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特許7354123アピリモドとグルタミン酸作動薬を用いた併用療法
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  • 特許-アピリモドとグルタミン酸作動薬を用いた併用療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】アピリモドとグルタミン酸作動薬を用いた併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20230925BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/4535 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20230925BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K31/13
A61K31/137
A61K31/155
A61K31/366
A61K31/428
A61K31/4402
A61K31/445
A61K31/4535
A61K31/498
A61K31/53
A61K31/662
A61K31/675
A61K31/7028
A61K38/05
A61K45/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/08
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020543481
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2019018662
(87)【国際公開番号】W WO2019164861
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】62/633,335
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519060232
【氏名又は名称】エイアイ・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】リチェンステイン,ヘンリ
(72)【発明者】
【氏名】ランドレット,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ピーター・アール
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/210372(WO,A2)
【文献】特表2017-535613(JP,A)
【文献】特表2017-503842(JP,A)
【文献】特表2017-535600(JP,A)
【文献】特表2017-535601(JP,A)
【文献】特表2017-533963(JP,A)
【文献】国際公開第2017/015262(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/201502(WO,A1)
【文献】長原 悠樹,筋萎縮性側索硬化症における膜貫通糖タンパク質GPNMBに関する研究,博士論文 岐阜薬科大学,2017年,第7-10頁,23701甲第7号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 31/80
A61K 38/00- 38/58
A61K 45/00- 45/08
A61P 1/00- 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
医中誌WEB
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経疾患又は神経障害の治療を、それを必要とする対象においてするための方法において使用するためのアピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、当該方法が、当該医薬組成物を、グルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含み、
当該グルタミン酸作動薬が、BHV-5000、ラモトリギン、ラニセミン、リルゾール、トリグリルゾール、及びトピラメートから選ばれ、
当該アピリモド又は塩と当該グルタミン酸作動薬とが同じ又は異なる組成物中にある、前記組成物。
【請求項2】
アピリモドジメシレートを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
経口剤形又は舌下剤形である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記グルタミン酸作動薬が、前記アピリモド又は塩と同じ又は異なる剤形で投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記神経疾患又は神経障害が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、注意欠陥多動性障害、自閉症、小脳性運動失調症、シャルコー・マリー・ツース病、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、フリードライヒ失調症、ハンチントン病、多発性硬化症、強迫性障害(OCD)、パーキンソン病、レット症候群、老人性舞踏病、脊髄性運動失調症、脊髄損傷、核上まひ、及び外傷性脳損傷から選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記神経疾患又は神経障害が認知症である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記認知症が、エイズ認知症コンプレックス(ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症から選ばれる、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記神経疾患又は神経障害が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象がヒトである、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法において使用するための、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、当該方法が、当該組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含み、当該アピリモド又は塩と当該グルタミン酸作動薬とが同じ又は異なる組成物中にある、前記組成物。
【請求項11】
アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象においてするための方法において使用するための、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、当該方法が、当該組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含み、当該アピリモド又は塩と当該グルタミン酸作動薬とが同じ又は異なる組成物中にある、前記組成物。
【請求項12】
アピリモドジメシレートを含む、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象がヒトである、請求項10~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本開示は、神経疾患及び神経障害、ならびにがんの治療において、グルタミン酸作動薬と組み合わせて使用するためのアピリモドを含む組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02]アピリモドはSTA-5326とも呼ばれ(以後“アピリモド”)、IL-12及びIL-23の強力な転写阻害薬として認識されている。例えば、Wadaら、Blood 109(2007):1156-1164参照。IL-12及びIL-23は、通常、抗原刺激に応答してB細胞及びマクロファージなどの免疫細胞によって産生される炎症性サイトカインである。自己免疫疾患や慢性炎症を特徴とするその他の疾患は、一部はこれらのサイトカインの不適切な産生によって特徴付けられる。免疫細胞において、アピリモドによるIL-12/IL-23の選択的阻害は、最近、アピリモドのホスファチジルイノシトール-3-ホスフェート 5-キナーゼ(PIKfyve)への直接結合によって媒介されることが示された。例えば、Caiら、Chemistry and Biol.20(2013):912-921参照。PIKfyveは、自然免疫に重要なトル様受容体シグナル伝達に役割を果たしている。
【0003】
[03]一部の神経変性疾患は、神経毒性及び神経変性を招きうるタンパク質凝集物又はその他の細胞内異化の中間体の蓄積をもたらす。
[04]グルタメート(グルタミン酸とも呼ばれる)はヒトの主要な興奮性神経伝達物質である。それはまた、神経細胞の興奮性を調節する主要な抑制性神経伝達物質、GABA(γ-アミノ酪酸)の合成における基質でもある。
【0004】
[05]グルタミン酸トランスポーターは、グルタミン酸を神経細胞膜を横断して運ぶ神経伝達物質輸送タンパク質のファミリーである。グルタミン酸トランスポーターは、興奮性アミノ酸トランスポーターと小胞性グルタミン酸トランスポーターの二つの主要クラスを含む。アミノ酸トランスポーターは、神経細胞への再取込みを刺激することにより、グルタミン酸をシナプス間隙から除去する。小胞性トランスポーターは、細胞内でグルタミン酸を細胞質からシナプス小胞へと運ぶ。
【0005】
