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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】光結合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/12 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
H01L31/12 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020049998
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021150534
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳子
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0276327(US,A1)
【文献】特開平04-349652(JP,A)
【文献】実開平06-041160(JP,U)
【文献】特開2003-163380(JP,A)
【文献】特開2014-041865(JP,A)
【文献】特開平11-150291(JP,A)
【文献】特開昭61-241986(JP,A)
【文献】特開2014-135473(JP,A)
【文献】特開昭62-054974(JP,A)
【文献】特開平11-177126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/20
H10K 30/60-30/65
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リードフレームと、
前記第1リードフレーム上に設けられた発光素子と、
第2リードフレームと、
前記第2リードフレーム上に設けられ、前記発光素子と対向する受光素子と、
前記発光素子の発光面を被覆し、前記第1リードフレームに設けられたポリイミド系樹脂と、
前記発光素子と前記受光素子間に設けられた透明性樹脂部と、
前記発光素子及び前記受光素子を収容する遮光性樹脂成形体と、
を有し、
前記ポリイミド系樹脂は、前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面側、前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面とは反対側の面側、前記発光素子が設けられた面と前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面とは反対側の面を接続する面側に設けられていて、
前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミドシリコーンからなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記発光素子と前記第1リードフレームは第1ボンディングワイヤで接続され、
前記受光素子と前記第2リードフレームは第2ボンディングワイヤで接続され、
前記第1ボンディングワイヤの表面には、前記ポリイミド系樹脂が設けられていて、
前記第2ボンディングワイヤの表面には、前記ポリイミド系樹脂が設けられていて、
前記第1ボンディングワイヤは、前記発光面を覆う前記ポリイミド系樹脂の外部に延在し、
前記第2ボンディングワイヤは、前記受光素子の表面を覆う前記ポリイミド系樹脂の外部に延在し、
前記第1リードフレームは、前記遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と前記発光素子を支持する支持体側に分割され、
前記第2リードフレームは、前記遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と前記受光素子を支持する支持体側に分割され、
前記第1ボンディングワイヤは、前記支持体側の発光素子と前記端子側の第1リードフレームを接続し、
前記第2ボンディングワイヤは、前記支持体側の受光素子と前記端子側の第2リードフレームを接続する光結合装置。
【請求項2】
第1リードフレームと、
前記第1リードフレーム上に設けられた発光素子と、
第2リードフレームと、
前記第2リードフレーム上に設けられ、前記発光素子と対向する受光素子と、
前記発光素子の発光面を被覆し、前記第1リードフレームに設けられたポリイミド系樹脂と、
前記発光素子と前記受光素子間に設けられた透明性樹脂部と、
前記発光素子及び前記受光素子を収容する遮光性樹脂成形体と、
を有し、
