(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】射出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20230925BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230925BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230925BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20230925BHJP
B29C 45/06 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/14
B29C45/26
B29C45/17
B29C45/06
(21)【出願番号】P 2020012432
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤生 勝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 克己
(72)【発明者】
【氏名】山岡 靖
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226877(JP,A)
【文献】特開2004-237586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B60Q 1/00- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金型内に樹脂を射出して第1成形部材を成形する工程と、
(b)金型内に樹脂を射出して第2成形部材を成形する工程と、
(c)前記第1成形部材または前記第2成形部材に封入構造体を装着する工程と、
(d)前記第1成形部材と前記第2成形部材との当接部に樹脂を射出して前記第1成形部材と前記第2成形部材とを接合する工程と、
を有し、
前記(a)工程において、同一の金型内で、前記第1成形部材の成形と、前記封入構造体を構成する金属部材がインサートされる樹脂成形とを同時に行
い、
前記封入構造体は、第1樹脂部材と、前記金属部材がインサートされる樹脂成形により成形される第2樹脂部材とを含み、
前記(c)工程より前に、前記第1および第2成形部材を射出成形する射出成形装置とは異なる組立て装置を用いて、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを組付けて前記封入構造体を成形することを特徴とする射出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程は、
(c-1)前記(a)工程で成形された前記第2樹脂部材を前記射出成形装置の金型からロボットによって取り出し、かつ、前記ロボットによって前記第2樹脂部材を前記組立て装置に搬入する工程と、
(c-2)前記組立て装置で前記封入構造体を成形する工程と、
(c-3)前記組立て装置から前記ロボットによって前記封入構造体を取り出し、かつ、前記ロボットによって前記封入構造体を前記射出成形装置の金型に搬入する工程と、
を有することを特徴とする請求項
1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項3】
前記(a)工程で前記第1成形部材を成形する金型の前記第1成形部材が成形される位置とは異なる位置に、前記金属部材として接続用端子を配置し、前記第1成形部材の成形と同時に前記接続用端子のインサート成形を行って前記第2樹脂部材を成形することを特徴とする請求項
1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂部材を成形する樹脂と、前記第2成形部材を成形する樹脂と、前記当接部に射出する樹脂とは、全て同一の樹脂であることを特徴とする請求項
1に記載の射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアミラーなどに取り付けられる射出成形体の一例として、レンズとハウジングとからなる射出成形体(車両用ランプ)が知られている。この射出成形体では、レンズとハウジングとが互いに異なる樹脂によって射出成形され、内部には透明な細長い導光部材や基板等が組み込まれている。
【0003】
上記射出成形体の製造方法として、特許文献1に、上記基板の電極と外部電源とを電気的に接続するためのターミナルをハウジングの上下方向に貫通させて内装することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された射出成形体の製造方法においては、ハウジングやレンズを成形する射出成形装置とは別の成形装置によって給電用のターミナルをインサート成形している。
【0006】
