(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20230925BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230925BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20230925BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20230925BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230925BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B01J35/04 301K
B01J35/04 301G
B01J35/04 301A
B01J35/10 301C
B01J32/00 ZAB
C04B38/00 303Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2020050742
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正悟
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270969(JP,A)
【文献】特開2018-051500(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054706(WO,A1)
【文献】特開2015-029936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C04B 38/00
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
複数の前記セルは、前記第一端面及び前記第二端面における開口面積が大きな大開口セルと、前記第一端面及び前記第二端面における開口面積が前記大開口セルより小さい小開口セルと、から構成され、
前記小開口セルの開口径L2に対する、前記大開口セルの開口径L1の比率であるL1/L2が、1.11よりも大きく、1.28よりも小さく、且つ、前記小開口セルの開口径L2が0.78mmよりも大きく、
前記ハニカム構造部のセル密度が、93個/cm
2よりも大きく、104個/cm
2よりも小さ
く、
前記隔壁の厚さが、0.084~0.094mmである、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記隔壁の気孔率が、30~37%である、請求項
1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記隔壁の平均細孔径が、4.0~6.0μmである、請求項1
又は2に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。排ガス浄化のための酸化触媒を担持する触媒担体として用いられ、高セル密度化と煤によるセルの目詰まり抑制を両立させることが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NOx等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体を用いた排ガス後処理システムなどが提案されている。例えば、ディーゼルエンジン用の排ガス後処理システムとしては、排気通路に最前段に配置された酸化触媒と、この酸化触媒の下流に配置されたディーゼルパティキュレートフィルタと、を備えた排ガス後処理システム等を挙げることができる。
【0003】
排ガス後処理システムの最前段に配置された酸化触媒の主な役割は、排ガス中に含まれる煤、NO、HC、COを酸化させることである。ハニカム構造体は、このような酸化触媒を担持するための触媒担体として用いられている(例えば、特許文献1参照)。ハニカム構造体は、コージェライトなどの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。
【0004】
酸化触媒の酸化性能を向上させる方法としては、ハニカム構造体に担持する触媒量を増加することと、ハニカム構造体のセル密度を増大させること、の二点を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排ガス浄化のために使用される酸化触媒には、貴金属が使用されている。このため、酸化触媒の酸化性能を向上させるために触媒量を増加する方法については、コスト面などにおいて問題があった。このため、酸化触媒の酸化性能を向上させる方法において、ハニカム構造体のセル密度を増大させる方法に関して種々の検討が進められている。
【0007】
ハニカム構造体のセル密度を増大させることにより、排ガスと触媒との接触面積が向上し、酸化性能の向上が期待される。一方で、酸化触媒は、排気通路の最前段に配置されるため、触媒担体としてのハニカム構造体は、その流入端面側にて、排ガス中に含まれる煤によって排ガスの流路となるセルの開口部が閉塞してしまうことがある。特に、ハニカム構造体のセル密度を増大させると、1つのセル当たりの開口径が小さくなり、セルの開口部に煤が詰まり易くなる。このため、酸化触媒を担持するための触媒担体用のハニカム構造体として、高セル密度化と煤によるセルの目詰まり抑制を両立させることが可能なハニカム構造体の開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、高セル密度化と煤によるセルの目詰まり抑制を両立させることが可能なハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0010】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部を備え、
複数の前記セルは、前記第一端面及び前記第二端面における開口面積が大きな大開口セルと、前記第一端面及び前記第二端面における開口面積が前記大開口セルより小さい小開口セルと、から構成され、
前記小開口セルの開口径L2に対する、前記大開口セルの開口径L1の比率であるL1/L2が、1.11よりも大きく、1.28よりも小さく、且つ、前記小開口セルの開口径L2が0.78mmよりも大きく、
前記ハニカム構造部のセル密度が、93個/cm2よりも大きく、104個/cm2よりも小さく、
