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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】作業機械、計測方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230925BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019226408
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095709
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-082595(JP,A)
【文献】特開平05-086636(JP,A)
【文献】特開2019-066310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体と、
前記機械本体に取り付けられるブームと、
前記ブームに取り付けられるバケットと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームを駆動する第1アクチュエータと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームに対して前記バケットを駆動する第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータの推力と前記第2アクチュエータの推力とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出するコントローラと、を備え
前記第1アクチュエータはブームシリンダであり、前記第2アクチュエータはバケットシリンダであり、
前記コントローラは、前記バケットシリンダの推力と、前記バケットシリンダの延びる方向に直行する方向におけるブームピンとベルクランクを回動するピンとの間の寸法とを含むつり合いの式を生成する、作業機械。
【請求項2】
前記第1アクチュエータの一端は前記機械本体に取り付けられ、前記第1アクチュエータの他端は前記ブームに取り付けられており、
前記第1アクチュエータは油圧シリンダである、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第2アクチュエータは油圧シリンダであり、
前記第2アクチュエータのシリンダ圧力を検知する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記圧力センサにより検知されたシリンダ圧力に基づいて前記第2アクチュエータの推力を算出する、請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第2アクチュエータの推力に基づいて前記ブームに関するモーメントのつり合いの式を生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記作業機械のピッチ角度を検知する角度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記角度センサにより検知された前記ピッチ角度を考慮して前記バケット内の積荷の質量を算出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記ベルクランクは、第1端部と前記第1端部の反対側の第2端部とを有
前記第1端部が前記バケットに接続され、
前記第2アクチュエータは、第3端部と前記第3端部の反対側の第4端部とを有し、
前記第3端部は前記機械本体に取り付けられ、前記第4端部は前記ベルクランクの前記第2端部に取り付けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記ブームは前記機械本体に回転可能に取り付けられ、前記バケットは前記ブームに回転可能に取り付けられており、
前記機械本体に対する前記ブームの角度に関する情報を検知する第1センサと、
前記ブームに対する前記バケットの角度に関する情報を検知する第2センサと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1センサにより検知された前記ブームの角度に関する情報と前記第2センサにより検知された前記バケットの角度に関する情報とに基づいて前記第2アクチュエータの推力を算出する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
前記機械本体に取り付けられた車輪をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
機械本体と、前記機械本体に取り付けられるブームと、前記ブームに取り付けられるバケットと、前記機械本体に取り付けられ前記ブームを駆動する第1アクチュエータと、前記機械本体に取り付けられ前記ブームに対して前記バケットを駆動する第2アクチュエータと、を有する作業機械における前記バケット内の積荷の質量を計測する計測方法であって、
前記第1アクチュエータであるブームシリンダの推力に関する情報を取得するステップと、
前記第2アクチュエータであるバケットシリンダの推力に関する情報を取得するステップと、
前記第1アクチュエータの推力に関する情報と前記第2アクチュエータの推力に関する情報とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出するステップと、を備え
前記バケットシリンダの推力と、前記バケットシリンダの延びる方向に直行する方向におけるブームピンとベルクランクを回動するピンとの間の寸法とを含むつり合いの式を生成する、計測方法。
【請求項10】
前記作業機械のピッチ角を取得するステップをさらに備え、
前記バケット内の積荷の質量を算出するステップにおいて、取得された前記ピッチ角を考慮して前記バケット内の積荷の質量を算出する、請求項9に記載の計測方法。
【請求項11】
機械本体と、
前記機械本体に取り付けられるブームと、
前記ブームに取り付けられるバケットと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームを駆動する第1アクチュエータと、
前記機械本体に取り付けられ、前記ブームに対して前記バケットを駆動する第2アクチュエータと、を備え、
前記第1アクチュエータの推力と前記第2アクチュエータの推力とに基づいて前記バケット内の積荷の質量を算出し、
前記第1アクチュエータはブームシリンダであり、前記第2アクチュエータはバケットシリンダであり、
