(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】表皮材取付具
(51)【国際特許分類】
B68G 7/052 20060101AFI20230925BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B68G7/052 A
A47C31/02 B
(21)【出願番号】P 2019200603
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】中谷 淳志
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】松村 源太
(72)【発明者】
【氏名】米澤 誠一郎
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148350(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163328(WO,A1)
【文献】特開2014-204780(JP,A)
【文献】実開平2-112198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05- 7/052
A47C 31/00-31/06
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材(2)に設けられたワイヤ(20)に表皮材(3)を取り付ける表皮材取付具(10)であって、
前記表皮材(3)の縁部(3A)に対して直交座標系XYZのX軸方向に沿って固定されるテープ部材(30)と、前記テープ部材(30)のZ軸方向負側の側縁部(301B)に対して前記X軸方向に沿って装着されたクリップ係止部材(40,60)と、前記クリップ係止部材(40,60)に取り付けられると共に前記ワイヤ(20)を保持するクリップ(50,70)と、を備え、
前記クリップ係止部材(40,60)は、
前記テープ部材(30)に対してY軸方向正側に設けられた第1被係合部(41,61)と、
前記Z軸方向負側に面する収容空間形成面(44,64)と、を有し、
前記クリップ(50,70)は、
Y軸方向において前記第1被係合部(41,61)に対向配置される基部(51,71)と、
前記基部(51,71)から前記Z軸方向負側に延びつつY軸方向負側に向かって湾曲することで前記収容空間形成面(44,64)との間に収容空間(21)を形成し、当該収容空間(21)に収容された前記ワイヤ(20)を保持するフック部(54,74)と、
前記基部(51,71)のうちの前記第1被係合部(41,61)に対向する部位に設けられ、前記第1被係合部(41,61)に係合する第1係合部(52,72)と、を有する
ことを特徴とする表皮材取付具。
【請求項2】
前記クリップ係止部材(40,60)は、前記テープ部材(30)に対して前記Y軸方向正側、かつ、前記第1被係合部(41,61)に対してZ軸方向正側に配置された第2被係合部(42,62)をさらに有し、
前記クリップ(50,70)は、前記基部(51,71)に対して前記第1係合部(52,72)よりも前記Z軸方向正側に設けられ、前記第2被係合部(42,62)に係合する第2係合部(53,73)をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の表皮材取付具。
【請求項3】
前記第2被係合部(42,62)は、前記Z軸方向正側に突出する突出部(422,622)を有し、
前記第2係合部(53,73)は、前記基部(51,71)から前記Y軸方向負側に延伸する延伸部(531,731)と、前記延伸部(531,731)から前記Z軸方向負側に突出して前記突出部(422,622)に対して前記Y軸方向に係合する係合片(532,732)とを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の表皮材取付具。
【請求項4】
前記クリップ係止部材(40,60)は、前記収容空間形成面(44,64)から前記Z軸方向負側に突出するワイヤ止部(45,65)をさらに有し、当該ワイヤ止部(45,65)は、前記収容空間(21)に収容された前記ワイヤ(20)に当接可能に配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表皮材取付具。
【請求項5】
前記フック部(54,74)は、前記収容空間形成面(44,64)に対向する湾曲面(541,741)と、前記湾曲面(541,741)から前記Z軸方向負側に突出するワイヤ止部(542,742)とを有し、当該ワイヤ止部(542,742)は、前記収容空間(21)に収容された前記ワイヤ(20)に当接可能に配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表皮材取付具。
【請求項6】
前記クリップ係止部材(40)は、前記テープ部材(30)に対して前記Y軸方向負側に設けられ、前記Z軸方向負側に面するガイド面(43)を有し、
前記ガイド面(43)は、前記Z軸方向負側に向かうに従って前記Y軸方向正側に向かうように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の表皮材取付具。
【請求項7】
前記第1被係合部(41)には、前記X軸方向に並んで複数の溝部(416)が設けられており、
