(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
B60R21/264
(21)【出願番号】P 2020049693
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪妻 利広
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/163290(WO,A1)
【文献】特開平09-109822(JP,A)
【文献】特開2005-199867(JP,A)
【文献】特開2012-153288(JP,A)
【文献】特開2017-081236(JP,A)
【文献】特開2018-001782(JP,A)
【文献】米国特許第05871228(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の周壁部と、該周壁部の一端に配置された頂面部と、該周壁部の他端に配置された底面部と、を有する外殻容器と、
前記外殻容器内に配置された点火装置と、
前記外殻容器内で前記点火装置の作動によって燃焼可能に配置されたガス発生剤と、
前記外殻容器に形成され、各々が、前記外殻容器の周方向に沿った長さが該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成された複数のガス排出口と、
前記複数のガス排出口を閉塞する閉塞部と、
を備
え、
前記複数のガス排出口は、前記周壁部の周方向に並んで形成されており、
前記外殻容器の周方向は、前記周壁部の周方向であり、
前記周方向に直交する方向は、前記周壁部の中心軸に沿った方向であり、
前記周壁部には、前記中心軸に沿った方向における高さが互いに異なる位置に、前記周壁部の周方向に沿って前記複数のガス排出口が配列されることで形成された複数段のガス排出口列が前記周壁部の中心軸に沿った方向に亘って形成されており、
前記複数段のガス排出口列の各々は、それぞれ第1開口面積を有する第1ガス排出口と、該第1開口面積よりも小さい第2開口面積を有する第2ガス排出口と、を含んで構成されており、
一の前記ガス排出口列における前記第1ガス排出口と、該一のガス排出口列に対して上方又は下方に隣接する前記ガス排出口列における前記第2ガス排出口が、前記中心軸に沿った方向に並んで配置されており、
一の前記ガス排出口列における前記第2ガス排出口と、前記隣接する前記ガス排出口列における前記第1ガス排出口が、前記中心軸に沿った方向に並んで配置されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記複数のガス排出口の各々における前記周方向に沿った長さと該周方向に直交する方向に沿った長さの比の値は、1より大きく、2.4より小さい、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記第1ガス排出口と前記第2ガス排出口とは、前記周方向に交互に並んで配置されている、
請求項
1又は請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
一の前記ガス排出口列と、該一のガス排出口列に対して上方又は下方に隣接する前記ガス排出口列とのそれぞれには、前記中心軸を挟んで互いに対向するように配置された少なくとも2つのガス排出口が形成されており、
一の前記ガス排出口列に配置された前記少なくとも2つのガス排出口の各中心同士を結ぶ第1仮想線と、前記隣接する前記ガス排出口列に配置された前記少なくとも2つのガス排出口の各中心同士を結ぶ第2仮想線とは、いずれも前記中心軸を通り互いに直交する、
請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記複数のガス排出口の各々は、長円形状、楕円形状、長方形状、又はひし形状のいずれかに形成されている、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点火装置によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生剤を燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスを所望の動作を実現するための動力源として供給するガス発生器が知られている。ガス発生器は、外郭容器内でガス発生剤を燃焼させて発生させた燃焼ガスを当該外殻容器に形成されたガス排出口から外部に排出する。ガス発生器の動作前では、ガス排出口はシールテープ等の閉塞部材により閉塞されている。特許文献1には、上部側シェルの周壁部に複数個のガス噴出口が設けられ、ガス噴出口がシールテープにより閉鎖されたガス発生器が記載されている。特許文献2には、ディフューザシェルの周壁部に径の異なる複数のガス排出口が形成され、ガス排出口がシールテープにより閉塞されたエアバッグ用ガス発生器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-185907号公報
【文献】特開2003-191816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス発生器の外殻容器に複数のガス排出口を形成する際には、ガス排出口毎に加工公差が生じる場合がある。また、ガス排出口を閉塞する閉塞部に強度斑が存在する場合もある。これらの場合では複数のガス排出口毎で閉塞部の破裂圧に差が生じてしまい、ガス発生器の動作時において破裂圧が相対的に小さい閉塞部のみが開裂し、破裂圧が相対的に大きい閉塞部が開裂しないまま残る虞がある。ガス発生器は、動作時において一部のガス排出口における閉塞部が開裂しない現象が発生すると、外殻容器の周方向で不均一に燃焼ガスが排出されてしまう。ガス発生器で外殻容器の周方向で不均等に燃焼ガスが排出されることは、ガス発生器自体にとっても好ましくなく、またガス発生器と組み合わせて使用する装置にとっても好ましくない。
【0005】
本開示は、上記した問題に鑑み、ガス発生器の外殻容器の周方向で不均等に燃焼ガスが排出されるのを抑制し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のガス発生器では、外殻容器の周方向に沿った長さが該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成されたガス排出口を複数設けた。