[06]グルタミン酸の興奮毒性は、神経細胞が過剰なグルタミン酸刺激によって損傷又は破壊される病的過程を指す。高レベルのグルタミン酸は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体及びAMPA受容体などのグルタミン酸受容体の過剰刺激を引き起こし、細胞骨格、膜及びさらにはDNAを含む細胞構造に損傷をもたらす様々な細胞内酵素の病的活性化を招く。
【0006】
[07]グルタミン酸の興奮毒性は、脊髄損傷、脳卒中、及び外傷性脳損傷を含む様々な神経疾患及び神経障害のほか、多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、アルコール依存症又はアルコール離脱及びハンチントン病を含む中枢神経系のある種の神経変性疾患にも関与している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wadaら、Blood 109(2007):1156-1164
【文献】Caiら、Chemistry and Biol.20(2013):912-921
【発明の概要】
【0008】
[08]本開示は、神経疾患又は神経障害の治療、及びがんの治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0009】
[09]実施態様において、本開示は、神経疾患又は神経障害の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。実施態様において、アピリモドはアピリモドジメシレート(apilimod dimesylate)である。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体アンタゴニストから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸トランスポーター調節薬は興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、AP5(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、CNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロパ-2-エニル-1-ホスホン酸)、NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン)、及びセルフォテル(CGS-19755)から選ばれる。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、ケタミン、メマンチン、エリプロジル、デルセミン(delucemin)から選ばれる。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、BHV-5000、ラモトリギン、ラニセミン、リルゾール、トリグリルゾール(trigriluzole)、及びトピラメートから選ばれる。実施態様において、医薬組成物は、経口剤形又は舌下剤形である。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、アピリモドと同じ又は異なる剤形で投与される。
【0010】
[10]実施態様において、神経疾患又は神経障害は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、注意欠陥多動性障害、自閉症、小脳性運動失調症、シャルコー・マリー・ツース病、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、フリードライヒ失調症、ハンチントン病、多発性硬化症、強迫性障害(OCD)、パーキンソン病、レット症候群、老人性舞踏病、脊髄性運動失調症、脊髄損傷、核上まひ、外傷性脳損傷から選ばれる。
【0011】
[11]実施態様において、神経疾患又は神経障害は認知症である。実施態様において、認知症は、エイズ認知症コンプレックス(AIDS dementia complex,ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症から選ばれる。
【0012】
[12]前頭側頭型認知症又はALSの治療に関する一定の実施態様において、その治療を必要としている患者は、C9ORF72遺伝子に反復配列異常伸長(repeat expansion)を有する者である。
【0013】
[13]実施態様において、神経疾患又は神経障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
[14]実施態様において、神経疾患又は神経障害はレット症候群である。
【0014】
[15]実施態様において、神経疾患又は神経障害は強迫性障害(OCD)である。
[16]実施態様において、対象はヒトである。
[17]本開示はまた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法も提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をリルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて対象に投与することを含む。
【0015】
[18]本開示はまた、アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象においてするための方法も提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をリルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0016】
[19]本開示はまた、強迫性障害(OCD)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法も提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をリルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0017】
[20]本開示はまた、レット症候群の治療を、それを必要とする対象においてするための方法も提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をBHV-5000及びラニセミンから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0018】
[21]本開示はまた、がんの治療を、それを必要とする対象においてする方法も提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をリルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬、好ましくはトリグリルゾールと組み合わせて当該対象に投与することを含む。実施態様において、がんは、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、メラノーマ又はその他の皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、腎がん、及び精巣がんから選ばれる。
【0019】
[22]本開示はまた、神経疾患又は神経障害の治療において、又はがんの治療のために、グルタミン酸作動薬との併用療法で使用するためのアピリモドを含む医薬組成物も提供する。実施態様において、アピリモドはアピリモドジメシレートである。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体アンタゴニストから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸トランスポーター調節薬は興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、メマンチン、エリプロジル、デルセミンから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、リルゾール、トリグリルゾール、BHV-5000、及びラニセミンから選ばれる。実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬は同じ剤形に含有される。
【0020】
[23]実施態様において、医薬組成物は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、注意欠陥多動性障害、自閉症、小脳性運動失調症、シャルコー・マリー・ツース病、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、フリードライヒ失調症、ハンチントン病、多発性硬化症、強迫性障害(OCD)、パーキンソン病、レット症候群、老人性舞踏病、脊髄性運動失調症、脊髄損傷、核上まひ、及び外傷性脳損傷から選ばれる神経疾患又は神経障害の治療に使用するためのものである。実施態様において、神経疾患又は神経障害は認知症である。実施態様において、認知症は、エイズ認知症コンプレックス(ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症から選ばれる。実施態様において、神経疾患又は神経障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。実施態様において、神経疾患又は神経障害はレット症候群である。実施態様において、神経疾患又は神経障害は強迫性障害(OCD)である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】[24]図1は、12人の患者における投与前と15日目の間の14日間の投与後の血漿中(放出)GPNMBの倍率変化を示す。各患者の倍率変化はグラフの右上隅の凡例の括弧内に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[25]本開示は、神経疾患及び神経障害、ならびにがんの治療のために、特にグルタミン酸トランスポーター/受容体系の調節薬と組み合わせてアピリモドを使用することに関する組成物及び方法を提供する。従って、本開示は、神経疾患又は神経障害の治療法及びがんの治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩をグルタミン酸作動薬と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0023】