前記第1係合部(52)は、任意の前記溝部(416)に挿入されることにより、当該溝部(416)に係合する一対の弾性爪部(52A,52B)を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の表皮材取付具。
【請求項8】
前記第1被係合部(61)は、
前記Y軸方向正側に面する底部(611)と、
前記底部(611)から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の一方側またはZ軸方向の一方側に向かって湾曲し、前記X軸方向に並んで形成された複数の第1凸部(612)と、
前記第1凸部(612)よりも前記Z軸方向負側に配置され、前記底部(611)から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の他方側または前記Z軸方向の他方側に向かって湾曲し、前記X軸方向に並んで形成された複数の第2凸部(613)と、を有し、
前記第1係合部(72)は、
前記基部(71)から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の前記他方側または前記Z軸方向の前記他方側に向かって湾曲し、任意の前記第1凸部(612)に係合する1以上のクリップ側第1凸部(721)と、
前記クリップ側第1凸部(721)よりも前記Z軸方向負側に配置され、前記基部(71)から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の前記一方側または前記Z軸方向の前記一方側に向かって湾曲し、任意の前記第2凸部(613)に係合する1以上のクリップ側第2凸部(722)と、を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の表皮材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席や室内で利用される椅子などの表面を覆う表皮材の止着に用いられる表皮材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の座席や室内で利用される椅子として、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材を設置し、当該クッション材の表面を表皮材で被覆したものが多用されている。また、このような表皮材をクッション材に固定する表皮材取付具として、表皮材の縁部に固定されるテープ部材と、テープ部材に装着されるクリップ係止部材と、クリップ係止部材に取り付けられるクリップとを備え、当該クリップがクッション材の溝部に設けられたワイヤを保持するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のクリップでは、クリップ係止部材を把持する把持部とワイヤを保持するフック部とが基部を挟んで互いに反対側に配置されている。この場合、クリップ係止部材とワイヤとが並んだ方向(クッション材の厚み方向)に沿って、把持部、基部およびフック部が並ぶこととなるので、クッション材の厚み方向におけるクリップの寸法を小さくすることが困難である。よって、このようなクリップを薄型のクッション材に採用する場合には、着席者に対して異物感を感じさせないクリップ配置とすることが困難である。
【0005】
本発明は、クッション材の厚み方向におけるクリップの寸法を小さくできる表皮材取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表皮材取付具は、クッション材に設けられたワイヤに表皮材を取り付ける表皮材取付具であって、前記表皮材の縁部に対して直交座標系XYZのX軸方向に沿って固定されるテープ部材と、前記テープ部材のZ軸方向負側の側縁部に対して前記X軸方向に沿って装着されたクリップ係止部材と、前記クリップ係止部材に取り付けられると共に前記ワイヤを保持するクリップと、を備え、前記クリップ係止部材は、前記テープ部材に対してY軸方向正側に設けられた第1被係合部と、前記Z軸方向負側に面する収容空間形成面と、を有し、前記クリップは、Y軸方向において前記第1被係合部に対向配置される基部と、前記基部から前記Z軸方向負側に延びつつY軸方向負側に向かって湾曲することで前記収容空間形成面との間に収容空間を形成し、当該収容空間に収容された前記ワイヤを保持するフック部と、前記基部のうちの前記第1被係合部に対向する部位に設けられ、前記第1被係合部に係合する第1係合部と、を有することを特徴とする。
なお、本発明の表皮材取付具をクッション材に取り付けた際、テープ部材の短手方向となるZ軸方向は、クッション材の厚み方向に対応する。
本発明に係る表皮材取付具において、クリップ係止部材は、テープ部材に対してY軸方向正側に第1被係合部を有しており、クリップは、基部のY軸方向負側に第1係合部を有している。すなわち、本発明に係る表皮材取付具は、テープ部材に対するY軸方向正側に係合構造を有する片持ちタイプの表皮材取付具を構成しており、クリップの第1係合部は、Z軸方向における基部およびフック部の並びから外れるように配置される。また、クリップのフック部は、クリップ係止部材の収容空間形成面との間にワイヤを保持するため、ワイヤを保持するための他の余分な部位を必要としない。このような構成によれば、Z軸方向、すなわちクッション材の厚み方向におけるクリップの寸法を小さくできる。これにより、本発明に係る表皮材取付具は、薄型のクッション材に採用される場合であっても、クリップに対する着席者の異物感を減少させることができる。
