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特許7353980高含量の生体接着物質を有する電界紡糸繊維を調製する方法
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  • 特許-高含量の生体接着物質を有する電界紡糸繊維を調製する方法 図1A
  • 特許-高含量の生体接着物質を有する電界紡糸繊維を調製する方法 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】高含量の生体接着物質を有する電界紡糸繊維を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20230925BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230925BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230925BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230925BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230925BHJP
   D01F 6/54 20060101ALI20230925BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20230925BHJP
   A61L 26/00 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
D01D5/04
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/46
A61K47/34
A61K47/42
A61K9/70
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/86
A61K8/65
A61P29/00
A61K31/573
D01F6/54 D
D04H1/728
A61L26/00
【請求項の数】 51
(21)【出願番号】P 2019560457
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 DK2018050010
(87)【国際公開番号】W WO2018133910
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】PA201770043
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】519264003
【氏名又は名称】アフリックス セラピューティクス アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン, イェンス
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544259(JP,A)
【文献】特表2016-536305(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189212(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/186101(WO,A1)
【文献】特開2009-041117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
D01F 1/00- 6/96,
9/00- 9/04
A61L
A61K
A61P
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界紡糸繊維を調製する方法であって、
i)ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリレートおよびブチルメタクリレート-ジメチルアミノエチルメタクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 1:2:1(塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー;Eudragit(登録商標)E 100、Eudragit(登録商標)E PO)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L 100、Eudragit(登録商標)L 12,5)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:2(Eudragit(登録商標)S 100)、メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L30 D55、Eudragit(登録商標)L 100-55)、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.2(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプA;Eudragit(登録商標)RL 100、Eudragit(登録商標)RL PO、Eudragit(登録商標)RL 30D、Eudragit(登録商標)RL 12,5)、およびエチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.1(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプB;Eudragit(登録商標)RS 100、Eudragit(登録商標)RS PO、Eudragit(登録商標)RS 30D、Eudragit(登録商標)RS 12,5)、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 2:1(Eudragit(登録商標)NM 30 D、Eudragit(登録商標)NE 30 D、Eudragit(登録商標)NE 40 D)から選択されるアクリルコポリマ、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される繊維形成親水性ポリマーをC1~C3アルコールから選択されるアルコールに溶解するステップ、
ii)デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギネート、トラガカント、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グアー、キサンタン、ゲラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸のポリマー(PAA)、キトサン、レクチン、チオール化ポリマーPAA-co-PEG(PEGはポリエチレングリコールである)、およびこれらの混合物からなる群から選択される生体接着物質を水に溶解するステップであって、前記生体接着物質が25℃で3g/100mlもしくはそれより多い水への溶解度を有し、前記生体接着物質が25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満の、C1~C3アルコールから選択されるアルコールへの溶解度を有するステップ、
iii)ii)で得られた溶液を、i)で得られた溶液に撹拌下で添加することにより均一な混合物を形成するステップ、および
iv)前記均一な混合物を電界紡糸して親水性繊維を得るステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)またはステップii)で、粘膜または皮膚への塗布に好適な原薬を溶解または懸濁させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体接着物質がPEOである、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記生体接着物質が、100,000~500,000ダルトンの分子量を有するPEOである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記生体接着物質が、200,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記繊維が、ポリビニルピロリドン、アクリレートおよびアクリルコポリマー、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される親水性ポリマーを含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%~70%w/w、45~70%w/wまたは50%~70%w/wである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して30%~60%w/w、35%~60%または40%~55%w/wである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