前記ポリイミド系樹脂は、前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面側、前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面とは反対側の面側、前記発光素子が設けられた面と前記第1リードフレームの前記発光素子が設けられた面とは反対側の面を接続する面側に設けられていて、
前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミドシリコーンからなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記発光素子を覆う前記ポリイミド系樹脂を覆い、前記発光素子の前記発光面と直接的に接しないポッティング樹脂を有し、
前記発光素子と前記第1リードフレームは第1ボンディングワイヤで接続され、
前記受光素子と前記第2リードフレームは第2ボンディングワイヤで接続され、
前記第1ボンディングワイヤの表面には、前記ポリイミド系樹脂が設けられていて、
前記第2ボンディングワイヤの表面には、前記ポリイミド系樹脂が設けられていて、
前記第1ボンディングワイヤは、前記発光面を覆う前記ポリイミド系樹脂及び前記ポッティング樹脂の外部に延在し、
前記第2ボンディングワイヤは、前記受光素子の表面を覆う前記ポリイミド系樹脂の外部に延在し、
前記第1リードフレームは、前記遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と前記発光素子を支持する支持体側に分割され、
前記第2リードフレームは、前記遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と前記受光素子を支持する支持体側に分割され、
前記第1ボンディングワイヤは、前記支持体側の発光素子と前記端子側の第1リードフレームを接続し、
前記第2ボンディングワイヤは、前記支持体側の受光素子と前記端子側の第2リードフレームを接続する光結合装置。
【請求項3】
前記発光素子の非発光面、前記第1リードフレームの表面、前記第2リードフレームの表面、前記受光素子の表面及び前記遮光性樹脂成形体の内壁面からなる群より選ばれる1以上に前記ポリイミド系樹脂が設けられている請求項1又は2に記載の光結合装置。
【請求項4】
記第1リードフレームの前記支持体側を向く前記第1リードフレームの前記端子側の面に前記ポリイミド系樹脂が設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光結合装置。
【請求項5】
前記ポリイミド系樹脂の厚さは1μm以上50μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の光結合装置。
【請求項6】
記第1ボンディングワイヤと前記第2ボンディングワイヤの距離は、300μm以上である請求項1ないしのいずれか1項に記載の光結合装置。
【請求項7】
前記ポリイミド系樹脂は、前記第2リードフレームの前記受光素子が設けられた面側、前記第2リードフレームの前記受光素子が設けられた面とは反対側の面側、前記受光素子が設けられた面と前記第2リードフレームの前記受光素子が設けられた面とは反対側の面を接続する面側に設けられている請求項1ないしのいずれか1項に記載の光結合装置。
【請求項8】
記第2リードフレームの前記支持体側を向く前記第2リードフレームの前記端子側の面側に前記ポリイミド系樹脂が設けられている請求項に記載の光結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光結合装置は、フォトカプラとも呼ばれており、発光素子および受光素子と、これらチップを実装するリードフレームと、これらを収容するアウター樹脂とを備え、その内部は、インナー樹脂で充填されている。発光素子と受光素子はインナー樹脂で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014ー220275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、信頼性が向上した光結合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光結合装置は、第1リードフレームと、第1リードフレーム上に設けられた発光素子と、第2リードフレームと、第2リードフレーム上に設けられ、発光素子と対向する受光素子と、発光素子の発光面を被覆し、第1リードフレームに設けられたポリイミド系樹脂と、発光素子と受光素子間に設けられた透明性樹脂部と、発光素子及び受光素子を収容する遮光性樹脂成形体とを有する。ポリイミド系樹脂は、第1リードフレームの発光素子が設けられた面側、第1リードフレームの発光素子が設けられた面とは反対側の面側、発光素子が設けられた面と第1リードフレームの発光素子が設けられた面とは反対側の面を接続する面側に設けられている。ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミドシリコーンからなる群より選ばれる1種以上を含む。発光素子と第1リードフレームは第1ボンディングワイヤで接続され、受光素子と第2リードフレームは第2ボンディングワイヤで接続され、第1ボンディングワイヤの表面には、ポリイミド系樹脂が設けられていて、
