(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ILT7結合分子及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230925BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230925BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20230925BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20230925BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P43/00 111
C07K16/28
A61P37/02
A61P37/04
(21)【出願番号】P 2021186637
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2018567013の分割
【原出願日】2017-03-09
【審査請求日】2021-12-15
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518320041
【氏名又は名称】ヴィエラ バイオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウスデン,キャサリン アン
(72)【発明者】
【氏名】ダウスウェイト,ジュリー アン
(72)【発明者】
【氏名】ダムシュローダー,メリッサ マリー
(72)【発明者】
【氏名】サンフアン,ミゲル エンジェル
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/072866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
C07K 16/00-16/46
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患の治療又は予防のための医薬の製造における抗免疫グロブリン様転写物7(ILT7)抗体の使用であって、疾患の治療又は予防は、有効量のILT7抗体をそれを必要とする対象に投与することを含み、ILT7抗体は、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、HCDR1、HCDR2、
HCDR3
、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3はそれぞれ配列番号203、204、
205
、208、209、及び210のアミノ酸配列
を含み、投与することは、投与後のそれを必要とする対象においてインターフェロン-アルファ又は形質細胞様樹状細胞(pDC)のレベルの低下を検出することによって決定される場合に疾患の治療又は予防に有効である、前記使用。
【請求項2】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ配列番号
203、204、205、208、209、及び210のアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ILT7抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VH及びVL領域が、それぞれ配列番号202及び配列番号207と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
VH及びVL領域が、それぞれ配列番号202及び配列番号207のアミノ酸配列からなる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ILT7抗体が、IgA定常ドメイン、IgE定常ドメイン、IgG1定常ドメイン、IgG2定常ドメイン、IgG3定常ドメイン、IgG4定常ドメイン、及びIgM定常ドメインからなる群より選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
ILT7抗体が、IgG1定常ドメインを含む重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ILT7抗体が、Igカッパ定常ドメイン及びIgラムダ定常ドメインからなる群より選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
ILT7抗体が、Igラムダ定常ドメインを含む軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ILT7抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
ILT7抗体が、マウス、ヒト、キメラ、ヒト化、又は表面再構成抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
疾患の治療又は予防が、それを必要とする対象又はそれから得られた試料を、核磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、X-放射線画像法、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー若しくは蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、組織学、肉眼的所見、及び血液化学からなる群より選択される試験によって評価することをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記pDCのレベルの低下が、投与後の少なくとも5日間維持される、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
前記インターフェロン-アルファのレベルの低下が、投与後の少なくとも5日間維持される、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
それを必要とする対象がヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
それを必要とする対象が非ヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
抗体が低フコース化されている、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
投与することが注入によるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
投与することが繰り返される、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
繰り返される投与することが、同一用量の繰り返し投与を含む、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
対象が、投与後の少なくとも1か月間完全奏功を達成する、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子提出した配列表に関する言及
本出願と共に出願され、ASCIIテキストファイル(名称2943_083STR0_SeqListing_ST25.txt、サイズ:143,686バイト、作成日:2016年3月3日)で電子提出した配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、ILT7結合分子、例えば、抗ILT7抗体及びその抗原結合断片、バリアント、又は誘導体、抗体及び断片を使用する方法、並びに自己免疫疾患及びILT7発現細胞に関連する状態を処置又は防止する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
形質細胞様樹状細胞(pDC)は、末梢血単核球細胞(PBMC)のわずか約0.1~0.5%を構成する、末梢血及び二次リンパ器官における樹状細胞(DC)の別個の集団である。しかし、これらの細胞は、I型インターフェロン(IFN)の主要な供給源であることから、免疫系の特に重要な調節因子である。I型IFNは、NK細胞、B細胞、T細胞、及び骨髄樹状細胞の機能を促進する。これらのIFNは、最初の免疫応答において重要であり、抗ウイルス及び抗腫瘍活性を有する。しかし、pDC及びI型IFNはまた、全身性紅斑性狼瘡、慢性リウマチ疾患、及び乾癬などの自己免疫疾患の発症において役割を有すると考えられている。したがって、IFN放出に関係する分子経路を調節する方法を理解することは、免疫応答の制御並びに疾患の処置及び防止にとって有用である。
【0004】
pDCは、pDCの表面上に発現されるToll様受容体(TLR)のTLR7及びTLR9によって感知される核酸に応答してIFNを放出する。TLRによる応答は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する受容体によって調節される。免疫グロブリン様転写物(ILT7)は、LIRA4、LILRA4、又はCD85gとも呼ばれ、そのような1つの受容体である。
【0005】
ILT7は、免疫グロブリン様転写物(ILT)又は白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)遺伝子ファミリーのメンバーである。ILT7は、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)の表面上に選択的に発現されるが、骨髄樹状細胞又は他の末梢血白血球には存在しない。Cao et al., J. Exp. Medicine 6:1399-1405 (2006)。ILT7は、4つの免疫グロブリン様細胞外ドメインと、膜貫通ドメインとを含有する。細胞外部分は、ILT7リガンドである骨髄間質細胞抗原2(BST2)との相互作用にとって重要であり、ILT7の膜貫通ドメインは、FcεRIγと複合体を形成することを可能にする正電荷を有する残基を含有する。BST2とILT7の相互作用は、潜在的にネガティブフィードバックの機構として、pDCの生天性免疫機能を負に調節すると仮定されている。さらに、in vitroでのILT7と抗体との架橋は、pDCによるIFN-アルファ及びTNF-アルファの産生を負に調節することが示されている。したがって、ILT7を中和するため、並びにpDC活性及びIFN放出を調節するために有用である抗体及び他のILT7結合分子は、例えば、自己免疫疾患などの疾患を処置及び防止するために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書において、ILT7結合分子、例えば抗ILT7抗体及びその抗原結合断片を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号202の重鎖可変領域(VH)及び配列番号207の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と同じILT7エピトープに結合することができるILT7結合タンパク質である。
【0008】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号202のVH及び配列番号207のVLを含む抗体のILT7に対する結合を競合的に阻害するILT7結合タンパク質である。
【0009】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号203、204、205、208、209、及び210の配列をそれぞれ含む、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むILT7結合タンパク質である。
【0010】
一例において、ILT7結合タンパク質は、配列番号202と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVH及び/又は配列番号207と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVLを含む。
【0011】
一例において、ILT7結合タンパク質は、配列番号202を含むVH及び配列番号207を含むVLを含む。
【0012】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号202を含むVHを含むILT7結合タンパク質である。
【0013】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号207を含むVHを含むILT7結合タンパク質である。
【0014】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、それぞれ配列番号12及び配列番号17、それぞれ配列番号22及び配列番号27、それぞれ配列番号32及び配列番号37、それぞれ配列番号42及び配列番号47、それぞれ配列番号52及び配列番号57、それぞれ配列番号62及び配列番号67、それぞれ配列番号72及び配列番号77、それぞれ配列番号82及び配列番号87、それぞれ配列番号92及び配列番号97、それぞれ配列番号102及び配列番号107、それぞれ配列番号112及び配列番号117、それぞれ配列番号122及び配列番号127、それぞれ配列番号132及び配列番号137、それぞれ配列番号142及び配列番号147、それぞれ配列番号152及び配列番号157、それぞれ配列番号162及び配列番号167、それぞれ配列番号172及び配列番号177、それぞれ配列番号182及び配列番号187、それぞれ配列番号192及び配列番号197、それぞれ配列番号212及び配列番号217、それぞれ配列番号222及び配列番号227、それぞれ配列番号232及び配列番号237、並びにそれぞれ配列番号242及び配列番号247からなる群から選択されるVH及びVLを含む抗体と同じILT7エピトープに結合することができるILT7結合タンパク質である。
【0015】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、それぞれ配列番号12及び配列番号17、それぞれ配列番号22及び配列番号27、それぞれ配列番号32及び配列番号37、それぞれ配列番号42及び配列番号47、それぞれ配列番号52及び配列番号57、それぞれ配列番号62及び配列番号67、それぞれ配列番号72及び配列番号77、それぞれ配列番号82及び配列番号87、それぞれ配列番号92及び配列番号97、それぞれ配列番号102及び配列番号107、それぞれ配列番号112及び配列番号117、それぞれ配列番号122及び配列番号127、それぞれ配列番号132及び配列番号137、それぞれ配列番号142及び配列番号147、それぞれ配列番号152及び配列番号157、それぞれ配列番号162及び配列番号167、それぞれ配列番号172及び配列番号177、それぞれ配列番号182及び配列番号187、それぞれ配列番号192及び配列番号197、それぞれ配列番号212及び配列番号217、それぞれ配列番号222及び配列番号227、それぞれ配列番号232及び配列番号237、並びにそれぞれ配列番号242及び配列番号247からなる群から選択されるVH及びVLを含む抗体のILT7に対する結合を競合的に阻害するILT7結合タンパク質である。
【0016】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、それぞれ配列番号13、14、15、18、19、及び20、それぞれ配列番号23、24、25、28、29、及び30、それぞれ配列番号33、34、35、38、39、及び40、それぞれ配列番号103、104、105、108、109、及び110、それぞれ配列番号213、214、215、218、219、及び220、それぞれ配列番号223、224、225、228、229、及び230、それぞれ配列番号233、234、235、238、239、及び240、並びにそれぞれ配列番号243、244、245、248、249、及び250からなる群から選択されるCDR: HCDR1、HDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むILT7結合タンパク質である。
【0017】
一例において、ILT7結合タンパク質は、それぞれ配列番号12及び配列番号17、それぞれ配列番号22及び配列番号27、それぞれ配列番号32及び配列番号37、それぞれ配列番号42及び配列番号47、それぞれ配列番号52及び配列番号57、それぞれ配列番号62及び配列番号67、それぞれ配列番号72及び配列番号77、それぞれ配列番号82及び配列番号87、それぞれ配列番号92及び配列番号97、それぞれ配列番号102及び配列番号107、それぞれ配列番号112及び配列番号117、それぞれ配列番号122及び配列番号127、それぞれ配列番号132及び配列番号137、それぞれ配列番号142及び配列番号147、それぞれ配列番号152及び配列番号157、それぞれ配列番号162及び配列番号167、それぞれ配列番号172及び配列番号177、それぞれ配列番号182及び配列番号187、それぞれ配列番号192及び配列番号197、それぞれ配列番号212及び配列番号217、それぞれ配列番号222及び配列番号227、それぞれ配列番号232及び配列番号237、又はそれぞれ配列番号242及び配列番号247と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVH及びVLを含む。
【0018】
一例において、VH及びVLは、それぞれ配列番号12及び配列番号17、それぞれ配列番号22及び配列番号27、それぞれ配列番号32及び配列番号37、それぞれ配列番号42及び配列番号47、それぞれ配列番号52及び配列番号57、それぞれ配列番号62及び配列番号67、それぞれ配列番号72及び配列番号77、それぞれ配列番号82及び配列番号87、それぞれ配列番号92及び配列番号97、それぞれ配列番号102及び配列番号107、それぞれ配列番号112及び配列番号117、それぞれ配列番号122及び配列番号127、それぞれ配列番号132及び配列番号137、それぞれ配列番号142及び配列番号147、それぞれ配列番号152及び配列番号157、それぞれ配列番号162及び配列番号167、それぞれ配列番号172及び配列番号177、それぞれ配列番号182及び配列番号187、それぞれ配列番号192及び配列番号197、それぞれ配列番号212及び配列番号217、それぞれ配列番号222及び配列番号227、それぞれ配列番号232及び配列番号237、又はそれぞれ配列番号242及び配列番号247を含む。
【0019】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、212、222、232、又は242を含むVHを含む。
【0020】
一例において、単離されたILT7結合タンパク質は、配列番号17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、217、227、237、又は247を含むVLを含む。
【0021】
一例において、ILT7結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含む。一例において、抗体又はその抗原結合断片は、低フコース化されている。
【0022】
一例において、ILT7結合タンパク質は、ILT7のIg1領域に結合する。一例において、ILT7結合タンパク質は、ILT7のIg2領域に結合する。
【0023】
一例において、ILT7結合タンパク質は、ヒト及びカニクイザルILT7に結合する。
【0024】
一例において、ILT7結合タンパク質は、末梢血単核球細胞(PBMC)からのインターフェロン(IFN)アルファ放出を抑制する。一例において、ILT7結合タンパク質は、PBMCにおける形質細胞様樹状細胞(pDC)に対してADCC活性を有する。
【0025】
一例において、ILT7結合タンパク質は、マウス、ヒト、キメラ、ヒト化、又は表面再構成抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0026】
一例において、ILT7結合タンパク質は、抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、一本鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgG△CH2、ミニボディ、F(ab')3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む。
【0027】
一例において、ILT7結合タンパク質は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0028】
一例において、ILT7結合タンパク質は、(a)IgA定常ドメイン、(b)IgD定常ドメイン、(c)IgE定常ドメイン、(d)IgG1定常ドメイン、(e)IgG2定常ドメイン、(f)IgG3定常ドメイン、(g)IgG4定常ドメイン、及び(h)IgM定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0029】
一例において、ILT7結合タンパク質は、(a)Igカッパ定常ドメイン、及び(b)Igラムダ定常ドメインからなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0030】
一例において、ILT7結合タンパク質は、ヒトIgG1定常ドメイン及びヒトラムダ定常ドメインを含む。
【0031】
一例において、本明細書において、ILT7結合分子を産生する宿主細胞が提供される。
【0032】
一例において、本明細書において、VHをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであって、VHが、配列番号202、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、212、222、232、又は242のVHと少なくとも85%、90%、95%同一であるか又は同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドが提供される。一例において、ポリヌクレオチドは、配列番号201、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、211、221、231、又は241と少なくとも85%、90%、95%同一であるか又は同一である配列を含む。
【0033】
一例において、本明細書において、VLをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであって、VLが、207、17、27、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、217、227、237、又は247のVLと少なくとも85%、90%、95%同一であるか又は同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドが提供される。一例において、ポリヌクレオチドは、配列番号206、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、216、226、236、又は246と少なくとも85%、90%、95%同一であるか又は同一である配列を含む。
【0034】
一例において、核酸は、制御配列に作動可能に連結されている。一例において、核酸によってコードされるVH又はVLを含む抗体又はその抗原結合断片は、ILT7に特異的に結合することができる。
【0035】
一例において、ポリヌクレオチドは、本明細書に提供されるILT7結合分子をコードする。
【0036】
一例において、本明細書において、ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0037】
一例において、本明細書において、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが提供される。
【0038】
一例において、本明細書において、本明細書に提供されるポリヌクレオチド(例えば、VHをコードする核酸を含むポリヌクレオチド及びVLをコードする核酸を含むポリヌクレオチド)によって形質転換された宿主細胞が提供される。
【0039】
一例において、本明細書において、本明細書に提供されるポリヌクレオチド(例えば、VHをコードする核酸を含むポリヌクレオチド及びVLをコードする核酸を含むポリヌクレオチド)、本明細書に提供されるベクター、又は本明細書に提供されるポリペプチド、を含む宿主細胞が提供される。一例において、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。一例において、宿主細胞は、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一例において、宿主細胞は、酵素α-1,6-フコシルトランスフェラーゼを欠如する。
【0040】
一例において、本明細書において、抗ILT7結合分子を産生する方法であって、本明細書に提供される宿主細胞を培養すること、及び結合分子を回収することを含む方法が提供される。一例において、本明細書において、この方法によって産生された抗ILT7結合分子が提供される。
【0041】
一例において、本明細書において、試料中のILT7発現を検出する方法であって、(a)試料に、本明細書に提供されるILT7結合分子を接触させること、及び(b)試料中の結合分子の結合を検出することを含む方法が提供される。
【0042】
一例において、本明細書において、形質細胞様樹状細胞を検出する方法であって、細胞を含有する試料に(a)本明細書に提供されるILT7結合分子を接触させること、及び(b)試料中の結合分子の結合を検出することを含む方法が提供される。
【0043】
一例において、本明細書において、(a)本明細書に提供されるILT7結合分子、本明細書に提供されるポリヌクレオチド、本明細書に提供されるベクター、本明細書に提供されるポリペプチド、又は本明細書に提供される宿主細胞、及び(b)担体を含む、医薬組成物が提供される。
【0044】
一例において、本明細書において、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を減少させる方法であって、形質細胞様樹状細胞に、本明細書に提供されるILT7結合分子、本明細書に提供されるポリヌクレオチド、本明細書に提供されるベクター、本明細書に提供されるポリペプチド、本明細書に提供される宿主細胞、又は本明細書に提供される医薬組成物を接触させることを含む方法が提供される。
【0045】
一例において、本明細書において、自己免疫疾患を有するヒト対象を処置(治療)する方法であって、本明細書に提供されるILT7結合分子、本明細書に提供されるポリヌクレオチド、本明細書に提供されるベクター、本明細書に提供されるポリペプチド、本明細書に提供される宿主細胞、又は本明細書に提供される医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0046】
一例において、本明細書において、ヒト対象における自己免疫疾患を防止(予防)する方法であって、本明細書に提供されるILT7結合分子、本明細書に提供されるポリヌクレオチド、本明細書に提供されるベクター、本明細書に提供されるポリペプチド、本明細書に提供される宿主細胞、又は本明細書に提供される医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。一例において、自己免疫疾患は、全身性紅斑性狼瘡である。一例において、自己免疫疾患は、慢性リウマチである。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
配列番号202の重鎖可変領域(VH)及び配列番号207の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と同じILT7エピトープに結合することができる、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目2]
配列番号202のVH及び配列番号207のVLを含む抗体のILT7に対する結合を競合的に阻害する、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目3]
配列番号203、204、205、208、209、及び210の配列をそれぞれ含む、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目4]
配列番号202と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるVH及び/又は配列番号207と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVLを含む、項目1~3のいずれか1項記載の単離されたILT7結合タンパク質。
[項目5]
配列番号202を含むVH及び配列番号207を含むVLを含む、項目4記載の単離されたILT7結合タンパク質。
[項目6]
配列番号202を含むVHを含む、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目7]
配列番号207を含むVLを含む、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目8]
それぞれ配列番号12及び配列番号17、
それぞれ配列番号22及び配列番号27、
それぞれ配列番号32及び配列番号37、
それぞれ配列番号42及び配列番号47、
それぞれ配列番号52及び配列番号57、
それぞれ配列番号62及び配列番号67、
それぞれ配列番号72及び配列番号77、
それぞれ配列番号82及び配列番号87、
それぞれ配列番号92及び配列番号97、
それぞれ配列番号102及び配列番号107、
それぞれ配列番号112及び配列番号117、
それぞれ配列番号122及び配列番号127、
それぞれ配列番号132及び配列番号137、
それぞれ配列番号142及び配列番号147、
それぞれ配列番号152及び配列番号157、
それぞれ配列番号162及び配列番号167、
それぞれ配列番号172及び配列番号177、
それぞれ配列番号182及び配列番号187、
それぞれ配列番号192及び配列番号197、
それぞれ配列番号212及び配列番号217、
それぞれ配列番号222及び配列番号227、
それぞれ配列番号232及び配列番号237、並びに
それぞれ配列番号242及び配列番号247
から成る群より選択されるVH及びVLを含む抗体と同じILT7エピトープに結合することができる、単離されたILT7結合タンパク質。
[項目9]
それぞれ配列番号12及び配列番号17、
それぞれ配列番号22及び配列番号27、
それぞれ配列番号32及び配列番号37、
それぞれ配列番号42及び配列番号47、
それぞれ配列番号52及び配列番号57、
それぞれ配列番号62及び配列番号67、
それぞれ配列番号72及び配列番号77、
それぞれ配列番号82及び配列番号87、
それぞれ配列番号92及び配列番号97、
それぞれ配列番号102及び配列番号107、
それぞれ配列番号112及び配列番号117、
それぞれ配列番号122及び配列番号127、
それぞれ配列番号132及び配列番号137、
それぞれ配列番号142及び配列番号147、
それぞれ配列番号152及び配列番号157、
それぞれ配列番号162及び配列番号167、
それぞれ配列番号172及び配列番号177、
それぞれ配列番号182及び配列番号187、
それぞれ配列番号192及び配列番号197、
それぞれ配列番号212及び配列番号217、
それぞれ配列番号222及び配列番号227、
それぞれ配列番号232及び配列番号237、並びに
それぞれ配列番号242及び配列番号247
から成る群より選択されるVH及びVLを含む抗体のILT7に対する結合を競合的に阻害する、単離されたILT7結合分子。
[項目10]
それぞれ配列番号13、14、15、18、19、及び20、
それぞれ配列番号23、24、25、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、38、39、及び40、
それぞれ配列番号103、104、105、108、109、及び110、
それぞれ配列番号213、214、215、218、219、及び220、
それぞれ配列番号223、224、225、228、229、及び230、
それぞれ配列番号233、234、235、238、239、及び240、並びに
それぞれ配列番号243、244、245、248、249、及び250
から成る群より選択される、CDR: HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたILT7結合分子。
[項目11]
それぞれ配列番号12及び配列番号17、
それぞれ配列番号22及び配列番号27、
それぞれ配列番号32及び配列番号37、
それぞれ配列番号42及び配列番号47、
それぞれ配列番号52及び配列番号57、
それぞれ配列番号62及び配列番号67、
それぞれ配列番号72及び配列番号77、
それぞれ配列番号82及び配列番号87、
それぞれ配列番号92及び配列番号97、
それぞれ配列番号102及び配列番号107、
それぞれ配列番号112及び配列番号117、
それぞれ配列番号122及び配列番号127、
それぞれ配列番号132及び配列番号137、
それぞれ配列番号142及び配列番号147、
それぞれ配列番号152及び配列番号157、
それぞれ配列番号162及び配列番号167、
それぞれ配列番号172及び配列番号177、
それぞれ配列番号182及び配列番号187、
それぞれ配列番号192及び配列番号197、
それぞれ配列番号212及び配列番号217、
それぞれ配列番号222及び配列番号227、
それぞれ配列番号232及び配列番号237、又は
それぞれ配列番号242及び配列番号247
と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるVH及びVLを含む、項目8~10のいずれか1項記載の単離されたILT7結合タンパク質。
[項目12]
前記VH及びVLが、
それぞれ配列番号12及び配列番号17、
それぞれ配列番号22及び配列番号27、
それぞれ配列番号32及び配列番号37、
それぞれ配列番号42及び配列番号47、
それぞれ配列番号52及び配列番号57、
それぞれ配列番号62及び配列番号67、
それぞれ配列番号72及び配列番号77、
それぞれ配列番号82及び配列番号87、
それぞれ配列番号92及び配列番号97、
それぞれ配列番号102及び配列番号107、
それぞれ配列番号112及び配列番号117、
それぞれ配列番号122及び配列番号127、
それぞれ配列番号132及び配列番号137、
それぞれ配列番号142及び配列番号147、
それぞれ配列番号152及び配列番号157、
それぞれ配列番号162及び配列番号167、
それぞれ配列番号172及び配列番号177、
それぞれ配列番号182及び配列番号187、
それぞれ配列番号192及び配列番号197、
それぞれ配列番号212及び配列番号217、
それぞれ配列番号222及び配列番号227、
それぞれ配列番号232及び配列番号237、又は
それぞれ配列番号242及び配列番号247
を含む、項目11記載のILT7結合分子。
[項目13]
配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、212、222、232、又は242を含むVHを含む、単離されたILT7結合分子。[項目14]
配列番号17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、217、227、237、又は247を含むVLを含む、単離されたILT7結合分子。[項目15]
抗体又はその抗原結合断片を含む、項目1~14のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目16]
抗体又はその抗原結合断片が低フコース化されている、項目15記載の単離されたILT7結合分子。
[項目17]
ILT7のIg1領域に結合する、項目8~16のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目18]