前記隔壁の厚さが、0.084~0.094mmである、ハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記隔壁の気孔率が、30~37%である、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] 前記隔壁の平均細孔径が、4.0~6.0μmである、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハニカム構造体は、高セル密度化と煤によるセルの目詰まり抑制を両立させることができる。即ち、本発明のハニカム構造体は、開口径L1の大開口セルと、開口径L2の小開口セルとが混在したハニカム構造体であり、L1/L2が、1.11よりも大きく、1.28よりも小さく、且つ、小開口セルの開口径L2が0.78mmよりも大きい。そして、本発明のハニカム構造体は、セル密度が、93個/cm2よりも大きく、104個/cm2よりも小さい。このように構成することによって、高セル密度化が実現されたハニカム構造体であっても、煤によるセルの目詰まりを有効に抑制することができる。本発明のハニカム構造体は、酸化触媒を担持するための触媒担体用のハニカム構造体として極めて有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
【
図2】
図1に示すハニカム構造体の第一端面側からみた平面図である。
【
図3】
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図2に示すハニカム構造体の第一端面の一部を拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1~
図3に示すように、複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム構造部4を備えたハニカム構造体100である。複数のセル2は、柱状のハニカム構造部4の第一端面11から第二端面12まで延びるように隔壁1によって区画形成されている。本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味し、ハニカム構造部4に形成された複数のセル2は、排ガスなどの流体の流路となる。本実施形態のハニカム構造体100において、柱状のハニカム構造部4は、その外周側面に外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0018】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体の第一端面側からみた平面図である。
図3は、
図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4は、
図2に示すハニカム構造体の第一端面の一部を拡大した拡大平面図である。
【0019】
図1~
図4に示すように、複数のセル2は、第一端面11及び第二端面12における開口面積が大きな大開口セル2aと、第一端面11及び第二端面12における開口面積が上記した大開口セル2aより小さい小開口セル2bと、から構成されている。なお、本実施形態のハニカム構造体100において、大開口セル2aと小開口セル2bとから構成されている複数のセル2は、各セル2の周縁が隔壁1のみによって取り囲まれたセル2である。以下、セル2の周縁が隔壁1のみによって取り囲まれたセル2のことを「完全セル」ということがある。一方で、ハニカム構造部4の外周側面に外周壁3が配設されている場合、ハニカム構造部4の最外周のセル2は、隔壁1と外周壁3とによって取り囲まれたセル2となる。このような最外周のセル2は、セル2の周縁の一部が外周壁3によって区画されており、完全セルの一部が欠損したような不完全なセル2となっている。このようなセル2の周縁が隔壁1と外周壁3によって取り囲まれたセル2のことを「不完全セル」ということがあり、このような不完全セルは、大開口セル2a及びと小開口セル2bを構成しているセル2には含めないこととする。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体100は、小開口セル2bの開口径L2に対する、大開口セル2aの開口径L1の比率が、1.11よりも大きく、1.28よりも小さい。また、小開口セル2bの開口径L2が0.78mmよりも大きい。更に、ハニカム構造部4のセル密度が、93個/cm2よりも大きく、104個/cm2よりも小さい。以下、小開口セル2bの開口径L2に対する、大開口セル2aの開口径L1の比率を、「開口径比率L1/L2」ということがある。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体100は、高セル密度化と煤によるセルの目詰まり抑制を両立させることができる。特に、セル密度が93個/cm2よりも大きい高セル密度化のハニカム構造体100であっても、開口径比率L1/L2を上述した数値範囲とすることにより、煤によるセルの目詰まりを有効に抑制することができる。例えば、従来の酸化触媒を担持するための触媒担体用のハニカム構造体は、全てのセルが同じ大きさであったため、高セル密度化を実現した場合、煤によるセル2の目詰まりの影響が甚大であった。本実施形態のハニカム構造体100は、大開口セル2aと小開口セル2bとを混在させることにより、特に、大開口セル2aの煤によるセルの目詰まりを有効に抑制することができる。
【0022】
大開口セル2aの開口径L1を大きくすれば、セルの目詰まりに対する耐性を上昇させることができる。一方で、大開口セル2aの開口径L1を極端に大きくし、小開口セル2bの開口径L2との差異が大きくなると、ハニカム構造部4のセル構造が歪な形となり、ハニカム構造体100のアイソスタティック強度が低下してしまう。したがって、開口径比率L1/L2が1.28以上であると、ハニカム構造体100のアイソスタティック強度が低下してしまう。開口径比率L1/L2が1.11以下であると、セルの目詰まりに対する耐性を上昇させる効果が十分に発現しない。
【0023】
開口径比率L1/L2は、1.11よりも大きく、1.28よりも小さければ特に制限はないが、例えば、1.14以上、1.27以下であることが好ましい。
【0024】
小開口セル2bの開口径L2が0.78mmよりも大きい。小開口セル2bの開口径L2が0.78mm以下であると、開口径比率L1/L2を上述した数値範囲とした場合に、セル2の目詰まりによる圧力損失の上昇率が大きくなってしまう。ここで、圧力損失の上昇率とは、煤がセル2内に詰まることによってハニカム構造体100の圧力損失が上昇した場合に、セル2の目詰まりの前後における圧力損失の上昇率のことを意味する。
【0025】
