状と、前記下壁の上面に形成された前記前扉の閉状態にて貯留した結露水を前記水受部材内へ導く傾斜とを有し、かつ、前記開口部の開口幅に対応する長さを有し
前記筐体の後面に、前記前扉の内面をなすドアパネルを備え、
前記第1水ガイド部の先端は、前記ドアパネルよりも前記調理器本体部の後方側に位置していることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記前扉の筐体は、前記第1水ガイド部の側方に当該筐体と一体に成形された第2水ガイド部を備え、
前記第2水ガイド部は、前記前扉の閉状態にて前記開口部の側方角部を伝って流れ落ちる結露水と接触して前記水受部材内へ導くことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記前扉の筐体は、前記第2水ガイド部の前方に、当該筐体と一体に成形された第3水ガイド部を備え、
前記第3水ガイド部は、前記前扉の開動作によって前記第2水ガイド部の下面側を伝って前方へ流れる結露水の移動を規制して前記水受部材内へ落下させることを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記前扉の筐体は、前記第1水ガイド部の下面に当該筐体と一体に成形された第4水ガイド部を備え、
前記第4水ガイド部は、前記第1水ガイド部の下面側への結露水の回り込みを規制して前記水受部材内へ落下させることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器では、加熱調理した食品から発生した水蒸気が加熱室内において結露して水滴となる。加熱室内での結露の量は、水蒸気を使用して加熱調理を行う加熱調理器おいて特に顕著となる。結露により生じた水(以下、結露水)は、調理終了後等に、調理器本体部の前面に位置する前板部や前扉の内面を伝って加熱調理器の下方へ落下する。そのため、加熱調理器では、前扉および前板部の下方に水受部材を配置し、落下する結露水を水受部材によって受けるようにしている。
【0003】
特許文献1には、このような水受部材を小型化すると共に、加熱調理器を正面から見た場合にユーザから視認され難くした加熱調理器が提案されている。この加熱調理器では、前扉の内面の下部に、前扉の内面から調理器本体部の後方側へ斜め下方または水平に突出した状態の水滴規制部が設けられている。水滴規制部は、前扉の内面を伝って流れ落ちる結露水が前扉の下面側へと回り込むことを規制し、結露水を水受部材内へ落下させる機能を有する。このような水滴規制部を設けることで、水受部材の前端部の位置を調理器本体部の後方へ後退させることができ、水受部材を小型化し、かつ視認され難くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/029873号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、前扉の筐体は、射出成型用金型に樹脂材料等を流し込むことで作製される樹脂成形品より構成されるが、上記特許文献1に開示されているような形状の水滴規制部は、前扉の筐体と一体に成形することはできない。そのため、水滴規制部を別部品として作製して前扉の筐体に取り付ける必要があり、製品コスト高となる。
【0006】
また、特許文献1の構成では、加熱調理器を正面から見た場合にユーザから視認され難いため、水受け部材にはアルミ等の安価な材料を用いることができる。しかしながら、アルミ等の安価な材料を用いて作製した場合、水と接触する時間が長いとサビ等が発生し、水受部材の外観が低下する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、製品コストを削減でき、かつ水受部材の外観の低下も抑制できる加熱調理器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、内部に加熱室を有する調理器本体部と、前記調理器本体部の前面側に設けられる前扉であって、前記加熱室の開口部を当該前扉の下端部側を中心として開閉可能に塞ぐ前扉と、前記調理器