ILT7のIg2領域に結合する、項目8~16のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目19]
ヒト及びカニクイザルILT7に結合する、項目1~18のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目20]
末梢血単核球細胞(PBMC)からのインターフェロン(IFN)アルファ放出を抑制する、項目1~19のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目21]
PBMCにおける形質細胞様樹状細胞(pDC)に対するADCC活性を有する、項目1~20のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目22]
マウス、ヒト、キメラ、ヒト化、又は表面再形成(resurfaced)抗体又はその抗原結合断片を含む、項目1~21のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目23]
抗体、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、一本鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab')3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む、項目1~22のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目24]
モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、項目1~23のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目25]
(a)IgA定常ドメイン、
(b)IgD定常ドメイン、
(c)IgE定常ドメイン、
(d)IgG1定常ドメイン、
(e)IgG2定常ドメイン、
(f)IgG3定常ドメイン、
(g)IgG4定常ドメイン、及び
(h)IgM定常ドメイン
から成る群より選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、項目1~24のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目26]
(a)Igカッパ定常ドメイン、及び
(b)Igラムダ定常ドメイン
から成る群より選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、項目1~25のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目27]
ヒトIgG1定常ドメイン及びヒトラムダ定常ドメインを含む、項目1~26のいずれか1項記載の単離されたILT7結合分子。
[項目28]
項目1~27のいずれか1項記載の結合分子を産生する単離された宿主細胞。
[項目29]
VHをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであって、VHが、配列番号202、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、212、222、232、又は242のVHと少なくとも85%、90%、95%同一であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含む、前記単離されたポリヌクレオチド。
[項目30]
配列番号201、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、211、221、231、又は241と少なくとも85%、90%、95%同一であるか、又は同一である配列を含む、項目29記載のポリヌクレオチド。
[項目31]
VLをコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドであって、VLが、配列番号207、17、27、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、217、227、237、又は247のVLと少なくとも85%、90%、95%同一であるか、又は同一であるアミノ酸配列を含む、前記単離されたポリヌクレオチド。
[項目32]
配列番号206、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、216、226、236、又は246と少なくとも85%、90%、95%同一であるか、又は同一である配列を含む、項目31記載のポリヌクレオチド。
[項目33]
核酸が制御配列に作動可能に連結されている、項目29~32のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[項目34]
前記VH又は前記VLを含む抗体又はその抗原結合断片が、ILT7に特異的に結合することができる、項目29~33のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[項目35]
項目1~27のいずれか1項記載のILT7結合分子をコードするポリヌクレオチド。
[項目36]
項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[項目37]
項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
[項目38]
項目29又は30記載のポリヌクレオチド及び項目31又は32記載のポリヌクレオチドによって形質転換された宿主細胞。
[項目39]
項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項目36記載のベクター、又は項目37記載のポリペプチドを含む宿主細胞。
[項目40]
哺乳動物宿主細胞である、項目38又は39記載の宿主細胞。
[項目41]
NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項目40記載の哺乳動物宿主細胞。
[項目42]
酵素α-1,6-フコシルトランスフェラーゼを欠如する、項目38~41のいずれか1項記載の宿主細胞。
[項目43]
抗ILT7結合分子を産生する方法であって、項目38~42のいずれか1項記載の宿主細胞を培養すること、及び前記結合分子を回収することを含む、前記方法。
[項目44]
項目43記載の方法によって産生される抗ILT7結合分子。
[項目45]
試料中のILT7発現を検出する方法であって、(a)前記試料に、項目1~27又は44のいずれか1項記載のILT7結合分子と接触させること、及び(b)前記試料中の前記結合分子の結合を検出することを含む、前記方法。
[項目46]
形質細胞様樹状細胞を検出する方法であって、(a)細胞を含有する試料に、項目1~27又は44のいずれか1項記載のILT7結合分子を接触させること、及び(b)前記試料中の前記結合分子の結合を検出することを含む、前記方法。
[項目47]
(a)項目1~27若しくは44のいずれか1項記載のILT7結合分子、項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項目36記載のベクター、項目37記載のポリペプチド、又は項目28若しくは38~42のいずれか1項記載の宿主細胞、及び(b)担体を含む、医薬組成物。
[項目48]
形質細胞様樹状細胞からのIFN-アルファ放出を減少させる方法であって、形質細胞様樹状細胞に、項目1~27若しくは44のいずれか1項記載の結合分子、項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項目36記載のベクター、項目37記載のポリペプチド、項目28若しくは38~42のいずれか1項記載の宿主細胞、又は項目47記載の組成物を接触させることを含む、前記方法。
[項目49]
自己免疫疾患を有するヒト対象を処置する方法であって、項目1~27若しくは44のいずれか1項記載の結合分子、項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項目36記載のベクター、項目37記載のポリペプチド、項目28若しくは38~42のいずれか1項記載の宿主細胞、又は項目47記載の組成物の有効量を対象に投与することを含む、前記方法。
[項目50]
ヒト対象における自己免疫疾患を防止する方法であって、項目1~27若しくは44のいずれか1項記載の結合分子、項目29~35のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項目36記載のベクター、項目37記載のポリペプチド、項目28若しくは38~42のいずれか1項記載の宿主細胞、又は項目47記載の組成物の有効量を対象に投与することを含む、前記方法。
[項目51]
前記自己免疫疾患が全身性紅斑性狼瘡である、項目49又は50記載の方法。
[項目52]
前記自己免疫疾患が慢性リウマチである、項目49又は50記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】SBI28(#28)、10D10、及び7C7抗体の可変重鎖(1A)及び可変軽鎖(1B)配列アライメントを示す図である。影をつけた部分はCDR配列を示す。四角は、7C7を生成するために10D10に導入された突然変異を表す。
【
図2】フローサイトメトリーによって決定した、ヒトILT7を発現するCT-550細胞に対するILT7抗体及び陰性対照抗体(R437)の結合を示す図である。SBI33は、米国特許出願公開第2009/0280128号に提供される抗ILT7抗体ILT7#33を指す。
【
図3】フローサイトメトリーによって決定した、カニクイザルILT7を発現するCT-125細胞に対するILT7抗体及び陰性対照抗体(R437)の結合を示す図である。
【
図4】ヒトILT7発現細胞に対するILT7抗体及び陰性対照抗体(R437)のADCCの効力を示す図である。
【
図5】カニクイザルILT7発現細胞に対するILT7抗体及び陰性対照抗体(R437)のADCCの効力を示す図である。
【
図6A】末梢血単核球細胞(PBMC)における形質細胞様樹状細胞(pDC)に対するILT7抗体及び陰性対照抗体(R437)の結合を示す図である。
【
図7】フローサイトメトリーによって決定した、ヒト(左のパネル)及びカニクイザル(右のパネル)ILT7を発現するCT-550細胞に対する低フコース化ILT7抗体及びその親抗体の結合を示す図である。
【
図8】ヒト(左のパネル)及びカニクイザル(右のパネル)ILT7発現細胞に対する低フコース化ILT7抗体及びその親抗体のADCCの効力を示す図である。
【
図9A】7個のILT70080バリアントの可変重鎖(9A)及び可変軽鎖(9B)配列アライメントを示す図である。最も近縁の生殖系列配列(IGHV1-69
*01及びIGLV3-21
*01)も同様にアライメントに示す。
【
図10A】9個のILT70083バリアントの可変重鎖(10A)及び可変軽鎖(10B)配列アライメントを示す図である。最も近縁の生殖系列配列(IGHV3-23
*01及びIGLV1-51
*01)も同様にアライメントに示す。
【
図11】ヒトILT7を発現する細胞(CT-550、上のパネル)及びカニクイザルILT7を発現する細胞(CT-125、下のパネル)に対するILT70080バリアントの結合を示す図である。
【
図12】ヒトILT7を発現する細胞(上のパネル)又はカニクイザルILT7を発現する細胞(下のパネル)に対するILT70083バリアントの結合を示す図である。
【
図13】ヒトILT7発現細胞に対するILT70080バリアント抗体のADCCの効力を示す図である。
【
図14】ヒトILT7発現細胞に対するILT70083バリアント抗体のADCCの効力を示す図である。
【
図15】ヒト(左のパネル)及びカニクイザル(右のパネル)ILT7発現細胞に対する低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体の結合を示す図である。
【
図16】ヒト(左のパネル)及びカニクイザル(右のパネル)ILT7発現細胞に対する低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体のADCC活性を示す図である。
【
図17】低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体に曝露されたヒトPBMCの細胞傷害性(左)及びIFN-α分泌(右)を示す図である。
【
図18】ヒトILT7(左のパネル)又はカニクイザルILT7(右のパネル)を発現する細胞に対する低フコース化ILT70137の結合を示す図である。丸は、低フコース化ILT70137を示し、三角は、対照を示す。
【
図19】ヒトILT7(左のパネル)又はカニクイザルILT7(右のパネル)を発現する細胞に対する低フコース化ILT70137のADCC活性を示す図である。三角は、低フコース化ILT70137を示し、丸は対照を示す。
【
図20】抗体が末梢血単核球細胞(PBMC)のADCCをin vitroで誘導する能力の間接的評価としてIFNアルファ産生の阻害を測定することによる、低フコース化ILT70137のADCC活性を示す図である。
【
図21】ヒトプライマリー形質細胞様樹状細胞(pDC)に対する低フコース化ILT70137の結合を示す図である。
【
図22】低フコース化7C7又は低フコース化ILT70137によって処置したカニクイザルにおけるpDCの枯渇を示す。グラフの下の矢印は、抗体の投与時点を示す図である。
【
図23】低フコース化7C7又は低フコース化ILT70137による処置後のIFNα産生を示す図である。グラフの下の矢印は、抗体の投与時点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
I.定義
用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」実体は、その実体の1つ以上を指すことに留意すべきであり、例えば、「1つの抗ILT7抗体」は、1つ以上の抗ILT7抗体を表すと理解される。そのため、用語「1つの」(又は「1つの」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0049】
本明細書に使用される用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」並びに複数の「ポリペプチド」を包含すると意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線状に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖又は複数の鎖を指し、産物の特定の長さを指すのではない。このため、2つ以上のアミノ酸の鎖又は複数の鎖を指すために使用されるペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は他の任意の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに又は互換的に使用することができる。用語「ポリペプチド」はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの発現後修飾の産物も指すと意図される。ポリペプチドは、天然の生物起源に由来し得るか、又は組換え技術によって産生することができるが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳される必要はない。ポリペプチドは、化学合成を含む任意の方法で作製することができる。
【0050】
本発明のポリペプチドは、約3個以上、5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上、又は2,000個以上のアミノ酸のサイズのポリペプチドであり得る。ポリペプチドは、定義された三次元構造を有し得るが、必ずしもそのような構造を有する必要はない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれていると呼ばれ、定義された三次元構造を有しない、むしろ多数の異なるコンフォメーションをとることができるポリペプチドは、折り畳まれていないと呼ばれる。本明細書に使用される用語糖タンパク質は、アミノ酸残基、例えばセリン残基又はアスパラギン残基の酸素含有又は窒素含有側鎖を介してタンパク質に結合した少なくとも1つの炭水化物部分にカップリングしたタンパク質を指す。
【0051】
「単離された」ポリペプチド又はその断片、バリアント、若しくは誘導体とは、その天然の環境に存在しないポリペプチドを意図する。特定の精製レベルは必要ではない。例えば、単離されたポリペプチドは、その本来の又は天然の環境から除去され得る。宿主細胞において発現される組換えによって産生されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の適した技術によって分離、分画、又は部分的若しくは実質的に精製されているネイティブ又は組換えポリペプチドと同様に、本発明の目的に関して単離されていると考えられる。
【0052】
同様に、前述のポリペプチドの断片、誘導体、アナログ、又はバリアント、及びその任意の組合せも同様に、本発明のポリペプチドとして含まれる。本発明の抗ILT7抗体又は抗体ポリペプチドについて言及する場合の用語「断片」、「バリアント」、「誘導体」、及び「アナログ」は、本発明の対応する抗体又は抗体ポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持している任意のポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドの断片は、本明細書において他所で考察される特定の抗体断片に加えて、タンパク質分解断片並びに欠失断片を含む。本発明の抗ILT7抗体及び抗体ポリペプチドのバリアントは、上記の断片を含み、同様にアミノ酸置換、欠失、又は挿入により変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。バリアントは天然に存在することができ、又は天然に存在しなくてもよい。天然に存在しないバリアントは、当技術分野で公知の突然変異誘発技術を使用して産生することができる。バリアントポリペプチドは、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。バリアントポリペプチドはまた、本明細書において「ポリペプチドアナログ」とも呼ばれ得る。本明細書に使用される、抗ILT7抗体又は抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応により化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する対象ポリペプチドを指す。同様に、20個の標準アミノ酸の1つ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそれらのペプチドも、「誘導体」に含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンをプロリンの代わりに使用することができ、5-ヒドロキシリジンをリジンの代わりに使用することができ、3-メチルヒスチジンをヒスチジンの代わりに使用することができ、ホモセリンをセリンの代わりに使用することができ、及びオルニチンをリジンの代わりに使用することができる。本発明の抗ILT7抗体及び抗体ポリペプチドの誘導体は、本発明の参照抗体又は抗体ポリペプチドにおいて見出されないさらなる特徴を示すように変化しているポリペプチドを含み得る。
【0053】
用語「ポリヌクレオチド」は、単数の核酸並びに複数の核酸を包含することを意図しており、単離核酸分子又は構築物、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は非従来の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)において見出される結合などのアミド結合)を含み得る。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在する任意の1つ以上の核酸セグメント、例えばDNA又はRNA断片を指す。「単離された」核酸又はポリヌクレオチドとは、その本来の環境から除去されている核酸分子、DNA又はRNAを意図している。例えば、ベクターに含有される抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的に関して単離されたと考えられる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例は、異種宿主細胞において維持された組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の精製(部分的又は実質的)ポリヌクレオチドを含む。単離されたRNA分子は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo又はin vitro RNA転写物を含む。本発明に従う単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、合成によって産生されたそのような分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターなどの調節エレメントであり得るか、又はそれらを含み得る。
【0054】
本明細書に使用される「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、これはコード領域の一部であると考えることができ、しかし任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン等は、コード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物、例えば単一のベクター又は個別のポリヌクレオチド構築物、例えば個別の(異なる)ベクターに存在し得る。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含有することができ、又は2つ以上のコード領域を含むことができ、例えば、単一のベクターは、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を個別にコードし得る。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、抗ILT7抗体又はその断片、バリアント、若しくは誘導体をコードする核酸に融合された又は融合されていない異種コード領域をコードし得る。異種コード領域は、分泌シグナルペプチド又は異種機能的ドメインなどの、専門のエレメント又はモチーフを含むがこれらに限定されない。
【0055】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、1つ以上のコード領域に作動可能に会合しているプロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳制御エレメントを含み得る。作動可能な会合は、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域が、遺伝子産物の発現が調節配列の影響下又は制御下に置かれるように1つ以上の調節配列に会合している場合である。2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域及びそれに会合するプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導によって、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写が起こる場合、及び2つのDNA断片の間の結合の性質が、発現調節配列が遺伝子産物の発現を指示する能力を妨害しないか、又はDNA鋳型が転写される能力を妨害しない場合に「作動可能に会合」している。このように、プロモーター領域は、プロモーターが、その核酸の転写を行うことができる場合、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に会合するであろう。プロモーターは、既定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーター以外の他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終止シグナルを、細胞特異的転写を指示するためにポリヌクレオチドに作動可能に会合させることができる。適したプロモーター及び他の転写制御領域を本明細書において開示する。
【0056】
多様な転写制御領域が当業者に公知である。これらには、サイトメガロウイルス(イントロンAと共に前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、及びレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)のプロモーター及びエンハンサーセグメントなどの、脊椎動物において機能する転写制御領域が挙げられるがこれらに限定されない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、及びウサギβ-グロビン、並びに真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列などの、脊椎動物遺伝子に由来する領域が挙げられる。さらに適した転写制御領域には、組織特異的プロモーター及びエンハンサー、並びにリンフォカイン誘導プロモーター(例えば、インターフェロン又はインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0057】
同様に、多様な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終止コドン、並びにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム進入部位、又はCITE配列とも呼ばれるIRES)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0058】
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、RNA、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
【0059】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌又はシグナルペプチドをコードする追加のコード領域に会合させることができる。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有し、これは成長しつつあるタンパク質鎖の粗面小胞体からの輸送が開始されると、成熟タンパク質から切断される。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、一般的にポリペプチドのN末端に融合したシグナル配列を有し、これが完全な又は「完全長の」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌型又は「成熟」型を産生することを承知している。ある特定の実施形態において、ネイティブのシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドを使用するか、又はそれに作動可能に会合するポリペプチドの分泌を指示する能力を保持しているその配列の機能的誘導体を使用する。或いは、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能的誘導体を使用することができる。例えば、野生型リーダー配列を、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列に置換することができる。
【0060】
本発明の「結合分子」又は「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。一実施形態において、結合分子は、ILT7、例えば完全長のILT7又は成熟ILT7に特異的に結合する。別の実施形態において、本発明の結合分子は、抗体又はその抗原結合断片である。別の実施形態において、本発明の結合分子は、参照抗体分子の少なくとも1つの重鎖又は軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、1つ以上の参照抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、1つ以上の参照抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、1つ以上の参照抗体分子からの少なくとも4個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、1つ以上の参照抗体分子からの少なくとも5個のCDRを含む。別の実施形態において、本発明の結合分子は、1つ以上の参照抗体分子からの少なくとも6個のCDRを含む。ある特定の実施形態において、参照抗体分子は、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052である。
【0061】
本発明は、ある特定の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体に関する。用語「抗体」は、標的、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組合せを、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を通して認識して特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書に使用される用語「抗体」は、インタクトポリクローナル抗体、インタクトモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、及び抗体が所望の生物活性を示す限り他の任意の改変された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれるその重鎖定常ドメインの同一性に基づいてそれぞれ、免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のいずれかの抗体であり得る。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる周知のサブユニット構造及び三次元立体配置を有する。抗体は、裸であり得るか、又は毒素、放射性同位元素等などの他の分子にコンジュゲートすることができる。
【0062】
用語「抗体断片」又は「その抗体断片」は、インタクト抗体の一部を指す。「抗原結合断片」又は「その抗原結合断片」は、抗原に結合するインタクト抗体の一部を指す。抗原結合断片は、インタクト抗体の抗原性決定可変領域を含有し得る。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片、直鎖状抗体、scFv、及び一本鎖抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
本明細書に使用される「ヒト」又は「完全なヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、以下に、及び例えばKucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載される、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された、又は1つ以上のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであり、内因性の免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置にとって特に望ましい。
【0064】
ヒト抗体は、Vaughan et al., Nat. Biotech. 14:309-314 (1996), Sheets et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. 95:6157-6162 (1998), Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1992)、及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))に記載されるヒト免疫グロブリンに配列に由来する抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ方法を含む、当技術分野で公知の多様な方法によって作製することができる。抗体を作製及び使用するために使用することができるファージディスプレイ方法のさらなる例には、そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Rothe et al., J. Mol. Biol., 376:1182 (2008), Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182:41-50 (1995)、Ames et al., J. Immunol. Methods 184:177-186 (1995)、Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24:952-958 (1994)、Persic et al., Gene 187:9-18 (1997)、Burton et al., Advances in Immunology 57:191-280 (1994)、PCT出願番号PCT/GB91/01134号、PCT出願国際公開第90/02809号、国際公開第91/10737号、国際公開第92/01047号、国際公開第92/18619号、国際公開第93/11236号、国際公開第95/15982号、国際公開第95/20401号、並びに米国特許第6,172,197号、第5,885,793号、第6,521,404号、第6,544,731号、第6,555,313号、第6,582,915号、第6,593,081号、第6,300,064号、第6,653,068号、第6,706,484号、第7,264,963号、第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号及び第5,969,108号に開示される方法が挙げられる。
【0065】
加えて、当技術分野で公知であるように、ヒト抗体は、機能的な内因性の免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して産生することができる。この技術の概要に関しては、Lonberg and Huszar, Int. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)を参照されたい。
【0066】
