(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】細胞培養培地
(51)【国際特許分類】
C12N 5/02 20060101AFI20230925BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230925BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C12N5/02 ZNA
C12N5/071
C12N5/10
C12P21/02 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021209493
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2020129454の分割
【原出願日】2016-03-31
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2015-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シャウブ,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】リンク,マリー
(72)【発明者】
【氏名】ショーン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,トルシュテン
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524826(JP,A)
【文献】特表2002-501374(JP,A)
【文献】特表2012-503487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシン
が1.2~2.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシン
が0.5~0.9であるL-フェニルアラニン、
L-チロシン/L-イソロイシン
が1.5~2.7であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシン
が1.0~1.9であるL-トレオニン
、
L-バリン/L-イソロイシン
が1.0~1.9であるL-バリン
、
L-リジン/L-イソロイシンが1.6~2.9であるL-リジン、
L-トリプトファン/L-イソロイシンが0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが1.6~3.0であるL-プロリン;及び
L-メチオニン/L-イソロイシンが0.4~0.7であるL-メチオニン
を含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地
;及び
哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地を含む、キットであって、該基礎細胞培養培地は
、25~150mMのアミノ酸総含量を有する、該基礎細胞培養培地。
【請求項2】
哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地;及び
哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地、を含むキットであって、
フィード培地が、
イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシン
が2.3~4.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシン
が0.6~1.1であるL-フェニルアラニン、
L-トレオニン/L-イソロイシン
が1.3~2.4であるL-トレオニン
、
L-バリン/L-イソロイシン
が1.1~2.0であるL-バリン
、
L-チロシン/L-イソロイシンが0.6~1.1であるL-チロシン、
L-リジン/L-イソロイシンが1.1~2.1であるL-リジン、
L-トリプトファン/L-イソロイシンが0.3~0.6であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが0.9~1.8であるL-プロリン、
L-メチオニン/L-イソロイシンが0.4~0.8であるL-メチオニン
を含
み、該フィード培地は
、100~1,000mMのアミノ酸総含量を有する、該
キット。
【請求項3】
イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが2.3~4.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが0.6~1.1であるL-フェニルアラニン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが1.3~2.4であるL-トレオニン、
L-バリン/L-イソロイシンが1.1~2.0であるL-バリン、
L-チロシン/L-イソロイシンが0.6~1.1であるL-チロシン、
L-リジン/L-イソロイシンが1.1~2.1であるL-リジン、
L-トリプトファン/L-イソロイシンが0.3~0.6であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが0.9~1.8であるL-プロリン、
L-メチオニン/L-イソロイシンが0.4~0.8であるL-メチオニン
を含む、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地であって、該フィード培地は、100~1000mMのアミノ酸総含量を有する、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地との組合せにおいて使用するための、該フィード培地。