【0007】
具体的には、本開示のガス発生器は、筒状の周壁部と、該周壁部の一端に配置された頂面部と、該周壁部の他端に配置された底面部と、を有する外殻容器と、前記外殻容器内に配置された点火装置と、前記外殻容器内で前記点火装置の作動によって燃焼可能に配置されたガス発生剤と、前記外殻容器に形成され、各々が、前記外殻容器の周方向に沿った長さが該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成された複数のガス排出口と、前記複数のガス排出口を閉塞する閉塞部と、を備える。
【0008】
本開示のガス発生器は、上記のガス排出口が複数形成されている。これによりガス発生器は、外殻容器の周壁部に縦長孔形状や円形状のガス排出口が形成される場合と比較して
、外殻容器の周方向で均等に燃焼ガスを排出するためのガス排出口の形成数を少なくすることができる。ガス排出口の形成数が少ない場合には、ガス排出口形成時の工数を少なくすることができるため、複数のガス排出口間の加工公差を小さくすることができる。また、ガス排出口の形成数が少ない場合には、ガス排出口を閉塞する閉塞部に用いる部材(閉塞部材)を少なくすることができるため、閉塞部に強度斑が発生する可能性を低減することができる。このため、ガス発生器は、複数のガス排出口毎で閉塞部の破裂圧に差が生じてしまうのを防ぎ、動作時において一部のガス排出口における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができるので、外殻容器の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。また、ガス発生器は、ガス排出口形成時の工数を少なくすることができるため、製造工程を容易にできる。
【0009】
なお、1個の閉塞部材によって1個のガス排出口が閉塞されていてもよい。この構成においては、複数のガス排出口を閉塞する閉塞部は、複数の閉塞部材によって構成されていてもよい。また、1個の閉塞部材によって複数のガス排出口が閉塞されていてもよい。この構成においては、複数のガス排出口を閉塞する閉塞部は、1個の閉塞部材によって構成されていてもよい。
【0010】
上記のガス発生器において、前記複数のガス排出口の各々における前記周方向に沿った長さと該周方向に直交する方向に沿った長さの比の値は、1より大きく、2.4より小さくてもよい。本開示では、この比の値と閉塞部の破裂圧の関係を見出すことによって比の値の範囲を決定した。すなわち、この比の値が2.4より小さい場合に閉塞部の破裂圧を所定範囲に収めることができる。この比の値のガス排出口を形成することによって、複数のガス排出口における閉塞部の破裂圧を安定化させることができ、動作時において一部のガス排出口における閉塞部が開裂しない現象をより低減できる。
【0011】
上記のガス発生器において、前記複数のガス排出口は、前記周壁部の周方向に並んで形成されており、前記外殻容器の周方向は、前記周壁部の周方向であり、前記周方向に直交する方向は、前記周壁部の中心軸に沿った方向であってもよい。このように、複数のガス排出口は、外殻容器の周壁部に形成されていてもよい。
【0012】
上記のガス発生器において、前記複数のガス排出口は、第1開口面積を有する第1ガス排出口と、該第1開口面積よりも小さい第2開口面積を有する第2ガス排出口と、を含んで構成されており、前記第1ガス排出口と前記第2ガス排出口とは、前記周方向に交互に並んで配置されていてもよい。ここで、第1開口面積と第2開口面積の大小関係は、ガス排出口一個当たりの開口面積を比較した大小関係である。この構成によれば、ガス発生器は、第1ガス排出口と第2ガス排出口で閉塞部の破裂圧を異ならせることができ、各ガス排出口から多段階に燃焼ガスを排出することができる。
【0013】
上記のガス発生器において、前記周壁部には、前記中心軸に沿った方向における高さが互いに異なる位置に、前記周壁部の周方向に沿って前記複数のガス排出口が配列されることで形成された複数段のガス排出口列が前記周壁部の中心軸に沿った方向に亘って形成されていてもよい。複数段のガス排出口列は、2列に形成されていてもよいし、3列以上に形成されていてもよい。
【0014】
上記のガス発生器において、前記複数段のガス排出口列の各々は、それぞれ第1開口面積を有する第1ガス排出口と、該第1開口面積よりも小さい第2開口面積を有する第2ガス排出口と、を含んで構成されており、一の前記ガス排出口列における前記第1ガス排出口と、該一のガス排出口列に対して上方又は下方に隣接する前記ガス排出口列における前記第2ガス排出口が、前記中心軸に沿った方向に並んで配置されており、一の前記ガス排出口列における前記第2ガス排出口と、前記隣接する前記ガス排出口列における前記第1
ガス排出口が、前記中心軸に沿った方向に並んで配置されていてもよい。ここで、ガス発生器の上下方向は、外殻容器の中心軸に沿った方向であってもよい。このような構成を備えるガス発生器は、中心軸に沿った方向に並ぶガス排出口の合計の開口面積を等しくすることができるため、外殻容器の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0015】
上記のガス発生器において、一の前記ガス排出口列と、該一のガス排出口列に対して上方又は下方に隣接する前記ガス排出口列とのそれぞれには、前記中心軸を挟んで互いに対向するように配置された少なくとも2つのガス排出口が形成されており、一の前記ガス排出口列に配置された前記少なくとも2つのガス排出口の各中心同士を結ぶ第1仮想線と、前記隣接する前記ガス排出口列に配置された前記少なくとも2つのガス排出口の各中心同士を結ぶ第2仮想線とは、いずれも前記中心軸を通り互いに直交してもよい。なお、このような位置関係を満たすガス排出口が少なくとも設けられていればよく、ガス排出口列に更にガス排出口が形成されていてもよい。
【0016】
また、上記のガス発生器において、前記複数のガス排出口は、前記頂面部の周方向に並んで形成されており、前記外殻容器の周方向は、前記頂面部の周方向に沿った方向であり、前記周方向に直交する方向は、前記頂面部の径方向に沿った方向であってもよい。このように、複数のガス排出口は、外殻容器の頂面部に形成されていてもよい。
