(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】圧縮バンド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
A61F13/00 355J
A61F13/00 355A
(21)【出願番号】P 2021201807
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018532452の分割
【原出願日】2016-12-23
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】102015226706.7
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507401096
【氏名又は名称】カーオーベー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、 ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】タモウエ、 フェルディナント
(72)【発明者】
【氏名】マイスター、 マリタ
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-500132(JP,A)
【文献】特開平2-19150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0052043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療すべき四肢に巻回するための圧縮バンドであって、
前記四肢に卷回するときに前記四肢の皮膚に接触するクッション層(1)と、
前記クッション層(1)を支持する支持層(2)と、
前記クッション層(1)と前記支持層(2)とを
伸びていない状態で、最大で4cNの縫い糸張力で1.5~3mm/ローテーションのステッチ長さで互いに連結する弾性的な縫い糸と、
を有する、
圧縮バンド。
【請求項2】
前記クッション層(1)の厚さが0.6~1.2mmであることを特徴とする請求項1に記載の圧縮バンド。
【請求項3】
前記クッション層(1)及び前記支持層(2)の一方または両方の材料が非弾性であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮バンド。
【請求項4】
前記クッション層(1)と前記支持層(2)からなる両層(1、2)の少なくとも一方がフリース材料からなっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項5】
前記クッション層(1)が熱融着フリースであることを特徴とする請求項4に記載の圧縮バンド。
【請求項6】
前記支持層(2)が熱融着フリースであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項7】
弾性的な前記縫い糸が綿-縮み紡糸、綿-縮み撚糸、ポリアミド加工糸、ポリエステル加工糸、ゴム糸またはポリウレタン-スパンデックス糸のグループからまたはこれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項8】
前記圧縮バンドが最大の伸び可能性を示す伸び閾値を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項9】
4~10N/mm
2の弾性係数を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項10】
50%よりも少ない伸び増大を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の圧縮バンド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の圧縮バンドである第1圧縮バンドと、前記第1圧縮バンドに重ねて装着可能な第2圧縮バンドを有する圧縮バンド組立て体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの層を有する圧縮バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮バンドは技術水準では例えば糖尿病潰瘍のために使用される。この場合、病像に基づいて必要ないろいろな問題提起、すなわち治療すべき四肢に対する、一方では十分な圧縮、他方ではクッション作用を考慮すべきであるという問題が存在する。
【0003】
従って例えば、クッションを取付け、その上に圧縮帯が装着される。
【0004】
