(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20230925BHJP
F02F 11/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F16J15/08 Q
F16J15/08 P
F02F11/00 P
(21)【出願番号】P 2019206404
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】柳 得徳
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325949(JP,A)
【文献】実開平06-032836(JP,U)
【文献】特開2017-120098(JP,A)
【文献】特開昭55-075552(JP,A)
【文献】実開昭61-041849(JP,U)
【文献】実開昭60-089402(JP,U)
【文献】特開平10-281290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と前記金属板の両面に被覆されているゴム層とを有し互いに対向している一対のガスケット部材と、
前記一対のガスケット部材の間に配置されており、金属板を有するビード部材と、
前記一対のガスケット部材のそれぞれに互いに対応する位置に設けられ、前記一対のガスケット部材を密封対象に取り付ける締付部材を挿通する挿通孔と、
前記一対のガスケット部材の間に配置されており、前記一対のガスケット部材の厚み方向の圧縮量を規制する圧縮量規制部と、
を備え、
前記締付部材は、前記挿通孔に挿通される軸状の部材であり前記密封対象に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ山が形成されている雄ネジ部と、前記雄ネジ部の一端に設けられているネジ頭と、を有し、
前記密封対象は、前記雄ネジ部を相通可能なボルト挿通孔が設けられている一方筐体と、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されている他方筐体とであり、
前記圧縮量規制部は、下側境界部が前記他方筐体の位置を規制し、上側境界部が前記一方筐体の位置を規制する、ガスケット。
【請求項2】
前記挿通孔は、前記一対のガスケット部材のそれぞれにおいて互いに対応する位置に設けられており、
前記圧縮量規制部は、前記挿通孔の位置において前記一対のガスケット部材のそれぞれの間に配置されている、
請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記締付部材は
、前記雄ネジ部と前記ネジ頭との間にネジ山が形成されていない段部
を備え、
前記圧縮量規制部は、前記締付部材の前記段部である、
請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記圧縮量規制部は、前記厚み方向に所定の厚みを有する部材であり、前記挿通孔の位置において前記
雄ネジ部を挿通可能な貫通孔が設けられている、
請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記一対のガスケット部材を連結する連結部材を備える、
請求項1乃至4のいずれかに記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属板の両面にゴム材を被覆した所謂ラバーコーテッドメタル(以下、RCMともいう。)を使用したガスケットが広く用いられている。このようなガスケットとして、例えば、環状金属基板の両面に積層一体とされた合成樹脂またはゴム材に繊維材を混合してなるコンパウンド層と、コンパウンド層の内周側部分を一定幅で厚み方向に圧縮した圧扁層に被着一体とされた合成樹脂またはゴム材からなるシール環層とよりなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、自動車等の車両に対する使用者の要求は多岐に渡るようになっており、特に、静粛性に対する要求は高まっており、内燃機関だけに留まらず電装ユニット(モーター、インバータ、コンバータ、PCU(Power Control Unit)など)においても課題となっている。そして、静粛性は、上述のようなガスケットに対しても求められるようになっていた。上述のような従来のガスケットは、中央部分が厚い鋼板であり、防振防音機能が小さかった。また、このような従来のガスケットに対して、組付けスペースを十分に確保することができず、防振ゴム等を使用することができなかった。このため、従来のガスケットに対しては、車両等における振動に対して防振性及び防音性を向上させることができる構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、防振性及び防音性を向上させることができるガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスケットは、金属板と金属板の両面に被覆されているゴム層とを有し互いに対向している一対のガスケット部材と、一対のガスケット部材の間に配置されており、金属板を有するビード部材と、一対のガスケット部材のそれぞれに互いに対応する位置に設けられ、一対のガスケット部材を密封対象に取り付ける締付部材を挿通する挿通孔と、一対のガスケット部材の間に配置されており、一対のガスケット部材の厚み方向の圧縮量を規制する圧縮量規制部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、挿通孔は、一対のガスケット部材のそれぞれにおいて互いに対応する位置に設けられており、圧縮量規制部は、挿通孔の位置において一対のガスケット部材のそれぞれの間に配置されている。