[26]用語“アピリモド”は、式I:
【0024】
【化1】
【0025】
によって表される、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-(ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)のことを言う。
【0026】
[27]アピリモドのCAS番号は541550-19-0である。
[28]アピリモドは、例えば、米国特許第7,923,557号及び7,863,270号、ならびにWO2006/128129号に記載されている方法に従って製造できる。
【0027】
[29]本明細書中に記載の組成物及び方法の実施態様において、アピリモドの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物(クラスレート)、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体が、神経疾患又は神経障害を治療するための組成物及び方法に使用できる。
【0028】
[30]用語“薬学的に許容可能な塩”は、例えば、本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の酸性及び塩基性基から形成される塩である。例示的塩は、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(例えば、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))などの塩である。好適な実施態様において、アピリモドの塩はメタンスルホン酸塩を含む。用語“薬学的に許容可能な塩”は、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有する本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)と、薬学的に許容可能な無機又は有機塩基から製造される塩も指す。
【0029】
[31]適切な塩基は、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、及びリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛などのその他の金属の水酸化物;アンモニア、及び有機アミン、例えば非置換又はヒドロキシ置換モノ-、ジ-、又はトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-又はトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えば、モノ-、ビス-、又はトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、又はトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸などである。用語“薬学的に許容可能な塩”は、アミノ官能基などの塩基性官能基を有する本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)と、薬学的に許容可能な無機又は有機酸から製造される塩も指す。適切な酸は、ハイドロジェンスルフェート(hydrogen sulfate)、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)、硝酸、ハイドロジェンビスルフィド(hydrogen bisulfide)、リン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、ビタータリックアシッド(bitartratic acid)、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸などである。
【0030】
[32]本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の塩は、親化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)から、 Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.Hemrich Stalil(編集者),Camille G.Wermuth(編集者),ISBN:3-90639-026-8,2002年8月、に記載の方法ような従来の化学的方法によって合成できる。一般に、そのような塩は、親化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)を、水中又は有機溶媒中、あるいはその二つの混合物中で適切な酸と反応させることによって製造できる。
【0031】
[33]本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の一つの塩形は、当業者に周知の方法によって、遊離塩基及び任意に別の塩形に変換できる。例えば、遊離塩基は塩溶液をアミン固定相を含有するカラム(例えば、Strata-NHカラム)に通すことによって形成できる。あるいは、塩の水溶液を炭酸水素ナトリウムで処理して塩を分解し、遊離塩基を沈殿させてもよい。遊離塩基はその後、日常法を用いて別の酸と結合させることができる。
【0032】
[34]用語“多形”は、本開示の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)又はその複合体の固体結晶形を意味する。同じ化合物の異なる多形は、異なる物理的、化学的及び/又は分光学的性質を示しうる。異なる物理的性質は、安定性(例えば熱又は光に対する)、圧縮性及び密度(製剤及び製品の製造に重要)、ならびに溶解速度(バイオアベイラビリティに影響しうる)などであるが、これらに限定されない。安定性の差は、化学反応性(例えば、酸化の差の結果、剤形は一つの多形を含む場合の方が別の多形を含む場合よりも急速に変色する)又は機械的特性(例えば、錠剤が貯蔵時に崩壊するのは動力学的に好適な多形から熱力学的により安定な多形に変換されるため)又はその両方(例えば、一つの多形の錠剤は高湿度でより分解されやすい)の変化の結果でありうる。多形の異なる物理的性質はそれらの加工にも影響を及ぼしうる。例えば、一つの多形は、例えばその粒子の形状又はサイズ分布のために、別の多形よりも溶媒和物を形成しやすかったり又は不純物をろ過もしくは洗浄除去しにくかったりする。
【0033】
[35]用語“水和物”は、本開示の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)又はその塩が、非共有分子間力によって結合された化学量論的又は非化学量論的量の水をさらに含むことを意味する。
【0034】
[36]用語“包接化合物”は、本開示の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)又はその塩が、空間(例えばチャネル)を含有する結晶格子の形態であり、その内部に捕捉されたゲスト分子(例えば溶媒又は水)を有することを意味する。
【0035】
[37]用語“プロドラッグ”は、本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の誘導体であって、生物学的条件下(インビトロ又はインビボ)で加水分解、酸化、又はその他の方法で反応し、本開示の化合物を提供できるものを意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でのそのような反応でのみ活性化しても、又はそれらの未反応形で活性を有していてもよい。本開示で想定されるプロドラッグの例は、生物加水分解性部分、例えば、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバメート、生物加水分解性カーボネート、生物加水分解性ウレイド、及び生物加水分解性ホスフェート類似体を含む本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)の類似体又は誘導体などであるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例は、-NO、-NO、-ONO-、又は-ONO-部分を含む本明細書中に開示された式のいずれか一つの化合物の誘導体などである。プロドラッグは、典型的には、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery(1995)172-178,949-982(Manfred E.Wolff編、第5版)に記載されているような周知の方法を用いて製造できる。
【0036】
[38]さらに、本開示の方法で使用するのに適切な一部の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)は、一つもしくは複数の二重結合、又は一つもしくは複数の不斉中心を有している。そのような化合物は、ラセミ化合物、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、個別ジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、及びシス-もしくはトランス-、又はE-もしくはZ-二重異性体形として存在しうる。これらの化合物のすべてのそのような異性体形は明示的に本開示に含まれる。本開示の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)は、複数の互変異性体形で表すこともでき、そのような場合、本開示は本明細書中に記載の化合物のすべての互変異性体形を明示的に含み(例えば、化合物の複数の構造形の迅速平衡があり得る)、本開示はすべてのそのような反応生成物を明示的に含む。そのような化合物のすべてのそのような異性体形は明示的に本開示に含まれる。本明細書中に記載の化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)のすべての結晶形は明示的に本開示に含まれる。