抗体工学の分野において利用可能なさらなる技術により、ヒト抗体又はその断片を単離することが可能となっている。例えば、Kontermann and Sefan. Antibody Engineering, Springer Laboratory Manuals (2001)によって記載されるように、ヒトハイブリドーマを作製することができる。完全なヒト抗体も同様に、様々なディスプレイ技術、例えば、ファージディスプレイ又は他のウイルスディスプレイシステムによって産生することができる。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に表示される。例えば、VH及びVL領域をコードするDNA配列を、動物cDNAライブラリー(例えば、リンパ系組織のヒト又はマウスcDNAライブラリー)又は合成cDNAライブラリーから増幅する。ある特定の実施形態において、VH及びVL領域をコードするDNAを、PCRによってscFvリンカーによって共に結合して、ファージミドベクター(例えば、pCANTAB 6又はpComb 3 HSS)にクローニングする。ベクターを大腸菌(E.coli)に電気穿孔して、大腸菌にヘルパーファージを感染させる。これらの方法に使用されるファージは、典型的にfd及びM13を含む糸状ファージであり、VH又はVL領域は通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIのいずれかに組換えによって融合される。目的の抗原(すなわち、ILT7)に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原によって、例えば標識抗原又は固相表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された抗原を使用して選択又は同定することができる。
【0067】
「ヒト」又は「完全なヒト」抗体はまた、重鎖の少なくとも可変ドメイン、又は重鎖及び軽鎖の少なくとも可変ドメインを含む抗体を含み、可変ドメイン(複数可)は、ヒト免疫グロブリン可変ドメイン(複数可)のアミノ酸配列を有する。
【0068】
「ヒト」又は「完全なヒト」抗体はまた、本明細書に記載の抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)のバリアント(誘導体を含む)を含む、から本質的になる、又はからなる、上記の「ヒト」又は「完全なヒト」抗体を含み、抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ILT7ポリペプチド又はその断片若しくはバリアントに免疫特異的に結合する。それによってアミノ酸の置換が起こる、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発を含むがこれらに限定されない当業者に公知の標準的な技術を使用して、ヒト抗ILT7抗体をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができる。バリアント(誘導体を含む)は、参照のVH領域、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VL領域、VLCDR1、VLCDR2、又はVLCDR3と比較して、50個未満のアミノ酸置換、40個未満のアミノ酸置換、30個未満のアミノ酸置換、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、又は2個未満のアミノ酸置換をコードし得る。
【0069】
ある特定の実施形態において、アミノ酸置換は、以下に詳しく考察される保存的アミノ酸置換である。或いは、飽和突然変異などによって、コード配列の全て又は一部に沿って突然変異をランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物活性に関してスクリーニングし、活性(例えば、ILT7ポリペプチド、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の任意の組合せに結合する能力)を保持している突然変異体を同定することができる。「ヒト」又は「完全なヒト」抗体のそのようなバリアント(又はその誘導体)はまた、「最適化された」又は「抗原結合に関して最適化された」ヒト又は完全なヒト抗体と呼ぶことができ、抗原に対して改善された親和性を有する抗体を含む。
【0070】
脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的良好に理解されている。例えば、Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。
【0071】
以下により詳細に考察するように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができるポリペプチドの様々な広いクラスを含む。当業者は、重鎖が、その中の一部のサブクラス(例えば、γ1~γ4)と共に、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類されることを認識するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、又はIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1等は、良好に特徴付けされ、機能的専門性を付与することが知られている。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの改変型は、本開示を考慮すれば当業者に容易に識別可能であり、したがって本発明の範囲内である。以下の考察は一般的に免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象としているが、全ての免疫グロブリンクラスが、明白に本発明の範囲内である。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、及び分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は、典型的にジスルフィド結合によって「Y」字型で結合しており、軽鎖は、「Y」字型の口の部分で始まり可変領域を通して続く重鎖を囲っている。
【0072】
軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。それぞれの重鎖クラスは、カッパ又はラムダ軽鎖のいずれかに結合することができる。一般的に、軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合し、2つの重鎖の「テール」部分は、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、又は遺伝子改変宿主細胞のいずれかによって作製される場合に、共有ジスルフィド結合又は非共有結合によって互いに結合している。重鎖では、アミノ酸配列は、Y字型のフォーク状先端のN末端からそれぞれの鎖の底部のC末端へと進む。
【0073】
抗体「Y」の基部は、Fc(結晶化可能断片)領域と呼ばれ、抗体のクラスに応じて2つ又は3つの定常ドメインを与える2つの重鎖で構成される。このため、Fc領域は、Fc受容体の特異的クラス、及び他の免疫分子、例えば補体タンパク質に結合する。軽鎖及び重鎖はいずれも構造及び機能的相同性の領域に分類することができる。用語「定常」及び「可変」は、機能的に使用される。この点において、軽鎖(VL又はVK)及び重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインが、抗原認識及び特異性を決定することが認識されるであろう。逆に、軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2、又はCH3)の定常ドメインは、分泌、胎盤通過能、Fc受容体結合、補体結合等などの重要な生物学的特性を付与する。便宜上、定常領域ドメインの番号付けは、抗体の抗原結合部位又はアミノ末端からより遠位になるにつれて増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり、CH3及びCLドメインはそれぞれ、実際に重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0074】
上記のように、可変領域によって、抗体は、抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することができる。すなわち、抗体のこれらの可変ドメイン内のVLドメイン及びVHドメイン、又は相補性決定領域(CDR)のサブセットが結合して、三次元抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。抗体のこの四次構造は、Yのそれぞれのアームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH及びVL鎖のそれぞれに存在する3つのCDRによって定義される。一部の例において、例えば、ラクダ種に由来する又はラクダの免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子では、完全な免疫グロブリン分子は重鎖のみからなり、軽鎖を有しない。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)を参照されたい。
【0075】
天然に存在する抗体において、それぞれの抗原結合ドメインに存在する6個の「相補性決定領域」又は「CDR」は、抗体が水性環境でその三次元構造をとると抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置されるアミノ酸の短い非連続配列である。抗原結合ドメインにおけるアミノ酸の残りは、「フレームワーク」領域と呼ばれ、より低い分子間多様性を示す。フレームワーク領域はほとんどがβシートコンフォメーションをとり、CDRはβシート構造を接続するループ、一部の例ではその一部を形成するループを形成する。このため、フレームワーク領域は、鎖間非共有相互作用によりCDRの正しい方向の配置を提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対して相補的な表面を定義する。この相補的な表面は、その同起源のエピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。任意の所定の重鎖又は軽鎖可変ドメインに関してCDR及びフレームワーク領域をそれぞれ含むアミノ酸は、それらが正確に定義されていることから(下記を参照されたい)、当業者は容易に同定することができる。
【0076】
当技術分野で使用される及び/又は容認される用語に2つ以上の定義が存在する場合、本明細書に使用される用語の定義は、明白に逆であると述べていない限り、そのような全ての意味を含むと意図される。具体例は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内で見出される非連続の抗原結合部位を記載するために用語「相補性決定領域」(「CDR」)を使用する場合である。この特定の領域は、参照により本明細書に組み込まれている、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest"及びChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されているが、互いを比較すると、定義は、アミノ酸残基の重なり又はサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体又はそのバリアントのCDRを指すためにいずれの定義を適用しても、本明細書において定義及び使用される用語の範囲内であると意図される。IMGT(ImMunoGeneTics)もまた、CDRを含む免疫グロブリン可変領域の番号付けシステムを提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Lefranc, M.P. et al., Dev. Comp. Immunol. 27: 55-77(2003)を参照されたい。IMGT番号付けシステムは、5,000個を超える配列のアライメント、構造データ及び超可変ループの特徴付けに基づいており、全ての種に関して可変及びCDR領域の容易な比較を可能にする。上記で引用した参考文献のそれぞれによって定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として以下の表1に記載する。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及びサイズに応じて変化し得る。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを構成するかを通常通りに決定することができる。
【0077】
【0078】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列の番号付けシステムも定義した。当業者は、配列そのもの以上のいかなる実験データに頼ることなく、この「Kabat番号付け」システムを任意の可変ドメイン配列に明確に割付することができる。本明細書に使用される「Kabat番号付け」は、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest."によって記載された番号付けシステムを指す。
【0079】
本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト化、霊長類化、又はキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えばFab、Fab'及びF(ab')2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VL若しくはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示の抗ILT7抗体に対する抗Id抗体)が挙げられるがこれらに限定されない。ScFv分子は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。本発明の免疫グロブリン又は抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2など)、又はサブクラスの分子であり得る。
【0080】
本明細書に使用される用語「重鎖部分」は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそのバリアント若しくは断片のうちの少なくとも1つを含む。例えば本発明に使用するための結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、及びCH2ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、又はCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明に使用するための結合ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全て又は一部)を欠如し得る。上記のように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)を、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列が変化するように改変することができることは当業者に理解されるであろう。
【0081】
本明細書に開示されるある特定の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体において、多量体の1つのポリペプチド鎖の重鎖部分は、多量体の第2のポリペプチド鎖の重鎖部分と同一である。或いは、本発明の重鎖部分含有単量体は同一ではない。
【0082】
本明細書に開示の診断及び治療方法に使用するための結合分子の重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメイン及びIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、一部がIgG4分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0083】
本明細書に使用される用語「軽鎖部分」は、免疫グロブリン軽鎖、例えばカッパ又はラムダ軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖部分は、VL又はCLドメインの少なくとも1つを含み得る。
【0084】
本明細書に開示の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、抗原のエピトープ又は一部に関して、例えばそれらが認識する又は特異的に結合する本明細書に開示の標的ポリペプチド(例えば、完全長又は成熟ILT7)に関して、記載又は明記され得る。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的ポリペプチドの一部は、「エピトープ」又は「抗原性決定因子」である。標的ポリペプチドは、単一のエピトープを含み得るが、典型的に少なくとも2つのエピトープを含み、抗原のサイズ、コンフォメーション、及びタイプに応じて任意の数のエピトープを含み得る。さらに、標的ポリペプチド上の「エピトープ」は、非ポリペプチドエレメントであり得るか、又は含むことができ、例えばエピトープは炭水化物側鎖を含み得ることに注意すべきである。
【0085】
抗体のペプチド又はポリペプチドエピトープの最小サイズは、約4~5アミノ酸であると考えられる。ペプチド又はポリペプチドエピトープは、少なくとも7、少なくとも9、又は少なくとも約15~約30アミノ酸を含有し得る。CDRは、その三次元型の抗原性ペプチド又はポリペプチドを認識し得ることから、エピトープを含むアミノ酸は、必ずしも連続している必要はなく、一部の例において、同じペプチド鎖上に存在していなくてもよい。本発明の抗ILT7抗体によって認識されるペプチド又はポリペプチドエピトープは、ILT7の少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、又は約15~約30個の連続又は非連続アミノ酸の配列を含有し得る。
【0086】
「特異的に結合する」とは、一般的に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及び結合が抗原結合ドメイン及びエピトープの間の何らかの相補性を伴うことを意味する。この定義に従って、抗体は、ランダムで無関係なエピトープに結合するより容易にその抗原結合ドメインを介して、あるエピトープに結合する場合、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、本明細書において、ある特定の抗体が、ある特定のエピトープに結合する相対的親和性の性質を決定するために使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」より所定のエピトープに対して高い特異性を有すると考えることができ、又は抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に関してそれが有する特異性より高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うことができる。
【0087】
「優先的に結合する」とは、抗体が、関連する、類似の、相同な、又はアナログのエピトープに結合するより容易に、あるエピトープに特異的に結合することを意味する。このため、所定のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、たとえそのような抗体が関連するエピトープと交差反応することができる場合であっても、関連するエピトープよりそのエピトープに結合する可能性が高いであろう。
【0088】
非制限的な例として、抗体は、第2のエピトープに対する抗体の解離定数(KD)より小さいKDで第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えることができる。別の非制限的な例において、抗体は、第2のエピトープに関する抗体のKDより少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1の抗原に優先的に結合すると考えることができる。別の非制限的な例において、抗体は、それが第2のエピトープに関する抗体のKDより少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えることができる。
【0089】
別の非制限的な例において、抗体は、第2のエピトープの抗体のk(off)より低いオフレート(k(off))で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えることができる。別の非制限的な例において、抗体は、第2のエピトープに対する抗体のk(off)より少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えることができる。別の非制限的な例において、抗体は、第2のエピトープに関する抗体のk(off)より少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合、第1のエピトープに優先的に結合すると考えることができる。本明細書に開示の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、本明細書に開示の標的ポリペプチド(例えば、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の他の任意の組合せ)又はその断片若しくはバリアントに、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1、又は10-3秒-1以下のオフレート(k(off))で結合すると言うことができる。本発明の抗体は、本明細書に開示の標的ポリペプチド(例えば、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の他の任意の組合せ)又はその断片若しくはバリアントに、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、又は10-5秒-1、5×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1、又は10-7秒-1以下のオフレート(k(off))で結合すると言うことができる。
【0090】
本明細書に開示の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、本明細書に開示の標的ポリペプチド(例えば、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の他の任意の組合せ)又はその断片若しくはバリアントに、103M-1秒-1、5×103M-1秒-1、104M-1秒-1、又は5×104M-1秒-1以上のオンレート(k(on))で結合すると言うことができる。本発明の抗体は、本明細書に開示の標的ポリペプチド(例えば、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の他の任意の組合せ)又はその断片若しくはバリアントに、105M-1秒-1、5×105M-1秒-1、106M-1秒-1、又は5×106M-1秒-1、又は107M-1秒-1以上のオンレート(k(on))で結合することができる。
【0091】
抗体は、エピトープに対する参照抗体の結合をある程度遮断する程度に、エピトープ又は重なり合うエピトープに優先的に結合する場合、所定のエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば競合的ELISAアッセイによって決定することができる。抗体は、所定のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%競合的に阻害すると言うことができる。
【0092】
本明細書に使用される用語「親和性」は、免疫グロブリン分子のCDRに対する個々のエピトープの結合の強度の測定を指す。例えばHarlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed.) pages 27-28を参照されたい。本明細書に使用される用語「アビディティ」は、免疫グロブリン集団と抗原との間の複合体の全体的な安定性を指し、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的な結合強度を指す。例えば、Harlowの29~34頁を参照されたい。アビディティは、集団中の個々の免疫グロブリン分子と特定のエピトープとの親和性、及び免疫グロブリンと抗原との結合価の両方に関連する。例えば、二価のモノクローナル抗体と高い反復エピトープ構造を有する抗原、例えばポリマーとの相互作用は、高いアビディティの相互作用であろう。
【0093】
本発明の抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はまた、その交差反応性に関して記載又は明記することができる。本明細書に使用される用語「交差反応性」は、1つの抗原に対して特異的な抗体が第2の抗原に反応する能力、すなわち2つの異なる抗原物質の間の関係性の測定を指す。このため、抗体は、その形成を誘導するエピトープ以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応エピトープは、一般的に誘導性のエピトープと同じ相補性構造特徴の多くを含有し、一部の例において、実際に当初のものより良好に適合し得る。
【0094】
例えば、ある特定の抗体は、それらが関連するが非同一のエピトープ、例えば参照エピトープに対して、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、及び少なくとも50%の同一性(当技術分野で公知の及び本明細書に記載の方法を使用して計算した場合)を有するエピトープに結合するという点において、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、及び50%未満の同一性(当技術分野で公知の及び本明細書に記載の方法を使用して計算した場合)を有するエピトープに結合しない場合、ほとんど又は全く交差反応性を有しないと言うことができる。抗体は、それがある特定のエピトープの他の任意のアナログ、オルトログ、又はホモログに結合しない場合、そのエピトープに対して「非常に特異的」であると考えることができる。
【0095】
抗ILT7結合分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はまた、本発明のポリペプチド、例えばILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の任意の組合せに対するその結合親和性に関して記載又は明記することができる。有用な結合親和性には、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、又は10-15M未満の解離定数又はKdを有する親和性が挙げられる。
【0096】
一部の実施形態において、抗体は、1nM未満の解離定数又はKdでヒトILT7に結合する。一部の実施形態において、抗体は、5nM未満の解離定数又はKdでカニクイザルILT7に結合する。一部の実施形態において、抗体は、1nM未満の解離定数又はKdでヒトILT7に結合し、5nM未満の解離定数又はKdでカニクイザルILT7に結合する。
【0097】
既に示したように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び三次元立体配置が周知である。本明細書に使用される用語「VHドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、用語「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖の最初の(最もアミノ末端の)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対してアミノ末端である。
【0098】
本明細書に使用される用語「CH2ドメイン」は、通常の番号付けスキームを使用して抗体の残基約244から残基360位(Kabatの番号付けシステムでは残基244~360位、EU番号付けシステムでは残基231~340位、Kabat EAらを参照されたい)に伸びる重鎖分子の部分を含む。CH2ドメインは、別のドメインと厳密に対を形成しないという点において独自である。むしろ、2つのN-結合分岐炭水化物鎖が、インタクトネイティブIgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在する。CH3ドメインは、IgG分子のCH2ドメインからC末端に伸び、およそ108残基を含むことも同様に十分に報告されている。
【0099】
本明細書に使用される用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインとCH2ドメインを結合する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、柔軟で、このため2つのN末端抗原結合領域は独立して動くことができる。ヒンジ領域は、3つの別個のドメイン:上部、中部、及び底部ヒンジドメインに細分することができる(Roux et al., J. Immunol. 161:4083 (1998))。
【0100】
本明細書に使用される用語「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子の間で形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、又は第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1及びCL領域はジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabatの番号付けシステムを使用して239及び242位(EU番号付けシステムでは、226又は229位)に対応する位置で2つのジスルフィド結合によって連結される。
【0101】
本明細書に使用される用語「キメラ抗体」は、免疫反応性領域又は部位が第1の種から得られるか又は由来し、定常領域(インタクト、部分的、又は本発明に従って改変され得る)が第2の種から得られる任意の抗体を意味すると考えられる。ある特定の実施形態において、標的結合領域又は部位は、非ヒト起源(例えば、マウス又は霊長類)であり、定常領域はヒトである。
【0102】
本明細書に使用される用語「操作された抗体」は、重鎖又は軽鎖のいずれか又は両方の可変ドメインが、公知の特異性の抗体からの1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、及び必要であれば部分的なフレームワーク領域置換及び配列変化によって、変化している抗体を指す。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラス又はさらにはサブクラスの抗体に由来し得るが、CDRは、異なるクラスの抗体又は異なる種の抗体に由来すると想像される。公知の特異性の非ヒト抗体からの1つ以上の「ドナー」CDRがヒト重鎖又は軽鎖フレームワーク領域に移植されている操作された抗体は、本明細書において「ヒト化」抗体と呼ばれる。1つの可変ドメインの抗原結合能を他方に移動させるために、CDRの全てをドナー可変ドメインからの完全なCDRに必ずしも交換する必要はない。むしろ、標的結合部位の活性を維持するために必要なそれらの残基を転移させる必要があるに過ぎない。
【0103】
ヒト化抗体の重鎖又は軽鎖又は両方における可変ドメイン内のフレームワーク領域は、ヒト起源の残基のみを含み得るとさらに認識され、この場合、ヒト化抗体のこれらのフレームワーク領域は、「完全なヒトフレームワーク領域」と呼ばれる。或いは、ドナー可変ドメインのフレームワーク領域の1つ以上の残基を、適切な結合を維持するため、又はILT7抗原に対する結合を増強するために必要であれば、ヒト化抗体の重鎖又は軽鎖又はその両方における可変ドメインのヒトフレームワーク領域の対応する位置において操作することができる。このため、このようにして操作されているヒトフレームワーク領域は、ヒト及びドナーフレームワーク残基の混合物を含み、本明細書において「部分的ヒトフレームワーク領域」と呼ばれる。
【0104】
例えば、抗ILT7抗体のヒト化は、本質的に、Winterと共同研究者(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、齧歯類又は突然変異体の齧歯類抗ILT7 CDR又はCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列に置換することによって実施することができる。同様に、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,859,205号を参照されたい。得られたヒト化抗ILT7抗体は、ヒト化抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインの完全なヒトフレームワーク領域内に少なくとも1つの齧歯類又は突然変異体齧歯類CDRを含むであろう。一部の例において、ヒト化抗ILT7抗体の1つ以上の可変ドメインのフレームワーク領域内の残基を、対応する非ヒト(例えば、齧歯類)残基に置換し(例えば、米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、及び第6,180,370号を参照されたい)、この場合、得られたヒト化抗ILT7抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメイン内に部分的にヒトのフレームワーク領域を含むであろう。
【0105】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに精密化するため(例えば、所望の親和性を得るため)に行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDRの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のそれらに対応する。ヒト化抗体はまた任意選択で、典型的にヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細に関しては、参照により本明細書に組み込まれている、Jones et al., Nature 331:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988)、及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている抗体を含み得る。実際に、ヒト化抗体は、典型的に一部のCDR残基及びおそらく一部のフレームワーク残基が、齧歯類抗体における類似の部位からの残基に置換されているヒト抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,859,205号を参照されたい。同様に、既定の抗原に対する親和性が改善されたヒト化抗体及びヒト化抗体を産生する技術が開示されている、米国特許第6,180,370号及び国際出願国際公開第01/27160号も参照されたい。
【0106】
本明細書に使用される用語「連結した」、「融合した」又は「融合体」は、互換的に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーション又は組換え手段を含む任意の手段によって、2つ以上のエレメント又は成分を互いに結合することを指す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)が結合して、当初のORFの正確な翻訳読み取り枠を維持するように、連続するより長いORFを形成することを指す。このため、組換え融合タンパク質は、当初のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメント(セグメントは通常、天然ではそのように結合していない)を含有する単一のタンパク質である。したがって、読み取り枠は、融合セグメントを通して連続的に作製されるが、セグメントは、例えばインフレームリンカー配列によって物理的又は空間的に隔てられ得る。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドを、インフレームで融合させることができるが、「融合した」CDRが連続するポリペプチドの一部として同時に翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域又は追加のCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てることができる。