C1~C3溶媒がエタノールである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
粘膜または皮膚への塗布に好適な原薬がステップi)に添加される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記原薬が抗炎症原薬である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記原薬がコルチコステロイドである、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記電界紡糸親水性繊維を疎水性層に接触させるステップをさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記コルチコステロイドがプロピオン酸クロベタゾールである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、アンモニオメタクリレートコポリマー
タイプBおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、900,000Da~3,000,000Daである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、1,500,000Daである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して50%~85%w/wである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して45%~70%w/wである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して35%~60%である、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%~55%である、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%w/wである、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
前記疎水性層がポリ(カプロラクトン)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリレートおよびブチルメタクリレート-ジメチルアミノエチルメタクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 1:2:1(塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー;Eudragit(登録商標)E 100、Eudragit(登録商標)E PO)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L 100、Eudragit(登録商標)L 12,5)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:2(Eudragit(登録商標)S 100)、メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L30 D55、Eudragit(登録商標)L 100-55)、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.2(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプA;Eudragit(登録商標)RL 100、Eudragit(登録商標)RL PO、Eudragit(登録商標)RL 30D、Eudragit(登録商標)RL 12,5)、およびエチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.1(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプB;Eudragit(登録商標)RS 100、Eudragit(登録商標)RS PO、Eudragit(登録商標)RS 30D、Eudragit(登録商標)RS 12,5)、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 2:1(Eudragit(登録商標)NM 30 D、Eudragit(登録商標)NE 30 D、Eudragit(登録商標)NE 40 D)から選択されるアクリルコポリマ、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される繊維形成親水性ポリマー、
デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギネート、トラガカント、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グアー、キサンタン、ゲラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸のポリマー(PAA)、キトサン、レクチン、チオール化ポリマーPAA-co-PEG(PEGはポリエチレングリコールである)、およびこれらの混合物からなる群から選択される100,000~500,000ダルトンの分子量を有する生体接着物質であって、前記生体接着物質が25℃で3g/100mlもしくはそれより多い水への溶解度を有し、前記生体接着物質が25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満の、C1~C3アルコールから選択されるアルコールへの溶解度を有する生体接着物質、および
粘膜または皮膚への塗布に好適な原薬
を含む、電界紡糸繊維。
【請求項25】
前記繊維形成親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、アンモニオメタクリレートコポリマー タイプBおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項24に記載の電界紡糸繊維。
【請求項26】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、900,000Da~3,000,000Daである、請求項24または25に記載の電界紡糸繊維。
【請求項27】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、1,500,000Daである、請求項24または25に記載の電界紡糸繊維。
【請求項28】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して50%~85%w/wである、請求項24~27のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項29】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して45%~70%w/wである、請求項24~27のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項30】
前記生体接着物質がPEOである、請求項24~29のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項31】