したがって、射出成形装置と別の成形装置との間でインサート成形品を搬送する必要が生じ、インサート成形品における傷の発生やターミナルの曲がり、ターミナルへの異物の付着、あるいはインサート成形品の搬送時の形態や搬送手段等に対しての配慮が必要になる。さらに、ターミナル等の封入部材の工程間在庫(以降、この在庫のことを中間在庫と呼ぶ)が発生するとともにインサート成形品の置き場が必要になる。
【0007】
すなわち、インサート成形品の搬送時の異物対策や梱包箱の用意、インサート成形品の置き場、搬送する作業者あるいは移動装置等が必要になることが課題であった。
【0008】
本発明の目的は、射出成形における作業の効率化および中間在庫の削減が図られた射出成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、(a)金型内に樹脂を射出して第1成形部材を成形する工程と、(b)金型内に樹脂を射出して第2成形部材を成形する工程と、(c)前記第1成形部材または前記第2成形部材に封入構造体を装着する工程と、(d)前記第1成形部材と前記第2成形部材との当接部に樹脂を射出して前記第1成形部材と前記第2成形部材とを接合する工程と、を有し、前記(a)工程において、同一の金型内で、前記第1成形部材の成形と、前記封入構造体を構成する金属部材がインサートされる樹脂成形とを同時に行い、前記封入構造体は、第1樹脂部材と、前記金属部材がインサートされる樹脂成形により成形される第2樹脂部材とを含み、前記(c)工程より前に、前記第1および第2成形部材を射出成形する射出成形装置とは異なる組立て装置を用いて、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材とを組付けて前記封入構造体を成形する。
【0011】
本発明の他の態様では、前記(c)工程は、(c-1)前記(a)工程で成形された前記第2樹脂部材を前記射出成形装置の金型からロボットによって取り出し、かつ、前記ロボットによって前記第2樹脂部材を前記組立て装置に搬入する工程と、(c-2)前記組立て装置で前記封入構造体を成形する工程と、(c-3)前記組立て装置から前記ロボットによって前記封入構造体を取り出し、かつ、前記ロボットによって前記封入構造体を前記射出成形装置の金型に搬入する工程と、を有する。
【0012】
本発明の他の態様では、前記(a)工程において前記第1成形部材を成形する金型の前記第1成形部材が成形される位置とは異なる位置に、前記金属部材として接続用端子を配置し、前記第1成形部材の成形と同時に前記接続用端子のインサート成形を行って前記第2樹脂部材を成形する。
【0013】
本発明の他の態様では、前記第1樹脂部材を成形する樹脂と、前記第2成形部材を成形する樹脂と、前記当接部に射出する樹脂とは、全て同一の樹脂である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、射出成形における作業の効率化および中間在庫の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態の射出成形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す射出成形装置を含む射出成形システムの構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態の射出成形体(ランプ)の構造を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すA-A線に沿う切断面を示す拡大断面図である。
【
図5】
図3に示す射出成形体の内部構造を示す正面図である。
【
図6】
図2に示す射出成形システムを用いた射出成形体の組立ての手順を示す組立て手順図である。
【
図7】
図3に示す射出成形体におけるハウジングの構造を示す斜視図である。
【
図8】
図3に示す射出成形体におけるレンズの構造を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態のインサート成形品の構造を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態の封入構造体の構造を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態の組付け構造体の構造を示す斜視図である。
【
図12】
図3に示す射出成形体の組立てにおけるハウジング成形とインサート成形の同時成形の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す本実施の形態の射出成形装置の構造について説明する。
