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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】圧力センサを備えた真空弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/02 20060101AFI20230925BHJP
   F16K 3/18 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F16K51/02 B
F16K3/18 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019566095
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067465
(87)【国際公開番号】W WO2019002490
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】17179074.4
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン エシェンモーザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホーファー
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-163137(JP,A)
【文献】特開2003-90457(JP,A)
【文献】特開平7-77471(JP,A)
【文献】特表2011-513832(JP,A)
【文献】特表2010-534302(JP,A)
【文献】特開2013-234959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0229975(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/02
F16K 3/18
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するための真空弁(1)と、少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)と、位置センサ(25)と、前記少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)と前記位置センサ(25)に接続される処理ユニット(18)と備える真空弁システムであって、
前記真空弁(1)は、
・開口軸線(H)を定める弁開口(2)と、該弁開口(2)を包囲している第1のシール面(3)とを有する弁座と、
・体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を遮断するための弁閉鎖部材(4)であって、前記弁閉鎖部材(4)は、前記第1のシール面(3)に対応する第2のシール面(6)を備えており、該第2のシール面(6)の可変の位置は、前記弁閉鎖部材(4)のその時々の位置および向きにより決められている、弁閉鎖部材(4)と、
・前記弁閉鎖部材(4)と連結されていて、少なくとも1つのピストン(13,13’)とシリンダ孔(9,9’)とを備えた少なくとも1つのピストン・シリンダユニット(8,8’)を有する、少なくとも1つの駆動ユニット(7,7’)であって、該駆動ユニット(7,7’)はさらに、前記ピストン(13,13’)の少なくとも一方の圧力作用面(F1,F2)に供給するための圧力媒体を有しており、前記駆動ユニット(7,7’)を介して、前記弁閉鎖部材(4)は、
-該弁閉鎖部材(4)と前記弁座とが互いに非接触状態にある開放位置(O)から、
-前記第1のシール面(3)と前記第2のシール面(6)との間に前記開口軸線(H)に対して軸方向でシールする接触が生じ、これにより前記弁開口(2)が気密に閉鎖されている閉鎖位置(G)へ、
かつその逆に変位可能である、駆動ユニット(7,7’)と、
を備え
前記少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)、前記圧力媒体の圧力測定実施可能であるように形成されており、
前記位置センサ(25)は、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)の位置を実施可能であるように構成されており、
前記処理ユニット(18)は、前記少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)による前記圧力測定および前記位置センサ(25)による前記位置測定に基づき、前記第1のシール面(3)及び前記第2のシール面(6)の少なくとも一方のシールの力-変位特性線を作成することができるように構成されていることを特徴とする、真空弁システム
【請求項2】
前記駆動ユニット(7,7’)は、前記圧力媒体用の少なくとも1つのホース導管または導管(14,14o,14u,14’,14o’,14u’)を有しており、前記圧力センサ(10,10’)は前記ホース導管または導管(14,14o,14u,14’,14o’,14u’)内に組み込まれている、請求項1記載の真空弁システム
【請求項3】
前記圧力センサ(10,10’)は、
・前記圧力媒体の圧力を連続して測定するように、かつ/または
・0~10barの圧力範囲を測定するように、かつ/または
・絶対圧を測定するように
形成されている、請求項1または2記載の真空弁システム
【請求項4】
前記圧力センサ(10,10’)は圧力測定用に、変形可能なダイヤフラムおよび/または圧電結晶および/または水晶共振器および/または圧電共振器を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項5】
・前記圧力センサ(10,10’)は、当該真空弁(1)により規定されかつ外部環境から隔離された真空領域の外側に配置されている、かつ/または
・前記弁座は、構造的に当該真空弁(1)と結合された、当該真空弁(1)の構成部材により形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項6】
前記圧力センサ(10,10’)は、
・前記ピストン・シリンダユニット(8,8’)の少なくとも1つの入口圧力が測定可能であるように、かつ/または
・前記シリンダ孔(9,9’)の少なくとも1つのチャンバ(11o,11u)内の圧力が測定可能であるように、
前記真空弁(1)内に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項7】
前記真空弁(1)は、前記弁閉鎖部材(4)を2つの異なる方向に変位させるために、2つの前記ピストン・シリンダユニット(8,8’)を有しており、前記少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)は、前記ピストン・シリンダユニット(8,8’)のそれぞれに設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項8】