前記生体接着物質が、200,000ダルトンの分子量を有する、請求項24~30のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項32】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して35%~60%である、請求項24~31のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項33】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%~55%である、請求項24~32のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項34】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%w/wである、請求項24~33のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項35】
前記原薬が抗炎症原薬である、請求項24~34のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項36】
前記原薬がコルチコステロイドである、請求項24~35のいずれか1項に記載の電界紡糸繊維。
【請求項37】
前記コルチコステロイドがプロピオン酸クロベタゾールである、請求項36に記載の電界紡糸繊維。
【請求項38】
層状の医薬組成物であって、
(a)(i)ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリレートおよびブチルメタクリレート-ジメチルアミノエチルメタクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 1:2:1(塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー;Eudragit(登録商標)E 100、Eudragit(登録商標)E PO)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L 100、Eudragit(登録商標)L 12,5)、メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:2(Eudragit(登録商標)S 100)、メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー 1:1(Eudragit(登録商標)L30 D55、Eudragit(登録商標)L 100-55)、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.2(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプA;Eudragit(登録商標)RL 100、Eudragit(登録商標)RL PO、Eudragit(登録商標)RL 30D、Eudragit(登録商標)RL 12,5)、およびエチルアクリレート-メチルメタクリレート-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドコポリマー 1:2:0.1(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプB;Eudragit(登録商標)RS 100、Eudragit(登録商標)RS PO、Eudragit(登録商標)RS 30D、Eudragit(登録商標)RS 12,5)、エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー 2:1(Eudragit(登録商標)NM 30 D、Eudragit(登録商標)NE 30 D、Eudragit(登録商標)NE 40 D)から選択されるアクリルコポリマ、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される繊維形成親水性ポリマー、
(ii)デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギネート、トラガカント、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グアー、キサンタン、ゲラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸のポリマー(PAA)、キトサン、レクチン、チオール化ポリマーPAA-co-PEG(PEGはポリエチレングリコールである)、およびこれらの混合物からなる群から選択される100,000~500,000ダルトンの分子量を有する生体接着物質であって、前記生体接着物質が、25℃で3g/100mlもしくはそれより多い水への溶解度を有し、前記生体接着物質が25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満の、C1~C3アルコールから選択されるアルコールへの溶解度を有する生体接着物質、および
(iii)粘膜または皮膚への塗布に好適な原薬、
を含む、親水性電界紡糸層、ならびに
(b)疎水性層であって、ポリ(カプロラクトン)、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、エチルセルロース、カーボタンおよびポリソフタンからなる群から選択されるポリマーを含む、疎水性層
を含む、層状の医薬組成物。
【請求項39】
前記繊維形成親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、アンモニオメタクリレートコポリマー タイプBおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項38に記載の層状の組成物。
【請求項40】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、900,000Da~3,000,000Daである、請求項38または39に記載の層状の組成物。
【請求項41】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が、1,500,000Daである、請求項38または39に記載の層状の組成物。
【請求項42】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して50%~85%w/wである、請求項38~41のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項43】
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して45%~70%w/wである、請求項38~41のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項44】
前記生体接着物質がPEOである、請求項38~43のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項45】
前記生体接着物質が、200,000ダルトンの分子量を有する、請求項38~44のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項46】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して35%~60%である、請求項38~45のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項47】
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して40%~55%である、請求項38~46のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項48】
前記原薬が抗炎症原薬である、請求項38~47のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項49】
前記原薬がコルチコステロイドである、請求項38~48のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【請求項50】
前記コルチコステロイドがプロピオン酸クロベタゾールである、請求項49に記載の層状の組成物。
【請求項51】