図1に示す射出成形装置30は、金型内に樹脂を射出して2つの樹脂部材(第1成形部材、第2成形部材)を成形する1次射出と、上記1次射出によって成形された第1成形部材および第2成形部材の金型を同一の射出位置に移動させて型締めし、当該金型内に樹脂を射出して第1成形部材と第2成形部材とを接合(一体化)する2次射出と、を行うことが可能な装置である。なお、本実施の形態では、射出成形装置30が有する何れかの金型によってハウジング2またはレンズ3を射出成形することを1次射出(1次成形)と呼ぶ。また、射出成形装置30が有する何れかの金型を用いて該金型内に樹脂を射出し、該樹脂によりハウジング2とレンズ3とを接合(一体化)する射出成形を2次射出(2次成形)と呼ぶ。
【0018】
本実施の形態では、上記2つの樹脂部材を接合して成る射出成形体の一例として、
図3~
図5に示すような、自動車のドアミラーなどに取り付けられるランプ1を取り上げて説明する。さらに、ランプ1の構成部材の一例として、ハウジング(第1成形部材)2とレンズ(第2成形部材)3を取り上げる。つまり、本実施の形態の射出成形体は、ハウジング2とレンズ3とが接合されて成るランプ1である。
【0019】
なお、ランプ1は、中空構造となっており、
図4に示す収容部(中空部)2aに封入部材が装着されている。そして、ランプ1は、封入部材を収容する収容部2aが設けられたハウジング2と、収容部2aを覆い、かつ、ハウジング2と接合されるレンズ3と、ハウジング2とレンズ3とに接触してハウジング2とレンズ3とを接合する接合用樹脂4と、を有している。
【0020】
次に、
図1に示す本実施の形態の射出成形装置30について説明する。射出成形装置30は、射出成形が行われる第1回転位置と、射出成形が行われ、かつ回転中心C(
図2参照)の周上において上記第1回転位置に対して所定の角度で位置する第2回転位置と、に往復回転するターンテーブル5を備えている。本実施の形態では、上記所定の角度が120°の場合について説明する。すなわち、上記第1回転位置と上記第2回転位置とは、ターンテーブル5の回転中心Cの周上において互いに120°の角度を成す位置となっている。
【0021】
また、
図1に示すように、射出成形装置30は、ターンテーブル5上に、このターンテーブル5の回転方向に沿って所定間隔で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を備えている。本実施の形態では、ターンテーブル5の回転中心Cの周上において互いが120°を成す角度で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を備えている場合について説明する。つまり、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、ターンテーブル5上にターンテーブル5の回転方向に沿って120°間隔で配置されており、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、それぞれ下型である。なお、
図2に示すように、ターンテーブル5上の120°毎に区画された領域である成形位置(射出位置)をそれぞれX成形位置、Y成形位置、Z成形位置とすると、例えば、X成形位置に第1金型6が配置され、Y成形位置に第2金型7が配置され、Z成形位置に第3金型8が配置されている。
【0022】
そして、
図1に示すように、射出成形装置30は、第1金型6、第2金型7および第3金型8に対して型開きおよび型締めをする第4金型9、第5金型10および第6金型11を備えている。第4金型9、第5金型10および第6金型11は、それぞれ上型である。さらに、射出成形装置30は、型締めされた金型内に樹脂を射出する第1射出装置12、第2射出装置13および第3射出装置14を備えている。第1射出装置12は、射出筒12aを有し、かつ、第4金型9の上部に配置され、第2射出装置13は、射出筒13aを有し、かつ、第5金型10の上部に配置され、第3射出装置14は、射出筒14aを有し、かつ、第6金型11の上部に配置されている。
【0023】
すなわち、射出成形装置30においては、第4金型9に第1射出装置12が取り付けられ、第5金型10に第2射出装置13が取り付けられ、さらに第6金型11に第3射出装置14が取り付けられている。そして、第1射出装置12は、射出口12bを有する射出筒12aを備えている。また、第2射出装置13は、射出口13bを有する射出筒13aを備えており、さらに、第3射出装置14は、射出口14bを有する射出筒14aを備えている。
【0024】
そして、射出成形装置30では、ターンテーブル5の往復回転(旋回)動作や金型の型開きおよび型締めの動作、さらに各射出装置からの射出動作等が図示しない制御部によって制御される。具体的には、下型である第1金型6、第2金型7および第3金型8の何れかに対して、上型である第4金型9、第5金型10および第6金型11を接近させたり、離反させたりする動作、使用する各射出装置、使用する樹脂および射出のタイミングなどの射出動作が上記制御部によって制御され、第1射出装置12、第2射出装置13および第3射出装置14に対して、必要なタイミングで必要な樹脂をそれぞれの射出筒の射出口から射出するようになっている。