【0007】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記クリップ係止部材は、前記テープ部材に対して前記Y軸方向正側、かつ、前記第1被係合部に対してZ軸方向正側に配置された第2被係合部をさらに有し、前記クリップは、前記基部に対して前記第1係合部よりも前記Z軸方向正側に設けられ、前記第2被係合部に係合する第2係合部をさらに有することが好ましい。
本発明に係る表皮材取付具は、上述したように、テープ部材に対するY軸方向正側に係合構造を有する片持ちタイプの表皮材取付具を構成している。このため、クリップがワイヤに係合した際、クリップには、第1係合部を中心として、Y軸方向およびZ軸方向に成分を有する回転モーメントが生じ易い。そこで、本発明では、クリップの第1係合部とクリップ係止部材の第1被係合部とによる係合構造よりもZ軸方向正側において、クリップの第2係合部がクリップ係止部材の第2被係合部に係合することにより、当該モーメントによるクリップの回転を抑制できる。これにより、クリップ係止部材に対してクリップをより強固に取り付けることができる。
【0008】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記第2被係合部は、前記Z軸方向正側に突出する突出部を有し、前記第2係合部は、前記基部から前記Y軸方向負側に延伸する延伸部と、前記延伸部から前記Z軸方向負側に突出して前記突出部に対して前記Y軸方向に係合する係合片とを有する。
本発明に係る表皮材取付具によれば、上述のクリップの回転を簡易な構成によって抑制できる。
【0009】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記クリップ係止部材は、前記収容空間形成面から前記Z軸方向負側に突出するワイヤ止部をさらに有し、当該ワイヤ止部は、前記収容空間に収容された前記ワイヤに当接可能に配置されていることが好ましい。
本発明に係る表皮材取付具によれば、ワイヤがフック部から脱落することを抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記フック部は、前記収容空間形成面に対向する湾曲面と、前記湾曲面から前記Z軸方向負側に突出するワイヤ止部とを有し、当該ワイヤ止部は、前記収容空間に収容された前記ワイヤに当接可能に配置されていることが好ましい。
本発明に係る表皮材取付具によれば、ワイヤがフック部から脱落することを抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記クリップ係止部材は、前記テープ部材に対して前記Y軸方向負側に設けられ、前記Z軸方向負側に面するガイド面を有し、前記ガイド面は、前記Z軸方向負側に向かうに従って前記Y軸方向正側に向かうように形成されていることが好ましい。
本発明に係る表皮材取付具によれば、ガイド面に当接したワイヤをクリップのフック部に向かって案内することができるため、ワイヤに対するクリップの取り付け操作が容易になる。
【0012】
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記第1被係合部には、前記X軸方向に並んで複数の溝部が設けられており、前記第1係合部は、任意の前記溝部に挿入されることにより、当該溝部に係合する一対の弾性爪部を有してもよい。
また、本発明に係る表皮材取付具において、前記第1被係合部は、前記Y軸方向正側に面する底部と、前記底部から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の一方側またはZ軸方向の一方側に向かって湾曲し、前記X軸方向に並んで形成された複数の第1凸部と、前記第1凸部よりも前記Z軸方向負側に配置され、前記底部から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の他方側または前記Z軸方向の他方側に向かって湾曲し、前記X軸方向に並んで形成された複数の第2凸部と、を有し、前記第1係合部は、前記基部から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の前記他方側または前記Z軸方向の前記他方側に向かって湾曲し、任意の前記第1凸部に係合する1以上のクリップ側第1凸部と、前記クリップ側第1凸部よりも前記Z軸方向負側に配置され、前記基部から前記Y軸方向正側に突出しつつ前記X軸方向の前記一方側または前記Z軸方向の前記一方側に向かって湾曲し、任意の前記第2凸部に係合する1以上のクリップ側第2凸部と、を有してもよい。
このような構成によれば、X軸方向における任意の位置において、第1被係合部と第1係合部とを好適に係合させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表皮材が取り付けられたクッション材への着座時の異物感を低減できる表皮材取付具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表皮材取付具を示す分解斜視。
【
図2】第1実施形態に係る表皮材取付具のクリップ係止部材を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る表皮材取付具のクリップ係止部材を示す斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る表皮材取付具のクリップを示す斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る表皮材取付具のクリップを示す斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る表皮材取付具を示す断面図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る表皮材取付具を示す分解斜視。