第2ボンディングワイヤの表面には、ポリイミド系樹脂が設けられていて、第1ボンディングワイヤは、発光面を覆うポリイミド系樹脂の外部に延在し、第2ボンディングワイヤは、受光素子の表面を覆うポリイミド系樹脂の外部に延在し、第1リードフレームは、遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と発光素子を支持する支持体側に分割され、第2リードフレームは、遮光性樹脂成形体の外部に延在する端子側と受光素子を支持する支持体側に分割され、第1ボンディングワイヤは、支持体側の発光素子と端子側の第1リードフレームを接続し、第2ボンディングワイヤは、支持体側の受光素子と端子側の第2リードフレームを接続する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の光結合装置の断面図概念図。
図2】実施形態の光結合装置の断面図概念図。
図3】実施形態の光結合装置の断面図概念図。
図4】実施形態の光結合装置の断面図概念図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0008】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。なお、図面中、同一又は類似の箇所には、同一又は類似の符号を付している。
【0009】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0010】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0011】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0012】
図1は光結合装置100の断面概念図である。図1の光結合装置1は、遮光性樹脂成形体(アウター樹脂)1、発光素子2、第1リードフレーム3、第1接着層4、第1ボンディングワイヤ5、受光素子6、第2リードフレーム7、第2接着層8、第2ボンディングワイヤ9、透明性樹脂部10及びポリイミド系樹脂11を備えている。
【0013】
遮光性樹脂成形体1は不透明(例えば、黒色または白色)な樹脂組成物である。遮光性樹脂成形体1は、いわゆるアウター樹脂である。遮光性樹脂成形体1は、例えば、エポキシ樹脂と無機のフィラーで構成されている。遮光性樹脂成形体1は、光結合素子100の外装材でもあり、発光素子2、第1リードフレーム3、第1接着層4、第1ボンディングワイヤ5、受光素子6、第2リードフレーム7、第2接着層8、第2ボンディングワイヤ9、透明性樹脂部10及びポリイミド系樹脂11は、遮光性樹脂成形体1の内部に収容されている。遮光性樹脂成形体1は、光結合装置100の外側からの外光を遮光し、受光素子6が外光を受光することを防止する。この場合の遮光性とは、発光素子2の発光波長に対する透過性が無いことを意味する。
【0014】
発光素子2は、外部からの電気信号により発光する半導体素子である。発光素子2は、例えば、発光ダイオードである。発光素子2は、発光素子2が実装された基板と、発光素子周辺の回路が実装された基板とを一つのパッケージに収納したチップでもよい。発光素子2が発光した光は、発光素子2と対向するように配置された受光素子6で受光される。発光素子2は、第1リードフレーム3に接着層4を介して固定されている。発光素子2の発光面は、発光素子2が受光素子6と対向する面に含まれる。
【0015】
第1リードフレーム3は、発光素子2の支持体であり、光結合装置100のスイッチの制御側端子である。第1リードフレーム3は、光結合装置100の外部に一部露出しており、光結合装置100の端子である。第1リードフレーム3は、例えば、例えば、銅などの金属や銅又は鉄を含む合金で構成されている。第1リードフレーム3にNi中間バリヤー層を形成し、中間バリヤー層上にPdメッキを施してもよい。第1リードフレーム3は、発光素子2の端子側3aと支持体側3bとに分割された構成とすることができる。第1リードフレーム3の端子側3aと第2リードフレーム7の端子側7aは、対称に配置されている。第1リードフレーム3の支持体側3bと第2リードフレーム7の支持体側7bは、対向するように配置されている。
【0016】
第1リードフレーム3は、図1に示すように光結合装置100の端子側3aと発光素子2の支持体側3bに分かれていることが好ましい。第1リードフレーム3が分かれていると、第1リードフレーム3を介して光結合装置100内に侵入した空気が第1リードフレーム3を伝って発光素子2に到達し難くなり、発光素子2周りの樹脂の酸化等を抑制することができる。