【0008】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、締付部材は、挿通孔に挿通される軸状の部材であり密封対象に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ山が形成されている雄ネジ部と、雄ネジ部の一端に設けられているネジ頭と、雄ネジ部とネジ頭との間にネジ山が形成されていない段部と、を備え、圧縮量規制部は、締付部材の前記段部である。
【0009】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、圧縮量規制部は、厚み方向に所定の厚みを有する部材であり、挿通孔の位置において締付部材を挿通可能な貫通孔が設けられている。
【0010】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、一対のガスケット部材を連結する連結部材を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガスケットによれば、防振性及び防音性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示すための正面図である。
【
図2】
図1に示すガスケットのA-A断面図である。
【
図3】
図1に示すガスケットのB-B断面図である。
【
図4】
図1に示すガスケットの使用状態を示すA-A断面図である。
【
図5】
図1に示すガスケットの使用状態において圧縮された状態を示すA-A断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示すためのA-A断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態に係るガスケットの概略構成を示すためのA-A断面図である。
【
図8】
図7に示すガスケットの使用状態を示すためのA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1の概略構成を示すための正面図である。
図2は、ガスケット1のA-A断面図である。
図3は、ガスケット1のB-B断面図である。
【0015】
以下、説明の便宜上、
図1~3におけるガスケット1の軸線である軸線Y1の方向(以下、軸線方向ともいう。)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、
図1~3におけるガスケット1の軸線Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を内周側とし、他方(矢印d方向)を外周側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上側又は下側として説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の車両等に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0016】
ガスケット1は、例えば、密封対象である内燃機関のシリンダブロック及びシリンダヘッドの空間である接合部、或いは排気マニホールド及び排気管の接合部、電装ユニット(モーター、インバータ、コンバータ、PCUなど)等、種々の2部材間の隙間を密封する役割を担っている。なお、ガスケット1が適用される対象は、上記に限られない。
【0017】
図1~
図3に示すように、ガスケット1は、金属板11と金属板21の両面(上面11u,21u、下面11b,21b)に被覆されているゴム層(上側ゴム層12u,22u、下側ゴム層12b,22b)を有し互いに対向している一対のガスケット部材(上側ガスケット部材10、下側ガスケット部材20)を備える。また、ガスケット1は、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20との間に配置されており、金属板を有するビ
ード部材40を備える。また、ガスケット1は、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20のそれぞれに互いに対応する位置に設けられ、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20を密封対象に取り付けるための締付部材として機能するボルト60を挿通する挿通孔16,26を備える。さらに、ガスケット1は、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20の間に配置されており、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20の厚み方向の圧縮量を規制する圧縮量規制部としての段部61を備える。以下、ガスケット1の構成について、具体的に説明する。