【0025】
また、ターンテーブル5の位置制御として、上記制御部は、例えば、ターンテーブル5に対して第1の位置制御および第2の位置制御を実行する制御を行う。上記第1の位置制御が実行されると、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。一方、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第6金型11とが対向し、第2金型7と第4金型9とが対向し、かつ、第3金型8と第5金型10とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。
【0026】
また、
図2に示すように、射出成形装置30では、ターンテーブル5の周囲に、各金型に対して部品や射出成形体の搬入および搬出(取り出し)を行うハンドリング用の第1ロボット31および第2ロボット32が設けられている。
【0027】
次に、
図2に示す本実施の形態の射出成形システム34について説明する。本実施の形態の射出成形システム34は、上述の射出成形装置30と、部品を自動で組立てる自動組立て装置(組立て装置)23とを有している。自動組立て装置23は、射出成形装置30でハウジング2とレンズ3を組付ける際にその内部に封入する封入構造体27(
図10参照)を、射出成形装置30の外部で自動で組立てる装置である。
【0028】
自動組立て装置23は、一例として、回転ステージ23aを備えており、回転ステージ23a上には、複数の個別処理部23bが所定の間隔で設けられている。また、回転ステージ23aの周囲には、例えば、ハンドリング用の第1ロボット31、インナレンズ(導光レンズ)を供給するインナレンズ供給機25、さらには電子部品が組付けられた基板20を供給する基板供給機26が設けられている。また、射出成形装置30のターンテーブル5のX成形位置の近傍には、ターミナル17(
図4参照)を供給するターミナル供給機24が設けられている。
【0029】
なお、射出成形装置30と自動組立て装置23との間での部品やユニットのやり取りは、第1ロボット31を用いて自動で行われることが好ましい。
【0030】
以上の構成により、射出成形システム34では、射出成形装置30でハウジング2やレンズ3の成形、およびハウジング2とレンズ3との接合によるランプ1の成形が行われ、そして、ハウジング2を成形する金型において、ハウジング2の成形と同時に、ターミナル17がインサートされる樹脂成形が行われる。
【0031】
一方、自動組立て装置23では、ランプ1の内部に封入される
図10に示す封入構造体27の組立てが行われる。なお、射出成形装置30でインサート成形されたインサート成形品29(
図9参照)の自動組立て装置23への移し替えや、自動組立て装置23で組立てられた封入構造体27の射出成形装置30への移し替えは、例えば、第1ロボット31等で自動で行われることが好ましい。
【0032】
次に、本実施の形態の射出成形体(ランプ1)の構造について、
図3~
図5を用いて説明する。
【0033】
ランプ1の構成部材であるハウジング2は、
図4に示すように、収容部2aの周縁部に設けられ、かつレンズ3と当接する壁部2bを備えている。つまり、壁部2bは、ハウジング2における側壁(立ち壁)である。
【0034】
一方、ランプ1のもう一つの構成部材であるレンズ3は、ハウジング2の壁部2bに対向して設けられ、かつ壁部2bと当接する壁部3aを備えている。つまり、壁部3aもレンズ3における側壁(立ち壁)である。これにより、ハウジング2の壁部2bとレンズ3の壁部3aとが当接部22で当接している。
【0035】
そして、ハウジング2の壁部2bは、壁部2bの端部から連なって外側に迫り出した迫り出し部2cと、迫り出し部2cの先端部に壁部3aと空間部33を介して設けられたリブ2dと、を備えている。これにより、ハウジング2とレンズ3の当接部22の外側には、壁部3aとハウジング2の迫り出し部2cとリブ2dとからなる溝状の空間部33が形成される。なお、迫り出し部2cおよびリブ2dは、ハウジング2の周縁部の全周に亘って設けられている。言い換えると、空間部33も、ハウジング2とレンズ3の当接部22の外側に全周に亘って設けられている。
【0036】
このようなハウジング2とレンズ3の構造において、接合用樹脂4は、空間部33に設けられて壁部3aと迫り出し部2cとリブ2dとに接触(密着)している。これにより、ハウジング2とレンズ3は、周縁部の全周に亘って設けられた接合用樹脂4により接合されている。
【0037】
ここで、ハウジング2の収容部2aには、
図5に示すように、封入部材として、発光素子であるLED(Light Emitting Diode) 18やLED18から発せられる光を
図3に示すレンズ3に向けて誘導する導光部材(第1樹脂部材、導光レンズ、インナレンズ)19が収容されている。導光部材19は、合成樹脂、例えば、アクリル樹脂を筒形状に形成した細長い部材である。
