(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】酸化処理した毛髪の修復方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230925BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2020557939
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2019060684
(87)【国際公開番号】W WO2019214965
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ポール,プレム・クマール・チェヤラザガン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,シャーロット・ブレオニー・タンディ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-534369(JP,A)
【文献】特開2016-190806(JP,A)
【文献】特開平03-086812(JP,A)
【文献】特開平11-228339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
連続的な工程:
(i)水性処理組成物中に毛髪を浸漬する工程、
(ii)工程
(i)の毛髪をすすぐ工程、
を含み、
前記水性処理組成物が、組成物の総重量に対して、0.1~6重量%のN-アセチルアミノ酸を含み、
前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルチロシン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、酸化処理された毛髪の修復方法。
【請求項2】
工程(ii)に連続して、工程(ii)の毛髪を洗浄する工程(iii)を含み、
前記N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記すすいだ毛髪を乾燥させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
N-アセチルアミノ酸が遊離酸形態で使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記毛髪を15~40℃の前記水性処理組成物に浸漬する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記毛髪を前記水性処理組成物に3~45分間浸漬する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性処理組成物が水性連続相を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水性処理組成物が、コンディショニング剤を含む毛髪コンディショナーである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、酸化処理した毛髪を、N-アセチルアミノ酸を含む組成物で修復する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ブリーチ(bleaching)の目的は、酸化剤とメラニン色素との反応により、天然の髪の色をなくしたり、薄くしたりすることである。使用できる酸化剤の例は、過酸化水素、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩および過炭酸塩のカリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびにこれらの混合物である。
【0003】
また、酸化的染色処理の際には、ブリーチが使われる。酸化的な(または「恒久的な」)染色組成物は、毛髪中に拡散可能な低分子である「前駆体染料」を含む。これらの分子は主にジアミン、アミノフェノールおよびフェノールの3種類の芳香族化合物に属する。これらは毛幹に拡散するほど十分に小さく、過酸化水素のような酸化剤によって一旦活性化されると、さらに他の前駆体と反応して、より大きな着色複合体を形成する。
【0004】
毛髪の酸化処理は、光、シャンプーおよび発汗に比較的影響されない良好な結果を提供するため、消費者に非常に人気がある。しかし、この過程には欠点がないわけではない。長期間にわたって酸化処理を繰り返すと、髪の毛がダメージを受けたり弱くなったりして、破れやすくなったり、光沢が低下しやすくなったりする。
【0005】
国際公開第00/40217号は、美容および皮膚障害を改善するために使用するためのN-アセチルアミノ酸を含む組成物を広く開示し、美容および皮膚障害には、加齢に関連する皮膚爪および毛髪の変化および損傷、ならびに日光、放射線、大気汚染、風、寒さ、熱、湿気、化学物質、煙およびタバコの喫煙などの変化または外因性因子が含まれる。N-アセチル組成物の水溶液はシャンプー基剤と混合することができ、実施例は、4%のN-アセチル-L-アルギニンを含有するシャンプー組成物(毛髪、頭皮またはボディウォッシュ用)を開示する。
【0006】
本発明者らの共同出願であるPCT/EP2018/052826は、酸化的に処理された毛髪を洗浄することを必要とする第1段階、続いて、N-アセチルグリシンを含む組成物中に毛髪を浸し、その後、浸した毛髪を乾燥することを含む2つのさらなる段階を有する方法を開示する。その結果、毛髪の酸化処理に伴う損傷が軽減される。