前記バケットシリンダの推力と、前記バケットシリンダの延びる方向に直行する方向におけるブームピンとベルクランクを回動するピンとの間の寸法とを含むつり合いの式を生成する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、計測方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業機械において、バケット内の積載重量を推定する方法が、たとえば特開2017-8633号公報(特許文献1参照)に開示されている。特許文献1では、バケット内の積載重量を推定するために、ブーム角度とボトム圧との関係を定義したリストが用いられる。このリストには、バケットが空荷の状態と、定格重量積載の状態と、定格重量の所定割合の荷が積載された状態との各々におけるブーム角度とボトム圧との関係が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-8633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における積載重量の推定方法では、上記リストに示された状態以外の重量の積荷がバケット内に積載されていると、積載重量を精度良く推定することができない。
【0005】
本開示の目的は、バケット内の積荷質量を精度良く推定できる作業機械、計測方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械は、機械本体と、ブームと、バケットと、第1アクチュエータと、第2アクチュエータと、コントローラとを備えている。ブームは、機械本体に取り付けられる。バケットは、ブームに取り付けられる。第1アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームを駆動する。第2アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームに対してバケットを駆動する。コントローラは、第1アクチュエータの推力と第2アクチュエータの推力とに基づいてバケット内の積荷の質量を算出する。
【0007】
本開示の計測方法は、作業機械におけるバケット内の積荷の質量を計測する計測方法である。作業機械は、機械本体と、機械本体に取り付けられるブームと、ブームに取り付けられるバケットと、機械本体に取り付けられブームを駆動する第1アクチュエータと、機械本体に取り付けられブームに対してバケットを駆動する第2アクチュエータと、を有している。この計測方法は、以下のステップを備えている。
【0008】
第1アクチュエータの推力に関する情報が取得される。第2アクチュエータの推力に関する情報が取得される。第1アクチュエータの推力に関する情報と第2アクチュエータの推力に関する情報とに基づいてバケット内の積荷の質量が算出される。
【0009】
本開示のシステムは、機械本体と、ブームと、バケットと、第1アクチュエータと、第2アクチュエータとを備えている。ブームは、機械本体に取り付けられる。バケットは、ブームに取り付けられる。第1アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームを駆動する。第2アクチュエータは、機械本体に取り付けられ、ブームに対してバケットを駆動する。第1アクチュエータの推力と第2アクチュエータの推力とに基づいてバケット内の積荷の質量が算出される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バケット内の積荷質量を精度良く推定できる作業機械、計測方法およびシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図2】実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
図3】実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
図4】バケット内の積荷質量を計測する際にバケットシリンダ力Fbucketを考慮した場合と考慮しない場合とにおけるバケット角度と積荷重量との関係を示す図である。
図5】実施の形態2に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。
図6】作業機の各部の寸法を説明するための図である。
図7】作業機械の前後方向が水平面に対して傾斜した状態を示す図である。
図8図7に示すように作業機械の前後方向が水平面に対して傾斜した場合におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0013】
(実施の形態1)
<作業機械の構成>
本実施の形態に係る作業機械の一例としてホイールローダの構成について図1を用いて説明する。なお本実施の形態における作業機械はホイールローダに限定されるものではない。本実施の形態の作業機械は、走行しながら掘削する車輪を有する作業機械であればよく、バックホーローダ、スキッドステアローダなどであってもよい。
【0014】
図1は、実施の形態1に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを有している。
【0015】
車体フレーム2およびキャブ5からホイールローダ1の機械本体が構成されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシートおよび操作装置などが配置されている。ホイールローダ1の機械本体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。作業機3は機械本体の前方に配置されており、機械本体の最後端にはカウンタウエイト6が設けられている。
【0016】
車体フレーム2は、前フレーム11と後フレーム12とを含んでいる。前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13はステアリングポンプ(図示せず)からの作動油で伸縮する。ステアリングシリンダ13の伸縮により、前フレーム11と後フレーム12とは互いに左右方向に揺動可能である。これにより、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更可能である。
【0017】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0018】
走行装置4は、走行輪4a、4bを含んでいる。走行輪4a、4bの各々は車輪であり、ゴムよりなるタイヤを有している。走行輪(前輪)4aは、前フレーム11に回転可能に取り付けられている。走行輪(後輪)4bは、後フレーム12に回転可能に取り付けられている。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能である。
【0019】