【0017】
上記のガス発生器において、前記複数のガス排出口の各々は、長円形状、楕円形状、長方形状、又はひし形状のいずれかに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、ガス発生器の外殻容器の周方向で不均等に燃焼ガスが排出されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るガス発生器の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係るガス発生器のガス排出口を示す図である。
【
図4】
図4は、ガス排出口の全長、孔径及びストレート長を変化させた場合に算出されるシールテープの破裂圧を示す表である。
【
図6】
図6は、ガス排出口の全長及びストレート長を変化させた場合に算出されるシールテープの破裂圧を示す表である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図10】
図10は、実施形態4の変形例1に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図11】
図11は、実施形態4に変形例2に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図12】
図12は、実施形態4に変形例3に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図13】
図13は、実施形態5に係るガス発生器をハウジングの周壁部側から視た図である。
【
図14】
図14は、実施形態5に係るガス発生器のガス排出口5の配置位置を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態6に係るガス発生器をハウジングの頂面部側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るガス発生器1の軸方向の断面図である。ガス発生器1は、ハウジング4(本開示でいう「外殻容器」の一例)を備え、ハウジング4内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを放出する。なお、本実施形態に係るガス発生器1は、後述するように2つの燃焼室が上下に配置され、各燃焼室に対応する点火装置及びガス発生剤が配置されたいわゆるデュアルタイプのガス発生器である。なお、本明細書では、点火器が作動することを、便宜上、「ガス発生器が作動する」と表現する場合がある。
【0022】
ハウジング4は、金属製の上部シェル2及び下部シェル3を有する。上部シェル2及び下部シェル3は、有底略円筒形状を有し、互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されている。これにより、ハウジング4は、軸方向の両端が閉じた短尺円筒状に形成される。ここで、ハウジング4の中心軸(
図1中、一点鎖線で表す中心軸CA)の方向に沿う方向をガス発生器1の上下方向と定義し、上部シェル2側(
図1の紙面における上側)をガス発生器1の上側とし、下部シェル3側(
図1の紙面における下側)をガス発生器1の下側とする。
【0023】
上部シェル2は、周壁部2cと頂面部2dを有する。頂面部2dは、上面視で概ね円形状を有する。周壁部2cは、頂面部2dの周囲を囲み、頂面部2dから概ね垂直下方に延在する環状の壁面を形成している。周壁部2cの一端側に頂面部2dが繋がっており、周壁部2cの他端側に上部シェル2の開口部が形成されている。上部シェル2は、周壁部2cと頂面部2dによって凹状の内部空間を形成している。上部シェル2の内部空間内に第1ガス発生剤22が充填される第1燃焼室21が形成される。また、周壁部2cの他端側には、上部シェル2の開口部から頂面部2dに向かって順に、嵌合壁部2a、突き当て部2bが形成されている。嵌合壁部2aは、突き当て部2bを介して周壁部2cと繋がっている。嵌合壁部2aの内径は、周壁部2cの内径より大きく形成されている。
【0024】
下部シェル3は、周壁部3aと底面部3bを有する。底面部3bは、頂面部2dと同様に上面視で概ね円形状を有する。周壁部3aは、底面部3bの周囲を囲み、底面部3bから概ね垂直上方に延在する環状の壁面を形成している。周壁部3aの一端側に底面部3bが繋がっており、周壁部3aの他端側に下部シェル3の開口部が形成されている。下部シェル3は、周壁部3aと底面部3bによって凹状の内部空間を形成している。下部シェル3の内部空間内に第2ガス発生剤26が充填される第2燃焼室25が形成される。なお、下部シェル3の周壁部3aの内径は、上部シェル2の周壁部2cの内径と概ね同じに形成されている。ハウジング4は、周壁部2cと周壁部3aで形成された筒状の周壁部と、当該周壁部の一端に配置された頂面部2dと、当該周壁部の他端に配置された底面部3bと、を有する。
【0025】
ガス発生器1は、ハウジング4内に配置された第1点火器23及び第2点火器27(第1点火器23及び第2点火器27は、本開示でいう「点火装置」の一例である)を備える
。下部シェル3の底面部3bには第1点火器23と第2点火器27がそれぞれ固定される孔(不図示)が形成されており、第1点火器23と第2点火器27は各穴に固定されている。
【0026】
下部シェル3の底面部3bには、第1点火器23の周囲を囲む筒状の収容壁部材16が固定されている。また、ハウジング4内の上部シェル2と下部シェル3との間には、分割壁10が配置されている。分割壁10は、終端部15と、終端部15に繋がりハウジング4内を概ね上下の空間に分割する分割壁部14と、分割壁部14に繋がり収容壁部材16に沿って延在する周壁部13と、収容壁部材16の上方開口部を一部覆うように配置される端部12を有する。収容壁部材16の上方開口部と端部12で、ハウジング4内の上下の内部空間を連通させる貫通孔11が形成されている。また、収容壁部材16の側面には貫通孔17が形成されている。貫通孔11と貫通孔17によって、分割壁10により分割されて形成される2つの空間(第1燃焼室21と第2燃焼室25)が連通される。なお、貫通孔17は収容壁部材16の内側からアルミニウム製などのシールテープ37によって閉塞されている。