その際、圧縮治療の場合、基本的にはいわゆる作動圧力といわゆる静止圧力を区別すべきである。この場合、静止圧力は、四肢が横たわっているときに、圧縮手段、ここでは圧縮バンドによって四肢に加えられる圧力である。作動圧力は、筋肉の運動時に四肢に加えられる圧力である。作動圧力は好ましくは静止圧力よりも20~40mmHg高い。
【0005】
その際同様に、異なる種類の帯を使用することが知られている。いわゆる長い引張り帯が知られている。この長い引張り帯は非常に高い弾性を有し、しばしば200%以上伸びることができる。これに対して、短い引張り帯が知られている。この短い引張り帯は小さな伸び可能性と小さな戻し力を有し、非常に早くそれ以上の伸びを許容しなくなり、比較的に高い作動圧力を生じることができる。短い引張り帯は、伸び可能性の非常に高い制限を実現するために、比較的に長い範囲にわたって、小さな抵抗を生じる。伝統的な短い引張り帯圧縮治療は、静脈疾患の治療のための手段である。その際、短い引張り帯のための材料は一般的に非弾性的な材料から作られ、装備プロセスによって弾性化される。しかし、弾性は治療中大幅に低下する。これは用途において圧縮圧力を低下させることになる。
【0006】
公知の圧縮包帯は例えば特許文献1に記載されている。この欧州特許出願公開明細書は、伸びる弾性的な基層と、皮膚の方に向いた基層の側に配置された伸びる発泡層とを有する、皮膚の方に向いた内側の弾性的な包帯と、その上に装着される、伸びる他の自己接着式の弾性的な包帯を示している。
【0007】
さらに、支持バンド、固定バンドまたは押圧バンドが特許文献2から知られている。バンドはここでは少なくとも4つの層を有する。バンドは1つの締付け層を備え、この締付け層は戻し力を発生し、穴を有する。残りの層は穴によって互いに固定されている。設けられた4つの層によって、バンドは比較的に高価で費用がかかる。
【0008】
さらに、同様に弾性的な包帯に関する特許文献3を指摘する。この包帯は非弾性的な層を有する。この層は弾性的な帯を取り巻き、この帯に連結されている。
【0009】
治療上の高い安全性を達成するために、治療上必要な圧縮圧力をできるだけ良好に達成することが所望される。そのために、技術水準では、多数の方策が知られている。例えばマーキング手段が知られている。このマーキング手段は大きな伸びのときに変形するので、テラピストは大きすぎる伸び、ひいては高すぎる装着圧力を知ることができる。その場合しかし、そのために常に熟練した人が必要であるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第2275062A2号明細書
【文献】独国実用新案第202012000529U1号明細書
【文献】国際公開第2014/131976A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、高い装着安全性と同時に、良好な治療特性を有し、特に圧縮圧力の大幅な低下を生じることなく、何日にも亘って持ちこたえることができる、圧縮帯または圧縮包帯とも呼ばれる圧縮バンドを提供することが所望される。
【0012】
用語「層」または「重ね」が使用されるときは、これらは同じ対象を表す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この技術水準から出発して、本発明は、請求項1の特徴を有する圧縮バンドによって課題を解決する。この場合、両層、すなわち第1クッション層と第2支持層はステッチ編み法によって弾性的な縫い糸を介して互いに連結され、最大で4cNの縫い糸張力のときに、ステッチ長さが1.5~3mm/Uである。
【0014】
この構成により、両層はステッチ編み法によっておよびここでは好ましくはマリモ(Malimo)法またはマリワット(Maliwatt)法によって互いに連結される。この場合、層は伸びていない状態で弾性的な縫い糸によって連結される。
【0015】
ステッチ編み法の利点は、多数の個所で同時に連結を行うことができ、連結後両層がもはや互いに分離されないことにある。面形成物の縦方向でのステッチ長さを選択することにより、面形成物から圧縮帯が規格化加工される。ステッチ長さとは、ステッチ長さ方向における2つのステッチの間隔であると理解され、弾性的な複合物の伸張可能性が縫い糸張力によって調節可能であるので、手によってもはや分離不可能で、それにもかかわらず制御可能である弾性的な複合物が両層から構成される。このパラメータの選択に応じて、完成した面形成物は緊張解除時に収縮し、材料にしわが形成される。
【0016】