作業機3は、掘削などの作業を行うためのものである。作業機3は、前フレーム11に取り付けられている。作業機3は、バケット14と、ブーム15と、ベルクランク16と、チルトロッド17、ブームシリンダ18(第1アクチュエータ)と、バケットシリンダ19(第2アクチュエータ)とを含んでいる。
【0020】
ブーム15の基端部は、ブームピン21によって前フレーム11に回転自在に取付けられている。これによりブーム15は機械本体に回転可能に取り付けられている。バケット14は、バケットピン22によってブーム15の先端に回転自在に取付けられている。
【0021】
ブームシリンダ18はブーム15を駆動する。ブームシリンダ18の一端は、機械本体の前フレーム11にピン23によって回転可能に取り付けられている。これによりブームシリンダ18は、機械本体に回転可能に取り付けられている。ブームシリンダ18の他端は、ブーム15にピン24によって回転可能に取り付けられている。
【0022】
ブームシリンダ18はたとえば油圧シリンダである。ブームシリンダ18は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりブーム15が駆動し、ブーム15の先端に取り付けられたバケット14が昇降する。
【0023】
ベルクランク16は、支持ピン29によってブーム15に回転自在に支持されている。ベルクランク16は、支持ピン29の一方側に位置する第1端部と、支持ピン29に対して第1端部と反対側に位置する第2端部とを有している。ベルクランク16の第1端部はチルトロッド17を介在してバケット14に接続されている。ベルクランク16の第2端部はバケットシリンダ19を介在して機械本体の前フレーム11に接続されている。
【0024】
チルトロッド17の一端はベルクランク16の第1端部にピン27によって回転可能に取り付けられている。チルトロッド17の他端はバケット14にピン28によって回転可能に取り付けられている。
【0025】
バケットシリンダ19は、ブーム15に対してバケット14を駆動する。バケットシリンダ19は、一端(第3端部)と、一端の反対側の他端(第4端部)とを有している。バケットシリンダ19の一端は機械本体の前フレーム11にピン25によって回転可能に取り付けられている。バケットシリンダ19の他端はベルクランク16の第2端部にピン26によって回転可能に取り付けられている。
【0026】
バケットシリンダ19はたとえば油圧シリンダである。バケットシリンダ19は、作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮する。これによりバケット14が駆動し、バケット14がブーム15に対して上下に回動する。
【0027】
ホイールローダ1は、ブームシリンダ18の推力Fboom(ブームシリンダ力)に関する情報を検知するセンサと、バケットシリンダ19の推力Fbucket(バケットシリンダ力)に関する情報を検知するセンサとをさらに有している。
【0028】
ブームシリンダ18の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ31b、31hである。圧力センサ31b、31hの各々は、ブームシリンダ18のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ31bは、ブームシリンダ18のボトム圧を検知する。圧力センサ31hは、ブームシリンダ18のヘッド圧を検知する。
【0029】
ヘッド圧とは油圧シリンダのピストンに対してシリンダーロッド側の圧力を意味し、ボトム圧とはピストンに対してチューブ側の圧力を意味する。
【0030】
バケットシリンダ19の推力に関する情報を検知するセンサは、たとえば圧力センサ32b、32hである。圧力センサ32b、32hの各々は、バケットシリンダ19のシリンダ圧力を検知する。圧力センサ32bは、バケットシリンダ19のボトム圧を検知する。圧力センサ32hは、バケットシリンダ19のヘッド圧を検知する。
【0031】
ホイールローダ1は、作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサをさらに有している。作業機3の姿勢に関する情報を検知するセンサは、たとえばブーム角度に関する情報を検知する第1センサと、ブームに対するバケット角度に関する情報を検知する第2センサとを含む。
【0032】
作業機3の姿勢に関する情報とは、寸法L1および寸法L4である。寸法L1は、ブームピン21とピン23との間の寸法であって、ブームシリンダ18の延びる方向に直交する方向の寸法である。寸法L4は、ブームピン21とピン26との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向の寸法である。
【0033】
ブーム角度は、機械本体の前フレーム11に対するブーム15の角度である。バケット角度は、ブーム15に対するバケット14の角度である。
【0034】
ブーム角度に関する情報を検知する第1センサは、たとえばポテンショメータ33である。ポテンショメータ33は、ブームピン21と同心となるように取り付けられている。ブーム角度に関する情報を検知する第1センサとして、ポテンショメータ33に代えて、ブームシリンダ18のストロークセンサ35が用いられてもよい。
【0035】
またブーム角度に関する情報を検知する第1センサとして、IMU(Inertial Measurement Unit)37、または撮像デバイス(たとえばカメラ)39が用いられてもよい。IMU37は、たとえばブーム15に取り付けられている。撮像デバイス39は、機械本体(たとえばキャブ5)に取り付けられている。
【0036】
バケット角度に関する情報を検知する第2センサは、たとえばポテンショメータ34である。ポテンショメータ34は、支持ピン29と同心となるように取り付けられている。バケット角度に関する情報を検知する第2センサとして、ポテンショメータ34に代えて、バケットシリンダ19のストロークセンサ36が用いられてもよい。
【0037】
またバケット角度に関する情報を検知する第2センサとして、IMU38、または撮像デバイス39が用いられてもよい。IMU38は、たとえばチルトロッド17に取り付けられている。
【0038】
上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、作業機3の重心GC1の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。作業機3の重心GC1の位置に関する情報とは、寸法L2である。
【0039】
寸法L2は、重心GC1とブームピン21との間の寸法L2であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法L2は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC1とブームピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0040】