【0017】
接着層4は、発光素子2と第1リードフレーム3の間に設けられ、発光素子2と第1リードフレーム3を接着している。接着層4は、例えば、接着剤が塗布された塗布膜又はフィルム状接着剤である。
【0018】
第1ボンディングワイヤ5は、発光素子2と第1リードフレーム3を電気的に接続する配線である。第1ボンディングワイヤ5は、例えばAuのワイヤである。
【0019】
受光素子6は、発光素子2が発光した光を受光する素子である。受光素子6が受光した光量によって、受光素子6と接続した回路のオン-オフが変化する。受光素子6は、MOSFETなどの周辺回路と接続している。受光素子6には、フォトダイオード、フォトトランジスタ、受光IC等が用いられる。受光素子6は、第2リードフレーム7に接着層8を介して接続される。受光素子6の受光面は、受光素子6が発光素子2と対向する面に含まれる。
【0020】
第2リードフレーム7は、受光素子6の支持体である。第2リードフレーム7の光結合装置100の外部に露出している部分は、スイッチ制御される回路側の端子である。第2リードフレーム7は、光結合装置100の外部に一部露出しており、光結合装置100の端子である。第2リードフレーム7は、例えば、銅などの金属や銅又は鉄を含む合金で構成されている。第2リードフレーム7にNi中間バリヤー層を形成し、中間バリヤー層上にPdメッキを施してもよい。第2リードフレーム7は、受光素子6の端子側7aと支持体側7bとに分割された構成とすることができる。
【0021】
第2リードフレーム7は、図1に示すように光結合装置100の端子側7aと受光素子6の支持体側7bに分かれていることが好ましい。第2リードフレーム7が分かれていると、第2リードフレーム7を介して光結合装置100内に侵入した空気が第2リードフレーム7を伝って受光素子6に到達し難くなり、受光素子6周りの樹脂の酸化等を抑制することができる。
【0022】
接着層8は、受光素子6と第2リードフレーム7の間に設けられ、受光素子6と第2リードフレーム7を接着している。接着層8は、例えば、接着剤が塗布された塗布膜又はフィルム状接着剤である。
【0023】
第2ボンディングワイヤ9は、受光素子6と第2リードフレーム7を電気的に接続する配線である。第2ボンディングワイヤ9は、例えばAuのワイヤである。受光素子6に周辺回路が含まれる場合、第2ボンディングワイヤ9によって、受光素子6、周辺回路及び第2リードフレーム7が電気的に接続する。
【0024】
透明性樹脂部10は、発光素子2と受光素子6の間に設けられている。透明性樹脂部10は、いわゆるインナー樹脂である。透明性樹脂部10の透明性とは、発光素子2から放出される光を透過することを表している。透明性樹脂部10は、例えば、エポキシ樹脂及び無機フィラーで構成されている。透明性樹脂部10は光結合装置100の内部に設けられ、光結合装置の内部に充填されていることが好ましい。
【0025】
ポリイミド系樹脂11は、発光素子2の発光面を被覆している。発光素子2の発光面がポリイミド系樹脂11で被覆されていると、発光面を保護し、透明性樹脂部10との密着力を高めている。ポリイミド系樹脂11は、透明樹脂部10からの応力を抑制し、発光素子2を保護する。ポリイミド系樹脂11は発光素子2及び透明性樹脂部10と密着しており、発光素子2とポリイミド系樹脂11の間にも、受光素子6とポリイミド系樹脂11の間にも空隙が存在していない。
【0026】
透明性樹脂部10中の無機フィラーの比率が低いと弾性率が低くなるが、透明性樹脂部10が膨張し易いため、光結合装置100内の密着性の観点から好ましくない。透明性樹脂部10の70wt%以上90wt%以下が無機フィラーであることが好ましい。透明性樹脂部10中には、ポリイミド系樹脂11が含まれないことが好ましい。具体的には、透明性樹脂部10のポリイミド系樹脂の濃度は1wt%以下であることが好ましい。
【0027】
発光素子2は物理的に破壊されやすいためポッティング樹脂と呼ばれる柔らかいシリコーン樹脂(イミド基を含まない)で直接被覆して保護することが知られている。しかし、シリコーン樹脂は熱膨張し易いため透明性樹脂部10とシリコーン樹脂との間に隙間が生じるため、発光素子2から受光素子6に届く光量が低下してしまう。また、光結合装置100の外部から侵入した空気がシリコーン樹脂と透明性樹脂部10の間に溜り易く、透明性樹脂部10が酸化変色することで発光素子2から受光素子6に届く光量が低下してしまう。ポリイミド系樹脂11は、一般的に黄色又は褐色であるため、発光素子2が発光した光を吸収しやすい。発光面と受光面の距離が短い低耐圧型の光結合装置では光量減少の影響が小さい。発光面と受光面の距離が長い高耐圧型の光結合装置では、発光素子2の発光面から受光素子6の受光面までが全てポリイミド系樹脂11で満たされていると、光量減少が顕著になってしまい光結合装置の特性が低くなってしまう。ポリイミド系樹脂11を発光素子2の発光面に設けることで、光結合装置100の特性低下が抑制され、信頼性が向上する。