【
図8】第2実施形態に係る表皮材取付具のクリップ係止部材を示す斜視図。
【
図9】第2実施形態に係る表皮材取付具のクリップ係止部材を示す斜視図。
【
図10】第2実施形態に係る表皮材取付具のクリップを示す斜視図。
【
図11】第2実施形態に係る表皮材取付具のクリップを示す斜視図。
【
図12】第2実施形態に係る表皮材取付具を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について
図1~
図6に基づいて説明する。
図1において、第1実施形態に係る表皮材取付具10は、自動車等の車両用の座席のクッション材2に対して表皮材3を取り付けるものであり、表皮材3に固定されるテープ部材30と、テープ部材30に装着されたクリップ係止部材40と、クッション材2に設置されたワイヤ20を保持しかつクリップ係止部材40に係合するクリップ50とを有する。
【0016】
クッション材2は、座席の形状に成型された発泡ポリウレタン等の合成樹脂フォーム材等である。クッション材2には、表皮材止着用の溝2Aが形成されている。
クッション材2の溝2A内には、溝2Aの長さ方向に沿って、ワイヤ20が設置されている。ワイヤ20は、例えば金属製の線状体であり、円形状の断面を有する。このワイヤ20は、クッション材2の成型時にインサート方式でクッション材2に組み込むことができる。
【0017】
表皮材3は、クッション材2の表面を覆う合成樹脂織物シート等であり、クッション材2の溝2Aに対応する部位に縁部3Aを有する。この縁部3Aには、テープ部材30が縫合等によって固定される。
【0018】
テープ部材30は、帯状の不織布等である。テープ部材30において、テープ部材30の短手方向の一方側の側縁部301Aは、表皮材3に固定され、他方側の側縁部301Bには、クリップ係止部材40が当該長手方向に沿って装着されている。
また、テープ部材30は、表裏関係である一対の面を有しており、当該一対の面のうち、一方を第1面31(
図1,
図2参照)と称し、他方を第2面32(
図3参照)と称する。
【0019】
ここで、以降の説明を簡便にするために、表皮材取付具10に関して、各図に示す通りの直交座標系XYZを定義する。Z軸は、テープ部材30の短手方向とし、テープ部材30に対して表皮材3の縁部3Aが配置される側を正とし、テープ部材30に対してクリップ係止部材40が配置される側を負とする。Z軸に直交する平面上において、テープ部材30の長手方向をX軸、テープ部材30の厚み方向をY軸とする。特に、Y軸は、テープ部材30の第1面31が面する側を正とし、テープ部材30の第2面32が面する側を負とする。
また、表皮材取付具10が表皮材3をクッション材2に取り付けた状態では、クッション材2の溝2Aの長さ方向(ワイヤ20の延伸方向)がX軸方向に対応し、クッション材2の溝2Aの幅方向がY軸方向に対応し、クッション材2の溝2Aの深さ方向(クッション材2の厚み方向)がZ軸方向に対応する。
【0020】
クリップ係止部材40は、例えば合成樹脂製であり、テープ部材30の側縁部301Bに対してX軸方向に沿って装着されている。クリップ係止部材40の成型時、テープ部材30の側縁部301Bをインサート方式で組み込むことで、クリップ係止部材40を当該301Bに装着することができる。
【0021】
また、クリップ係止部材40は、テープ部材30に対してY軸方向正側に設けられた第1側部401(
図1、
図2参照)と、テープ部材30に対してY軸方向負側に設けられた第2側部402(
図3参照)と、を有する。
【0022】
第1側部401は、
図2に示すように、クリップ50に係合可能な第1被係合部41および第2被係合部42を有する。なお、
図2は、クリップ50が係合していない状態を示している。
【0023】
第1被係合部41は、XZ平面に略平行な底部411と、底部411からY軸方向正側に突出した複数の凸部412とを有する。複数の凸部412は、X軸方向に所定間隔をあけて配置されている。凸部412は、Z軸方向負側から見て略T字形状を有しており、Y軸方向に延びた延伸部413と、延伸部413からX軸方向の互いに反対側に突出した一対の被係合片414A,414Bとを有している。また、この凸部412は、突出方向の端面として、Y軸方向正側に面する端面415を有している。
換言すると、第1被係合部41は、Y軸方向正側に面する端面415に対して、Y軸方向に深さを有する複数の溝部416がX軸方向に所定間隔をあけて設けられた構造を有する。溝部416においてX軸方向の両側の壁面には、当該壁面から突出した被係合片414A,414Bが設けられている。
【0024】
第2被係合部42は、Z軸方向正側に面しかつXY平面に略平行な端面421と、端面421に対してY軸正側に配置されかつZ軸方向正側に突出した突出部422とを有する。端面421および突出部422は、それぞれ、テープ部材30の側縁部301Bに沿って形成されている。
【0025】
第2側部402は、
図3に示すように、ワイヤ20を案内するためのガイド面43(本発明のガイド面)を有する。ガイド面43は、テープ部材30の側縁部301Bに沿って形成されており、Z軸方向負側に面し、かつ、Z軸方向負側に向かうほどY軸方向正側に向かうように形成されている。