また上記のポテンショメータ33、34、ストロークセンサ35、36、IMU37、38、および撮像デバイス39は、バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報を検知するセンサとして用いられてもよい。バケット14内の積荷の重心GC2の位置に関する情報とは、寸法L3である。
【0041】
寸法L3は、重心GC2とブームピン21との間の寸法L3であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。寸法L3は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、重心GC2とブームピン21との間の水平方向に沿う寸法である。
【0042】
またホイールローダ1は、角度センサ40をさらに有していてもよい。角度センサ40は、基準である重力方向に垂直な方向(水平面)に対する機械本体の傾斜角度(ピッチ角度)を検知する。この角度センサ40として、たとえば機械本体に取り付けられたIMUが用いられてもよい。角度センサ40は、機械本体に取り付けられていれば、前フレーム11、後フレーム12およびキャブ5のいずれに取り付けられていてもよい。
【0043】
<コントローラの機能ブロック>
次に、図1に示す作業機械1のバケット14内の積荷質量を計測するコントローラ50の機能ブロックについて図2を用いて説明する。
【0044】
図2は、図1に示す作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。図2に示されるように、コントローラ50は、ブームシリンダ力算出部50aと、バケットシリンダ力算出部50bと、作業機姿勢算出部50cと、重心位置算出部50dと、ブームに関するモーメントのつり合い式生成部50eと、積荷質量算出部50fと、記憶部50gとを有している。
【0045】
ブームシリンダ力算出部50aは、圧力センサ31b、31hにより検知されたシリンダ圧力に基づいてブームシリンダ力Fboomを算出する。具体的には、ブームシリンダ力算出部50aは、圧力センサ31bから取得したブームシリンダ18のボトム圧と、圧力センサ31hから取得したからヘッド圧とに基づいてブームシリンダ力Fboomを算出する。ブームシリンダ力算出部50aは、取得したブームシリンダ18のボトム圧のみからブームシリンダ力Fboomを算出してもよい。ブームシリンダ力算出部50aは、算出したブームシリンダ力Fboomを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0046】
バケットシリンダ力算出部50bは、圧力センサ32b、32hにより検知されたシリンダ圧力に基づいてバケットシリンダ力Fbucketを算出する。具体的には、バケットシリンダ力算出部50bは、圧力センサ32bから取得したバケットシリンダ19のボトム圧と、圧力センサ32hから取得したからヘッド圧とに基づいてバケットシリンダ力Fbucketを算出する。バケットシリンダ力算出部50bは、取得したバケットシリンダ19のボトム圧のみからバケットシリンダ力Fbucketを算出してもよい。バケットシリンダ力算出部50bは、算出したバケットシリンダ力Fbucketを、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0047】
作業機姿勢算出部50cは、ブーム角度に関する情報を第1センサ(ポテンショメータ33、ストロークセンサ35、IMU37、撮像デバイス39など)から取得する。作業機姿勢算出部50cは、バケット角度に関する情報を第2センサ(ポテンショメータ34、ストロークセンサ36、IMU38、撮像デバイス39など)から取得する。
【0048】
作業機姿勢算出部50cは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて寸法L1および寸法L4を算出する。作業機姿勢算出部50cは、算出した寸法L1、L4を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0049】
重心位置算出部50dは、ブーム角度に関する情報を第1センサ(ポテンショメータ33、ストロークセンサ35、IMU37、撮像デバイス39など)から取得する。重心位置算出部50dは、バケット角度に関する情報を第2センサ(ポテンショメータ34、ストロークセンサ36、IMU38、撮像デバイス39など)から取得する。
【0050】
重心位置算出部50dは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、寸法L2および寸法L3を算出する。重心位置算出部50dは、算出した寸法L2、L3を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0051】
記憶部50gは、作業機3全体の質量M1、重力加速度gなどを記憶している。記憶部50gには、コントローラ50外部の入力部51から質量M1、重力加速度gなどの情報が入力されてもよい。記憶部50gは、コントローラ50に含まれておらず、コントローラ50の外部に配置されていてもよい。
【0052】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、記憶部50gから作業機3全体の質量M1と重力加速度gとを取得する。
【0053】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、取得したシリンダ力Fboom、Fbucketと、寸法L1~L4と、質量M1、M2と、重力加速度gとから、ブームに関するモーメントのつり合いの式(1)を生成する。
【0054】
【数1】
【0055】
式(1)におけるシリンダ力Fboom、Fbucketの単位はNであり、寸法L1~L4の単位はmである。また質量M1、M2の単位はkgであり、重力加速度gの単位はm/s2である。
【0056】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、式(1)を積荷質量算出部50fへ出力する。
【0057】
積荷質量算出部50fは、式(1)を以下の式(2)のように質量M2について解く。これにより積荷質量算出部50fは、バケット14内の積荷の質量M2を算出することができる。
【0058】
【数2】
【0059】
上式(2)に示されるように、コントローラ50は、ブームシリンダ力Fboomと、バケットシリンダ力Fbucketと、寸法L1~L4と、質量M1と、重力加速度gとに基づいて、質量M2を算出する。
【0060】