【0007】
本発明者らの第2の共同出願であるPCT/EP2018/052825はまた、洗髪の後、少なくとも1重量%のN-アセチルリジンを含む組成物中に毛髪を浸漬し、次いで、浸漬された毛髪を乾燥することを含む方法を開示する。毛線維の強さが増強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第00/40217号
【文献】PCT/EP2018/052826
【文献】PCT/EP2018/052825
【0009】
発明の概要
本発明は、酸化的に処理された毛髪の修復方法を提供し、当該方法は、以下の連続的な工程:
(i)水性処理組成物に毛髪を浸漬する工程、
(ii)工程(i)の前記毛髪をすすぐ工程
を含み、
前記水性処理組成物が、組成物の総重量に基づいて、0.1~6重量%のN-アセチルアミノ酸を含み、
前記N-アセチルアミノ酸が、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルチロシン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0010】
本方法は、以下:
(i)水性処理組成物に毛髪を浸漬する工程、
(ii)工程(i)の前記毛髪をすすぐ工程、
(iii)工程(ii)前記毛髪を洗浄する工程;
のように、工程(ii)に連続して、洗浄工程をさらに含むことができ、
前記水性処理組成物が、組成物の総重量に基づいて、0.1~6重量%のN-アセチルアミノ酸を含み、
前記N-アセチルアミノ酸が、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
詳細な説明および好適な実施形態
本明細書で使用する分子量はすべて、特に指定のない限り、重量平均分子量である。
【0012】
水性処理組成物
本発明の方法に使用するための水性処理組成物は、好ましくは水性連続相を含む。
【0013】
「水性連続相」とは、その主成分(basis)として水を有する連続相を意味する。したがって、水性処理組成物は一般に、(組成物の総重量に基づく重量で)少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも80%の水を含むであろう。組成物は、好ましくは、(組成物の総重量に基づく重量で)99%以下、より好ましくは、98%以下の水を含む。低級アルキルアルコールや多価アルコールなど、他の有機溶媒が存在してもよい。低級アルキルアルコールの例としては、エタノールおよびイソプロパノールのようなC1~C6の一価アルコールが挙げられる。多価アルコールの例としては、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、およびプロパンジオールが挙げられる。上記の有機溶媒のいずれかの混合物も使用することができる。
【0014】
N-アセチルアミノ酸
本発明の方法において使用するための水性処理組成物は、N-アセチルアミノ酸を含む。
【0015】
N-アセチルアミノ酸は、相当するアミノ酸側鎖に従って分類することができ、i)N-アセチル疎水性非荷電脂肪族アミノ酸、ii)N-アセチル疎水性非荷電芳香族アミノ酸、iii)N-アセチル極性非荷電アミノ酸、iv)N-アセチル陽性荷電アミノ酸、v)N-アセチル陰性荷電アミノ酸およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0016】
疎水性非荷電脂肪族アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、バリンおよびそれらの混合物から選択される。
【0017】
洗浄工程が適用されない本発明の方法では、疎水性非荷電芳香族アミノ酸は、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびそれらの混合物から選択される。洗浄工程が適用される場合、疎水性非荷電芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびそれらの混合物から選択される。
【0018】
極性非荷電アミノ酸は、セリン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン、メチオニンおよびそれらの混合物から選択される。
【0019】
陽性荷電アミノ酸は、リジン、ヒスチジンおよびそれらの混合物から選択される。
【0020】
陰性荷電アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
したがって、洗浄工程が適用されない本発明の方法では、N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルチロシン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジンおよびそれらの混合物からなる群から、好ましくは、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルチロシン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジン及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0022】