本体部の下方に設けられた水受部材と、を備え、前記前扉の筐体は、後面が開放された前後方向に薄い箱形状を有し、前記調理器本体部と対向する内側の下部に当該筐体と一体に成形された第1水ガイド部を備え、前記第1水ガイド部は、前記前扉の筐体における、下壁と前壁下部とで構成され、前記前扉の開状態にて前記前扉の内面を伝って流れ落ちる結露水を受け取って貯留する樋形状と、前記下壁の上面に形成された前記前扉の閉状態にて貯留した結露水を前記水受部材内へ導く傾斜とを有し、かつ、前記開口部の開口幅に対応する長さを有し前記筐体の後面に、前記前扉の内面をなすドアパネルを備え、前記第1水ガイド部の先端は、前記ドアパネルよりも前記調理器本体部の後方側に位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、製品コストを削減でき、かつ水受部材の外観の低下も抑制可能な加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の加熱調理器の正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】実施形態1の加熱調理器の前扉の筐体の、調理器本体部側を向く内側の形状を示す斜視図である。
図4図2の○で囲った部分の要部拡大図である。
図5】実施形態2の加熱調理器の前扉における、図1のB-B線で切断した断面図であり、要部拡大図を含む。
図6】実施形態2の加熱調理器の、図1のC-C線で切断した要部の縦断面の斜視図である。
図7】実施形態2の加熱調理器の要部の縦断面図であり、前扉が開いている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。本実施形態にて示す加熱調理器は、本発明の一態様の加熱調理器としてのオーブントースタである。
【0012】
図1は、本実施形態の加熱調理器1の正面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、本実施形態の加熱調理器1の前扉12の筐体30の、調理器本体部11側を向く内側の形状を示す斜視図である。図4は、図2の○で囲った部分の要部拡大図である。
【0013】
(加熱調理器1の構成の概要)
図1に示すように、本実施形態の加熱調理器1は、調理器本体部11の前面に、前扉12が開閉自在に設けられている。前扉12は下端部付近(下端部側)を中心として、調理器本体部11の加熱室13に対する閉状態と開状態とに回転自在となっている。調理器本体部11の前面における右側(向かって右側)には、ダイヤル6等を備える操作部3が設けられている。調理器本体部11の下には、トレイ形状の排出物受部材(水受部材)4が設けられている。排出物受部材4が受ける排出物として、結露水およびパンくず等がある。
【0014】
(調理器本体部11の構成)
図2に示すように、調理器本体部11は、前面が開放された箱形状の筐体14を有し、筐体14の内部に加熱室13を有している。加熱室13は、上壁17、下壁18、後壁19および左右の側壁20に囲まれている。加熱室13内の上部には、左右方向へ延びる2本の上部ヒータ15が加熱室13の前後の位置に平行に設けられている。同様に加熱室13内の下部には、左右方向へ延びる2本の下部ヒータ16が加熱室13の前後の位置に平行に設けられている。
【0015】
加熱室13の上壁17における、上部ヒータ15が配置されているヒータ配置部17aは、上方へ山形に凹んだ形状を有し、加熱室13の下壁18における、下部ヒータ16が配置されているヒータ配置部18aは、下方へ谷形に凹んだ形状を有している。下壁18の2つのヒータ配置部18aの底部は開口されて下壁開口部18bとなっている。
【0016】
加熱室13の後壁19と筐体14との間には、過熱水蒸気発生装置(過熱水蒸気発生部)21が設けられている。過熱水蒸気発生装置21は、過熱水蒸気を発生し、発生した過熱水蒸気を水蒸気吹出口22から加熱室13内へ吹き出すようになっている。このために、後壁19には、水蒸気吹出口22の位置に対応した位置に開口部が形成されている。
【0017】
