(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】電池冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20230925BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230925BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230925BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20230925BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230925BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230925BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20230925BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/615
H01M10/6556
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2020123561
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157756(JP,A)
【文献】特表2019-516225(JP,A)
【文献】特開2020-053148(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013015758(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018102957(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/133707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6554
H01M 10/615
H01M 10/6556
H01M 10/617
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを組み合わせて一つの電池が構成された電池モジュールにおける電池冷却構造であって、
前記各電池セルを冷却するための冷媒を通す冷媒流路を備え、該冷媒流路形成に伴い表面に凹凸面が形成された冷却器と、
該冷却器の凹凸面及び前記各電池セルに挟まれて配置され、熱伝導性を有する熱伝導体と
を備え、
前記熱伝導体は、
前記冷却器と前記電池セルとに挟まれて押圧されることにより押圧面の形状に馴染んで弾性変形可能に構成されており、
前記冷却器の凹凸面及び前記電池セルの前記凹凸面に対する対向面に挟まれる平板状の平板部と、
該平板部と一体に形成され、且つ前記冷却器の凹凸面における凹部に対応させて形成され、該凹部内空間を満たす体積を有する突起部と
を備える電池冷却構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記突起部は、前記平板部の表裏両側に分けて形成されている
電池冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記突起部は、前記冷却器に対向する端部が球面又は尖頭形状とされている
電池冷却構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記平板部の前記冷却器側面及び前記電池セル側面の少なくともいずれか一方には、前記突起部の前記平板部からの立ち上がり縁部と前記平板部の外縁端部とを繋いで空気抜きを成す溝が形成されている
電池冷却構造。
【請求項5】
請求項2において、
前記冷却器の前記凹部は、前記熱伝導体の平板部に対向する面における形状が円形とされており、
前記突起部は、前記平板部の表裏両側を合わせた全体形状が球形状とされている
電池冷却構造。
【請求項6】
請求項4において、
前記突起部の前記冷却器側面及び前記電池セル側面の少なくともいずれか一方には、前記溝に連通する空間を形成する切欠が形成されている
電池冷却構造。
【請求項7】
請求項4又は6において、
前記溝は、前記突起部から離れるほど溝深さが深くなるように溝底が傾斜面にて形成されている