【0027】
なお、筒状の収容壁部材16内の第1点火器23の周囲には、伝火薬が充填されていてもよい。伝火薬には、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含むものを採用できる。また、伝火薬には、例えば、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状のものを採用できる。また、伝火薬が充填される場合には、貫通孔11がアルミニウムテープ等で塞がれ、伝火薬と第1ガス発生剤22との混在が防止される。なお、点火装置は、第1点火器23のみで構成されていてもよいし、第1点火器23と伝火薬を含んで構成されていてもよい。
【0028】
また、第2点火器27の周囲には、伝火薬が充填されていてもよい。伝火薬には上述の伝火薬と同じものが用いられる。なお、第2点火器27の周囲に伝火薬が充填される場合には、伝火薬と第2ガス発生剤26とが混在しないように伝火薬と第2ガス発生剤26とを隔離する所定部材が配置される。なお、点火装置は、第2点火器27のみで構成されていてもよいし、第2点火器27と伝火薬とを含んで構成されていてもよい。
【0029】
本実施形態に係るガス発生器1では、下部シェル3上に分割壁10が取り付けられた状態で下部シェル3の上側に上部シェル2が取り付けられる。上述の通り上部シェル2の嵌合壁部2aの内径は周壁部2cの内径より大きく形成されており、上部シェル2は、突き当て部2bが分割壁10の終端部15に突き当てられるまで、下部シェル3に対して嵌め込まれる。そして、上部シェル2と下部シェル3の嵌合部位や接触部位は、内部に充填されるガス発生剤の防湿等のために好適な接合方法(例えば、溶接)により接合される。
【0030】
このようにハウジング4は、分割壁10によって内部空間が概ね上下に2つに分割されている。ハウジング4の上側の内部空間に第1燃焼室21が形成され、ハウジング4の下側の内部空間に第2燃焼室25が形成されている。第1燃焼室21には第1ガス発生剤22が配置され、第2燃焼室25には第2点火器27と第2ガス発生剤26が配置される。
【0031】
第1ガス発生剤22には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤が用いられる。第1ガス発生剤22の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましい。このような第1ガス発生剤22には、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含むものを採用できる。また、第1ガス発生剤22には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。なお、収容壁部材16の内部空間には、第1ガス発生剤22と組成が異なるガス発生剤が充填されていてもよい。収容壁部材16の内部空間に充填されるガス発生剤は、第1ガス発生剤22の着火を助長するため、燃焼温度が第1ガス発生剤22よりも高いものが用いられ
る。
【0032】
第2ガス発生剤26には、第1ガス発生剤22と同様に、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーを含むものを採用できる。また、第2ガス発生剤26には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0033】
第1燃焼室21に配置された第1ガス発生剤22は、収容壁部材16内に配置された第1点火器23の作動によって燃焼可能である。第2燃焼室25に配置された第2ガス発生剤26は、第2燃焼室25内に配置された第2点火器27の作動によって燃焼可能である。このように、本実施形態に係るガス発生器1は、第1点火器23及び第2点火器27と、各点火器に対応して配置された第1ガス発生剤22及び第2ガス発生剤26と、を備えるデュアルタイプのガス発生器である。デュアルタイプのガス発生器1は、第1点火器23の作動による第1ガス発生剤22の燃焼と、第2点火器27の作動による第2ガス発生剤26の燃焼によって、外部への燃焼ガスの放出の形態を多様に調整することができる。また、デュアルタイプのガス発生器1は、比較的多量の燃焼ガスを生成し、外部に放出することができる。
【0034】
また、ハウジング4内の上側の内部空間にはフィルタ32が配置されている。フィルタ32は、筒状形状を有し、内側に第1ガス発生剤22が充填されており、外側が周壁部2cと対向するように配置されている。フィルタ32は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されている。フィルタ32は、第1ガス発生剤22及び第2ガス発生剤26が燃焼することによって発生した燃焼ガスを冷却するとともに燃焼残渣を捕集する。なお、フィルタ32には、針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプのものを採用してもよい。また、上部シェル2の周壁部2cとフィルタ32との間に間隙33が形成されている。間隙33は、フィルタ32の周囲に環状のガス通路を形成している。この間隙33により燃焼ガスがフィルタ32の全領域を通過するので、フィルタ32の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。
【0035】
また、頂面部2dの内壁側のフィルタ32の内側にはクッション31が配置されている。第1ガス発生剤22は、第1燃焼室21内で不要に振動しないようにクッション31の付勢力によって分割壁部14等に抑えつけられた状態で充填されている。また、分割壁部14の下面側にはクッション35が配置されている。第2ガス発生剤26は、第2燃焼室25内で不要に振動しないようにクッション35によって付勢された状態で充填されている。
【0036】