加熱室13の内部における上部ヒータ15と下部ヒータ16との間には、調理する食品が配置される食品配置部23が設けられている。食品配置部23は、例えばパンを焼く場合には焼き網を使用する。食品配置部23は、食品配置部駆動部24に駆動されて、加熱室13内に収納された状態と加熱室13内から前部が前方へ移動した状態とに移動可能となっている。また、食品配置部駆動部24は、前扉12の開閉に連動して食品配置部23を前後移動させる。したがって、食品配置部23は、前扉12の開状態では、加熱室13内から前方へ移動した状態となり、前扉12の閉状態では、加熱室13内に収納された状態となる。
【0018】
加熱室13の前端の開口部の周りには、加熱室13の開口部を囲むように前壁部25が設けられている(図1参照)。加熱室13の開口部を囲む部分の前壁部25の前面は、前扉12の閉状態において前扉12の内面と当接する前扉当接面25aとなっている。前壁部25は、加熱調理器1の外面を形成する筐体14と上壁17、下壁18および側壁20との間に存在し、これら各壁とつながった板状部材によって形成されている。
【0019】
調理器本体部11の下面には、排出物受部材保持部27が設けられている。排出物受部材保持部27は、排出物受部材4を調理器本体部11の下に配置した状態に保持する。具体的には、排出物受部材保持部27は、調理器本体部11の前後方向に延びる板状部材にて形成されている。排出物受部材保持部27の上面と調理器本体部11の底面との間の空間は、排出物受部材4の配置部すなわち収納位置となっている。
【0020】
調理器本体部11の下部に位置する部分の前壁部25は、調理器本体部11の後方へ後退した後退面25bとなっている。前壁部25の下部を後方に後退させることで、開状態の前扉12の下端部を逃がす空間が確保されている。
【0021】
(前扉12の構成)
図1図2に示すように、前扉12は、閉状態において、内面が調理器本体部11の前壁部25の前扉当接面25aと当接し、加熱室13を塞ぐようになっている。前扉12は、加熱室13内を覗くための覗窓41を中央部に有し、前扉12を開閉する際に把持される取手42を上部に有する。
【0022】
詳細には、図3に示すように、前扉12は、後面が開放された前後方向に薄い箱形状の筐体30を有する。筐体30は、射出成型金型に樹脂材料を流し込むことで作製される樹脂成形品より構成されている。筐体30には、覗窓41に対応する位置には開口31が設けられ、また、取手42を取り付けるためのボス32等が一体に成形されている。
【0023】
筐体30の解放された後面に、前扉12の内面をなすアルミニウム等の金属からなるドアパネル43(図4参照)が取り付けられている。前扉12の閉状態において、このドアパネル43が前扉当接面25aと当接する。また、筐体30の前面には、透明板45が前面全体を覆うように取り付けられている。
【0024】
(前扉12の水ガイド部)
図3に示すように、前扉12の筐体30は、調理器本体部11と対向する内側の下部に当該筐体30と一体に成形された第1水ガイド部33を備える。第1水ガイド部33は、前扉12の開状態にて、前扉12の内面を伝って流れ落ちる結露水を受け取って貯水し、前扉12の開状態にて、貯留した結露水を排出物受部材4内へ導くものである。第1水ガイド部は、結露水を受け取って貯留するために樋形状と、結露水を排出物受部材4内へ導く傾斜とを有する。
【0025】
また、結露水は、加熱室13の開口幅(加熱室13の左右方向の寸法)にわたって発生する。そのため、第1水ガイド部33は、左右方向に、加熱室13の開口幅に対応する長さを有していることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、第1水ガイド部33は、箱形状の筐体30における、下壁30-1と前壁30-2の下部とで結露水を貯留する樋形状を構成している。そして、図4に示すように、下壁30-1の上面に結露水を排出物受部材4内へ導く傾斜30-1aが設けられている。
【0027】