前記疎水性層がポリ(カプロラクトン)を含む、請求項38~50のいずれか1項に記載の層状の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高含量の生体接着物質(bioadhesive substance)を有する、すなわち繊維中の生体接着物質の濃度が乾燥基準で30%w/wまたはそれより多い、生体接着電界紡糸繊維に関する。繊維は、口腔粘膜または皮膚を介して体循環に原薬(drug substance)を送達するために、粘膜または皮膚、特に口腔粘膜へ塗布するための医薬または化粧用組成物で使用される。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
多くの物質は、生体接着特性を有する。生体接着物質を含有する電界紡糸繊維の調製における課題は、所望の期間粘膜または皮膚への接着性を得るのに十分な量で生体接着物質を組み込むことができるようにし、確実に(例えば、医薬または化粧用組成物の形態にある)繊維が塗布部位から放出したり分離したりしないようにもするために、個々の成分のバランスをとることである。
本発明は、生体接着電界紡糸繊維に関してWO2015189212として公開された、本出願人の前の特許出願のさらなる発展である。この公開から、生体接着物質として、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)を使用してもよく、その接着特性および溶解度特性に起因して、高分子量ポリエチレンオキシド、例えば、2,000,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドが好ましいことは明瞭である。WO2015189212に記載されている電界紡糸プロセスは、親水性の繊維形成ポリマーは可溶である1つの溶媒を使用することを含む一方で、生体接着物質は可溶ではなく固体の形態で溶媒に添加される。
Xinら:Flurorescent poly(p-phenylene vinylen)/poly(ethylene oxide) nanofibers obtained by electrospinning、Journal or Polymer Research、18巻、4号、2010年4月27日は、電界紡糸によって得られる蛍光性PPV/PEOナノ繊維に関する。PPVは、疎水性ポリマーである。本発明は、親水性の繊維形成ポリマーに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/189212号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Xinら:Flurorescent poly(p-phenylene vinylen)/poly(ethylene oxide) nanofibers obtained by electrospinning、Journal or Polymer Research、18巻、4号、2010年4月27日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の説明
本発明は、電界紡糸繊維を調製する方法であって、生体接着物質の溶液を親水性の繊維形成ポリマーの溶液に添加することを含み、この添加によって生体接着物質の沈殿がもたらされる、方法を提供することによって、これらの問題に取り組む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、A)オリジナルレシピの溶液、およびB)PEOの沈殿を含む本発明によるレシピからの電界紡糸膜の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明は、電界紡糸繊維を調製する方法であって、
i)繊維形成親水性ポリマーをC1~C3アルコールから選択されるアルコールに溶解するステップ、
ii)生体接着物質を水に溶解するステップであって、生体接着物質が25℃で3g/100mlもしくはそれより多い、または25℃で10g/100mlもしくはそれより多い水への溶解度を有し、生体接着物質が25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満、または25℃で0.1g/100mlもしくはそれ未満の、C1~C3アルコールから選択されるアルコールへの溶解度を有するステップ、
iii)ii)で得られた溶液を、i)で得られた溶液に撹拌下で添加し、それによって生体接着物質が沈殿し、均一な懸濁液が形成され、生体接着物質が粒子として懸濁されるステップ、および
iv)均一な懸濁液を電界紡糸して親水性繊維を得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0008】
したがって本発明は、生体接着物質の、水(生体接着物質が可溶である)およびアルコール(生体接着物質が沈殿する)への溶解度の差異に基づいている。上から分かるように、ステップi)でのアルコール中の含水量は比較的低くなければならず、これは親水性ポリマーがアルコールに可溶であるという事実に起因している。親水性繊維形成ポリマーは水または水性媒体中で通常は膨潤するので、電界紡糸の準備ができている懸濁液中の最終含水量は20~50%w/wを超えてはならないことに注意すべきであり、粘度が高すぎ、そのため懸濁液を凝固させることなく針を通して送達することができず、繊維を形成しない結果となる懸濁液を回避するために、膨潤を制御することは重要である。水の量が例えば50%w/wに相当する場合は、膨潤を回避するために、エタノールおよび水の溶液を混合したすぐ後(30分~1時間以内)に、紡糸プロセスを開始することが企図される。
【0009】
したがって、アルコール中および生成したアルコール-水混合物中における、親水性の繊維形成ポリマーの溶解度は重要である。アルコール中および生成したアルコール-水混合物中における親水性ポリマーの溶解度は、25℃で3g/100mlもしくはそれより多い、または25℃で10g/100mlもしくはそれより多い。
【0010】
そのうえ、生成したアルコール-水混合物中における生体接着物質の溶解度は、25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満、または25℃で0.1g/100mlもしくはそれ未満である。
【0011】
原薬は、その溶解度に応じて、方法のステップi)またはii)で含まれ得る。
【0012】
例えば、2,000,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドは、優れた生体接着特性を有するが、PEO2,000,000を使用する場合、電界紡糸プロセスが最適ではないことを本発明者らは見出した。PEOの比較的長い鎖に関係するPEOの高分子量に起因して、PEO2,000,000は繊維中の繊維形成親水性ポリマーと混合する傾向があるが、鎖長に起因して、例えば、PEO2,000,000の小さい表面積に起因して、繊維中のPEO2,000,000の分布はランダムすぎる可能性がある。これを緩和し、より均一な分布を得るために、微粉化したPEO2,000,000による実験を行った。しかしながら、十分小さい粒径のPEO2,000,000を得ることはできなかった。したがって紡糸プロセスで使用する針は、微粉化したPEO2,000,000を使用する場合、容易に詰まるようであり、得られる繊維は所望より強靭ではないようである。
【0013】
そのうえ、本明細書の実施例から分かるように、PEOの分子量を著しく低減したとしても、アルコール溶媒中のPEO懸濁液が親水性ポリマーと一緒にあると、電界紡糸材料中のPEOの分布が不均一になる。しかしながら、PEOを最初水に溶解し、次に、この水溶液を親水性ポリマーを含有するアルコール溶液と混合してPEOを沈殿させるという本発明による方法を適用すると、電界紡糸によって得られる繊維材料でPEOが均一に分布した所望の結果をもたらす。PEOは繊維材料の一体化した部分ではないが、繊維上で非常に微細な粒子として配置されていると企図される。
【0014】
WO2015/189212の開示と比較して生体接着物質の分子量を減少させた場合、所望の生体接着性を得るために、繊維中の生体接着物質の濃度の増加が必要であると企図される。
【0015】
強い生体接着性を達成するために、生体接着物質は電界紡糸繊維中で比較的高濃度、例えば30%w/wの濃度で使用されなければならない。これは、繊維を製造するプロセスをさらに複雑にする。
【0016】