積荷質量算出部50fは、算出した質量M2をコントローラ50外の表示部52に出力する。表示部52は、たとえばキャブ5(図1)内に配置されていてもよく、またホイールローダ1から離れた遠隔地に配置されていてもよい。表示部52は、算出した質量M2または重量M2×gを画面に表示する。これによりキャブ5内でホイールローダ1を操作するオペレータ、遠隔地でホイールローダ1の動作を監視する監視者などがバケット14内の積荷質量M2または積荷重量M2×gを認識することができる。
【0061】
なお入力部51および表示部52の各々は、コントローラ50と有線で接続されていてもよく、また無線で接続されていてもよい。
【0062】
式(1)においては作業機3全体をひとまとめにしてバケット14内の積荷質量M2を算出したが、以下の式(3)に示すようにバケット14、ブーム15、ベルクランク16などの個々の部品のモーメントを計算し、それらのモーメントを合算してもよい。
【0063】
【数3】
【0064】
この場合、式(3)のM1g×L2が、式(2)のM1g×L2として代入される。これにより上記と同様、バケット14内の積荷の質量M2が算出される。
【0065】
<積荷質量M2の計測方法>
次に、本実施の形態に係る積荷質量M2の計測方法について図1図3を用いて説明する。図3は、実施の形態1に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法の一の例を示すフロー図である。
【0066】
まずブーム角度に関する情報が第1センサにより計測される。ブーム角度に関する情報は、たとえば図1に示されるポテンショメータ33により計測される。ポテンショメータ33は、機械本体の前フレーム11に対するブーム15の回転角度を計測する。
【0067】
ブーム角度に関する情報は、ストロークセンサ35により計測されるブームシリンダ18のストローク長さであってもよい。またブーム角度に関する情報は、IMU37により計測されるブーム15の3軸の角度(または角速度)および加速度であってもよく、また撮像デバイス39により撮像される画像であってもよい。
【0068】
上記のように第1センサにより計測されたブーム角度に関する情報は、図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1a:図3)。
【0069】
またバケット角度に関する情報が第2センサにより計測される。バケット角度に関する情報は、たとえば図1に示されるポテンショメータ34により計測される。ポテンショメータ34は、ブーム15に対するベルクランク16の回転角度を計測する。
【0070】
バケット角度に関する情報は、ストロークセンサ36により計測されるバケットシリンダ19のストローク長さであってもよい。またバケット角度に関する情報は、IMU38により計測されるチルトロッド17の3軸の角度(または角速度)および加速度であってもよく、また撮像デバイス39により撮像される画像であってもよい。
【0071】
上記のように第2センサにより計測されたバケット角度に関する情報は、図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1b:図3)。
【0072】
またシリンダ圧力が計測される。シリンダ圧力は、図1に示されるブームシリンダ18およびバケットシリンダ19の各々のシリンダ圧力である。ブームシリンダ18のボトム圧は圧力センサ31bにより計測され、ヘッド圧は圧力センサ31hにより計測される。バケットシリンダ19のボトム圧は圧力センサ32bにより計測され、ヘッド圧は圧力センサ32hにより計測される。
【0073】
上記のように計測された複数のシリンダ圧力は、図2に示されるコントローラ50により取得される(ステップS1c:図3)。
【0074】
この後、コントローラ50は、取得したブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、作業機3の姿勢に関する寸法L1、L4と、積荷重心GC2の位置を表す寸法L3と、作業機3の重心GC1の位置を表す寸法L2とを算出する(ステップS2:図3)。
【0075】
寸法L1、L4の各々は、図2における作業機姿勢算出部50cにより算出される。寸法L2、L3は、図2における重心位置算出部50dにより算出される。
【0076】
さらにコントローラ50は、取得したシリンダ圧力に基づいて、ブームシリンダ力Fboomと、バケットシリンダ力Fbucketとを算出する(ステップS3:図3)。ブームシリンダ力Fboomは、図2におけるブームシリンダ力算出部50aにより算出される。バケットシリンダ力Fbucketは、図2におけるバケットシリンダ力算出部50bにより算出される。
【0077】
この後、コントローラ50は、バケット4内の積荷の質量M2を算出する(ステップS4:図3)。積荷質量M2の算出は、上記により算出された寸法L1~L4およびシリンダ力Fbucket、Fboomと、図2の記憶部に記憶された作業機3全体の質量M1および重力加速度gとを、上式(2)に代入することにより行なわれる。積荷質量M2の算出は、図2における積荷質量算出部50fにより行われる。
【0078】
以上によりバケット14内の積荷の質量M2がコントローラ50により算出される。
なお寸法L1~L4の算出(ステップS2)と、シリンダ力Fboom、Fbucketの算出(ステップS3)との順序は図3に示された順序に限定されるものではない。寸法L1~L4の算出(ステップS2)が、シリンダ力Fboom、Fbucketの算出(ステップS3)の後で行なわれてもよい。また寸法L1~L4の算出(ステップS2)と、シリンダ力Fboom、Fbucketの算出(ステップS3)とは同時に行なわれてもよい。
【0079】
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について図4を用いて説明する。
【0080】
図4は、バケット内の積荷質量を計測する際にバケットシリンダ力Fbucketを考慮した場合と考慮しない場合とにおけるバケット角度と積荷質量との関係を示す図である。
【0081】
図4に示されるように、バケットシリンダ力Fbucketを考慮せずに積荷重量を算出した場合、バケット14内の積荷に実際には変化がないにもかかわらず、フルダンプ状態からフルチルト状態までの間で算出された積荷重量は一点鎖線で示すように変化する。これはブーム15に対するバケット14の位置が変化することにより、ブームシリンダ18およびバケットシリンダ19に作用する力が変化し、それに伴って各シリンダの反力が変化したためと考えられる。このようにバケットシリンダ力Fbucketを考慮せずに積荷重量を算出した場合には、バケット14がフルチルト状態にあるとき以外は積荷重量を正確に算出することができない。
【0082】
バケット14のチルト状態とは、ダンプ状態と比較してバケット14の前端が持ち上がるようにバケット14がブーム15に対して回動した状態を意味する。フルチルト状態とは、バケット14がチルト側ストッパで停止するまでバケット14の前端が持ち上がった状態を意味する。またフルダンプ状態とは、バケット14がダンプ側ストッパで停止するまでバケット14の前端が下がった状態を意味する。