【0038】
さらに、収容部2aには、
図5に示すように、LED18と電気的に接続された配線20aを有する基板20が収容されている。基板20は、
図4に示すように、樹脂からなる支持用プレート(第2樹脂部材)21に取り付けられるとともに、固定プレート15に設けられた2本の位置決めピン16によって位置決めされている。また、支持用プレート21には、ランプ1の外部電源等と信号の送受信を行う接続用端子であるターミナル(金属部材)17が設けられている。なお、ターミナル17と支持用プレート21とは、射出成形装置30においてインサート成形により成形されたインサート成形品29(
図9参照)である。また、
図4に示すように、支持用プレート21は、導光部材19と接合され、導光部材19を支持している。また、
図5に示すように、LED18は、収容部2aの端部に配置されたサブ基板20bに搭載され、導光部材19の内部に配置されている。
【0039】
ランプ1においては、LED18に配線20aを介して電圧が印加されると、LED18が点灯する。そして、LED18から発せられた光は、導光部材19内に進入し、導光部材19内で反射する。反射した光は、レンズ3を透過してランプ1の外に到達する。
【0040】
本実施の形態のランプ1では、ハウジング2は、光を透過させない不透明な樹脂(非透光性樹脂)からなり、一方、レンズ3は、光を透過させる透明な樹脂(透光性樹脂)からなる。したがって、LED18から発せられる光は、導光部材19によってランプ1の先端側まで導かれ、レンズ3を透過してランプ1の前方側(自動車の前方側)に放出される。
【0041】
なお、本実施の形態では、ハウジング2とレンズ3を接合する接合用樹脂4は、例えば、レンズ3と同様の樹脂材料、すなわち光を透過させる透明な樹脂からなる。そして、本実施の形態のランプ1では、導光部材19を成形する樹脂と、レンズ3を成形する樹脂と、当接部22に射出される接合用樹脂4とが、全て同一の樹脂である。すなわち、導光部材19とレンズ3と接合用樹脂4とは、同一の透明な樹脂によって成形されている。導光部材19とレンズ3と接合用樹脂4とが同一の樹脂によって成形されることで、ランプ1に使用される樹脂の種類を減らしてランプ1を効率良く成形できるとともに、ランプ1のコストの低減化を図ることができる。
【0042】
次に、本実施の形態の射出成形体の製造方法を、
図6に示す組立て手順を用いて説明する。本実施の形態では、
図2に示す射出成形システム34を用いて射出成形体を組立てる場合について説明する。
【0043】
図6に示す組立て手順では、まず、ターンテーブル5を120°回転させ、回転後、射出成形装置30のX成形位置で第1成形部材としてハウジング2を成形し、射出成形装置30のZ成形位置で第2成形部材としてレンズ3を成形し、さらに、射出成形装置30のY成形位置でハウジング2とレンズ3との接合(2次成形)を行う。その後、ターンテーブル5を120°逆回転させ、逆回転後、X成形位置でハウジング2を成形し、Y成形位置でレンズ3を成形し、さらに、Z成形位置でハウジング2とレンズ3との接合(2次成形、一体化)を行う。
【0044】
図6に示す組立て手順を具体的に説明すると、まず、ターンテーブル5を、例えば時計方向に120°旋回(回転)させる。すなわち、ターンテーブル5の位置制御として、第1の位置制御を行う。これにより、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置30のX成形位置で第1金型6と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置30のY成形位置で第2金型7と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置30のZ成形位置で第3金型8と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0045】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第1金型6および第4金型9の内部に所定の樹脂を射出(1次射出)し、
図7に示すようなハウジング2を射出成形する。そして、本実施の形態ではハウジング2の射出成形を行う際に、第1金型6および第4金型9により
図4に示すようなターミナル17のインサート成形(ターミナルインサート成形)を行い、
図9に示すような支持用プレート21とターミナル17とからなるインサート成形品29を成形する。すなわち、ハウジング2の射出成形とターミナル17のインサート成形とを同一の金型内で、同時に行う。
【0046】
ここで、
図12を用いて上記同一の金型を用いたハウジング成形とインサート成形との同時成形について説明する。
【0047】