なお、ガイド面43には、X軸方向に沿って所定間隔をあけて複数の肉抜き穴431が設けられていてもよい。
【0026】
クリップ係止部材40は、上述の第1側部401および第2側部402の他、Z軸方向負側に面する収容空間形成面44およびワイヤ止部45を有する(
図2,
図3参照)。
収容空間形成面44は、複数の凸部412のZ軸方向負側の面を含み、かつ、当該面からY軸方向負側に延びており、Y軸方向負側に向かうほどZ軸方向負側に向かうように湾曲している。この収容空間形成面44は、後述するクリップ50のフック部54と共に、ワイヤ20の収容空間21(
図6参照)を形成する。
ワイヤ止部45は、ガイド面43と収容空間形成面44との間に形成され、Z軸方向負側に向かって突出した形状を有する。
【0027】
クリップ50は、例えば合成樹脂製であり、クリップ係止部材40に対してX軸方向の任意の位置に係合できる。具体的には、クリップ50は、
図4および
図5に示すように、基部51と、クリップ係止部材40の第1被係合部41に係合する第1係合部52と、クリップ係止部材40の第2被係合部42に係合する第2係合部53と、ワイヤ20を保持するフック部54とを有する。
なお、
図4および
図5は、クリップ50を単独で示しているが、以下の説明ならびに
図4および
図5では、クリップ係止部材40に係合した状態のクリップ50の姿勢を基準としてXYZ座標を適用している。
【0028】
基部51は、XZ平面に平行に延びた平板形状を有している。基部51のZ軸方向正側の端部は、第2係合部53に連続しており、基部51のZ軸方向負側の端部は、フック部54に連続している。基部51のうちY軸方向負側に面する部位には、第1係合部52が設けられている。
【0029】
第1係合部52は、一対の弾性爪部52A,52Bを有する。一対の弾性爪部52A,52Bは、基部51からY軸方向負側に延びた延伸部521A,521Bと、延伸部521A,521BからX軸方向の一方側に突出した係合片522A,522Bとを有している。なお、係合片522A,522Bは、互いに反対側に突出している。
【0030】
第2係合部53は、基部51のZ軸方向正側の端部からY軸方向負側に延びた延伸部531と、延伸部531からZ軸方向負側に突出した係合片532とを有する。本実施形態では、1つのクリップ50に対してX軸方向に間隔をあけて2つの係合片532が設けられている。この係合片532には、クリップ50の取り付け時に突出部422を乗り越えるための傾斜面532Aが形成されている。
【0031】
フック部54は、基部51のZ軸方向負側の端部から連続して延びており、当該端部からY軸方向負側に向かって湾曲している。このフック部54の内側の湾曲面541うち、X軸方向の少なくとも一部(
図4ではX軸方向の中央部分)には、Z軸方向正側に突出したワイヤ止部542が設けられている。
また、フック部54には、ワイヤ止部542からフック部54の先端部分であるフック先端部543にかけて、ガイド面544が形成されている。このガイド面544は、Z軸方向正側に面し、かつ、Y軸方向負側に向かうほどZ軸方向負側に向かうように形成されている。
【0032】
次に、本実施形態の表皮材取付具10の取付操作について説明する。以下の説明において、テープ部材30は、クッション材2の表面を覆う表皮材3の縁部3Aに固定されており、クリップ係止部材40は、テープ部材30の側縁部301Bに装着されているものとする。
【0033】
まず、作業者は、
図6に示すように、クリップ50の基部51をクリップ係止部材40の第1被係合部41に対向配置させ、クリップ50をY軸方向負側に押しつける。これにより、第1係合部52を第1被係合部41に係合させると共に、第2係合部53を第2被係合部42に係合させる。
【0034】
具体的には、第1係合部52を第1被係合部41に係合させる際、第1係合部52の弾性爪部52A,52Bを第1被係合部41における溝部416に挿入させる。このとき、弾性爪部52A,52Bの係合片522A,522Bが溝部416の両側の被係合片414A,414Bから押圧を受けることにより、弾性爪部52A,52Bは、弾性変形する。そして、係合片522A,522Bが溝部416内に収まったとき、弾性爪部52A,52Bの弾性変形が解除される。この状態において、第1係合部52の弾性爪部52A,52Bが第1被係合部41の凸部412に対してX軸方向に当接し、弾性爪部52A,52Bの係合片522A,522Bが凸部412の被係合片414A,414Bに対してY軸方向に当接する。
【0035】
また、第2係合部53を第2被係合部42に係合させる際、第2係合部53の係合片532が第2被係合部42の突出部422を乗り越えるように押圧を加える。係合片532は、突出部422を乗り越えた後、第2被係合部42の端面421に対してZ軸方向に当接し、かつ、突出部422に対してY軸方向に当接する。
【0036】
以上により、クリップ50は、クリップ係止部材40に対して取り付けられる。このとき、クリップ50の基部51は、凸部412のうちのY軸方向正側に面する端面415に当接する。また、クリップ係止部材40の収容空間形成面44とフック部54の湾曲面541との間には、ワイヤ20を保持するための収容空間21が形成される。
【0037】
次に、作業者は、クリップ係止部材40に取り付けられたクリップ50をクッション材2の溝2A内に挿入し、溝2A内のワイヤ20に向かってクリップ50をY軸方向負側に押し付ける。なお、溝2A内のクリップ50の操作のために、治具や装置を用いてもよい。
【0038】
