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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】改良型磁気装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20230925BHJP
   H01F 7/04 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
H01F7/02 F
H01F7/02 S
H01F7/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019553565
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2018051822
(87)【国際公開番号】W WO2018178801
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】102017000033967
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522414268
【氏名又は名称】エムエージー-アウトブローク テクノマグネーテ ソチエタ ペル アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】Mag-autoblok Tecnomagnete S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Duca d’Aosta 24, Frazione Novaretto, 10040 Caprie TO, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ カルドーネ
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-130106(JP,A)
【文献】特開昭63-028537(JP,A)
【文献】特開昭63-114109(JP,A)
【文献】特開2005-305565(JP,A)
【文献】特表2009-534209(JP,A)
【文献】特表2010-538852(JP,A)
【文献】特表2011-519733(JP,A)
【文献】特表2011-519734(JP,A)
【文献】米国特許第04090162(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0103239(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/00-7/04
B23Q 3/15-3/154
B66C 1/04-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置であって、支持構造(11)を備え、該支持構造(11)の厚さ(S)に複数のN個の極ユニット(30A)が収容されており、前記支持構造(11)は、最大の広がりを有する互いに反対側の面で第1および第2の側面(12,13)を特定しており、前記複数のN個の極ユニット(30A)はそれぞれ、
所定の輪郭の支持体(31)および該支持体に巻き付けられた導電性エレメント(32)を有するコイル(30)と、
第1の磁気方向に向けられた第1の磁気流れを発生する、第1の保磁値を有する第1の磁気コア(40)と、
それぞれが前記第1の保磁値とは異なる独自の保磁値を有する複数の第2の磁気コア(90A,90B)と、を有し、
前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の第1の部分(90A)は、第2の磁気方向に向けられた第2の磁気流れを発生し、前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の第2の部分(90B)は、第3の磁気方向に向けられた第3の磁気流れを発生し、前記第3の磁気方向は、前記第1の磁気方向と平行でありかつ前記第2の磁気方向に対して異なる方向を有している、磁気装置において、
前記コイルの前記支持体(31)は、容積(Vint)を規定しており、前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)は、前記支持体(31)によって規定された前記容積(Vint)内に少なくとも部分的に配置されており、
前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第1の部分(90A)は、前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)の上側に配置された、磁気流れを搬送するための第1の極コレクタ(50)の周囲に配置されており、
前記第1の磁気コア(40)は、磁気的に可逆の材料から成り、前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)は、不可逆の磁気材料から成ることを特徴とする、鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項2】
前記第3の磁気方向は、前記第2の磁気方向に対して垂直である、請求項1記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項3】
前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)は、前記支持体(31)の輪郭によって規定された前記容積(Vint)に完全に収容されている、請求項1または2記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項4】