【0083】
なおバケット14がフルダンプ状態にあるときには、実際にはバケット14内の積荷はバケット14から排出される。図4は、バケット14がフルダンプ状態になっても積荷がバケット14内から排出されない場合を想定した算出結果を示している。
【0084】
これに対して本実施の形態においては、ブームシリンダ力Fboomとバケットシリンダ力Fbucketとに基づいて積荷質量M2が算出される。このように積荷質量M2の算出に際し、シリンダ力Fboomだけでなくバケットシリンダ力Fbucketも考慮される。このためブーム15に対するバケット14の位置が変化した場合でも、図4の実線で示すように積荷質量M2を精度よく算出することが可能となる。
【0085】
上記により、ブーム15に対するバケット14のあらゆる角度において積荷質量M2の精度が向上する。このため、ダンプトラックなどへの最終往復時にバケット内の積載量を調整して、その量をリアルタイムで確認する、いわゆるチップオフ操作時における積荷質量M2の精度が向上する。
【0086】
また本実施の形態においては、上式(2)に示されるようにモーメントのつり合いの式にブームシリンダ力Fboomだけでなくバケットシリンダ力Fbucketも含まれている。このためバケット14内の積荷質量を一旦算出した後にバケット14の角度の影響を補正するための較正が不要となる。これによりバケット14内の積荷質量M2を簡易かつ精度良く算出することが可能となる。
【0087】
また本実施の形態においては、少なくとも圧力センサ32bにより計測されたバケットシリンダ19のボトム圧に基づいてバケットシリンダ力Fbucketが算出される。このためバケットシリンダ力Fbucketを直接的に求めることができる。
【0088】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、計測したバケットシリンダ19のシリンダ圧力からバケットシリンダ力Fbucketを算出する場合について説明したが、バケットシリンダ力Fbucketは作業機3の各部の寸法から算出されてもよい。以下、実施の形態2においては、作業機3の各部の寸法からバケットシリンダ力Fbucketを算出する例について説明する。
【0089】
<コントローラの機能ブロック>
本実施の形態に係るコントローラの機能ブロックについて図5および図6を用いて説明する。
【0090】
図5は、実施の形態2に係る作業機械におけるバケット内の積荷質量を計測するコントローラの機能ブロックを示す図である。図6は、作業機の各部の寸法を説明するための図である。
【0091】
図5に示されるように、本実施の形態のコントローラ50は、ブームシリンダ力算出部50aと、バケットシリンダ力算出部50bと、作業機姿勢算出部50cと、重心位置算出部50dと、ブームに関するモーメントのつり合い式生成部50eと、積荷質量算出部50fと、記憶部50gとを有している。
【0092】
ブームシリンダ力算出部50aは、実施の形態1と同様、ブームシリンダ力Fboomを算出し、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eへ出力する。
【0093】
作業機姿勢算出部50cは、実施の形態1と同様、寸法L1、L4を算出する。作業機姿勢算出部50cは、算出した寸法L1、L4を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eとバケットシリンダ力算出部50bとの各々へ出力する。
【0094】
また作業機姿勢算出部50cは、ブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、図6に示す寸法Rb2、Rb3、Rb4を算出する。
【0095】
ブーム角度に関する情報は、実施の形態1と同様、第1センサにより検知される。第1センサにより検知された情報は、ポテンショメータ33により計測されたブーム15の回転角度、ストロークセンサ35により計測されるブームシリンダ18のストローク長さ、IMU37により計測されるブーム15の3軸の角度(または角速度)および加速度、または撮像デバイス39により撮像される画像である。
【0096】
バケット角度に関する情報は、実施の形態1と同様、第2センサにより検知される。第2センサにより検知される情報は、ポテンショメータ34により計測されるベルクランク16の回転角度、ストロークセンサ36により計測されるバケットシリンダ19のストローク長さ、IMU38により計測されるチルトロッド17の3軸の角度(または角速度)および加速度、または撮像デバイス39により撮像される画像である。
【0097】
図6に示されるように、寸法Rb2は、ピン22とピン27との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb3は、ピン27と支持ピン29との間の寸法であって、チルトロッド17の延びる方向に直交する方向における寸法である。寸法Rb4は、ピン26と支持ピン29との間の寸法であって、バケットシリンダ19の延びる方向に直交する方向における寸法である。
【0098】
図5に示されるように、作業機姿勢算出部50cは、算出した寸法Rb2、Rb3、Rb4を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eとバケットシリンダ力算出部50bとの各々へ出力する。
【0099】
重心位置算出部50dは、実施の形態1と同様、寸法L2、L3を算出する。重心位置算出部50dは、算出した寸法L2、L3を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eとバケットシリンダ力算出部50bとの各々へ出力する。
【0100】
また重心位置算出部50dは、第1センサにより検知されるブーム角度に関する情報と第2センサにより検知されるバケット角度に関する情報とに基づいて、図6に示す寸法Rb1、Rb6を算出する。
【0101】
図6に示されるように、寸法Rb1は、積荷重心GC2とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。また寸法Rb2は、バケット14の重心GC3とピン22との間の寸法であって、ホイールローダ1の前後方向に沿う寸法である。
【0102】
また寸法Rb1は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、積荷重心GC2とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。寸法Rb6は、ホイールローダ1が水平な地面に載置されている状態においては、バケット14の重心GC3とピン22との間の水平方向に沿う寸法である。