【0018】
ガスケット1の使用状態において、ガスケット1の上側(矢印a方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの一方、例えば、内燃機関のシリンダヘッド等が配置される。また、ガスケット1の使用状態において、ガスケット1の下側(矢印b方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの他方、例えば、内燃機関のシリンダブロック等が配置される。ガスケット1の使用状態については後述する。
【0019】
ガスケット1において、上側ガスケット部材10は、
図1に示すように、外形が、角部に丸みを有する長方形状に形成されており、その中央部分には、角部に丸みを有する長方形状の開口部13が形成されている。すなわち、上側ガスケット部材10は、全体として環状に形成されている。上側ガスケット部材10には、上側ガスケット部材10の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の(
図1においては2つ)位置決め部14が複数設けられている。位置決め部14には、
図3に示すように、連結部材30を貫通するための貫通孔17がそれぞれ形成されている。また、上側ガスケット部材10には、上側ガスケット部材10の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の(
図1においては6つ)ボルト受部15が複数設けられている。ボルト受部15には、
図3に示すように、ボルト60を挿通するための挿通孔16がそれぞれ形成されている。
【0020】
上側ガスケット部材10は、ラバーコーテッドメタル(以下、RCMともいう。)である。つまり、上側ガスケット部材10は、
図2に示すように、金属板11と、金属板11の上側(矢印a方向)の面である上面11uに被覆されている上側ゴム層12uと、金属板11の下側(矢印b方向)の面である下面11bに被覆されている下側ゴム層12bとを有している。
【0021】
金属板11は、例えば、鋼板、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等である。上側ゴム層12u及び下側ゴム層12bは、例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム及びシリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴム(発泡ゴムを含む)等である。
【0022】
ガスケット1において、下側ガスケット部材20は、
図1に示すように、上側ガスケット部材10と同じ又は略同じ形状である。つまり、下側ガスケット部材20は、外形が、角部に丸みを有する長方形状に形成されており、その中央部分には、角部に丸みを有する長方形状の開口部23が形成されている。すなわち、下側ガスケット部材20は、全体として環状に形成されている。
【0023】
下側ガスケット部材20には、上側ガスケット部材10の位置決め部14と軸線方向(矢印ab方向)において同じ位置に、下側ガスケット部材20の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の(
図1においては2つ)位置決め部24が複数設けられている。位置決め部24には、
図3に示すように、上側ガスケット部材10の貫通孔17と軸線方向(矢印a又はb方向)において同じ位置に、連結部材30を貫通するための貫通孔27がそれぞれ形成されている。また、下側ガスケット部材20には、下側ガスケット部材20の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する略半円状の(図
1においては6つ)ボルト受部25が複数設けられている。ボルト受部25には、上側ガスケット部材10の挿通孔16と軸線方向(矢印a又はb方向)において同じ位置に、
図3に示すように、ボルト60を挿通するための挿通孔26がそれぞれ形成されている。
【0024】
下側ガスケット部材20は、RCMである。つまり、下側ガスケット部材20は、
図2に示すように、金属板21と、金属板21の上側(矢印a方向)の面である上面21uに被覆されている上側ゴム層22uと、金属板21の下側(矢印b方向)の面である下面21bに被覆されている下側ゴム層22bを有している。
【0025】
金属板21は、例えば、鋼板、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等である。上側ゴム層22u及び下側ゴム層22bは、例えば、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム及びシリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴム(発泡ゴムを含む)等である。
【0026】