前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)はそれぞれ、互いに分離された2つ以上の磁気部分を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項5】
前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)の前記2つ以上の磁気部分は、前記第1の磁気コア(40)の前記2つまたは3つ以上または複数の磁気部分に関して重心に配置されている、請求項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項6】
前記第1の磁気コア(40)は、互いに平行な、最大の広がりを有する2つの表面(40’,40’’)および該2つの表面(40’,40’’)の間の貫通孔(41)を規定する1つの磁気コアを含み、かつ前記支持体(31)の厚さ(S’)以下の厚さ(S1)を有し、
前記複数の第2の磁気コア(90A,90B)の前記第2の部分(90B)は、前記貫通孔(41)に配置されかつ前記支持体(31)の厚さ以下の厚さ(S2)を有する1つの磁気コアを有する、
請求項1からまでのいずれか1項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項7】
前記支持体(31)は、所定の厚さ(S’)および内径(D’int)を有する環状の輪郭を有しており、前記容積(Vint)は、前記支持体(31)の前記所定の厚さ(S’)について前記内径(D’int)から計算された容積である、請求項1からまでのいずれか1項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項8】
前記磁気装置の前記第1および/または第2の側面(12,13)の磁化、消磁および/または搬送条件を制御するために前記少なくとも1つの極ユニット(30A)に機能的に接続されたコマンドおよび制御ユニット(100)を備える、請求項1からまでのいずれか1項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【請求項9】
前記極ユニット(30A)は、前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A、90B)の前記第2の部分(90B)の上側に配置された、磁気流れを搬送するための第1の極コレクタ(50)と、前記第1の磁気コア(40)および前記複数の第2の磁気コア(90A、90B)の前記第2の部分(90B)の下側に配置された、磁気流れを搬送するための第2の極コレクタ(60)と、を有しており、前記第1の極コレクタ(50)の上面(50A)は、固着平面(12)を形成しており、前記第2の極コレクタ(60)の面(60A)は、前記磁気装置の支持平面(13)を形成している、請求項1からまでのいずれか1項記載の鉄含有エレメント(P1)を磁気的に固着するための磁気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示は、請求項1の前段による、改良された磁気装置に関する。
【0002】
特に、本開示は、永電磁装置(electro-permanent magnetic apparatus)、さらにより具体的には、自己固着式モノリシックタイプの永電磁装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書の続きにおける永電磁装置という用語は、
-装置自体の内部に適切に配置された永久磁石を備えて形成された磁気装置
-固着ステップでの通常使用の間に電源を必要としないが、活性化および不活性化ステップでは電源を必要とする装置
-強磁性体によって形成された磁気流れを搬送するための極コレクタを必要とする装置
を意味する。
【0004】
磁気装置自体の幾何学的サイズに影響することなく、より控えめな製造コストを有し、公知の装置に対して磁気性能が等しい磁気装置の要求を満たすという必要性が、特に永電磁タイプの磁気装置の製造者によってますます感じられている。
【0005】
実際に、より手ごろであるが、特に装置の厚さなどの装置自体の幾何学的サイズを変更することなく同じ磁気固着力を保証する、例えば機械加工される強磁性部品を固着するための市場磁気装置を提案するという一定の探求が存在する。
【0006】
実際、厚さの増加が特定の作業機械(例えば、フライス盤またはプラスチック材料成形機械など)における使用の可能性を減らすことを考慮すると、厚さは磁気装置におけるますます重要なパラメータである。なぜならば、強磁性部品のための最大有効ストロークは予め決まっているので、磁気装置の厚さが増加すると、固着される強磁性部品を収容するための有効空間が減少するからである。
【0007】
磁気装置のコストを減らすためには、磁気装置を形成する各極ユニットの固着面のサイズを増大することで十分である。これにより、磁気装置の加工時間が短縮される。なぜならば、より大きな表面サイズを有するより少数の極ユニットを用いて同じ磁力を得ることが可能であるからである。しかしながら、参照する技術分野において周知であり確立されているが、このような解決策は、極ユニットの幾何学的サイズの増加という主な欠点を有しており、これは、磁気装置自体の厚さの不可避な増加を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、製造コストを減らすとともに幾何学的サイズ、特に磁気装置の厚さを不変のまま維持することを可能にし、発生する磁力が等しい、磁気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、下記の請求項1に従って特徴づけられる磁気装置によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
