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特許7353950マスク用アウターフレームユニット、マスクユニット、バンド付きマスクユニットおよびマスク用アウターフレーム
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  • 特許-マスク用アウターフレームユニット、マスクユニット、バンド付きマスクユニットおよびマスク用アウターフレーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】マスク用アウターフレームユニット、マスクユニット、バンド付きマスクユニットおよびマスク用アウターフレーム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20230925BHJP
   A62B 18/02 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
A61M16/06 A
A62B18/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019221084
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021087749
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-537904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0112387(US,A1)
【文献】特表2009-539507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顔に装着されるマスクに取り付け可能なマスク用アウターフレームと、
前記患者の顔に当接可能なパッドと、
を備えるマスク用アウターフレームユニットであって、
前記マスク用アウターフレームは、前記パッドを前記患者の額に当接させるように配置された額当て部を有し、
前記額当て部には、前記パッドを着脱可能であり、かつ前記パッドの前記額当て部に対する角度および前記額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能な調整部が設けられており
前記調整部は、所定の方向に沿って延びている係合凹部を含み前記パッドを装着するための装着部を備え、
前記係合凹部は、前記パッドが装着されたまま前記所定の方向にスライド可能となるように構成されている、マスク用アウターフレームユニット。
【請求項2】
前記調整部は、前記パッドを装着するための複数の前記装着部から構成されている、請求項1に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項3】
前記複数の装着部における前記装着部は、左右一対の装着部位の組を含み、
前記装着部の各々は、前記額当て部において、上下方向に並んで配置されている、請求項2に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項4】
複数の前記装着部は、前記パッドが移動可能になるように、連続して形成されている、請求項2または3に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項5】
前記パッドは、前記パッドを前記係合凹部に係合させるための係合凸部を備えている、請求項1からのいずれか一項に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項6】
前記係合凹部は貫通孔である、請求項1から5のいずれか一項に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項7】
前記係合凹部は、前記係合凹部の径が前記パッドに向けて大きくなるように形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のマスク用アウターフレームユニット。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のマスク用アウターフレームユニットと、
前記患者の顔に装着可能なマスクと、
を備える、マスクユニット。
【請求項9】
請求項に記載のマスクユニットと、
前記マスクユニットに取り付け可能であって、前記患者に装着可能なバンドと、
を備える、バンド付きマスクユニット。
【請求項10】
患者の顔に装着されるマスクに取り付け可能なマスク用アウターフレームであって、
前記マスク用アウターフレームは、
前記患者の顔に当接可能なパッドを前記患者の額に当接させるように配置された額当て部を有し、
前記額当て部には、前記パッドを着脱するための調整部が設けられており、
前記調整部は、前記パッドの前記額当て部に対する角度および前記額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能であ