下側ガスケット部材20は、上側ガスケット部材10の下側(矢印b方向)に、上側ガスケット部材10と対向して配置されている。下側ガスケット部材20は、下側ガスケット部材20の延び方向に直交する方向である幅方向(矢印cd方向)において上側ガスケット部材10と平行又は略平行な状態で保持されている。
【0027】
ガスケット1において、連結部材30は、
図3に示すように、上側ガスケット部材10の上側ゴム層12uの上側(矢印a方向)に上側かしめ部31を有しており、下側ガスケット部材20の下側ゴム層22bの下側(矢印b方向)に下側かしめ部32を有している。連結部材30は、上側ガスケット部材10の貫通孔17及び下側ガスケット部材20の貫通孔27に挿通されて固定されており、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20とを位置決めして保持している。連結部材30は、例えば、リベットである。
【0028】
ガスケット1において、ビード部材40は、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20と同様に、外形が、角部に丸みを有する長方形状に形成されており、その中央部分には、角部に丸みを有する長方形状の開口部が形成されている。すなわち、ビード部材40は、全体として環状に形成されている。
【0029】
ビード部材40は、
図2に示すように、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20との間、すなわち、上側ガスケット部材10の下側(矢印b方向)であって下側ガスケット部材20の上側(矢印a方向)に配置されている。ビード部材40の下側(矢印b方向)の面である下面40bは、下側ガスケット部材20の上側ゴム層22uの上側(矢印a方向)の面である上面22uuと当接している。
【0030】
ビード部材40の幅方向(矢印cd方向)における幅(ビード部材40の延び方向に直交する方向の幅)は、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20の幅方向(矢印cd方向)における幅よりも小さくなっている。ビード部材40は、金属板41により形成されている。金属板41は、例えば、鋼板、ステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等である。
【0031】
ビード部材40は、上側(矢印a方向)に向かって凸のフルビード部42と、フルビード部42を挟んでビード部材40の両側(内周側(矢印c方向)及び外周側(矢印d方向))が上側(矢印a方向)に形成された平坦な面である平面部43とを全周に渡って有している。具体的に、フルビード部42は、幅方向(矢印cd方向)において両側の平面部43の間、例えばビード部材40の中央部分において、下側ガスケット部材20の側から上側ガスケット部材10の側に向かって膨らむように断面視円弧状に形成されている。フルビード部42は、フルビード部42の軸線方向(矢印ab方向)における頂部分である
頂部42aにおいて、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下側(矢印b方向)の面である下面12bbと当接している。
【0032】
図3に示すように、ビード部材40は、上側ガスケット部材10の位置決め部14及び下側ガスケット部材20の位置決め部24と軸線方向(矢印ab方向)において同じ位置に、平面部43の外周面から外周側(矢印d方向)に向かって突出する位置決め部45が複数設けられている。位置決め部45には、
図3に示すように、上側ガスケット部材10の貫通孔17及び下側ガスケット部材20の貫通孔27と軸線方向(矢印a又はb方向)において同じ位置に、連結部材30を貫通するための貫通孔44が形成されている。
【0033】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1は、ビード部材40が、上側(矢印a方向)に向かって凸のフルビード部42を全周に渡って有している。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1は、フローティング構造を有している。
【0034】
図1及び
図2に示すように、ボルト60は、段部61、ネジ頭62、雄ネジ部63、下側境界部64、及び上側境界部65を有する。ボルト60は、軸線方向(矢印a又はb方向)を長手方向とすると、一端に設けられているネジ頭62から順に他端に向けて、軸状に形成されている段部61及び雄ネジ部63が
図2においてb方向に配置されている。段部61は、雄ネジ部63とは径が異なり、ネジ山が形成されていない。つまり、ボルト60は、いわゆる段付きボルトである。段部61の長さ(厚み方向の寸法)は、後述するように、密封対象の厚み方向の寸法、及びガスケット1の厚み方向の寸法、及びガスケット1の圧縮量によって所定の値に定められている。なお、本発明において、段部61に対応する圧縮量規制部は、下側境界部64により締付部材の締付方向(ガスケットの圧縮方向)の圧縮量を規制することができればよいため、雄ネジ部と径が異ならず、単にネジ山が形成されていないものであってもよい。
【0035】
