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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】呼気成分検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20230925BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G01N27/12 A
G01N33/497 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020002884
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021110642
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149216
【弁理士】
【氏名又は名称】浅津 治司
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】澤坂 駿介
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179195(WO,A1)
【文献】特開2009-195615(JP,A)
【文献】特開2010-217016(JP,A)
【文献】特開2012-002662(JP,A)
【文献】特開2007-209685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者によって吹き込まれた呼気のガス成分を検査するための装置であって、
呼気採取管と、
前記呼気のガス成分を検出するガスセンサと、
前記呼気採取管内の圧力を測定する圧力センサと、
スピーカと、
前記ガスセンサによる測定動作における前記呼気の適正圧力に対応する基準音と、前記圧力センサの検出結果に基づいて変化する調整音とを前記スピーカに発生させることで、前記被験者が呼気吹き込みの強さを調整できるようにする制御部と、
を備えた、呼気成分検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記呼気の圧力が前記適正圧力と同一になる又は近づくと、前記スピーカに、前記調整音の高さを前記基準音の高さと同一にする又は近づけさせる、請求項1に記載の呼気成分検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スピーカに、前記基準音及び前記調整音を一定ピッチで交互に発生させる、請求項1又は2に記載の呼気成分検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記スピーカに、前記基準音と前記調整音の各組を所定間隔で発生させる、請求項1又は2に記載の呼気成分検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記スピーカに、前記基準音を連続して発生させる、請求項1又は2に記載の呼気成分検査装置。
【請求項6】
被験者によって吹き込まれた呼気のガス成分を検査するための装置であって、
呼気採取管と、
前記呼気のガス成分を検出するガスセンサと、
前記呼気採取管内の圧力を測定する圧力センサと、
スピーカと、
前記ガスセンサによる測定動作における前記呼気の適正圧力に対応する基準音と、前記圧力センサの検出結果に基づいて変化する調整音とを前記スピーカに発生させることで、前記被験者が呼気吹き込みの強さを調整可能とし、さらに、前記呼気の圧力と適正圧力との差を示すガイド音を前記スピーカに発生させることで、前記被験者に呼気吹き込みの強さをガイドする、制御部と、
を備えた、呼気成分検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気成分検査装置に関し、特に、呼気に含まれる口臭要因ガスやアルコール等の呼気成分の濃度を測定する呼気成分検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば呼気中アルコール濃度を測定するために、呼気採取管を有する呼気成分検査装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