前記位置センサ(25)は、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)の位置を連続して測定するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項9】
前記位置センサ(25)による前記位置測定と前記圧力センサによる前記圧力測定(10,10’)とは互いに制御可能であり、これにより、休止位置から前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)が変位するために必要な圧力を決定することができるようになっており、かつ/または
前記圧力センサ(10,10’)および前記位置センサ(25)は、前記圧力測定と前記位置測定の両方に基づき、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)のそれぞれの運動が導出可能であるように構成されてる、請求項1から8までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項10】
前記処理ユニット(18)は、検出された圧力センサ測定信号を前記処理ユニット(18)により処理することができると共に、前記検出された圧力センサ測定信号に基づき当該真空弁(1)の状態情報が求められるように形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の真空弁システム
【請求項11】
前記状態情報は、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記駆動ユニット(7,7’)の機械的かつ/または構造的な完全性に関して提供される、請求項10記載の真空弁システム
【請求項12】
予め規定された誤差値による前記状態情報の補正に基づき、前記真空弁(1)により制御されるプロセスの評価に関して出力信号が供給される、請求項10または11記載の真空弁システム
【請求項13】
真空弁システムを制御する方法であって、前記真空弁システムは、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するための真空弁(1)と、少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)と、位置センサ(25)と備え、
記真空弁(1)は、
・開口軸線(H)を定める弁開口(2)と該弁開口(2)を包囲している第1のシール面(3)とを有する弁座と、
・前記第1のシール面(3)に対応する第2のシール面(6)を備え、該第2のシール面(6)の可変の位置は、弁閉鎖部材(4)のその時々の位置および向きにより決められている、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を遮断するための弁閉鎖部材(4)と、
・前記弁閉鎖部材(4)と連結されていて、少なくとも1つのピストン(13,13’)とシリンダ孔(9,9’)とを備えた少なくとも1つのピストン・シリンダユニット(8,8’)を有する、少なくとも1つの駆動ユニット(7,7’)であって、該駆動ユニット(7,7’)はさらに、前記ピストン(13,13’)の少なくとも一方の圧力作用面(F1,F2)に供給するための圧力媒体を有しており、前記駆動ユニット(7,7’)を介して、前記弁閉鎖部材(4)は、
-該弁閉鎖部材(4)と前記弁座とが互いに非接触状態にある開放位置(O)から、-前記第1のシール面(3)と前記第2のシール面(6)との間に前記開口軸線(H)に対して軸方向でシールする接触が生じ、これにより前記弁開口(2)が気密に閉鎖されている閉鎖位置(G)へ、
かつその逆に変位可能である、駆動ユニット(7,7’)と、
を備え
少なくとも1つの圧力センサ(10,10’)により、当該方法の枠内で前記圧力媒体の圧力を実施し、
前記位置センサ(25)により、当該方法の枠内で追加的に、前記圧力測定と結び付けられた、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)の位置測定を実施し、
前記圧力測定および前記位置測定に基づき、前記第1のシール面(3)及び前記第2のシール面(6)の少なくとも一方のシールの力-変位特性線を作成することを特徴とする、真空弁システムを制御する方法。
【請求項14】
当該方法の枠内で、前記圧力測定に基づき前記真空弁(1)の状態情報を求める、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記圧力測定および前記位置測定に基づき、前記開放位置(O)および/または前記閉鎖位置(G)から前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)が変位するために必要な圧力を決定し、かつ/または
前記圧力測定と前記位置測定の両方に基づき、前記弁閉鎖部材(4)および/または前記ピストン(13,13’)の運動をそれぞれ導出し、場合により生じ得る不一致に関して、導出された両方の前記運動を比較る、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の真空弁システムの制御・処理ユニットに記憶されたプログラムコードまたは請求項13記載の方法を実施する電磁波により体現されるコンピュータデータ信号を有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの圧力センサを備えた真空弁およびこのような方法に関する。
【0002】
一般に、体積流量または質量流量を制御するためおよび/または弁ケーシングに加工成形された開口に通じる流路を実質的に気密に閉鎖するための真空弁は、従来技術から様々な実施形態において周知であり、特に保護雰囲気中で可能な限り汚染粒子の存在無しで行われねばならないIC製造、半導体製造または基板製造の分野で真空チャンバシステムに使用される。このような真空チャンバシステムは、特に加工または製造されるべき半導体素子または基板を収容するために設けられる、排気可能な少なくとも1つの真空チャンバを有しており、真空チャンバは、半導体素子または別の基板を真空チャンバ内へ導入可能かつ真空チャンバから導出可能な少なくとも1つの真空チャンバ開口ならびに真空チャンバを排気するための少なくとも1つの真空ポンプを有している。例えば半導体ウェハまたは液晶基板用の製造設備内では、高感度の半導体素子または液晶素子が連続的に複数のプロセス真空チャンバを通走し、これらのプロセス真空チャンバにおいて、その内部に位置する部品がその都度、加工装置により加工される。プロセス真空チャンバ内での加工処理中も、チャンバからチャンバへの移動中も、高感度の半導体素子または基板は、常に保護雰囲気中-特に真空環境中-に位置していなければならない。
【0003】
このために一方では、気体供給部または気体放出部を開閉するためには外周弁が使用され、かつ他方では、部品の導入および導出用の真空チャンバの移動開口を開閉するためには切換弁が使用される。
【0004】