大開口セル2aの開口径L1は、以下の方法により測定した値とする。大開口セル2aの開口形状において、開口形状の輪郭を構成する辺のうち、最大長さとなる辺を見つける。そして、この最大長さとなる辺に対する垂直方向において、大開口セル2aの開口形状の幅が最大となる径を、「大開口セル2aの開口径L1」とする。小開口セル2bの開口径L2についても、以下の方法により測定した値とする。小開口セル2bの開口形状において、開口形状の輪郭を構成する辺のうち、最大長さとなる辺を見つける。そして、この最大長さとなる辺に対する垂直方向において、小開口セル2bの開口形状の幅が最大となる径を、「小開口セル2bの開口径L2」とする。
【0026】
ハニカム構造部4のセル密度は、93個/cm2よりも大きく、104個/cm2よりも小さければ特に制限はないが、94個/cm2以上、102個/cm2以下であることが好ましく、95個/cm2以上、100個/cm2以下であることが更に好ましい。セル密度が93個/cm2以下であると、酸化性能の向上を実現するための高セル密度化が困難となる。セル密度が104個/cm2以上であると、小開口セル2bの開口径L2を確保できない点で好ましくない。
【0027】
小開口セル2bの開口径L2が0.78mmよりも大きければよく、その上限値は、これまでに説明した「開口径比率L1/L2」及び「セル密度」の数値範囲に基づいて、適切な値が決定される。小開口セル2bの開口径L2の上限値としては、例えば、0.88mmを挙げることができる。
【0028】
隔壁1の厚さは、0.084~0.094mmであり、0.089~0.091mmであることが好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さを上述した数値範囲とすることにより、ハニカム構造体100を、排ガス浄化のための酸化触媒を担持する触媒担体として特に好適に用いることができる。
【0029】
隔壁1の気孔率については特に制限はないが、例えば、30~37%であることが好ましく、32~35%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、ハニカム構造部4から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率を上述した数値範囲とすることにより、ハニカム構造体100を、排ガス浄化のための酸化触媒を担持する触媒担体として特に好適に用いることができる。
【0030】
隔壁1の平均細孔径については特に制限はないが、例えば、4.0~6.0μmであることが好ましく、4.3~5.8μmであることが更に好ましい。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。平均細孔径の測定は、気孔率を測定するための上記した試験片を用いて行うことができる。隔壁1の平均細孔径を上述した数値範囲とすることにより、ハニカム構造体100を、排ガス浄化のための酸化触媒を担持する触媒担体として特に好適に用いることができる。
【0031】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における「セル2の形状」としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形を挙げることができる。以下、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における「セル2の形状」を、「セル形状」ということがある。
図1~
図4においては、小開口セル2bのセル形状が「四角形」であり、大開口セル2aのセル形状が「八角形」となっている。
図1~
図4に示すように、小開口セル2bのセル形状と大開口セル2aのセル形状とが異なる形状であってもよいし、図示は省略するが、双方のセル形状が相似形状であってもよい。なお、
図1~
図4に示すように、小開口セル2bのセル形状が「四角形」であり、大開口セル2aのセル形状が「八角形」である場合、大開口セル2aのセル形状は、以下のように構成された「八角形」であることが好ましい。即ち、大開口セル2aのセル形状は、小開口セル2bのセル形状である四角形の一辺の長さを、1.11倍超で1.28倍未満となるように拡大し、拡大した四角形の四隅を面取りすることによって構成される「八角形」であることが好ましい。
【0032】
ハニカム構造部4の第一端面11側及び第二端面12側において、大開口セル2aと小開口セル2bとが隔壁1を挟んで交互に配置されていることが好ましい。例えば、
図2に示すように、複数のセル2が、
図2の紙面の左右方向及び上下方向に沿って配列したセル構造を有する場合、それぞれの方向におけるセルの配列において、大開口セル2aと小開口セル2bとが隔壁1を挟んで交互に配置されていることが好ましい。
【0033】
隔壁1の材料については特に制限はない。例えば、隔壁1の材料が、炭化珪素、コージェライト、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト-炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0034】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0035】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、第一端面11(例えば、流入端面)及び第二端面12(例えば、流出端面)の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0036】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカム構造体100を、酸化触媒を担持する触媒担体として用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0037】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体を製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。まず、ハニカム構造体を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造体を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。
【0038】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが設けられた口金を用いることができる。特に、本発明のハニカム構造体を製造する際には、押出成形用の口金として、押出成形するハニカム成形体において、それぞれ所定の開口径の大開口セル及び小開口セルを形成するためのスリットが設けられた口金を用いることが好ましい。次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。