前記調整部は、所定の方向に沿って延びている係合凹部を含み前記パッドを装着するための装着部を備え、
前記係合凹部は、前記パッドが装着されたまま前記所定の方向にスライド可能となるように構成されている、マスク用アウターフレーム。
【請求項11】
患者の顔に装着されるマスクに取り付け可能なマスク用アウターフレームと、
前記患者の顔に当接可能なパッドと、
を備えるマスク用アウターフレームユニットであって、
前記マスク用アウターフレームは、前記パッドを前記患者の額に当接させるように配置された額当て部を有し、
前記額当て部には、前記パッドを着脱可能であり、かつ前記パッドの前記額当て部に対する角度および前記額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能な調整部が設けられており、
前記調整部は、一対の係合凹部を含み前記パッドを装着するための装着部を備え、
前記一対の係合凹部の一方は、第一開口部を有することにより、前記額当て部の第一端部と一部が重なるように構成されており、
前記一対の係合凹部の他方は、第二開口部を有することにより、前記額当て部の前記第一端部とは反対側にある第二端部と一部が重なるように構成されている、マスク用アウターフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用アウターフレームユニット、マスクユニット、バンド付きマスクユニットおよびマスク用アウターフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的陽圧換気療法(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)や持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure)等により人工呼吸を行う場合、患者の顔にはマスクが装着される。このとき、マスクは患者の顔にしっかりと固定されることが望ましい。しかし、患者の顔の大きさは様々であるため、マスクを適切な位置に装着させるには、例えばマスクにおける患者の額に接する部分の位置を調整する必要がある。特許文献1は、摺動可能なスライドバーを有する前頭部支持体を備えたマスクアセンブリを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-526395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非侵襲的陽圧換気療法や持続陽圧呼吸療法等を用いて人工呼吸を行う場合、患者の顔とマスクとの間のリークを少なくするために、患者の顔においてマスクと接触する部分には強い装着圧がかかる。またマスクは、比較的長い時間、患者に装着されうる。したがって、マスクを装着している患者には、強い装着圧が同じ場所に長時間かかるため、患者に不快感を与える虞がある。特許文献1に係るマスクアセンブリは、この点において改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、簡易な構成で、患者に与える不快感を軽減することが可能なマスク用アウターフレームユニット、マスクユニット、バンド付きマスクユニットおよびマスク用アウターフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための一態様に係るマスク用アウターフレームユニットは、
患者の顔に装着されるマスクに取り付け可能なマスク用アウターフレームと、
前記患者の顔に当接可能なパッドと、
を備えるマスク用アウターフレームユニットであって、
前記マスク用アウターフレームは、前記パッドを前記患者の額に当接させるように配置された額当て部を有し、
前記額当て部には、前記パッドを着脱可能であり、かつ前記パッドの前記額当て部に対する角度および前記額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能な調整部が設けられている。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様に係るマスクユニットは、
上記マスク用アウターフレームユニットと、
前記患者の顔に装着可能なマスクと、
を備える。
【0008】
上記の目的を達成するための一態様に係るバンド付きマスクユニットは、
上記マスクユニットと、
前記マスクユニットに取り付け可能であって、前記患者に装着可能なバンドと、
を備える。
【0009】
上記の目的を達成するための一態様に係るマスク用アウターフレームは、
患者の顔に装着されるマスクに取り付け可能なマスク用アウターフレームであって、
前記マスク用アウターフレームは、
前記患者の顔に当接可能なパッドを前記患者の額に当接させるように配置された額当て部を有し、
前記額当て部には、前記パッドを着脱するための調整部が設けられており、
前記調整部は、前記パッドの前記額当て部に対する角度および前記額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能である。
【0010】