【請求項4】
イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが1.2~2.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが0.5~0.9であるL-フェニルアラニン、
L-チロシン/L-イソロイシンが1.5~2.7であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが1.0~1.9であるL-トレオニン、
L-バリン/L-イソロイシンが1.0~1.9であるL-バリン、
L-リジン/L-イソロイシンが1.6~2.9であるL-リジン、
L-トリプトファン/L-イソロイシンが0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが1.6~3.0であるL-プロリン;及び
L-メチオニン/L-イソロイシンが0.4~0.7であるL-メチオニン
を含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地であって、該基礎細胞培養培地は、25~150mMのアミノ酸総含量を有する、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地との組合せにおいて使用するための、該基礎細胞培養培地。
【請求項5】
a)請求項1
記載の
キットにおける基礎細胞培養培地及び
哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地;又は
b)
哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地及び請求項
2記載のキットにおけるフィード培地
を含む、哺乳動物細胞を培養するための培地プラットフォーム。
【請求項6】
以下の工程:
a)哺乳動物細胞を準備する工程、
b)請求項
1記載の
キットにおける基礎細胞培養培地中で細胞を培養する工程、及び
c)
請求項
2記載のキットにおけるフィード培地を基礎細胞培養培地に加える工程
を含む、哺乳動物細胞を培養する方法であって、該細胞は、細胞の増殖を可能とする条件下で培養される、該方法。
【請求項7】
以下の工程:
a)関心対象のタンパク質をコードしている関心対象の遺伝子を含む哺乳動物細胞を準備する工程、
b)請求項
4記載の基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及び
c
)フィード培地を基礎細胞培養培地に加える工程、及び
d)場合により、関心対象の該タンパク質を細胞培養液から分離及び/又は単離及び/又は精製する工程
を含む、関心対象のタンパク質を生成する方法であって、該細胞は、関心対象のタンパク質の発現を可能とする条件下で培養される、該方法。
【請求項8】
以下の工程:
a)関心対象のタンパク質をコードしている関心対象の遺伝子を含む哺乳動物細胞を準備する工程、
b)哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及び
c)請求項3記載のフィード培地を加える工程、及び
d)場合により、関心対象の該タンパク質を細胞培養液から分離及び/又は単離及び/又は精製する工程
を含む、関心対象のタンパク質を生成する方法であって、該細胞は、関心対象のタンパク質の発現を可能とする条件下で培養される、該方法。
【請求項9】
関心対象のタンパク質が
、分泌タンパク質で
ある、請求項
7又は8の方法。
【請求項10】
細胞が
、げっ歯類又はヒトの細胞で
ある、請求項1
又は2記載のキット。
【請求項11】
細胞が、げっ歯類又はヒトの細胞である、請求項7~9のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は、細胞培養、及び哺乳動物細胞における組換えタンパク質の産生の分野に関する。本発明は具体的には、組換え哺乳動物宿主細胞を使用した、(ポリ)ペプチド、抗体、抗体断片、及び抗体由来分子などの産物のための、哺乳動物細胞培養液中での最適な産生(例えば力価)及び成績(例えば細胞増殖)のための新規な基礎細胞培養培地並びに新規なフィード培地に関する。
【0002】
背景
治療用タンパク質(例えばモノクローナル抗体)の大規模な工業的製造のための哺乳動物細胞培養プロセスの開発は約25年前に始まった。バイオ医薬品の生産のための効率的なバイオプロセスは主に、(i)高生産性で安定で規制当局により認可された(典型的には哺乳動物)細胞株、(ii)様々な(典型的には哺乳動物)宿主細胞及び様々な培養系及びプロセス方式における(例えば様々な規模で、及び例えばバッチプロセス、流加バッチプロセス、及び灌流プロセスのような)細胞増殖及び産生を支持するための最適な細胞培養培地、並びに(iii)例えば適切なスターラーの配置及びガス供給による最適な酸素の供給、一貫した製品の品質を確保するための全ての関連性のあるプロセスパラメーターの自動制御、又は、小規模のプロセスの開発(mLからLの規模)から、成績及び製品の品質を損なうことなく大規模の製造(2,000L超)へとスケールアップすることのできるプロセス設計によって特徴付けられる、最適な技術的バイオプロセスを必要とする。
【0003】
この脈絡において、細胞培養培地は重要な役割を有し、そして天然に起源するものとは対照的に技術システム中の懸濁液中で培養された哺乳動物細胞の複雑な栄養必要条件を満たさなければならない。例えば、バイオ医薬品の生産のために最も広く使用されている細胞株は、元来、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から初めて得られた。
【0004】