半導体部品を通す真空弁は、説明した使用分野およびこれに関係する寸法設定に基づき真空切換弁と呼ばれ、真空弁のほぼ矩形の開口横断面に基づき矩形弁とも呼ばれ、かつ真空弁の一般的な機能形式に基づき摺動弁、矩形スライダまたは切換摺動弁とも呼ばれる。
【0005】
外周弁は、特に真空チャンバと真空ポンプまたは別の真空チャンバとの間の気体流をコントロールまたは制御するために使用される。外周弁は、例えばプロセス真空チャンバまたは移動チャンバと、真空ポンプ、雰囲気または別のプロセス真空チャンバとの間の管系内に位置している。ポンプ弁とも呼ばれるこのような弁の開口横断面は、一般に真空切換弁におけるよりも小さくなっている。外周弁は、使用分野に応じて開口を完全に開閉するためだけでなく、完全な開放位置と気密な閉鎖位置との間で開口横断面を連続的に調節することにより、流量をコントロールまたは制御するためにも使用されるため、外周弁は制御弁とも呼ばれる。気体流をコントロールまたは制御するための1つの可能な外周弁は、揺動弁である。
【0006】
例えば米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から公知のような典型的な揺動弁では、第1のステップにおいて、通常は円形の弁板が、やはり通常は円形の開口の上に、開口を開放する位置、つまり開放位置から、開口を覆う中間位置へ、回転式に旋回させられる。例えば米国特許第6416037号明細書(Geiser)または米国特許第6056266号明細書(Blecha)に記載されたような摺動弁の場合には、弁板は開口と同じく、大抵は矩形に形成されており、前記第1のステップにおいて、開口を開放する位置から、開口を覆う中間位置へ直線的に摺動させられる。この中間位置において、揺動弁または摺動弁の弁板は、開口を包囲する弁座に対して離間された対向位置に位置している。第2のステップにおいて、弁板と弁座との間の距離は縮小され、これにより、弁板と弁座とは互いに均一に押圧されることになり、その結果、開口が実質的に気密に閉鎖される閉鎖位置に、弁閉鎖部材が到達する。この第2の運動は、好適には弁座に対して実質的に垂直な方向に行われる。
【0007】
シールは、例えば弁板の閉鎖側に配置され、開口を包囲する弁座に押し付けられるシールリングを介して行われるか、または弁板の閉鎖側が押し付けられる、弁座に設けられたシールリングを介して行われる。2つのステップで行われる閉鎖過程により、シールリングが弁板と弁座との間でシールリングを破壊する恐れのある剪断力を受けることはほとんど無い。それというのも、第2のステップにおける弁板の運動が、弁座に対して実質的に直線的に垂直に行われるからである。
【0008】
異なるシール装置が、従来技術から、例えば米国特許第6629682号明細書(Duelli)から公知である。真空弁におけるシールリングおよびシールに適した材料は、例えばFKMとも呼ばれるフッ素ゴム、特に商品名「Viton」で知られているフッ素エラストマ、ならびにパーフルオロゴム、略してFFKMである。
【0009】
従来技術から、揺動弁の場合には弁板の、開口上での平行な回動運動および実質的に開口に垂直に向かう並進運動および摺動弁の場合には弁板の、開口上での平行な並進運動および実質的に開口に垂直に向かう並進運動を得るための、複数の異なる駆動システムが、例えば揺動弁に関しては前掲の米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から、かつ摺動弁に関しては前掲の米国特許第6416037号明細書(Geiser)から公知である。
【0010】
この場合、駆動ユニットは、運動に必要とされる力もしくはエネルギを、例えば電動モータを介して供給し、電動モータは、例えば変位アームとの連結部を介して弁閉鎖部材を駆動する。同様に従来技術から、例えば独国特許出願公開第19746241号明細書から公知の空圧式の駆動ユニットは、圧力媒体でもって運転される少なくとも1つのピストン・シリンダユニットを有しており、少なくとも1つのピストン・シリンダユニットは、弁閉鎖部材に連結されている。
【0011】
弁座に対する弁板の圧着は、所要の気密性が全押圧領域内で保証されていると共に、極度に高い加圧によるシール媒体、特にOリングの形態のシールリングの損傷が回避されるように行われる必要がある。このことを保証するために、周知の弁は、弁板の両面間で支配的な圧力差に応じて制御される、弁板の圧着圧力制御を想定している。ただし、特に大きな圧力変動または負圧から過剰圧力へのまたはその逆の変化に際して、シールリングの全周に沿って均一な力分布を常に保証することはできない。一般に、弁に加えられる圧力から生じる支持力からシールリングを分離することを目標とする。このために前掲の米国特許第6629682号明細書(Duelli)では、例えばシールリングと隣接する支持リングとから構成されたシール媒体を備えた真空弁が提案され、シールリングは支持力から実質的に解放されている。
【0012】
場合により過剰圧力と負圧の両方に対して必要とされる気密性を達成するために、少なからぬ周知の揺動弁または摺動弁が、第2の運動ステップに対して追加的または択一的に、弁板に対して垂直に摺動可能であり、開口を包囲している弁リングを想定しており、弁リングは、弁を気密に閉じるために弁板に対して押圧される。弁板に対して相対的に能動的に摺動可能な弁リングを備えたこのような弁は、例えば独国特許出願公告第1264191号明細書、独国特許発明第3447008号明細書、米国特許第3145969号明細書(von Zweck)および西独国実用新案公開第7731993号明細書から公知である。米国特許第5577707号明細書(Brida)には、開口を有する弁ケーシングと、開口上を平行に旋回可能な弁板とを備えた、開口を通る流量をコントロールするための揺動弁が記載されている。開口を包囲する弁リングは、複数のばねおよび圧縮空気シリンダにより、弁板に向かって垂直に能動的に可動である。この揺動弁の可能な改良は、米国特許出願公開第20050067603号明細書(Lucas他)において提案される。
【0013】
上記弁はとりわけ、高感度の半導体素子の製造において真空チャンバ内で使用されるため、このようなプロセスチャンバのためにも相応のシール作用が確実に保証されていなければならない。このためには特に、シール材料または加圧時にシール材料と接触するシール面の状態が重要である。真空弁の運転時間が経過するにつれて、典型的にはシール材料またはシール面の摩耗が生じる恐れがある。
【0014】
さらに、駆動システムもしくは弁の機械的に可動の構成部材は故障しやすい。例えば、摩耗現象または劣化現象に基づき、または機械的な衝撃等の外部の不都合な影響に基づき、空圧式の弁駆動装置のピストン・シリンダユニットの損傷が、例えばピストンの非密閉性不密性または内部摩擦の増大の形態で生じる恐れがある。このような状況は、真空弁のシール作用または機能もしくは信頼性全体を損なう恐れがある。このような故障を早期にもしくは事前に検出する手段は、これまでの従来技術には存在しない。
【0015】