特に目的のものは、本発明によって製造され、抗炎症原薬、例えばコルチコステロイドを含む組成物である。コルチコステロイドは、アムシノニド、ベタメタゾン、ブデノシド、クロベタゾール、クロベタゾン、コルチゾン、デソニド、デスオキシコルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、フルコルチゾン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオロメトロン、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロン、またはこれらの薬学的に許容されるエステルもしくはアセトニドからなる群から選択され得る。コルチコステロイドは、好ましくは、ベタメタゾン、ブデノシド、クロベタゾール、クロベタゾン、デスオキシメタゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、モメタゾンおよびトリアムシノロン、またはこれらの薬学的に許容されるエステルから選択され得る。コルチコステロイドエステルは、例えば、酢酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸デキサメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾンまたはフランカルボン酸モメタゾンであり得る。アセトニドはフルオシノロンアセトニドまたはトリアムシノロンアセトニドから選択され得る。コルチコステロイドは、好ましくは、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾンまたはプロピオン酸クロベタゾールである。本文脈で好ましいのは、クロベタゾールまたはその誘導体、例えば、プロピオン酸クロベタゾールである。
【0017】
コルチコステロイドは、脊椎動物の副腎皮質で生成する一種のステロイドホルモンである。
【0018】
コルチコステロイドは、
i)アレルギーおよび呼吸器学的疾患、例えば、喘息(重度の増悪)、慢性閉塞性肺疾患(CPOD)、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、じんましん、血管浮腫、アナフィラキシー、食物アレルギー、薬物アレルギー、鼻茸、過敏性肺炎、サルコイドーシス、好酸球性肺炎、および間質性肺疾患;
ii)皮膚病学、例えば、尋常性天疱瘡および接触皮膚炎;
iii)副腎機能不全および先天性副腎過形成を含む、内分泌学;
iv)潰瘍性大腸炎、クローン病および自己免疫性肝炎を含む、消化器病学;
v)血液学、例えば、リンパ腫、白血病、溶血性貧血および特発性血小板減少性紫斑病;
vi)関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発動脈炎および脈管炎を含む、リウマチ学/免疫学;
vii)ブドウ膜炎および角結膜炎を含む眼科学;
viii)多発性硬化症、器官移植、ネフローゼ症候群、慢性肝炎(再発)および脳浮腫を含む他の状態、
を含む様々な状態/疾患の治療で使用され得る。
【0019】
コルチコステロイドは、グルココルチコイドと鉱質コルチコイドに通常は分類される。本文脈では、ことにグルココルチコイドが目的のものである。本文脈では、目的のグルココルチコイドは、電界紡糸繊維を含む組成物に比較的容易な方法で適用することができる疾患の治療で通常は使用されるものである。コルチコステロイドに関しては、多くの組成物は皮膚または粘膜へ塗布することが意図され、こうした組成物は、
i)直接粘膜に、例えば、口腔、鼻、直腸または膣粘膜に、
ii)直接皮膚に、
iii)組成物が無菌の形態で提供されるという前提で、移植中に、移植組織に、
iv)手術中に、体の感染または疾患部位に、
v)直接創傷上に-外部または内部創傷に、
塗布され得る。
【0020】
本文脈における目的の他の原薬は、鎮痛剤または麻酔薬(antiesthetic)(例えば、リドカイン、カプサイシン)、免疫反応改質剤(例えば、イミキモド)、炎症性疾患、例えば、扁平苔癬、例えば、外陰-膣-歯肉症候群(vulvovaginal-ginival syndrome)を含む性器扁平苔癬である。
【0021】
しかしながら、任意の原薬が含まれ得ると企図される。
親水性電界紡糸層
【0022】
親水性材料の基本成分である親水性ポリマーは、繊維材料を形成する能力を有する成分である。電界紡糸繊維またはその組成物に存在する他の成分とのいかなる混乱も回避するために、「繊維形成親水性ポリマー」という用語を使用する。繊維形成親水性ポリマーは、好適には、C~Cアルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはイソプロパノール、とりわけエタノール、プロパノールもしくはイソプロパノール中で、または、含水量が最大20%w/w、好ましくははるかに少なく、例えば、最大5~10%w/wもしくは3~5%w/wであるこれらの水混合物中で、可溶であるまたはゲルを形成するポリマーである。紡糸プロセスは、紡糸プロセス中に針から地上に置かれた収集プレートに噴射的な様式で流れるために、繊維の主成分であるポリマーは溶解した形態にあって、溶解したポリマーの安定した流れを可能にする必要がある。
【0023】
好適な繊維形成親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリレートおよびアクリルコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標))、ならびにこれらの混合物である。例えば、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物のような他のポリマーも使用し得る。エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物は、ことに、ポリビニルピロリドン(PVP)および/またはアクリルコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標))を含むアクリレートと組み合わせて使用し得る。実施例では、ことに、PVPおよびアクリルコポリマーを使用してきた。他の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロース(これらのアルカリ塩を含む)、ならびにこれらの混合物であり得る。
【0024】
ポリビニルピロリドンは、およそ2,500Da~3,000,000Daの分子量を有する(例えば、12~120のK値を有するPovidone)グレードで使用することができる。PVPはKollidon(登録商標)として購入することができる:
【表1-1】
【表1-2】
【0025】
低いMW範囲に好適なグレードは、約25,000~約120,000Da、とりわけ約70,000~約100,000DaのMWを有することが企図される。本明細書の実施例では、Kolllidon(登録商標)90Fが主として使用され、その結果好ましいPVPは、約900,000~約3,000,000、とりわけ約1,000~約1,500,000のMを有する。
【0026】
エチルセルロースはETHOCEL(商標)(Dow Chemical Company)という商標の下で販売されており、多くの異なるグレードで入手可能である。Dow Chemical Companyは、2つのエトキシルタイプ(標準および中間と表示)でエチルセルロースを製造している。そのエトキシル含量に応じて、エチルセルロースは異なる軟化点および融点温度を有することができる。エチルセルロースは、いくつかの異なる粘度でも製造される。以下の表に、入手可能なエチルセルロースの一覧を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0027】
可塑化された形態でそれは優れた熱可塑性を有し、成形、押し出しまたは積層によって製造される組成物に有用である。エチルセルロースは優れたフィルム形成剤でもあり、例えばタブレットの被覆に使用される。上述のエチルセルロースの品質は、少なくとも45.0%のエトキシル含量を有し、その結果、それらはエタノールに可溶で、水に事実上不溶である。
【0028】