【0107】
ポリペプチドの文脈において、「直線状配列」、又は「配列」は、配列において互いに隣接する残基がポリペプチドの一次構造において連続している、アミノからカルボキシル末端方向へのポリペプチドにおけるアミノ酸の順序である。
【0108】
本明細書に使用される用語「発現」は、それによって遺伝子が生化学物質、例えばポリペプチドを産生する方法を指す。方法は、遺伝子ノックダウン並びに一過性の発現及び安定な発現の両方を含むがこれらに限定されない、細胞内での遺伝子の機能的存在の任意の発現を含む。これは遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、及びそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳を含むがこれらに限定されない。最終の所望の産物が生化学物質である場合、発現は、その生化学物質及び任意の前駆体の作製を含む。遺伝子の発現は「遺伝子産物」を産生する。本明細書に使用される遺伝子産物は、核酸、例えば遺伝子の転写によって産生されたメッセンジャーRNA、又は転写物から翻訳されたポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書に記載の遺伝子産物はさらに、転写後修飾、例えばポリアデニル化を有する核酸、又は翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解切断等を有するポリペプチドを含む。
【0109】
本明細書に使用される用語「処置(治療)する」又は「処置(治療)」は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を指し、目的は、自己免疫疾患の進行などの、望ましくない生理的変化又は障害を防止(予防)するか又は遅らせる(減らす)ことである。有益な又は望ましい臨床結果には、検出可能であるか、又は検出不能であるかによらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延又は遅れ、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体)が挙げられるがこれらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存の延長を意味し得る。処置を必要とする対象は、状態若しくは障害を既に有する対象、並びに状態若しくは障害を有する傾向がある対象、又は状態若しくは障害が防止されるべき対象が挙げられる。
【0110】
「対象」又は「個体」、又は「動物」、又は「患者」又は「哺乳動物」は、診断、予後判定、又は治療が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家畜、農場動物、及び動物園の動物、競技用動物、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛等が挙げられる。
【0111】
本明細書に使用される、「抗ILT7抗体の投与により恩典が選られる対象」、及び「処置を必要とする動物」などの語句は、例えば、抗ILT7ポリペプチドの検出(例えば、診断手順のため)のために使用される抗ILT7抗体の投与により恩典が得られる、及び/又は抗ILT7抗体による処置、すなわち疾患の緩和又は防止により恩典が得られる、哺乳動物対象などの対象を含む。
【0112】
II.ILT7
本明細書に使用される用語「ILT7」及び「ILT7ポリペプチド」は、互換的に使用される。ある特定の実施形態において、ILT7は完全長である。別の実施形態において、ILT7は、成熟ILT7(アミノ酸24~299位)である。他の実施形態において、ILT7は、完全長のILT7、その断片、又はILT7バリアントポリペプチドを含むことができ、ILT7又はILT7バリアントポリペプチドの断片は、活性なILT7の一部又は全ての機能的特性を保持している。
【0113】
完全長のヒトILT7は、シグナルペプチド(アミノ酸1~23位)、細胞外ドメイン(アミノ酸24~446位)、膜貫通ドメイン(アミノ酸447~467位)、及び細胞質ドメイン(アミノ酸468~499位)を含有する、アミノ酸499個のタンパク質(受託番号P59901)である。細胞外ドメインは、4つの免疫グロブリン様C2ドメイン(アミノ酸24~118位、123~213位、224~313位、及び324~413位)を含む。ILT7は、免疫グロブリン様転写物(ILT)又は白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)遺伝子ファミリーのメンバーである。カニクイザルILT7の配列を配列番号292として提供する。
【0114】
PRTHMQAENLLKPILWAEPGPVIIWKKPVTIWCQGTLEAQEYRLDKEGNSISRHMLKTLESENKAKFSIPSMMWEHAGRYHCYYQSPAGWSEPSDPLELVVTAYSRPSLSALPSPVVTSGVNVTLRCASRLGLGRFTLIEEGDHRLSWTLDSHQHNHGKFQALFPVGPLTFSNRGTFRCYGYENNTPYVWSEPSDPLQLLVSGVSRKPSLLTLQGPVVAPGDNLTLQCGSDVGYIRYALYKEGGDGLPQRPGQQSQAGLSQASFTLNPVRGSHGGQYRCYGAHNVSSKWSAPSDPLDILIAGQIPDRPSLSVQLGPTVASGEKVTLLCQSWGPMFTFLLAKEGAAHPPLRLRSTYRAQQYQAEFPMSPVTSAHAGTYRCYGSRSSDPYLLSHSSEPLELVVSEATETLNPAQNKSDSKTAPHLQDYTVENLIRMGIAGLVLVFLGILLFEAQQSQRSPTRCSQEVNSREDNAPFRVVEPWEQI(配列番号292。)
【0115】
ILT7は、形質細胞様樹状細胞(pDC)と呼ばれる末梢血単核球細胞(PBMC)のサブセットにおいて選択的に発現される。pDCは、免疫調節分子であるインターフェロン(IFN)アルファの主要な起源であり、ILT7は、これらの細胞からのIFNアルファの放出の調節において役割を果たす。
【0116】
III.抗ILT7結合分子
ある特定の実施形態において、本明細書において提供されるILT7結合分子は、本明細書において提供されるILT7結合抗体の配列及び/又は特性を含有する抗体又はその抗原結合断片である。ILT7抗体の配列の配列番号を表2に提供する。
【0117】
【0118】
ある特定の実施形態において、結合分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体、例えば抗体7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、及びILT70052は、ILT7に結合し、形質細胞様樹状細胞によるIFNアルファ放出を阻害する。
【0119】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、ILT7に結合する抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体、例えば7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、及びILT70052を含む。ある特定の実施形態において、抗ILT7抗体は、ヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類、及びマウスILT7の任意の組合せに結合する。
【0120】
一実施形態において、本発明は、抗体7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052と同じILT7エピトープに特異的に結合する、単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。別の実施形態において、本発明は、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052のVH及びVLを含む抗体と同じILT7エピトープに特異的に結合する、単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。別の実施形態において、本発明は、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052のVH又はVLを含む抗体と同じILT7エピトープに特異的に結合する単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。
【0121】
別の実施形態において、本発明は、ILT7に特異的に結合し、抗体7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052が、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類及びマウスILT7の任意の組合せに特異的に結合するのを競合的に阻害する、単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。別の実施形態において、本発明は、ILT7に特異的に結合し、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052のVH及びVLを含む抗体が、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類及びマウスILT7の任意の組合せに特異的に結合するのを競合的に阻害する、単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。別の実施形態において、本発明は、ILT7に特異的に結合し、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052のVH又はVLを含む抗体が、ILT7、例えばヒト、霊長類、マウス、又はヒト、霊長類及びマウスILT7の任意の組合せに特異的に結合するのを競合的に阻害する、単離された結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供する。
【0122】
ある特定の実施形態において、本発明の結合分子は、参照抗ILT7抗体分子のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらなる実施形態において、結合分子は、参照抗体と少なくとも96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を共有する。ある特定の実施形態において、参照抗体は、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052である。
【0123】
別の実施形態において、本発明は、配列番号22、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、242、252、及び262のVHアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、から本質的になる、又はからなる、単離された抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供し、VHドメインを含む抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。さらなる実施形態において、抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくはその誘導体は、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する。
【0124】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号27、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、又は267のVLアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、から本質的になる、又はからなる、単離された抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を含み、VLドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。さらなる実施形態において、抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する。
【0125】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号22及び27;42及び47;52及び57;62及び67;72及び77;82及び87;92及び97;102及び107;112及び117;122及び127;132及び137;142及び147;152及び157;162及び167;172及び177;182及び187;192及び197;202及び207;212及び217;222及び227;232及び237;242及び247;252及び257;又は262及び267のVH及びVL配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をそれぞれ有するVHドメイン及びVLドメインを含む、から本質的になる、又はからなる、単離された抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を含み、VH及びVLドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。さらなる実施形態において、抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する。
【0126】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号23、24、25、28、29、及び30;43、44、45、48、49、及び50;53、54、55、58、59、及び60;63、64、65、68、69、及び70;73、74、74、78、79、及び80;83、84、85、88、89、及び90;93、94、95、98、99、及び100;103、104、105、108、109、及び110;113、114、115、118、119、及び120;123、124、125、128、129、及び130;133、134、135、138、139、及び140;143、144、145、148、149、及び150;153、154、155、158、159、及び160;163、164、165、168、169、及び170;173、174、175、178、179、及び180;183、184、185、188、189、及び190;193、194、195、198、199、及び200;203、204、205、208、209、及び210;213、214、215、218、219、及び220;223、224、225、228、229、及び230;233、234、235、238、239、及び240;243、244、245、248、249、及び250;253、254、255、258、259、及び260;263、264、265、268、269、及び270のVH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3配列をそれぞれ有するVHドメイン及びVLドメインを含む、から本質的になる、又はからなる、単離された抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を含み、VH及びVLドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。さらなる実施形態において、抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する。
【0127】
本発明の抗ILT7抗体の適した生物活性バリアントを、本発明の方法に使用することができる。そのようなバリアントは、親の抗ILT7抗体の所望の結合特性を保持するであろう。抗体バリアントを作製する方法は、一般的に当技術分野で利用可能である。
【0128】
突然変異誘発及びヌクレオチド配列変化の方法は、当技術分野で周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York)、Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985)、Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987)、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.)、米国特許第4,873,192号、及びその中に引用されている参考文献を参照されたい。目的のポリペプチドの生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する指針は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dayhoff et al. (1978) in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.), pp. 345-352のモデルに見出され得る。Dayhoffらのモデルは、Point Accepted Mutation (PAM)アミノ酸類似性行列(PAM 250行列)を使用して、適した保存的アミノ酸置換を決定する。保存的置換、例えば1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸に交換することは有益であり得る。DayhoffらのモデルのPAM 250行列によって教示される保存的アミノ酸置換の例には、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、及びPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるがこれらに限定されない。
【0129】
抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその結合断片、バリアント、若しくは誘導体のバリアントを構築する場合、バリアントが所望の特性を保持し続けるように、例えばILT7に特異的に結合することができるように、及びある特定の実施形態において、IFN-アルファ放出を阻害することができるように、改変を行う。バリアントポリペプチドをコードするDNAにおいて作製されたいかなる突然変異も、読み取り枠の外に配列を配置してはならないことは明白である。一部の実施形態において、DNAに作製されたいかなる突然変異も、二次mRNA構造を産生することができる相補的領域を作製しない。
【0130】
抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の結合特異性を測定する方法には、標準的な競合結合アッセイ、細胞傷害性アッセイ、IFN放出アッセイ、ELISAアッセイ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0131】
本明細書において、本明細書に開示の定常領域、CDR、VHドメイン、又はVLドメインを含むいずれかの特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はさらに100%同一であるか否かを検討する場合、%同一性は、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)などの、しかしこれらに限定されない当技術分野で公知の方法、及びコンピュータープログラム/ソフトウェアを使用して決定することができる。BESTFITは、2つの配列間の相同性の最善のセグメントを発見するために、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489のローカルホモロジーアルゴリズムを使用する。特定の配列が、例えば本発明に従う参照配列と95%同一であるか否かを決定するためにBESTFIT又は他の任意の配列アライメントプログラムを使用する場合、当然のこととして、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算されるように、及び参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメータを設定する。
【0132】
本発明の目的に関して、パーセント配列同一性は、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して、ギャップオープンペナルティ12及びギャップ伸長ペナルティ2、BLOSUM行列62によるアフィンギャップ検索を使用して決定することができる。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489によって教示される。バリアントは例えば、参照の抗ILT7抗体(例えば、7C7、ILT70080、ILT70080.1~ILT70080.7、ILT70083、ILT70083.1~ILT70083.9、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、ILT70144、又はILT70052)と、わずか1~15アミノ酸残基、わずか1~10アミノ酸残基、例えば6~10、わずか5、わずか4、3、2、又はさらには1アミノ酸残基が異なり得る。
【0133】
ILT7に特異的に結合することができ、所望の活性を保持することができるポリペプチドの正確な化学構造は、多数の要因に依存する。イオン化可能なアミノ及びカルボキシル基が分子に存在すると、特定のポリペプチドは、酸性若しくは塩基性の塩、又は中性型として得ることができる。適した環境条件に配置するとその生物活性を保持するそのような調製物は全て、本明細書に使用される抗ILT7抗体の定義に含まれる。さらに、ポリペプチドの一次アミノ酸配列は、糖部分(グリコシル化)又は他の補助分子、例えば脂質、リン酸基、アセチル基等を使用する誘導体化によって増強することができる。同様に糖類とのコンジュゲーションによっても増強することができる。そのような増強のある特定の態様は、産生宿主の翻訳後プロセシングシステムを通して達成され、他のそのような改変はin vitroで導入することができる。いずれにせよ、そのような改変は、抗ILT7抗体の所望の特性が破壊されない限り、本明細書に使用される抗ILT7抗体の定義に含まれる。そのような改変は、様々なアッセイにおいてポリペプチドの活性を増強又は減損させることによって活性に定量的又は定性的に影響を及ぼし得ると予想される。さらに、鎖における個々のアミノ酸残基を、酸化、還元、又は他の誘導体化によって修飾することができ、ポリペプチドを切断して、活性を保持する断片を得ることができる。所望の特性(例えば、ILT7の結合特異性、結合親和性、及び関連する活性、例えば肥満細胞、内皮細胞からのILT7によるサイトカイン放出の阻害能、並びにTF-1細胞の増殖)を破壊しないそのような変更があっても、ポリペプチド配列は、本明細書に使用される目的の抗ILT7抗体の定義に含まれる。
【0134】
当技術分野は、ポリペプチドバリアントの調製及び使用に関する実質的な指針を提供する。抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体のバリアントを調製する場合、当業者は、ネイティブのタンパク質のヌクレオチド又はアミノ酸配列に対するどのような改変によって、本発明の方法に使用される医薬組成物の治療活性成分として使用するために適しているバリアントが得られるかを容易に決定することができる。
【0135】
抗ILT7抗体の定常領域を突然変異させて、多数の方法でエフェクター機能を変化させることができる。例えば、Fc受容体に対する抗体結合を最適化するFc突然変異を開示する、米国特許第6,737,056B1号及び米国特許出願公開第2004/0132101号A1を参照されたい。
【0136】
ある特定の抗ILT7抗体において、当技術分野で公知の技術を使用して、Fc部分を突然変異させてエフェクター機能を減少させることができる。例えば、定常領域ドメインの欠失又は不活化(点突然変異又は他の手段を通して)は、循環中の改変抗体のFc受容体結合を低減させることができる。他の例において、本発明と一貫する定常領域の改変は、補体結合を緩和してこのように、コンジュゲートした細胞毒素の血清中半減期及び非特異的会合を低減させることができる。定常領域のなお他の改変を使用して、抗原特異性の増強又は抗体柔軟性により局在の増強を可能にするジスルフィド結合又はオリゴ糖部分を改変することができる。得られた改変の生理的プロファイル、生物学的利用率、及び他の生化学作用、例えば生態分布及び血清半減期は、過度の実験を行うことなく、周知の免疫学的技術を使用して容易に測定及び定量することができる。
【0137】
本明細書に提供されるある特定のILT7抗体は、低フコース化されている。Fc Nグリカンのコアフコース残基を欠如する抗体は、低濃度で強いADCCを示し、フコース化相対物と比較して非常に高い有効性を示し、それらはガンマ受容体IIIa(FcFcγRIIIa)に対するその高い結合を通してADCCに対する血清中免疫グロブリンG(IgG)の阻害作用を回避することができる。
【0138】
本発明の抗ILT7抗体はまた、例えば共有結合のために抗体がその同起源のエピトープに特異的に結合するのが防止されることがないように、任意のタイプの分子を抗体に共有結合させることによって改変されている誘導体も含む。例えば、限定されないが、抗体誘導体は、例えばグリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質との結合等によって改変されている抗体を含む。特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化等を含むがこれらに限定されない多数の任意の化学的修飾を、公知の技術によって実施することができる。さらに、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0139】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基に置換されている置換である。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。或いは、コード配列の全て又は一部に沿って、飽和突然変異などの突然変異をランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物活性に関してスクリーニングし、活性(例えば、抗ILT7ポリペプチドの結合能)を保持している突然変異体を同定することができる。
【0140】
例えば、抗体分子のフレームワーク領域のみ又はCDR領域のみに突然変異を導入することが可能である。導入された突然変異は、サイレント又は中立のミスセンス突然変異であり得て、すなわち、抗体の抗原結合能に全く又はほとんど影響を及ぼさない。これらのタイプの突然変異は、コドン使用を最適化するために、又はハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。或いは、非中立のミスセンス突然変異は、抗体の抗原結合能を変化させ得る。ほとんどのサイレント及び中立のミスセンス突然変異の位置はおそらくフレームワーク領域に存在し、ほとんどの非中立のミスセンス突然変異の位置はおそらくCDRに存在するが、これは必ずしも絶対的な必要条件ではない。当業者は、抗原結合活性の変化がないこと又は結合活性の変化(例えば、抗原結合活性の改善又は抗体特異性の変化)などの、所望の特性を有する突然変異体分子を設計及び試験することができるであろう。突然変異誘発後、コードされるタンパク質を慣例通りに発現させ、コードされるタンパク質の機能的及び/又は生物活性(例えば、ILT7ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに免疫特異的に結合する能力)を、本明細書に記載の技術を使用して、又は当技術分野で公知の技術を慣例通りに変更することによって決定することができる。
【0141】
ある特定の実施形態において、本発明の抗ILT7抗体は、少なくとも1つの最適化相補性決定領域(CDR)を含む。「最適化CDR」とは、CDRが改変されていること、並びに最適化配列が、最適化CDRを含む抗ILT7抗体に付与される結合親和性及び/又は抗ILT7活性の維持又は改善に基づいて選択されることを意図する。「抗ILT7活性」は、例えばILT7に関連する以下の活性、例えば形質細胞様樹状細胞からのILT7によるインターフェロン放出、ILT7発現細胞に対する細胞傷害性、又はILT7に関連する他の任意の活性のうちの1つ以上を調節する活性を含み得る。抗ILT7活性はまた、ある特定のタイプの自己免疫状態、例えば全身性紅斑性狼瘡、慢性リウマチ、及び乾癬を含むがこれらに限定されない、ILT7発現に関連する疾患の発生率又は重症度の減少にも起因し得る。改変は、抗ILT7抗体がILT7抗原に対する特異性を保持するように、改善された結合親和性及び/又は改善された抗ILT7活性を保持するように、CDR内のアミノ酸残基の置換を伴い得る。
【0142】
IV.抗ILT7抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードする核酸分子も提供する。
【0143】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、又は242を含む参照VHドメインポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVHドメインをコードする核酸を含む、から本質的になる、又はからなる、単離されたポリヌクレオチドを含み、コードされるVHドメインを含む抗ILT7抗体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する、抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくはその誘導体をコードする。
【0144】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、又は247を含む参照VLドメインポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVLドメインをコードする核酸を含む、から本質的になる、又はからなる、単離されたポリヌクレオチドを含み、コードされるVLドメインを含む抗ILT7抗体は、ILT7に特異的又は優先的に結合する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、形質細胞様樹状細胞からのIFNアルファ放出を阻害する、抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくはその誘導体をコードする。
【0145】
上記のポリヌクレオチドのいずれも、例えば、コードされるポリペプチドの分泌を指示するためのシグナルペプチド、本明細書に記載の抗体定常領域、又は本明細書に記載の他の異種ポリペプチドをコードする追加の核酸をさらに含み得る。同様に、本明細書において他所でより詳細に記載されるように、本発明は、上記のポリヌクレオチドの1つ以上を含む組成物を含む。
【0146】
一実施形態において、本発明は、第1のポリヌクレオチドが本明細書に記載のVHドメインをコードし、第2のポリヌクレオチドが本明細書に記載のVLドメインをコードする、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドを含む組成物を含む。具体的には、組成物は、配列番号11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、161、171、181、191、201、211、221、231、又は241に記載のVHドメインコードポリヌクレオチド、及び配列番号16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、156、166、176、186、196、206、216、226、236、又は246に記載のVLドメインコードポリヌクレオチドを含み得る、から本質的になり得る、又はからなり得る。組成物はまた、配列番号12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、162、172、182、192、202、212、222、232、又は242に記載の配列をコードするVHドメインコードポリヌクレオチド、及び配列番号17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、157、167、177、187、197、207、217、227、237、247、257、又は267に記載の配列をコードするVLドメインコードポリヌクレオチドを含み得る、から本質的になり得る、又はからなり得る。一部の実施形態において、VHドメインコードポリペプチドとVLドメインコードポリペプチドは、同じベクターに存在する。一部の実施形態において、VHドメインコードポリペプチドとVLドメインコードポリペプチドは異なるベクターに存在する。
【0147】
本発明はまた、本明細書において他所で記載される本発明のポリヌクレオチドの断片も含む。さらに、本明細書に記載の融合ポリペプチド、Fab断片、及び他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも同様に、本発明によって企図される。
【0148】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって産生又は製造することができる。例えば、抗体のヌクレオチド配列が既知である場合、抗体をコードするポリヌクレオチドを、化学合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルすることができ(例えば、Kutmeier et al., Bio Techniques 17:242 (1994)に記載されるように)、簡単に説明すると、この方法は、抗体をコードする配列の一部を含有する重なり合うオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、並びにライゲートしたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
【0149】
或いは、抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを、適した起源の核酸から生成することができる。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが利用できないが、抗体分子の配列が既知である場合、抗体をコードする核酸は、化学合成することができるか、又は適した起源(例えば、抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞などの、抗体又は他の抗ILT7抗体を発現する任意の組織又は細胞から作製された抗体cDNAライブラリー若しくはcDNAライブラリー、又はそれらから単離された核酸、例えばポリA+RNA)から、配列の3'及び5'末端とハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得て、例えば抗体又は他の抗ILT7抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを同定することができる。次に、PCRによって生成された増幅された核酸を、当技術分野で周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0150】
抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列を、ヌクレオチド配列を操作するために当技術分野で周知の方法、例えば組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCR等を使用して操作し(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Sambrook et al. (1990) Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.)及びAusubel et al., eds. (1998) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY)に記載される技術を参照されたい)、例えばアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を作製するために異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製することができる。
【0151】
抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、非修飾RNA若しくはDNA、又は修飾RNA若しくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドで構成され得る。例えば抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、若しくはより典型的には二本鎖、若しくは一本鎖及び二本鎖領域の混合物であり得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子で構成され得る。加えて、抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域で構成され得る。抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性のため又は他の任意の理由により修飾された、1つ以上の修飾された塩基、又はDNA若しくはRNA骨格を含有し得る。「修飾された」塩基は、例えば、トリチウム化塩基及びイノシンなどの珍しい塩基を含む。多様な修飾をDNA及びRNAに行うことができ、このため「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的、又は代謝的に修飾された形態を包含する。
【0152】
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリン重鎖部分又は軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然のバリアントをコードする単離されたポリヌクレオチドは、1つ以上のアミノ酸置換、付加、又は欠失が、コードされるタンパク質に導入されるように、1つ以上のヌクレオチド置換、付加、又は欠失を、免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作製することができる。突然変異は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発などの標準的な技術によって導入することができる。保存的アミノ酸置換を1つ以上の非必須アミノ酸残基で行うことができる。
【0153】
V.融合タンパク質及び抗体コンジュゲート
本明細書において他所でより詳細に考察されるように、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、さらに、N若しくはC末端で異種ポリペプチドに組換えにより融合させるか、又はポリペプチド若しくは他の組成物に化学的にコンジュゲートさせる(共有結合及び非共有結合コンジュゲーションを含む)ことができる。例えば、抗ILT7抗体を、検出アッセイにおける標識として有用な分子、及びエフェクター分子、例えば異種ポリペプチド、薬物、放射性核種、又は毒素に組換えにより融合させるか、又はコンジュゲートすることができる。例えばPCT出願国際公開第92/08495号、国際公開第91/14438号、国際公開第89/12624号、米国特許第5,314,995号、及び欧州特許第396,387号を参照されたい。
【0154】
本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、共有結合のために抗体がILT7に結合するのが防止されることがないように改変された、すなわち抗体に任意のタイプの分子を共有結合させることによって改変された誘導体を含み得る。例えば、限定されないが、抗体誘導体は、例えばグリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質との連結等によって修飾されている抗体を含む。多数の任意の化学的修飾を、特定の化学切断、アセチル化、ホルミル化等を含むがこれらに限定されない公知の技術によって行うことができる。さらに、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0155】
抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ペプチド結合又は改変されたペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸、すなわちペプチドアイソスターで構成されることができ、20個の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。例えば、抗ILT7抗体を、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセス又は当技術分野で周知の化学的修飾技術によって改変することができる。そのような改変は、基本のテキスト及びより詳細なモノグラフ、並びに膨大な研究文献に十分に記載されている。改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ若しくはカルボキシル末端、又は炭水化物などの部分を含む抗ILT7結合分子内のいかなる場所でも起こり得る。同じタイプの改変が、所定の抗ILT7結合分子内のいくつかの部位に同じ又は異なる程度で存在し得ると認識されるであろう。同様に、所定の抗ILT7結合分子は、多くのタイプの改変を含有し得る。抗ILT7結合分子は、例えばユビキチン化の結果として分岐であり得て、及びそれらは分岐を伴って又は伴わずに環状であり得る。環状、分岐、及び分岐環状の抗ILT7結合分子は、翻訳後の天然のプロセスに起因し得るか、又は合成方法によって作製することができる。改変には、アセチル化、アシル化、ADPリボース化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合による架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、peg化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介付加、及びユビキチン化が挙げられる(例として、Proteins--Structure and Molecular Properties, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, NY; 2nd ed. (1993)、Johnson, ed. (1983) Posttranslational Covalent Modification of Proteins (Academic Press, NY), pgs. 1-12、Seifter et al., Meth. Enzymol. 182:626-646 (1990)、Rattan et al., Ann. NY Acad. Sci. 663:48-62 (1992)を参照されたい)。
【0156】
本発明はまた、抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体、及び異種ポリペプチドを含む融合タンパク質も提供する。それに対して抗体が融合される異種ポリペプチドは、機能にとって有用であり得るか、又は抗ILT7ポリペプチド発現細胞を標的とするために有用である。
【0157】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVHドメインの任意の1つ以上のアミノ酸配列、又は本発明の抗体、又はその断片、バリアント、若しくは誘導体のVLドメインの任意の1つ以上のアミノ酸配列、及び異種ポリペプチド配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、又はからなる。
【0158】
別の実施形態において、本明細書に開示の診断及び処置方法に使用するための融合タンパク質は、抗ILT7抗体、又はその断片、バリアント、若しくは誘導体のVHドメインのCDRの任意の1つ、2つ、若しくは3つのアミノ酸配列、又は抗ILT7抗体、若しくはその断片、バリアント、若しくは誘導体のVLドメインのCDRの任意の1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、及び異種ポリペプチド配列を有するポリペプチドを含む、から本質的になる、又はからなる。一実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗ILT7抗体の少なくとも1つのVHドメインのアミノ酸配列、及び本発明の抗ILT7抗体、又はその断片、誘導体、若しくはバリアントの少なくとも1つのVLドメインのアミノ酸配列、及び異種ポリペプチド配列を有するポリペプチドを含む。一部の実施形態において、融合タンパク質のVH及びVLドメインは、ILT7の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する単一起源の抗体(又はscFv若しくはFab断片)に対応する。なお別の実施形態において、本明細書に開示の診断及び処置方法に使用するための融合タンパク質は、抗ILT7抗体のVHドメインのCDRの任意の1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸配列、及び抗ILT7抗体、又はその断片、若しくはバリアントのVLドメインのCDRの任意の1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸配列、及び異種ポリペプチド配列を有するポリペプチドを含む。一部の実施形態において、VHドメイン又はVLドメインのCDRの2、3、4、5、6個又はそれ以上は、本発明の単一起源の抗体(又はscFv若しくはFab断片)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた、本発明に包含される。
【0159】
文献に報告されている例示的な融合タンパク質には、T細胞受容体(Gascoigne et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2936-2940 (1987))、CD4(Capon et al., Nature 337:525-531 (1989)、Traunecker et al., Nature 339:68-70 (1989)、Zettmeissl et al., DNA Cell Biol. USA 9:347-353 (1990)、及びByrn et al., Nature 344:667-670(1990))、L-セレクチン(ホーミング受容体)(Watson et al., J. Cell. Biol. 110:2221-2229 (1990)、及びWatson et al., Nature 349:164-167 (1991))、CD44(Aruffo et al., Cell 61:1303-1313 (1990))、CD28及びB7(Linsley et al., J. Exp. Med. 173:721-730 (1991))、CTLA-4 (Lisley et al., J. Exp. Med. 174:561-569 (1991))、CD22(Stamenkovic et al., Cell 66:1133-1144 (1991))、TNF受容体(Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539 (1991)、Lesslauer et al., Eur. J. Immunol. 27:2883-2886 (1991)、及びPeppel et al., J. Exp. Med. 174:1483-1489 (1991))、及びIgE受容体a (Ridgway and Gorman, J. Cell. Biol. Vol. 115, Abstract No. 1448 (1991))が挙げられる。
【0160】
本明細書において他所で考察したように、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、ポリペプチドのin vivo半減期を増加させるために、又は当技術分野で公知の方法を使用してイムノアッセイに使用するために、異種ポリペプチドに融合させることができる。例えば、一実施形態において、in vivoでのその半減期を増加させるために、PEGを本発明の抗ILT7抗体にコンジュゲートさせることができる。Leong et al., Cytokine 16:106 (2001)、Adv. in Drug Deliv. Rev. 54:531 (2002)、又はWeir et al., Biochem. Soc. Transactions 30:512 (2002)を参照されたい。
【0161】
その上、抗ILT7結合分子、例えば、本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、その精製又は検出を容易にするためのペプチドなどのマーカー配列に融合させることができる。一部の実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、中でもpQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)において提供されるタグなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、その多くは市販されている。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824 (1989)に記載されているように、例として、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。精製にとって有用な他のペプチドタグには、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilson et al., Cell 37:767 (1984))、及び「flag」タグが挙げられるがこれらに限定されない。
【0162】
融合タンパク質は、当技術分野で周知である方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号及び第5,225,538号を参照されたい)。融合体が作製される正確な部位は、融合タンパク質の分泌又は結合特徴を最適化するために経験的に選択することができる。次に、融合タンパク質をコードするDNAを、発現のために宿主細胞にトランスフェクトする。
【0163】
抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、例えば分子の治療特性を改善するため、標的の検出を容易にするため、又は患者のイメージング若しくは治療のために、非コンジュゲート型で使用することができ、又は多様な分子の少なくとも1つにコンジュゲートさせることができる。抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、精製の前若しくは後、又は精製を実施する際に標識又はコンジュゲートすることができる。
【0164】
特に、本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物応答修飾剤、薬剤、又はPEGにコンジュゲートさせることができる。
【0165】
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲートされる選択した薬剤に応じて、多様な技術を使用してアセンブルすることができることを認識するであろう。例えば、結合ポリペプチドをビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのビオチンの活性化エステルと反応させることによって、ビオチンとのコンジュゲートを調製する。同様に、蛍光マーカーとのコンジュゲートを、カップリング剤、例えば本明細書に記載のカップリング剤の存在下で、又はフルオレセインイソチオシアネートなどのイソチオシアネートとの反応によって、調製することができる。本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体のコンジュゲートは、類似の方法で調製される。
【0166】
本発明はさらに、診断剤又は治療剤にコンジュゲートされた、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を包含する。その抗原結合断片、バリアント、及び誘導体を含む抗ILT7抗体は、例えば臨床試験手順の一部として疾患の発生又は進行をモニターするために、例えば所定の処置の有効性及び/又は防止レジメンを決定するために、診断的に使用することができる。例えば、抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を検出可能な物質にカップリングさせることによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射活性材料、様々なポジトロンエミッショントモグラフィーを使用する陽電子射出金属、及び非放射活性常磁性金属イオンが挙げられる。例えば、本発明に従う診断薬として使用するために抗体にコンジュゲートさせることができる金属イオンに関する米国特許第4,741,900号を参照されたい。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン、及びアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、又はフィコエリスリンが挙げられ、発光材料の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光材料の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ、並びに適した放射活性材料の例には、125I、131I、111In、90Y、又は99Tcが挙げられる。
【0167】
抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はまた、化学発光化合物にそれをカップリングさせることによって、検出可能に標識することができる。次に、化学発光タグをつけた抗ILT7結合分子の存在を、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することによって決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルである。
【0168】
抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を検出可能に標識することができる方法の1つは、これを酵素に連結すること及び酵素イムノアッセイ(EIA)において連結した産物を使用することである(Voller, A., "The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)" Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, Md.; Diagnostic Horizons 2:1-7 (1978)、Voller et al., J. Clin. Pathol. 31:507-520 (1978)、Butler, Meth. Enzymol. 73:482-523 (1981)、Maggio, ed. (1980) Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, Fla.、Ishikawa et al., eds. (1981) Enzyme Immunoassay (Kgaku Shoin, Tokyo)。抗ILT7抗体に結合した酵素は、適切な基質、例えば発色基質と、例えば分光光度法、蛍光測定法、又は視覚的手段によって検出することができる化学部分を生じるように反応する。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、検出は、酵素の発色基質を使用する比色測定法によって達成することができる。検出はまた、同様に調製した標準物質との比較で基質の酵素反応の程度の視覚的比較によって達成することができる。
【0169】
検出はまた、多様な他のイムノアッセイのいずれかを使用して行われ得る。例えば、抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を放射活性標識することによって、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用することを通して結合分子を検出することが可能である(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Weintraub (March, 1986) Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques (The Endocrine Society)を参照されたい)。放射活性同位元素は、ガンマカウンター、シンチレーションカウンター、又はオートラジオグラフィーを含むがこれらに限定されない手段によって検出することができる。
【0170】
抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はまた、152Euなどの蛍光発光金属、又はランタニドシリーズの他の金属を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を使用して結合分子に結合させることができる。
【0171】
様々な部分を抗体(例えば、抗ILT7抗体)又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体にコンジュゲートする技術は周知であり、例えばAmon et al. (1985) "Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy," in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, ed. Reisfeld et al. (Alan R. Liss, Inc.), pp. 243-56、Hellstrom et al. (1987) "Antibodies for Drug Delivery," in Controlled Drug Delivery, ed. Robinson et al. (2nd ed.; Marcel Dekker, Inc.), pp. 623-53)、Thorpe (1985) "Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review," in Monoclonal Antibodies '84: Biological and Clinical Applications, ed. Pinchera et al., pp. 475-506、"Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy," in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy, ed. Baldwin et al., Academic Press, pp. 303-16 (1985)、及びThorpe et al. (1982) "The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates," Immunol. Rev. 62:119-58を参照されたい。
【0172】
VI.抗体ポリペプチドの発現
抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNA配列は、周知の方法に従って、逆転写酵素及びDNAポリメラーゼを使用して同時又は個別のいずれかによって作製することができる。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、又は公表された重鎖及び軽鎖DNA並びにアミノ酸配列に基づいてより特異的なプライマーによって開始することができる。上記で考察したように、PCRはまた、抗体軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用することができる。この場合、ライブラリーをマウス定常領域プローブなどの、コンセンサスプライマー又はより大きい相同なプローブによってスクリーニングすることができる。
【0173】
DNA、典型的にプラスミドDNAは、当技術分野で公知の技術を使用して細胞から単離し、制限酵素マッピングし、例えば組換えDNA技術に関連する前述の参考文献に詳細に記載される標準的な周知の技術に従ってシークエンシングすることができる。当然のこととして、DNAは、単離方法又はその後の解析の間の任意の時点で本発明に従って合成であり得る。
【0174】
抗ILT7抗体、又は本発明の抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を提供するための単離された遺伝子材料の操作後、抗ILT7抗体をコードするポリヌクレオチドは、典型的に、抗ILT7抗体の所望の量を産生するために使用することができる宿主細胞に導入するための発現ベクターに挿入される。
【0175】
抗体、その断片、バリアント、若しくは誘導体、例えば本明細書に記載の標的分子、例えばILT7に結合する抗体の重鎖又は軽鎖の組換え発現は、抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。本発明の抗体分子又は抗体の重鎖若しくは軽鎖、又はその一部(例えば、重鎖又は軽鎖可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生するためのベクターを、当技術分野で周知の技術を使用して組換えDNA技術によって産生することができる。このように、抗体コードヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによって、タンパク質を調製する方法を本明細書に記載する。当業者に周知の方法を使用して、抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えばin vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換えを含む。本発明は、このように、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、又はその重鎖若しくは軽鎖、又は重鎖若しくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、PCT出願国際公開第86/05807号、PCT出願国際公開第89/01036号、及び米国特許第5,122,464号を参照されたい)、抗体の可変ドメインを、完全な重鎖又は軽鎖の発現のためにそのようなベクターにおいてクローニングすることができる。
【0176】
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、本明細書において、所望の遺伝子を宿主細胞に導入して発現させるための媒体として本発明に従って使用されるベクターを意味するために使用される。当業者に公知であるように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、及びレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。一般的に、本発明と適合性であるベクターは、所望の遺伝子のクローニングを容易にするため、並びに真核細胞又は原核細胞に入る及び/又は複製する能力を容易にするために、選択マーカー、適切な制限部位を含む。
【0177】
本発明の目的に関して、多数の発現ベクター系を使用することができる。例えば、1つのクラスのベクターは、ウシ乳頭腫ウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV、又はMOMLV)又はSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。他のベクターは、内部リボソーム進入部位と共にポリシストロニック系を使用することを伴う。加えて、DNAがその染色体に組み入れられている細胞は、トランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択することができる。マーカーは、栄養要求宿主に原栄養性、殺生物剤(例えば、抗生物質)耐性、又は銅などの重金属に対する耐性を提供することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結させることができるか、又は同時形質転換によって同じ細胞に導入することができる。追加のエレメントもまた、mRNAの最適な合成にとって必要であり得る。これらのエレメントは、シグナル配列、スプライスシグナル、並びに転写プロモーター、エンハンサー、及び終止シグナルを含み得る。
【0178】
一部の実施形態において、クローニングされた可変領域遺伝子を、上記で合成された重鎖及び軽鎖定常領域遺伝子(例えば、ヒト)と共に発現ベクターに挿入する。当然、真核細胞において発現を誘発することができる任意の発現ベクターを本発明に使用することができる。適したベクターの例には、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF 1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1、及びpZeoSV2(Invitrogen、San Diego、Calif.から入手可能)、及びプラスミドpCI(Promega、Madison、Wis.から入手可能)が挙げられるがこれらに限定されない。一般的に、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の適した高レベルを発現するベクターに関して多数の形質転換細胞をスクリーニングすることは、例えばロボットシステムによって実行することができる慣例通りの実験である。
【0179】
より一般的に、抗ILT7抗体の単量体サブユニットをコードするベクター又はDNA配列を調製した後、発現ベクターを適切な宿主細胞に導入することができる。プラスミドの宿主細胞への導入は、当業者に周知の様々な技術によって達成することができる。これらには、トランスフェクション(電気泳動及び電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、及びインタクトウイルスによる感染が挙げられるがこれらに限定されない。Ridgway (1988) "Mammalian Expression Vectors" in Vectors, ed. Rodriguez and Denhardt (Butterworths, Boston, Mass.), Chapter 24.2, pp. 470-472を参照されたい。典型的に、宿主へのプラスミドの導入は電気穿孔を介して行われる。発現構築物を有する宿主細胞を、軽鎖及び重鎖の産生にとって適切な条件下で成長させ、重鎖及び/又は軽鎖タンパク質合成に関してアッセイする。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は蛍光活性化細胞選別解析(FACS)、免疫組織化学等が挙げられる。
【0180】
発現ベクターを、従来の技術によって宿主細胞に移入し、トランスフェクトされた細胞を、本明細書に記載の方法に使用する抗体を産生するために従来の技術によって培養する。このように、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体又はその重鎖若しくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含む。二本鎖抗体の発現に関する一部の実施形態において、重鎖及び軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述するように完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において同時発現させることができる。
【0181】
本明細書に使用される「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を指す。組み換えた宿主から抗体を単離するための方法の説明において、用語「細胞」及び「細胞培養」は、明らかに指定していない限り、抗体の供給源を指すために互換的に使用される。言い換えれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、細胞全体の遠心沈降によって、又は培地及び浮遊細胞の両方を含有する細胞培養のいずれかによることを意味し得る。
【0182】
多様な宿主発現ベクター系を利用して、本明細書に記載の方法に使用するための抗体分子を発現させることができる。そのような宿主発現系は、目的のコード配列を産生し、その後精製することができる媒体を表すが、適切なヌクレオチドコード配列によって形質転換又はトランスフェクトした場合に、本発明の抗体分子をin situで発現することができる細胞も表す。これらには、抗体コード配列を含有する、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターによって形質転換した細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B. subtilis));抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターによって形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia))などの微生物;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、若しくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)によって形質転換された、植物細胞系;又は哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)若しくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BLK、293、3T3細胞)が挙げられるがこれらに限定されない。特に組換え抗体分子全体を発現させるための大腸菌などの細菌細胞又は真核細胞は、組換え抗体分子を発現させるために使用される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、例えばヒトサイトメガロウイルスの主要な中間初期遺伝子プロモーターエレメントを含むベクターと共に、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., Gene 45:101 (1986)、Cockett et al., Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0183】