呼気成分検査装置は、例えば、呼気採取管と、吸引ポンプと、ガスセンサとを有している。被験者が呼気採取管の吹き込み口から装置内に呼気を吹き込むと、吹き込んだ呼気の大半は呼気採取管の排気口から排出されるが、吹き込まれた呼気の一部が吸引ポンプにより吸引されてガスセンサに導かれる。
【0003】
また、吸引ポンプを設けずに、呼気が吹き込まれると呼気採取管内の圧力が高くなることで、適量の呼気がガスセンサに送り出される呼気成分検査装置もある。
いずれも、コントローラは、呼気採取管内の圧力を圧力センサにより監視して検知することで、呼気が吹き込まれたこと、また呼気が一定量以上吹き込まれ続けていることを認識している。正しく吹き込まれた場合は、正しく測定できたと判断されて測定結果が表示される。意図しない方法(吹き込まれていない状態、または連続して吹き込まれていない状態)の場合、エラー判定をして測定動作を途中で中断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-159482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
呼気成分検査装置には、半導体式、電気化学式などの各種があるが、いずれもppmオーダのごく微量のガスを測定することを目的としているので、環境の変化に影響されやすい。
特に、被験者の呼気の強さ(流量)が、測定に大きな影響を与える。例えば半導体式の装置であれば、呼気が強ければセンサの低感度側にシフトし、その結果、本来の濃度よりも低い濃度値が正常な値として出力される。
【0006】
本発明の課題は、呼気成分検査装置において、より正確にガス成分を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る呼気成分検査装置は、被験者によって吹き込まれた呼気のガス成分を検査するための装置であって、呼気採取管と、ガスセンサと、圧力センサと、スピーカと、制御部と、を備えている。
ガスセンサは、呼気のガス成分を検出する。
圧力センサは、呼気採取管内の圧力を測定する。
制御部は、ガスセンサによる測定動作における呼気の適正圧力に対応する基準音と、圧力センサの検出結果に基づいて変化する調整音とをスピーカに発生させることで、被験者が呼気吹き込みの強さを調整できるようにする。
【0009】
この装置では、被験者が呼気を呼気採取管に吹き込むと、ガスセンサが呼気のガス成分を検出する。一方、圧力センサが呼気採取管内の圧力を測定し、制御部が圧力に応じてスピーカに調整音を発生させる。さらに、制御部は、スピーカに基準音を発生させる。
以上より、被験者は、呼気を吹き込みながら基準音と調整音とを聞くことができ、調整音を基準音に近づくように呼気吹き込みの強さを調整できる。具体的には、実際の呼気圧力が適正圧力に近づくと、調整音が基準音に近づく。このように被験者の調整によって適正圧力が得られ、その結果、ガスセンサは、呼気のガス成分をより正確に検出できる。
なお、適正圧力とは、一つの値ではなく、所定の範囲として設定されている。
【0010】
制御部は、呼気の圧力が適正圧力と同一になる又は近づくと、スピーカに調整音の高さを基準音の高さと同一にする又は近づけさせてもよい。
この装置では、実際の呼気圧力が適正圧力に近づくと、調整音の高さが基準音の高さに近づく。その結果、ガスセンサは、呼気のガス成分を正確に検出できる。
【0011】
制御部は、スピーカに、基準音及び調整音を一定ピッチで交互に発生させてもよい。
この装置では、被験者は、一定のピッチで基準音と調整音の比較を行うことができ、比較的短期間で呼気の吹きこみの圧力を適正圧力に近づけることができる。
【0012】
制御部は、スピーカに、基準音と調整音の各組を所定間隔で発生させてもよい。
この装置では、基準音と調整音がワンセットとなって発生することで、すなわち、先が基準音で後が調整音という順番で音が鳴るので、被験者は、聞こえている音が基準音か調整音かを間違えずに把握できる。
【0013】
制御部は、スピーカに、基準音を連続して発生させてもよい。
この装置では、基準音が連続して発生しているので、すなわち、基準音が連続して鳴り調整音が断続的に鳴るので、被験者は、聞こえている音が基準音か調整音かを間違えずに把握できる。
なお、「連続して発生」とは、所定期間にわたって途切れることなく発生という意味であり、呼気の吹き込み中の全期間又は一部期間であってもよい。
【0014】
本発明の他の見地に係る呼気成分検査装置は、被験者によって吹き込まれた呼気のガス成分を検査するための装置であって、呼気採取管と、ガスセンサと、圧力センサと、呼気採取管と、スピーカと、制御部と、を備えている。