図12に示すように、例えば、ハウジング2を成形する第1金型6のハウジング2が成形される位置とは異なる位置に、金属部材であるターミナル(接続用端子)17を配置し、ハウジング2の成形と同時にインサート成形を行う。これにより、ハウジング2が成形されるのと同時に、ターミナル17が組み込まれた支持用プレート(第2樹脂部材)21すなわちインサート成形品29が成形される。
【0048】
なお、射出成形装置30のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第3金型8および第6金型11の内部に所定の樹脂が射出(1次射出)され、
図8に示すようなレンズ3が射出成形される。さらに、射出成形装置30のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第2金型7および第5金型10の内部に接合用樹脂4が射出され、ハウジング2とレンズ3の接合(2次成形、2次射出、一体化)が行われる。ここでは、
図10に示すような導光部材19や基板20等を含む封入構造体27が、
図5に示す収容部2aに装着されたハウジング2とレンズ3とからなる
図11に示す組付け構造体28を成形し、この組付け構造体28の空間部33に接合用樹脂4を充填して
図3に示すようなランプ1を成形する。言い換えると、ハウジング2とレンズ3との当接部22に接合用樹脂4を射出してハウジング2とレンズ3とを接合する。なお、このY成形位置で接合されるハウジング2とレンズ3は、前段の工程で射出成形されて予め準備されたものを用いる。
【0049】
そして、X成形位置では、ハウジング2およびインサート成形品29を成形した後、型開きを行う。その際、下型である第1金型6にハウジング2とインサート成形品29が配置される(ハウジング下型残し)。また、Z成形位置では、レンズ3を成形した後、型開きを行う。その際、上型である第6金型11にレンズ3が配置される(レンズ上型残し)。また、Y成形位置では、2次成形後、型開きを行ってランプアッシー取り出しを実行する。すなわち、組み上げられたランプ1を、例えば、
図2に示す第2ロボット32によって取り出す。
【0050】
また、X成形位置では、型開き後、成形されたハウジング2に対するインナレンズユニット組付け(A)、ターミナルインサート取り出し(B)およびターミナル供給(C)が行われる。
【0051】
まず、ターミナルインサート取り出し(B)の実行により第1金型6からインサート成形品29を取り出す。すなわち、ターミナル17を含む支持用プレート21を射出成形装置30の第1金型6から第1ロボット31によって取り出し、第1ロボット31によって支持用プレート21を自動組立て装置23に搬入する。
【0052】
言い換えると、第1ロボット31によって、
図12に示すように第1金型6からインサート成形品29を2個取り出し、
図2に示す自動組立て装置23の個別処理部23b(D)にインサート成形品29をセットする。
【0053】
その後、回転ステージ23aを60°回転させて、インサート成形品29を個別処理部23b(E)に移動させる。その後、X成形位置で、インサート成形品29のための2本のターミナル17を2箇所、計4本のターミナル17を第1金型6にセットする。
【0054】
一方、インナレンズ供給機25から第1ロボット31によって導光部材(インナレンズ、第1樹脂部材)19を取り出し、自動組立て装置23の個別処理部23b(E)でインサート成形品29に組付ける。
【0055】
その後、回転ステージ23aを60°回転させて、個別処理部23b(E)で組付けられた導光部材19およびインサート成形品29を個別処理部23b(F)に移動させ、自動組立装置23の周辺に配置された基板供給機26から基板20を取り出し、導光部材19およびインサート成形品29に組付ける。
【0056】
その後、回転ステージ23aを60°回転させて、基板20、導光部材19およびインサート成形品29を個別処理部23b(G)に移動させ、導光部材19に設けられた位置決めピン16を溶融させることで、基板20およびインサート成形品29の3部品を固定する。
【0057】
その後、回転ステージ23aを60°回転させて、個別処理部23b(G)で一体的に固定された導光部材19、基板20およびインサート成形品29を個別処理部23b(H)に移動させ、インサート成形品29のターミナル17と基板20の電極とを半田付けし、電気的に接続する。
【0058】
また、個別処理部23b(G)で半田付けされた基板20を含むターミナルインサート成形品を、回転ステージ23aを60°回転させて個別処理部23b(I)に移動させ、ターミナルインサート成形品の点灯検査を行う。
【0059】
その後、インナレンズユニットを組付ける。インナレンズユニットは、
図10に示す封入構造体27である。なお、封入構造体27は、導光部材19と、インサート成形品29の支持用プレート21とを含み、ハウジング2およびレンズ3を射出成形する射出成形装置30とは異なる自動組立て装置23を用いて、導光部材19と支持用プレート21とを組付けて成形される。すなわち、封入構造体27は自動組立て装置23で組付けられる。