したがって、弁もしくはシールの質を十分に高い一定のレベルに保つために、例えばシール、空圧式の駆動部材等の弁の構成部材または弁全体が交換されるもしくは新しくされることにより、典型的には所定の時間間隔で弁の保守が頻繁に行われる。この場合、このような保守サイクルは、大抵所定の期間内に予測され得る開放サイクルおよび閉鎖サイクルの数に対して設定される。つまり、保守は大抵用意周到に、非密閉性またはその他の機能障害の発生を事前に十分に排除することができるように行われる。
【0016】
この弁保守の1つの欠点は、その用意周到な特徴にある。保守に関係する構成部材は、大抵その正規のまたは実際の耐用年数を経過する前に新しくされるかまたは交換され、このことはコストの増加を意味する。さらに、このような各保守ステップは一般に、製造プロセスに関してある程度の停止時間や、技術的な手間および財政的な支出の増加を必要とする。この場合、このことは全体として、必要とされているよりも短い間隔での、必要と考えられているよりも頻繁な製造停止状態を意味する。
【0017】
よって本発明の根底を成す課題は、最適化された運転を可能にする、改良された真空弁を提供することにある。
【0018】
本発明の別の課題は、最適化された弁保守ひいては場合により生じるプロセス停止状態の改善すなわち短縮を可能にする、改良された真空弁を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに別の課題は、個々の弁構成部材の耐用年数の延長を可能にする、改良された真空弁を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに別の課題は、真空弁を制御するために改良された方法を提供することにある。
【0021】
これらの課題は、各独立請求項記載の特徴の実現により解決される。本発明を択一的または有利に改良する特徴は、各従属特許請求項から看取され得る。
【0022】
本発明の根底を成す思想は、真空弁に、圧力媒体を有しかつ圧力センサを備えた、好適には空圧式または電気空圧式の駆動ユニットを装備し、圧力センサは、駆動ユニットの圧力媒体の圧力測定を可能にすることにある。
【0023】
つまり本発明の対象は、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するための真空弁、好適には真空摺動弁、揺動弁またはモノバルブであって、弁座を備えており、弁座は、開口軸線を定める弁開口と、弁開口を包囲している第1のシール面とを有している。この場合、弁座は真空弁の統合または構造構成部材であってよく、特に弁ケーシングの一部を体現していてよい。択一的に、弁座はプロセスチャンバ、例えば真空チャンバの開口により形成されていてよく、弁座に対して相対的に可動の弁閉鎖部材と協働して、本発明の意味での真空弁を形成することができる。
【0024】
さらに真空弁は、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を遮断するための弁閉鎖部材、特に弁板を有しており、弁閉鎖部材は、第1のシール面に対応する第2のシール面を備えており、第2のシール面の可変の位置は、弁閉鎖部材のその時々の位置および向きにより決められている。さらに真空弁は、弁閉鎖部材と連結されていて、少なくとも1つのピストンとシリンダ孔とを備えた少なくとも1つのピストン・シリンダユニットを備えた駆動ユニットを有している。駆動ユニットは、好適には空圧式または電気空圧式であるが、液圧式の駆動ユニットとして形成されていてもよい。駆動ユニットはさらに、弁閉鎖部材の変位運動を実施するためにピストンの少なくとも一方の圧力作用面に供給するための圧力媒体を有している。つまり駆動ユニットを介して、弁閉鎖部材は、弁閉鎖部材と弁座とが互いに非接触状態にある開放位置から、特にシールを介して第1のシール面と第2のシール面との間に開口軸線に対して軸方向でシールする接触が生じ、これにより弁開口が気密に閉鎖されている閉鎖位置へ、かつその逆に変位可能である。
【0025】
任意には、2つのシール面のうちの1つまたは両方は、シール材料から成るシールを有している。シール材料は、シール面に加硫されて被着されているか、またはOリングとして弁閉鎖部材または弁座に形成された溝内に存在する、例えばポリマを基本とした材料(例えばエラストマ、特にフッ素エラストマ)であってよい。つまり本発明の枠内では、好適には弁開口を閉鎖する(閉鎖位置)ようにシール材料から成るシールが加圧された状態で存在する面が、シール面と見なされる。
【0026】
本発明に基づき、真空弁はさらに、少なくとも1つの圧力センサを有しており、この場合、圧力センサは、圧力媒体の圧力測定が実施可能であるように形成されかつ配置されている。
【0027】
つまり本発明による真空弁は-好適には駆動ユニット内に、例えば駆動ユニットの圧力媒体導管または圧力媒体ホース導管内に組み込まれて-圧力媒体の圧力を、例えば所定の時間間隔で測定する圧力測定器を有している。好適には、圧力センサは圧力媒体の圧力を連続して測定するように形成されており、これにより、例えば圧力媒体圧力の連続的な監視が行われる。
【0028】
さらに、圧力センサの圧力測定範囲は、任意には駆動ユニットの圧力作動範囲に合わせられており、この場合、有利には、生じ得る不規則な圧力変動に対しては予備分が提供される。好適には、圧力センサは、0bar~10barの圧力範囲を測定するように形成されており、この場合、別の選択肢として、測定された圧力は、デジタル出力信号および/または好適には0~10ボルトのアナログ出力電圧に変換される。この場合、デジタル出力信号は、好適にはデジタルインタフェース(例えばSPIまたはI2C)を介して伝送もしくは転送される。いくつかの実施形態では、これは絶対圧測定用の圧力センサである。
【0029】
圧力測定用に、圧力センサは選択肢として、変形可能なダイヤフラムおよび/または圧電結晶および/または水晶共振器または圧電共振器を有している。つまりこの場合、圧力センサの機能原理は、圧力媒体が作用することによるダイヤフラムの機械的な変形(および例えば誘導測定または容量測定による変形の検出)、または電荷もしくは圧力作用もしくは力作用による電荷の変化の測定、または圧力作用に基づく振動特性の変化の測定である。
【0030】
本発明による真空弁の特に有利な実施形態では、圧力センサは、真空弁により規定されかつ外部環境から隔離された真空領域の外側に配置されている。
【0031】
任意には、圧力センサは、ピストン・シリンダユニットの少なくとも1つの入口圧力が測定可能であるように、真空弁内に配置されている。好適には、真空弁は、ピストン・シリンダユニットの2つもしくは両方の入口圧力が測定可能であるように形成されている。択一的または追加的に、圧力センサ(または1つの別の圧力センサ)は、シリンダの少なくとも1つのチャンバ、特に2つのチャンバ内の圧力が測定可能であるように、真空弁内に配置されている。
【0032】
少なからぬ実施形態において、真空弁は、弁閉鎖部材を2つの異なる、特に互いに実質的に直交する方向に変位させるために、2つのピストン・シリンダユニットを有している。
【0033】
この場合、好適には各ピストン・シリンダユニットは、各圧力媒体のまたは各ピストン・シリンダユニットのもしくは各シリンダ(部分)内の圧力をそれぞれ測定するための、少なくとも1つの圧力センサを有している。択一的に、真空弁は1つの(「共通の」)圧力センサを有しており、この圧力センサは、例えば順次切り換えることにより、2つの圧力媒体または2つのピストン・シリンダユニットの圧力を測定するように形成されている。