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は、しばしば哺乳動物起源の細胞であり、当業者は、その中で発現される所望の遺伝子産物にとって最も適した特定の宿主細胞株を決定する能力を有すると考えられる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40 T抗原によるCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎)、MDCK、293、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、及び293(ヒト腎臓)が挙げられるがこれらに限定されない。宿主細胞株は典型的に、営利サービスであるAmerican Tissue Culture Collection、又は公表された文献から入手可能である。
【0184】
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、又は望ましい特定の方法で遺伝子産物を修飾及び処理する宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾にとって特徴的で特異的な機構を有する。発現される外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングが確実に得られるように、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。この目的に関して、遺伝子産物の一次転写物の適切なプロセシング、グリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を保有する真核宿主細胞を使用することができる。
【0185】
組換えタンパク質の長期的な、高収量の産生のために、安定な発現は有用である。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を操作することができる。ウイルスの複製開始点を含有する発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)によって制御されるDNA及び選択可能マーカーによって形質転換することができる。異物DNAの導入後、操作された細胞を、集積培地中で1~2日間成長させた後、選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞は、プラスミドをその染色体に安定に組み込んで、増殖巣を形成することができ、次にこれをクローニングして、細胞株へと拡大することができる。この方法は、抗体分子を安定に発現する細胞株を操作するために有利に使用することができる。
【0186】
以下を含むがこれらに限定されない多数の選択系を使用することができ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska and Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22:817 (1980))遺伝子はそれぞれ、tk-、hgprt-、又はaprt-細胞において使用することができる。同様に、抗代謝物耐性を、以下の遺伝子の選択の基礎として使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77:357 (1980)、O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981))、ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan and Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981))、アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo、Clinical Pharmacy 12:488-505、Wu and Wu, Biotherapy 3:87-95 (1991)、Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596 (1993)、Mulligan, Science 260:926-932 (1993)、及びMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217 (1993)、 TIB TECH 11(5):155-215 (May, 1993)、並びにハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30:147 (1984))。使用することができる組換えDNA技術に関する当技術分野で一般的に公知の方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Ausubel et al. (1993) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY)、Kriegler (1990) "Gene Transfer and Expression" in A Laboratory Manual (Stockton Press, NY)、Dracopoli et al. (eds) (1994) Current Protocols in Human Genetics (John Wiley & Sons, NY) Chapters 12 and 13、Colberre-Garapin et al. (1981) J. Mol. Biol. 150:1に記載されている。
【0187】
抗体分子の発現レベルは、ベクターの増幅によって増加させることができる(論評に関しては、Bebbington and Hentschel (1987) "The Use of Vectors Based on Gene Amplification for the Expression of Cloned Genes in Mammalian Cells in DNA Cloning" (Academic Press, NY) Vol. 3を参照されたい)。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物に存在する阻害剤のレベルが増加すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。増幅された領域が抗体遺伝子に関連することから、抗体の産生もまた増加する(Crouse et al., Mol. Cell. Biol. 3:257 (1983))。
【0188】
In vitro産生は、所望のポリペプチドの大量を生じる規模拡大を可能にする。組織培養条件下で哺乳動物細胞を培養する技術は、当技術分野で公知であり、例えばエアリフトリアクター若しくは連続攪拌リアクターでの均質な浮遊培養、又は例えば中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ若しくはセラミックカートリッジ上での固定若しくは捕捉細胞培養が挙げられる。必要であれば、及び/又は望ましければ、ポリペプチドの溶液を、例えば合成ヒンジ領域ポリペプチドの選択的生合成後に、又は本明細書に記載のHICクロマトグラフィーステップの前若しくは後に、通例のクロマトグラフィー方法、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースでのクロマトグラフィー、又は(イムノ)アフィニティクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0189】
本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をコードする遺伝子はまた、昆虫、細菌、又は酵母又は植物細胞などの非哺乳動物細胞においても発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌は、大腸菌又はサルモネラ(Salmonella)株などの腸内細菌のメンバー、バシラス科(Bacillaceae)、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が挙げられる。細菌において発現されると、異種ポリペプチドは典型的に封入体の一部となることがさらに認識される。異種ポリペプチドは、単離、精製された後、機能的分子へとアセンブルされなければならない。抗体の四価型が望ましい場合、サブユニットは、四価抗体へと自己アセンブルする(国際公開第02/096948A2号)。
【0190】
細菌系において、発現される抗体分子に関して意図される使用に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体分子の医薬組成物を作製するために、そのようなタンパク質の大量を産生すべきである場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベル発現を指示するベクターが望ましいベクターであり得る。そのようなベクターには、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列をlacZコード領域とインフレームでベクターに個々にライゲートすることができる大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2:1791 (1983))、pINベクター(Inouye and Inouye, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109 (1985)、Van Heeke and Schuster, J. Biol. Chem. 24:5503-5509 (1989))等が挙げられるがこれらに限定されない。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用することができる。一般的に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着及び結合後に、遊離のグルタチオンの存在下で溶出させることによって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出することができるように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
【0191】
原核細胞に加えて、真核微生物も同様に使用することができる。サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)又は一般的なパン酵母は、真核微生物の中でも最も一般的に使用されるが、多数の他の株、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)も一般的に利用可能である。
【0192】
サッカロミセスにおける発現に関して、例えばプラスミドYRp7(Stinchcomb et al., Nature 282:39 (1979)、Kingsman et al., Gene 7:141 (1979)、Tschemper et al., Gene 10:157 (1980))が一般的に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中での成長能を欠如している酵母の突然変異体株、例えばATCC No. 44076又はPEP4-1(Jones, Genetics 85:12 (1977))の選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1病変の存在は、トリプトファンの非存在下での成長によって形質転換を検出するための有効な環境を提供する。
【0193】
昆虫系において、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)は、典型的に外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列を、ウイルスの非必須領域(例えば、多核体遺伝子)において個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、多核体プロモーター)の制御下に置くことができる。
【0194】
本発明の結合分子が組換えにより発現されている場合、これを、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、特にプロテインA後の特異的抗原に対するアフィニティによって、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差、又は他の任意の標準的なタンパク質精製技術によって、免疫グロブリン分子の精製に関して当技術分野で公知の任意の方法によって精製することができる。或いは、本発明の抗体の親和性を増加させる有益な方法が米国特許出願公開第20020123057号A1に開示されている。
【0195】
VII.治療的抗ILT7結合分子を使用する処置方法
本発明の方法は、ILT7発現又はILT7発現細胞に関連する疾患を有する患者を処置するために、抗ILT7結合分子、例えば、その抗原結合断片、バリアント及び誘導体を含む抗体の使用に関する。「ILT7発現細胞」は、ILT7抗原を発現する細胞を意図する。細胞におけるILT7発現を検出する方法は当技術分野で周知であり、これには、PCR技術、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、ELISA等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0196】
以下の考察は、本発明の抗ILT7抗体を有する様々な疾患及び障害の診断方法及び処置を指すが、本明細書に開示の方法はまた、本発明の抗ILT7抗体の所望の特性を保持している、例えばILT7に特異的に結合することができ、及びILT7病原性活性を中和することができるこれらの抗ILT7抗体の抗原結合断片、バリアント、及び誘導体にも適用可能である。
【0197】
一実施形態において、処置は、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体又はその結合断片、バリアント、若しくは誘導体を、対象若しくは患者に適用若しくは投与すること、又は疾患、疾患の症状、若しくは疾患に対する素因を有する対象若しくは患者からの単離された組織若しくは細胞株に抗ILT7結合分子を適用若しくは投与することを含む。別の実施形態において、処置はまた、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を含む医薬組成物を、対照若しくは患者に適用若しくは投与すること、又は疾患、疾患の症状、若しくは疾患に対する素因を有する対象若しくは患者からの単離された組織若しくは細胞株に抗ILT7結合分子を含む医薬組成物を適用若しくは投与することを含む。
【0198】
抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、様々な自己免疫状態の処置にとって有用である。例えば、少なくとも1つの抗ILT7抗体による治療は、ヒトにおけるILT7発現細胞に関連する疾患状態の処置に関して有益である生理的応答、例えばインターフェロンの低減を引き起こす。
【0199】
一実施形態において、本発明は、特に自己免疫状態又は疾患の処置又は予防に使用するための、抗ILT7結合分子、例えば抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体に関する。自己免疫疾患の例には、筋炎、糖尿病、橋本病、自己免疫性副腎不全、赤芽球ろう、多発性硬化症、リウマチ性心臓炎、全身性紅斑性狼瘡、乾癬、リウマチ性関節炎、慢性炎症、シェーグレン症候群、多発筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、若年性筋炎、及び強皮症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0200】
本発明の方法に従って、少なくとも1つのILT7結合分子、例えば本発明の他所で定義した抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、自己免疫応答に関する正の治療応答を促進するために使用される。自己免疫処置に関連して「正の治療応答」とは、これらの結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の活性に関連する疾患の改善、及び/又は疾患に関連する症状の改善を意図する。すなわち、インターフェロン-アルファレベルの減少、形質細胞様樹状細胞の数若しくは活性の減少、又は疾患に関連する1つ以上の症状の減少を観察することができる。このように、例えば、疾患の改善は、完全奏効として特徴付けすることができる。「完全奏効」は、これまでの任意の試験結果の標準化を伴う臨床的に検出可能な疾患が存在しないことと意図される。そのような応答は、本発明の方法に従う処置後少なくとも1ヶ月間持続しなければならない。或いは、疾患の改善は、部分奏効であると分類することができる。
【0201】
抗ILT7結合分子、例えば本発明に記載の抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はまた、自己免疫疾患、及びILT7発現細胞に関連する免疫系の欠損又は障害の処置に有用であり得る。自己免疫疾患は、その自身の細胞、組織、及び/又は臓器に対する対象の免疫反応によって引き起こされる細胞、組織、及び/又は臓器の損傷によって特徴付けされる。一実施形態において、自己免疫疾患は全身性紅斑性狼瘡である。
【0202】
臨床応答は、核磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、X-放射線画像法、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー若しくは蛍光活性化細胞選別(FACS)分析、組織学、肉眼的所見、及びELISA、RIA、クロマトグラフィー等によって検出可能な変化を含むがこれらに限定されない血液化学などのスクリーニング技術を使用して評価することができる。これらの正の治療応答に加えて、抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体による治療を受けている対象は、疾患に関連する症状の改善の有益な効果を経験することができる。
【0203】
本発明のさらなる実施形態は、例えば所定の処置レジメンの有効性を決定するために、臨床検査手順の一部として組織中のタンパク質レベルの診断的モニタリングのための抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の使用である。例えば、検出可能な物質に抗体をカップリングさせることによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、及び放射活性材料が挙げられる。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、又はフィコエリスリンが挙げられ、発光材料の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光材料の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ、並びに適した放射活性材料の例には、125I、131I、35S、又は3Hが挙げられる。
【0204】
VIII.医薬組成物及び投与方法
抗ILT7結合分子、例えば本明細書に提供する抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を調製して、それを必要とする対象に投与する方法は、当業者に周知であり、容易に決定される。
【0205】
本明細書において考察されるように、抗ILT7結合分子、例えば本明細書に提供する抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、特定のタイプの自己免疫疾患などのILT7発現細胞媒介疾患のin vivo処置のために薬学的有効量で投与することができる。この点において、本発明の開示の結合分子は、活性物質の投与を容易にし、安定性を促進するように製剤化されると認識されるであろう。本発明に従う医薬組成物は、薬学的に許容可能な、非毒性の滅菌担体を含み得る。本出願の目的に関して、コンジュゲートされた又はコンジュゲートされていない、抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、標的に対する有効な結合を達成するため及び恩典を達成するため、例えば疾患若しくは状態の症状を改善するために、又は物質若しくは細胞を検出するために十分な量を意味すると考えられる。
【0206】
注射剤にとって適した医薬組成物は無菌的でなければならず、容易なシリンジ作動性が存在する程度に流動性でなければならない。これは製造及び貯蔵の条件で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して有益に保存される。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤によって達成することができる。本明細書に開示の治療方法に使用するための適した製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.) 16th ed. (1980)に記載されている。
【0207】
本開示の範囲と一致して、本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、治療効果を生じるために十分な量で上記の処置方法に従ってヒト又は他の動物に投与することができる。本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、公知の技術に従って、本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体を、通常の薬学的に許容される担体若しくは希釈剤と混合することによって調製された通常の投与剤形で、そのようなヒト又は他の動物に投与することができる。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形状及び特徴は、それが混合される活性成分の量、投与経路、及び他の周知の変数によって左右されることは当業者に認識されるであろう。当業者は、抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の1つ以上の種を含むカクテルが、特に有効であることが証明され得ることをさらに認識するであろう。
【0208】
「治療有効用量又は量」又は「有効量」は、投与した場合に、処置される疾患又は状態を有する患者の処置に関して正の治療応答をもたらす抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の量を意図する。
【0209】
例えば全身性紅斑性狼瘡を含む特定のタイプの自己免疫疾患などのILT7発現細胞媒介疾患の処置のための、本発明の組成物の治療有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防的であるか又は治療的であるかを含む、多くの異なる要因に応じて変化する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も同様に処置することができる。安全性及び有効性を最適化するために、処置の用量を滴定することができる。
【0210】
本発明はまた、例えば全身性紅斑性狼瘡を含む自己免疫疾患を処置するための薬剤の製造における、抗ILT7結合分子、例えば抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の使用も提供する。
【0211】
IX.診断
本発明は、例えば全身性紅斑性狼瘡を含む特定のタイプの自己免疫疾患などのILT7発現細胞媒介疾患の診断の際に有用である診断方法をさらに提供し、方法は、個体の組織又は他の細胞又は体液中のILT7タンパク質又は転写物の発現レベルを測定すること、及び測定された発現レベルを、正常な組織又は体液中の標準的なILT7発現レベルと比較することを伴い、それによって、標準物質と比較して発現レベルが増加すれば、障害が示される方法を提供する。
【0212】
本発明の抗ILT7抗体及びその抗原結合断片、バリアント、及び誘導体を使用して、当業者に公知の古典的な免疫組織化学的方法を使用して生物試料中のILT7タンパク質レベルをアッセイすることができる(例えば、Jalkanen, et al., J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985)、Jalkanen et al., J. Cell Biol. 105:3087-3096 (1987)を参照されたい)。ILT7タンパク質発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、又はウェスタンブロッティングなどのイムノアッセイを含む。適したアッセイを、本明細書において他所でより詳細に記載する。
【0213】
「ILT7ポリペプチドの発現レベルをアッセイする」とは、第1の生物試料中のILT7ポリペプチドのレベルを直接(例えば、絶対的なタンパク質レベルを決定又は推定することによって)、又は相対的に(例えば、第2の生物試料中の疾患関連ポリペプチドレベルを比較することによって)、定性的又は定量的に測定又は推定することを意図する。第1の生物試料中のILT7ポリペプチド発現レベルを測定又は推定して、標準的なILT7ポリペプチドレベルと比較することができ、標準物質は、障害を有しない個体から得られた第2の生物試料から採取されているか、又は障害を有しない個体集団からのレベルを平均化することによって決定される。当技術分野で認識されているように、「標準物質」ILT7ポリペプチドレベルが既知である場合、比較のための標準物質として繰り返し使用することができる。
【0214】
「生物試料」とは、ILT7を潜在的に発現する個体、細胞株、組織培養、又は他の細胞起源から得た任意の生物試料を意図する。哺乳動物から組織生検及び体液を得る方法は、当技術分野で周知である。
【0215】
X.イムノアッセイ
抗ILT7結合分子、例えば本発明の抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体は、当技術分野で公知の任意の方法によって、免疫特異的結合に関してアッセイすることができる。使用することができるイムノアッセイには、例を挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する競合及び非競合アッセイが挙げられるがこれらに限定されない。そのようなアッセイは慣例通りであり、当技術分野で周知である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Ausubel et al., eds, (1994) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc., NY) Vol. 1を参照されたい)。例示的なイムノアッセイは以下に簡潔に記載されている(しかし、制限することを意図しない)。
【0216】
本発明の抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体はさらに、in situでのILT7タンパク質又は保存されたそのバリアント若しくはペプチド断片の検出のために、免疫蛍光、免疫電子顕微鏡、又は非免疫学的アッセイにおいて組織学的に使用することができる。In situ検出は、患者から組織学標本を採取すること、及び例えば生物試料の上に標識抗体(又は断片)を重ねることによって適用される、標識された抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体をそれに適用することによって達成することができる。そのような手順の使用を通して、ILT7タンパク質、又は保存されたバリアント若しくはペプチド断片の存在のみならず、試験した組織におけるその分布を決定することが可能である。本発明を使用して、当業者は、広く多様な任意の組織学的方法(染色手順などの)を、そのようなin situ検出を達成するために変更することができることを容易に認識するであろう。
【0217】
ILT7遺伝子産物又はその保存されたバリアント若しくはペプチド断片のイムノアッセイ及び非イムノアッセイは、典型的に試料、例えば生物学的液体、組織抽出物、新しく採取した細胞、又は細胞培養において、ILT7、又はその保存されたバリアント若しくはペプチド断片に結合することができる検出可能に標識された抗体の存在下でインキュベートされている細胞の溶解物などの試料をインキュベートすること、並びに当技術分野で周知の多数の技術のいずれかによって結合抗体を検出することを含む。
【0218】
生物試料は、ニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞、細胞粒子、若しくは可溶性タンパク質を固定することができる他の固相支持体に接触させて固定することができる。次に支持体を、検出可能に標識された抗ILT7抗体、又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体による処置後に適した緩衝液によって洗浄することができる。次に固相支持体を緩衝液によって2回洗浄し、非結合抗体を除去することができる。任意選択で、抗体をその後標識する。固相支持体上の結合した標識の量を、従来の手段によって検出することができる。
【0219】
「固相支持体又は担体」とは、抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体を意図する。周知の支持体又は担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、及び磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、ある程度の可溶性であるか、又は本発明の目的に関して不溶性であり得る。支持体材料は、カップリングした分子が抗原又は抗体に結合することができる限り、実質的に任意の起こり得る構造的立体配置を有し得る。このため、支持体の形状は、球形、ビーズ、円柱、試験管の内部表面、又は棹の外部表面であり得る。或いは、表面は、シート、試験片等などの平坦であり得る。例示的な支持体にはポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は、抗体若しくは抗原を結合するための多くの他の適した担体を承知しているか、又は慣例通りの実験を使用することによってこれらを確認することができるであろう。
【0220】
所定のロットの抗ILT7抗体又はその抗原結合断片、バリアント、若しくは誘導体の結合活性は、周知の方法に従って決定することができる。当業者は、慣例通りの実験を使用することによってそれぞれの決定のための操作条件及び最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
【0221】
抗体の抗原に対する結合親和性及び抗体-抗原相互作用のオフレートは、競合的結合アッセイによって決定することができる。競合的結合アッセイの一例は、標識した抗原(例えば、3H又は125I)を増加量の非標識抗原の存在下で目的の抗体と共にインキュベートすること、及び標識した抗原に結合した抗体を検出することを含むラジオイムノアッセイである。特定の抗原に対する目的の抗体の親和性及び結合のオフレートは、スキャッチャードプロット解析によってデータから決定することができる。二次抗体との競合はまた、ラジオイムノアッセイを使用して決定することもできる。この場合、抗原は、非標識二次抗体の増加量の存在下で、標識した化合物(例えば、3H又は125I)にコンジュゲートした目的の抗体と共にインキュベートする。
【0222】
抗体-抗原相互作用の親和性を測定するために利用可能な多様な方法が存在するが、速度定数を決定する方法は比較的少ない。方法のほとんどは、標識抗体又は抗原のいずれかに依存し、これによって慣例通りの測定は必然的に複雑となり、測定された量に不確かさを導入する。
【0223】
BIACORE(登録商標)において実施される表面プラズモン共鳴(SPR)は、抗体-抗原相互作用の親和性を測定する従来の方法と比較して多数の利点、すなわち(i)抗体又は抗原のいずれも標識する必要がないこと、(ii)抗体を予め精製する必要がなく、細胞培養上清を直接使用することができること、(iii)異なるモノクローナル抗体相互作用の迅速な半定量的比較を可能にするリアルタイム測定が可能であり、多くの評価目的にとって十分であること、(iv)一連の異なるモノクローナル抗体を同一の条件で容易に比較することができるように、生体特異的表面を再生することができること、(v)解析手順が完全に自動化され、ユーザーが介入することなく、広範な一連の測定を実施することができること、をもたらす。BIAapplications Handbook, version AB (1998年再版), BIACORE(登録商標)コード番号BR-1001-86; BIAtechnology Handbook, version AB (1998年再版), BIACORE(登録商標)コード番号BR-1001-84。SPRに基づく結合試験は、結合対の1つのメンバーがセンサー表面上に固定される必要がある。固定された結合パートナーをリガンドと呼ぶ。溶液中の結合パートナーを、検体と呼ぶ。一部の例において、リガンドは、捕捉分子と呼ばれる別の固定された分子との結合を通して表面に間接的に結合する。SPR応答は、検体が結合又は解離する際の検出器表面上の質量濃度の変化を反映する。
【0224】
SPRに基づくと、リアルタイムBIACORE(登録商標)測定は、それらの発生時に直接相互作用をモニターする。技術は、速度論パラメータを決定するために十分に適している。比較可能な親和性ランキングを実施するのは容易であり、速度論及び親和性定数の両方をセンサーグラムデータから誘導することができる。
【0225】
検体を個別のパルスでリガンド表面全体に注入する場合、得られたセンサーグラムは、3つの必須の相、すなわち(i)試料注入時の検体とリガンドとの会合、(ii)検体の結合速度が複合体からの解離と平衡がとれている場合は、試料注入時の平衡又は定常状態、(iii)緩衝液の流れの際の表面からの検体の解離、に分類することができる。
【0226】
結合及び解離相は、検体-リガンド相互作用の速度論に関する情報(ka及びkd、複合体の形成速度と解離速度、kd/ka=KD)を提供する。平衡相は、検体-リガンド相互作用の親和性(KD)に関する情報を提供する。
【0227】
BIA評価ソフトウェアは、数値の積分及びグローバルフィッティングアルゴリズムの両方を使用してカープフィッティングのための包括的な便宜を提供する。データの適した解析により、相互作用に関する個別の速度及び親和性定数を、単純なBIACORE(登録商標)試験から得ることができる。この技術によって測定可能な親和性の範囲は、非常に広く、mM~pMの範囲である。
【0228】
エピトープ特異性は、モノクローナル抗体の重要な特徴である。BIACORE(登録商標)によるエピトープマッピングは、ラジオイムノアッセイ、ELISA、又は他の表面吸着法を使用する従来の技術とは対照的に抗体の標識又は精製を必要とせず、一部のモノクローナル抗体の配列を使用して、マルチサイト特異性試験を可能にする。さらに、多数の検体を自動的に処理することができる。
【0229】
ペアワイズ結合実験は、2つのMAbが同じ抗原に同時に結合する能力を試験する。個別のエピトープに対するMAbは、独立して結合するが、同一又は近縁のエピトープに対するMAbは、互いの結合を妨害する。BIACORE(登録商標)によるこれらの結合実験は、容易に実施される。
【0230】