また、本実施形態に係るガス発生器1は、上部シェル2の周壁部2cに形成された複数のガス排出口5を備える。ガス発生器1は、第1ガス発生剤22及び第2ガス発生剤26を燃焼させることで発生させた燃焼ガスをガス排出口5から排出する。燃焼ガスは、フィルタ32を通過した後、間隙33を流れてガス排出口5に至る。ガス排出口5は、ガス発生器1の作動前では、ハウジング4内に外部より湿気を含んだ外気が侵入するのを阻止するためにアルミニウム製のシールテープ34により閉塞されている。シールテープ34は、ガス排出口5を閉塞するように周壁部2cの内壁面に貼着されている。なお、シールテープ34は帯状形状を有して複数のガス排出口5を閉塞していてもよい。また、1枚のシールテープ34で一のガス排出口5を閉塞していてもよい。本実施形態に係るガス発生器1は、複数のガス排出口5を閉塞する1枚又は複数枚のシールテープ34で構成された閉塞部を備えている。
【0037】
本実施形態に係るガス発生器1は、第1点火器23が作動し、これによって第1ガス発生剤22が燃焼し第1燃焼室21内で燃焼ガスが発生する。燃焼ガスによって第1燃焼室
21の圧力が所定値以上になるとシールテープ34が開裂する。また、第1点火器23の作動後に第2点火器27が作動し、これによって第2ガス発生剤26が燃焼し第2燃焼室25内で燃焼ガスが発生する。燃焼ガスによって第2燃焼室25の圧力が所定値以上になるとシールテープ37が開裂し、第1燃焼室21と第2燃焼室25が連通する。ガス発生器1は、第1ガス発生剤22及び第2ガス発生剤26が燃焼することによって発生する燃焼ガスをガス排出口5から排出してエアバッグ等に供給する。
【0038】
次に、
図2に基づいてガス排出口5について説明する。
図2は、本実施形態に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。ガス排出口5は、ハウジング4の周壁部2cの周方向に沿った長さが当該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成されている。ここで、周壁部2cの周方向に直交する方向は、周壁部2cの中心軸に沿った方向である。なお、周壁部2cの中心軸は、ハウジング4の中心軸CAと一致している。以降、ハウジング4の周方向に沿った長さが当該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成されたガス排出口を「横長のガス排出口」と称する場合がある。また、複数のガス排出口5は、周壁部2cの周方向に均等な間隔を設けて配置されている。本実施形態では、複数のガス排出口5の各々は、周壁部2cの周方向に沿った方向が長手方向となる長円形状(トラック形状)に形成されている。
【0039】
ここで、上記特許文献1には、周壁部の軸方向に沿った幅が、当該周壁部の周方向に沿った幅よりも大きい縦長孔形状のガス噴出口について記載されている。また、上記特許文献2には、円形状のガス排出口について記載されている。一般的に、ガス発生器においては外殻容器の周方向で均等に(可能な限り周方向に連続的に)燃焼ガスが排出されるのが好ましい。そのため、ガス発生器の外殻容器の周壁部に縦長孔形状や円形状のガス排出口が形成される場合において外殻容器の周方向で均等に燃焼ガスを排出するためには、周方向に並ぶ複数のガス排出口の個数を多く形成する必要がある。しかし、ガス排出口の形成数が多くなると、複数のガス排出口間における加工公差も大きくなってしまう。これは、加工公差は治具の劣化や材料の加工時の状態等で発生するためであり、ガス排出口全体の加工公差はガス排出口1つ当たりの加工公差とガス排出口の個数によって決まってくるためである。また、ガス排出口の形成数を多くすると、ガス排出口形成時の工数が増え、ガス排出口形成時の手間もかかる。さらに、ガス排出口を閉塞する閉塞部に強度斑が存在する場合もある。複数のガス排出口間における加工公差が大きかったり、閉塞部に強度斑が存在したりすると、複数のガス排出口毎で閉塞部の破裂圧に差が生じてしまい、ガス発生器の動作時において破裂圧が相対的に小さい閉塞部が優先的に開裂しそこから燃焼ガスの排出が集中してしまう。その結果、破裂圧が相対的に大きい閉塞部が開裂しないままで残る虞がある。ガス発生器は、動作時において一部のガス排出口における閉塞部が開裂しない現象が発生すると、外殻容器の周方向で不均一に燃焼ガスが排出されてしまう。
【0040】
これに対し、本実施形態に係るガス発生器1では、複数の横長のガス排出口5が形成されている。このため、外殻容器の周壁部に縦長孔形状や円形状のガス排出口が形成される場合と比較して、本実施形態に係るガス発生器1は、外殻容器の周方向で均等に(周方向に連続的に)燃焼ガスを排出するためのガス排出口5の形成数を少なくすることができる。例えば、互いに隣接する2つのガス排出口と同じ開口面積となる1つの横長のガス排出口にすることで、ガス排出口5の形成数を少なく抑え、ガス排出口5形成時の工数を少なくすることができる。このため、複数のガス排出口5間の加工公差を小さくすることができる。また、ガス排出口5の形成数が少ない場合には、ガス排出口5を閉塞するシールテープ34の枚数を少なくしたり、シールテープ34の面積を小さくしたりできるため、シールテープ34に強度斑が発生する可能性を低減することができる。このため、本実施形態に係るガス発生器1は、複数のガス排出口5毎で閉塞部の破裂圧に差が生じてしまうのを防ぎ、動作時において一部のガス排出口5における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができる。よって、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出
することができる。また、本実施形態に係るガス発生器1は、ガス排出口5形成時の工数を少なくすることができるため、製造工程を容易にできる。
【0041】
また、本実施形態に係るガス発生器1は、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができるため、ガス排出口5の1つ当たりの燃焼ガスの流速を抑え、燃焼ガス供給先、例えば、エアバッグが破れてしまうのを防ぐことができる。また、複数の横長のガス排出口5を備える本実施形態に係るガス発生器1は、縦長孔形状や円形状に形成されたガス排出口と比較して燃焼ガスをハウジング4の周方向に分散させ易くなる。このため、本実施形態に係るガス発生器1は、局所的に燃焼ガスを排出するのを防ぎ、燃焼ガス排出時のガスの流速及びガスの温度に起因するエネルギーをハウジング4の周方向に分散してエアバッグに展開に必要な容積の燃焼ガスを当該エアバッグに供給することができる。よって、本実施形態に係るガス発生器1は、燃焼ガスの排出時にエアバッグへの影響を抑制できる。さらに、万が一にも本実施形態に係るガス発生器1が輸送中に誤作動を起こしたとしても、推力が相殺されるので、ガス発生器自体が飛翔せず周囲に影響を与えることがない。また、本実施形態に係るガス発生器1をエアバッグシステムに用いることによって、エアバッグの補強も簡略化可能となる。