ネジ頭62は、ボルト60をレンチやドライバーなどの締付工具によって締め付ける作業ができるように、例えば
図1に示すように頂部に六角穴が形成されている。なお、ネジ頭62の形状は、上述の例には限定されず、例えば十字穴などが形成されているものであってもよく、ネジ頭の形状を六角形に形成したものであってもよい。ネジ頭62は、段部61及び雄ネジ部63とは径が異なり、段部61(軸部分)との境界の首部分に上側境界部65が形成されている。なお、ネジ頭62の形状、及び雄ネジ部63のネジ山の形状は、上述の例には限定されず、適宜な形状を採用することができる。ボルト60は、使用状態において、ガスケット1において上側ガスケット部材10のボルト受部15に設けられている挿通孔16及び下側ガスケット部材20のボルト受部25に設けられている挿通孔26に挿通される。
【0036】
次に、ガスケット1の使用状態について説明する。
図4は、ガスケット1の使用状態を示すA-A断面図である。
図4に示すように、ガスケット1の使用状態において、ガスケット1の上側(矢印a方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの一方、例えば、内燃機関のシリンダヘッド等でなる一方筐体50が配置されている。一方筐体50には、ボルト60の雄ネジ部63と段部61とを挿通可能な径を有するボルト挿通孔52が形成されている。ボルト挿通孔52は、上側ガスケット部材10の挿通孔16及び下側ガスケット部材20の挿通孔26と軸線方向(矢印a又はb方向)において同じ位置に形成されている。また、
図4においては、ガスケット1の下側(矢印b方向)に、自動車等の車両における密封対象である2部材のうちの他方、例えば、内燃機関のシリンダブロック等でなる他方筐体51が配置されている。他方筐体51には、ボルト60の雄ネジ部63と螺合可能な径及びネジ山形状を有するネジ孔である雌ネジ部53が形成されている。雌ネジ部53は、一方筐体50のボルト挿通孔52、上側ガスケット部材10の挿通孔16及び下側ガスケット部材20の挿通孔2
6と軸線方向(矢印a又はb方向)において同じ位置に形成されている。
【0037】
図4では、ガスケット1を一方筐体50と他方筐体51との間に介在させている状態である。この状態において、ボルト60は、雄ネジ部63と段部61とが、一方筐体50の上側から下側に向けてボルト挿通孔52に挿通され、雄ネジ部63が他方筐体51の雌ネジ部53に螺合している。この状態において、ボルト60に設けられている段部61は、一方筐体50のボルト挿通孔52と、ガスケット1Bの上側ガスケット部材10の挿通孔16及び下側ガスケット部材20の挿通孔26とにより形成されている空間に配置されている。また、この状態において、ガスケット1のビード部材40は、圧縮されておらず、フルビード部42の頂部42aのみが上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下側(矢印b方向)の面である下面と当接している。
【0038】
なお、この状態において、一方筐体50の上側の面である表面50uから他方筐体51の上側の面である表面51uまでの距離をD1とする。また、この状態において、ビード部材40の圧縮方向の寸法、すなわち、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbと下側ガスケット部材20の上側ゴム層22uの上面22uuの距離をG1とする。
【0039】
図5は、
図2に示すガスケット1が圧縮された状態を示すA-A断面図である。ボルト60を一方筐体50及び他方筐体51に締め付けることによりガスケット1が圧縮されると、ビード部材40のフルビード部42が上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbに押し付けられて弾性変形する。このとき、ボルト60に段部61が設けられているため、フルビード部42の軸線方向(矢印ab方向)における圧縮量を制御することができ、段部61の下側境界部64が他方筐体51の表面51uに接し、ネジ頭62の上側境界部65が一方筐体50の表面50uに接する。この結果、フルビード部42の圧縮・復元時において、フルビード低剛性領域におけるバネ剛性を利用することができる。
【0040】
なお、
図5に示す状態において、一方筐体50の上側の面である表面50uから他方筐体51の上側の面である表面51uまでの距離をD2とする。また、この状態において、ビード部材40の圧縮方向の寸法、すなわち、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbと下側ガスケット部材20の上側ゴム層22uの上面22uuの距離をG2とする。表面50uから表面51uまでの距離は、ボルト60を締め付けることで、
図4に示したD1からD2に変化する。また、この状態において、ビード部材40の圧縮方向の寸法も、
図4に示したG1からG2に変化する。この状態において、表面50uから表面51uまでの距離D2が、ボルト60の段部61の軸方向の長さL1によって規制されているため、ビード部材40の圧縮方向の寸法G2もボルト60の段部61の下側境界部64、及びネジ頭62の上側境界部65によって規制されている。
【0041】