例えば、捕捉分子を使用して第1のMabを結合した後、抗原及び第2のMabを連続的に添加することができる。センサーグラムにより、(1)どれほど多くの抗原が第1のMabに結合するか、(2)どの程度第2のMAbが表面結合抗原に結合するか、(3)第2のMAbが結合しなければ、ペアワイズ試験の順序を逆転させると結果が変化するか否かが明らかとなる。
【0231】
ペプチド阻害は、エピトープマッピングのために使用されるもう1つの技術である。この方法は、ペアワイズ抗体結合試験を補い、抗原の一次配列が既知である場合に機能的エピトープを構造特徴に関連させることができる。ペプチド又は抗原断片を、固定された抗原に対する異なるMAbの結合の阻害に関して試験する。所定のMAbの結合を妨害するペプチドは、そのMAbによって定義されるエピトープに構造的に関連すると仮定される。
【0232】
本発明の実践は、特に示していない限り、当業者の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学に関する従来の技術を使用する。そのような技術は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY)、D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II、Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis、Mullis et al. U.S. Pat. No. 4,683,195、Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization、Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation、Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.)、Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986)、Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning; the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.)、Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory)、Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155、Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London)、Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV; Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986)、及びAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照されたい。
【0233】
抗体工学の一般的原理は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に記載されている。タンパク質工学の一般的原理は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に記載されている。抗体及び抗体-ハプテン結合に関する一般的原理は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.)、及びSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function (Chapman and Hall, New York, N.Y.)に記載されている。さらに、当技術分野で公知で、具体的に記載していない免疫学の標準的な方法は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York、Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.) and Mishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)の記載に一般的に従う。
【0234】
免疫学の一般的原理を記載する標準的な参考研究には、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York、Klein (1982) J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY)、Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY)、Campbell (1984) "Monoclonal Antibody Technology" in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevere, Amsterdam)、Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunology (4th ed.; H. Freemand & Co.)、Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby)、Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division)、Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlan)、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press)、Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall2003)、Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press)、Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)が挙げられる。
【0235】
上記で引用した参考文献は全て、本明細書に引用した全ての参考文献と共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0236】
以下の実施例は、説明するために提供され、制限するためではない。
【実施例】
【0237】
材料及び方法
生物試料
健常で健康なボランティアからのヒト末梢血を、書面でのインフォームドコンセント及びIRBの承認を得て、MedImmune献血プログラムを通して得た。末梢血単核球細胞(PBMC)を、クエン酸ナトリウムを添加したVacutainer CPT細胞調製用チューブ(Becton Dickinson Biosciences, NJ, USA)を使用して、新鮮な全血から単離した。チューブを17000g、22℃でブレーキを最小限にして25分間遠心沈降させた。遠心沈降後、血清を除去し、細胞のバフィーコートを50mLコニカルチューブ(BD Biosciences)に移した。精製した細胞を滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)(Invitrogen Life Technologies, CA, USA)によって、350g、22℃で10分間、2回洗浄した。細胞を、PBS又は10%ウシ胎児血清(Invitrogen)を補充したRPMI 1640培地に再浮遊させ、セルストレーナキャップ(BD Biosciences)を備えたBD Falcon 5mLチューブを使用して濾過した。細胞密度を、Vi-Cell XR(登録商標)セルカウンター(Beckman Coulter, CA, USA)を使用して決定した。
【0238】
健康な動物からのカニクイザル末梢血を、霊長類の飼育及び使用に関する米国国立衛生研究所のガイドラインに従ってBioqual (Bioqual, Inc. MD, USA)から得た。カニクイザルPBMCは、クエン酸ナトリウムを含むVacutainer CPT細胞調製チューブ(上記の通り)を使用するか、又はHistopaque 10771 (Sigma-Aldrich, MO, USA)によって単離した。簡単に説明すると、新鮮な全血を滅菌PBSによって初回血液量の50倍に調節した。次に、希釈した血液25mLを、90% Histopaque 10771 (Sigma Aldrich)10mLの上に重ねて、試料を400g、室温でブレーキを最小限にして20分間遠心沈降させた。円板状の細胞を採取して、新しい50mLコニカルチューブに移した。精製した細胞を、滅菌PBSによって350g、22℃で10分間、2回洗浄した。細胞を、PBS又は10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640培地に再浮遊させ、濾過し、上記のように計数した。
【0239】
細胞
CT-125及びCT-550細胞は、Dr. Yong-Jun Liu (University of Texas M.D. Anderson Cancer Center, Houston, TX, USA)から得た。CT-125細胞は、2B4マウスT細胞ハイブリドーマにタグなしマウスFcεR1γ及びNFAT-GFPレポーター遺伝子を形質導入することによって作製し、CT-550細胞は、CT-125細胞にHAタグヒトILT7(Ohtsuka M. et al., PNAS 101: 8126-8131 (2004)、Cao W. et al., JEM 203: pp 1399-1405 (2006))を形質導入することによって作製した。CT-125 Cyno ILT7安定細胞株は、CT-125細胞に、pME18XプラスミドベクターにクローニングしたカニクイザルILT7遺伝子をトランスフェクトすることによって作製した。CT細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1Xペニシリン/ストレプトマイシン(全てInvitrogen Life Technologiesから)を補充したRPMI 1640において培養した。
【0240】
KC1333細胞は、Biowa (Biowa, NJ, USA)から得た。KC1333細胞は、10% FBS、4mM L-グルタミン、0.2μg/mLジェネティシン(全て、Invitrogenから)、及び18.3pg/mL組換えヒトIL-2(PeproTech, NJ, USA)を補充したAdvance RPMI 1640において培養した。
【0241】
抗体及び試薬
抗ILT7ヒト化抗体バリアント、抗ILT7クローン7C7(7C7)、及びヒト化アイソタイプ対照R347は、MedImmuneで作製された。アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗ILT7ヒト化抗体バリアント、7C7、及びアイソタイプ対照R347は、APCモノクローナル抗体標識キット(Thermo Fisher Scientific, IL, USA)を使用して作製した。R-フィコエリスリン(PE)及びFITC標識抗ヒトBDCA-2抗体(クローンAC144)、R-PE抗ヒトBDCA-4(クローンAD5-17F6)、及びヒトFcRブロック試薬は、Miltenyi Biotech, CA, USAから得た。R-PE、FITC、又はAPCのいずれかにコンジュゲートした抗ヒトCD123(クローン7G3)、Alexa Fluor 488抗ヒトCD8(クローンRPA-T8)、Alexa Fluor 488抗ヒトCD3(クローンSP34-2)、FITC抗ヒトCD14(クローンM5E2)、FITC抗ヒトCD20(クローン2H7)及びPerCP-Cy 5.5抗ヒトHLA-DR(クローンG46-6)は、BD Biosciencesから得た。Pacific Blue抗ヒトCD56抗体(クローンMEM-188)は、BioLegend, CA, USAから得た。DyLight 649標識抗ヒトIgG及びヒト全IgGは、Jackson Immunoresearch, PA, USAから得た。
【0242】
全血の染色を、BD FACS溶解溶液(BD Biosciences)を使用して実施した。7-AADはInvitrogenから得た。AB型ヒト男性血漿は、Sigma-Aldrichから得た。組換えヒトIL-2は、R&D Systems, MN, USAから得て、組換えヒトインターフェロンβ(IFN-β)は、PBL Biomedical, NJ, USAから得た。CpG A ODN 2216は、InvivoGen, CA, USAから得た。
【0243】
ヒト及びカニクイザル組換えILT7の標識
タンパク質を、EZリンクスルホ-NHS-LC-ビオチン(Thermo/Pierce, product: 21335)を使用して遊離のアミンを介してビオチン化した。試薬を無水ジメチルホルムアミドに溶解して、PBSベースのタンパク質溶液をD-PBS中の1 M NaHCO3によってpH約8に調節した。
【0244】
標識の取り込みを、全ての場合においてMALDI-TOF質量分析法によって評価し、未反応の試薬を、D-PBSで平衡にした使い捨てのSephadex G25カラムを使用して緩衝液交換により除去した。ビオチン化のために、最終のタンパク質濃度を、アミノ酸配列から計算した吸光係数を使用して、280nmでの吸光度によって決定した。
【0245】
ELISA結合アッセイ
一本鎖Fv断片をファージ粒子上に表示して、結合アッセイにおいて試験し、組換え抗原のパネルに対する交差反応性及び特異性を決定した。ファージディスプレイscFv上清試料を、96ウェルディープウェルプレートにおいて以下のように作製した。96ウェルマスタープレートの各ウェルからの培養物5μlを、2TYAG (2TY+100μg/mlアンピシリン+2%グルコース)培地500μlを含有するGreinerディープウェル培養プレートに移し、37℃、280rpmで5時間インキュベートした。K07 M13ヘルパーファージ(2TYAG中で1.5×1011 pfu/mlに希釈)を100μl/ウェルで添加し、プレートを37℃、150rpmでインキュベートして感染させた。プレートを3200rpmで10分間遠心沈降させて、上清を除去した。細菌ペレットを2TYAK(2TY+100μg/mlアンピシリン+50μg/mlカナマイシン)500μl/ウェルに再浮遊させ、プレートを25℃、280rpmで一晩インキュベートした。朝に、2×PBS中の6%(w/v)スキムミルク粉末500μlを各ウェルに添加して、プレートを室温で1時間インキュベートした。次にプレートを3200rpmで10分間遠心分離して、ブロックしたファージディスプレイscFv上清を、ELISA実験に直接使用した。
【0246】
EC50決定に関して、典型的に精製したIgGを3%(w/v)乾燥ミルク粉末のPBS(PBS-M)によって3倍希釈し、11の濃度ポイントを得た。96ウェルGreinerポリプロピレンプレート(Greiner, 650201)を、希釈液調製のために使用した。一般的に、各希釈液を2回の反復実験で調製した。IgG希釈液をPBS-M中、室温で1時間ブロックさせた後、ELISA実験に直接使用した。
【0247】
IL-T7結合アッセイは、本質的に以下のように実施されるプレートベースのELISAであった。あらゆる実験において必ずしも全ての抗原を使用しなかったが、典型的にはヒト、マウス、及びカニクイザルIL-T7抗原を試験した。関連する対照抗原(ウシインスリン+IL-4RαFLAG(登録商標)His、必要に応じて)も同様に、非特異的結合に関して試験するために使用した。ウシインスリンを例外として、全ての抗原をビオチン化し、全て、細菌発現を使用して作製した。IL-T7抗原を、EZリンクビオチン-BMCC(Perbio/Pierce 21900)を使用して遊離のスルフヒドリル基を介してビオチン化した。対照抗原として使用したIL-4RαFLAG(登録商標)Hisを作製する方法は、国際公開第2010/070346号に記載される。IL-4RαFLAG(登録商標)Hisを、EZリンクスルホ-NHS-LC-ビオチン(Perbio/Pierce、21335)を使用して遊離のアミンを介してビオチン化した。
【0248】
ストレプトアビジンプレート(Thermo Scientific, AB-1226)をPBS中で0.5μg/mlのビオチン化抗原によってコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、PBSによって3回洗浄し、300μl/ウェルのブロック緩衝液(PBS-M)によって1時間ブロックした。プレートをPBSによって1回洗浄し、ブロックした試料を、50μl/ウェルで、室温で1時間添加した。プレートをPBS-T(PBS+1%(v/v)Tween-20)によって3回洗浄し、検出試薬[IgG又はファージディスプレイscFvを検出するためにそれぞれ、抗ヒトIgG HRP(Sigma, A0170)又は抗M13-HRP抗体(Amersham, 27-9421-01)]の1:5000希釈液を、PBS-M中50μl/ウェルで、室温で1時間添加した。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、TMB、50μl/ウェル(Sigma, T0440)によって顕色した。反応を、50μl/ウェルの0.1M H2SO4によってクエンチした後、EnVision(商標)プレートリーダー又は類似の機器において450nmで読み取った。
【0249】
用量反応曲線を、Prism(Graphpad)カーブフィッティングソフトウェアを使用してIgGタイトレーションのためにプロットした。ファージディスプレイscFvは、450nmでの吸光度が>0.5であり、対照(インスリン及びIL-4RαFlag(登録商標)His)において同じ試料に関して<0.1~0.2であれば、IL-T7抗原に結合すると考えられた。一本鎖Fv断片をファージ粒子上で提示し、一点ELISAスクリーン(single point ELISA screen)において未精製調製物として試験した。
【0250】
蛍光微量アッセイ技術(FMAT)細胞結合アッセイ
このホモジニアスアッセイは、384ウェル(Costar 3655)フォーマットでヒト又はカニクイザルILT7のいずれかを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対する粗製scFv上清試料又は精製IgGの結合を評価した。細胞に対するscFv又はAbの結合は、マウス抗His/ヤギ抗マウスAlexafluor(登録商標)-647標識抗体(Molecular Probes A21236)ミクス又はヤギ抗ヒトAlexafluor(登録商標)-647標識抗体(Molecular Probes A21445)をそれぞれ使用して検出した。プレートを、Applied Biosystems細胞検出システム8200リーダー上で読み取った。ヘリウムネオン励起レーザーをウェルの底の深さ100μm以内に焦点を当てて、領域1mm2を走査した。細胞がウェルの底に沈降し、レーザーを633nmで励起すると、蛍光体が結合したビーズ(蛍光体の局所濃度は非結合蛍光体と比較して比較的高い)は、650~685nmでシグナルを放出し、これを光増倍管-1(PMT1)を使用して測定した。溶液中の非結合蛍光体は、励起の深さの外側であるか、又は比較的低い局所濃度であり、このため、有意なシグナルを放出しなかった。ウェルの底の細胞に結合するscFv又はIgG試料の存在は、励起の深さ内でAlexafluor標識検出抗体の増加を引き起こした。これを蛍光の増加として測定した。
【0251】
これらの実験において、アッセイ緩衝液は、0.1%BSA(Sigma A9576 - 50ml)、0.1%Tween-20(Sigma P2287)、及び0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBS(Gibco 14190-094)であった。ScFv検出ミクスを作製するために、マウス抗His及び抗マウスAF647抗体を、アッセイ緩衝液中でそれぞれ、1μg/ml及び2μg/mlで混合した。IgG検出ミクスを作製するために、抗ヒトAF647抗体をアッセイ緩衝液中、2μg/mlで調製した。
【0252】
使用した細胞は、標準的な組織培養技術を使用して培養したヒト又はカニクイザルILT7のいずれかを発現するCHO-K1細胞であった。細胞を、F-10(Gibco, 22390-025)+10% FCS(SAFC Biosciences, 13068C)+0.5mg/ml Zeocin(Invitrogen, R250-01)中でおよそ80%コンフルエンスまで成長させ、PBSで洗浄し、アキュターゼ(PAA, L11-007)によって剥離させ、PBS中に1.5×105個/mlで再浮遊させた。
【0253】
粗製scFv上清試料を96ディープウェルプレートにおいて作製した。96ウェルマスタープレートの各ウェルからの5μl培養物を、2TY(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、pH7.0)900μl+100μg/mlアンピシリン+0.1%グルコース培地を含有するGreinerディープウェル培養プレートに移し、37℃、280rpmで5時間インキュベートした。10mM IPTGのTY溶液を100μl/ウェルで添加し、ブロック液を280rpm、30℃で一晩インキュベートした。朝に、ブロック液を3200rpmで15分間遠心分離した。ハイスループットスクリーニングのために、ディープウェルブロックからのscFv上清を、20%の必要な希釈のためにアッセイプレートに直接移した。
【0254】
384ウェルの透明底の非結合表面黒色Costarプレートの試験ウェルに、以下を添加した:試料(IgG又はscFv)10μl、検出抗体又は抗体ミクス10μl、及び細胞30μl。これらの実験に使用した陰性対照は典型的に、実験試料の代わりに、アイソタイプ(IgG)又は無関係な(ScFv)対照、又はアッセイ緩衝液の添加を伴った。プレートを密封して、室温の暗所で4時間インキュベートし、Applied Biosystems細胞検出システム8200リーダー上で読み取った。データは典型的にVelocityアルゴリズムによって解析し、カラー比<0.4、サイズ15~30、最少計数20でゲートを設定した。粗製scFv上清試料のヒットは、総結合対照ウェルと比較してシグナルの50%以上の阻害を示すとして定義した。用量反応曲線を、Prism(Graphpad)カーブフィッティングソフトウェアを使用して、精製IgGタイトレーションのためにプロットした。
【0255】
IC50決定に関して、典型的に精製IgGをアッセイ緩衝液において500nMから2倍希釈して11の濃度ポイントを得た。96ウェルGreinerポリプロピレン(Greiner, 650201)プレートを希釈液調製のために使用した。一般的に、各希釈液を2回の反復実験で調製した。或いは、500nM~0.2nMの範囲で得た単一の濃度でIgG試験を実施した。
【0256】
フローサイトメトリーによる細胞株における抗体結合の評価
ヒト及びカニクイザルILT7に対する抗ILT7バリアント及びアイソタイプ対照の結合を、CT-550及びcynoILT7 CT125細胞をそれぞれ使用してフローサイトメトリー分析によって評価した。CT-125細胞を対照として使用した。細胞を、ブロック緩衝液(10%FBSを補充したPBS)において細胞500万個/mLの濃度で再浮遊させ、丸底96ウェルプレート(BD FalconTM Clear Microtest Plate, BD Biosciences)に100μl/ウェルで移した。抗ILT7バリアント及び対照抗体をプレートシェーカーにおいて4℃で30分間細胞に添加した。細胞をPBSによって3回洗浄し、ブロック緩衝液(100μl/ウェル)に再浮遊させた。細胞表面上のヒトIgG結合を、DyLight649(1000倍希釈)にコンジュゲートした二次抗ヒトIgG抗体を使用して検出した。細胞を、プレートシェーカー上、4℃の暗所で30分間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、表面の蛍光を、LSRIIフローサイトメトリーシステム及びFACSDivaソフトウェア(いずれもBD Biosciencesから得た)を使用して獲得した。
【0257】
フローサイトメトリーによる全血及びPBMCにおける抗体結合の評価
ヒト及びカニクイザルの全血におけるAPC標識抗ILT7抗体及びアイソタイプ対照の結合を、フローサイトメトリー解析によって評価した。全血を50mLのコニカルチューブに1mL/チューブで移した。APC標識抗体を全血に直接添加した。抗BDCA-2-PE及び抗CD123-PE抗体をそれぞれ、ヒト全血染色及びカニクイザル全血染色において形質細胞様樹状細胞(pDC)特異的マーカーとして使用した。全血をプレートシェーカーにおいて抗体と共に4℃の暗所で30分間インキュベートした。血液をBD FACS溶解溶液によって、製造元の指示に従って処置した。細胞を洗浄し、抗体結合を、LSRIIフローサイトメトリーシステム及びFACSDivaソフトウェアを使用してフローサイトメトリーによって評価した。
【0258】
PBMC染色に関して、PBMCを最初にPBSによって洗浄し、プレートシェーカーにおいて、50%AB型ヒト男性血漿、20μg/mLヒトIgG、及び200μg/mLヒトFcRブロック試薬を含有するPBSベースの冷ブロック緩衝液に4℃で15分間再浮遊させた。15分後、APC標識抗ILT7バリアント又はAPC標識アイソタイプ対照抗体をブロック溶液に直接添加した。或いは、抗BDCA-2-PE及び抗BDCA-4-PE抗体を、ヒトPBMC染色のpDC特異的マーカーとして使用した。カニクイザルPBMCにおいて、pDCをHLA-DR+、Lineage-、CD11c-、及びCD123high(Malleret et al., Immunology 124: 223-233 (2008))として定義した。したがって、抗HLA-DR PerCP-Cy5.5、Lineage-FITC(CD3、CD8、CD20及びCD14抗体)及び抗CD123-PE抗体を、カニクイザルPBMC染色のためのpDC特異的マーカーとして使用した。PBMCをプレートシェーカーにおいて、4℃の暗所で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、抗体結合を、LSRIIフローサイトメトリーシステム及びFACSDivaソフトウェアを使用してフローサイトメトリーによって評価した。
【0259】
細胞株を使用した抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイによる抗体効力の評価
抗ILT7抗体の効力を、ADCC in vitro細胞ベースのアッセイを使用して決定した。KC133
3細胞(エフェクター)及びCT細胞(標的)を、5:1の比率(KC1333細胞2.5×105個に対し、CT細胞0.5×105個)で丸底96ウェルプレートにおいて同時培養した。細胞を、10% FBSを補充したRPMI 1640培地中で抗ILT7抗体又はアイソタイプ対照の存在下、37℃、5%CO2で、16時間同時培養した。次に細胞を洗浄し、ブロック緩衝液(PBS-10%FBS)に移した。KC1333細胞は、Pacific-Blue-抗CD56抗体を使用して検出した。死細胞は7-AADを使用して検出した。標的細胞の生存率は、LSRIIフローサイトメトリーシステム及びFACSDivaソフトウェアを使用してフローサイトメトリーによって評価した。細胞傷害性の百分率を、以下の式:細胞傷害性百分率=100-(生存標的数/ベースラインでの生存標的数)×100を適用することによって得た。
【0260】
ヒトPBMCを使用するADCCアッセイによる抗体効力の評価
ヒトPBMCをPBSによって洗浄し、10%FBS及び200ng/mL組換えヒトIL-2を補充したRPMI培地に、5.0×106個/mLの濃度で再浮遊させた。PBMCを丸底96ウェルプレートに2回の反復実験で100μl/ウェルで播種した。抗ILT7抗体の10倍連続希釈液及び対照抗体を調製し、抗体溶液の100μlを適切なウェルに最終濃度33.85nM~3.385fMとなるように添加した。細胞を37℃、5%CO2で6時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を冷PBS 250μlで2回洗浄した。細胞を、50%AB型ヒト男性血漿、20μg/mLヒトIgG、及び200μg/mLヒトFCRブロック試薬を含有するPBSベースの冷ブロック緩衝液100μLに、4℃で15分間再浮遊させた。ブロックステップの後、FITC-抗ヒトBDCA2及びAPC-抗ヒトCD123抗体を含有する冷ブロック緩衝液100μLを、適切なウェルに添加した。プレートを、4℃で軽く振とうさせながら30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を冷PBS 250μLによって2回洗浄し、最終的に冷PBS 200μLに再浮遊させた。冷7-AAD(Invitrogen)溶液50μLを全てのウェルに添加し、7-AAD陽性形質細胞様樹状細胞をLSRIIフローサイトメトリーシステム及びFACSDivaソフトウェアを使用して評価した。
【0261】
ヒトPBMCによるIFNα分泌アッセイ
ヒトPBMCをPBSによって洗浄し、丸底96ウェルプレートに、10%FBS及び200ng/mL組換えヒトIL-2を補充したRPMI培地において、細胞150,000~156,000個/ウェルの最終密度で2回の反復実験で播種した。抗ILT7抗体の10倍連続希釈液及び対照抗体を調製し、抗体溶液100μLを適切なウェルに6.77nM~0.677fMの最終濃度で添加した。細胞及び抗体を37℃、5%CO2で9.5~10時間インキュベートした。インキュベーション後、ODN2216(Invitrogen(商標))50μLを適切なウェルに0.5μMの最終濃度で添加し、プレートを37℃、5%CO2でさらに16時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを350gで10分間遠心分離して、上清を注意深く採取し、IFNαをマルチサブタイプIFNα ELISAキット(PBL Biomedical)を使用して定量した。
【0262】
カニクイザルPBMCによるIFNα分泌アッセイ
カニクイザルPBMCをPBSによって洗浄し、10%FBS、220ng/mL組換えヒトIL-2、及び500IU
/mL組換えヒトIFN-βを補充したRPMI 1640培地に浮遊させた。細胞の最大数を、細胞314,000~818,000個/ウェルの範囲の密度で適切なウェルに添加した。抗ILT7抗体の10倍連続希釈液及び対照抗体を調製し、抗体溶液100μLを適切なウェルに33.85nM~3.385fMの最終濃度で添加した。細胞及び抗体を37℃、5%CO2で9.5~10時間インキュベートした。インキュベーション後、ODN2216(Invitrogen(商標))50μLを適切なウェルに0.5μMの最終濃度で添加し、プレートを37℃、5%CO2でさらに16時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを350gで10分間遠心分離して、上清を注意深く採取し、上清のIFNαを、アカゲザル/カニクイザルIFNα ELISAキット(PBL Biomedical)を使用して定量した。
【0263】
統計分析
EC50及びIC50の結合曲線、ADCC及びサイトカイン分泌アッセイを、GraphPad Prims 5ソフトウェア(GraphPad Software, CA, USA)を使用して作製した。
【0264】
[実施例1]
マウス抗体SB128からのヒト化ILT7抗体の作製
マウスmAb SBI28(SBI28は、米国特許出願公開第2009/0280128号に提供される抗ILT7抗体ILT7#28を指す)を、フレームワークシャッフリングによってヒト化した(Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005))。この方法を使用して、マウスmAb SBI28を、個々のヒト生殖系列フレームワークのプールにインフレームで融合したその6個のCDRからなるコンビナトリアルライブラリーを合成することによって、ヒト化した。ヒトフレームワーク遺伝子は、公表されている抗体生殖系列遺伝子のプールから選択した。これらの万能フレームワークプライマープールは、46個のヒト生殖系列カッパ鎖遺伝子、5個のヒト生殖系列Jk配列、44個のヒト生殖系列重鎖遺伝子、及び6個のヒト生殖系列JH配列を含む。プライマーバンクは、それぞれの生殖系列遺伝子のそれぞれのフレームワークをコードするように設計した。フレームワークプールと重なり合う縮重末端を有する抗体特異的CDRプライマーもまた合成した。SBI28フレームワークシャッフルライブラリーは、可変重鎖フレームワークシャッフルサブライブラリーを、可変軽鎖フレームワークシャッフルサブライブラリーと対を形成することによって構築した。フレームワークシャッフルサブライブラリーを、オーバーラップ伸長によりPCRを使用して連続的にアセンブルした。第1の融合PCRを実施して、対応するCDRの一部とインフレームで融合したそれぞれの個々のヒト生殖系列フレームワークを合成した。次に、第2の「アセンブリPCR」を、融合PCR産物を鋳型として使用して実施し、完全長のVH及びVLサブライブラリーを増幅した。SBI28フレームワークシャッフルライブラリーを、Kunkel法ハイブリダイゼーション突然変異誘発を使用して、M13ベースのFab発現ベクターにクローニングした。SBI28フレームワークシャッフルライブラリーからのおよそ1300個のクローンを、MesoScale Discovery(MSD)アッセイを使用して組換えILT7 CHO細胞を発現するCHO細胞に関してスクリーニングした。1つのヒト化バリアント10D10は、ProteOnにおいて表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合、そのキメラ親(「SBI28ch」)と比較してヒトILT7に対して3倍低い親和性で結合した。SBI28chは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2009/0280128号に提供される抗ILT7抗体ILT7#28を指す。
【0265】
10D10の親和性最適化を、ヒト及びカニクイザルILT7に対するその結合親和性を改善させるために開始した。10D10を節約法突然変異誘発のために、最初にM13ベースのScFv発現ベクターにクローニングした。この方法において、6個全てのCDRのそれぞれの個々のアミノ酸を、残基の位置あたり2個の異なるライブラリー(NSS及びNWS)を使用してランダムに突然変異させた。全体で12個の独立したライブラリーを、6個のCDRに関してKunkel法ハイブリダイゼーション突然変異誘発(Kunkel, T. A., et al. Methods Enzymol. 154:367 (1987))を使用して構築した。合成したライブラリーのスクリーニングは、それぞれのウェルにおけるscFv濃度を正規化するために、細菌培養培地からの分泌されたScFvの限界濃度を捕捉するように設計した一点ELISAからなった。捕捉したScFvに結合した標識したILT7抗原及びこの相互作用のシグナル強度は、相対的結合親和性と相関した。およそ2,000~3,000個のクローンをスクリーニングした。改善された親和性を有するバリアントをさらに操作するために、有益な全ての一アミノ酸変化が共にコードされる、小さい集中的なコンビナトリアルライブラリーを作製した。このステップにおいて、6個のCDRにおける9個の位置での14個の個々の陽性ヒットが同時にコードされる、コンビナトリアルscFvライブラリーを構築した。簡単に説明すると、全ての有益なアミノ酸変化並びに同じ位置での親残基をコードする縮重プライマーを設計した。このコンビナトリアルライブラリーを、既に記載したように一点捕獲ELISAによってスクリーニングした。およそ1,200個のクローンをスクリーニングした。親和性改善バリアント7C7の可変領域を哺乳動物発現pOEベクターにクローニングし、HEK293細胞において一過性に発現させた。分泌された可溶性のヒトIgGを条件培地から直接精製した。精製IgGをProteOn及びFACSを使用してrILT7に対する結合に関してアッセイした。ProteOn実験において、親和性最適化抗体7C7は、SBI28chに対して約60倍のK