開示のおかげで、既知の磁気装置に対して製造コストがより低く、かつその厚さをこのような磁気固着装置に関して不変に維持し、発生することができる固着力は等しい、磁気固着装置を得ることが可能である。
【0011】
このような結果は、既知の磁気装置の厚さにおいて、既知の磁気装置に設けられた極ユニットのサイズに関してより大きな表面サイズを有する新たな極ユニットを形成することによって達成される。こうすることによって、新たな磁気装置を形成するために必要とされる極ユニットの数を減らすことが可能であり、磁気装置の固着面によって発生する固着力は等しくなる。
【0012】
ここで、単に非限定的な例として提供されかつ添付の図面に示されるその好ましい実施形態に関連して、本開示がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による、機械加工を受ける部品に関連しているときの磁気装置と、制御ユニットとの斜視図である。
図2図1の装置の、部分的な断面で示された分解斜視図を示している。
図3図1の装置の断面側面図を示している。
図3a】活性化条件における、図1の装置の断面側面図を示している。
図3b】不活性化条件における、図1の装置の断面側面図を示している。
図3c】搬送条件における、図1の装置の断面側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面に示される実施形態は、図式的に描かれており、必ずしも実寸では示されておらず、また様々な形成要素の間で必ずしも比例的に描かれていない。
【0015】
明示的に示されていないときでも、特定の実施形態に関連して説明される個々の特徴は、付属物として意図されており、かつ/または、他の実施形態に関連して説明される他の特徴と交換可能である。
【0016】
添付の図面を参照すると、磁気固着装置が全体として10Aで示されている。
【0017】
好ましくは、この明細書の続きでは、本発明の定義が一般性を失うことなく、永電磁式、自己固着式およびモノリシックタイプの磁気固着装置が説明される。
【0018】
鉄含有エレメント(ferrous element)P1を磁気的に固着するための磁気装置10Aは、支持構造11を有しており、その厚さS内に、複数のN個の極ユニット30Aが収容されている。
【0019】
特に、支持構造11は、最も大きな広がりを持つ互いに反対側の面に第1の側面12および第2の側面13をそれぞれ特定している。
【0020】
好ましくは、第1の側面12および第2の側面13は、それぞれの平面を規定するように互いに平行に延びている。
【0021】
側面12は、機械加工を受ける鉄含有エレメントP1、すなわち、加工される鉄含有部品が磁気的に固着される平面または表面であることが意図されており、側面13は、例えば、工作機械のベンチなどの別の鉄含有エレメントに磁気的に固着することができる平面または表面であることが意図されていることは、注目に値する。
【0022】
N個の極ユニット30Aは、構造11内に自由に配置されてもよく、すなわち、いかなる予め定められた幾何学的スキームにも従うことなく配置されてよいことも、注目に値する。
【0023】
しかしながら、好ましい実施形態によれば、N個の極ユニット30Aは、1つのスキームに従って構造11内に配置されており、このスキームに従って、N個の極ユニット30Aは行列形式で配置されている。
【0024】
好ましくは、N個の極ユニット30Aのこのような行列構成において、中心は、上述の行列を形成する線および/または列に沿って位置している。
【0025】
さらに、装置10Aを使用する通常の方法によれば、止り穴15が、N個の極ユニット30Aの中心に形成されてもよい。好ましくは、このような止り穴15は、ヘリコイルなどのねじ込み充填インサートで塞がれたねじ付き止り穴であってもよい。
【0026】
さらに、特定の用途に対しては、支持構造11は、装置10の第1の側面12に配置された別の複数の止り穴15Aを有していてもよい。特に、止り穴15Aは行列の形式で配置されていてもよく、またN個の極ユニット30Aの間に配置されていてもよい。
【0027】
各極ユニット30Aは、少なくとも1つのそれぞれの極コレクタ50と、第1の保磁値(coercive value)を有する第1の磁気コア40と、コイル30と、複数の第2の磁気コア90A,90Bとを有しており、各第2の磁気コアは、第1の保磁値と異なる独自の保磁値を有している。
【0028】
図3を参照すると、ここに例示された実施形態では、第1の極コレクタ50は、支持構造11の一体的部分である。なぜならば、第1の極コレクタ50は、材料の除去など、固体からの機械加工プロセスによって得られるからである。
【0029】
特に、極コレクタ50の上部50Aが、モノリシックタイプの磁気装置10を得るように第1の側面12の一部を特定する場合、極コレクタ50は、底部50Bを画成しかつ支持構造11と一体的に形成されている。
【0030】
極ユニット30Aは、第2の極コレクタ60を有しており、最大の広がりを有する第2の極コレクタ60の面60Aは、第2の側面13の一部を特定している。第2の極コレクタ60は、第1の磁気コア40に隣接して配置されており、このような磁気コア40を、第1の極コレクタ50の底部50Bに対して挟む。
【0031】
