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  • 特許-液晶表示パネルの製造方法 図1
  • 特許-液晶表示パネルの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】液晶表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020056028
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157011
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】半田 正人
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-186380(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0411149(KR,B1)
【文献】特開平07-297160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
G02F 1/13
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルの製造方法であって、
基板上にスペーサーをドライ散布により散布する散布工程と、
前記スペーサーが散布された前記基板を回転させながら前記基板上に液体を滴下し、前記基板の回転に伴う前記液体の移動により前記スペーサーの一部を前記基板上の規定領域から除去する除去工程と、を有し、
前記除去工程において、前記液体を前記スペーサーの散布密度が最も高い領域に滴下する、ことを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記基板上に散布された前記スペーサーの散布密度を測定する測定工程を有し、前記測定の結果、前記散布密度が規定値よりも高かった場合には、前記除去工程を行い、前記散布密度が規定値よりも低かった場合には、前記散布工程を行い、前記散布密度が規定値に適合するまで前記測定工程、前記除去工程、前記散布工程を繰り返し行う、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造方法として、以下の製造方法が知られている。まず、2枚のマザー基板の一方に複数個の画像表示領域が形成されるように画素電極を形成すると共にその画素電極の上に配向膜を形成し、もう一方のマザー基板に各画像表示領域に対応する共通電極を形成すると共にその共通電極の上に配向膜を形成した後、一方のマザー基板の配向膜上に液晶を注入する隙間を確保させる為のスペーサーを散布する。さらに各画像表示領域を取り囲むようにシール材を設けた上で両マザー基板を位置合わせして貼り合わせ、その後、両マザー基板を個々の画像表示領域毎に分断することで内部が空洞状態の複数の液晶表示パネルを作製する。続いて、個々の液晶表示パネルのシール材の一部に形成された液晶注入口から液晶を注入し、液晶注入口を封口することで内部に液晶が封入された液晶表示パネルが完成する。
【0003】
図2は、2枚のマザー基板を貼り合わせた状態を示す(a)上面図と(b)A-A断面図である。図2に示す状態において、下基板として構成されるマザー基板2と上基板として構成されるマザー基板3の互いに対向する表面には液晶に電圧をかけるためのITO電極7が成膜され、さらにそれぞれのITO電極7の上には液晶を配向させるための配向膜4が成膜されており、マザー基板2とマザー基板3は各画像表示領域を取り囲むように設けられた複数の周辺シール材5にて互いに所定の隙間(GAP)6を介して固定されている。所定の隙間(GAP)6には、隙間(GAP)6を維持するために、複数のスペーサー1が配置されている。スペーサー1は、マザー基板2とマザー基板3を貼り合わせる前に、マザー基板2とマザー基板3のどちらか一方の基板の配向膜4全面に散布されている。スペーサー1の散布方法としては、ドライ散布(乾式散布)が一般的に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
スペーサー1が散布された状態で周辺シール材5を介してマザー基板2とマザー基板3を貼り合わせ、周辺シール材5を硬化させた後に、マザー基板2とマザー基板3を分断ライン8に沿って分断し、内部が空洞状態の単個の液晶表示パネルの状態にした上で、液晶注入口9を介して隙間(GAP)6の中に液晶を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-127170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、一方の基板上にスペーサーをドライ散布により散布しているが、スペーサーを一定の散布量で安定的に散布することは技術的に難しい。液晶表示パネルのサイズにもよるが、例えば散布の面内分布が500pcs/mmで散布する必要がある場合において、1000pcs/mmで散布されてしまう場合がある。これは散布装置内に一方の基板を配置して、その上方よりスペーサーをばらまき、基板上に落下した分だけが散布密度を構成するため、散布密度のコントロールが非常に難しいためである。散布密度が高いまま組み立てられた液晶表示パネルでは、スペーサーが画像上で白色の小さな輝点として見えてしまう。特に面内の散布量が多い場合には、この輝点が目立ってしまい、コントラストの低下など光学的な不具合が発生する。基板上に散布されたスペーサーの散布量が少ない場合には、繰り返して再度散布を行うことで、散布量を均一に増加させることができるが、基板上に散布されたスペーサーの散布量が多い場合には、既に散布されたスペーサーを基板上から均一に除去するのは困難であるため、散布量を均一に減少させることはできない。