【0103】
図5に示されるように、重心位置算出部50dは、算出した寸法Rb1、Rb6を、ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eとバケットシリンダ力算出部50bとの各々へ出力する。
【0104】
記憶部50gは、作業機3全体の質量M1、重力加速度g、バケット14の質量Mbucketなどを記憶している。記憶部50gには、コントローラ50外部の入力部51から質量M1、重力加速度g、バケット14の質量Mbucketなどの情報が記憶されてもよい。
【0105】
ブームに関するモーメントつり合い式生成部50eは、実施の形態1と同様、上式(1)を生成し、式(1)を積荷質量算出部50fへ出力する。
【0106】
バケットシリンダ力算出部50bは、記憶部50gからバケット14の質量Mbucketと重力加速度gとを取得する。
【0107】
バケットシリンダ力算出部50bは、取得したバケットシリンダ力Fbucketと、寸法Rb1~Rb4、Rb6と、質量Mbucket、M2と、重力加速度gとから、バケット14に関するモーメントのつり合いの式(4)を生成する。
【0108】
【数4】
【0109】
式(4)における寸法Rb1~Rb4、Rb6の単位はmである。また質量Mbucketの単位はkgである。
【0110】
上式(4)に示されるように、コントローラ50(バケットシリンダ力算出部50b)は、第1センサにより検知されたブーム角度に関する情報と第2センサにより検知されたバケット角度に関する情報とに基づいて寸法Rb1~Rb4、Rb6を算出し、その寸法Rb1~Rb4、Rb6に基づいてバケットシリンダ力Fbucketを算出する。バケットシリンダ力算出部50bは、式(4)を積荷質量算出部50fへ出力する。
【0111】
積荷質量算出部50fは、式(1)のFbucketに式(4)のFbucketを代入することにより質量M2を求める。これにより積荷質量算出部50fは、バケット14内の積荷の質量M2を算出することができる。
【0112】
なお本実施の形態に係る上記以外のコントローラ50の機能ブロックは、実施の形態1に係るコントローラ50の機能ブロックとほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0113】
<積荷質量M2の計測方法>
次に、本実施の形態に係る積荷質量M2の計測方法について図1図3図5を用いて説明する。
【0114】
図3に示されるように、実施の形態1と同様に、ブーム角度に関する情報と、バケット角度に関する情報と、ブームシリンダ18およびバケットシリンダ19の各々のシリンダ圧力とが取得される(ステップS1a、S1b、S1c)。
【0115】
この後、コントローラ50は、取得したブーム角度に関する情報とバケット角度に関する情報とに基づいて、作業機3の姿勢に関する寸法L1、L4、Rb2、Rb3、Rb4と、積荷重心GC2の寸法L3、Rb1と、バケット重心GC3の位置を表す寸法Rb6と、作業機3の重心GC1の寸法L2とを算出する(ステップS2:図3)。
【0116】
寸法L1、L4、Rb2、Rb3、Rb4の各々は、図5における作業機姿勢算出部50cにより算出される。寸法L2、L3、Rb1、Rb6の各々は、図5における重心位置算出部50dにより算出される。
【0117】
この後、コントローラ50は、ブームシリンダ力Fboomと、バケットシリンダ力Fbucketとを算出する(ステップS3:図3)。ブームシリンダ力Fboomは、取得したシリンダ圧力に基づいて、図5におけるブームシリンダ力算出部50aにより算出される。バケットシリンダ力Fbucketは、取得した寸法Rb1~Rb4、Rb6などから上式(4)により算出される。バケットシリンダ力Fbucketは、図5におけるバケットシリンダ力算出部50bにより算出される。
【0118】
この後、コントローラ50は、バケット4内の積荷の質量M2を算出する(ステップS4:図3)。積荷質量M2の算出は、式(1)のFbucketに式(4)のFbucketを代入することにより質量M2を求める。積荷質量M2の算出は、図5における積荷質量算出部50fにより行われる。
【0119】
以上によりバケット14内の積荷の質量M2がコントローラ50により算出される。
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0120】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様、ブームシリンダ力Fboomとバケットシリンダ力Fbucketとに基づいて積荷質量M2が算出される。このためブーム15に対するバケット14の位置が変化した場合でも、積荷質量M2を精度よく算出することが可能となる。
【0121】
また本実施の形態においては、バケット14内の積荷質量を一旦算出した後にバケット14の角度の影響を補正するための較正が不要となる。これによりバケット14内の積荷質量M2を簡易かつ精度良く算出することが可能となる。
【0122】
また本実施の形態においては、ブーム15の角度に関する情報とバケットの角度に関する情報とに基づいてバケットシリンダ力Fbucketが算出される。このためバケットシリンダ力Fbucketを計測するための圧力センサが不要となる。よって本実施の形態においては実施の形態1よりも部品点数を少なくすることができる。
【0123】
(変形例)
次に、実施の形態1、2の変形例について図7および図8を用いて説明する。
【0124】
図7は、作業機械の前後方向が水平面に対して傾斜した状態を示す図である。図8は、図7に示すように作業機械の前後方向が水平面に対して傾斜した場合におけるバケット内の積荷質量を計測する計測方法を示すフロー図である。
【0125】
図7に示されるように、ホイールローダ1が、傾斜面(水平面に対して傾斜した地表面)上に載置されている。ホイールローダ1は水平面に対して前後方向にピッチ角θpitchだけ傾斜している。この場合、ピッチ角θpitchの影響を受けることなく、バケット14内の積荷質量M2を精度よく算出できることが望ましい。
【0126】
そこで本変形例では、ピッチ角θpitchが取得され、取得されたピッチ角θpitchが考慮されて、バケット14内の積荷質量M2が算出される。以下、その内容を具体的に説明する。
【0127】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、機械本体に取り付けられた角度センサ40を有している。角度センサ40によりホイールローダ1のピッチ角θpitchが計測される。角度センサ40は、前フレーム11、後フレーム12およびキャブ5のいずれかに取り付けられていればよい。
【0128】