アクリレートおよびアクリル酸誘導体としては、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、アクリルコポリマーおよびメタクリレートポリマーが挙げられる。好ましいアクリレートは、EUDRAGIT(登録商標)という商標の下で販売されていてエタノールに可溶なもの、またはアクリレート/オクタアクリルアミドコポリマー(DERMACRYL 79という名称の下で販売)である。これらには、EUDRAGIT(登録商標)E 12,5(アミノメタクリレートコポリマー)、EUDRAGIT(登録商標)E 100(アミノメタクリレートコポリマー;塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー)、EUDRAGIT(登録商標)E PO(アミノメタクリレートコポリマー)、EUDRAGIT(登録商標)L 100-55、EUDRAGIT(登録商標)L 100(メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:1)、EUDRAGIT(登録商標)S 100(メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー 1:2)、EUDRAGIT(登録商標)RL 100、EUDRAGIT(登録商標)RL 100(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプA)、EUDRAGIT(登録商標)RL PO、EUDRAGIT(登録商標)RS 100(アンモニオメタクリレートコポリマー タイプB)、EUDRAGIT(登録商標)RS POが挙げられる。EUDRAGIT(登録商標)Eは、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよび他の中性メタクリル酸エステルに基づくカチオン性ポリマーであり:EUDRAGIT(登録商標)LおよびSは、メタクリル酸コポリマーであって、メタクリル酸とメチルメタクリレートのカチオン共重合生成物である。EUDRAGIT(登録商標)RLまたはRSは、アクリル酸とメタクリル酸から合成されるアンモニオメタクリレートコポリマーである。
【0029】
EUDRAGIT(登録商標)E 100はpH5.5以下で可溶であり、E 12.5はpH5を超えると可溶である。
【0030】
EUDRAGIT(登録商標)L30 D-55、L-100-55(メタクリル酸-エチルアクリレートコポリマー 1:1)、L100、L12,5は、通常は腸溶性製剤で使用されるが、本発明の繊維から原薬の放出を遅らせるために使用してもよい。EUDRAGIT(登録商標)L30 D-55、およびL-100-55はpH約5.5で溶解し、グレードL100およびL12,5はpH6またはそれより多いと溶解する。
【0031】
唾液のpHが通常は5~6であるので、これらのポリマーは口腔使用のための繊維にとって目的のものである。持続性または遷延性放出が所望される場合、高いpH 低いpHで可溶性のポリマーが、使用するのにより好適であり得る。
【0032】
EUDRAGIT(登録商標)製品は、持続性放出製剤にも利用可能であり、こうしたグレードは、単独でまたは別の親水性ポリマーと一緒に本発明の繊維の中に組み込むのに目的のものであり得る。関連するグレードは、RL、RS、NEおよびNMシリーズ、例えば、RL 100、RL PO、RL 30D、およびRL 12,5、RS 100、RS PO、RS 30D、およびRS 12,5、NE 30DおよびNE 40D、およびNM 30Dに属する。
【0033】
ヒドロキシプロピルセルロースは非イオンの水溶性セルロースエーテルである。それは有機溶媒への溶解度、熱可塑性および表面活性、ならびにその増粘特性および安定化特性を兼ね備えている。繊維は可撓性でありかつ高湿度で粘着性ではない。ヒドロキシプロピルセルロースは、KLUCEL(商標)という名称の下で販売されている。
【0034】
カルボキシメチルセルロースは、グレードの幅広い品ぞろえで入手可能である。粘度は、10~100,000mPa*sに及ぶ。カルボキシメチルセルロースは、広範囲の置換レベルを有するそのナトリウム塩としても入手可能である。Dow Chemical Companyは、WALOCEL(商標)という名称の下でカルボキシメチルセルロースナトリウムを販売している。
【0035】
ポリビニルアルコールは、およそ20,000Da~200,000Daの分子量を有するグレードで使用することができる。
【0036】
好ましい繊維形成親水性ポリマーは、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、アクリレートおよびアクリル酸誘導体、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0037】
電界紡糸繊維層の形態の親水性材料は、1つもしくは複数の原薬、1つもしくは複数の生体接着物質、1つもしくは複数の薬学的にまたは化粧品的に許容される賦形剤も含有し得る。こうした賦形剤としては、pH調節剤、防腐剤、味マスキング剤、酸化防止剤、安定剤、浸透強化剤などが挙げられる。そのうえ使用目的に応じて、他の賦形剤、例えば、可塑剤、界面活性剤などが存在してもよい。
【0038】
本発明による親水性材料中の繊維形成親水性ポリマーの濃度は、通常は100%w/w以下である。他の成分が含まれている場合、すべての成分を含有して確実に繊維が形成されるようにするために、繊維形成親水性ポリマーの最小濃度は一般に約25%w/wである。とりわけ、濃度は約40%~約92%w/w、とりわけ約50~約85%w/wまたは約60%~75%w/wである。
【0039】
組成物が粘膜表面上で使用するようにデザインされている場合は、粘膜への接着性を促進するために、生体接着物質を含むことは目的のものでありある。
【0040】
強い生体接着性を所望する場合、電界紡糸繊維中の生体接着物質の濃度は、比較的高い濃度、例えば20%w/wまたはそれより多い、とりわけ40%w/wまたはそれより多くなければならない。こうした高含量の生体接着物質を有する繊維を得るためには、電界紡糸プロセスで使用する溶媒中で低い溶解度を有する生体接着物質を選択する必要があり-それらが可溶性の場合、それらは膨潤し、電界紡糸を不可能にする、または少なくとも非常に困難にするであろう。
【0041】
マイルドな生体接着性を所望する場合、電界紡糸繊維中の生体接着物質の濃度は、最大20%w/wまたはそれより少ない、とりわけ10%w/wまたはそれより少ない濃度でなければならない。
【0042】
本発明の繊維は、生体接着物質も含有する。確実に繊維を容易に製造できるようにし、粘膜へ塗布した後にインサイチュで所望の生体接着特性を得るために、生体接着剤自体が、繊維形成親水性ポリマーを含有する溶液の粘度にそれほど寄与しないことが重要である。
【0043】
本文脈では、「生体接着」または「生体接着性」という用語は、指定された生物学的部位、例えば、皮膚の表面、唇または粘膜表面への付着を示す。生体接着物質は、本発明の薬物含有繊維に生体接着特性を付与する、またはある特定の場合には、例えば塗布の後に皮膚または粘膜に面する中間層、すなわち皮膚または粘膜に接している層である別の層として、それは本発明の組成物に含まれている可能性がある。
【0044】
本文脈で使用する生体接着物質は、デキストラン、ポリエチレンオキシド、アルギネート、トラガカント、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グアー、キサンタン、ゲラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースおよびそのアルカリ塩、アクリル酸のポリマー(PAA誘導体)、キトサン、レクチン、チオール化ポリマー、polyox WSRA、PAA-co-PEG(PEGはポリエチレングリコールである)、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0045】
一般に、ポリマーの接着作用は、分子量の増加とともに増加すると予想される。したがって、一般に比較的高分子量を有する接着性ポリマーが好ましい。
【0046】
ポリエチレンオキシドは、およそ100,000~4,000,000の分子量を有するグレードで使用することができる。ポリエチレンオキシドは、100,000~700,000Daに及ぶ分子量を有して、POLYOX(商標)(Dow Chemical Company)の名称の下で販売されている。本明細書の前で述べたように、500,000ダルトン未満の分子量を有するPEO、とりわけ約100,000~約400,000ダルトンの分子量を有するPEO、例えば約200,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドが好ましい。これは、本明細書で議論した溶解度の問題に起因している。
【0047】
類似する考察は、本明細書に述べる他の生体接着物質にも当てはまる。例えば高分子量を有するデキストランによる実験は、デキストランの微粉化も困難である、すなわち、分子量が1,000,000ダルトンを超える場合、微粉化した形態のデキストランを得ることが困難であることを示した。