【0042】
また、横長のガス排出口5おいては、同一の面積で円形状のガス排出口と比較してガス発生器1の作動時でシールテープ34に掛かる応力を大きくすることができ、シールテープ34が開裂し易くなる。このため、本実施形態に係るガス発生器1は、動作時において一部のガス排出口5における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができるので、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。なお、横長のガス排出口5を閉塞するシールテープ34の幅(周壁部2cの中心軸に沿った方向の長さ)を小さくすることもできる。そのため同一内径のハウジングの場合、ガス排出口が円形や縦長の場合と比較して、シールテープ34の大きさを小さくできるので、シールテープが起因して発生する残渣量(作動時の熱によるシールテープの溶融等)を低減することができる。
【0043】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るガス発生器1について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図3は、本実施形態に係るガス発生器が備えるガス排出口5を1個抜き出して示す図である。本実施形態に係るガス発生器は、上記実施形態1に係るガス発生器1と同様に長円形状のガス排出口5を備えている。ここで、
図3に示すようにガス排出口5は、周壁部2cの周方向の両端部がそれぞれ半円となった全長L1を当該周方向に有する。また、ガス排出口5は、周壁部2cの軸方向に沿った方向の長さとして孔径L2と、直線状の辺の長さであるストレート長L3と、を有する。
【0044】
本実施形態では、シールテープ34の破裂圧に基づいて、複数のガス排出口5の各々における周壁部2cの周方向に沿った長さと周壁部2cの軸方向に沿った長さの比の値の好適な範囲を決定する。
図4は、ガス排出口5の1つに対して全長L1、孔径L2、ストレート長L3を変化させた場合に算出されるシールテープ34の破裂圧を示す表である。
図4中、「全長(mm)」の欄に記載された数値は全長L1の長さ(mm)である。
図4中、「孔径(mm)」の欄に記載された数値は孔径L2の長さ(mm)である。
図4中、「ストレート長(mm)」の欄に記載された数値はストレート長L3の長さ(mm)である。
図4中、「周長(mm)」の欄に記載された数値はガス排出口5の周長(mm)である。
図4中、「開口面積(mm
2)」の欄に記載された数値はガス排出口5の開口面積(mm
2)である。
図4中、「全長/孔径」の欄に記載された数値は全長L1を孔径L2で割った数値、すなわち複数のガス排出口5の各々における周壁部2cの周方向に沿った長さと周壁部2cの軸方向に沿った長さの比の値(以下、単に「比の値」と表記する場合があ
る)である。
図4中、「破裂圧(N/mm
2)」は、ガス排出口5を閉塞するシールテープ34の破裂圧(N/mm
2)である。
【0045】
本実施形態では、ガス排出口5の1つ当たりの開口面積が約7mm2で概ね一定となるように全長L1、孔径L2、及びストレート長L3の長さを変化させた。また、シールテープ34には、アルミニウム製のシールテープを用いた。シールテープ34のせん断強度(以下、「F」と表記する)は、49.1N/mm2であった。また、シールテープ34の厚み(以下、「t」と表記する)は、200μmであった。ガス排出口5の周長を「C」、ガス排出口5の開口面積を「S」とそれぞれ表記すると、シールテープ34の破裂圧(P)は、次の式(1)によって算出することができる。
P=F×t×C/S・・・(1)
【0046】
表4中の破裂圧は、上記式(1)によって算出した値である。
図5は、破裂圧と比の値の関係を表すグラフである。
図5のグラフにおいて、横軸は比の値(L1/L2)を表し、縦軸は破裂圧を表している。
図5のグラフに示すように、比の値が2.39より小さい領域(点線の左側の領域)では破裂圧は非線形に変化し、比の値が2.39より大きい領域(点線の右側の領域)では破裂圧は線形に近い変化をしている。このように、ガス排出口5の開口面積を一定とすると、ガス排出口が円形状の場合と比較して破裂圧は大きくなるが、比の値が2.4より小さい場合にシールテープ34の破裂圧の上昇率、すなわち「全長/孔径」の変化率に対する「破裂圧」の変化率が低くなることが見出された。
【0047】
次に、ガス排出口5の孔径L2を2.00mmで一定として全長L1及びストレート長L3の長さを変化させた。
図6は、全長L1及びストレート長L3を変化させた場合に算出されるシールテープ34の破裂圧を示す表である。なお、
図6の表と
図4の表の項目は同じである。また、
図4の表と同様に、シールテープ34の破裂圧は、上記の式(1)によって算出した。
【0048】
図7は、破裂圧と比の値の関係を表すグラフである。
図7のグラフにおいて、横軸は比の値を表し、縦軸は破裂圧を表している。
図7のグラフに示すように、比の値が2.4より小さい領域(点線の左側の領域)では破裂圧(P)は非線形に変化し、比の値が2.4より大きい領域(点線の右側の領域)では破裂圧(P)は線形に近い変化をしている。このように、ガス排出口5の孔径を一定とすると、比の値が2.4より小さい場合に、シールテープ34の破裂圧の下降率が高くなることが見出された。
【0049】
シールテープ34の破裂圧が大き過ぎると、ガス発生器1の動作時にシールテープ34が開裂し難くなり、その結果、燃焼ガス排出のタイミングが遅れてしまうことから好ましくない。このため、ガス排出口5の比の値は、2.4より小さくすることが好ましい。なお、本実施形態では、横長のガス排出口5であるため比の値は、1より大きくなる。したがって、複数のガス排出口5の各々における周壁部2cの周方向に沿った長さと周壁部2cの軸方向に沿った長さの比の値は、1より大きく、2.4より小さいことが好ましい。なお、