【0028】
ポリイミド系樹脂11は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミドシリコーンからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。ポリイミド系樹脂11に含まれるポリイミド系材料の比率が低いとポリイミド系樹脂11の利点が減少することから、ポリイミド系樹脂11の90wt%以上は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミドシリコーンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0029】
発光素子2の側面少なくとも発光層にもポリイミド系樹脂11が設けられていると、発光素子2の発光層の応力を緩和し、発光素子2の破壊を防ぐことができる。
【0030】
ポリイミド系樹脂11が厚すぎると発光素子2から発光される光の多くが吸収されてしまうため、ポリイミド系樹脂11の厚さは、50μm以下が好ましい。ポリイミド系樹脂11は、塗布膜やスプレー法で形成した膜でもよい。また、ポリイミド系樹脂11は、フィルムを貼り付けて形成してもよい。ポリイミド系樹脂11を形成するための溶液の粘性が高いため塗布し難い。ポリイミド系樹脂11の厚さが1μm未満であると形成不良で穴が開いた膜になり易いため好ましくない。そこで、ポリイミド系樹脂11の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましい。
【0031】
実施形態の光結合装置100は、高耐圧型であり、発光素子2側と受光素子6側の距離である第1ボンディングワイヤ5と第2ボンディングワイヤ9の距離は、300μm以上であることが好ましい。また、同観点から、発光素子2と受光素子6の間の透明性樹脂部10の厚さは、300μm以上であることが好ましい。これらの距離が短すぎるとき、耐圧が低くなり、距離が長すぎるとパッケージサイズが大きくなり過ぎてしまう。そこで、第1ボンディングワイヤ5と第2ボンディングワイヤ9の距離及び発光素子2と受光素子6の間の透明性樹脂部10の厚さは1000μm以下であることが好ましい。
【0032】
密着性の観点からポリイミド系樹脂11は、発光素子2の発光面を除く非発光面、第1リードフレーム3の表面、第2リードフレーム7の表面、受光素子6の表面及び遮光性樹脂成形体1の内壁面からなる群より選ばれる1以上にも形成されていることが好ましい。
【0033】
密着性を考慮すると、ポリイミド系樹脂11と発光素子2は直接的に接していることが好ましい。
【0034】
ポリイミド系樹脂11を発光素子2の発光面に設けることで、高温でも光結合装置100の特性が劣化し難くなる。光結合装置は高温で透明性樹脂部10が変色するなどして劣化することがある。実施形態の構造を採用することで、光結合装置100を長期間高温に保ったとしても、入力側の閾値電流の上昇が抑えられており、特性劣化がし難い。
【0035】
なお、光結合装置100に設けるリードフレームの本数や配置は、パッケージに合わせて適宜選択される。また、光結合装置100の形状は、SOP(Small Outline Package)等の表面実装型でもよいし、DIP(Dual Inline Package)等の挿入実装型でもよい。また、一つの光結合装置100内に複数の発光素子2および受光素子6を内蔵したマルチチャンネル構成にしてもよい。実施形態の構成をマルチチャンネル型の光結合装置に採用すると、チャネル間の特性差を抑えることができ、信頼性向上に寄与する。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態は、光結合装置に関する。第2実施形態の光結合装置は、第1実施形態の光結合装置100の変形例である。第2実施形態と第1実施形態で共通する内容についてはその説明を省略する。図2に第2実施形態の光結合装置101の断面概念図を示す。
【0037】
図2の光結合装置101において、発光素子2の発光面及び非発光面と接着層4の側面にポリイミド系樹脂11aが設けられ、第1ボンディングワイヤ5の表面にポリイミド系樹脂11bが設けられ、第1リードフレーム3の表面にポリイミド系樹脂11cが設けられ、第2リードフレーム7の表面にポリイミド樹脂11dが設けられている。
【0038】
ポリイミド系樹脂11は結着性が高いため、発光素子2と受光素子6の光路以外の部分にポリイミド系樹脂11が設けられることで、光結合装置101の内部において、部材間の密着性が高まり、光結合装置101内への大気の侵入を防ぎ、また、樹脂の劣化を防ぐことができる。発光素子2、第1リードフレーム3、第1ボンディングワイヤ5、受光素子6、第2リードフレーム7及び第2ボンディングワイヤ9のそれぞれの表面にポリイミド系樹脂11が設けられていると、部材間の絶縁性を高め耐圧や特性の向上にも寄与する。