上記のような構成によれば、額当て部には、パッドを着脱可能であり、かつパッドの額当て部に対する角度および額当て部に対する位置の少なくとも一つを調整可能な調整部が設けられている。したがって、マスクまたはアウターフレームの位置を変えることなく、パッドの額当て部に対する角度や額当て部に対する位置を容易に変更することができる。
このように、上記構成によれば、簡易な構成で、患者に与える不快感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るマスクユニットの外観を例示する図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)は、額当て部に装着されるパッドの底面図である。(b)は、額当て部に装着されるパッドの後面を例示する図である。
図4】バンド付きマスクユニットの使用例を示す図である。
図5】第一変形例に係る額当て部を例示する図である。
図6】第二変形例に係る額当て部を例示する図である。
図7】第三変形例に係る額当て部を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の例について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書中および図面中で使用される「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、説明の便宜のために表示された方向であり、図示された方向に限定する意図はない。
【0013】
図1は、一実施形態に係るマスクユニット1の斜視図である。マスクユニット1は、例えば、慢性呼吸不全疾患の治療または人工呼吸において、非侵襲的陽圧式人工呼吸療法(NPPV)または持続陽圧呼吸療法(CPAP)が用いられるときに使用されうる。
【0014】
図1に例示されるように、マスクユニット1は、マスク2と、マスク用アウターフレームユニット3(以下、単にアウターフレームユニット3ともいう。)と、を備えている。マスク2は、マスク本体部21と、ホース接続部22と、クッション部材23と、を備えている。
【0015】
マスク本体部21は、患者の鼻と口に対して呼吸可能な空間を形成しつつ、患者の鼻と口とを覆う形に形成されている。マスク本体部21は、患者の鼻と口とを視認可能なように少なくとも一部が透明または半透明であって、硬質の樹脂材料から形成されることが好ましい。このような樹脂材料は、例えばポリカーボネートである。
【0016】
ホース接続部22は、筒状に形成されている。ホース接続部22は、マスク本体部21の空間を外部空間と連通させるように、マスク本体部21の下部に設けられている。ホース接続部22は、ポリカーボネート等の硬質の樹脂材料から形成されている。
【0017】
クッション部材23は、マスク本体部21における患者の顔に接触する周縁部に沿って設けられている。クッション部材23は、患者の顔に対して柔軟に変形して気密を保つことができるように、軟質の樹脂材料から形成されている。
【0018】
アウターフレームユニット3は、マスク用アウターフレーム31(以下、単にアウターフレーム31ともいう。)と、パッド32と、を備えている。
【0019】
アウターフレーム31は、取付部311と、額当て部312と、を備えている。アウターフレーム31は、ポリカーボネート等の硬質の樹脂材料から形成されている。
【0020】
取付部311は、正面視で逆Y字状であり、マスク本体部21の上部から上方、およびマスク本体部21の上部からマスク本体部21の下部の左右へ、それぞれ延びるように形成されている。取付部311は、マスク本体部21の上部と、マスク本体部21の下部の左右それぞれの箇所に取り付けられる。取付部311は、左下端部と右下端部のそれぞれに第一バンド装着部313を備えている。第一バンド装着部313は、バンド41(図4参照)を前後に挿通させて左または右に折り返させることが可能なI字状のフレーム構造を有する。
【0021】
図1に例示されるように、額当て部312は、パッド32を患者の額に当接させるように配置されている。額当て部312は、取付部311の上端に連続的に形成された板状部である。本例では、額当て部312の正面視の外形は角部が面取りされた略四角形状である。なお、額当て部312は額の形状に応じて湾曲する構成であっても良い。
【0022】
額当て部312の左右端部の中央には、それぞれ第二バンド装着部315が設けられている。第二バンド装着部315は、バンド41(図4参照)を前後に挿通させて左または右に折り返させることが可能な鉤状の係止構造を有する。
【0023】
額当て部312には、パッド32を着脱可能であり、パッド32の額当て部312に対する角度(姿勢)および位置の少なくとも一つを調整可能な調整部314が設けられている。
【0024】
本例の調整部314は、パッド32を装着するための複数の装着部である第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cから構成されている。
【0025】