電池冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを組み合わせて構成された電池の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを一括して冷却するために、冷媒流路を備えた冷却器と複数の電池セルとの間に熱伝導体を挟んで組み合わされた電池冷却構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の電池冷却構造の場合、熱伝導体は、ゲル状の物質により構成されている。そのため、電池セルの外形寸法にバラツキがあっても、冷却器と電池セルとの間に挟まれた熱伝導体が両者の隙間内で流動することにより、上記バラツキを吸収して、電池セルと冷却器との間に上記バラツキによる空隙が生じないようにして、各電池セル間の冷却性能にムラが生じないようにしている。結果として、各電池セル間に寿命のバラツキが生じないようにしている。
【0004】
上記電池冷却構造の場合、冷却器は、内部に冷媒流路を形成するため、その表面が凹凸面となっている。そのため、冷却器と電池セルとの間に挟まれた熱伝導体は、主に冷却器の凸部表面と電池セルとの間に滞留し、冷却器の凸部表面と電池セルとの間の押圧力により押し出された熱伝導体が凹部内にも部分的に滞留する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記熱伝導体は、電池セルの外形寸法のバラツキを吸収しているため、凹部内に滞留する熱伝導体の量にはバラツキが生じる。そのため、冷却器の部位毎に凹部内に滞留する熱伝導体の量に違いがあり、各電池セルの冷却性能にムラが生じる。
【0007】
本発明の課題は、冷却器と電池セルとの間に熱伝導体を挟んで電池セルを冷却する電池冷却構造において、冷却器の凹凸面の凹部内に熱伝導体を優先的に充填し、凹部内の充填後に余る熱伝導体を凹部外に押し出すことにある。それにより、凹部内外両方に熱伝導体を充填させて電池セルの部位毎に冷却性能のムラが生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、複数の電池セルを組み合わせて一つの電池が構成された電池モジュールにおける電池冷却構造であって、前記各電池セルを冷却するための冷媒を通す冷媒流路を備え、該冷媒流路形成に伴い表面に凹凸面が形成された冷却器と、該冷却器の凹凸面及び前記各電池セルに挟まれて配置され、熱伝導性を有する熱伝導体とを備え、前記熱伝導体は、前記冷却器と前記電池セルとに挟まれて押圧されることにより押圧面の形状に馴染んで弾性変形可能に構成されており、前記冷却器の凹凸面及び前記電池セルの前記凹凸面に対する対向面に挟まれる平板状の平板部と、該平板部と一体に形成され、且つ前記冷却器の凹凸面における凹部に対応させて形成され、該凹部内空間を満たす体積を有する突起部とを備える。
【0009】
第1発明において、冷却器は、各電池セルの底面又は側面に沿って配置されるか、互いに隣接する電池セル同士間に挟まれて配置される。また、冷却器は、それらの配置場所の複数箇所にそれぞれ配置されてもよい。また、冷却器の凹凸面は、凹部が冷媒流路に沿って細長く延びる溝状のものか、凹部が円形の容器状のものかのいずれか、若しくは両方が混在するものである。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記突起部は、前記平板部の表裏両側に分けて形成されている。
【0011】
第2発明において、平板部の表裏両側に分けて形成される各突起部は、両者の体積が互いに同じとされるか、異なるものとされる。
【0012】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記突起部は、前記冷却器に対向する端部が球面又は尖頭形状とされている。
【0013】
本発明の第4発明は、上記第1~第3発明のいずれかにおいて、前記平板部の前記冷却器側面及び前記電池セル側面の少なくともいずれか一方には、前記突起部の前記平板部からの立ち上がり縁部と前記平板部の外縁端部とを繋いで空気抜きを成す溝が形成されている。
【0014】
第4発明において、溝が形成される平板部の外縁端部の位置は特定位置に限定されず、平板部の外縁端部のうちどこに形成されてもよい。また、溝は一つの突起部に対して複数本形成されてもよい。
【0015】
本発明の第5発明は、上記第2発明において、前記冷却器の前記凹部は、前記熱伝導体の平板部に対向する面における形状が円形とされており、前記突起部は、前記平板部の表裏両側を合わせた全体形状が球形状とされている。
【0016】
本発明の第6発明は、上記第4発明において、前記突起部の前記冷却器側面及び前記電池セル側面の少なくともいずれか一方には、前記溝に連通する空間を形成する切欠が形成されている。
【0017】