ガスセンサは、呼気のガス成分を検出する。
圧力センサは、呼気採取管内の圧力を測定する。
制御部は、ガスセンサによる測定動作における呼気の適正圧力に対応する基準音と、圧力センサの検出結果に基づいた調整音とをスピーカに発生させることで、被験者が呼気吹き込みの強さを調整できるようにする。
制御部は、さらに、呼気の圧力と適正圧力との差を示すガイド音をスピーカに発生させることで、被験者に呼気吹き込みの強さをガイドする。
【0015】
この装置では、被験者が呼気を呼気採取管に吹き込むと、ガスセンサが呼気のガス成分を検出する。一方、圧力センサが呼気採取管内の圧力を測定し、制御部が圧力に応じて調整音をスピーカに発生させる。さらに、制御部は、スピーカに基準音を発生させる。
以上より、被験者は、呼気を吹き込みながら基準音と調整音とを聞くことができ、調整音を基準音に近づくように呼気吹き込みの強さを調整できる。具体的には、実際の呼気圧力が適正圧力に近づくと、調整音が基準音に近づく。このように被験者の調整によって適正圧力が得られ、その結果、ガスセンサは、呼気のガス成分をより正確に検出できる。
【0016】
この装置では、呼気の圧力と適正圧力との差を示すガイド音が発生するので、被験者はガイド音にしたがって、呼気の吹き込み強さを正確に調整できる。ガイド音は、例えば、前記差が大きい場合と小さい場合で異なるものになる。また、ガイド音は、前記差の複数段階に応じた複数の種類を有していてもよいし、前記差の変化に応じて連続的に変化してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る呼気成分検査装置では、ガス成分をより正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の呼気成分検査装置の斜視図。
図2】呼気成分検査装置の斜視図。
図3】呼気成分検査装置の内部正面図。
図4】呼気成分検査装置の制御構成の機能ブロック図。
図5】呼気成分検査装置の検査制御動作を示すフローチャート。
図6】基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図。
図7】調整音の時間変化を示すグラフ。
図8】第2実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図。
図9】第3実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図。
図10】第4実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
(1)呼気成分検査装置の概略
図1図3を用いて、第1実施形態の呼気成分検査装置1(以下、「装置1」という、呼気成分検査装置の一例)を説明する。図1及び図2は、第1実施形態の呼気成分検査装置の斜視図である。図3は、呼気成分検査装置の内部正面図である。
装置1は、被験者によって吹き込まれた呼気中アルコール(ガス成分の一例)を検査するための吹き込み式である。装置1は、終末呼気に含まれるアルコールの濃度を測定するので、アルコール測定の精度が高い。
【0020】
装置1は、筐体3を有している。筐体3は、装置全体の外殻を成す矩形箱状の本体ケースである。筐体3内には、後述する部品が収納される。
装置1は、呼気採取管5(呼気採取管の一例)を有している。呼気採取管5は、被験者が吹き込んだ呼気をその軸方向に通過させるパイプである。呼気採取管5は、筐体3の上部に着脱不能に固定されている。ただし、呼気採取管5が被験者により交換可能な構成でもよい。
【0021】
呼気採取管5は、筐体3内に設けられた円筒状の本体5aと、本体5aの両端に設けられ筐体3の外に露出する吹き込み口5b及び排気口5cとを有する。被験者によってマウスピース6(後述)を介して呼気が吹き込まれると、呼気採取管5を介して筐体3の内部に入った呼気の一部は、呼気採取管5の本体5aを経由して排気口5cを介して筐体3の外部に出る。
吹き込み口5bは、筐体3の壁面から内側に位置しており、そこには被験者が咥えるためのマウスピース6が装着される。排気口5cは、筐体3の壁面と面一になっている。
【0022】
筐体3には、呼気採取管5が挿し込まれる第1開口3aと、反対側の第2開口3bと、両者を連通する路である連通空間3cとが形成されている。