【0039】
次に、得られたハニカム成形体を焼成して、本発明のハニカム構造体を製造する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を0.3質量部、分散媒を1.0質量部、有機バインダを5.8質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。有機バインダとしては、メチルセルロース(Methylcellulose)を使用した。分散剤としては、ラウリン酸カリウム(Potassium laurate)を使用した。造孔材としては、平均粒子径28μmの中空樹脂粒子を使用した。
【0042】
次に、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて更に乾燥した。ハニカム成形体は、隔壁によって区画形成された複数のセルとして、開口面積が大きな大開口セルと、開口面積が大開口セルより小さい小開口セルと、を含むものとした。小開口セルのセル形状を四角形とし、大開口セルのセル形状を八角形とした。大開口セルのセル形状は、小開口セルのセル形状である四角形の一辺の長さを1.22倍し、その四角形の四隅を面取りした八角形である。大開口セルと小開口セルとは、ハニカム成形体の端面側において、隔壁を挟んで交互に配置されるものとした。
【0043】
次に、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。
【0044】
実施例1のハニカム構造体は、端面の直径が228.6mmであり、セルの延びる方向の長さが76.2mmであった。また、隔壁の厚さが0.089mmであり、セル密度が100個/cm2であった。結果を表1に示す。
【0045】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、隔壁の気孔率、平均細孔径の測定を行った。また、大開口セルの開口径L1及び小開口セルの開口径L2を測定した。各結果を、表1に示す。また、表1において、「L1/L2」の欄に、小開口セルの開口径L2に対する、大開口セルの開口径L1の比率を示す。
【0046】
【0047】
(気孔率)
隔壁の気孔率は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定した。気孔率の測定においては、ハニカム構造体から隔壁の一部を切り出して試験片とし、得られた試験片を用いて気孔率の測定を行った。
【0048】
(平均細孔径)
隔壁の平均細孔径は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定した。平均細孔径の測定においても、気孔率の測定に用いた試験片を用いて測定を行った。
【0049】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、圧力損失の上昇率、浄化性能、アイソスタティック強度の測定を行った。結果を、表2に示す。
【0050】
(圧力損失の上昇率)
まず、ハニカム構造体について、25℃の状態における、第一端面と第二端面との圧力差(圧力損失P1)を求めた。次に、このハニカム構造体に、煤を強制的に発生させるスートジェネレータ装置を用いて、それぞれに3時間煤を付着させた。スートジェネレータ装置の稼働条件としては、入りガス温度200℃、ガス流量1.5Nm3/minとした。そして、このように煤が付着したハニカム構造体について、第一端面と第二端面との圧力差(圧力損失P2)を求めた。圧力損失P1を100%とした場合の、圧力損失P2の比率(%)を、圧力損失の上昇率とした。圧力損失の上昇率が250%未満の場合を合格とし、250%以上の場合を不合格とした。
【0051】
(浄化性能)
まず、ハニカム構造体を貴金属が含まれたAl2O3ゾルに浸漬し、ハニカム構造体にAl2O3ゾル及び貴金属を付着させた。次に、Al2O3ゾル及び貴金属をハニカム構造体に対して焼き付けすることにより、触媒を担持した触媒付きハニカム構造体を作製した。そして、作製した触媒付きハニカム構造体を、8Lのディーゼルエンジンを搭載するエンジンベンチの排気系に装着した。このエンジンベンチにおいて、欧州規制運転モードで運転した際の、排ガス中の炭化水素(HC)の排出量を測定した。表2の「浄化性能」の欄には、エンジンから排出されたHCの量から、ハニカム構造体から排出されたガスのHC量を差し引いた値を、エンジンから排出されたHC量で除算し、100倍したHC浄化率を示す。表2の「浄化性能」の欄における浄化率の値が88.0%を超えた場合を合格とした。
【0052】
(アイソスタティック強度)
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505-87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。アイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。アイソスタティック強度が、1.0MPa以上の場合を合格とし、1.0MPa未満の場合を不合格とした。
【0053】
【0054】
(実施例2~7,比較例1~3)
ハニカム構造体の構成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。
【0055】
実施例2~7及び比較例1~3のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、圧力損失の上昇率、浄化性能、アイソスタティック強度の測定を行った。結果を、表2に示す。
【0056】
(結果)
実施例1~7のハニカム構造体は、圧力損失の上昇率が低く、煤によるセルの目詰まりが抑制されたものであった。また、実施例1~7のハニカム構造体は、高セル密度化が実現され、浄化性能にも優れたものであった。更に、実施例1~7のハニカム構造体は、アイソスタティック強度について高い値を示すものであった。比較例1,3のハニカム構造体は、実施例1~7のハニカム構造体と比較して、浄化性能が劣るものであった。比較例2のハニカム構造体は、圧力損失の上昇率が大きく、煤によるセルの目詰まりの影響が大きいことが分かった。また、比較例2のハニカム構造体は、アイソスタティック強度について低い値を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化のための酸化触媒を担持する触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:隔壁、2:セル、2a:大開口セル、2b:小開口セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカム構造体。