本発明の第7発明は、上記第4又は第6発明において、前記溝は、前記突起部から離れるほど溝深さが深くなるように溝底が傾斜面にて形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却器の凹凸面の凹部内に熱伝導体を優先的に充填し、凹部内の充填後に余る熱伝導体を凹部外に押し出すことにより、凹部内外両方に熱伝導体を充填させて電池セルの部位毎に冷却性能のムラが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す主要部の分解斜視図である。
【
図2】上記第1実施形態の主要部の拡大側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線断面矢視図であり、熱伝導体が押し潰される前の状態を示す。
【
図4】
図3と同様の断面図であり、熱伝導体が押し潰された状態を示す。
【
図5】上記第1実施形態における熱伝導体の突起部周りの拡大斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における
図3に対応する断面図である。
【
図7】上記第2実施形態における
図4に対応する断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態における
図3、6に対応する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態の全体構成>
図1、2は第1実施形態の主要部を示す。この実施形態は、電気自動車に用いられる電池モジュールの冷却構造である。
図1、2においてX、Y、Zの矢印で示すように、電池モジュールの各方向は、X方向(若しくはX1、X2側)、Y方向(若しくはY1、Y2側)、Z方向(若しくはZ1、Z2側)として説明する。ここでは、Z方向は重力方向とされている。なお、これらの方向に関しては、
図3以降の図においても同様である。
【0021】
図1、2のように、電池モジュールは、複数の電池セル4を直列接続して組み合わせて成る。ここでは電池セル4を6個だけ示すが、必要数だけ組み合わされる。各電池セル4の側部(X1側)には、各電池セル4をまとめて冷却するための冷却器1が配置されている。電池モジュールは、各電池セル4と冷却器1との間に熱伝導体2を挟んだ状態で保持枠3等により一体化される。一体化に際しては、各電池セル4の側部(X2側)が保持枠3により押圧される。従って、熱伝導体2は、各電池セル4及び冷却器1に挟まれて、その押圧力をX方向に受ける。
【0022】
<冷却器の構成>
図1、3、4のように、冷却器1は、2枚の鋼板1a、1bの周縁部が溶接接合されて成り、2枚の鋼板1a、1b間に冷媒流路12が形成されている。ここでは、冷媒流路12への冷媒の出入口の図示は省略している。鋼板1aの冷媒流路12を形成する領域の一部には、複数の凹部11aが形成されて凹凸面11が形成されて成る。各凹部11aは、鋼板1aが円形スポット状に鋼板1bに向けて窪まされて、各凹部11aの底部が鋼板1bに溶接接合されている。各凹部11aは、Y方向に沿ってZ方向に2列で並べて複数個配置されている。そして、Z方向に配置された2列の凹部11aは、互いにY方向に位置ずれして千鳥配置されている。このように凹部11aが形成されることにより、冷媒流路12を流れる冷媒の圧力を受けて鋼板1a、1b間の隙間が拡がるように変形することが防止されている。冷媒流路12は、各凹部11aの間に形成されている。
【0023】
<熱伝導体の構成>
図1~5のように、熱伝導体2は、平板状の平板部21の表裏両側(X1側及びX2側)に複数個の突起部22が突出して形成されている。平板部21は、冷却器1の凹凸面11及び各電池セル4の冷却器1に対向するX1側面(対向面)に挟まれて形成されている。一方、各突起部22は、熱伝導体2が電池セル4と冷却器1との間に挟まれて配置されたとき、冷却器1の凹部11aに対応して位置するように配置されている。
図3のように、突起部22は、平板部21の表裏両側の突起部22を合わせた全体形状が球形状とされている。突起部22は、その球の径が凹部11aの円の径に対して僅かに小さく、且つ凹部11aの窪み深さに対して球の径が大きくされている。そして、突起部22の球は、凹部11a内の空間を満たす体積とされている。実際には、製造ばらつきを考慮して、球の体積は、凹部11a内の容積よりも僅かに大きくされている。熱伝導体2は、熱伝導性を有し、且つ弾性変形可能な素材にて形成されており、例えば炭素や金属を含む軟質樹脂により形成されている。
【0024】