筐体3は、呼気採取管5の環状部5eに軸方向片側から当接する第1当接部3dを有している。また、呼気採取管5の本体5aの軸方向中間部には、固定部品24が差し込まれており、筐体3は固定部品24に対して軸方向両側から当接する第2当接部3eと第3当接部3fとを有している。このようにして、呼気採取管5が筐体3に対して軸方向に位置決めされている。
【0023】
装置1は、ガスセンサ7(ガスセンサの一例)を有している。ガスセンサ7は、筐体3内に設けられている。ガスセンサ7は、呼気に含まれるアルコールの濃度を検出するアルコールセンサである。ガスセンサ7は、公知の技術であり、例えば、電気化学式ガスセンサである。
ガスセンサ7と呼気採取管5とは、第1配管21によって接続されている。
【0024】
装置1は、吸引ポンプ9を有している。吸引ポンプ9は、筐体3内に設けられ、呼気採取管5に吹き込まれた呼気の一部を吸引することでガスセンサ7側に導く装置である。具体的には、吸引ポンプ9は、第2配管22を介してガスセンサ7に接続されており、第1配管21及び呼気採取管5側からガスセンサ7に一定量の呼気を引き込む。吸引ポンプ9は、公知の技術であり、例えばソレノイドアクチュエータ及びベローズを有している。
【0025】
装置1は、圧力センサ11(圧力センサの一例)を有している。圧力センサ11は、呼気採取管5内の呼気の圧力を測定する呼気圧力センサである。
圧力センサ11は、第3配管23を介して第2配管22に接続されている。これにより、圧力センサ11は、第2配管22、ガスセンサ7、第1配管21、吸引ポンプ9のベローズ、及び呼気採取管5内の圧力を測定できる。
【0026】
装置1には、制御処理を行うコントローラ50(後述)や酩酊度判定用の基準データを格納するEEPROM等の不揮発性メモリ(図示せず)を含む回路部品を実装する回路基板(図示せず)が収納されている。回路基板は、ガスセンサ7を駆動して呼気中に含まれる検知対象の所定ガス成分(すなわち、アルコール)の濃度を測定する駆動測定手段である。
【0027】
装置1は、被験者によって押されるための操作ボタン31を有している。操作ボタン31は、回路基板に実装してある電源スイッチ(図示せず)と当接している。操作ボタン31を押駆動すると、電源スイッチがオンオフ操作され、ガスセンサ7やディスプレイ33への電源供給がオンオフされる。
装置1は、種々の情報を表示するディスプレイ33を有している。
装置1は、種々の情報を音声によって出力するスピーカ35を有している。
装置1は、外部の情報処理装置と通信を行うための外部インターフェイス37を有している。
筐体3内の下部には、電池39を収納可能である。電池39は収納状態において回路基板に電気的に接続されて電源を供給する。
【0028】
(2)呼気成分検査装置の制御構成
図4を用いて、装置1の制御構成を説明する。図4は、呼気成分検査装置の制御構成の機能ブロック図である。
装置1は、コントローラ50(制御部の一例)を有している。
コントローラ50は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェイス(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイスなど)を有するコンピュータシステムである。コントローラ50は、記憶部55(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
【0029】
コントローラ50は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
コントローラ50の各要素の機能は、一部又は全てが、コントローラ50を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、制御部の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
コントローラ50は、記憶部55に記憶されているプログラムを読み取り実行することによって、呼気流入判定部51と、音声情報生成部52と、ガス濃度測定部53と、表示情報生成部54と、を実現する。
【0030】
呼気流入判定部51は、圧力センサ11の検出結果に基づいて、呼気採取管5の本体5aへの流入の有無と、その継続の有無とを判定する。
音声情報生成部52は、各種音声情報(後述する基準音、調整音など)を生成し、それを用いてスピーカ35に音を出させる。音声情報生成部52は、音の高さを変化させるための変調器、合成器、アンプ等を含んでいてもよい。