【0060】
その後、回転ステージ23aを60°回転させて、インナレンズユニットである封入構造体27を個別処理部23b(D)に移動させる。そして、個別処理部23b(D)において、第1ロボット31によって自動組立て装置23からインナレンズユニット(封入構造体27)を取り出し、射出成形装置30の第1金型6内に移動させる(搬入する)。すなわち、第1ロボット31によって自動組立て装置23からインナレンズユニット(封入構造体27)を取り出し、射出成形装置30の第1金型6内のハウジング2に装着するインナレンズユニット組付け(A)を行う。ここでは、
図12のP部に示すように、例えば、第1金型6内に配置されたハウジング2に2個の封入構造体27を装着する。なお、封入構造体27を射出成形装置30の何れかの金型に配置されたレンズ3に装着する場合もある。
【0061】
その後、ターミナル供給機24から第1ロボット31によってターミナル17を4個取り出し、射出成形装置30の第1金型6に移動させるターミナル供給(C)を行う。なお、ターミナル供給(C)は、2次成形後のランプアッシー取り出しの際に行ってもよい。
【0062】
また、
図6に示すようなターンテーブル5の120°回転後の処理手順において、射出成形装置30の立ち上げ時は、ターミナル17の供給とターミナルインサート成形のみを行う。そして、インナレンズユニット(封入構造体27)が自動組立て装置23の個別処理部23b(D)に到着するタイミングでハウジング2の成形を開始する。
【0063】
以上の処理を完了後、ターンテーブル5を、例えば反時計方向に120°旋回(回転)させる。すなわち、ターンテーブル5を120°逆回転させる。ここでは、ターンテーブル5の位置制御として、第2の位置制御を行う。これにより、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第6金型11とが対向し、第2金型7と第4金型9とが対向し、かつ、第3金型8と第5金型10とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置30のX成形位置で第2金型7と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置30のY成形位置で第3金型8と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置30のZ成形位置で第1金型6と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0064】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第2金型7および第4金型9の内部に所定の樹脂を射出(1次射出)し、
図7に示すようなハウジング2を射出成形する。そして、本実施の形態ではハウジング2の射出成形を行う際に、第2金型7および第4金型9によりターミナル17のインサート成形(ターミナルインサート成形)を行い、
図9に示すような支持用プレート21とターミナル17とからなるインサート成形品29を成形する。すなわち、ハウジング2の射出成形とターミナル17のインサート成形とを同一の金型内で、同時に行う。例えば、ハウジング2を成形する第2金型7のハウジング2が成形される位置とは異なる位置に、金属部材であるターミナル(接続用端子)17を配置し、ハウジング2の成形と同時にインサート成形を行う。これにより、ハウジング2が成形されるのと同時に、ターミナル17が組み込まれた支持用プレート(第2樹脂部材)21すなわちインサート成形品29が成形される。
【0065】
なお、射出成形装置30のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第3金型8および第5金型10の内部に所定の樹脂が射出(1次射出)され、
図8に示すようなレンズ3が射出成形される。さらに、射出成形装置30のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第1金型6および第6金型11の内部に接合用樹脂4が射出され、ハウジング2とレンズ3の接合(2次成形、2次射出、一体化)が行われる。ここでは、
図10に示すような導光部材19や基板20等を含む封入構造体27が
図5の収容部2aに装着されたハウジング2と、レンズ3とからなる
図11に示す組付け構造体28を成形し、この組付け構造体28の空間部33に接合用樹脂4を充填して
図3に示すようなランプ1を成形する。言い換えると、ハウジング2とレンズ3との当接部22に接合用樹脂4を射出してハウジング2とレンズ3とを接合する。
【0066】