【0048】
デキストランは、およそ400,000Da~約1,000,000Daの分子量を有するグレードで使用することができる。デキストランは約400,000~約700,000ダルトンの分子量を有する。
【0049】
セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0050】
メチルセルロースはMETHOCEL(商標)(Dow Chemical Company)という名称の下で販売されており、広範囲の粘度グレード(3未満~100,000mPA*sを超える)で入手可能である。
【0051】
HPMCは、粘度に応じて様々な品質で販売されている。HPMCは、Metocel(登録商標)およびKlucel(登録商標)という名称の下で販売されている。好適なHPMCは、約80,000~約140,000の平均分子量を有する。
【0052】
好ましい生体接着物質は、ポリエチレンオキシド、デキストランまたはこれらの組合せである。
【0053】
本発明による2層生成物を作製するのに使用する親水性材料は、原薬を含有し得る。原則として、原薬は、疾患または状態の治療のために粘膜または皮膚へ塗布するのに好適な、任意の原薬であり得る。特に目的のものは、皮膚、唇もしくは粘膜の疾患の治療のために示される原薬から選択される原薬である、または、本明細書で記載する内表面上へ塗布するための組成物に繊維が含まれている場合、原薬は、特定の治療のために示される任意の原薬であり得る。本文脈では、原薬は、口腔疾患の治療のために示される原薬、例えば、口腔疾患の局部的な治療のために示される原薬から選択され得る。原薬は、使用する親水性ポリマーおよび生体接着物質中における薬物の溶解度に応じて、溶解した、溶解しないまたは部分的に溶解した形態で存在し得る。
疎水性電界紡糸層および親水性電界紡糸層への適用方法
【0054】
疎水性材料は、疎水性電界紡糸層である。とりわけそれは不透水性であり、例えば、体液などの液体に対して閉塞性効果および/または保護効果を可能にする。特に、親水性材料内で原薬が液体中に溶解するのを保護することが望ましい湿潤環境で、2層生成物を使用する場合、後者が適切である。不透水性コーティングを提供する好適な材料としては、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、エチルセルロース、ポリ(カプロラクトン)、カーボタン(carbothane)またはポリソフタン(polysoftane)が挙げられる。
【0055】
親水性材料に関連して言及したように、材料は1つまたは複数の許容される賦形剤を含有し得る。親水性材料で言及した賦形剤も疎水性材料中で使用してもよく、逆もまた同様である。
【0056】
親水性繊維は、薄い層として調製される。例えば疎水性繊維形成ポリマーのさらなる電界紡糸層が、親水性層に付着され得る。これは、電界紡糸繊維から製造された疎水性の第2の材料に接続された、電界紡糸繊維から製造された親水性の第1の材料を含む2層生成物を作製するのに好適な圧力および熱を含むことを伴う方法によって行われ、前記第1の材料は薬物を含有していてもよく、前記方法は、
- 前記方法は第1の表面および第2の表面を含むプレスを使用することを含み、前記第2の表面は前記第1の表面の温度より高い温度を有すること、
- 前記第1および第2の材料は、プレスの第1の表面と第2の表面の間に層状の組合せで配置され、圧力は前記プレスの前記第1の表面および第2の表面から、前記層状の組合せの方に提供され、前記第1の材料は前記プレスの前記第1の表面と接触すること、
- 第1の表面と第2の表面の間の圧力ならびに前記第2の材料の温度の組合せによって、前記第1および第2の材料は前記2層生成物に接続されること
を特徴とする。
【0057】
層状の組合せとは、第1の材料および第2の材料はそれらの主面が平行であるように配置される、すなわち、スタックまたはサンドイッチに似て、前記材料は互いの上に配置されることを意味する。
【0058】
第1の材料と第2の材料の間の接続とは、確実に前記材料が偶然に分離されないようにする、物理的および/または化学的な、あらゆる種類の接続を意味する。物理的接続は電界紡糸繊維間のからみ合いであってもよく、一方、化学的接続は化学結合として明示されてもよい。接続は物理的接続、または分子レベルの弱い相互作用(イオン-イオン相互作用、ファンデルワールス力)によって確立されることが企図される。
【0059】
第2の表面による疎水性の第2の材料の加熱は、親水性の第1の材料と疎水性の第2の材料間の結合の強さを増加させる。より具体的には、疎水性の第2の材料のポリマーを、ポリマーの融点未満の温度に、または代わりに融点もしくはそれより高いが、ポリマーが完全に溶けてポリマーが第2の表面へ接着することを回避するために、比較的短時間加熱することによる。続く加熱の終了を通した2層生成物の冷却によって、親水性および疎水性電界紡糸層はそれらの新しい位置で固定される。
【0060】
親水性の第1の材料は、本発明による原薬を含有してもよく、前記親水性の第1の材料の上昇した温度によって前記薬物の特性が変わる恐れがある。したがって、前記第1の親水性材料の加熱を回避することが望ましい。しかしながら、これは使用する薬物次第の可能性がある。
【0061】
加熱手段は、プレスの表面を所定の温度に加熱することができる任意の手段であり得る。加熱は、電気抵抗、表面へ熱を移動させる熱媒液(hot fluid)、または開示したプレスへ組み込むことができる任意の他の加熱手段から発生し得る。
【0062】
結合する材料に接するプレス表面の材料は、電界紡糸繊維の化学組成を損なわない任意の材料であり得る。さらに、熱を移動させるための優れた熱容量を有する材料、および高圧に耐えることができる材料が望まれる。このため、金属は好ましい材料であるが、セラミックスもまた本発明の範囲内で予測される。
【0063】
一実施形態では、プレスは、カレンダーとも表示され、2つの逆回転するローラーを有するローラープレスである。ローラーは、こうしたプレス分野で一般に使用される任意の機械によって駆動され得る。2つのローラーは、相互に平行であり、第1および第2の材料を2層生成物に結合するのに必要な圧力を促進する大きさの隙間を有するように並べられている。1つのローラーの表面は、他のローラーの表面温度より高い温度に加熱される。互いの逆方向に回転するローラーに起因して、2つのローラーの表面が隙間へ収束するところでインプットが作り出され、一方、2つのローラーの表面が隙間から分かれるところでアウトプットが作り出される。2層生成物を達成するために、疎水性材料および親水性材料は層状の組合せで配置され、疎水性材料が加熱表面を有するローラーと接触するようにインプットに供給される。ローラーの回転、十分な圧力を確実にする隙間の大きさ、およびローラー表面の温度に起因して、2つの材料は2層生成物へ結合され、ローラーのアウトプットを通って出される。
【0064】
一実施形態では、プレスは、実質的に平らで相互に平行な第1の表面および第2の表面を含むプレートプレスである。前記2つの相互に平行な表面は、互いに対して後退(retract)およびより近くに移動することができる。前記表面の1つは、他の表面の温度より高い温度に加熱される。結合する前に、第1の親水性材料および結合される第2の疎水性材料は、疎水性材料が加熱された表面に接する層状の組合せで、2つの表面の間に配置される。第1の表面と第2の表面を相互により近くに移動させることによって、層状の組合せの上に圧力が加えられ、表面の温度と組み合わせて、結合が生じる。続いて、平行な表面は後退され、結合から形成された2層生成物がプレスから取り出される。プレスは水力学によって駆動され得るが、他の機械プレスが本発明の範囲内で予測される。
【0065】
プレスは、平らな表面と、前記表面を横切って転がるように配置されたローラーとの組合せであってもよい。ローラーの表面か平らな表面のいずれかは、反対側の表面の温度より高い温度に加熱される。親水性の第1の材料および疎水性の第2の材料は、第2の疎水性材料が加熱された表面に接して、平らな表面上に層状の組合せで配置される。ローラーは、第1および第2の材料を2層生成物に結合するのに十分な圧力を加えながら、前記層状の組合せを横切って転がるように設定される。平らな表面上で所定の距離に設定されたローラーを通して圧力を加えてもよく、または、外部力学、例えば水力学の使用によって、層状の組合せの上にローラーをさらに押し下げてもよい。
【0066】
一実施形態では、疎水性材料および親水性材料は、結合するプロセスの前に薄板または層に形作られ、前記薄板の厚みは薄板の他の寸法より著しく小さい。