ワイヤ20は、クリップ係止部材40のガイド面43に押し付けられ、ガイド面43に案内されることによってフック先端部543に向かって進み、フック部54のガイド面544に案内されることで、クリップ係止部材40のワイヤ止部45およびフック部54のワイヤ止部542に当接する。
【0039】
なお、ワイヤ止部45,542は、互いに対向配置されており、ワイヤ止部45,542間の隙間は、ワイヤ20の直径よりも小さい。このため、フック部54は、ワイヤ20に加わる押圧を受けることにより、フック先端部543がZ軸方向負側に変位するように変形し、ワイヤ止部45,542間の隙間が拡げられる。ワイヤ止部45,542間の隙間がワイヤ20の直径以上になったとき、ワイヤ20が当該隙間を通過し、フック部54の湾曲面541とクリップ係止部材40の収容空間形成面44との間の収容空間21に収容される。その後、フック部54が元の形状に戻ることにより、ワイヤ止部45,542が収容空間21からのワイヤ20の脱落を抑止する。
以上により、ワイヤ20をクリップ50に留めることができ、その結果として、表皮材3をクッション材2に止着することができる。
【0040】
(実施形態の効果)
本実施形態の比較例として、従来の表皮材取付具110を
図13に示す。この表皮材取付具110において、クリップ100は、テープ部材101に装着されたクリップ係止部材102を把持する把持部103と、ワイヤ20に係合するフック部104とを備えており、把持部103およびフック部104は、基部105を挟んで互いに反対側に配置されている。仮に、本実施形態のXYZ座標系を適用した場合、把持部103、基部105およびフック部104がZ軸方向に沿って並んでいる。また、クリップ100のフック部104は、ガイド片106との間に形成される空間にワイヤ20を保持する。このような構成では、基部105やガイド片106がクリップ100のZ軸方向の寸法Hに含まれるため、この寸法Hを小さくすることは困難である。
一方、本実施形態の表皮材取付具10は、片持ちタイプの係合構造を有するものであり、クリップ50は、クリップ係止部材40のY軸方向片側に係合した状態で、クリップ係止部材40のZ軸方向負側の面である収容空間形成面44との間にワイヤ20を保持する。このため、クリップ50のZ軸方向の寸法Hを従来よりも小さくすることができる(
図6参照)。これにより、本実施形態の表皮材取付具10は、薄型のクッション材2に採用される場合であっても、クリップ50に対する着席者の異物感を減少させることができる。
【0041】
また、従来のクリップ100は、クリップ係止部材102をY軸方向両側から把持する構造であるのに対して、本実施形態のクリップ50は、クリップ係止部材40のY軸方向片側に係合する構造である。このため、本実施形態では、クリップ50のZ軸方向の寸法だけでなく、クリップ50のY軸方向の寸法についても、従来のクリップ100より小さくすることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、クリップ50が一対の弾性爪部52A,52Bを有し、クリップ係止部材40が複数の溝部416を有し、当該弾性爪部52A,52Bが任意の1つの溝部416に挿入することで上述の係合構造が実現されるため、クリップ係止部材40に対するクリップ50の係合位置をX軸方向に調整可能である。
【0043】
本実施形態のクリップ50は、上述したように片持ちタイプの係合構造を有するため、クリップ50がワイヤ20に係合した際、第1係合部52を中心として、Y軸方向およびZ軸方向に成分を有する回転モーメントが生じ易い。しかし、本実施形態では、クリップ50の第2係合部53がクリップ係止部材40の第2被係合部42に係合することにより、当該モーメントによるクリップ50の回転を抑制できる。また、本実施形態において、クリップ50の回転を抑制するための第2係合部53と第2被係合部42との係合は、簡易な構成によって実現されている。
【0044】
本実施形態の表皮材取付具10において、クリップ係止部材40およびフック部54は、収容空間21に収容されたワイヤ20に当接可能なワイヤ止部45,542をそれぞれ有しているため、ワイヤ20がフック部54から脱落することを好適に抑制できる。
【0045】
本実施形態の表皮材取付具10において、クリップ係止部材40は、ガイド面43に当接したワイヤ20をフック部54に向かって案内するガイド面43を有するため、ワイヤ20に対するクリップ50の取り付け操作が容易になる。
【0046】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について
図7~
図12に基づいて説明する。
図7に示すように、第2実施形態に係る表皮材取付具10Aは、表皮材3に固定されるテープ部材30と、テープ部材30に装着されたクリップ係止部材60と、クッション材2に設置されたワイヤ20に係合しかつクリップ係止部材60に係合するクリップ70とを有する。この第2実施形態は、クリップ係止部材60およびクリップ70の各形状以外について、第1実施形態と略同様である。以下、第1実施形態と異なる構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成につては省略する場合がある。
【0047】
クリップ係止部材60は、テープ部材30に対してY軸方向正側に設けられた第1側部601(
図7、
図8参照)と、テープ部材30に対してY軸方向負側に設けられた第2側部602(
図9参照)と、を有する。
【0048】
第1側部601は、