その際、縫い技術と縫い糸のステッチ長さは、クッション層の繊維が2つの層からなる複合物の一方の側で皮膚快適性と均圧機能を有し、それによって最終的に圧縮バンドが認識可能な2つの異なる側を有し、この側が均圧のために非常に機能を発揮するように調整される。その際、ステッチ長さはさらに、皮膚の方に向いたクッション層の所望の吸収性および皮膚親和性が維持されるように調節すべきである。
【0017】
その際、クッション層は四肢の方に向いた圧縮バンドの側であり、支持層はこの圧縮バンドの第2の側である。
【0018】
層を連結するためのマリモ法とマリワット法は、技術水準で知られているように使用される。例えば、弾性は、ステッチ編み技術マリワットまたはマリモを適用して、ごわごわしたフリース布または織物を、永久弾性のスパンデックス糸で縦方向に被覆縫いすることによって得られる。ステッチ編み技術であるマリワットまたはマリモは、Malimo Naehwirktechnologie,Ploch,Boettcher,Scharch,VEB Fachbuchverlag Leipzig,1978,1.Auflageに記載されている。
【0019】
両層、すなわちクッション層と支持層が非弾性的に形成され、ステッチ編み法によって初めて弾性化されると有利である。
【0020】
両層の少なくとも一方、好ましくは両層がクッション材料であり、支持層がフリース材料であると特に有利である。しかし、その代わりに、例えば織物、ニット、編物、または発泡体のような他の材料を使用することができる。その際、クッション層は、場合によっては予めピン留め可能な綿フリース、特に熱融着フリース層である。その際、両方法、すなわち熱結合と熱融着の場合、フリースの繊維はすきさばき法で所定の方向に配向され、繊維機能化法でフリースロールとして用意され、温度によってまたは温度と圧力によって、それ以降の加工のために安定化させられる。熱融着法の間、異なる融点を有する繊維が熱風乾燥機によって互いに融合される。熱結合法では、繊維は加熱されたカレンダロールの間で熱と圧力によって融合される。結果は両者の場合、やわらかく均質なフリース布である。このフリース布は理想的であり、技術的用途に適している。熱融着法は圧力を加えないので、クッション層に適している。
【0021】
支持層は熱結合フリースとすることができる。熱結合フリースは好ましくは、小さな伸
張可能性と同時に所望な剛性を有する。
【0022】
両層は一緒にたて編機に供給され、弾性的な縫い糸によって互いに連結される。この縫い糸は、綿縮み紡糸、綿縮み撚糸、ポリアミド加工糸、ポリエステル加工糸、ゴム糸またはポリウレタンスパンデックス糸のグループから、またはこれらの組合せから選択可能である。
【0023】
縫い糸はその代わりにたて糸と呼ぶことができる。その際、糸はたて編機の機械方向に延在し、これに対して横方向には延在しない。
【0024】
縫製が終わった圧縮バンドの面形成物は常に最適化された伸びを有する。所定の最適な伸張可能性に相当する、圧縮バンドの最大伸張可能性と、これを超える圧縮バンドの伸びが、伸び閾値によって制限されていると特に有利である。これにより、装着安全性を大幅に高めることができる。というのは、熟練していない使用者も、圧縮バンドを伸び閾値まで最大に伸張させることができるからである。この場合、最大に伸張させることができるだけでなく、同時に最適な伸び、ひいては最適な圧縮圧力が達成され、圧縮バンドの最大
伸張状態で装着することができる。
【0025】
最適なクッション層を得るために、クッション層の厚さは0.3~12mm、好ましくは0.4~6mm、さらに好ましくは0.5~3mm、特に有利には0.6~1.2mmである。
【0026】
ステッチ編み法による連結に基づいて、縫製された面形成物が圧縮バンドに合わせて長さを規格化するためにさらに加工された後で、両層は緊張解除状態で波形が付けられ、圧縮バンドの不均一な表面が生じる。この不均一な表面に基づいて、圧縮バンドの均圧層としての一次機能のほかに、調整可能な伸張可能性、ひいては高められた装着安全性の二次機能が達成され、波形によって表面に、材料隆起と材料窪みからなるパターンが形成され、最大伸張状態でも完全には消えないので、これによって治療でマッサージ効果またはド
レナージ効果が付加的に生じる。
【0027】
さらに、静止圧力を加えるために、本発明による圧縮包帯(圧縮バンド)が他の圧縮包帯と組み合わせられ、特に上に巻き付けられる。この他の圧縮包帯は例えば長い引張り包帯として形成可能である。すなわち、伸びの開始から、圧縮圧力を供することができる。しかし、この圧縮圧力は急激に増大しない。
【0028】