【0037】
[39]用語“溶媒和物”又は“薬学的に許容可能な溶媒和物”は、一つ又は複数の溶媒分子が、本明細書中に開示された化合物(例えば、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン)に会合することによって形成された溶媒和物である。溶媒和物という用語は水和物を含む(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物など)。
【0038】
[40]用語“類似体”は、別の化合物に構造的に類似しているが、組成がわずかに異なる化合物を指す(一つの原子が別の元素の原子によって置換されている、又は特定の官能基が存在している、又は一つの官能基が別の官能基によって置換されている、など)。従って、類似体は、参照化合物に対して、機能及び外観は類似又は同等であるが、構造又は起源はそうではない化合物である。本明細書中で使用されている用語“誘導体”は、共通のコア構造を有し、本明細書中に記載されているような様々な基で置換されている化合物を指す。
【0039】
[41]本明細書中に記載された開示の一定の実施態様において、上記のアピリモド、又はアピリモドの薬学的に許容可能な塩、水和物、包接化合物、又はプロドラッグは、一つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせて提供されてもよい。これらの実施態様に従って、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体は、一つ又は複数の追加の治療薬と同じ剤形中に提供されても、又は別の剤形中に提供されてもよい。
【0040】
治療法
[42]本開示は、神経疾患又は神経障害、又はがんの治療を、それを必要としている対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体をグルタミン酸作動薬と組み合わせて投与することを含む。本開示はさらに、神経疾患又は神経障害、又はがんの治療に有用な医薬の製造のために、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体をグルタミン酸作動薬と組み合わせて使用することを提供する。
【0041】
[43]実施態様において、グルタミン酸作動薬は、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体アンタゴニストから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸トランスポーター調節薬は、興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体、又はカイナイト(kainite)受容体のアンタゴニストである。
【0042】
[44]実施態様において、グルタミン酸作動薬は、AP5(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、CNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロパ-2-エニル-1-ホスホン酸)、NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン)、及びセルフォテル(CGS-19755)から選ばれるグルタミン酸受容体アンタゴニストである。
【0043】
[45]実施態様において、グルタミン酸作動薬は、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、ケタミン、メマンチン、エリプロジル、デルセミンから選ばれるグルタミン酸受容体アンタゴニストである。
【0044】
[46]実施態様において、グルタミン酸作動薬は、BHV-5000、ラモトリギン、ラニセミン、リルゾール、トリグリルゾール、及びトピラメートから選ばれる。
[47]本明細書中に記載の方法は、アピリモドと少なくとも一つのグルタミン酸作動薬とを用いる併用療法に関する。用語“併用療法”又は“共同療法(co-therapy)”は、本明細書中に記載の化合物、例えばアピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体を、少なくとも一つの追加の薬剤、例えばグルタミン酸作動薬と共に、これらの化合物の共同作用(co-action)から得られる有益効果を提供する目的で特定の治療計画の一部として投与することを含む。有益効果は、神経疾患又は神経障害、又はがんの進行の緩徐化、及び/又は神経疾患又は神経障害、又はがんの一つ又は複数の症状の緩和をもたらしうる。組合せ(併用)の有益効果は、組合せから得られる薬物動態的又は薬力学的共同作用を含むが、これに限定されない。組合せの有益効果は、組合せ中の別の薬剤に関連する毒性、副作用、又は有害事象の軽減にも関連しうる。“併用療法”は、本開示の組合せを偶然及び任意にもたらす別個の単独療法計画の一部として二つ以上のこれらの治療化合物を投与することを包含しないものとする。
【0045】
[48]併用療法の文脈において、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体の投与は、グルタミン酸作動薬の投与と同時でも又は順次でもよい。別の側面において、併用療法の異なる成分の投与は異なる頻度で行われてもよい。一つ又は複数の追加の薬剤は、本開示の化合物の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、投与と同時、又は投与の後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与できる。
【0046】
[49]治療薬は、同時投与のために単一の剤形中に製剤化されても、又は異なる剤形で別個に投与されてもよい。別個に投与される場合、投与は、併用療法の各成分について、同じ又は異なる投与経路によるものであってよい。
【0047】
[50]好ましくは、併用療法は相乗反応を提供する。用語“相乗的”とは、組合せ(併用)の有効性が、いずれかの単独療法のみの相加効果よりも大きいことを意味する。併用療法の相乗効果は、併用の少なくとも一つの薬剤を、併用でない場合のその用量及び/又は頻度と比べて、より低用量で使用すること及び/又はより低頻度で投与することを可能にしうる。相乗効果は、併用のいずれかの療法を単独で使用する場合に随伴する有害な又は望まざる副作用の回避又は低減として現れることもある。
【0048】
[51]本明細書中に記載の方法の実施態様において、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体は、グルタミン酸作動薬との併用療法の文脈において、同時に又は異なる時間に投与できる。実施態様において、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体とグルタミン酸作動薬は、単一の剤形で又は別の剤形で投与される。
【0049】
[52]実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬との併用療法は、アピリモドの一つ又は複数の副作用、例えば、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、立ちくらみ(ふらつき)(lightheadedness)、眠気及びストレスを軽減する追加の薬剤をさらに含む。この実施態様の一側面において、追加の薬剤は、5-ヒドロキシトリプタミン受容体又は5-HT受容体としても知られるセロトニン受容体のアンタゴニストである。一側面において、追加の薬剤は、5-HT又は5-HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、該薬剤は、オンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、ドラセトロン(dolasetron)及びパロノセトロン(palonosetron)からなる群から選ばれる。別の側面において、該薬剤は、ピンドロール(pindolol)及びリスペリドン(risperidone)からなる群から選ばれる。
【0050】
[53]本明細書中に記載の方法に従って、神経疾患又は神経障害は、神経変性疾患又は障害、てんかん、神経筋障害、又は神経発達障害から選ぶことができる。
[54]本明細書中に記載の方法に従って治療できる神経変性疾患及び障害は、例えば、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、びまん性レビー小体病、運動ニューロン疾患、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、フリードライヒ失調症、プリオン病、脊髄小脳失調症(SCA)、及び脊髄性筋萎縮症(SMA)などである。治療できるその他のあまり一般的でない神経変性疾患及び障害は、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、進行性核上まひ(PSP、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群)、老人性舞踏病、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳失調症(SCA)を含む脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、亜急性硬化性全脳炎、前頭側頭葉変性症、及びハレルフォルデン・スパッツ病(パントテン酸キナーゼ関連神経変性、PKAN)などである。ALS又は前頭側頭型認知症の治療の実施態様において、その治療を必要としている患者は、C9ORF72遺伝子に反復配列異常伸長(repeat expansion)を有する者である。