第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cは、それぞれ左右一対の円形の貫通孔(装着部位,係合凹部の一例)の組を含む。第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cは、額当て部312において上下方向に並んで配置されている。上部に設けられた第一装着部316Aは、第一右貫通孔317Aと第一左貫通孔317Bを含む。中部に設けられた第二装着部316Bは、第二右貫通孔317Cと第二左貫通孔317Dを含む。下部に設けられた第三装着部316Cは、第三右貫通孔317Eと第三左貫通孔317Fを含む。各装着部316A~316Cが備える各貫通孔317A~317Fは、後述するパッド32の係合凸部322と係合可能である。
【0026】
図2は、図1におけるA-A線断面のうち、額当て部312のみを示す断面図である。図2に例示されるように、第一左貫通孔317B,第二左貫通孔317D,第三左貫通孔317Fは、それぞれ、後方へ向けて径が大きくなるように形成されている。額当て部312の後方とは、第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cのいずれかに装着されたパッド32の本体部分が配置される側である。第一左貫通孔317B,第二左貫通孔317D,第三左貫通孔317Fは、それぞれ、前端の径d1よりも後端の径d2が大きい。第一右貫通孔317A,第二右貫通孔317C,第三右貫通孔317Eも、第一左貫通孔317B,第二左貫通孔317D,第三左貫通孔317Fと同様の断面構造を有する。
【0027】
次に、図3を参照しつつ、パッド32について説明する。図3の(a)は、額当て部312に装着されるパッド32の底面図である。図3の(b)は、額当て部312に装着されるパッド32の後面を例示する図である。パッド32は、額当て部312と患者の額との間に配置される緩衝材である。パッド32は、例えば軟質の樹脂製であり、弾性変形可能である。図3の(a)に例示されるように、パッド32は、パッド本体部321と、係合凸部322と、を備えている。パッド本体部321は、その内部に複数の空洞部321a~321fを有する。パッド本体部321は、空洞部321a~321fを有しているため、前後方向に伸縮しやすい。すなわち、パッド本体部321はクッション機能を有している。なお、本実施形態に係るパッド本体部321は6個の空洞部321a~321fを有しているが、パッド本体部321がクッション機能を発揮しうるのであれば、空洞部の数はこれに限られない。またパッド本体部321は、必ずしも空洞部を有する構成でなくても良い。
【0028】
図3の(b)に例示されるように、パッド本体部321の後面は略長方形である。ただし、パッド本体部321の後面の形状は、正方形や円形等の他の形状であってもよい。
【0029】
次に、図3の(a)を参照して係合凸部322について説明する。係合凸部322は、パッド32を各装着部316A~316Cに係合させるための部位である。係合凸部322は、左右一対に設けられている。係合凸部322は、台座部323と、円柱部324と、円錐台部325と、を備えている。台座部323は山型である。台座部323はパッド本体部321と連続して形成されている。
【0030】
円柱部324は、台座部323と円錐台部325の間に配置されている。円柱部324は、台座部323および円錐台部325と連続して形成されている。円柱部324の径d3は、台座部323の前端の径d4と略等しい。円柱部324の径d3は、円錐台部325の後端の径d5よりも小さい。
【0031】
円柱部324の径d3は、各貫通孔317A~317Fの後側の径d2(図2参照)よりも小さい。円柱部324の径d3は、各貫通孔317A~317Fの前側の径d1(図2参照)と略等しい。円錐台部325の後端の径d5は、前記径d1よりも大きい。また、円柱部324の前後方向における長さL1は、額当て部312の前後方向における厚さT1(図2参照)と略等しい。
【0032】
パッド32を第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cのいずれかに装着させようとするとき、医療従事者等のユーザは、パッド32の係合凸部322のうち円錐台部325を各貫通孔317A~317Fに当てて押圧することで、円錐台部325を弾性変形させる。その結果、円錐台部325の各径は、各貫通孔317A~317Fの前側の径d1よりも小さくなる。医療従事者等のユーザが、円錐台部325を弾性変形させた状態で、円錐台部325を前方向に押圧することで、円錐台部325は各貫通孔317A~317Fのうちパッド32を挿入したい貫通孔に挿入される。つまり係合凸部322は、各貫通孔317A~317Fのうちパッド32を挿入したい貫通孔に挿入される。円錐台部325が各貫通孔317A~317Fのうちいずれかの貫通孔に挿入され、円錐台部325が挿入された貫通孔より前方に移動すると、円錐台部325は元の状態に戻る。円錐台部325の後端の径d5は、各貫通孔317A~317Fの径d1よりも大きいので、円錐台部325は各貫通孔317A~317Fに係合される。その結果、円錐台部325は、後方への移動が規制されるので、パッド32が額当て部312から後方へ抜けることが抑制される。