図2および図5に示されるように、コントローラ50は、計測されたピッチ角θpitchを取得する(ステップS1d:図8)。具体的にはコントローラ50の重心位置算出部50dがピッチ角θpitchを取得する。ピッチ角θpitchは、機械本体の前方が後方よりも上方に位置するように傾斜している状態においては正の数値となり、機械本体の後方が前方よりも上方に位置するように傾斜している状態においては負の数値となる。このため図7に示されている状態では、ピッチ角θpitchは負の数値となる。
【0129】
重心位置算出部50dは、取得したピッチ角θpitchを考慮して寸法L2、L3を算出する(ステップS2:図8)。寸法L2、L3の各々は、たとえば以下の式(5)、(6)から算出される。
【0130】
【数5】
【0131】
【数6】
【0132】
式(5)における寸法L2x(単位:m)は、図7に示されるように、作業機3の重心GC1とブームピン21との間の寸法であって、傾斜面に沿う方向の寸法である。また式(5)における寸法L2y(単位:m)は、図7に示されるように、作業機3の重心GC1とブームピン21との間の寸法であって、傾斜面に垂直な方向に沿う寸法である。
【0133】
式(6)における寸法L3x(単位:m)は、図7に示されるように、バケット14内の積荷の重心GC2とブームピン21との間の寸法であって、傾斜面に沿う方向の寸法である。また式(6)における寸法L3y(単位:m)は、図7に示されるように、バケット14内の積荷の重心GC2とブームピン21との間の寸法であって、傾斜面に垂直な方向に沿う寸法である。
【0134】
式(5)、(6)における寸法L2x、L2y、L3x、L3yは、ブーム角度に関する情報およびバケット角度に関する情報から算出される。
【0135】
また実施の形態2では、重心位置算出部50dは、寸法L2、L3と同様に、ピッチ角θpitchを考慮して寸法Rb1、Rb6も算出する。寸法Rb1、Rb6の各々は、たとえば以下の式(7)、(8)から算出される。
【0136】
【数7】
【0137】
【数8】
【0138】
この後、コントローラ50は、取得したシリンダ圧力に基づいて、ブームシリンダ力Fboomと、バケットシリンダ力Fbucketとを算出する(ステップS3:図8)。バケットシリンダ力Fbucketは、実施の形態1で説明したように計測したバケットシリンダ19のシリンダ圧力から算出されてもよく、また実施の形態2で説明したように作業機3の各部の寸法から算出されてもよい。
【0139】
ブームシリンダ力Fboomは、図2または図5におけるブームシリンダ力算出部50aにより算出される。バケットシリンダ力Fbucketは、図2または図5におけるバケットシリンダ力算出部50bにより算出される。
【0140】
この後、コントローラ50は、バケット4内の積荷の質量M2を算出する(ステップS4:図8)。積荷質量M2の算出は、上記により算出された寸法L1~L4およびシリンダ力Fbucket、Fboomと、図2または図5の記憶部に記憶された作業機3全体の質量M1および重力加速度gとを、上式(2)に代入することにより行なわれる。
【0141】
この際、コントローラ50は、実施の形態1では上式(5)、(6)で算出されたL2、L3を用いて、また実施の形態2では上式(5)~(8)で算出されたL2、L3、Rb1、Rb6を用いて、バケット4内の積荷の質量M2を算出する。
【0142】
積荷質量M2の算出は、図2または図5における積荷質量算出部50fにより行われる。
【0143】
以上によりバケット14内の積荷の質量M2がコントローラ50により算出される。
なお上記以外の変形例における作業機械の構成および積荷質量M2の算出方法は、実施の形態1、2とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0144】
本変形例によれば、ピッチ角θpitchが考慮されて寸法L2、L3、Rb1、Rb6が算出される。このため、あらゆる傾斜地でかつあらゆるバケット角度において、バケット14内の積載質量M2を簡易かつ精度良く算出することができる。
【0145】
図2および図4に示されるコントローラ50は、作業機械1に搭載されていてもよく、作業機械1の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ50が作業機械1の外部に離れて配置されている場合、コントローラ50は、センサ31b、31h、32b、32h、33~40などと無線により接続されていてもよい。コントローラ50は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。コントローラ50の機能により作業機械1を制御する制御システムが構成されている。
【0146】
上記においてはブームシリンダ18(第1アクチュエータ)として油圧シリンダについて説明したが、第1アクチュエータ18は油圧シリンダに限定されるものではなく、ブーム15を駆動する推力を生じるものであればよく、たとえば電動シリンダなどであってもよい。
【0147】
またバケットシリンダ19(第2アクチュエータ)として油圧シリンダについて説明したが、第2アクチュエータ19は油圧シリンダに限定されるものではなく、バケット14を駆動する推力を生じるものであればよく、たとえば電動シリンダなどであってもよい。
【0148】
また第1アクチュエータ18および第2アクチュエータ19の各々の推力に関する情報を検知するセンサとして圧力センサ31b、31h、32b、32hについて説明したが、これらの推力に関する情報を検知するセンサは電動シリンダなどの推力に関する情報を検知するものであってもよい。
【0149】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0150】
1 作業機械(ホイールローダ)、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 前輪、4b 後輪、5 キャブ、6 カウンタウエイト、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 バケット、15 ブーム、16 ベルクランク、17 チルトロッド、18 ブームシリンダ(第1アクチュエータ)、19 バケットシリンダ(第2アクチュエータ)、21 ブームピン、22 バケットピン、29 支持ピン、31b,31h,32b,32h 圧力センサ、33,34 ポテンショメータ、35,36 ストロークセンサ、39 撮像デバイス、50 コントローラ、50a ブームシリンダ力算出部、50b バケットシリンダ力算出部、50c 作業機姿勢算出部、50d 重心位置算出部、50e 式生成部、50f 積荷質量算出部、50g 記憶部、51 入力部、52 表示部、GC1 作業機重心、GC2 積荷重心、GC3 バケット重心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8