洗浄工程を適用する本発明の方法では、N-アセチルアミノ酸は、N-アセチルグリシン、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジン及びこれらの混合物、好ましくは、N-アセチルアラニン、N-アセチルプロリン、N-アセチルロイシン、N-アセチルイソロイシン、N-アセチルバリン、N-アセチルフェニルアラニン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルセリン、N-アセチルグルタミン、N-アセチルスレオニン、N-アセチルアスパラギン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルリジン、N-アセチルヒスチジン及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0023】
N-アセチルアミノ酸は、遊離酸の形態で、またはナトリウム、カリウム、およびアンモニウム塩のような塩の形態で、または低級アルカノールアミン塩(モノ-、ジ-およびトリエタノールアミン塩ならびにモノ-、ジ-およびトリイソプロパノールアミン塩など)の形態で使用され得る。上記形態のいずれかの混合物が好適であってもよい。
【0024】
N-アセチルアミノ酸は、(組成物の全重量に基づく重量で)好ましくは0.1~6%、より好ましくは0.5~3%、最も好ましくは1~2.5%の範囲のレベルで使用される。濃度は部分的に、親アミノ酸の溶解度に影響されるので、それに応じて選択されるべきである。
【0025】
水性処理組成物は天然pHで使用される。
【0026】
水性処理組成物
好ましくは、水性処理組成物は、組成物の総重量で、少なくとも20重量%、より好ましくは80重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の水を含む。
【0027】
水性処理組成物は、洗浄プロセスの前、中または後に適用され得る。好ましくは、本発明の組成物は、毎日の洗浄およびケアまたはトリートメント計画(treatment regimen)の一部として毛髪に適用され得る。
【0028】
水性処理組成物は、リーブオンまたはリンスオフ組成物であってもよい。
【0029】
本発明で使用するための水性処理組成物をすすぐことは、典型的には、すすぐ前に1~2分間毛髪上に残しておく。
【0030】
本発明で使用するためのリーブオン水性処理組成物は、典型的には毛髪に適用され、毛髪上に10分以上残される。
【0031】
本発明の水性処理組成物は、シャンプー、コンディショナー、マスクおよびリーブオン製品から選択されることが望ましい。コンディショナー組成物は、コンディショニング剤を含む。
【0032】
本発明で使用するためのヘアマスクは、すすがれる前に、典型的には3~10分間、好ましくは3~5分間、より好ましくは4~5分間、毛髪上に残されるトリートメントである。
【0033】
コンディショナー基材
本発明の方法に使用するための水性処理組成物は、適切には、コンディショニングゲル相を含むことができ、これは一般に、界面活性剤二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤の中間相として特徴付けられ得る。このようなコンディショニングゲル相は、カチオン性界面活性剤、高融点脂肪アルコールおよび水性担体から形成され得る。典型的には、これらの成分を加熱して混合物を形成し、これを、せん断下で室温まで冷却する。混合物は冷却中に多数の相転移を起こし、通常、界面活性剤二重層からなるゲル(Lβ)界面活性剤中間相を生じる。
【0034】
コンディショニングゲル相の形成に有用な適当なカチオン性界面活性剤の例としては、以下の一般式に対応する第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤が挙げられる:
[N(R1)(R2)(R3)(R4)]+(X)-
【0035】
式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、
(a)1~22の炭素原子の脂肪族基、または
(b)22までの炭素原子を有する芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基
から選択され;
Xは、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、およびアルキル硫酸基から選択されるものなど、塩形成アニオンである。
【0036】
脂肪族基は、炭素原子および水素原子に加えて、エーテル結合、ならびにアミノ基のような他の基を含むことができる。長鎖脂肪族基、例えば約12炭素以上のものは、飽和または不飽和であり得る。
【0037】
かかる上記一般式の四級アンモニウムカチオン界面活性剤の具体例としては、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、獣脂トリメチルアンモニウムクロリド、ココトリメチルアンモニウムクロリド、ジパルミトイルエチルジメチルアンモニウムクロリド、PEG-2オレイルアンモニウムクロリドおよびこれらの塩が挙げられ、当該クロリドは、他のハロゲン化物(例えば、臭化物)、酢酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、硝酸塩、硫酸塩またはアルキル硫酸塩で置き換えられている。