ガス濃度測定部53は、ガスセンサ7の出力に基づいて、呼気中のアルコールの濃度を測定する。具体的には、ガス濃度測定部53は、ガスセンサ7の出力電流に基づいて、呼気中のアルコール濃度を算出する。
【0031】
表示情報生成部54は、ディスプレイ33に各種の情報を表示させる。表示情報生成部54は、例えば、息の吹きかけの待機の指示、息の吹きかけの指示、吹きかけ終了の指示など、操作ガイドの情報をディスプレイ33に表示させる。また、表示情報生成部54は、呼気中のアルコール濃度の数値、呼気流入判定部51の判定結果もディスプレイ33に表示させる。
【0032】
コントローラ50には、操作ボタン31、ガスセンサ7、圧力センサ11からの信号が入力される。
コントローラ50は、吸引ポンプ9、ディスプレイ33、スピーカ35に制御信号等を出力する。
【0033】
(3)測定制御動作
図5図7を用いて、装置1の測定制御動作を説明する。図5は、呼気成分検査装置の検査制御動作を示すフローチャートである。図6は、基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図である。図7は、調整音の時間変化を示すグラフである。
【0034】
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、コントローラ50から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0035】
図7のステップS1では、開始ボタンが押されるのを待つ。被験者は、装置1によるアルコール測定を実施する場合に、操作ボタン31を用いて開始操作する。開始操作が行われると、プロセスはステップS2に移行する。
ステップS2では、ウォームアップが実行される。
【0036】
ステップS3では、ディスプレイ33に息の吐き出し指示が表示される。具体的には、コントローラ50の表示情報生成部54が、上記情報をディスプレイ33に表示させる。この指示に応じて、被験者はマウスピース6を介した呼気の吹き込みを開始できる。なお、この場合、情報の出力は、ディスプレイ33及びスピーカ35の一方又は両方を用いてもよい。
【0037】
ステップS4では、コントローラ50は、タイマーをリセットする。すなわち、コントローラ50は、タイマー(図示せず)を0秒にセットした後、タイマーによる時間の計測を開始する。
【0038】
吹きかけ指示表示に応じて被験者がマウスピース6に呼気を吹き込むと、呼気が呼気採取管5内を通過する。この際、呼気の圧力が、第1配管21、ガスセンサ7、第2配管22、第3配管23を介して伝わって圧力センサ11で検出される。
呼気流入判定部51は、圧力センサ11の検出結果に基づいて、呼気採取管5の本体5aへの流入の有無と、その継続の有無とを判定する。ただし、この実施形態では呼気流入判定部51の動作は、説明の簡略化を目的として省略される。つまり、以下の説明では呼気が流入しており、継続している状態を前提としている。
ステップS5では、基準音・調整音発生動作が実行される。具体的には、コントローラ50が基準音と調整音をスピーカ35に発生させる。
【0039】
具体的には、図6に示すように、基準音(白表示)と調整音(黒表示)が交互に発生する。言い換えると、基準音を周期的に鳴動させ、その周期の間に、息の強さによって周波数が変化する調整音を鳴動させる。さらに具体的には、スピーカ35は、基準音及び調整音を一定ピッチ(例えば、0.5秒間隔)で交互に発生させる。これにより、被験者が最適な息の強さを把握できる。この結果、図7に示すように、初期段階では基準音と異なる高さの調整音が発生していても、被験者が、調整音を基準音に合わせるように(同じ音階となるように)、呼気の吹きこみ強さを調整する。したがって、最終的には図7に示すように、調整音の高さが、基準音の高さと一致する又は近づく。この結果、最適な呼気流量の状態でガス成分を測定でき、つまり測定精度が向上する。
【0040】
なお、基準音は、工場出荷時に設定されており、記憶部55に保存されている。
基準音の高さ(周波数)は一定である。調整音の高さ(周波数)は、息の強さ(つまり、呼気採取管5内の圧力)に応じて変化させられる。
基準音の高さは、特定調整音の高さと同じ又は近くに設定されている。特定調整音とは、呼気吹き込みによって発生した圧力が適正圧力に一致したときに発生させられるものである。
【0041】
上記のように基準音と調整音は1秒周期などの一定周期にすることで、「あと何秒息を吹き続ければよいのか」が、被験者が分かる指標として利用できる。