Dの改善を示した。CHO細胞上で発現された組換えヒト及びカニクイザルILT7に対する結合を測定するFACによって、7C7は、SBI28chと比較してヒト及びカニクイザルILT7に対してそれぞれ、2.2倍及び14倍良好なEC50を示した。SBI28、10D10、及び7C7のVH及びVL配列のアライメントをそれぞれ、
図1A及び1Bに提供する。
【0266】
[実施例2]
ヒトライブラリーからのヒトILT7抗体の作製
マウス抗ILT7抗体をヒト化することに加えて(実施例1において上記の通り)、ヒト配列のライブラリーを使用してヒト抗体を作製した。抗ILT7抗体を作製するための多数の戦略を実行することによって、別個の形質を有する抗ILT7抗体を作製する機会は最大となり、特定の目的に関して理想的な抗体を選択することができる。
【0267】
2.1 選択
糸状ファージM13に基づくファージミドベクターにクローニングした成体のナイーブドナーの骨髄に由来する個々の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を使用して作製した大きい一本鎖Fv(scFv)ヒト抗体ライブラリーを、選択のために使用した(Hutchings, C., "Generat
ion of Naive Human Antibody Libraries" in Antibody Engineering, Dubel. Berlin, Springer Laboratory Manuals: p. 93 (2001)、Lloyd et al., Protein Eng. Des. Sel. 22(3):159-68 (2009))。ILT7特異的scFv抗体を、組換えヒト及び/又はカニクイザルILT7に関する一連の繰り返し選択サイクルにおいて、本質的にVaughan et al.(Nat. Biotechnol. 14(3):309-14 (1996))に既に記載される通りにファージディスプレイライブラリーから単離した。簡単に説明すると、scFv-ファージ粒子をビオチン化組換えILT7溶液(EZリンクスルホ-NHS-LC-ビオチン(Thermo/Pierce、製品番号:21335)を使用して遊離のアミノを介してビオチン化した)と共にインキュベートした。典型的に、scFv-ファージ粒子を、100nMビオチン化組換えILT7と共に1時間インキュベートした。抗原に結合したScFvを、ストレプトアビジンコーティングした常磁性ビーズ(Dynabeads(登録商標)M-280)上で、製造元の推奨に従って捕捉した。非結合ファージを、PBS-Tweenを使用する一連の洗浄サイクルにおいて洗浄した。抗原上に保持されたファージ粒子を溶出させ、細菌に感染させ、次の選択ラウンドのために救出した。典型的に、3ラウンドの選択をこのようにして実施した。
【0268】
2.2 ファージELISAによるILT7特異的結合体の同定
scFvをファージ粒子上に表示して、結合アッセイにおいて試験し、組換え抗原に対する交差反応性及び特異性を決定した。詳細なアッセイ方法は、材料及び方法の節で提供する。およそ2100個の個別のデータ点を結合アッセイから作製し、同定されたヒット、すなわち組換えILT7に対する結合を示したscFvクローンをDNAシークエンシングに供した(Osbourn et al., Immunotechnology 2(3):181-96 (1996)、Vaughan et al., Nat. Biotechnol. 14(3):309-14 (1996))。
【0269】
2.3 FMATによるILT7結合体の同定
独自のscFvを細菌ペリプラスムにおいて発現させ、その結合活性を、蛍光微量アッセイ技術(FMAT)結合アッセイにおいてスクリーニングした。細胞表面上に発現されたscFvのILT7に対する結合を、ヤギ抗マウスAlexafluor(登録商標)-647標識抗体を使用して検出した。詳細なアッセイ方法は、材料及び方法の節に提供する。
【0270】
2.4 scFvのIgG1への再フォーマッティング
最も強力なscFv結合体を、以下の修正を加えて、本質的にPersic et al (Gene 187(1):9-18 (1997))に記載される通りに全免疫グロブリンG1(IgG1)抗体フォーマットに変換した。CHO一過性細胞での使用を容易にするため、及びエピソーム複製を可能にするために、OriP断片を発現ベクターに含めた。VHドメインを、ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有するベクター(pEU1.3)においてクローニングし、哺乳動物細胞においてIgG1重鎖全体を発現させた。同様に、VLドメインを、ヒト軽鎖(ラムダ)定常ドメイン及び調節エレメントを発現させるためのベクター(pEU4.4)においてクローニングし、哺乳動物細胞においてIgG軽鎖全体を発現させた。IgGを得るために、重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターをCHO一過性哺乳動物細胞にトランスフェクトした。IgGを発現させて、培地に分泌させた。収集物をプールして濾過した後に精製した。次にIgGを、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。培養上清を適切なサイズのセラミックプロテインA(BioSepra)カラムにロードし、50mM Tris-HCl pH8.0、250mM NaClによって洗浄した。結合したIgGを、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用してカラムから溶出させ、Tris-HCl(pH9.0)を添加して中和した。溶出した材料をNap10カラム(Amersham、#17-0854-02)を使用してPBSに緩衝液交換し、IgGの濃度を、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を使用して分光光度法によって決定した(Mach et al., Anal. Biochem. 200(1):74-80 (1992))。
【0271】
2.5 IgGの結合アッセイ
抗ILT7抗体の種交差反応性を、FMAT結合アッセイを使用して決定した。詳細なアッセイ方法を、材料及び方法の節に提供する。以下の11個の抗体が、FMATスクリーニングアッセイにおいて、ヒト及びカニクイザルILT7の両方に首尾よく結合した抗体として同定された:ILT70019、ILT70028、ILT70052、ILT70076、ILT70080、ILT70083、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、及びILT70144。
【0272】
[実施例3]
ILT7抗体はILT7発現細胞に結合する
ヒトILT7を発現する細胞におけるILT70019、ILT70028、ILT70052、ILT70076、ILT70080、ILT70083、ILT70089、ILT70100、ILT70137、ILT70142、及びILT70144の結合EC
50を決定するために、候補体をフローサイトメトリーによってCT-550細胞に対する結合に関してスクリーニングした。ILT70080(EC
50=0.28nM)、ILT70083(EC
50=0.37nM)、ILT70137(EC
50=0.41nM)、ILT70144、ILT70142、ILT70052、及びILT70100は、ヒトILT7発現細胞に結合した。候補体ILT70019、ILT70028、及びILT70076は、ヒトILT7発現細胞に結合しなかった。抗ILT7抗体7C7(7C7は、実施例1において上記の通りである)及びSBI33(SBI33は、米国特許出願公開第2009/0280128号に提供される抗ILT7抗体ILT7#33を指す)を陽性対照として使用した。アイソタイプ対照R347は、陰性対照として使用され、ILT7発現細胞に対していかなる結合も示さなかった。
図2に示すグラフは、2つの独立した実験の結果の平均値を表し、
図2に示す表はEC
50の平均値を示す。
【0273】
カニクイザルILT7を発現する細胞におけるバリアントの結合EC
50を決定するために、抗体を、CynoILT7 CT-125細胞に対する結合に関してフローサイトメトリーによってスクリーニングした。ILT70052(EC
50=0.35nM)、ILT70080(EC
50=0.44nM)、LT70083(EC
50=1.37nM)、ILT70137(EC
50=1.40nM)、ILT70100(EC
50=1.63nM)、及びILT70144(EC
50=7.81nM)、ILT70142、及びILT70089は、ヒトILT7に対する結合に関して陽性であった。ILT70019、ILT70028、及びILT70076は、カニクイザルILT7発現細胞に結合しなかった。アイソタイプ対照R347は、ILT7発現細胞に対していかなる結合も示さなかった。
図3のグラフは、2つの独立した実験の結果の平均値を表し、
図3の表はEC
50の平均値を示す。
【0274】
このように、ILT70052、ILT70080、ILT70083、ILT70100、ILT70137、ILT70142、及びILT70144の全てが、カニクイザルILT7又はヒトILT7のいずれかを発現する細胞に結合する。特に、ILT70080、ILT70083、及びILT70137を使用すると、カニクイザル及びヒトILT7の両方を発現する細胞について低いEC50値が得られた。
【0275】
[実施例4]
ILT7抗体のADCC効力
抗ILT7抗体を、in vitro細胞ベースのアッセイを使用して、ヒトILT7発現細胞株に対するADCC効力に関して試験した。ヒトILT7(標的細胞)を発現する細胞をナチュラルキラー(NK)細胞株KC1333(エフェクター細胞)との1:5の比率で、抗ILT7バリアント又はアイソタイプ対照の存在下で18時間播種した。フローサイトメトリー分析の間、KC1333細胞を、NKマーカーCD56(Biolegend#304624)を使用してゲート設定から除外し、7-AADを使用して生存細胞を死細胞と識別した。この方法を使用して、生きた標的細胞の百分率を計算し、ベースライン(抗体なしの対照)と比較した。細胞傷害性を以下の式を使用して計算した:
細胞傷害性の百分率=100-(生きている標的の数/抗体なし対照における生きている標的の数)×100
【0276】
ILT70080は、ヒトILT7発現細胞に対して最大のADCC効力を示し(EC
50=0.022nM)、これにILT70137 (EC
50=0.044 nM)及びILT70083 (EC
50=0.094 nM)が続いた。ILT70142、ILT70052、ILT70100、及びILT70144もまた、ADCC活性を示した(
図4)。アイソタイプ対照R347及びR347の低フコース型(「Afuc R347」)は、ヒトILT7発現細胞に対していかなるADCC活性も示さなかった。
【0277】
抗ILT7抗体を、in vitro細胞ベースの活性を使用してカニクイザルILT7発現細胞に対するADCC効力に関して試験した。ILT70080は、カニクイザルILT7発現細胞に対して最大のADCC効力を示し(EC
50=0.008nM)、これにILT70137(EC
50=0.015nM)、ILT70142(EC
50=0.058nM)、ILT70052(EC
50=0.073nM)、ILT70144(EC
50=0.123)、ILT70100(EC
50=0.188nM)、及びILT70083(EC
50=0.433nM)が続いた。ILT70089もまた、ADCC活性を示した。陽性対照の7C7はADCCを示し、アイソタイプ(陰性)対照R347は、カニクイザルILT7発現細胞に対していかなるADCCも示さなかった。
図5のグラフ及び表は、2つの独立した実験を代表する。
【0278】
このように、ILT70080及びILT70137は、カニクイザル及びヒトILT7発現細胞の両方において最大のADCC活性を示した。
【0279】
[実施例5]
PBMCに対するILT7抗体の結合
ヒトPBMCにおける抗ILT7抗体ILT70080、ILT70083、及びILT70137の結合を、2.5μg/mlの抗体濃度を使用してフローサイトメトリーによって評価した。ITL70080、ILT70083、及びILT70137は、pDC(BDCA-4
+細胞)に対して特異的に結合した(
図6A及びB)。アイソタイプ対照R347では結合は陰性であった。
【0280】
カニクイザルPBMCにおける抗ILT7抗体ILT70080、ILT70083、及びILT70137の結合もまた、フローサイトメトリーによって評価した。ITL70080及びILT70083は、pDC(HLA-DR+、Lineage-、CD123high細胞)に対して特異的に結合した。
【0281】
[実施例6]
IFN-アルファ分泌に及ぼすILT7抗体の効果
抗ILT7バリアントを、上記のようにヒト及びカニクイザルPBMCにおけるADCC効力に関して試験した。抗ILT7抗体及びCpG-Aと共に培養したPBMCの上清におけるIFNαの分泌を、ELISAによって測定した。ILT70080、ILT70083、及びILT70137は全て、ヒト及びカニクイザルPBMCにおいてCpG-Aに対するIFNα応答を抑制した。ILT70080は、IFNα応答に対して最大の抑制効果を示した。
【0282】
[実施例7]
ILT70080及びILT70083抗体の低フコース化
IgG1抗体は、Fc領域においてN-結合オリゴ糖のための2つの部位を含有し、これらの部位は、ヒト抗体において高度にフコース化されている。抗体依存性細胞傷害性(ADCC)は、抗体Fc領域に対するリンパ球受容体の結合によって媒介され、これはフコース化の量によって影響を受ける。ADCCの増加は、フコース化の減少と共に観察されている。したがって低フコース型のILT7を作製して分析した。
【0283】
7.1 抗ILT7抗体の低フコース型の作製
ILT70080及びILT70083 IgG1を、酵素α-1,6-フコシルトランスフェラーゼを欠如するCHO細胞株において発現させた。この細胞株における発現によって、重鎖のAsn-297でのN-グリカン上でα-1,6-フコース部分を欠如する抗体を得た。
【0284】
7.2 低フコース化ILT70080及びILT70083抗ILT7抗体の試験
ILT7発現細胞における低フコース化及び親ILT70080及びILT70083抗体による結合アッセイを実施して、低フコース化が抗体の結合EC
50に影響を及ぼすか否かを評価した。親及び低フコース化抗体は、ヒト及びカニクイザルILT7発現細胞の両方に対して類似の結合を示した(
図7)。
【0285】
低フコース化ILT70080及びILT70083抗体のADCC効力を、上記のin vitro細胞ベースのアッセイ(実施例3)を使用してヒト及びカニクイザルILT7発現細胞において試験した。低フコース化は、試験した全ての候補体に関してADCC効力を増加させた(
図8)。ヒト及びカニクイザルアッセイの両方において、低フコース化によってILT70080抗体に関して効力の10倍増加が観察されたが(それぞれ、EC
50=0.013nMからEC
50=0.001nM、及びEC
50=0.006nMからEC
50=0.00051nM)、ILT70083では6から7倍の増加が観察された(それぞれ、EC
50=0.089nMからEC
50=0.0105nM、及びEC
50=0.36nMからEC
50=0.057nM)。低フコース化アイソタイプ対照R347は、ILT7発現細胞においていかなるADCCも示さなかった。
【0286】
ヒトPBMCにおける低フコース化抗ILT7抗体ILT70080及びILT70083の結合を、フローサイトメトリーによって評価した。低フコース化バリアントILT70080及びILT70083は、pDC(BDCA-2+細胞)に対して特異的に結合した。アイソタイプ対照R347では結合は陰性であった。
【0287】
カニクイザルPBMCにおける低フコース化抗ILT7バリアントILT70080及びILT70083の結合もまた、フローサイトメトリーによって評価した。低フコース化バリアントILT70080及びILT70083は、pDC(HLA-DR+Lineage- CD123high)に特異的に結合した。アイソタイプ対照R347では結合は陰性であった。
【0288】
[実施例8]
ILT70080及びILT70083抗体の操作
8.1 ILT70080の操作
ILT70080 VH及びVLのアミノ酸配列を、VBASEデータベース(Althaus H-H, Muller W and Tomlinson I: V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)における公知のヒト生殖系列配列と整列させ、近縁の生殖系列配列を配列類似性によって同定した。VHドメインに関して、これはVH1-69(DP-10)であり、VLドメインに関してこれはVlambda3-hであった。VHドメイン(A13K、T16S、L69I*、S70T、L80M、Y84S、及びD85E)及びVLドメイン(E3V、K20R、S22T、M46L*、M48I*、F50Y*、及びI66N*)のそれぞれのフレームワーク(FW)における7個の残基を、近縁の生殖系列配列に復帰させるために選択した。星印をつけた突然変異は、Vernier残基であると分類された位置であり(Foote, J. et al. J. Mol. Biol. 224: 487 (1992))、典型的に不変のままである。しかし、CDRのKabat(Wu, T. T. and Kabat E. A. J. Exp. Med. 132:211-250 (1970))及びIMGT(Lefranc, M.-P. et al. Dev. Comp. Immunol. 27: 55-77 (2003))分類の両方の解析から、これらの位置は、親抗体の結合特性を変化させるリスクが低く、免疫原性をさらに低減させるさらなる機会を提供すると考えられた。さらに、この位置での潜在的脱アミノ化(NG)部位を除去するために、重鎖N64Q突然変異誘発をVH CDR2(Kabatの定義)配列内で行った。突然変異誘発は、標準的な分子生物学技術を使用して、pCantab6におけるILT70080 scFv配列上で実施した(McCafferty et al., Appl Biochem Biotech 47:157 (1994))。異なる突然変異誘発オリゴヌクレオチドの組合せを、多数の突然変異誘発反応に利用して、FW突然変異の異なる組合せを含有する配列のライブラリーを作製した。次にILT70080 scFvバリアントのパネルを、上記のようにFMAT細胞結合アッセイにおける粗製ペリプラスム抽出物としてヒトILT7に対する結合の保持に関して試験した。
【0289】
7個のILT70080バリアントをIgGとして作製した。VH及びVL配列アライメントに関してそれぞれ、
図9A及び9Bを参照されたい。
【0290】
8.2 ILT70083の操作
ILT70083の生殖系列化も同様に実施した。同定された近縁の生殖系列配列は、VH及びVL配列に関してそれぞれ、VH3-23(DP-47)及びVlambda1-b(DPL-5)であった。1つのFW残基をVHドメインにおける突然変異誘発のために選択し(W66R)、8個のFW残基をVLドメインにおいて選択し、この場合も選択されたVernier位置(V4L
*、R42T、A64G
*、I66K
*、S68G
*、A72T、A74G、及びE81G)を含んだ。突然変異の異なる組合せを含有するILT70083バリアントは、標準的な分子生物学技術を使用して、個別のVH及びVL鎖を含有するpEUベクター上で直接作製した。ILT70083 VH及びVL鎖を異なる組合せで同時トランスフェクトして、9個のIL70083 IgG1バリアントを作製した。VH及びVLアライメントに関してそれぞれ、
図10A及び10Bを参照されたい。
【0291】
8.3 操作された抗体の試験
得られたIgG1を試験して、ILT70080及びILT70083に組み込まれた配列変化が、ヒトILT7(CT-550細胞)又はカニクイザルILT7(CT-125細胞)を発現する細胞に対する親抗体の結合に有害な影響を及ぼさないことを確認した。バリアントをフローサイトメトリーによって結合に関してスクリーニングした。ILT70080バリアントは全て、ヒト及びカニクイザルILT7に対して親ILT70080抗体と類似の結合を有した(それぞれ、EC
50=0.213nM及び0.547nM)。
図11を参照されたい。ILT70083バリアントの結合もヒトILT7に関して親抗体と類似であった(EC
50=0.464nM)。
図12を参照されたい。しかし、5個のILT70083バリアント(ILT70083.4、ILT70083.9、ILT70083.3、ILT70083.6、及びILT70083.8)は、カニクイザルILT7に関して親抗体と比較して改善された結合能を有した。
図12を参照されたい。
【0292】
操作されたILT70080及びILT70083抗体を、in vitro細胞ベースのアッセイを使用してヒトILT7発現細胞株に対するADCC効力に関して試験した。全てのILT70080バリアントが親抗体と比較して増加したADCC効力を有した(EC
50<14.1pM)。
図13を参照されたい。最小のEC
50を有する2つの候補体は、ILT70080.6(EC
50=6.9pM)及びILT70080.1(EC
50=8.0pM)であった。他のILT70080バリアントのEC
50値は以下の通りであった:ILT70080.1 EC
50=10.0pM、ILT70080.3 EC
50=11.0pM、ILT70080.4 EC
50=11.9pM、ILT70080.5 EC
50=8.6pM、及びILT70080.7 EC
50=7.8pM。LT70083バリアントは全て、親抗体と比較して減少した効力を有することが見出された(EC
50>89.0pM)。
図14を参照されたい。
【0293】
[実施例9]
操作されたILT70080及びILT70083抗体の低フコース化
ILT70080.6の低フコース化型を作製した。ILT7080.6抗体の低フコース化は、ヒト又はカニクイザルILT7発現細胞のいずれに対するその結合に影響を及ぼさなかった。ヒト及びカニクイザルILT7発現細胞に及ぼす低フコース化ILT70080.6の結合EC
50はそれぞれ、152.3pM及び366.2pMであった。
図15を参照されたい。
図15における表は、平均蛍光強度(MFI)を測定する3つの独立した結合実験の結果の平均値を提供する。
【0294】
ILT70080.6及びILT70083の低フコース化型のADCC活性(上記の実施例7を参照されたい)も同様に評価した。ILT70080.6の低フコース化は、ヒト及びカニクイザルILT7発現細胞の両方に対してそのADCC効力を約10倍改善した。
図16を参照されたい。低フコース化ILT0080.6のEC
50は、ヒトILT7発現細胞に対して1.12pMであり、カニクイザルILT7発現細胞に対して0.44pMであった。
図16の表は、細胞傷害性を測定する3つの独立したADCCアッセイの結果の平均値を提供する。
【0295】
低フコース化ILT70080.6及びILT70083を、ヒトPBMCにおけるADCC効力に関して試験した。抗体の細胞傷害性をフローサイトメトリーによって評価し、上清中のCpG A媒介IFNα分泌をELISAによって測定した。結果を
図17に示す。カニクイザルPBMCにおいて、低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体を使用するIFNα分泌のEC50値はそれぞれ、58pM及び5216pMであった。
【0296】
ヒト全血及びPBMCにおいて、低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体は、BDCA-2陽性細胞に対して特異的に結合することが見出された。両方の抗体の結合は、試験した全ての濃度(0.1~5.0μg/mL)でヒトpDCに限定された。
【0297】
カニクイザル全血において、低フコース化ILT70080.6及びILT70083抗体は、試験した全ての濃度(0.5~2.5μg/mL)でpDC(HLA-DR+Lineage-CD123high細胞)に結合することが見出された。
【0298】
[実施例10]
ILT70137抗体の低フコース化
ILT70137抗体の低フコース化型を、ILT70080及びILT70083抗体に関して実施例7において上記のように作製した。
【0299】
10.1 可溶性組換えヒトILT7に対する結合
BIAcore(表面プラズモン共鳴)を使用して、IgG捕捉アッセイフォーマットを使用して低フコース化IgG1ILT70137のヒトILT7タンパク質に対する結合の速度論(kon, koff)定数を測定した。ILT7タンパク質の2倍連続希釈液の各濃度の結合を、センサーチップ表面上にIgGを最初に捕捉した後、ILT7タンパク質又は機器緩衝液のいずれかを捕捉させて記録した。それぞれの対の注入の間に、IgG捕捉表面を再生した。個々の結合及び解離速度定数を、販売元のソフトウェアを通して入手可能なBiaevaluationソフトウェアを使用して、1:1フィッティングモデルを使用して得られた結合曲線から計算し、このソフトウェアは、物質移動限界の結合が検出されても、それを修正するための項目を含んだ。データの高解像度BIAcoreプロットから、ILT7タンパク質の低フコース化IgG1 ILT70137に対する結合の結合速度定数及び解離速度定数は、1.855×105 M-1s-1であると決定された。この同じプロットを同様に使用して、この相互作用に関する対応する解離速度定数を決定し、3.175×10-2s-1であると測定された。これらの速度定数から、KDは、koff/konの商から171nMであると計算された。これらの結果を以下の表3に要約する。koff及びkonの個々の誤差は非常に低く、データに対する全体的なフィットは、カイ二乗値が計算したRmax(最大応答)の約1%であることから判断すると良好であった。これらをまとめると、このことは、データをフィットさせるための一部位結合モデルの使用が適切であったことを示唆している。評価は、結合が物質移動限界ではないことを示しており、測定された結合速度定数は有効であると考えられる。
【0300】
【0301】
10.2 ILT7発現細胞株に対する結合
低フコース化ILT70137のILT7に対する結合はヒト又はカニクイザルILT7を安定に発現する細胞株を使用して決定した。細胞結合抗体の平均蛍光強度をフローサイトメトリーによって評価した。細胞を、0.004~333.3nMの範囲の漸増濃度の試験抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を冷PBSによって洗浄し、抗ヒトAlexa Fluor 647抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。次に、蛍光強度をFACSによって決定し、EC50値を、GraphPad Prism 6ソフトウェアにおいて非線形フィット式を使用して計算した。
【0302】
結果を
図18に示す。低フコース化ILT70137は、用量依存的に組換えヒト及びカニクイザルILT7発現細胞に結合することが見出された。アイソタイプ対照では有意な結合は観察されなかった。低フコース化ILT70137の半最大有効濃度(EC
50)の平均値は、ヒトILT7発現細胞に対する結合に関して0.303nMであり、カニクイザルILT7発現細胞に関して2.148nMであった。
【0303】
10.3 ILT7発現細胞株に対するADCC活性
低フコース化ILT70137がADCCを誘導する潜在性を、ヒト又はカニクイザルILT7を発現する標的細胞における蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイによって測定した。標的細胞をエフェクターNK細胞株KC1333と1:5の比率で、低フコース化ILT70137又はアイソタイプ対照の漸増濃度(0~6.66×10-9Mの範囲)の存在下で同時培養した。フローサイトメトリーによる標的細胞生存率の評価に関して、KC1333を、CD56を使用するゲートによって除外し、死細胞を、7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)生存率染色を使用するゲートによって除外した。生存標的細胞は、CD56陰性、7-AAD陰性として定義された。細胞傷害性の百分率は、以下の式を使用して計算した:%細胞傷害性=100-(生きている標的細胞の百分率/抗体なし対照における生きている標的の百分率)×100。半最大有効濃度(EC50)値は、GraphPad Prism 6ソフトウェアにおける非線形フィット式を使用して計算した。x軸:抗体濃度。
【0304】
結果を
図19に示す。低フコース化ILT70137は、ILT7を発現する細胞において用量依存的にADCCを誘導し、ヒトILT-7を発現する細胞に関してEC
50は、4.19pMであり、カニクイザルILT7を発現する細胞に関して1.89pMであった。
【0305】
10.4 プライマリー形質細胞様樹状細胞におけるADCC活性
Toll様受容体9(TLR9)アゴニストに応答したIFNα分泌は、ほとんどが末梢血単核球細胞(PBMC)調製物中の形質細胞様樹状細胞(pDC)によるものである。したがって、低フコース化ILT70137がプライマリーpDCのADCCを誘導する能力を、PBMCにおけるIFNαの分泌を遮断するその能力を評価することによって間接的に測定した。これらのアッセイにおいて、精製PBMCを96ウェル丸底プレートに、10%ウシ胎児血清及び200ng/mL組換えヒトIL-2を補充した培地中で播種した。低フコース化ILT70137及び対照抗体の連続希釈液を適切なウェルに2回の反復実験で添加し、9.5時間インキュベートした。インキュベーション後、TLR9アゴニストODN2216を、最終濃度0.5μMで各ウェルに添加した。上清中のIFNαを、マルチサブタイプIFNαELISAキットを使用して定量し、
図20において上清のpg/mLとして表す。ADCCのIC
50を、GraphPad Prism v5.01ソフトウェアにおける非線形フィット式を使用して計算した。
【0306】
低フコース化ILT70137は、PBMCにおいてIFNαのTLR9媒介分泌を用量依存的に低減させ、半最大阻害濃度(IC50)は0.048nMであった。これらの結果は、低フコース化ILT70137がPBMCにおける天然に存在するプライマリーヒトpDCを有効に枯渇させることを示している。
【0307】
10.5 プライマリー形質細胞様樹状細胞に対する結合
低フコース化ILT70137のヒトプライマリー形質細胞様樹状細胞(pDC)に対する特異性を、末梢血単核球細胞(PBMC)においてFACSによって評価した。PBMCをヒトドナーから単離した。この樹状細胞サブセットを適切に同定するために、マーカーCD123(pDC及び好塩基球において発現される)及びCD304(pDCに対して独自)を最初に利用した。pDCは、CD123+CD304+二重陽性であり、pDCを同定するためにはCD304染色で十分であった。
図21(上のパネル)を参照されたい。低フコース化ILT70137は、CD304陽性細胞のみに結合し、これがpDCに独自に結合することを示している。
図21(右下のパネル)を参照されたい。この集団に対する有意な結合は、ヒトIgG1アイソタイプ低フコース化対照抗体R3-47では観察されなかった。
図21(左下のパネル)を参照されたい。
【0308】
[実施例11]
ILT7抗体のin vivo活性
3つの抗ILT7抗体、すなわち低フコース化7C7、低フコース化ILT70080.6及び低フコース化IgG1 ILT70137を雄性カニクイザルに投与した。3つの抗体は全て、形質細胞様樹状細胞(pDC)の枯渇において活性であった。
【0309】
低フコース化ILT70080.6の投与は一般的に良好に忍容された。しかし、以下の病理所見が観察された:好中球数の減少、血管白血球増加症、糸球体基質の増加、及び血管/血管周囲炎症。さらに、低フコース化ILT70080.6抗体に対する抗体(抗薬物抗体)の出現が低フコース化ILT70080.6のクリアランスの増加に関連した。
【0310】
別の研究において、低フコース化7C7及び低フコース化ILT70137のトキシコキネティクスを調べた。この試験において、抗体の5つの同等の用量を、注入によってカニクイザルに投与した。投与後、曝露は、定常状態において低フコース化7C7及び低フコース化ILT70137の間で同等であった。さらに、
図22に示すように、pDCの特異的かつ可逆的枯渇が、いずれの抗体を使用しても達成された。pDC枯渇により、IFNα産生のex vivo阻害が起こった。
図23を参照されたい。
【0311】
しかし、低フコース化7C7及び低フコース化ILT70137によって処置した動物の病理学は異なった。脾臓重量の増加が、低フコース化7C7によって処置した一部の動物に観察された。顕微鏡所見もまた、低フコース化7C7によって処置した一部の動物で観察された。特に、赤髄及びマクロファージ肥大/過形成が脾臓において観察された。クッパー細胞肥大/過形成が肝臓において観察された。さらに、免疫組織化学により、肝臓における肥大/過形成クッパー細胞及び脾臓における赤髄マクロファージに関連するヒトIgG/7C7及びサルIgG含有顆粒沈着が示された。これらの知見は、薬物(7C7)及び抗薬物抗体(ADA)を含有する免疫複合体の過剰な生理的クリアランスと一貫する。これに対し、臓器重量の変化及び肉眼若しくは顕微鏡所見は、低フコース化ILT70137では観察されなかった。
【0312】
さらに、低フコース化7C7抗体で処置した2匹のサルに関して、好中球数が1 E3/μlより下に低下したが、対照又は低フコース化ILT70137で処置したサルでは好中球数の有意な変化は観察されなかった。
【0313】
このように、3つ全ての抗体がin vivoでpDCを枯渇させたが、低フコース化ILT70137の投与後の優れた安全性及び抗薬物抗体の欠如は、驚くほど有利である。
【0314】
[実施例12]
エピトープマッピング
ILT7抗体が結合するエピトープを決定するために、ILT7及びILT1ポリペプチドを含有するキメラポリペプチドを構築し、これらの構築物に対するILT7抗体の結合を試験した。ILT1(受託番号Q8N149)は、ILT7と同じモジュール構造を有し、ILT7と65%の同一性を共有するが、ILT7モノクローナル抗体によって認識されないことから、キメラバリアントを構築するために選択した。キメラポリペプチドは、ILT7の細胞外IgドメインをILT1相対物に交換することによって作製した。これらの構築物は全てN末端Flagタグを含有していた。結果は、ILT70080及びILT70083が、ILT7のIg1ドメインに結合することを証明した。これに対し、7C7抗体はILT7のIg2ドメインに結合する。
【0315】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の全般的性質を十分に明らかにしており、そのため当業者の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、本発明の全般的概念から逸脱することなく、他者がそのような特定の実施形態を容易に修飾及び/又は適合させることができる。したがって、そのような適合及び修飾は、本明細書に提示した教示及び指針に基づいて、開示の実施形態の均等物の意味及び範囲内であると意図される。本明細書における語句又は用語は、説明の目的のためであり、制限するためではなく、本明細書の用語又は語句は、教示及び指針に照らして当業者によって解釈されると理解される。
【0316】
本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても制限されてはならず、以下の特許請求の範囲及びその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【配列表】