【0038】
上記一般式のカチオン性界面活性剤の好ましいクラスにおいて、R1は、C16~C22飽和または不飽和、好ましくは、飽和アルキル鎖であり、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、CH3およびCH2CH2OH、好ましくはCH3から選択される。コンディショニングゲル相の形成に使用するこのような好ましい第四級アンモニウムカチオン界面活性剤の具体例は、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド(BTAC)およびそれらの混合物である。
【0039】
上記のカチオン性界面活性剤のいずれかの混合物も好適であってよい。
【0040】
カチオン性界面活性剤のレベルは、(組成物の全重量に基づく重量で)好適には0.1~10%、好ましくは0.2~5%、より好ましくは0.25~4%である。
【0041】
本発明の文脈における「高融点」とは、一般に25℃以上の融点を意味する。一般に、融点は25℃から90℃までの範囲であり、好ましくは40℃から70℃までの範囲であり、より好ましくは50℃から約65℃までの範囲である。
【0042】
高融点脂肪アルコールは、単一の化合物として、または少なくとも2つの高融点脂肪アルコールのブレンドまたは混合物として使用することができる。脂肪アルコールのブレンドまたは混合物を使用する場合、融点とは、ブレンドまたは混合物の融点を意味する。
【0043】
このタイプの好適な脂肪アルコールは、一般式R-OHを有し、式中、Rは脂肪族炭素鎖である。Rは、好ましくは8~30個の炭素原子、より好ましくは14~30個の炭素原子、最も好ましくは16~22個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭素鎖である。
【0044】
Rは、炭素原子および水素原子に加えて、エーテル結合、ならびにアミノ基のような他の基を含むことができる。
【0045】
最も好ましくは、脂肪アルコールは一般式CH3(CH2)nOHを有し、式中、nは7~29、好ましくは15~21の整数である。
【0046】
好適な脂肪アルコールの具体例は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、およびそれらの混合物である。セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0047】
上記の脂肪アルコールのいずれかの混合物も好適であり得る。
【0048】
脂肪アルコールのレベルは、(組成物の総重量に基づく重量で)好適には0.01~10%、好ましくは0.1~8%、より好ましくは0.2~7%、最も好ましくは0.3~6%である。
【0049】
カチオン性界面活性剤の脂肪アルコールに対する重量比は、好適には1:1~1:10、好ましくは1:1.5~1:8、最適には1:2~1:5である。
【0050】
任意成分
本発明の方法の工程(i)で使用するための水性処理組成物は、パフォーマンスおよび/または消費者の受容性を高めるために、他の任意成分を組み込むこともできる。好適な任意成分には、防腐剤、着色剤、キレート剤、酸化防止剤、芳香剤、抗菌剤、抗ふけ剤、カチオン性コンディショニングポリマー、スタイリング成分、サンスクリーン、タンパク質および加水分解タンパク質が含まれる。
【0051】
本発明の方法は、酸化処理した毛髪の修復方法である。
【0052】
工程(i)-浸漬工程
本発明の方法の工程(i)では、洗浄した毛髪を水性処理組成物に浸漬する。一般に、処理される毛髪を覆う水性処理組成物のあらゆる適用量が十分である。例えば、髪の一部分だけ、あるいは髪の先だけを処理する場合は、より少量を使用してもよい。水性処理組成物は、例えば、毛の根端から先端端まで作用することにより、均一に送達されることが望ましい。
【0053】
好ましくは、毛髪は、15~40℃の温度、より好ましくは20~30℃の温度で水性処理組成物中に浸漬される。
【0054】
好ましくは、毛髪は、1~60分、より好ましくは3~45分の範囲の期間、水性処理組成物中に浸漬される。
【0055】
工程(ii)-すすぎ工程
本発明の方法の工程(ii)では、乾燥毛髪を水中ですすぐ。毛髪は、水中に沈むか、または流水下に保持され、好ましくは、毛髪は流水下に保持される。すすぎ時に毛髪を揺り動かして(agitate)もよい。水は温かいことが望ましい。
【0056】
工程(iii)-後洗浄工程
本発明の一実施形態では、水性処理組成物のすすぎ後に毛髪を洗浄する。毛髪は、クレンジング界面活性剤を含む組成物、好ましくはシャンプーで洗浄される。
【0057】
任意の乾燥工程
毛髪は、空気への曝露によって自然に、加熱した毛髪乾燥器具の使用、吸水性物品での擦り合わせ、またはこれらの方法のいずれかの組合せによって乾燥させることができる。好ましくは、毛髪は、毛髪から水性処理組成物をすすいだ後に乾燥させる。
【0058】
毛髪
酸化処理した毛髪に、本発明の方法を適用する。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「酸化処理した毛髪」は、任意の処理に供された毛髪を意味し、当該処理は、毛髪を少なくとも1つの酸化組成物と接触させる少なくとも1つの工程を含む。ヒトの毛の酸化処理の例は、ブリーチ、染色またはパーマである。