第1水ガイド部33における調理器本体部11の後方へ向かって突出している先端、つまり下壁30-1の先端30-1bは、前壁部25の前扉当接面25aに当接するドアパネル43よりも調理器本体部11の後方位置に達している。これにより、前扉12の内面をなすドアパネル43を伝って滴り落ちる結露水は、第1水ガイド部33に受け取られる。
【0028】
さらに、第1水ガイド部33の先端(下壁30-1の先端30-1b)は、排出物受部材4内の前端よりも後方に位置している。これにより、第1水ガイド部33に受け取られ、傾斜30-1aを伝って第1水ガイド部33より排出物受部材4内へ導かれて滴り落ちる水滴は、排出物受部材4内に落下する。
【0029】
そして、より好ましい構成として、前扉12の筐体30は、第1水ガイド部33の下面、つまり下壁30-1の下面に、筐体30と一体に形成された回り込み規制部材(第4水ガイド部)34を有している。回り込み規制部材34は、第1水ガイド部33の下面側への結露水の回り込みを規制して排出物受部材4内へ落下させるものである。回り込み規制部材34は、左右方向にリブ状に延びる突起であり、第1水ガイド部33に対応する長さを有していることが好ましい。図4の例では、回り込み規制部材34を前後に複数設けているが、1本であってもよい。
【0030】
さらに、より好ましい構成として、図3に示すように、第1水ガイド部33の側方に筐体30と一体に成形された第2水ガイド部35を備えさせてもよい。第2水ガイド部35を備えた構成については、実施形態2にて後述する。
【0031】
(排出物受部材4の構成)
図2図4に示すように、排出物受部材4は、前端部に下方へ曲がった取手部4aを有し、ユーザが取手部4aを持って、排出物受部材保持部27上から引き出し、かつ排出物受部材保持部27上へ押し込むことができる。すなわち、排出物受部材4は、ユーザの操作により、図1に示した収納位置から調理器本体部11の前方の引出位置、および引出位置から調理器本体部11の下方の収納位置へ移動自在となっている。
【0032】
排出物受部材4は、収納位置に配置された状態において、容器部分(取手部4aよりも後方の凹部)の前端部が前扉12の筐体30に設けられた、最も前方にある回り込み規制部材34の下端部よりも前方(加熱調理器1の前後方向における前方)に位置している。
【0033】
(加熱調理器の動作)
上記の構成において、加熱調理器1の動作を以下に説明する。加熱調理器1により、食品の調理として例えば食パンを焼く場合、ユーザは、前扉12を開状態とし、食品配置部23すなわち焼き網の上に食パンを載置する。その後、ユーザが前扉12を閉状態とし、調理時間を設定し、スタートボタンを押すと、加熱調理器1は調理を開始する。
【0034】
加熱調理器1は、調理中において、過熱水蒸気発生装置21から加熱室13内へ過熱水蒸気を吹き出しながら、上部ヒータ15および下部ヒータ16により食品配置部23上の食パンを焼く。その後、所定の調理時間が経過して調理が終了すると、ユーザは、前扉12を開状態とし、焼き上がった食パンを取り出す。
【0035】
(結露水の排出物受部材4内への落下)
加熱調理器1では、食パン(食品)から水分が蒸発し、また調理に過熱水蒸気を使用しているので、加熱室13内の壁面および前扉12の内面に結露が生じる。したがって、調理が終了し、特に前扉12を開状態とする場合、前扉12および調理器本体部11の前壁部25に生じていた結露による水が下方へ流れる。
【0036】
前扉12の内面に生じていた結露による水は、ドアパネル43を伝って流れて、前扉12の筐体30の下部にある第1水ガイド部33に到達して受け取られ、第1水ガイド部33の樋形状(下壁30-1と前壁30-2の下部とで構成される)にて貯留される。樋形状に貯留された結露水は、下壁30-1および前壁30-2の下部に接触することで温められ、蒸発していく。
【0037】
前扉12を閉状態とすると、第1水ガイド部33の樋形状にて貯留されていた結露水が、第1水ガイド部33の傾斜30-1aにより排出物受部材4内へ落下する。つまり、蒸発せずに残った結露水のみが、前扉12を閉じると共に排出物受部材4内へ落下する。
【0038】
なお、前扉12を閉状態としたままで前扉12の内面を流れた結露水は、第1水ガイド部33に受け止められ、傾斜30-1aにより排出物受部材4内へ落下する。