図1~3、5のように、平板部21には、各突起部22の平板部21からの立ち上がり縁部22aと平板部21の外縁端部21aとを繋ぐように溝23が形成されている。各溝23は、平板部21の表裏両側(X1側及びX2側)の各突起部22に対応して形成されている。また、各溝23は、Z1側に配置された突起部22に対応してはZ1側に延び、Z2側に配置された突起部22に対応してはZ2側に延びて形成されている。
図3、5のように、各溝23は、突起部22から離れるほど溝深さが深くなるように溝底が傾斜面にて形成されている。
【0025】
図3、5のように、各突起部22の冷却器1側面及び各電池セル4側面には、溝23に対応して切欠24が形成されている。切欠24は、溝23に連通する空間を形成している。
【0026】
<第1実施形態の作用、効果>
各電池セル4が電池モジュールとして組み立てられる際には、
図3のように、熱伝導体2の各突起部22が冷却器1の凹部11aに対応した位置に配置される。この状態で、保持枠3と冷却器1は、その間に、熱伝導体2及び各電池セル4を挟んで、X方向に押圧力を加えて固定される。その結果、
図4のように、熱伝導体2が冷却器1と各電池セル4とにより押圧される。この押圧により、熱伝導体2は、冷却器1及び各電池セル4の押圧面の形状に馴染むように弾性変形されて押し潰される。そのため、冷却器1の凹部11a内は、熱伝導体2の突起部22により充填される。また、凹部11aの外側は、凹部11a内を充填して余った突起部22及び平板部21により充填される。このとき、冷却器1及び各電池セル4の表面と熱伝導体2の表面との間に空気層ができないようにされている。即ち、冷却器1及び各電池セル4の表面と熱伝導体2の表面との間の空気は、切欠24及び溝23を通じて平板部21の外縁端部21aから大気中に放出される。そのため、各電池セル4のX1側面は、熱伝導体2を介して冷却器1に密着され、各電池セル4で発生する熱が冷却器1により効率的に放熱される。しかも、各電池セル4がムラなく冷却される。
【0027】
上述のように、冷却器1の凹部11aは、熱伝導体2の平板部21に対向する面における形状が円形とされている。また、突起部22は、球形状とされている。しかも、凹部11aの円の径に対して突起部22の球の径が僅かに小さく、且つ凹部11aの窪み深さに対して球の径が大きくされている。そのため、突起部22と凹部11aの位置ずれがない場合、突起部22は、僅かに変形するのみで凹部11a内を充填させることができる。従って、熱伝導体2の弾性係数の設定等の設計自由度を高めることができる。
【0028】
上述のように、溝23は、突起部22から離れるに従って溝深さが深くなるように、溝23の底面が傾斜されている。そのため、平板部21が冷却器1と各電池セル4に挟まれて押圧されるとき、最終的に溝23に集められた空気は、突起部22に近い側から離れた側に順次押し出される。従って、溝23内の空気は、より確実に放出される。
【0029】
突起部22は、平板部21において、凹部11aを備える冷却器1側(X1側)のみに形成してもよいが、平板部21の表裏両側(X1側及びX2側)に均等に設けられている。仮に突起部22が各電池セル4側(X2側)にない場合、熱伝導体2の平板部21に対する各電池セル4の当接位置によって、また、各電池セル4の当接角度によって、冷却器1に対する熱伝導体2の突起部22の押圧方向が不安定となる。第1実施形態では、平板部21の各電池セル4側(X2側)の突起部22が各電池セル4により確実に押圧される。そのため、平板部21の冷却器1側(X1側)の突起部22は突出方向に安定して押され、突起部22の位置に対して凹部11aの位置が多少ずれても突起部22が凹部11a内に充填される可能性が高くなる。
【0030】
<第2実施形態>
図6、7は、第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、平板部21に溝23を設けない点、並びに突起部22に切欠24を設けない点である。その他の構成は、両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0031】
第2実施形態では、溝23及び切欠24を設けないため、熱伝導体2が各電池セル4と冷却器1との間に挟まれて弾性変形する際に熱伝導体2の表裏両側に空気層が残る可能性がある。しかし、熱伝導体2の弾性係数を比較的小さくし、熱伝導体2の変形が突起部22の中心部から平板部21側へ順次行われるような形状とすることにより、上記空気層ができ難くすることができる。
【0032】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態を示す。第3実施形態が第2実施形態(