図5及び
図7示す破裂圧(P)の変化率から、比の値は、2.25以下とするのがより好ましく、2以下(2.00以下)とするのが更に好ましい。本実施形態に係るガス発生器1は、閉塞部の破裂圧を所定の範囲に収めることができるので、動作時において一部のガス排出口5における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができ、以て、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0050】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るガス発生器1について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図8は、本実施形態に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から
視た図である。本実施形態に係るガス発生器1において、複数のガス排出口は、第1開口面積を有する第1ガス排出口5Aと第1開口面積よりも小さい第2開口面積を有する第2ガス排出口5Bとを含んで構成されている。なお、第1開口面積と第2開口面積の大小関係は、ガス排出口一個当たりの開口面積を比較した大小関係である。第1ガス排出口5Aと第2ガス排出口5Bとは、周壁部2cの周方向に交互に並んで配置されている。ガス排出口5A、5Bは、長円形状に形成されている。なお、ガス排出口5A、5Bの各々は、長円形状、楕円形状、長方形状、又はひし形状のいずれかに形成されていてもよい。
【0051】
第1ガス排出口5A及び第2ガス排出口5Bは、シールテープ34(
図8では不図示)で閉塞されている。ここで、第2開口面積は第1開口面積よりも小さいため、第2ガス排出口5Bを閉塞するシールテープ34は、第1ガス排出口5Aを閉塞するシールテープ34よりも破裂圧が大きくなる。このように、本実施形態に係るガス発生器1では、第1ガス排出口5Aと第2ガス排出口5Bでシールテープ34の破裂圧を異ならせることができる。また本実施形態に係るガス発生器1は、横長のガス排出口5A、5Bを備えることで、動作時において一部のガス排出口5における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができ、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0052】
<実施形態4>
次に、実施形態4に係るガス発生器1について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図9は、本実施形態に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。本実施形態に係るガス発生器1において、周壁部2cには、周壁部2cの中心軸に沿った方向における高さが互いに異なる位置に、周壁部2cの周方向に沿って複数のガス排出口5が配列されることで形成されたガス排出口列50が、周壁部2cの中心軸に沿った方向に亘って2段に形成されている。なお、ガス排出口列50は、3段以上に形成されていてもよい。このような構成を備える本実施形態に係るガス発生器1によってもハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0053】
<変形例1>
次に、実施形態4の変形例1に係るガス発生器1について説明する。
図10は、本変形例に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。本変形例において、複数段のガス排出口列50の各々は、第1ガス排出口5Aと第2ガス排出口5Bとを含んで構成されている。また、
図10に示す上段のガス排出口列50における第1ガス排出口5Aと、
図10に示す下段のガス排出口列50における第2ガス排出口5Bが、周壁部2cの中心軸に沿った方向に並んで配置されている。また、
図10に示す上段のガス排出口列50における第2ガス排出口5Bと、
図10に示す下段のガス排出口列50における第1ガス排出口5Aが、周壁部2cの中心軸に沿った方向に並んで配置されている。なお、上段のガス排出口列50と下段のガス排出口列50は、上下方向で互いに隣接して配置されている。このように構成された本変形例に係るガス発生器1は、周壁部2cの中心軸に沿った方向に並ぶガス排出口5A、5Bの合計の開口面積を等しくすることができる。このため、本変形例に係るガス発生器1は、排出される燃焼ガスの容積は円周方向においてほぼ一定となり、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0054】
<変形例2>
次に、実施形態4の変形例2に係るガス発生器1について説明する。
図11は、本変形例に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。本変形例において、第1ガス排出口5A及び第2ガス排出口5Bは、長方形状に形成されている。なお、第1ガス排出口5A及び第2ガス排出口5Bの配置パターンは、上記変形例1と同
様である。第1ガス排出口5A及び第2ガス排出口5Bを長方形状に形成する場合には、ガス排出口形成時に用いる加工治具や形成工程の管理(寸法や形成位置の管理)を容易でき、ガス排出口形成後にその寸法を測り易くできる。
【0055】
<変形例3>
次に、実施形態4の変形例3に係るガス発生器1について説明する。
図12は、本変形例に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。本変形例においては、ガス排出口5はひし形状に形成されており、実施形態4及び変形例1、2での第1ガス排出口5Aの配置位置にガス排出口5が配置されている。本変形例では、周壁部2cの周方向で上下段のガス排出口列50に互い違い(千鳥状)にガス排出口5が配置されている。この配置パターンにおいては、ガス排出口5をひし形状に形成する方が長方形状に形成するよりも、上下段のガス排出口列50の上下方向の距離を近づけても