【0039】
また、前壁部25の表面に生じていた結露水は、前扉当接面25aから後退面25bを伝って、排出物受部材4内へ落下する。加熱室13内の上壁17、後壁19、側壁20および下壁18の表面に生じていた結露水は、下壁開口部18bから排出物受部材4内へ落下する。
【0040】
これにより、加熱調理器1に発生した結露水は、加熱調理器1が配置されている床面へ落下することなく排出物受部材4内へ落下し貯留される。排出物受部材4に貯留された水は、排出物受部材4を引き出して廃棄することができる。
【0041】
(加熱調理器1の利点)
加熱調理器1では、前扉12を開いた状態で、前扉12の内面を伝って流れ落ちる結露水は、第1水ガイド部33における樋形状の部分で受け取られて貯留される。前扉12が閉じられると、貯留された結露水は、第1水ガイド部33における傾斜30-1aにて排出物受部材4内へ導かれ、排出物受部材4内に回収される。
【0042】
第1水ガイド部33は、前扉12の筐体30と一体に成形して設けているので、水滴規制部を別部品として作製して前扉の筐体に取り付ける構成に比べて、製品コストを下げることができる。
【0043】
しかも、第1水ガイド部33は加熱調理時に発生した熱で温められているので、結露水は貯留されている間に蒸発が促され、最終的に排出物受部材4内に回収さる結露水の量を減らすことができる。これにより、排出物受部材4がアルミ等の安価な材料を用いて作製されていたとしても、サビの発生等による外観の低下を抑制することができる。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0045】
図5は、本実施形態の加熱調理器1の前扉における、図1のB-B線で切断した断面図であり、要部拡大図を含む。図6は、本実施形態の加熱調理器1の、図1のC-C線で切断した要部の縦断面の斜視図である。図7は、本実施形態の加熱調理器1の要部の縦断面図であり、前扉12が開いている状態を示す。
【0046】
調理器本体部11の前壁部25に生じた結露水の多くは、加熱室13の開口部の側方角部25cを伝って流れ落ちる。そこで、本実施形態の加熱調理器では、図3に示すように、前扉12の筐体30は、第1水ガイド部33の側方に筐体30と一体に成形された第2水ガイド部35をさらに備える。
【0047】
第2水ガイド部35は、前扉12の閉状態にて加熱室13の開口部の側方角部25cを伝って流れ落ちる結露水と接触して排出物受部材4へ導くものである。このような第2水ガイド部35は、第1水ガイド部33の左右の両側方に設けられている。
【0048】
具体的には、図5に示すように、第2水ガイド部35は、受取部35aと滴下部35bとを有する。受取部35aは、前扉12の閉状態にて加熱室13の開口部の側方角部25cを伝って流れ落ちる結露水と接触して受け取る。滴下部35bは、受取部35aで受け取られた結露水を排出物受部材4へ落下させる。
【0049】
前扉12の閉状態において、加熱室13の開口部の側方角部25cを伝って流れ落ちる結露水は、第2水ガイド部35の受取部35aと接触することで、受取部35aに引き寄せられて前扉12の筐体30側へと移動する。滴下部35bは、受取部35aの下面側に下方に突出するように形成されており、受取部35aで受け取られた結露水は、排出物受部材4へ落下する。
【0050】
また、図3に示すように、受取部35aは、前壁30-2に向かって延びる延長面30-4を有し、延長面30-4と第1水ガイド部33とが縦壁30-5を介して接続されている。これにより、受取部35aに受け取られた結露水を、延長面30-4から縦壁30-5を伝って第1水ガイド部33へ流れ込ませて、第1水ガイド部33を介して排出物受部材4内へ導くことも可能となっている。
【0051】
さらに、より好ましい構成として、図5図6に示すように、前扉12の筐体30は、第2水ガイド部の前方に、筐体30と一体に成形された第3水ガイド部36を備える。第3水ガイド部36は、前扉12の開動作によって第2水ガイド部35の下面側を伝って前方へ流れる結露水の移動を規制して排出物受部材4へ落下させるものである。