【0051】
[55]様々な形態の認知症も、考慮される神経変性疾患でありうる。一般に、用語‘認知症’は、日常機能を妨げるほど重度に記憶、思考及び社会生活能力に影響を及ぼす症状の一群のことを言う。従って、本開示は、エイズ認知症コンプレックス(ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症を含む認知症の治療法も提供する。前頭側頭型認知症の治療の実施態様において、その治療を必要としている患者は、C9ORF72遺伝子に反復配列異常伸長を有する者である。
【0052】
[56]本明細書中に記載の方法に従って治療できる神経筋障害は、例えば、乳児脊髄性筋萎縮症(SMA1、ウェルドニッヒ・ホフマン病)及び若年性脊髄性筋萎縮症(SMA3、クーゲルベルグ・ウエランダー病)などである。
【0053】
[57]本明細書中に記載の方法に従って治療できる神経発達障害は、レット症候群などである。
[58]本明細書中に記載の方法に従って、神経疾患又は神経障害は、双極性障害、治療抵抗性うつ病及び大うつ病、全般性不安障害、パニック障害、社会不安、気分障害、認知障害、激越、無気力、精神病、外傷後ストレス障害、過敏(irritability)、脱抑制、学習障害、記憶喪失、パーソナリティ障害、双極性障害、摂食障害、行為障害、疼痛性障害、譫妄、薬物中毒、耳鳴り、精神遅滞、頸椎性脊髄症、脊髄損傷、遺伝性小脳性運動失調症、トゥレット症候群、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、脆弱性X症候群、パーキンソン病及びハンチントン病から選ぶこともできる。
【0054】
[59]アルツハイマー病の治療の実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬による併用療法は、コリンエステラーゼ阻害薬(例えば、AriceptTM、ExelonTM、RazadyneTM)の投与を含む治療計画の一部を形成しうる。アルツハイマー病の治療の実施態様において、グルタミン酸作動薬は、メマンチン(NamendaTM)及びトリグリルゾールから選ばれる。
【0055】
[60]筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療の実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬による併用療法は、エダラボン(RadicavaTM、RadicutTM)などの抗酸化剤の投与を含む治療計画の一部を形成しうる。ALSの治療の実施態様において、グルタミン酸作動薬は、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれる。ALSの治療の実施態様において、グルタミン酸作動薬はトリグリルゾールである。ALSの治療の実施態様において、その治療を必要としている患者は、C9ORF72遺伝子に反復配列異常伸長を有する者である。
【0056】
[61]強迫性障害(OCD)の治療の実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬による併用療法は、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、クロミプラミン、又はリスペリドンのような非定型抗精神病薬の投与を含む治療計画の一部を形成しうる。ALSの治療の実施態様において、グルタミン酸作動薬は、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれる。
【0057】
[62]レット症候群の治療の実施態様において、アピリモドとグルタミン酸作動薬による併用療法は、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)の投与を含む治療計画の一部を形成しうる。レット症候群の治療の実施態様において、グルタミン酸作動薬は、BHV-5000及びラニセミンから選ばれる。
【0058】
[63]実施態様において、本開示は、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、てんかん及び慢性痛から選ばれる神経疾患又は神経障害の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、アグマチン、アマンタジン、AP5(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、エリプロジル、及びセルフォテルから任意に選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0059】
[64]実施態様において、本開示は、神経学的症候群又は不安関連障害の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)及びアグマチンから任意に選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0060】
[65]実施態様において、本開示は、てんかん又は神経障害痛の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロパ-2-エニル-1-ホスホン酸)、NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン)、及びセルフォテルから任意に選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0061】
[66]実施態様において、本開示は、パーキンソン病、パーキンソン症候群、又は多発性硬化症の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、グルタミン酸作動薬、任意にアマンタジンと組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0062】
[67]実施態様において、本開示は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、グルタミン酸作動薬、任意にアトモキセチンと組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0063】
[68]実施態様において、本開示は、うつ病の治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物を、アグマチン、デルセミン、及びラニセミンから任意に選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。
【0064】
[69]実施態様において、本開示は、がんの治療を、それを必要とする対象においてするための方法を提供し、該方法は、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩、任意にアピリモドジメシレートを含む医薬組成物をグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む。実施態様において、がんは、代謝型グルタミン酸受容体1(GRM1)を発現している。実施態様において、がんは、手術不能な又は転移性進行性の固形腫瘍又はリンパ腫である。実施態様において、がんは、脳腫瘍(神経膠腫及び膠芽細胞腫を含む)、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、メラノーマ又はその他の皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、腎がん、及び精巣がんから選ばれる。実施態様において、がんは、メラノーマ又は乳がんである。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体アンタゴニストから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸トランスポーター調節薬は興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、AP5(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、CNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロパ-2-エニル-1-ホスホン酸)、NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン)、及びセルフォテル(CGS-19755)から選ばれる。実施態様において、グルタミン酸受容体アンタゴニストは、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、ケタミン、メマンチン、エリプロジル、デルセミンから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸作動薬は、BHV-5000、ラモトリギン、ラニセミン、リルゾール、トリグリルゾール、及びトピラメートから選ばれる。実施態様において、グルタミン酸作動薬はトリグリルゾールである。
【0065】
[70]“それを必要とする対象”とは、神経疾患又は神経障害、又はがんの治療を必要としている対象のことを言う。実施態様において、それを必要とする対象は、神経疾患又は神経障害、又はがんの標準治療に対して“不応性”又は“難治性”である者である。この文脈において、用語“不応性”及び“難治性”は、療法に対する対象の応答が、神経疾患又は神経障害、又はがんに関連する一つ又は複数の症状を緩和するために臨床的に適切でないことを指す。実施態様において、その治療を必要としている患者は、例えば、神経疾患又は神経障害、特にALS又は前頭側頭型認知症に関連する実施態様において、C9ORF72遺伝子に反復配列異常伸長を有する者である。