【0034】
1つの別の改良では、真空弁はさらに、弁閉鎖部材および/またはピストンの位置を特に連続して測定するように形成された位置センサを有している。この場合、任意には、位置測定と圧力測定とは互いに制御可能であり、これにより、休止位置、好適には開放位置および/または閉鎖位置から弁閉鎖部材および/またはピストンが変位するために必要な圧力を決定することができる。別の選択肢として、圧力センサおよび位置センサは、圧力測定と位置測定の両方に基づき、弁閉鎖部材および/またはピストンのそれぞれの運動が導出可能であるように形成されている。例えば、圧力測定からは、ピストンに作用する力ひいてはピストンの質量および場合により別のパラメータが分かっている場合には(予測される)運動が導出可能であり、かつ位置に基づき(実際の)運動(変位・時間特性線)が導出可能である。別の選択肢またはさらなる追加として、圧力センサおよび位置センサは、圧力測定および位置測定に基づき、力-変位特性線を作成することができるように形成されている。特にシールを備えた弁の場合には、シールの力-変位特性線を求めることができ、シールの力-変位特性線の評価は、例えばシール材料に生じ得る変化を認識させることができる。
【0035】
さらに、前記位置測定と、圧力センサによる前記圧力測定とは互いに制御されているもしくは制御可能であり、これにより、休止位置、特に開放位置および/または閉鎖位置から弁閉鎖部材が変位するために必要な圧力を決定することができる。つまり例えば、並行する位置測定および圧力測定により、弁閉鎖部材が開放位置または閉鎖位置から動くもしくは動き始めるために駆動ユニットが形成せねばならない圧力が決定され得る。
【0036】
任意には、弁座は構造的に真空弁と結合された真空弁構成部材により形成され、特にこの場合、弁座は真空弁のケーシングに形成されている、またはプロセスチャンバ、特にチャンバケーシングにより提供されている。
【0037】
1つの実施形態では、真空弁は、開放位置と閉鎖位置との間で弁閉鎖部材を変位させるように予め規定された制御値でもって駆動ユニットを制御するための点検・制御ユニットを有しており、この場合、駆動ユニット、弁閉鎖部材およびセンサは、圧力センサの測定信号に基づき制御値が設定されるように、特に測定信号が、予め規定された目標値に連続的に相当するように形成されかつ協働する。
【0038】
この場合、任意には真空弁、センサユニットおよび点検・制御ユニットは例えば、圧力センサが測定信号の供給および伝達のために、例えば従来の有線または無線接続により1方向または双方向通信するように構成されている。
【0039】
1つの別の改良では、真空弁は、特に点検・制御ユニットまたはセンサユニットにより提供され、検出された圧力センサ測定信号を処理ユニットにより処理することができると共に、検出された圧力センサ測定信号に基づき真空弁の状態情報が求められるように形成された処理ユニットを有している。状態情報は、例えば弁閉鎖部材および/または駆動ユニットの機械的かつ/または構造的な完全性に関して提供され、特にこの場合、状態情報は、例えば駆動ユニットの基準設定に対して検出された圧力と想定した圧力とに基づく、検出された圧力センサ測定信号に関する実際-目標比較により求められている。任意には、予め規定された誤差値による状態情報の補正に基づき、真空弁により制御されるプロセスの評価、例えば所要の(シール)作用が達成されたか否かの評価に関して出力信号が供給される、または場合により生じ得る、例えば駆動ユニットまたはシール面の損傷を検出することができる。例えばこの場合、視覚的または音響的な信号により、所要の誤差内でプロセスが進行しているか否か、または(例えば変位速度または終端位置に基づき)このような誤差を不都合に下回るまたは上回ることが予測されるか否かをユーザに示すことができる。
【0040】
本発明にはさらに、真空弁、特に真空摺動弁、揺動弁またはモノバルブを制御する方法が含まれ、この場合、真空弁は、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を気密に遮断するように形成されている。この場合、制御しようとする真空弁は、開口軸線を定める弁開口と弁開口を包囲している第1のシール面とを有する弁座、第1のシール面に対応する第2のシール面を備え、第2のシール面の可変の位置は、弁閉鎖部材のその時々の位置および向きにより決められている、体積流量または質量流量を制御しかつ/または流路を遮断するための弁閉鎖部材、特に弁板を有している。さらに弁は、弁閉鎖部材と連結されかつ少なくとも1つのピストンとシリンダ孔とを備えた少なくとも1つのピストン・シリンダユニットを備える少なくとも1つの駆動ユニットを有しており、この場合、駆動ユニットはさらに、ピストンの少なくとも一方の圧力作用面に供給するための圧力媒体を有しており、これにより弁閉鎖部材は、弁閉鎖部材と弁座とが互いに非接触状態にある開放位置から、特にシールを介して第1のシール面と第2のシール面との間に開口軸線に対して軸方向でシールする接触が生じ、これにより弁開口が気密に閉鎖されている閉鎖位置へ、かつその逆に変位可能である。駆動ユニットは、好適には空圧式または電気空圧式のユニットとして形成されているが、液圧式のユニットであってもよい。
【0041】
本発明により、当該方法の枠内では特に連続して、圧力媒体の圧力を測定する。この場合、任意には圧力に応じたデジタル出力信号または圧力に応じたアナログ出力電圧が形成される。出力電圧は、好適には0ボルト~10ボルトの範囲内にある。
【0042】
当該方法の1つの改良では、当該方法の枠内で圧力測定に基づき、特に駆動ユニットの機械的かつ/または構造的な完全性に関する真空弁の状態情報を求め、この場合、任意には、検出された測定信号に関する実際-目標比較により状態情報を求めかつ/または予め規定された誤差値を用いた状態情報の補正に基づき、真空弁により制御されるプロセスの評価に関する出力信号を供給する。
【0043】
1つの別の改良では、当該方法の枠内で追加的に、圧力測定と結び付けられた、弁閉鎖部材および/またはピストンの位置測定を行う。任意には、これにより開放位置および/または閉鎖位置から弁閉鎖部材が変位するために必要な圧力が決定される。別の選択肢として、圧力測定と位置測定の両方に基づき、弁閉鎖部材および/またはピストンの運動をそれぞれ導出または決定し、さらに、場合により生じ得る不一致に関して、導出された両運動を比較する。例えば、別のパラメータが分かっている状態で、作用圧力ひいてはピストンに作用する力に基づき、ピストンの運動を算出し、算出したこの運動を、位置測定に基づき決められた運動(時間経過における位置)と比較する。場合により生じ得るずれは、例えば弁もしくは駆動ユニットの(パラメータ)変化を推量することを可能にする。圧力測定と位置測定とを伴う方法の別の選択肢として、圧力測定および位置測定に基づき、力-変位特性線を作成し、特に真空弁にシールが存在する場合には、シールの力-変位特性線を作成する。
【0044】