第2の側面13の表面を磁気的に活性にするために、すなわち、第2の側面13を介して磁気装置10Aを固着するために十分な磁力の値を有するために、磁気コア40によって発生した磁気流れまたはその大部分を、磁気装置10Aから引き出すように、第2の極コレクタ60のサイズが適していることは、注目に値する。
【0032】
これは、自己固着およびモノリシック磁気装置を形成する可能性を保証する。
【0033】
有利には、磁気装置10Aの作動条件、特に、第1の磁気コア40の磁化状態を変更するために、コイル30が、第1の磁気コア40の外側にかつ第1の磁気コア40に配置されている。
【0034】
一態様によれば、例えば、樹脂注入物70を用いてギャップを充填する工程が、コイル30をカバーし、かつ第2の極コレクタ60と、コイル自体を備える第1の磁気コア40との間の密着を保証するために提供される。
【0035】
したがって、樹脂70は、上述のエレメントの脱落不可能性を保証することが意図されており、また、コイル30が配置された領域における、不純物および/または液体の漏れに対する不透過性を保証することを目的とする。
【0036】
有利には、図1も参照すると、装置自体の作動条件を制御するために磁気装置10Aに機能的に接続された制御ユニット100が設けられている。
【0037】
特に、制御ユニット100は、特定の作動条件に応じて、電気巻線30を制御して磁気コア40の磁化状態を変更するために、電気接続101によって磁気装置10Aに電気的に関連付けられている。
【0038】
制御ユニット100は、複数のボタン102を有しており、これらの複数のボタン102を押すことによって、オペレータは、作動条件に従って作動するように磁気装置10Aを制御することができる。これは、この明細書の続きでより詳細に示される。
【0039】
上述の構成部材のより詳細な説明のために、同一出願人による欧州特許第2280803号明細書および欧州特許第2280804号明細書を参照することができ、その内容は、本明細書に一体的に示されることが意図されている。
【0040】
有利には、磁気装置10Aの厚さSを変更することなく極面の増加を得るために、第1の磁気方向に向けられた第1の磁気流れを発生させるための第1の磁気コア40が設けられているのに対し、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第1の部分90Aは、第2の磁気方向に向けられた第2の磁気流れを発生させ、かつ複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bは、第3の磁気方向に向けられた第3の磁気流れを発生させる。
【0041】
特に、第3の磁気方向は、第1の磁気方向と平行であり、かつ第2の磁気方向に対して異なる方向、好ましくは垂直である。
【0042】
極ユニット30Aにおいてそれぞれの磁石40,90Aおよび90Bによって発生する上述の3つの磁気方向の一例が、磁気装置10Aの異なる作動条件に関して、図3a,図3bおよび図3cに例示されている。
【0043】
特に、図3a,図3bおよび図3cは、それぞれ活性化条件、不活性化条件および搬送条件における磁気装置10Aの側面断面図を示している。
【0044】
特に、磁気装置10Aの厚さSを変化させない極面の増加は、第1の保磁値を有する磁石40の磁気流れが同時に、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bによって発生される磁気流れと平行であり、かつ両方とも第1の保磁値と異なる値を有する第2の磁気コア90A,90Bの第1の部分90Aに対して異なる方向に向けられていることによって得ることができる。
【0045】
厚さSを変更しない極面のこのような増加は、極ユニット30Aにおける複数の第2の磁気コア90A,90Bの第1の部分90Aおよび第2の部分90Bのように、第1の磁気コア40の位置がどこであるかを特定することなく少なくとも最初に達成可能であることも、注目に値する。
【0046】
実際には、正確には、極ユニット50および60の表面サイズを増加させ、したがって、形成される極ユニット30Aの数を減らすことを可能にする3つの磁気流れを組み合せる可能性があり、発生する磁力は等しい。
【0047】
言及したように、磁気装置10A、特に、自己固着式永電磁タイプの磁気装置を特徴づける3つの作動条件、すなわち、活性化条件(図3a)、不活性化条件(図3b)および搬送条件(または機械ベンチへの/からの組立て/分解条件)(図3c)が存在する。
【0048】
図3aおよび図3bに関する最初の2つの条件は公知であり、同一出願人の欧州特許第2280803号明細書および欧州特許第2280804号明細書における説明からその操作を推測することが可能であり、その内容は、本明細書に一体的に示されることが意図されている。
【0049】
搬送条件(または組立て/分解条件)(図3c)はむしろ、他の2つに対して異なっている。なぜならば、この特定の条件では、側面13、すなわち工作機械のベンチに磁気的に固着される側において、永電磁装置によって発生した磁力を相殺する必要があるからである。
【0050】
この結果を得るために、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bによって発生した磁気流れと、磁気コア40によって発生した磁気流れとのバランスを保証する必要がある。
【0051】
この条件は、側面13によって発生した磁気流れを測定することによってこのような条件の制御を可能にする電子制御装置によって保証される。
【0052】