図8に示すように、クリップ70に係合可能な第1被係合部61および第2被係合部62を有する。なお、
図8は、クリップ70が係合していない状態を示している。
【0049】
第1被係合部61は、XZ平面に略平行であってY軸方向正側に面する底部611と、底部611からY軸方向正側に突出した複数の第1凸部612と、第1凸部612よりZ軸方向負側に配置されかつ底部611からY軸方向正側に突出した複数の第2凸部613とを有する。
複数の第1凸部612および複数の第2凸部613は、それぞれX軸方向に所定間隔をあけつつ、互いに等しいピッチで配置されている。
また、第1凸部612は、底部611からY軸方向正側に突出しつつ、X軸方向の他方側(X軸方向負側)に向かって湾曲している。一方、第2凸部613は、底部611からY軸方向正側に突出しつつ、X軸方向の一方側(X軸方向正側)に向かって湾曲している。
【0050】
第2被係合部62は、Z軸方向正側に面しかつXY平面に略平行な端面621と、端面621に対してY軸正側に配置されかつZ軸方向正側に突出した突出部622とを有する。端面621および突出部622は、それぞれ、テープ部材30の側縁部301Bに沿って形成されている。
【0051】
第2側部602は、
図9に示すような背面部63を有する。背面部63の形状は、特に限定されないが、
図9に示すようにY軸方向の厚みに変化を設けることで肉抜きされていてもよい。
【0052】
クリップ係止部材60は、上述の第1側部601および第2側部602の他、Z軸方向負側に面する収容空間形成面64およびワイヤ止部65を有する(
図8,
図9参照)。
収容空間形成面64は、複数の第2凸部613のZ軸方向負側の面を含んでいる。この収容空間形成面64は、後述するクリップ70のフック部74と共に、ワイヤ20の収容空間21を形成する。
ワイヤ止部65は、背面部63と収容空間形成面64との間に形成され、Z軸方向負側に向かって突出した形状を有する。
【0053】
クリップ70は、第1実施形態と同様、例えば合成樹脂製であり、クリップ係止部材60に対してX軸方向の任意の位置に係合できる。具体的には、クリップ70は、
図10および
図11に示すように、基部71と、クリップ係止部材60の第1被係合部61に係合する第1係合部72と、クリップ係止部材60の第2被係合部62に係合する第2係合部73と、ワイヤ20を保持するフック部74とを有する。
なお、
図10および
図11は、クリップ70を単独で示しているが、以下の説明ならびに
図10および
図11では、クリップ係止部材60に係合した状態のクリップ70の姿勢を基準としてXYZ座標を適用している。
【0054】
基部71は、第1実施形態の基部51と同様の構成を有する。
第1係合部72は、基部71からY軸方向負側に突出した1つ以上(本実施形態では3つ)の第1凸部721と、第1凸部721よりZ軸方向負側に配置されかつ基部71からY軸方向負側に突出した1つ以上(本実施形態では3つ)の第2凸部722とを有する。複数の第1凸部721および複数の第2凸部722は、それぞれX軸方向に所定間隔をあけつつ、互いに等しいピッチで配置されている。
クリップ70の第1凸部721および第2凸部722は、本発明のクリップ側第1凸部およびクリップ側第2凸部に相当するものであり、クリップ係止部材60の第1凸部612および複数の第2凸部613に噛み合うように形成されている。具体的には、第1凸部721は、基部71からY軸方向負側に突出しつつ、X軸方向の一方側(X軸方向正側)に向かって湾曲している。一方、第2凸部722は、基部71からY軸方向負側に突出しつつ、X軸方向の他方側(X軸方向負側)に向かって湾曲している。
【0055】
第2係合部73は、基部71のZ軸方向正側の端部からY軸方向負側に延びた延伸部731と、延伸部731からZ軸方向負側に突出した係合片732とを有する。本実施形態では、1つのクリップ70に対して、X軸方向に間隔をあけて2つの係合片732が設けられている。
なお、本実施形態の係合片732には、クリップ70の取り付け時に突出部622を乗り越えるための傾斜面732Aと、クリップ70の取り外し時に突出部622を乗り越えるための傾斜面732Bとが形成されている。
【0056】
フック部74は、第1実施形態のフック部54と同様、ワイヤ止部742およびガイド面744を有している。
【0057】
次に、第2実施形態の表皮材取付具10Aの取付操作について説明する。
まず、作業者は、
図12に示すように、クリップ70の基部71をクリップ係止部材60の第1被係合部61に対向配置させ、クリップ70をY軸方向負側に押しつける。これにより、第1係合部72を第1被係合部61に係合させると共に、第2係合部73を第2被係合部62に係合させる。
【0058】
具体的には、第1係合部72を第1被係合部61に係合させる際、第1係合部72の複数の第1凸部721のそれぞれ(
図10参照)を、第1被係合部61の隣り合う第1凸部612の間の複数の隙間612Aのそれぞれ(
図8参照)に挿入させる。同様に、第1係合部72の複数の第2凸部722のそれぞれ(
図10参照)を、第1被係合部61の隣り合う第2凸部613の間の複数の隙間613Aのそれぞれ(
図8参照)に挿入させる。
【0059】
このとき、第1係合部72および第1被係合部61では、第1凸部721,612および第2凸部722,613が互いに押圧を受けることで弾性変形する。そして、第1凸部721,612同士が噛み合うと共に、第2凸部722,613同士が噛み合うことにより、弾性変形が解除されて、第1係合部72が第1被係合部61に係合した状態になる。この状態において、第1係合部72は、底部611に対してY軸方向に当接し、第1被係合部61に対してY軸方向に当接する。