すなわち、ボルト60の段部61は、フルビード部42の圧縮時及び復元時における低バネ剛性を利用したシム機能を有している。バネ剛性が低いほど良好な防振防音特性が得られるため、これにより、組付けスペースを十分に確保することができず、防振ゴム等を使用することができない場合であっても、ガスケット1により、自動車の車両等における振動に対して防振性及び防音性を向上させることができる。
【0042】
また、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1は、ガスケット1が圧縮されたときに、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbがビード部材40のフルビード部42及び平面部43に当接するため、ゴムの減衰性能を得ることができる。また、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1は、ガスケット1が圧縮されたときに、上側ガスケット部材10の上側ゴム層12u及び下側ゴム層12b、並びに下側ガスケ
ット部材20の上側ゴム層22u及び下側ゴム層22bが設けられているため、ゴムの減衰性能を得ることができる。このため、自動車の車両等における振動に対して防振性及び防音性を更に向上させることができる。
【0043】
また、ガスケット1は、シム機能を圧縮量規制部として機能する段部61によって得ることができるため、段部61の軸方向の長さを適宜選択することによって、ビード部材40の圧縮量を適宜設定することができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット1Aについて説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係るガスケット1と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット1Aの概略構成を示すA-A断面図である。第2の実施の形態において、ガスケット1Aは、上側ガスケット部材10及び下側ガスケット部材20を複数(
図6においては2つ)有している。これにより、ガスケット1Aによれば、ガスケット1Aが圧縮されたときに、ゴムの減衰性を更に得ることができるため、自動車の車両等における振動に対して防振性及び防音性を更に向上させることができる。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るガスケット1Bの構成を説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係るガスケット1と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0047】
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るガスケット1Bの概略構成を示すためのA-A断面図である。第3の実施の形態に係るガスケット1Bは、第1の実施の形態に係るガスケット1のボルト60に代えて、ボルト70及び圧縮量規制部として機能するスペーサ80を備える。
【0048】
ボルト70は、ネジ頭72、雄ネジ部73、首部75を有する。ボルト70は、軸線方向(矢印a又はb方向)を長手方向とすると、ネジ頭72から雄ネジ部73が
図7においてb方向に配列されている。ボルト70は、段部61、下側境界部64、及び上側境界部65を有しない点が、先に説明したボルト60と相違する。つまり、ボルト70は、いわゆる全ネジである。なお、ボルト70は、全ネジではなく、ガスケット1を介在させて一方筐体50と他方筐体51とを締め付けるために必要な雄ネジ部73の長さがあればよい。
【0049】
スペーサ80は、内周面81、下側境界部82、上側境界部83を有する。スペーサ80は、内周面81が貫通孔である中空の柱状部材である。スペーサ80は、一方筐体50のボルト挿通孔52に挿入可能な径及び形状を有する。スペーサ80は、具体的には、ボルト挿通孔52が丸穴の貫通孔である場合には、ボルト挿通孔52の径よりも僅かに小径の中空円柱形状に形成されている。なお、圧縮量規制部として機能するスペーサ80の形状は、上述の例には限定されない。
【0050】
次に、ガスケット1Bの使用状態について説明する。
図8は、ガスケット1Bの使用状態を示すためのA-A断面図である。
図8に示すように、先に説明したガスケット1の使用状態と同様に、ガスケット1Bの使用状態において、ガスケット1の上側(矢印a方向)に、密封対象である2部材のうちの一方筐体50が配置されている。また、ガスケット1の下側(矢印b方向)に、密封対象である2部材の
うちの他方筐体51が配置されている。この状態において、一方筐体50のボルト挿通孔52と、ガスケット1Bの上側ガスケット部材10の挿通孔16及び下側ガスケット部材20の挿通孔26とにより形成されている空間には、スペーサ80が挿通される。スペーサ80は、他方筐体51の表面51uと下側境界部82とが当接して、ボルト挿通孔52、挿通孔16,26により形成されている上記空間の内部に配置されている。ボルト70は、スペーサ80を配置した後、一方筐体50の上側から下側に向けて、雄ネジ部73が挿入される。雄ネジ部73は、他方筐体51の雌ネジ部53に螺合可能である。