【0033】
次に、図4を参照しつつ、バンド付きマスクユニット10について説明する。図4は、バンド付きマスクユニット10の使用例を示す図である。バンド付きマスクユニット10は、マスクユニット1と、バンド41と、を備えている。バンド付きマスクユニット10において、バンド41は第一バンド装着部313および第二バンド装着部315にそれぞれ挿通されている。バンド41のうち、患者の頬部を通る部分は、第一バンド装着部313の後方から前方に抜けるように挿通され、左または右に折り返される。バンド41の端部41aは、例えば面ファスナーによって、患者の頬部近傍に位置するバンド41の一部に貼着される。バンド41のうち、患者の頭部を通る部分は、第二バンド装着部315の後方から前方に抜けるように挿通され、左または右に折り返される。バンド41の端部41bは、例えば面ファスナーによって、患者の頭部近傍に位置するバンド41の一部に貼着される。バンド41は、バンド付きマスクユニット10を患者の頬部および頭部に固定することができる。バンド41は伸縮性を有する材料から形成されている。そのような材料としては、例えばシリコンゴム等である。
【0034】
ここで、バンド付きマスクユニット10の使用例について説明する。はじめに、医療従事者等のユーザは、第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cのいずれかにパッド32を装着する。図4に示す例において、パッド32は、第三装着部316Cに装着されている。
【0035】
次にユーザは、患者の頬部および頭部を囲うようにバンド41を患者に装着する。これにより、パッド32が患者の額に当接した状態で、バンド付きマスクユニット10が患者に固定される。バンド付きマスクユニット10が患者に装着されると、例えば人工呼吸が開始される。
【0036】
ところで、非侵襲的陽圧換気療法や持続陽圧呼吸療法等により人工呼吸を行う場合、患者の顔にはマスクが装着される。このとき、マスクは患者の顔にしっかりと固定されるが、患者の顔とマスクとの間のリークを少なくするために、患者の顔には強い装着圧がかけられる。マスクは比較的長い時間、患者に装着される。したがって、従来のマスクを用いて人工呼吸を行うと、強い装着圧が同じ場所に長時間かかるため、患者に不快感を与えてしまう虞がある。
【0037】
マスクユニット1は、このような課題を解決するために、以下のように用いられる。人工呼吸が開始されてから所定時間を経過すると、ユーザは、パッド32の装着位置を変えるために、患者の頭部に固定されているバンド41を患者の頭部から外した後、額当て部312を前方向に移動させ、パッド32と患者の額との当接状態を解消する。例えば、パッド32の装着位置を第三装着部316Cから第二装着部316Bに変える場合、ユーザは、パッド32に対して後ろ方向に力を加える。その結果、円錐台部325は各貫通孔317A~317Fによって、円錐台部325の径が小さくなるように弾性変形する。ユーザは、円錐台部325を弾性変形させながら、パッド32を後方に引っ張ることで、第二右貫通孔317Cおよび第二左貫通孔317Dから係合凸部322を外す。これにより、パッド32は第三装着部316Cから外れる。そしてユーザは、係合凸部322の円錐台部325を弾性変形させながら、第二右貫通孔317Cおよび第二左貫通孔317Dに係合凸部322を挿入し、パッド32を第二装着部316Bに装着させる。
【0038】
上記のような構成によれば、マスク2またはアウターフレーム31の位置ではなく、パッド32の装着位置(パッド32の額当て部312に対する位置)を変えるだけで、患者に対して装着圧がかかる位置を容易に変更することができる。したがって、簡易な構成で、患者に与える不快感を軽減することができる。
【0039】
また、上記のような構成によれば、調整部314は、パッド32を装着するための複数の装着部である第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cから構成されているので、調整部314を有する額当て部312の位置は維持したまま、パッド32が患者の額に当たる位置を変えることができる。
【0040】
また、上記のような構成によれば、第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cは、それぞれ左右一対の円形の貫通孔の組を含んでおり、額当て部312において、上下方向に並んで配置されている。したがって、調整部314を有する額当て部312の位置は維持したまま、パッド32が患者の額に当たる位置を上下方向に変えることができる。
【0041】
また、上記のような構成によれば、係合凸部322はパッド32に備わっており、係合凹部として機能する貫通孔は各装着部316A~316Cに備わっている。パッド32は、各装着部316A~316Cと比べて軟質である。したがって、パッド32は、係合凸部322が各装着部316A~316Cに備わっており、かつ係合凹部として機能する貫通孔がパッド32に備わっている場合と比べ、パッド32の厚さを過剰に厚くすることなく、パッド32に要求されるクッション機能を十分に果たすための弾性変形量を確保することができる。