【0066】
[71]“対象”は一般的に哺乳動物を指す。哺乳動物は、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ又はブタでありうる。好ましくは、対象はヒトである。用語“対象”及び“患者”は、本明細書においては互換的に使用される。
【0067】
[72]用語“治療(treatment)”、“治療すること(treating)”又は“治療する(treat)”は、本明細書中に記載されている神経疾患又は神経障害、又はがんを有する対象の管理及びケアのことを表現し、疾患又は障害の進行を緩徐化し及び/又は神経疾患又は神経障害、又はがんの一つ又は複数の症状を緩和するために、本明細書中に記載の治療薬又はその組合せを投与することを含む。この文脈において、治療は、神経疾患又は神経障害、又はがんの一つ又は複数の症状を緩和するのに有効な量の治療薬、又は薬剤の組合せを投与することを含む。“緩和する”という用語は、症状の重症度が縮小又は低減されるが、必ずしも除去されなくてもよい(もっとも、ある期間又は一時的に除去されることはありうる)過程のことを言う。症状の除去が好適ではあるが、必要とはされない。用語“予防”、“予防すること”又は“予防する”は、特に、疾患又は障害、又はがんの進行(ここで、進行は一つ又は複数の症状の発症によって定義される)の予防の文脈において、症状の発症を低減又は排除することを指す。
【0068】
[73]用語“治療上有効量”は、神経疾患又は神経障害、又はがんを治療、その症状を改善、その重症度を低減、又はその期間を縮小するため、又は別の療法の治療効果を増強又は改良するために十分な量を指す。対象に対する正確な有効量は、対象の体重、サイズ、及び健康;状態(疾患)の性質及び程度;ならびに投与のために選択された治療薬又は治療薬の組合せに依存する。
【0069】
[74]有効量のアピリモドは、1日1回、1日2~5回、1日2回まで又は3回まで、又は1日8回まで投与できる。実施態様において、アピリモドは、1日3回、1日2回、1日1回、3週間のサイクルで14日間の連続投薬(1日4回、1日3回又は1日2回、又は1日1回)と7日間の休薬、3週間のサイクルで5又は7日間までの連続投薬(1日4回、1日3回又は1日2回、又は1日1回)と14~16日間の休薬、又は2日に1回、又は1週間に1回、又は2週間に1回、又は3週間に1回投与される。
【0070】
[75]アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体の有効量は、約0.001mg/kg~約1000mg/kg、さらに好ましくは0.01mg/kg~約100mg/kg、さらに好ましくは0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲でありうるか;又は範囲の下限が0.001mg/kg~900mg/kgの間の任意の量で、範囲の上限が0.1mg/kg~1000mg/kgの間の任意の量である任意の範囲でありうる(例えば、0.005mg/kg~200mg/kg、0.5mg/kg~20mg/kg)。当業者には分かる通り、有効量は、治療される疾患、投与経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤の使用など他の療法との共使用の可能性によっても変動する。例えば、米国特許第7,863,270号参照(引用によって本明細書に援用する)。
【0071】
[76]さらに特定の側面において、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体は、少なくとも1週間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、36、48、又はそれより多い週数)、30~300mg/日(例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、又は300mg/日)の投与計画で投与される。好ましくは、本開示の化合物は、4又は16週間、100~300mg/日の投与計画で投与される。あるいは又はその後、本開示の化合物は、100mg、1日2回、8週間、又は任意に52週間の投与計画で投与される。
【0072】
医薬組成物及び製剤
[77]本開示は、神経疾患又は神経障害の治療、又はがんの治療において、グルタミン酸作動薬との併用療法で使用するための、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0073】
[78]本開示は、ある量のアピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体を、グルタミン酸作動薬及び任意に少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物も提供する。ここで、ある量とは神経疾患又は神経障害、又はがんの治療に有効な量である。
【0074】
[79]実施態様において、アピリモド、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形、代謝産物、プロドラッグ、類似体又は誘導体は、単一剤形中でグルタミン酸作動薬と組み合わされる。実施態様において、医薬組成物は抗酸化剤をさらに含む。
【0075】
[80]“医薬組成物”は、対象への投与に適切な薬学的に許容可能な形態中に一つ又は複数の治療薬を含有する製剤である。用語“薬学的に許容可能な”とは、それらの化合物、材料、組成物、担体、及び/又は剤形が、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適切であり、合理的な利益/リスク比に見合っていることを言う。
【0076】
[81]“薬学的に許容可能な賦形剤”とは、医薬組成物の製造に有用な、一般的に安全で非毒性の、生物学的にもその他の点でも有害(undesirable)でない賦形剤を意味し、動物用ならびにヒトの医薬用に許容可能な賦形剤を含む。薬学的に許容可能な賦形剤の例は、無菌液体、水、緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油、界面活性剤(detergent)、懸濁化剤、炭水化物(例えば、グルコース、ラクトース、スクロース又はデキストラン)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、又はそれらの適切な混合物などであるが、これらに限定されない。
【0077】
[82]医薬組成物はバルク又は単位剤形で提供できる。医薬組成物を単位剤形に製剤化することは、投与の容易性及び投与量の均一性のために特に有益である。本明細書中で使用されている用語“単位剤形”とは、治療される対象のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位のことで、各単位は、必要な製薬用担体と共同して所望の治療効果を生み出すために計算された所定量の活性化合物を含有している。本開示の単位剤形のための仕様明細は、活性化合物の独自特性及び達成されるべき特定の治療効果によって決まり、かつ直接依存する。単位剤形は、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤、カプセル、IVバッグ、又はエアロゾル吸入器の単一ポンプでありうる。
【0078】
[83]治療への適用において、投与量は、選択投与量に影響を及ぼす諸要因のうち特に、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重及び臨床状態、ならびに治療薬を投与する臨床医又は開業医の経験及び判断によって変動する。一般的に、用量は治療上有効量であるべきである。投与量はmg/kg/日の測定単位で提供できる(この用量は、患者のkgで表された体重、mで表された体表面積、及び年齢に応じて調整できる)。医薬組成物の有効量は、臨床医又はその他の有資格観察者によって指摘される客観的に確認可能な改良を提供する量である。例えば、障害、疾患又は状態の症状を緩和する量である。本明細書中で使用されている用語“効果的な投与量(dosage effective manner)”は、対象又は細胞に所望の生物学的効果を生じる医薬組成物の量を指す。
【0079】
[84]例えば、単位剤形は、1ナノグラム~2ミリグラム、又は0.1ミリグラム~2グラム;又は10ミリグラム~1グラム、又は50ミリグラム~500ミリグラム又は1マイクログラム~20ミリグラム;又は1マイクログラム~10ミリグラム;又は0.1ミリグラム~2ミリグラムを含みうる。
【0080】
[85]医薬組成物は、任意の所望経路(例えば、肺、吸入、鼻腔内、経口、頬内、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、髄腔内、経皮、経粘膜、直腸など)による投与のために任意の適切な形態(例えば、液体、エアロゾル、溶液、吸入剤、ミスト、スプレー;又は固体、粉末、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パッチなど)を取ることができる。例えば、本開示の医薬組成物は、吸入又は吹送(口腔又は鼻腔経由のいずれか)によるエアロゾル投与のための水溶液又は粉末の形態、経口投与のための錠剤又はカプセルの形態;直接注射又は静脈内注入用無菌注入液への添加のいずれかによる投与に適切な無菌水溶液又は分散液の形態;あるいは経皮又は経粘膜投与のためのローション、クリーム、泡沫、パッチ、懸濁液、溶液、又は坐剤の形態でありうる。
【0081】