【0052】
具体的には、第3水ガイド部36は、第2水ガイド部35の前方に下方に突出した壁状に設けられており、縦壁30-5と接続されている。図7に示すように、第3水ガイド部36により、前扉12の開動作によって第2水ガイド部35の下面側を伝って前方へ流れる結露水の移動が規制され、結露水は、第3水ガイド部36の下端部より排出物受部材4へ落下する。
【0053】
排出物受部材4は、左右方向に、第2水ガイド部35および第3水ガイド部36の下端から滴り落ちる結露水を受け得る寸法を有する。また、第3水ガイド部36は、前扉12が最大限に開かれた状態で、第3水ガイド部36が排出物受部材4の前端部よりも後方(加熱調理器1の前後方向における後方)に位置する長さを有している。
【0054】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器1は、内部に加熱室を有する調理器本体部と、前記調理器本体部の前面側に設けられる前扉であって、前記加熱室の開口部を当該前扉の下端部側を中心として開閉可能に塞ぐ前扉と、前記調理器本体部の下方に設けられた水受部材と、を備え、前記前扉の筐体は、前記調理器本体部と対向する内側の下部に当該筐体と一体に成形された第1水ガイド部を備え、前記第1水ガイド部は、前記前扉の開状態にて前記前扉の内面を伝って流れ落ちる結露水を受け取って貯留する樋形状と、前記前扉の閉状態にて貯留した結露水を前記水受部材内へ導く傾斜とを有する。
【0055】
本発明の態様2に係る加熱調理器1は、態様1において、前記第1水ガイド部は、前記開口部の開口幅に対応する長さを有する構成とすることもできる。
【0056】
本発明の態様3に係る加熱調理器1は、態様1又は2において、前記前扉の筐体は、後面が開放された前後方向に薄い箱形状を有し、前記第1水ガイド部は、前記前扉の筐体における、下壁と前壁下部とで前記樋形状を構成し、前記下壁の上面に前記傾斜を有する構成とすることもできる。
【0057】
本発明の態様4に係る加熱調理器1は、態様1から3において、前記前扉の筐体は、前記第1水ガイド部の側方に当該筐体と一体に成形された第2水ガイド部を備え、前記第2水ガイド部は、前記前扉の閉状態にて前記開口部の側方角部を伝って流れ落ちる結露水と接触して前記水受部材内へ導く構成とすることもできる。
【0058】
本発明の態様5に係る加熱調理器1は、態様4において、前記前扉の筐体は、前記第2水ガイド部の前方に、当該筐体と一体に成形された第3水ガイド部を備え、前記第3水ガイド部は、前記前扉の開動作によって前記第2水ガイド部の下面側を伝って前方へ流れる結露水の移動を規制して前記水受部材内へ落下させる構成とすることもできる。
【0059】
本発明の態様6に係る加熱調理器1は、態様4において、態様1から5において、前記前扉の筐体は、前記第1水ガイド部の下面に当該筐体と一体に成形された第4水ガイド部を備え、前記第4水ガイド部は、前記第1水ガイド部の下面側への結露水の回り込みを規制して前記水受部材内へ落下させる構成とすることもできる。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 加熱調理器
3 操作部
4 排出物受部材(水受部材)
4a 取手部
6 ダイヤル
11 調理器本体部
12 前扉
13 加熱室
14 調理器本体部の筐体
15 上部ヒータ
16 下部ヒータ
21 過熱水蒸気発生装置
22 水蒸気吹出口
23 食品配置部
24 食品配置部駆動部
25 前壁部
25a 前扉当接面
25b 後退面
25c 側方角部
27 排出物受部材保持部
30 前扉の筐体
30-1 下壁
30-1a 傾斜
30-1b 先端
30-2 前壁
30-4 延長面
30-5 縦壁
33 第1水ガイド部
34 回り込み規制部材(第4水ガイド部)
35 第2水ガイド部
35a 受取部
35b 滴下部
36 第2水ガイド部
36 第3水ガイド部
43 ドアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7