【0051】
なお、この状態において、先に説明したガスケット1と同様に、一方筐体50の上側の面である表面50uから他方筐体51の上側の面である表面51uまでの距離をD1とする。また、この状態において、ビード部材40の圧縮方向の寸法、すなわち、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbと下側ガスケット部材20の上側ゴム層22uの上面22uuの距離をG1とする。
【0052】
この状態において、ボルト70を一方筐体50及び他方筐体51に締め付けることによりガスケット1Bが圧縮されると、ビード部材40のフルビード部42が上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbに押し付けられて弾性変形する。このとき、ボルト70が挿通されるボルト挿通孔52、挿通孔16,26により形成されている上記空間の内部にはスペーサ80が設けられているため、フルビード部42の軸線方向(矢印ab方向)における圧縮量を制御することができ、スペーサ80の下側境界部82が他方筐体51の表面51uに接し、スペーサ80の上側境界部83が一方筐体50の表面50uに接する。この結果、フルビード部42の圧縮・復元時において、フルビード低剛性領域におけるバネ剛性を利用することができる。
【0053】
なお、ガスケット1Bにおいて、表面50uから表面51uまでの距離は、ボルト70を締め付けることで、
図8に示したD1から短くなる。また、ガスケット1Bにおいて、ビード部材40の圧縮方向の寸法も、
図8に示したG1から短くなる。この状態において、表面50uから表面51uまでの距離は、スペーサ80の軸方向の長さ(厚み方向の寸法)L1によって規制されている。同様に、ビード部材40の圧縮方向の寸法も、スペーサ80によって規制されている。
【0054】
すなわち、スペーサ80は、ボルト70と組み合わせて用いることにより、フルビード部42の圧縮時及び復元時における低バネ剛性を利用したシム機能を有している。バネ剛性が低いほど良好な防振防音特性が得られるため、これにより、組付けスペースを十分に確保することができず、防振ゴム等を使用することができない場合であっても、ガスケット1Bにより、自動車の車両等における振動に対して防振性及び防音性を向上させることができる。
【0055】
また、ガスケット1Bは、ガスケット1Bが圧縮されたときに、上側ガスケット部材10の下側ゴム層12bの下面12bbがビード部材40のフルビード部42及び平面部43に当接するため、ゴムの減衰性能を得ることができる。また、ガスケット1Bは、ガスケット1Bが圧縮されたときに、上側ガスケット部材10の上側ゴム層12u及び下側ゴム層12b、並びに下側ガスケット部材20の上側ゴム層22u及び下側ゴム層22bが設けられているため、ゴムの減衰性能を得ることができる。このため、自動車の車両等における振動に対して防振性及び防音性を更に向上させることができる。
【0056】
また、ガスケット1Bは、シム機能をスペーサ80によって得ることができるため、ボルト70が通常用いられるボルトと同様のものを用いることができる。また、ガスケット1Bは、スペーサ80の軸方向の長さを適宜選択することによって、ビード部材40の圧縮量を適宜設定することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0058】
例えば、本発明の実施の形態に係るガスケット1においては、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20とを連結する連結部材30としてリベットを用いた場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、種々の方法で上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20とを連結してもよい。例えば、上側ガスケット部材10の位置決め部14と下側ガスケット部材20の位置決め部24とを溶接により連結してもよい。また、下側ガスケット部材20の位置決め部24にスリットを形成して、上側ガスケット部材10の位置決め部14を挿入することで、上側ガスケット部材10と下側ガスケット部材20とを連結してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ガスケット、10…上側ガスケット部材、11…金属板、11b…下面、11u…上面、12b…下側ゴム層、12bb…下面、12u…上側ゴム層、13…開口部、14…位置決め部、15…ボルト受部、16…挿通孔、17…貫通孔、20…下側ガスケット部材、21…金属板、21b…下面、21u…上面、22b…下側ゴム層、22u…上側ゴム層、22uu…上面、23…開口部、24…位置決め部、25…ボルト受部、26…挿通孔、27…貫通孔、30…連結部材、31…上側かしめ部、32…下側かしめ部、40…ビード部材、40b…下面、40u…上面、41…金属板、42…フルビード部、42a…頂部、43…平面部、44…貫通孔、45…位置決め部、50…一方筐体、51…他方筐体、Y1…軸線