一例として、基準音は1000Hzであり、調整音は500~1500Hzである。
【0042】
ステップS6では、適切な風量であるか否かが判断される。具体的には、呼気流入判定部51が、圧力センサ11の検出結果に基づいて、上記判断を実行する。適切な風量であれば、プロセスはステップS7に移行する。適切な風量でなければ、プロセスはステップS11に移行して、異常処理が行われる。異常処理としては、例えば、被験者へのエラー通知(アラーム音、音声案内、LED等の視覚的通知等)行い、次に電源を落とす。なお、異常処理の他の例として、電源を直ちに落とす、電源を落とさずに基準音・調整音の発生を停止する、電源を落とさずに時間計測がリセットされてプロセスがステップS4に戻る、電源を落とさずにプロセスがステップS3に戻って吹き込み指示がされる、のいずれかであってもよい。
ステップS7では、規定時間が経過しているか否かが判断される。規定時間が経過していればプロセスはステップS8に移行し、規定時間が経過していなければステップS6に戻る。
ステップS8では、呼気がガスセンサ7に吸引される。具体的には、コントローラ50が、吸引ポンプ9を駆動することによって、ガスセンサ7に一定量の呼気を導入する。
【0043】
ステップS9では、コントローラ50は、ガスセンサ7に導入された呼気に含まれるアルコールの濃度を、ガスセンサ7によって検出する。具体的には、ガス濃度測定部53が、ガスセンサ7の検出結果に基づいて呼気中のアルコール濃度を測定(解析)する。
【0044】
ステップS10では、検出されたアルコールの濃度をアルコール測定の結果として出力される。具体的には、表示情報生成部54が、アルコール濃度の値をディスプレイ33に表示する。
アルコールの濃度の出力方法は、ディスプレイ33による表示以外に、スピーカ35による音声出力、外部インターフェイス37を介した外部の情報処理装置への例えば電子メールによる通知、外部インターフェイス37を介した外部のプリンターによる印刷出力、記憶部55への記録でもよい。上記の出力方法は、1種類でもよいし、2種類以上組み合わせられてもよい。
【0045】
(4)実施形態の効果
上記のように、ガスセンサ7による測定動作における呼気の適正圧力に対応する基準音と、圧力センサ11の検出結果に基づいて変化する調整音とをスピーカ35が発生することで、被験者が呼気吹き込みの強さを調整可能になる。
【0046】
具体的には、この呼気成分検査装置1では、被験者が呼気を呼気採取管5に吹き込むと、ガスセンサ7が呼気のガス成分を検出する。一方、圧力センサ11が呼気採取管5内の圧力を測定し、コントローラ50が圧力に応じてスピーカ35に調整音を発生させる。さらに、コントローラ50は、スピーカ35に基準音を発生させる。
以上より、被験者は呼気を吹き込みながら基準音と調整音とを聞くことができ、調整音を基準音に近づくように(この実施形態では、調整音の高さが基準音の高さに近づくように)呼気吹き込みの強さを調整できる。具体的には、実際の呼気圧力が適正圧力に近づくと、調整音が基準音に近づく。その結果、ガスセンサ7は、呼気のガス成分をより正確に検出できる。
さらに、この呼気成分検査装置1では、被験者は、一定のピッチで基準音と調整音の比較を行うことができ、比較的短期間で呼気の吹きこみの圧力を適正圧力に近づけることができる。
【0047】
2.第2実施形態
第1実施形態では一定のピッチで基準音と調整音は発生していたが、基準音と調整音の発生タイミングは、被験者が両者を比較できれば十分であるので、第1実施形態に限定されない。
図8を用いて、基準音と調整音の発生タイミングの変形例を第2実施形態として説明する。図8は、第2実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図である。
【0048】
図8に示すように、コントローラ50は、スピーカ35に、基準音(白表示)と調整音(黒表示)の各組を所定間隔で発生させる。
この呼気成分検査装置では、基準音と調整音がワンセットとなって発生することで、すなわち、先が基準音で後が調整音という順番で音が鳴るので、被験者は、聞こえている音が基準音か調整音かを間違えずに把握できる。
【0049】
3.第3実施形態
第1実施形態及び第2実施形態では基準音は間欠的に発生していたが、基準音と調整音の発生タイミングは、被験者が両者を比較できれば十分であるので、第1実施形態及び第2実施形態に限定されない。