【0007】
本発明は、基板上に散布されたスペーサーを均一に除去することが可能な液晶表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
液晶表示パネルの製造方法であって、基板上にスペーサーをドライ散布により散布する散布工程と、前記スペーサーが散布された前記基板を回転させながら前記基板上に液体を滴下し、前記基板の回転に伴う前記液体の移動により前記スペーサーの一部を前記基板上の規定領域から除去する除去工程と、を有する液晶表示パネルの製造方法である。
【0009】
前記除去工程において、前記液体を前記基板の回転中心付近に滴下する、液晶表示パネルの製造方法であっても良い。
【0010】
前記除去工程において、前記液体を前記スペーサーの散布密度が相対的に高い領域に滴下する、液晶表示パネルの製造方法であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、基板上に規定数以上のスペーサーを散布してしまった場合であっても、基板上から余分なスペーサーを均一に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による液晶表示パネルの製造方法の一実施形態を示すフローチャート
図2】2枚のマザー基板を貼り合わせた状態を示す(a)上面図と(b)A-A断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による液晶表示パネルの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。本発明の一実施形態を図1に基づいて下記に説明する。なお、必要に応じて図2も参照しながら説明する。
【0014】
本発明の一実施形態では、まず、上基板である一方のマザー基板3に形成された配向膜4の上に複数のスペーサー1をドライ散布にて散布する。また、下基板であるもう一方のマザー基板2の上に各画像表示領域を取り囲むように紫外線硬化樹脂などからなるシール材5を配置する。
【0015】
スペーサー1のドライ散布は一般的な技術である為、ここでは詳細な説明を省略する。マザー基板3上にスペーサー1を散布した後、マザー基板3上に散布されたスペーサー1の散布密度を測定する。スペーサー1の散布密度は、周知のパーティクルカウンターなどを用いて測定することができる。この測定の結果、マザー基板3上の散布密度が規定値よりも高かった場合には、必要規定量だけを残して余分なスペーサー1を除去する。その方法としては、まず、スペーサー1が余剰に散布された状態のマザー基板3をスピンナー装置(基板回転装置)へセットする。次に、スピンナー装置へセットしたマザー基板3を一定の回転速度で回転させ、回転しているマザー基板3上へIPAなどの揮発性の高い液体を滴下する。回転しているマザー基板3上へIPAを滴下すると、IPAが遠心力で余分なスペーサー1と一緒にマザー基板3の外周部へ移動し、マザー基板3上の規定領域内に散布されたスペーサー1の散布密度が低下する。
【0016】
マザー基板3を回転させる方向は、例えば、スペーサー1が散布されたマザー基板3の表面と直交する軸を回転軸とする右回り又は左回りの方向である。液体を滴下する位置は、スペーサー1の散布密度が相対的に高い領域(例えば、最も高い領域)やマザー基板3の回転中心付近が好ましい。液体を滴下する回数は、1回又は複数回の中から適宜選択される。滴下する液体にはスペーサー1が予め混入していないことが望ましいが、多少混入していても良い。
【0017】
スペーサー1の除去量は、スピンナー装置の回転数と、液体の滴下量や滴下位置などにより、いかようにも調整が可能である。また、ここではスペーサー1を除去する液体として、揮発性が高く乾燥性が良いという理由からIPAを使用したが、エタノールなどのその他の液体も使用可能である。
【0018】
本願の出願人が行った一つの実験結果では、散布密度1000pcs/mmでスペーサーが予め散布された8インチ基板を3000rpmで回転させながらIPAを200ml滴下することで、散布密度600pcs/mmまで低下させることができた。
【0019】
スペーサー1の散布密度を低下させた後、散布密度を再度測定し、散布密度が規定値に適合した場合には、基板貼り合わせ工程へ移行し、散布密度が規定値を上回った場合には、散布密度が規定値に適合するまでスペーサー1の除去を繰り返し行う。
【0020】
逆にスペーサー1の散布密度が規定値を下回った場合には、スペーサー1の散布を再度行い、散布密度を上昇させる。スペーサー1の散布密度を上昇させたら散布密度を再度測定し、散布密度が規定値に適合した場合には、基板貼り合わせ工程へ移行し、散布密度が規定値を下回った場合には、散布密度が規定値に適合するまでスペーサー1の散布を繰り返し行う。
【0021】
この実施形態ではウエハー状のマザー基板3にスペーサー1を散布しているが、例えば、画像表示領域ごとに予め分断された状態の個片基板にスペーサー1を散布しても良い。
【0022】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、その他種々の形態を取り得る。
【符号の説明】
【0023】
1 スペーサー
2 マザー基板(下基板)
3 マザー基板(上基板)
4 配向膜
5 周辺シール材
6 隙間(GAP)
7 ITO電極
8 分断ライン
9 液晶注入口
図1
図2