【0060】
本明細書で使用される用語「酸化組成物」は、毛髪上での使用に適した少なくとも1つの酸化剤を含む組成物を意味し、例えば、過酸化水素、過ホウ酸、過炭酸、過硫酸および過炭酸のカリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびにこれらの混合物である。かかる組成物の例は、酸化的染料組成物およびブリーチ組成物である。
【0061】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明される。
【0062】
例
実施例では、全ての成分は、全製剤の重量パーセントで、活性成分のレベルで表される。比較例(本発明によるものではない)は文字で示され、本発明による例は数字で示される。
【0063】
ダメージを受けた毛髪は、バージンヘアに比べて変性温度が低下した内部タンパク質を有する。変性温度の低下は内部毛皮質タンパク質の分解に起因する。
【0064】
毛髪のダメージはさまざまな方法で測定することができる。本発明は、毛皮質タンパク質の構造的完全性に焦点を当て、これは示差走査熱量測定によって決定することができる。
【0065】
毛髪のブリーチ方法
9%過酸化クリーム、30‘vol’(Excel GS Ltd、UK)(120g過酸化クリームと混合した粉末60g)と混合したPlatine Precision White Compact Lightening Powder(L’Oreal Professionnel Paris、Paris、France)によって、毛髪を30分間漂白した。その後、毛髪を水で2分間すすいだ。この手順を、同一毛髪上で繰り返し、2回の脱色した毛髪を生成した。
【0066】
以下の実施例において、組成物A~Cは比較例であり、組成物1~6は本発明に従う。組成物は、種々のN-アセチルアミノ酸の1%水溶液であり、N-アセチルアミノ酸をかき混ぜながら水に加えて調製した。
【0067】
実施例1:N-アセチルアラニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチル-システイン、N-アセチルグルタミン酸、N-アセチルグルタミン、N-アセチルプロリン、N-アセチルセリン、N-アセチルチロシン、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルヒスチジンおよびN-アセチルロイシンによる毛髪の処理
以下の実験では、対照1および2は2回ブリーチした2つの異なるバッチから得たものである。これらは使用前に水で透析した。
【0068】
実験1-工程(i)-浸漬
種々のN-アセチルアミノ酸の1%水溶液に、2回ブリーチした暗褐色ヨーロッパ毛を30分間浸漬した。その後、溶液から毛髪を除去した。次に、少数の繊維からのクリッピングを採取し、変性温度(Td)を、DSCを用いて測定した。結果を以下の表1に示す。
【0069】
対照1に対して、N-アセチルアラニン、N-アセチルアルギニン、N-アセチル-システイン、N-アセチルグルタミン酸、N-アセチルグルタミン、N-アセチルプロリン、N-アセチルセリン及びN-アセチルチロシンを試験した。
【0070】
対照2に対して、N-アセチルトリプトファン、N-アセチルメチオニン、N-アセチルチスチジンおよびN-アセチルロイシンを試験した。
【0071】
【0072】
表1は、N-アセチルアルギニンおよびN-アセチルシステイン以外のN-アセチルアミノ酸で処理された毛髪が、対照組成物で処理された毛髪よりもかなり高いTdを有することを示す。Tdの増加は、脱色した毛の内部タンパク質に対する修復の結果としての損傷の減少と一致する。これらの結果を、以下の実験における本発明の方法のベースラインとして用いた。
【0073】
実験2-工程(ii)-すすぎ
後続のすすぎ工程の効果を測定した。前回の実験で統計的に有意であった増加を示したN-アセチルアミノ酸のみを調べた;これらを組成物1~6と命名した。
【0074】
実験1からのスイッチを流水で30秒間洗浄した。少数の繊維からのクリッピングを用いて、DSCを用いて変性温度Tdを測定し、これらを以下に示す。
【0075】
【0076】
Tdの増加は統計的に有意である(>99%)。
【0077】
驚くべきことに、すすぎ後でさえ、本発明に従ってN-アセチルアミノ酸で処理した毛髪は、有意なTd増加を保持し、これは、処理がすすぎに対して耐久性であることを示す。
【0078】
実験3-工程(iii)-洗浄
実験2ですすいだスイッチを、ベースウォッシュ(14%SLES溶液)で洗浄し、DSCを実施した。
【0079】
以下の方法を用いて洗浄用シャンプーで毛髪を洗浄した。
【0080】
毛髪繊維を流水下で30秒間保持し、毛髪1g当たりシャンプー0.1mlの用量でシャンプーを塗布し、毛髪に30秒間擦り込んだ。流水下で30秒間保持し、シャンプーステージを繰り返して余分な泡を除去した。毛髪を、1分間流水下で洗浄した。
【0081】
結果を下記の表3に示した。
【0082】
【0083】
増加は全て、98%を超える有意な増加である;
【0084】
上の表は、N-アセチルチロシン以外のN-アセチルアミノ酸で処理した毛髪は耐久性のあるTd増加を有し、これはさらに洗浄した後でも持続することを示している。
【0085】
このように、多くのN-アセチルアミノ酸は、酸化的に損傷した毛髪に対し、すすぎおよび洗浄に耐え得る、様々な程度の長期持続性ダメージケアの利益を示す可能性を有する。