【0042】
また、上記のような構成によれば、第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cは、それぞれ左右一対の円形の貫通孔の組を含んでいるため、パッド32の係合凸部322を、各装着部316A~316Cに係合させやすい。
【0043】
また、上記のような構成によれば、調整部314における各貫通孔317A~317Fは、額当て部312の後方、すなわち第一装着部316A,第二装着部316B,第三装着部316Cのいずれかに装着されたパッド32の本体部分が配置される側へ向けて径が大きくなるように形成されている。したがって、パッド32が各貫通孔317A~317Fから外れにくい。
【0044】
上記実施形態において、額当て部312の構成が異なる変形例について、以下に説明する。
(第一変形例)
図5は、第一変形例に係る額当て部412を例示する図である。額当て部412は、調整部314と構成が異なる調整部414が設けられている点で額当て部312と異なる。調整部414は、第一装着部416Aと、第二装着部416Bと、第三装着部416Cと、から構成されている。
【0045】
調整部414は、第一装着部416Aと第二装着部416Bが連続して形成されており、第二装着部416Bと第三装着部416Cが連続して形成されている点で、調整部314と構成が異なる。
【0046】
第一装着部416Aの第一右貫通孔417Aおよび第一左貫通孔417Bは、それぞれ左右方向の幅が小さくなるように下方に延びて第二装着部416Bと繋がる部分を有する。第二装着部416Bの第二右貫通孔417Cおよび第二左貫通孔417Dは、それぞれ左右方向の幅が小さくなるように上方に延びて第一装着部416Aと繋がる部分を有する。第二装着部416Bの第二右貫通孔417Cおよび第二左貫通孔417Dは、それぞれ左右方向の幅が小さくなるように下方に延びて第三装着部416Cと繋がる部分を有する。第三装着部416Cの第三右貫通孔417Eおよび第三左貫通孔417Fは、それぞれ左右方向の幅が小さくなるように上方に延びて第二装着部416Bと繋がる部分を有する。
【0047】
第一装着部416Aと第二装着部416Bが繋がる部分および第二装着部416Bと第三装着部416Cが繋がる部分のそれぞれの幅W1は、パッド32の円柱部324の径d3よりも小さい。
【0048】
第一変形例に係る額当て部412において、パッド32の装着位置を変える場合、第一装着部416Aと第二装着部416Bが繋がる部分または第二装着部416Bと第三装着部416Cが繋がる部分を利用して、各装着部416A~416C間においてパッド32を移動させることができる。すなわち、パッド32を額当て部412から取り外すことなく、各装着部416A~416C間をスライドさせるだけで、パッド32の額当て部412に対する位置を調整することができる。
【0049】
(第二変形例)
図6は、第二変形例に係る額当て部512を例示する図である。額当て部512は、調整部314と構成が異なる調整部514が設けられている点で額当て部312と異なる。調整部514は、第一装着部516Aと、第二装着部516Bと、第三装着部516Cと、から構成されている。
【0050】
各貫通孔517A~517Fは、額当て部512の左または右の端部と一部が重なるように配置されている。したがって、各貫通孔517A~517Fは、左または右に開口部を有する。当該開口部の上下方向の長さは、パッド32の円柱部324の径d3よりも小さい。また、第二バンド装着部315は、第一装着部516Aと第二装着部516Bとの間に設けられている。ただし、第二バンド装着部315は、他の場所に設けられていてもよい。
【0051】
第二変形例に係る額当て部512において、パッド32の装着位置を変える場合、ユーザは、パッド32の円柱部324を弾性変形させながら、各貫通孔517A~517Fの開口部から左または右方向に外すように、すなわちパッド32の左右の係合凸部322を左右方向に広げるように、パッド32の係合凸部322を動かす。これにより、パッド32は各装着部516A~516Cのうち装着されていた箇所から外れる。そして、ユーザは、パッド32の円柱部324を弾性変形させながら、各装着部516A~516Cのうちパッド32を装着したい箇所の開口部へ、左または右方向に押し込むようにパッド32の係合凸部322を動かすことで、当該箇所にパッド32を装着することができる。ただし、額当て部512におけるパッド32の装着位置を変更する方法はこれに限られない。額当て部512におけるパッド32の装着位置は、上述した実施形態に係る方法と同様の方法により変更されてもよい。この場合、ユーザは、パッド32に対して後ろ方向に力を加え、円錐台部325を弾性変形させながら、パッド32を後方に引っ張ることで、係合凸部322が挿入されている貫通孔から係合凸部322を外す。そしてユーザは、係合凸部322の円錐台部325を弾性変形させながら、各装着部516A~516Cのうちパッド32を装着したい装着部に備わる貫通孔に係合凸部322を挿入する。