[86]医薬組成物は、経口用剤形の形態、例えば、これらに限定されないが、カプセル、錠剤、バッカル(頬内)形、トローチ、ロゼンジ、及びエマルション、水性懸濁液、分散液又は溶液の形態の経口液でありうる。カプセルは、本開示の化合物と不活性充填剤及び/又は希釈剤、例えば薬学的に許容可能なデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖、人工甘味料、粉末セルロース、例えば結晶性及び微結晶性セルロース、小麦粉、ゼラチン、ガムなどとの混合物を含有しうる。経口用錠剤の場合、一般的に使用される担体は、ラクトース及びコーンスターチなどである。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を添加することもできる。カプセル形での経口投与の場合、有用な希釈剤は、ラクトース及び乾燥コーンスターチなどである。水性懸濁液及び/又はエマルションが経口投与される場合、本開示の化合物は、乳化剤及び/又は懸濁化剤と共に油相中に懸濁又は溶解されうる。所望であれば、ある種の甘味剤及び/又はフレーバー及び/又は着色剤を添加してもよい。
【0082】
[87]医薬組成物は錠剤の形態でもよい。錠剤は、単位用量の本開示の化合物と共に、不活性希釈剤又は担体、例えば糖又は糖アルコール、例えばラクトース、スクロース、ソルビトール又はマンニトールを含みうる。錠剤はさらに、非糖由来の希釈剤、例えば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、又はセルロースもしくはその誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びデンプン、例えばコーンスターチも含みうる。錠剤はさらに、ポリビニルピロリドンなどの結合剤及び造粒剤、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えばステアリン酸塩)、保存剤(例えばパラベン)、抗酸化剤(例えばBHT)、緩衝剤(例えばリン酸又はクエン酸緩衝液)、及びクエン酸塩/炭酸水素塩混合物などの発泡剤も含みうる。
【0083】
[88]錠剤はコーティング錠でもよい。コーティングは、保護膜コーティング(例えばワックス又はワニス)のことも、又は活性剤の放出を制御するため、例えば遅延放出(摂取後、所定の遅延時間後に活性成分が放出される)又は消化管の特定の位置で放出させるために設計されたコーティングのこともある。後者は、例えば、Eudragit(登録商標)の商品名で販売されているような腸溶性フィルムコーティングを用いて達成できる。
【0084】
[89]錠剤の製剤化は、従来の圧縮法、湿式造粒法又は乾式造粒法によって実施でき、薬学的に許容可能な希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤又は安定剤、例えば、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプン及び粉糖などを利用する。好適な表面改質剤は、非イオン性及びアニオン性表面改質剤などである。表面改質剤の代表例は、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びトリエタノールアミンなどであるが、これらに限定されない。
【0085】
[90]医薬組成物は、硬質又は軟質ゼラチンカプセルの形態でもよい。この製剤処方によれば、本開示の化合物は、固体、半固体、又は液体形でありうる。
[91]医薬組成物は、非経口投与に適切な無菌の水溶液又は分散液の形態でもよい。本明細書中で使用されている非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。
【0086】
[92]医薬組成物は、直接注射又は静脈内注入用無菌注入液への添加のいずれかによる投与に適切な無菌の水溶液又は分散液の形態でもよく、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、又は一つもしくは複数の植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。遊離塩基又は薬学的に許容可能な塩としての本開示の化合物の溶液又は懸濁液は、界面活性剤を適切に混合された水中に調製できる。適切な界面活性剤の例は以下に示す。分散液も、例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの油中混合物中に調製できる。
【0087】
[93]本開示の方法に使用するための医薬組成物は、製剤中に存在する任意の担体又は希釈剤(ラクトース又はマンニトールなど)のほかに、一つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。その一つ又は複数の添加剤は、一つ又は複数の界面活性剤を含む又はそれらからなることができる。界面活性剤は、典型的には、脂肪酸などの一つ又は複数の脂肪族長鎖を有し、これが細胞の脂質構造内に直接入り込めるので、薬物の浸透及び吸収が増強される。界面活性剤の相対的な親水性及び疎水性を特徴付けるために一般的に使用されている実験的パラメーターは、親水性親油性バランス(“HLB”値)である。低いHLB値を有する界面活性剤はより疎水性であり、より大きい油中溶解度を有するが、高いHLB値を有する界面活性剤はより親水性であり、より大きい水溶液中溶解度を有する。従って、親水性界面活性剤は、一般的に約10より大きいHLB値を有する化合物と考えられ、疎水性界面活性剤は一般的に約10未満のHLB値を有する化合物と考えられる。しかしながら、これらのHLB値は単なる指針である。というのも、多くの界面活性剤では、HLB値は、HLB値を測定するために選ばれた実験法に応じて、約8HLB単位も異なることがあるからである。
【0088】
[94]本開示の組成物に使用するための界面活性剤は、とりわけ、ポリエチレングリコール(PEG)-脂肪酸及びPEG-脂肪酸モノ及びジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール-油エステル交換生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖及びその誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(POE-POP)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミン及びそれらの塩、水溶性ビタミン及びそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸及びそれらの塩、ならびに有機酸及びそれらのエステル及び無水物である。
【0089】
[95]本開示は、本開示の方法に使用するための医薬組成物を含むパッケージ及びキットも提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、及びシリンジからなる群から選ばれる1個又は複数個の容器を含みうる。キットはさらに、本開示の疾患、状態又は障害を治療及び/又は予防するのに使用するための一つ又は複数の使用説明書、1個又は複数個のシリンジ、1個又は複数個のアプリケーター、又は本開示の医薬組成物を再構成するために適切な無菌溶液も含みうる。
【0090】
[96]本明細書中で使用されているすべてのパーセンテージ及び比率は、特に断りのない限り、重量による。本開示のその他の特徴及び利点は、様々な実施例から明白である。提供されている実施例は、本開示の実施に有用な様々な成分及び方法論を例示している。実施例は特許請求されている開示内容を制限するものではない。本開示に基づき、当業者は本開示の実施に有用なその他の成分及び方法論を識別し使用することができるであろう。
【実施例
【0091】
実施例1
[97]アピリモドで治療された患者では、血漿中を循環する各種タンパク質に変化が見られる。これらのうちの一つは、糖タンパク質非転移性メラノーマプロテインB(Glycoprotein Nonmetastatic Melanoma Protein B,GPNMB)で、メラノーマ細胞で最初に同定されたI型膜タンパク質である。それは、細胞表面上での発現に加えて、ADAM10及びADAM12などのマトリックスメタロプロテアーゼの活性によって細胞から放出(又は発散)されることもある。
【0092】
[98]GPNMBの発現はALS患者の脊髄で著しく増大し、これに伴って血清中への放出GPNMBも増加する。ALSの家族性症例で見出されるスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1G93A)の既知変異に基づくマウスモデルは、GPNMBの増加を含むヒト疾患の多くの特徴を再現している。このモデルにおいて、GPNMBレベルをさらに増加させると、生存を延長し、発症を遅延させ、そして骨格筋を脱神経及び萎縮から保護する。GPNMBの効果は、細胞外の放出形のGPNMBを通じて媒介されるようである。なぜならば、後者は、Nagaharaら,(2016)J.Neuroscienceに以前報告されている通り、培養下でSOD1G93Aが誘導する神経細胞死を直接抑制できるからである。神経保護効果は、ミュータント・トランザクティブ・レスポンスDNA結合タンパク質(mutant transactive response DNA binding protein) 43kDa(TDP-43)細胞培養モデルでも示され、ALSの素因となる変異全体にわたる保護が示唆される。
【0093】
[99]そこで、我々は、ヒトにおけるアピリモド治療が放出GPNMBのレベルを増加させるかどうかについて調べた。
[100]SOMAscanTMプラットフォームを用いて、アピリモド投与により患者の血漿中で変化した被検体を同定した。SOMAscanTMは、SomaLogic社製のアプタマーベースのプロテオミクスアッセイで、血清又は血漿中の1,305種類のヒトタンパク質被検体を高感度かつ特異的に測定できる。臨床試験指定NCT02594384号に登録された患者の血漿を、投与前(アピリモドの初回投与前)と、アピリモド投与14日後の15日目に採取した。Ritchieらにより、Nucleic Acids Research,43(7),pp.e47(2015)に記載されている“Limma R”ソフトウェアパッケージを用い、マイクロアレイデータの線形モデルのための対応ある実験設計によりディファレンシャル・プロテイン・アナリシスを行った。