図12に示す2つのガス排出口5間の距離Hを長くすることができる。ここで、距離Hは、2つのガス排出口5間で応力が集中し易い可能性のある部位間の距離である。ガス発生器1においては、この距離Hは長い程好ましい。本変形例に係るガス発生器1によれば、ひし形状のガス排出口5を備えることで、距離Hを長く確保しつつ、上下段のガス排出口列50の上下方向の距離を近づけることができる。これにより、本変形例に係るガス発生器1は、周壁部2cにおけるガス排出口列50の形成領域を狭くすることができる。
【0056】
<実施形態5>
次に、実施形態5に係るガス発生器1について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図13は、本実施形態に係るガス発生器1をハウジング4の周壁部2c、3a側から視た図である。本実施形態に係るガス発生器1において、上段のガス排出口列50と、下段のガス排出口列50とのそれぞれには、周壁部2cの中心軸を挟んで互いに対向するように配置された少なくとも2つのガス排出口51、52が形成されている。このガス排出口51、52は、上記の実施形態や変形例においてガス排出口の総開口面積を維持しながら、
図13で示すように各々のガス排出口51、52の全長と孔径を変えている。また、本実施形態では、上段のガス排出口列50にガス排出口51が配置され、下段のガス排出口列50にガス排出口52が配置されている。
【0057】
図14は、周壁部2cの中心軸に沿った方向から視たガス排出口51、52の配置位置を示す図である。
図14に示すように、2つのガス排出口51の各中心同士を結ぶ第1仮想線A1と、2つのガス排出口52の各中心同士を結ぶ第2仮想線A2とは、いずれも周壁部2cの中心軸CAを通り互いに直交している。このように配置されたガス排出口51、52を備える本実施形態に係るガス発生器1によれば、4方向に均等に燃焼ガスを排出することができる。このため、本変形例に係るガス発生器1は、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。なお、4方向に均等に燃焼ガスを排出するためには、ガス排出口51、52の形状及び開口面積は同じに形成するのが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係るガス発生器1は、上記の位置関係を満たすガス排出口を少なくとも備えていればよく、上段及び下段のガス排出口列に更にガス排出口が形成されていてもよい。
【0059】
<実施形態6>
次に、実施形態6に係るガス発生器1について説明する。なお、上記実施形態に係るガス発生器1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図15は、本実施形態に係るガス発生器1をハウジング4の頂面部2d側から視た図である。本実施形態に係るガス発生器1において、複数のガス排出口5は、ハウジング4の上部シェル2の頂面部2dの周辺部分に周方向に並んで形成されている。ガス排出口
5は、ハウジング4の周方向に沿った長さが当該周方向に直交する方向に沿った長さよりも長く形成されている。ここで、ハウジング4の周方向は、頂面部2dの周方向に沿った方向であり、当該周方向に直交する方向は、頂面部2dの径方向に沿った方向である。複数のガス排出口5は、頂面部2dの周方向に均等な間隔を設けて配置されている。本実施形態に係るガス発生器1では、上記実施形態と同様に複数の横長のガス排出口5を備えるため、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0060】
なお、本実施形態においても、複数のガス排出口5の各々における頂面部2dの周方向に沿った長さと頂面部2dの径方向に沿った長さの比の値は、1より大きく、2.4より小さいことが好ましく、2.25以下とするのがより好ましく、2以下(2.00以下)とするのが更に好ましい。本実施形態に係るガス発生器1は、複数のガス排出口5毎で閉塞部の破裂圧を所定範囲に収めることができるので、動作時において一部のガス排出口5における閉塞部が開裂しない現象が発生する可能性を低減することができ、以て、ハウジング4の周方向で均等に燃焼ガスを排出することができる。
【0061】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。上記実施形態及び変形例に係るガス発生器1は、2個の点火器を備えるデュアルタイプのガス発生器であったが、本開示の技術は1個の点火器を備えるシングルタイプのガス発生器にも適用できる。
【0062】
また、上記実施形態例及び変形例に係るガス発生器は、高さ方向の長さが上面視における外径よりも短いディスク形状を有するものであったが、例えば、軸方向の長さが上面視における外径よりも長いシリンダ型形状を有するガス発生器に本開示の技術を適用してもよい。
【0063】
なお、複数のガス排出口5の各々は、ハウジング4の周方向に沿った方向が長手方向となる長円形状、楕円形状、長方形状、又はひし形状のいずれかに形成されていてもよい。複数のガス排出口は、これらの形状のうち一種類の形状に統一されていてもよいし、これらの形状の組み合わせであってもよい。
【0064】
また、ガス発生器は、横長のガス排出口に加え、円形状のガス排出口を備えていてもよい。例えば、ガス発生器は、横長のガス排出口を6個と、円形状のガス排出口を2個とを備えていてもよい。円形状のガス排出口は、ハウジング4内の圧力が過剰圧になった場合に当該ガス排出口を閉塞する閉塞部を開裂させて、ハウジング4内の圧力を低下させるために設けられたものであってもよい。
【0065】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 :ガス発生器
2 :上部シェル
2c :周壁部
2d :頂面部
3 :下部シェル
3a :周壁部
4 :ハウジング
5、5A、51、52 :ガス排出口
10 :分割壁
14 :分割壁部
16 :収容壁部材
21 :第1燃焼室
22 :第1ガス発生剤
23 :第1点火器
25 :第2燃焼室
26 :第2ガス発生剤
27 :第2点火器
31、35 :クッション
32 :フィルタ
34、37 :シールテープ
50 :ガス排出口列