図6、7参照)に対して特徴とする点は、突起部22の冷却器1側(X1側)部を尖頭形状の尖頭形状部22bとした点である。その他の構成は、両者同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0033】
突起部22の冷却器1側(X1側)部が尖頭形状部22bとされているため、突起部22と凹部11aの間に位置ずれがあっても、突起部22の冷却器1に対向する尖頭形状部22bは凹部11a内に入る確率が高く、突起部22は押圧されることにより凹部11a内形状に馴染んで変形して凹部11a内を充填することができる。
【0034】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、電気自動車用電池に適用した例を示したが、家庭電力供給用電池、自動車以外の乗物用電池等に適用してもよい。また、上記実施形態では、各電池セルは、直列接続されて一つの電池モジュールとされたが、各電池セルが並列接続されるもの、若しくは直並列が組み合わされるものとされてもよい。また、上記実施形態では、溝23及び切欠24を熱伝導体2の平板部21の表裏両側に形成したが、いずれか一方のみに形成してもよい。
【0035】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
最後に上述の「課題を解決するための手段」における第1発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0036】
第1発明によれば、電池セルが電池として組み付けられるとき、熱伝導体の突起部が冷却器の凹部に入って電池セルからの圧力によって押し潰されて凹部の形状に沿って変形される。このとき、熱伝導体の突起部は、冷却器の凹部内の空間全体に充填される。凹部内を充填して突起部がなお余る場合、その余りは平坦部を端部側に押し出して移動する。そのため、凹部内外両方に熱伝導体を充填させて電池セルの部位毎に冷却性能のムラが生じないようにすることができる。また、熱伝導体は、平板部に突起部を備えたシート状となり、ゲル状の熱伝導体に比べて電池組立時の取り扱いが容易であり、生産性を高めることができる。
【0037】
平板部の電池セル側に突起がない場合、熱伝導体の平板部に対する電池セルの当接位置によって、また、電池セルの当接角度によって、冷却器に対する熱伝導体の突起部の押圧方向が不安定となる。第2発明によれば、平板部の電池セル側の突起部が電池セルにより確実に押圧される。そのため、平板部の冷却器側の突起部は突出方向に安定して押され、突起部の突出方向に対して凹部の正面方向が多少位置ずれしていても突起部が凹部内に充填される可能性が高くなる。
【0038】
第3発明によれば、上記のように突起部と凹部の間に位置ずれがあっても、突起部の端部が球面又は尖頭形状とされているため、突起部の冷却器に対向する端部は凹部内に入る確率が高く、突起部は押圧されることにより凹部内形状に馴染んで変形して凹部内を充填することができる。
【0039】
第4発明によれば、凹部内へ熱伝導体の突起部が充填される際、凹部から排出される空気が溝を通って外部に抜け易くなる。そのため、突起部の凹部内への充填が安定して行われる。また、突起部が電池セルによって押圧される際、熱伝導体の平坦部と電池セルとの間の空気が溝を通って外部に抜け易くなる。従って、熱伝導体と冷却器又は電池セルとの間に空気層が残留することが抑制され、電池セルの放熱性が良くなる。
【0040】
第5発明によれば、例えば、上記のような突起部と凹部の位置ずれがなく、凹部の円の径に対して突起部の球の径が僅かに小さく、且つ凹部の窪み深さに対して球の径が大きくされると、突起部は、僅かに変形するのみで凹部を充填させることができ、熱伝導体の弾性係数の設定等の設計自由度を高めることができる。
【0041】
第6発明によれば、突起部が電池セルに押圧されて凹部内で変形しても切欠部により凹部内の空間と溝の連通状態が維持され易い。そのため、凹部内の空気が溝を通って外部に抜け易くなり、熱伝導体の凹部内への充填が安定して行われる。
【0042】
第7発明によれば、溝は、突起部から離れるに従って溝深さが深くなるように、溝の底面が傾斜されている。そのため、熱伝導体の平板部が冷却器と各電池セルに挟まれて押圧されるとき、最終的に溝に集められた空気は、突起部に近い側から離れた側に順次押し出される。従って、溝内の空気は、より確実に放出される。
【符号の説明】
【0043】
1 冷却器
1a、1b 鋼板
11 凹凸面
11a 凹部
12 冷媒流路
2 熱伝導体
21 平板部
21a 外縁端部
22 突起部
22a 立ち上がり縁部
22b 尖頭形状部
23 溝
24 切欠
3 保持枠
4 電池セル