本明細書のために、磁気装置の第1の作動条件(活性化条件)(図3a)では、第1の磁気コア40によって発生した磁気流れは、複数の第2の磁気コア90A,90Bによって発生した磁気流れと等しいのに対し、磁気装置の第2の作動条件(不活性化条件)(図3b)では、第1の磁気コア40によって発生した磁気流れは、複数の第2の磁気コア90A,90Bによって発生した磁気流れと等しくかつ逆向きであり、最後に、磁気装置の第3の作動条件(搬送条件)(図3c)では、第1の磁気コア40によって発生した磁気流れは、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bによって発生した磁気流れと等しくかつ逆向きであることは、注目に値する。
【0053】
これは、磁気装置自体の正しい作動を可能にするための磁気流れの間の必要なバランスを保証する。
【0054】
第1の作動条件(図3a)は、装置10Aの固着作動条件として規定され、この場合、固着力は平面12および13上で発生するのに対し、第2の作動条件(図3b)は、装置10Aの不活性化作動条件として規定され、この場合、平面12上では固着力が発生しない一方、常に平面13上では常に固着力が発生し、最後に、第3の作動条件(図3c)は、装置10Aの搬送作動条件として規定され、この場合、適切な強磁性プレートが配置されている平面12上で固着力が発生する一方、平面13上では固着力が発生しないことも、注目に値する。
【0055】
ここで図2および図3を参照すると、コイル30は、所定の輪郭の支持体31を提供し、このような支持体に導電性エレメント32が巻き付けられており、このような支持体31が容積Vintを規定していることも、注目に値する。
【0056】
一実施形態では、磁気装置10の効率を増加させるために、第1の磁気コア40および/または複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bが、支持体31によって規定された容積Vint内に少なくとも部分的に配置されることが提供される。
【0057】
言い換えれば、装置10Aの効率を改善するために、第1の磁気コア40および/または複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bは、少なくとも部分的に容積Vint内に配置される。
【0058】
例えば、第1の磁気コア40および第2の部分90Bの両方が部分的にVintに収容されていてもよいし、第1の磁気コア40および第2の部分90Bの両方が完全にVintに収容されていてもよいし、または、第1の磁気コア40のみが完全にVintに収容され、第2の部分90Bが部分的にVintに収容されるか、またはその逆であってもよい。
【0059】
特に、支持体31は、第1の磁気コア40および複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bを少なくとも部分的に包囲するように成形されている。
【0060】
磁気装置10Aの最も効率的な実施形態に対応する好ましい実施形態を示す図2および図3では、第1の磁気コア40および複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bは、完全に容積Vint内に収容されている。したがって、このような好ましい実施形態では、支持体31は、その容積Vintにおいて、第1の磁気コア40および複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bの両方を完全に包囲しており、すなわち、それらは、侵入せず、突出せず、または支持体31によって規定された容積Vintの外側に位置する部分を有していない。
【0061】
複数の第2の磁気コア90A,90Bの第1の部分90Aのみが、便利には、支持体31によって規定された容積Vintの外側に配置されていることは、注目に値する。
【0062】
特に、図2および図3に示したように、複数の第2の磁気コア90A,90Bの部分90Aは、第2の磁気方向に向けられた第2の磁気流れを発生するために極ユニット30Aの第1のコレクタ50の周囲に配置されている。
【0063】
このような第2の磁気方向は、好ましい実施形態では、コア40によって発生する流れの第1の磁気方向に対して垂直である。
【0064】
前述のように、複数の第2の磁気コア90A,90Bの、第1の部分90Aとは異なる第2の部分90Bは、コイル30の支持体31の容積Vintに少なくとも部分的に収容されており、また、第1の磁気コア40によって発生する磁気流れの第1の磁気方向に平行な第3の磁気方向に向けられた第3の磁気流れを発生するように構成されている。
【0065】
一態様によると、磁気コア40は、アルニコタイプの磁石で具体化される永久可逆タイプの磁気コアであるのに対し、複数の磁気コア90A,90Bは、フェライト、サマリウムコバルトまたはネオジムフェロボロンで具体化される永久磁化された不可逆タイプの複数の磁気コアであることが提供される。
【0066】
磁気コア40または複数の磁気コア90A,90Bのためのその他のタイプの材料が提供されてもよい。
【0067】
したがって、制御ユニット100によって適切に制御されるとき、コイル30は、磁気コア40の磁化状態を変更するという役割を有している。
【0068】
別の態様によれば、強磁性支持体(図示せず)が、空気ギャップゾーンを形成するなどのためのあらゆる空いたスペースを排除するために、支持体エレメント31の容積Vint内に収容されてもよい。
【0069】
代替的な実施形態(図示せず)では、第1の磁気コア40が、容積Vint内に部分的または完全に収容されることが提供されるのに対し、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bが、容積Vintの外側に配置されてもよい。このシナリオでは、容積Vint内に部分的または完全に収容された第1の磁気コア40と一緒に、空隙領域を形成するようなあらゆる空きスペースを排除するために、1つまたは複数の強磁性支持体が容積Vint内に収容されることも提供される。