図9を用いて、基準音と調整音の発生タイミングの変形例を第3実施形態として説明する。図9は、第3実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図である。
【0050】
図9に示すように、スピーカ35は、基準音(白表示)を連続し、調整音(黒表示)を断続的に発生する。
この呼気成分検査装置では、基準音が連続して発生しているので、すなわち、基準音が連続して鳴り調整音が断続的に鳴ることで、被験者は、聞こえている音が基準音か調整音かを間違えずに把握できる。なお、「連続して発生」とは、所定期間にわたって途切れることなく発生という意味であり、呼気の吹き込み中の全期間又は一部期間であってもよい。
【0051】
4.第4実施形態
第1~第3実施形態では被験者は自らの判断によって呼気の吹きこみ強さを調整していた。しかし、吹きこみ強さが弱い場合に強くすることを教示し、吹きこみ強さが強い場合に弱くすることを教示するガイド手段を設けてもよい。
図10を用いて、そのような実施例を第5実施形態として説明する。図10は、第4実施形態の基準音と調整音の発生タイミングを示す模式図である。なお、呼気成分検査装置の基本的な構成及び動作は第1実施形態と同じであるので、異なる点を中心に説明する。
【0052】
図10に示すように、スピーカは、基準音(白表示)及び調整音(黒表示)以外に、呼気の圧力と適正圧力との差を示すガイド音(ハッチング表示)を発生する。これにより、被験者は、調整音が基準音に近づくように呼気吹き込みの強さをガイドされる。
具体的には、ガイド音は、呼気の圧力と適正圧力の差が大きい段階では「ピッ、ピッピッ」となり、差が小さくなる「ピー」となる。ただし、ガイド音のパターンは特に限定されない。
【0053】
この呼気成分検査装置では、呼気の圧力と適正圧力との差を示すガイド音が発生するので、被験者はガイド音にしたがって、呼気の吹き込み強さを正確に調整できる。ガイド音は、例えば、差が大きい場合と小さい場合で異なるものになる。また、ガイド音は、差の複数段階に応じた複数の種類を有していてもよいし、差の変化に応じて連続的に変化してもよい。
【0054】
5.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
本実施形態の呼気成分検査装置は呼気中のアルコール濃度を測定して飲酒による酩酊度を検査するアルコール検査装置として用いることが好ましいものであるが、その他の各種呼気成分をガスセンサにより検出する構造の呼気成分検査装置として、広く利用できる。
ガスセンサとしては、様々な方式を採用可能である。
【0055】
調整音は、高さではなく、音量、発生期間、メロディー、発生タイミングなどが変化してもよい。例えば、調整音の音量が吹きこみ圧力によって変化する場合は、被験者は基準音と調整音を比較することで、調整音の音量を基準音の音量に合わせることができる。例えば、調整音の発生期間が吹きこみ圧力によって変化する場合は、被験者は基準音と調整音を比較することで、調整音の発生期間を基準音の発生期間に合わせることができる。例えば、調整音のメロディーが吹きこみ圧力によって変化する場合は、被験者は基準音と調整音を比較することで、調整音のメロディーを基準音のメロディーに合わせることができる。
例えば、調整音の発生タイミングが吹き込み圧力によって変化する場合は、被験者は基準音と調整音を比較することで、調整音の発生タイミングを基準音の発生タイミングに合わせることができる。ここで、「発生タイミング」とは、例えば、基準音及び調整音がそれぞれ複数回鳴る設定の時に、基準音及び調整音のそれぞれの複数回の音の間隔である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る呼気成分検査装置は、呼気に含まれる口臭要因ガスやアルコール等の呼気成分の濃度を測定する装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 :呼気成分検査装置
3 :筐体
5 :呼気採取管
6 :マウスピース
7 :ガスセンサ
9 :吸引ポンプ
11 :圧力センサ
31 :操作ボタン
33 :ディスプレイ
35 :スピーカ
50 :コントローラ
51 :呼気流入判定部
52 :音声情報生成部
53 :ガス濃度測定部
54 :表示情報生成部
55 :記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10