【0094】
[101]GPNMBは、著しく変化した被検体の中で(FDR<0.05)、最も高い平
均倍率変化(4倍)を示した被検体として同定された(図1)。従ってアピリモド投与は、処置患者におけるGPNMBの血漿中レベルを一貫して増加させた。これらの結果は、アピリモド治療が、ALSに見られる神経筋の劣化を改善でき、患者の生存も改良する可能性があることを示している。さらに、リルゾールは現在の標準的なALS治療法であるので、我々は、アピリモドとリルゾールの併用療法が、アピリモド又はリルゾールいずれかの単独療法と比べて、ALSの治療に顕著な改良を提供すると予測している。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
神経疾患又は神経障害の治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、グルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項2]
アピリモドがアピリモドジメシレートである、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
グルタミン酸作動薬が、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体アンタゴニストから選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
[請求項4]
グルタミン酸トランスポーター調節薬が興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である、請求項3に記載の方法。
[請求項5]
グルタミン酸受容体アンタゴニストが、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである、請求項3に記載の方法。
[請求項6]
グルタミン酸受容体アンタゴニストが、AP5(R-2-アミノ-5-ホスホノペンタノエート)、AP7(2-アミノ-7-ホスホノヘプタン酸)、CNQX(6-シアノ-7-ニトロキノキサリン-2,3-ジオン)、CPPene(3-[(R)-2-カルボキシピペラジン-4-イル]-プロパ-2-エニル-1-ホスホン酸)、NBQX(2,3-ジヒドロキシ-6-ニトロ-7-スルファモイル-ベンゾ[f]キノキサリン-2,3-ジオン)、及びセルフォテル(CGS-19755)から選ばれる、請求項3に記載の方法。
[請求項7]
グルタミン酸受容体アンタゴニストが、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、ケタミン、メマンチン、エリプロジル、デルセミンから選ばれる、請求項3に記載の方法。
[請求項8]
グルタミン酸作動薬が、BHV-5000、ラモトリギン、ラニセミン、リルゾール、トリグリルゾール、及びトピラメートから選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
[請求項9]
医薬組成物が、経口剤形又は舌下剤形である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
[請求項10]
グルタミン酸作動薬が、アピリモドと同じ又は異なる剤形で投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
[請求項11]
神経疾患又は神経障害が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、注意欠陥多動性障害、自閉症、小脳性運動失調症、シャルコー・マリー・ツース病、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、フリードライヒ失調症、ハンチントン病、多発性硬化症、強迫性障害(OCD)、パーキンソン病、レット症候群、老人性舞踏病、脊髄性運動失調症、脊髄損傷、核上まひ、外傷性脳損傷から選ばれる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
[請求項12]
神経疾患又は神経障害が認知症である、請求項11に記載の方法。
[請求項13]
認知症が、エイズ認知症コンプレックス(ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症から選ばれる、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
神経疾患又は神経障害が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項11に記載の方法。
[請求項15]
神経疾患又は神経障害がレット症候群である、請求項11に記載の方法。
[請求項16]
神経疾患又は神経障害が強迫性障害(OCD)である、請求項11に記載の方法。
[請求項17]
前記対象がヒトである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
[請求項18]
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項19]
アルツハイマー病の治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項20]
強迫性障害(OCD)の治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項21]
レット症候群の治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、BHV-5000及びラニセミンから選ばれるグルタミン酸作動薬と組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項22]
がんの治療を、それを必要とする対象においてするための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を、リルゾール及びトリグリルゾールから選ばれるグルタミン酸作動薬、好ましくはトリグリルゾールと組み合わせて当該対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項23]
がんが、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、メラノーマ又はその他の皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、腎がん、及び精巣がんから選ばれる、請求項22に記載の方法。
[請求項24]
アピリモドがアピリモドジメシレートである、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
[請求項25]
前記対象がヒトである、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
[請求項26]
神経疾患又は神経障害の治療においてグルタミン酸作動薬との併用療法で使用するための、アピリモドを含む医薬組成物。
[請求項27]
アピリモドがアピリモドジメシレートである、請求項26に記載の医薬組成物。
[請求項28]
グルタミン酸作動薬が、グルタミン酸トランスポーター調節薬及びグルタミン酸受容体
アンタゴニストから選ばれる、請求項26又は27に記載の医薬組成物。
[請求項29]
グルタミン酸トランスポーター調節薬が興奮性アミノ酸再取込み阻害薬である、請求項28に記載の医薬組成物。
[請求項30]
グルタミン酸受容体アンタゴニストが、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニストである、請求項28に記載の医薬組成物。
[請求項31]
グルタミン酸受容体アンタゴニストが、アマンタジン、アトモキセチン、AZD6765、アグマチン、ガシクリジン、メマンチン、エリプロジル、デルセミンから選ばれる、請求項28に記載の医薬組成物。
[請求項32]
グルタミン酸作動薬が、リルゾール、トリグリルゾール、BHV-5000、及びラニセミンから選ばれる、請求項26又は27に記載の医薬組成物。
[請求項33]
アピリモドとグルタミン酸作動薬が同じ剤形に含有される、請求項26~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[請求項34]
神経疾患又は神経障害が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、注意欠陥多動性障害、自閉症、小脳性運動失調症、シャルコー・マリー・ツース病、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、フリードライヒ失調症、ハンチントン病、多発性硬化症、強迫性障害(OCD)、パーキンソン病、レット症候群、老人性舞踏病、脊髄性運動失調症、脊髄損傷、核上まひ、及び外傷性脳損傷から選ばれる、請求項26~33のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[請求項35]
神経疾患又は神経障害が認知症である、請求項34に記載の医薬組成物。
[請求項36]
認知症が、エイズ認知症コンプレックス(ADC)、アルツハイマー病(AD)に伴う認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老年性認知症、及び血管性認知症から選ばれる、請求項35に記載の医薬組成物。
[請求項37]
神経疾患又は神経障害が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項34に記載の医薬組成物。
[請求項38]
神経疾患又は神経障害がレット症候群である、請求項34に記載の医薬組成物。
[請求項39]
神経疾患又は神経障害が強迫性障害(OCD)である、請求項34に記載の医薬組成物。
図1