【0067】
親水性材料および疎水性材料の厚みは同一である必要はない。疎水性層の厚みが厚いほど、それはより可撓性ではない。したがって可撓性の層を達成するために、疎水性層は親水性層と同じかより小さい厚みで適用される。疎水性層の機能が、疎水性層を介して親水性層に水または体液が入るのを妨げることである場合、水または体液の衝撃に耐えるために、層は十分に厚く強靭でなければならない。通常、疎水性層は1m当たり10~50gの量で存在する。通常は、100μm未満の厚みが得られる。
【0068】
疎水性材料が親水性材料のエッジも覆うように、疎水性材料が親水性材料より大きな広がりを有する状況も存在し得る。
【0069】
一実施形態では、プレスの第1の表面および第2の表面の両方が所定の温度に加熱される、または、両表面が加熱される能力を有し得る。表面の温度は温度差を有する。
【0070】
本明細書で前に言及した賦形剤に加えて、疎水性および/または親水性繊維は可塑剤を含有してもよい。可塑剤は繊維にある特定の可塑性を付与し、それは製造プロセスを促進することができ、かつ/または、ポリマーの可撓性および加工性を改善することができる。好適な可塑剤の例は、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルまたはクエン酸トリエチルのようなクエン酸エステル、ひまし油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、ソルビトール、グリセロールまたはトリアセチンもしくはトリブチリンのようなグリセロール誘導体、硝酸セルロースのようなセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、とりわけ約100~約1500の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールのようなグリコール、またはこれらの混合物である。
【実施例
【0071】
溶液の調製および電界紡糸プロセス
a)繊維を調製する比較方法:
無水アルコールのを秤量する。6.52重量%のKollidon 90Fおよび8.15重量%のEudragitRS100(アルコール量)を撹拌中に徐々に加える。24時間撹拌を継続する。撹拌しながら13.05重量%のPolyox WSR N-80(PEO 200,000Mw)を徐々に加える。均一な懸濁液が作り出されるまで、撹拌し続ける。最終混合物は27.72%の全固形分(オリジナルレシピの66%)を有する。
【0072】
2mL/h、針のチップとコレクターとの間の10cmの距離、および3時間中13kVの差異で、シングル針注入器(15G)を用いて加工する。最終膜(繊維層)は1m当たり147.4gであった。
【0073】
b)本発明によるレシピ:
無水アルコールを秤量する。8重量%のKollidon 90Fおよび10重量%のEudragitRS100(アルコール量)を撹拌中に徐々に加える。24時間撹拌を継続する。
【0074】
蒸留水を秤量する。16重量%のPolyox WSR N-80(PEO 200,000Mw)を撹拌中に徐々に加える。24時間撹拌し続ける。
【0075】
アルコール溶液を水溶液に撹拌しながら徐々に加える。均一な混合物が形成されるまで、撹拌し続ける。最終混合物は17%の全固形分を有する。
【0076】
110mL/h、針のチップとコレクターとの間の19cmの距離、および数時間中60kVの差異で、マルチ針注入器(56針20G)を用いて加工する。最終膜(繊維層)は1m当たり160であった。さらに分析するために、12×5cmの小片を切断した。
膜の形態的特性評価
【0077】
両方の膜(繊維層)は走査電子顕微鏡によって検査した。試料は金-パラジウム混合物で180秒間スパッタリングし、5kVの加速電圧および8mmの作動距離にて、Hitachi S4800で観察した。
【0078】
図1は、1500倍で撮った両方の膜の画像を示す。主として、より低い全固形分および加えた電圧のより大きな差異に起因して、本発明により製造した試料はより小さな繊維径を有した。比較試料は、以前に観察したように、繊維間にPEOの大きな粒子を示した。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
電界紡糸繊維を調製する方法であって、
i)繊維形成親水性ポリマーをC1~C3アルコールから選択されるアルコールに溶解するステップ、
ii)生体接着物質を水に溶解するステップであって、前記生体接着物質が25℃で3g/100mlもしくはそれより多い、または25℃で10g/100mlもしくはそれより多い水への溶解度を有し、前記生体接着物質が25℃で0.5g/100mlもしくはそれ未満、または25℃で0.1g/100mlもしくはそれ未満の、C1~C3アルコールから選択されるアルコールへの溶解度を有するステップ、
iii)ii)で得られた溶液を、i)で得られた溶液に撹拌下で添加し、それによって前記生体接着物質が沈殿し、均一な懸濁液が形成され、前記生体接着物質が粒子として懸濁されるステップ、および
iv)前記均一な懸濁液を電界紡糸して親水性繊維を得るステップ
を含む、方法。
(項目2)
ステップi)またはステップii)で原薬を溶解または懸濁させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリレートおよびアクリルコポリマー(Eudragit(登録商標))、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記生体接着物質が、デキストラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギネート、トラガカント、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、グアー、キサンタン、ゲラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル酸のポリマー(PAA誘導体)、キトサン、レクチン、チオール化ポリマー、polyoxo WSRA、PAA-co-PEG(PEGはポリエチレングリコールである)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記生体接着物質がPEOである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記生体接着物質が、約100,000~約500,000ダルトンの分子量を有するPEOである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記生体接着物質が、約200,000ダルトンの分子量を有するポリエチレンオキシドである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記繊維が、ポリビニルピロリドン、アクリレートおよびアクリルコポリマー、ならびにこれらの混合物から選択される親水性ポリマーを含有する、項目1または2に記載の方法。
(項目9)
前記繊維中の前記繊維形成親水性ポリマーの濃度が、全乾燥重量の合計に対して約40%~約70%w/w、とりわけ約45~約70%w/wまたは約50%~70%w/wである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記繊維中の前記生体接着物質の濃度が、全乾燥重量の合計に対して約30%~約60%w/w、とりわけ約35~約60%または約40%~約55%w/wである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
C1~C3溶媒がエタノールである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
原薬がステップi)に添加される、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記原薬が抗炎症原薬である、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記原薬がコルチコステロイドである、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記電界紡糸親水性繊維を電界紡糸疎水性層に接触させるステップをさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
図1A
図1B