【0060】
また、第2係合部73を第2被係合部62に係合させる際、第2係合部53の係合片732が第2被係合部62の突出部622を乗り越えるように押圧を加える。係合片732は、突出部622を乗り越えた後、第2被係合部62の端面621に対してZ軸方向に当接し、かつ、突出部622に対してY軸方向に当接する。
【0061】
以上により、クリップ70は、クリップ係止部材60に対して取り付けられる。このとき、クリップ70の基部71は、第1凸部612および第2凸部613のうちのY軸方向正側に面する端面615に当接する。また、クリップ係止部材60の収容空間形成面64とフック部74の湾曲面741との間には、ワイヤ20を保持するための収容空間21が形成される。
【0062】
次に、作業者は、クリップ係止部材60に取り付けられたクリップ70をクッション材2の溝2A内に挿入し、溝2A内のワイヤ20に向かってクリップ70をY軸方向負側に押し付ける。なお、溝2A内のクリップ70の操作のために、治具や装置を用いてもよい。
【0063】
押圧を受けたワイヤ20は、フック部74のワイヤ止部742とクリップ係止部材60のワイヤ止部65との間の隙間を通過する。このとき、ワイヤ20は、フック先端部743に形成されたガイド面744に案内される。
なお、ワイヤ止部65,742は、互いに対向配置されており、ワイヤ止部65,742間の隙間は、ワイヤ20の直径よりも小さい。このため、フック部74は、ワイヤ20に加わる押圧を受けることにより、フック先端部743がZ軸方向負側に変位するように変形し、ワイヤ止部65,742間の隙間が拡げられる。ワイヤ止部65,742間の隙間がワイヤ20の直径以上になったとき、ワイヤ20は、当該隙間を通過し、フック部74の湾曲面741とクリップ係止部材60の収容空間形成面64との間の収容空間21に収容される。その後、フック部74が元の形状に戻ることにより、ワイヤ止部65,742が収容空間21からのワイヤ20の脱落を抑止する。
以上により、ワイヤ20をクリップ70に留めることができ、その結果として、表皮材3をクッション材2に止着することができる。
【0064】
このような第2実施形態によれば、前記第1実施形態のクリップ係止部材40のガイド面43による効果以外、第1実施形態と略同様の効果を奏することができる。
また、第2実施形態では、第1被係合部61および第1係合部72の各形状を、第1実施形態に比べて単純化しつつ、互いに共通化することができる。このため、第2実施形態のクリップ係止部材60およびクリップ70を容易に製造することができる。
【0065】
[変形例]
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は、本発明に含まれるものである。
【0066】
前記各実施形態では、1つのクリップ50,70について説明しているが、表皮材取付具10,10Aは、複数のクリップ50,70を有していてもよい。複数のクリップ50,70は、クリップ係止部材40,60に対してX軸方向の任意の位置に取り付け可能である。
【0067】
前記各実施形態において、クリップ50,70は、第1係合部52,72および第2係合部53,73という少なくとも2つの部位でクリップ係止部材40,60と係合するが、本発明はこれに限られない。例えば、前記各実施形態において、クリップ50,70は、第2係合部53,73を有さず、第1係合部52,72によってクリップ係止部材40,60に係合してもよい。あるいは、クリップ50,70は、第1係合部52,72を有さず、第2係合部53,73によってクリップ係止部材40,60に係合してもよい。
【0068】
前記第2実施形態において、クリップ係止部材60の第1凸部612および第2凸部613は、ならびに、クリップ70の第1凸部721および第2凸部722は、それぞれ、X軸方向の正側または負側に向かって湾曲しているが、Z軸方向の正側または負側に向かって湾曲してもよい。
例えば、Z軸方向正側に向かって湾曲する第1凸部612と、Z軸方向負側に向かって湾曲する第1凸部721とが係合し、Z軸方向負側に向かって湾曲する第2凸部613と、Z軸方向正側に向かって湾曲する第2凸部722とが係合してもよい。
このような変形例によっても、前記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
本発明のクリップおよびクリップ係止部材の形状は、前記各実施形態で説明したものに限られない。例えば、本発明における第1係合部と第1被係合部との係合構造、および、第2係合部と第2被係合部との係合構造は、前記各実施形態で説明したものに限られず、凹凸形状を組み合わせた任意の構造を採用できる。
【符号の説明】
【0070】
10,10A…表皮材取付具、2…クッション材、20…ワイヤ、21…収容空間、2A…溝、3…表皮材、30…テープ部材、301A…側縁部、301B…側縁部、31…第1面、32…第2面、3A…縁部、40,60…クリップ係止部材、401,601…第1側部、402,602…第2側部、41,61…第1被係合部、412…凸部、612…第1凸部、613…第2凸部、42,62…第2被係合部、43…ガイド面、44,64…収容空間形成面、45,65…ワイヤ止部、50,70…クリップ、51,71…基部、52,72…第1係合部、53,73…第2係合部、54,74…フック部、542,742…ワイヤ止部、543,743…フック先端部、544,744…ガイド面。