【0070】
別の代替的な実施形態(図示せず)では、第1の磁気コア40は、2つ以上の磁気部分で形成されてもよく、すなわち、第1の磁気コア40は、互いに異なる形状およびサイズを有する異なる磁気コアを用いて形成されてもよく、同様に、複数の第2の磁気コア90A,90Bの部分90Aおよび90Bの両方も、1つの磁気コアまたはやはり互いに異なる形状およびサイズを有する複数の磁気コアで形成されてもよい。第1の磁気コア40および複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bを形成するこのような磁気エレメントは、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bを形成するエレメントが、第1の磁気コア40を形成するエレメントに関して重心であるような形式で、配置されることが好ましい。
【0071】
好ましい実施態様によれば、図2も参照すると、各極ユニット30Aを形成するエレメントは、実質的に円形またはディスク状のエレメントで具体化されている。特に、極コレクタ50、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第1の部分90A、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90B、第1の磁気コア40、コイル30および極コレクタ60は、軸線X-Xに沿って同軸かつ対称である。
【0072】
実際、支持体31は、厚さS’および内径D’intの環状輪郭を有しており、これにより、容積Vintは、支持体31の厚さS’についての内径から計算された容積である。
【0073】
特に、支持体31の輪郭は、導電性エレメント32(図2には示されていない)が挿入される溝33(内側容積Vintの位置と反対側)を画成している。
【0074】
さらに、第1の磁気コア40は1つの磁気コアを有しており、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bも1つの磁気コアを有している。
【0075】
特に、第1の磁気コア40は、孔41、好ましくは貫通孔を画成するように、外径D1および内径D1’を有する、厚さS1の環状輪郭を有している。第1の磁気コア40は、平坦でかつ互いに平行な、最大の広がりを有する2つの面40’および40’’を規定する。
【0076】
好ましくは、貫通孔41は、第1の磁気コア40の表面40’,40’’に関して中央位置に配置されている。
【0077】
最大効率の条件で第1の磁気コア40が容積Vintに収容される場合、厚さS1が、最大でも支持体31の厚さS’と等しいことは、注目に値する。
【0078】
有利には、この好ましい実施形態では、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bは、厚さS2および直径D2の中実の円柱として具体化されており、貫通孔内に、ひいては支持体31の厚さS’内にも完全に収容されるように、このような貫通孔41に配置される。
【0079】
言い換えれば、第1の磁気コア40および複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bが、厚さS’内に一体的に収容されるとすると、厚さS’は、厚さS1および厚さS2のうちの大きい方以上でなければならない。
【0080】
したがって、好ましい実施形態では、第1の磁気コア40は、外径D1と、内径D1’と、厚さS1とを有するトロイドの形式で成形されているのに対し、貫通孔41に挿入される、複数の第2の磁気コア90A,90Bの部分90Bは、直径D2および厚さS2を有する中実の円柱のように成形されている。
【0081】
したがって、磁気装置10Aの厚さSを増加させないために、複数の第2の磁気コア90A,90Bの第2の部分90Bは、第1の磁気コア40の内側に導入された。
【0082】
再び、好ましい実施形態によれば、
複数の第2の磁気コア(90A,90B)の第1の部分90Aは、外径D3、内径D3’および高さS3の環状エレメントで具体化されており、
第2の極コレクタ60は、直径D4および厚さS4の中実の円柱で具体化されている。
【0083】
第2の極コレクタ60は、最大の広がりを有する2つの対向する平行な表面60Aおよび60Bを規定していることは、注目に値する。
【0084】
好ましい実施形態に関して上述したものに関連して、新たな磁気装置10Aは、背景技術と同じ厚さSを使用して側面12において同じ磁気表面性能を有するが、必要な極の数はより少なく、このような側面12で発生する磁力は等しい。
【0085】
このような削減は、1つの極ユニットの固着面の増大と正比例する。したがって、固着のために必要とされる磁気性能を保証するために標準的な磁気装置において100個の極(すなわち、直径が70mmの極)を形成する必要がある場合、本発明によれば、同じ厚さSの磁気装置を形成することが可能である。なぜならば、40%大きな極面を持つ1つの極ユニット(すなわち、直径が90mmの極)を構成することができるからである。
【0086】
これにより、40%少ない極数によって同じ前の磁気性能を得ることができる。
【0087】
明らかに、偶発のかつ特定のニーズを満たすために、当業者は、上述の磁気装置に対していくつかの変更および改良を行ってもよいが、全ては、以下の請求項によって規定される本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図3a
図3b
図3c