本発明の対象はさらに、機械可読担体、特に本発明による真空弁の制御・処理ユニットに記憶されたプログラムコードまたは本発明による方法を実施する電磁波により体現されるコンピュータデータ信号を有するコンピュータプログラム製品である。
【0045】
つまり本発明は、有利には空圧式(または液圧式)の駆動部材の継続的または連続的な圧力測定を可能にする真空弁を提供し、これにより、駆動装置または弁の変位運動または変位運動経過の状態を点検または検査しかつ場合によっては評価することもできる。さらに圧力測定は、真空弁もしくは真空弁の個々の構成部材、例えば駆動ユニット、駆動ユニットの導管またはシリンダ・ピストンユニットの自動的かつ継続的な状態確認を可能にし、この場合、状態情報を、駆動装置構成部材に関して直接に求めるまたは導出することができるだけでなく、真空弁の別の構成部材に関しても間接的に、例えば弁閉鎖部材の位置測定と共に弁開口に対する閉鎖部材の付着力を求めるまたは導出することができる。この場合、故障または将来的な故障を示唆する異常を早期にまたは真っ先に検出することができかつ/または確認された無故障に基づき不要な保守を回避することができる。この場合、検査は有利には通常のプロセス進行中に行われるため、プロセス進行は中断されずに済む。
【0046】
以下に、本発明による真空弁を、概略的に図示した実施例に基づき純粋に例示的に、より詳しく説明する。同一部材は図中、同一符号で表されている。説明する実施形態は通常、縮尺通りには図示されておらず、また限定的であると理解されるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1aおよび図1bは、モノバルブとして可能な本発明による真空弁の第1の実施形態を示す図である。
図2】モノバルブとして可能な本発明による真空弁の第2の実施形態を示す図である。
図3】モノバルブとして可能な本発明による真空弁の別の実施形態を示す図である。
図4】切換弁としての真空弁の、本発明による別の実施形態を示す概略図である。
【0048】
図1a、図1bには、本発明による真空弁1の第1の実施形態が示されている。この例では、弁1はいわゆるモノバルブとして形成されており、開放位置O(図1a)およびクローズ位置または閉鎖位置G(図1b)において横断面図で示されている。
【0049】
直線運動により流路を気密に閉鎖するための弁1は、流路用の開口2を備えた弁ケーシング24を有しており、この場合、開口2は流路に沿った幾何学上の開口軸線Hを有している。開口2は、図中、弁1もしくは隔壁(図示せず)の左側に位置する第1の気体領域Lを、その右側に位置する第2の気体領域Rに接続している。前記のような隔壁は、例えば真空チャンバのチャンバ壁により形成される。
【0050】
弁閉鎖部材4は、閉鎖部材平面22内で開口軸線Hに対して横方向に延在する幾何学上の変位軸線Vに沿って、開口2を開放する開放位置Oから、開口2を越えて直線的に押しずらされた閉鎖位置Gへ、閉鎖方向に直線的に摺動可能であると共に、反対に、駆動ユニット7を介して(閉鎖方向とは反対の)開放方向に戻るように摺動可能である。
【0051】
この例では、湾曲した第1のシール面3が、弁ケーシング24の開口2を、第1の平面20a内の第1の部分21aおよび第2の平面20b内の第2の部分21bに沿って包囲している。第1の平面20aと第2の平面20bとは互いに離間されており、互いに平行にかつ閉鎖部材平面22に対して平行に延在している。つまり、第1の部分21aと、反対側に位置する第2の部分21bとは、変位軸線Vに対して横方向で、開口軸線Hの方向において、互いに幾何学的なずれを有している。互いに反対の側に位置する2つの部分21aと21bとの間で、変位軸線Vに沿って延在する領域内に、開口2が配置されている。
【0052】
閉鎖部材4は、第1のシール面3に対応する第2のシール面6を有しており、第2のシール面6は、第1および第2の部分21a,21bに対応する部分に沿って延在している。この例では、第1のシール面3はシール材料23を有している。このシール23は、例えばポリマとして加硫されることにより、弁座に被着されていてよい。択一的に、シール23は例えばOリングとして、弁座の溝内に形成されていてよい。また、シール材料が弁座に接着されており、これによりシール23を具現することもできる。1つの択一的な実施形態では、シール23は弁閉鎖部材4の側に、特に第2のシール面6に配置されていてよい。また、これらの構成の組合せも考えられる。このようなシール23は、当然この例で説明した弁1に限定されるものではなく、引き続き説明する弁実施形態またはこれらの変化態様もしくは組合せにおいても適用可能である。
【0053】
モノバルブ、すなわちただ一度の直線運動により閉鎖可能な真空弁は、例えば二度の運動により閉鎖可能で、比較的複雑に形成された駆動装置を必要とする切換弁と比較すると、例えば比較的単純な閉鎖機構という利点を有している。閉鎖部材はさらに一体に形成されていてよいので、高い加速力に晒されてよく、これによりこの弁は、急速閉鎖および緊急閉鎖用にも使用され得る。閉鎖およびシールは、ただ一度の直線運動により行うことができ、これにより、弁1の極めて迅速な開閉が可能である。
【0054】
特に、モノバルブの利点は例えば、シール3,6がその延在部に基づき、閉鎖時にシール3,6の長手方向延在部に対して横方向での横方向荷重に全く影響されない、という点にある。他方では、シール3,6は開口軸線Hに対するその横方向延在部に基づき、特に圧力差が大きい場合に閉鎖部材4に作用することがある、開口軸線Hに沿って閉鎖部材4に当たる力を吸収することはほぼできず、このことは閉鎖部材4、その駆動装置およびその支持部の頑丈な構造を必要とする。
【0055】
駆動ユニット7は、この例ではピストン・シリンダユニット8を備えた(電気)空圧式の駆動ユニット7として形成されている。択一的には、駆動ユニット7は、液圧式の駆動ユニットである。駆動ユニット7もしくはピストン・シリンダユニット8は、2段式のシリンダ孔9を有しており、この場合、孔9の(図中)「下側の」部分11は、「上側の」部分12よりも大きな直径を有している。シリンダ9内には、ピストン13が変位軸線Vに沿って摺動可能に支承されており、ピストン13は両側に各1つのピストンロッド13uおよび13oを有しており、ピストンロッド13uと13oとは、ディスク13tにより互いに仕切られており、これにより、圧力作用面F1およびF2が提供されている。ディスク13tにより、「下側の」部分11は2つのチャンバ11oおよび11uに分けられており、チャンバ11oおよび11uは、シリンダ9内のピストン13の位置に応じて異なる大きさになる。ピストン・シリンダユニット8は、複数のシールを有している(ただしここでは見やすさのために図示せず)。このようなシールは、ピストン13に設けられていると共に、ピストンロッド13uおよび13o用の貫通案内部およびその内部に設けられている。
【0056】