静止圧力のための他の包帯として、タイプ752(商品名 NOWOPRESS 752、メーカー:Karl Otto GmbH & Co,KG,Wolfstein,独国)の弾性的な凝集力付着フリース帯が、縦引張り特性を有する圧縮帯として有利に使用される。この場合、ステッチ編み技術マリワットを適用して、剛性のあるポリプロピレンフリース布の上に永久弾性のスパンデックス糸を縦方向に縫製することによって、基本繊維品が得られる。ステッチ編み技術マリワットは、Malimo Naehwirktechnologie,Ploch,Boettcher,Scharch,VEB Fachbuchverlag Leipzig,1978,1.Auflageに記載されている。この帯層は、所望な凝集力付着効果を達成するために、両表面に、ポリイソプレンゴムをベースとした凝集力付着作用を有する接着剤が被覆される。その際、帯層LS(タイプ752)は次のように構成されている:60%のポリプロピレン、12%のスパンデックス、28%のIRゴム。
基本フリース:PP-スパンボンドフリース、35g/qm、熱を加えた縫い糸133dtex スパンデックス(DORLASTAN,BAYER)
縫い糸密度 10cmの幅あたり45本の糸
縫い糸ステッチ長さ、結び3mm、開放した房
伸びた状態の単位面積重量 59g/qm
縦方向(たて糸方向)の弾性
伸張可能性/戻し DIN61632で160%/99%
面A/Bの付着力 60cN/cm。
【0029】
本発明はさらに、クッション層と支持層を有する上記の包帯と、特に静止圧力のための長い引張り帯として形成された他の包帯とからなる組合せバンドに関する。
【0030】
本発明は短い引張り帯、平均引張り帯または長い引張り帯のカテゴリに分けることは、伸張可能性に応じて行われ、例えばP.ASMUSSEN,B.SOELLNER,Kompressionstherapie Prinzipien und Praxis,Verlag Urban & Fischer in Elsevier 2004
第121頁から推察可能である。その際、伸張可能性はDIN61632で測定される。
【0031】
次に、図に基づいて本発明を詳しく説明する。その他の出願書類から、本発明の他の効果と特徴がさらに明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】本発明に係る種類の完成した圧縮バンドの力伸びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、綿フリースからなるクッション層1と、熱結合フリース層としての支持層2とが巻物から供給され、そして参照符号4をつけたたて編機を用いてステッチ編み法で互いに結合される態様が示してある。その際、両層は前もってローラガイド5を介して互いに固定される。その際、ステッチ編み法はかぎ針によって行われる。このかぎ針を用いて、層が弾性的な縫い糸で縫合される。弾性的な縫い糸を介して互いに連結された材料はその後他のローラガイド6を通過案内され、ローラ7に巻き取られる。場合によっては、前もって、束ねるために縦方向に規格化加工を行うことができる。縫い糸は伸張した弾性的な糸である。この糸は予め定められたステッチ長さと予め定めた縫い糸張力で挿入され、従って弾性的な材料の減張後、層結合物(面形成物)を収縮することになる。
【0034】
図2は力と伸びのグラフを示す。この場合、圧縮バンドは短い引張りバンドの特性に相当する。この特性の場合先ず最初は、伸びの増大と共に力が増大せず、その後力が急激に増大し、それに伴い伸びが閾値に達する。この場合、伸びの閾値が最適な治療圧力の範囲内にあるので、圧縮集合体の最大伸びの際同時に、この予備張力が加わり、圧縮治療のための最適な治療圧力を生じることができる。
【0035】
バンドの強度は弾性係数と力の増大によって表すことができる。
図2は、市販の2つのバンドと比較して、本発明に係るバンド10の力-伸び-グラフを示す。その際、本発明に係るバンドは、比較バンドよりも非常に大きな弾性係数を有する。好ましい値は4~10N/mm
2、さらに好ましくは5~9N/mm
2、さらに好ましくは6~8N/mm
2である。
【0036】
力の増大は、断裂までに20Nのかなりの抵抗によって伸ばされるようにするために、バンドがどの程度伸びなければならないかが問題である。この状況も
図2のグラフから明らかである。本発明に係るバンドの場合、約20Nの力が約40%の伸びのときに達成され、バンドは約60%の伸びのときに断裂する。40%と60%の間の伸びの範囲では、バンドは5倍から10倍の力の増大を受ける。比較製品の場合、断裂までに、はるかに強い伸びが必要である。従って、本発明に係るバンド(圧縮バンド)は、50%よりも小さな伸び増大、好ましくは35%よりも小さな伸び増大、さらに好ましくは25%よりも小さな伸び増大を有するので有利である。用語「力の増大」と「伸び増大」は同じ内容を同義的に表す。