そして、X成形位置では、ハウジング2およびインサート成形品29を成形した後、型開きを行う。その際、下型である第2金型7にハウジング2とインサート成形品29が配置される(ハウジング下型残し)。また、Y成形位置では、レンズ3を成形した後、型開きを行う。その際、上型である第5金型10にレンズ3が配置される(レンズ上型残し)。また、Z成形位置では、2次成形後、型開きを行ってランプアッシー取り出しを実行する。すなわち、組み上げられたランプ1を、例えば、
図2に示す第2ロボット32によって取り出す。
【0067】
また、X成形位置では、型開き後、インナレンズユニット組付け(A)、ターミナルインサート取り出し(B)およびターミナル供給(C)が行われる。これらインナレンズユニット組付け(A)、ターミナルインサート取り出し(B)およびターミナル供給(C)については、ターンテーブル5の120°逆転前の回転位置での処理手順で説明したものと同様であるため、その重複説明は省略する。
【0068】
以上により、
図2に示す射出成形システム34を用いた製造方法で本実施の形態の射出成形体(ランプ1)が組立てられる。
【0069】
本実施の形態の射出成形体(ランプ1)の組立てでは、
図2に示す射出成形システム34を用いることにより、ハウジング成形、レンズ成形および2次成形に加えて、ハウジング成形やレンズ成形の金型と同一の金型で、かつ、ハウジング成形もしくはレンズ成形と同時にインサート成形を行うことができる。
【0070】
これにより、インサート成形を別の成形機で実施しなくて済むため、インサート成形品29の移動を省略することができ、射出成形における作業の効率化を図ることができる。
【0071】
さらに、インサート成形用の成形機が不要になり、かつ、インサート成形品29の梱包箱も不要になるため、ランプ1の製造コストの低減化を図ることができる。
【0072】
また、射出成形装置30と自動組立て装置23とハンドリング用のロボットとを備えた射出成形システム34を用いることで、インサート成形品29と基板20の組付け(カシメ)、半田付け、および組付け品(封入構造体27)の射出成形装置30の金型への搬入を全て自動で行うことができる。
【0073】
すなわち、ターミナル17のインサート成形品29を射出成形装置30から取り出し、基板20の自動組付け、カシメ、半田付けを行い、さらに、導光部材(インナレンズ)19への基板20の組付けを行った後、射出成形装置30の金型内のハウジング2にインナレンズユニット(封入構造体27)を供給する。これらの作業を、ロボット、各部品供給機および自動組立て装置23を用いることでランプ1の自動生産を実現することができる。
【0074】
これにより、ターミナル17等の封入構造体27を構成する部材の工程間在庫である中間在庫の削減を図ることができる。
【0075】
また、ランプ1の自動生産を実現することができるため、人員削減および工程削減を図ることができ、その結果、ランプ1の製造コストの低減化を更に図ることができる。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態においては、自動組立て装置23が回転ステージ23aを有し、この回転ステージ23aを所定の角度回転させて回転ステージ23a上の個別処理部23bで所定の処理が行われる場合を説明したが、自動組立て装置23の複数の個別処理部23bは、例えば、直線的に移動するコンベア上に設けられていてもよく、回転ステージ23aに限定されるものではない。
【0077】
また、上記実施の形態では、ターンテーブル5における第1回転位置と第2回転位置との成す角度、および第1金型6、第2金型7、第3金型8の配置間隔(回転中心Cの周上の角度)がそれぞれ120°の場合を説明したが、これらの角度は、120°に限らず120°以外の角度であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 ランプ(射出成形体)
2 ハウジング(第1成形部材)
2a 収容部
2b 壁部
2c 迫り出し部
2d リブ
3 レンズ(第2成形部材)
3a 壁部
4 接合用樹脂
5 ターンテーブル
6 第1金型(下型)
7 第2金型(下型)
8 第3金型(下型)
9 第4金型(上型)
10 第5金型(上型)
11 第6金型(上型)
12 第1射出装置
12a 射出筒
12b 射出口
13 第2射出装置
13a 射出筒
13b 射出口
14 第3射出装置
14a 射出筒
14b 射出口
15 固定プレート
16 位置決めピン
17 ターミナル(金属部材、接続用端子)
18 LED
19 導光部材(第1樹脂部材、導光レンズ、インナレンズ)
20 基板
20a 配線
20b サブ基板
21 支持用プレート(第2樹脂部材)
22 当接部
23 自動組立て装置(組立て装置)
23a 回転ステージ
23b 個別処理部
24 ターミナル供給機
25 インナレンズ供給機
26 基板供給機
27 封入構造体
28 組付け構造体
29 インサート成形品
30 射出成形装置
31 第1ロボット
32 第2ロボット
33 空間部
34 射出成形システム