ピストン・シリンダユニット8には、圧力媒体導管14を介して圧力媒体が供給される。この例では、圧力媒体は圧縮空気である。しかしまた、実施形態に応じて真空弁に適した別の気体状または液体状の圧力媒体が使用されてもよい。前記圧力媒体導管14は、「上側の」導管分岐部14oを介してシリンダ孔9の下側の部分11内に通じており、上側の導管分岐部14oは、シリンダ孔9の下側の部分11内の作用ピストン面F1の上方で、上側のチャンバ11oに開口している。圧力媒体導管14にはさらに、「下側の」導管分岐部14uが接続されている。この導管分岐部14uも同様に、シリンダ孔9の部分11の下部に通じており、この場合、導管分岐部14uはシリンダ孔9の部分11内の圧力作用ピストン面F2の下方で、下側のチャンバ11uに開口している。よって、切換弁15、例えば3ポート2位置切換弁を用いて、一方の導管分岐部14oを介して圧力作用面F1を加圧可能であると共に、切換弁15を適宜に切り換えることにより、他方の導管分岐部14uを介して圧力作用面F2を加圧可能であり、この場合、加圧に利用されない方の導管分岐部はそれぞれ、相応して通気に切り換えられている。つまり面F1の加圧により、ピストン13ひいては弁閉鎖部材4は、図1aに示す開放位置Oから下方「に向かって」可動であり、その結果、図1bに示すクローズ位置Gに到達する。切換弁15を切り換えることにより、面F2が加圧されひいては運動が逆転し、その結果、真空弁1が開くことになる。ピストンの両側加圧を伴う図示の形態に対して択一的に、例えば運動方向がばね等の戻し部材により実現される実施形態も可能である。
【0057】
本発明に基づき、真空弁1は少なくとも1つの圧力センサ10、この例では2つの圧力センサ10を有している。この場合、2つの圧力センサ10のうちの一方は、「上側の」導管分岐部14o内に組み込まれており、他方の圧力センサ10は、「下側の」導管分岐部14u内に組み込まれている。これらの圧力センサ10により、導管分岐部14o,14u内の各圧力もしくはピストン・シリンダユニット8の2つの入口圧力が測定される。この場合、圧力測定は有利には連続して行われるため、入口圧力の監視が可能になると共に、場合によりもしくは任意には、限界値を上回ったまたは下回った場合に警告信号が送信され得る。
【0058】
この場合、圧力測定器10は例えば抵抗型、容量型または誘導型のダイヤフラム圧力測定器として、圧電結晶圧力測定器として、あるいは水晶共振器圧力測定器または圧電共振器圧力測定器として形成されている。好適には、各圧力測定器は、0~10barの圧力の測定用および/または絶対圧測定用に形成されている。測定された圧力は、例えば0~10Vの電圧に変換され、この電圧は圧力表示に用いられるかまたはデータ記憶装置および/または評価ユニットに供給される。この場合、圧力センサ10もしくはピストン・シリンダユニット8は、任意には真空領域の外側に配置されており、このことは、圧力センサ10もしくはピストン・シリンダユニット8の技術的な設計に対する要求を低下させひいては簡素化させる。
【0059】
圧力媒体の圧力測定用の圧力測定器10を備えた本発明による駆動ユニット7もしくは本発明による真空弁1は、図示の例に対して択一的に、図示の直線的な変位運動に代えてまたは加えて、弁閉鎖部材4の少なくとも実質的な回動変位運動を生ぜしめるようにかつ/または直線運動と回動運動との組合せを生ぜしめるように形成されていてもよい。
【0060】
図2には、モノバルブ1の本発明による1つの択一的な実施形態の概略図が横断面で示されており、この場合、弁1は閉鎖位置Gにおいて示されている。図1a、図1bに示した実施形態とは異なり、弁1は、1つの圧力センサ10だけを有しており、この圧力センサ10は、圧力導管14oまたは14u内に組み込まれているのではなく、シリンダ9の下側のチャンバ11u内の圧力が測定可能であるように配置されている。このために圧力測定器10は、この例ではケーシング壁24に取り付けられておりかつ壁24に形成された開口16を介してチャンバ11uに接続されており、これにより、チャンバ11uの圧力をセンサ10により測定することができるようになっている。図示の実施形態に対して択一的に、弁1は2つのチャンバ11uおよび11oに対して各1つの圧力センサ10を有しているか、または1つの圧力センサ10が選択的に、例えば追加的な切換弁を介して、2つのチャンバ11oおよび11uのうちの一方にその都度接続され、それぞれのチャンバ圧力を選択的に測定し、例えばクローズ位置Gから開放位置Oに切り換えられた場合には「下側の」チャンバ11uの圧力を選択的に測定し、反対に開放位置Oからクローズ位置Gに変位した場合には「上側の」チャンバ11oの圧力を選択的に測定する。
【0061】
この例では、圧力センサ10はデータ線路19を介して電子処理ユニット18に接続されており、これにより、センサ10の測定データ(例えば電圧値)が処理ユニット18により検出され、記憶されかつ評価され得るようになっている。処理ユニット18は、外部ユニットまたは好適には真空弁1内に組み込まれたユニットである。データ線路19に代えて、圧力センサ10および評価ユニット18は、例えば無線、WiFiまたはブルートゥースを介してワイヤレスでデータ伝送するように形成されており、このことは特に、評価ユニット18と圧力センサ10とが空間的に(大きく)隔てられている場合に有利である。
【0062】
この場合、この例ではデータ処理ユニット18は、圧力センサ10の検出された測定信号を処理しかつ測定信号に基づき真空弁1の状態情報を求めるように形成されている。状態情報は、好適には弁閉鎖部材4および/または駆動ユニット7の機械的もしくは構造的な完全性に関し、例えば駆動ユニット7もしくはピストン・シリンダユニット8の劣化疲労、摩耗作用またはシール性に関する。この場合、状態情報は選択肢として、1つまたは複数の圧力センサ測定信号の実際-目標比較により、つまり基準信号値からのずれが検出されることにより、求められる。この場合、別の選択肢として、予め設定された1つまたは複数の誤差値を用いた補正が行われる。この場合、誤差値を下回るまたは上回ると、出力信号が送信されてよい。この場合、ずれもしくは限界値超過は、真空弁1における故障または欠陥を示唆するものであってよく、特にこのような故障または欠陥を極めて早期に、未だ弁1の本来の機能が損なわれる前に(発見する)ために用いることができる、またはずれもしくは限界値超過は、弁1により制御される気体領域もしくは真空チャンバの故障または欠陥を示唆するものであってもよい。
【0063】
図3には、図2に示した真空弁1の改良が示されている。この例では、弁1は追加的に位置センサ25を有しており、位置センサ25は検出ゲージ26を備えており、検出ゲージ26は、弁閉鎖部材4に配置されておりかつ弁閉鎖部材4と共に変位可能なターゲット27を検出するように、真空弁1内に固定されて配置されている。つまり位置センサ25は、好適には連続して、弁1の内部の弁閉鎖部材4の位置を測定する。位置センサ25の測定信号は、圧力センサ10の測定信号と同様に、データ線路19を介して評価ユニット18に供給される。
【0064】