【0039】
遮光性樹脂成形体1と第1リードフレーム3の間は空気の侵入経路になり易い。ポリイミド系樹脂11は遮光性樹脂成形体1よりも吸湿性が高いため、空気侵入を防ぐ観点から遮光性樹脂成形体1と第1リードフレーム3の間にはポリイミド系樹脂11が設けられていないことが好ましい。同観点から、遮光性樹脂成形体1と第2リードフレーム7の間にもポリイミド系樹脂11が設けられていないことが好ましい。
【0040】
第1リードフレーム3及び第2リードフレーム7などの面積の大きな部材の表面にポリイミド系樹脂11が設けられていると部材間の密着性を高め、空気の侵入を防ぐ効果が高まる。面積の大きな第1リードフレーム3及び第2リードフレーム7では、表面の一部、例えば図2のように片面などにポリイミド系樹脂11が設けられていることでも十分な密着性向上の効果がある。第1ボンディングワイヤ5がポリイミド系樹脂11bで被覆されていると、部材間の密着性が高まり、空気が発光素子2の発光面側に侵入することを効果的に防ぐことができる。
【0041】
(第3実施形態)
第3実施形態は、光結合装置に関する。第3実施形態の光結合装置は、第1実施形態及び第2実施形態の光結合装置100、101の変形例である。第3実施形態と第1実施形態又は第2実施形態で共通する内容についてはその説明を省略する。図3に第3実施形態の光結合装置102の断面概念図を示す。
【0042】
図3の光結合装置102において、発光素子2の発光面及び非発光面と接着層4の側面にポリイミド系樹脂11aが設けられ、第1ボンディングワイヤ5の表面にポリイミド系樹脂11bが設けられ、第1リードフレーム3の表面にポリイミド系樹脂11cが設けられ、第2リードフレーム7の表面にポリイミド系樹脂11dが設けられ、受光素子6の表面にポリイミド系樹脂11eが設けられ、第2ボンディングワイヤ9の表面にポリイミド系樹脂11fが設けられ、遮光性樹脂成形体1の内壁にポリイミド系樹脂11gが設けられている。光結合装置102の内部の部材の表面を全体的にポリイミド系樹脂11で覆うことで光結合装置102の内部の部材の密着性を向上させることができる。
【0043】
受光素子6の側面にもポリイミド系樹脂11eが設けられていると受光素子6の側面への応力を緩和し、受光素子6の破壊を防ぐことができる。
【0044】
図3の光結合装置102において、ポリイミド系樹脂11aで被覆された発光素子2がポッティング樹脂12でさらに被覆されている。ポッティング樹脂12を設けることで、透明性樹脂部10の体積変化による発光素子2への応力を緩和することができる。ポリイミド系樹脂11aが発光素子2の発光面2に設けられているため、ポッティング樹脂12を用いても発光素子2への膨張応力が緩和されているため、ポッティング樹脂12の膨張を考慮した空隙を設ける必要がなくなり(空隙が減少し)、発光素子2から受光素子6への光が効率よく届くようになり、ポリイミド系樹脂11aを用いることによる光結合装置102の特性の低下はポッティング樹脂12を直接発光面に設ける場合よりも少なくなる。実施形態において、ポッティング樹脂12を用いる場合は、ポッティング樹脂12が発光素子2の発光面と直接的に接しないように、発光素子2の発光面とポッティング樹脂12の間には、ポリイミド系樹脂11が設けられていることが好ましい。ポッティング樹脂12は、例えばシリコーン樹脂である。
【0045】
(第4実施形態)
第4実施形態は、光結合装置に関する。第4実施形態の光結合装置は、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の光結合装置100、101、102の変形例である。第4実施形態と第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態で共通する内容についてはその説明を省略する。図4に第4実施形態の光結合装置103の断面概念図を示す。
【0046】
第4実施形態の光結合装置103は、発光素子2の発光面などにポリイミド系樹脂11を設けずに遮光性樹脂成形体1の内壁にポリイミド系樹脂11gを設けている。光結合装置103は大気侵入しやすいリードフレーム部分の気密性が向上しており、光結合装置103の内部の部材の劣化を抑制することができる。第4実施形態の光結合装置103においても、発光素子2、受光素子6やリードフレームなどにポリイミド系樹脂11を設けることができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100、101、102、103…光結合装置、
1…遮光性樹脂成形体
2…発光素子
3…第1リードフレーム
4…接着層
5…第1ボンディングワイヤ
6…受光素子
7…第2リードフレーム
8…接着層
9…第2ボンディングワイヤ
10…透明性樹脂部
11…ポリイミド系樹脂
12…ポッティング樹脂
図1
図2
図3
図4