【0052】
(第三変形例)
図7は、第三変形例に係る額当て部612を例示する図である。額当て部612は、調整部314と構成が異なる調整部614が設けられている点で額当て部312と異なる。調整部614は、一つのスライド装着部616(装着部の一例)から構成されている。スライド装着部616は、額当て部612の上下端部の略中央に設けられる不連続部618を有する略一つの円周状となるように、半円弧状の右スライド溝617A(係合凹部の一例)と左スライド溝617B(係合凹部の一例)を備えている。
【0053】
右スライド溝617Aおよび左スライド溝617Bの幅W2は、パッド32の円柱部324の径d3よりも小さい。右スライド溝617Aおよび左スライド溝617Bのそれぞれには、パッド32の係合凸部322が係合される。
【0054】
第三変形例に係る額当て部612において、パッド32の装着位置を変える場合、ユーザは、パッド32の円柱部324を弾性変形させながら、スライド装着部616の円周上に沿って回転させるように、パッド32をスライド(移動)させる。すなわち、パッド32を額当て部612から取り外すことなく、スライド装着部616の右スライド溝617Aおよび左スライド溝617Bに沿ってパッド32を移動させることで、パッド32の額当て部412に対する位置および角度(姿勢)を調整することができる。
【0055】
上記の実施形態および変形例は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得る。
【0056】
上述した実施形態および変形例では、複数の係合凹部が額当て部に設けられており、パッドは二つの係合凸部を備えているがこれに限られない。例えば、額当て部の中央に一つの貫通孔(係合凹部)が設けられており、パッドは一つの係合凸部を備えていてもよい。例えば係合凸部の断面が円形である場合、パッドは貫通孔を中心として回転することができるので、ユーザは、パッドの額当て部に対する角度(姿勢)を調整することができる。
【0057】
上述した実施形態および変形例では、パッドの額当て部に対する位置またはパッドの額当て部に対する位置および角度(姿勢)が調整されているが、パッドの額当て部に対する角度(姿勢)のみが調整されてもよい。例えば、パッドが額当て部に装着されている状態において、パッドが上下方向に回動するように構成されている場合、パッドが上下方向に回動することで、パッドの額当て部に対する角度(姿勢)を調整することができる。なお、パッドの額当て部に対する角度(姿勢)を調整することができれば、額当て部の貫通孔(係合凹部)やパッドの係合凸部の数、位置、形状は限定されない。
【0058】
上述した実施形態および変形例では、係合凸部はパッドに、係合凹部は額当て部にそれぞれ設けられているが、係合凸部は額当て部に、係合凹部はパッドにそれぞれ設けられていてもよい。
【0059】
上述した実施形態および変形例において、係合凹部は貫通孔であるが、係合凹部は、有底の穴であってもよい。
【0060】
上述した実施形態および変形例において、マスク2はクッション部材23を備えているが、マスク2はクッション部材23を備えていなくてもよい。
【0061】
上述した実施形態、第一変形例および第二変形例において、各装着部は、左右方向に対をなす二つの貫通孔を有しているが、当該二つの貫通孔の間に設けられた別の貫通孔をさらに有していてもよい。この場合、各装着部は、三つの貫通孔を含む。
【0062】
第三変形例において、スライド装着部616は滑らかに湾曲する弧状の形状を有しているが、ジグザグに湾曲する弧状の形状を有していてもよい。
【0063】
上述した実施形態および変形例において、バンド41は帯状であるが、帯状に限られない。バンド41は患者の頬部または頭部に取り付けることが可能であれば、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:マスクユニット、2:マスク、3:マスク用アウターフレームユニット、10:マスクユニット、21:マスク本体部、22:ホース接続部、23:クッション部材、31:マスク用アウターフレーム、32:パッド、41:バンド、311:取付部、312,412,512,612:額当て部、313:第一バンド装着部、314,414,514,614:調整部、315:第二バンド装着部、316A,416A,516A:第一装着部、316B,416B,516B:第二装着部、316C,416C,516C:第三装着部、317A,417A,517A:第一右貫通孔、317B,417B,517B:第一左貫通孔、317C,417C,517C:第二右貫通孔、317D,417D,517D:第二左貫通孔、317E,417E,517E:第三右貫通孔、317F,417F,517F:第三左貫通孔、321:パッド本体部、322:係合凸部、323:台座部、324:円柱部、325:円錐台部、616:スライド装着部、617A:右スライド溝、617B:左スライド溝、618:不連続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7