この場合、位置測定および圧力測定は、(例えば十分高度にタイミング制御される連続的な測定により、圧力および位置の少なくともほぼ同時の検出が行われるように、または両測定センサ10および25をトリガするためのトリガを介して簡単に)互いに制御されている、もしくは評価ユニット18は、圧力測定値が位置測定値と(時間的に)関連付けられるように構成されている。これにより例えば、(各圧力導管14o,14u内もしくは各チャンバ内11o,11u内の)どの圧力を、ピストン13(ひいては弁閉鎖部材4)が動き始めるまでに上昇させねばならないか、ということが状態情報として検出され得る。これにより、例えばシリンダ9内の静止摩擦を推量することが可能でありかつ/または所要の最小変位圧の比較的長期の好適には自動的な時間監視において、場合により生じ得る時間経過中の変化が検出可能である。例えば、弁1の変位もしくは開放および/または閉鎖に必要とされる最小圧が時間の経過につれて高まっていることが検出された場合、このことは弁1における摩耗現象を示唆していてよく、評価ユニット18から、必要な警告を示す出力信号が送信され得る。
【0065】
真空弁1が、この例のようにシール23を有している場合には、圧力測定および位置測定に基づき、特にシール23に関する力-変位特性線が(例えば単に閉鎖運動または開放運動全体に関する力-変位特性線の一部として)作成され得る。つまりこの場合は特徴的なエラストマ特性線になる。このエラストマ特性線の評価、とりわけ時間の経過につれて場合により生じ得る特性線の変化の観察は、例えばシール23の劣化現象または摩耗を推量することを可能にする。
【0066】
圧力測定と位置測定との組合せの別の利点として得られるのは、測定された、ピストン13に対する圧力(ひいてはピストン13に作用する力)に基づき予測される運動を、位置測定を伴う実際の運動と比較することができる、という点である。このために弁1に対して、例えば図3の図面とは異なり、両方のチャンバ11oおよび11u内で圧力測定が行われ、これにより、ピストン13に作用する力が正確に分かっている。ここから(かつピストン13および閉鎖部材4等の質量の知識から)導き出される(いわば理論的な)運動と、位置測定に基づき検出可能な運動との不一致が認められる場合には、これに基づき例えば追加的に作用する外力または駆動ユニットにおける想定外の摩擦が推量され得る。
【0067】
図4に示す、真空弁1の本発明による別の実施形態は、この例では切換弁として形成されており、閉鎖位置Gで示されている。
【0068】
図示の切換弁は、摺動弁の特殊な形式である。この真空弁は、矩形で板状の閉鎖部材4(例えば弁板)を有しており、閉鎖部材4は、開口2を気密に閉鎖するためのシール面6を有している。開口2は、閉鎖部材4に対応する横断面を有しており、壁28に加工成形されている。開口2は、弁座により包囲されており、弁座自体も同様に、閉鎖部材4のシール面6に対応するシール面3を提供する。閉鎖部材4のシール面6は、閉鎖部材4を包囲するように延在しており、シール材料(シール)23を有している。閉鎖位置Gにおいて、シール面6,3は互いに押圧し合い、その際にシール材料23が加圧される。
【0069】
開口2は、壁28の一方の側に位置する第1の気体領域Lを、壁28の他方の側の第2の気体領域Rに接続している。壁28は、例えば真空チャンバのチャンバ壁により形成される。この場合、真空弁1は、チャンバ壁28と閉鎖部材4との協働により形成される。
【0070】
真空弁1は、第1の駆動ユニット7および第2の駆動ユニット7’を有しており、この場合、この例では2つの駆動ユニット7,7’は、空圧式の駆動ユニットとして形成されている。閉鎖部材4は、第2の空圧式の駆動ユニット7’の第2のシリンダ・ピストンユニット8’を介して、第1の駆動ユニット7のピストン13の下端部13uに配置されている。第1の駆動ユニット7は、弁閉鎖部材4の「鉛直方向」運動(つまり「鉛直方向の」変位軸線Vに沿った変位)をもたらし、原則として第1の駆動ユニット7と同じ構造を有する第2の駆動ユニット7’は、弁閉鎖部材4の「水平方向」運動(「水平方向の」変位軸線Hに沿った変位)をもたらす。
【0071】
開放位置O(図示せず)において、閉鎖部材4は開口2の投影領域の外側に位置しており、開口2を完全に開放している。ピストン13が、軸方向において第1の「鉛直方向の」変位軸線Vに対して平行にかつ壁28に対して平行に変位させられることにより、駆動ユニット7を介して閉鎖部材4を開放位置Oから中間位置に変位させることができる。この中間位置において、閉鎖部材4のシール面6は開口2を覆っており、かつ開口2を包囲している弁座のシール面3に対して離間された対向位置に位置している。
【0072】
第2の駆動ユニット7’のピストン13’が、第2の「水平方向の」(第1の変位軸線Vに対して横方向の)変位軸線Hの方向に、つまり例えば壁28および弁座に対して垂直方向に変位させられることにより、閉鎖部材4を、中間位置から図示の閉鎖位置Gに変位させることができる。
【0073】
閉鎖位置Gにおいて、閉鎖部材4は開口2を気密に閉鎖し、ひいては第1の気体領域Lを第2の気体領域Rから気密に隔離する。
【0074】
要するに真空弁の開閉は、駆動ユニット7および7’を介して閉鎖部材4を、互いに垂直な2つの方向H,Vに、L字形に移動させることにより行われる。したがって、図示の切換弁はL型弁とも呼ばれる。
【0075】
図示のような切換弁1は、典型的には処理容積(真空チャンバ)を封止するためおよび容積に対する出し入れのために設けられる。このような使用において、開放位置と閉鎖位置Gとの間での頻繁な切換は一般的である。これにより、シール面6,3および機械的な可動構成部材、例えば各ピストン・シリンダユニット8,8’のシールまたは駆動ユニット7,7’の別の部材の強められた摩耗現象が生じる恐れがある。
【0076】
本発明に基づき、真空弁1は、「鉛直方向の」駆動システムと、「水平方向の」駆動システムの両方に対して、圧力測定器10および10’を有しており、これにより、それぞれの圧力媒体の圧力が測定される。この図4の例では、圧力測定器10,10’は、図1a、図1bに示した実施形態と同様に、各シリンダ9もしくは9’に供給する各導管14o,14uもしくはホース14o’,14u’内に組み込まれている。つまりこのように形成された切換弁1により、有利には「水平方向の」駆動ユニット7’および「鉛直方向の」駆動ユニット7両方の圧力(例えば入口圧力またはそれぞれのシリンダ9,9’内もしくはそれぞれのシリンダ9,9’の各チャンバ内の圧力)が測定または監視され得る。
【0077】
図示のような2つの別個の駆動ユニット7,7’の代わりに、例えば2つのピストン・シリンダユニット8,8’を有する1つの駆動ユニットを使用することもでき、2つのピストン・シリンダユニット8,8’は、例えば前掲の独国特許出願公開第19746241号明細書に1つの可能な形態で記載されているように、1つの共通の圧縮空気導管システムを介して供給される。このような実施形態では、圧力測定は場合により、4つ未満の圧力センサ10,10’、例えば2つの圧力センサにより行われ、これらのセンサは、それぞれの「鉛直方向の」駆動ユニットまたは「水平方向の」駆動ユニットのそれぞれの圧力を、順次測定する。
【0078】
示したこれらの図面が、可能な実施例を概略的に表すものであるに過ぎない、ということは自明である。同じく、様々なアプローチが互いにかつ従来技術の方法および装置と、例えばいわゆる揺動弁と組み合わされてもよい。
図1a
図1b
図2
図3
図4