過去には、細胞培養培地中に典型的には存在しない栄養分又は担体タンパク質、例えばコレステロール及びトランスフェリン又は細胞と基質とを付着させるための因子(例えばフィブロネクチン)、他のホルモン及び増殖因子を提供するために、しかしまた、特定必須栄養分の保護及び培養培地中の毒性成分の結合をもたらすためにも、血清が培地添加物として使用された。しかしながら、治療薬の生産のために使用される細胞培養培地中において、血清は潜在的に動物ウイルスを導入する可能性があり、そしてそれは、原材料の入手源が不明確であるために、他の望ましくない混入物(例えば抗生物質又はプロテアーゼ)を細胞培養プロセスに導入する可能性がある。これらの化合物は成功裡に置き換えられ、無血清細胞培養培地は、バイオ医薬品のプロセス開発及び組換え生産のための業界の慣習となっている。例えば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞を、唯一の培地のタンパク質成分としてヒトインシュリンを含有している無血清培地中で連続的に増殖させた(Keen and Rapson, Cytotechnology, Oct 17(3):153-63, 1995)。
【0005】
バイオ医薬品の生産に一般的に使用される別の群の培地成分は、動物起源に由来するか又は植物に由来するかのいずれかである加水分解物である。安全性のリスクを伴うために、動物起源由来の加水分解物は、可能である場合にはいつでもプロセスから除去される。加水分解物は通常、アミノ酸、小型ペプチド、無機イオン、微量元素、炭水化物、及びビタミンの混合物を含有し、そして、全体の増殖及び生産性を向上させるために様々な(必須)栄養分を用いて培養培地を強化するために広く使用されている。安全性の面以外の別の欠点は、加水分解物は化学的な組成が明らかではなく、したがって、ロット間の正確な組成が変化し得(ロット間のばらつき)、その理由から、プロセスの再現性に対してマイナスの影響を及ぼす可能性があるという事実である。加水分解物は多くの化合物を含有し、そして複雑な(細部まで全部知られていない)組成を有するので、それらは細胞培養の成績(例えば産物の収率)に影響を及ぼすことなく容易に置き換えることはできない。このような明確になっていない原材料を選別し、そして組成が化学的に明らかである成分を用いて置換し、そして同時に一貫した産物の品質及び産物の高い力価を維持することはバイオプロセスの開発にとって今も残る未解決な課題である。正確な化学的組成を決定する必要があるだけでなく、あらゆる成分の正確な濃度を決定する必要もある。安全性の面から、今日では、主に植物起源の加水分解物が使用される(例えば大豆加水分解物)。しかしながら、組成が明らかではない問題が依然としてある。
【0006】
現在、バイオ医薬品のプロセス開発は、組成が化学的に明らかである培地(無血清、動物成分非含有、化学的な組成が明らかである)を目指している。これにより、混入物のリスクがさらに低減され(例えば、未知の栄養源に由来する有機物質、内毒素、未知の金属及び微量元素の減少)、そしてまた、安全性及びロット間のばらつきに関連したリスクを全く伴なわない矛盾のない原材料に関する上流及び下流プロセシングの全ての状況に対してより向上した制御を促進する。最近になってやっと、「組成が化学的に明らかである」(この用語を明瞭に定義する業界標準はまだないことを注記する)培地は、哺乳動物細胞培養のために市販されるようになったが、工業的製造への適用は現在依然として限定されている。
【0007】
このような「組成が化学的に明らかである」加水分解物又は培地サプリメントの正確な組成は既知であるので(しかし、典型的には培地の供給業者にのみ既知である)、組成が明らかではない原材料は全く使用されていない。これらの組成が化学的に明らかである培地は依然として複雑であり、約40~50個以下の「重要な成分」を含有している。しかし、それらは様々な構築ブロックから作られている。このような複雑な「組成が化学的に明らかである」培地を設計するために、植物又は動物由来の加水分解物をできるだけ模倣する必要があり、これには、そうした加水分解物の十分な分画化、それに続く最上位の分析が必要とされる。この分野における大きな課題は、細胞培養培地中に存在する途方もなく多様な化合物によってもたらされる。
【0008】
高成績の細胞培養培地の最適な設計は、多くのプロセスがいわゆる流加方式で実施される、すなわち細胞培養液を基礎開始培地中に接種し、そしてその後(典型的には約0から3日後)、培地の基質が細胞増殖に因り枯渇するようになると、濃縮されたフィード培地を供給して増殖及び産生を維持するという事実によってさらに複雑となる。全ての培地化合物を開始時から提供することにより(バッチ方式)、細胞が開始時に過剰供給されるので最適以下のプロセス成績となる(例えば、所望ではない副産物の乳酸塩が多く形成され、これにより次いで細胞増殖及び生存率に対して有害な作用を及ぼす)。この脈絡における大きな課題は、培養実行時間全体を通じて、細胞培養プロセスにおける最適な増殖及び産生のために完全に適合する最適なバッチ培地(基礎細胞培養培地)及び最適な流加培地(フィード培地)を設計することである。生細胞の濃度、細胞培養液の生存率、及び細胞培養プロセスの栄養必要条件は、培養プロセスの時間経過と共に有意に(時間単位から1日単位で)変化するので、最適なバッチ培地及び流加培地(基礎細胞培養培地及びフィード培地)の設計は要求の厳しい作業である。典型的には、合計すると約2~3週間続く発酵プロセスの1時間毎及び1日毎に対して最適な溶液を提供する1つのフィード培地が設計されるので、さらにより困難である。
【0009】
「合理的な」アプローチを使用した工業的な哺乳動物細胞培養培地設計における最新技術はFletcher(Fletcher T., BioProcess International 3(1), 30-36, 2005)によって要約され、このアプローチは、業界の慣習において合理的な培地の設計に関する最先端の概念であると依然として考えられ得る。合理的な培地の設計の複雑さは、多くの成分が関与しているという事実だけでなく、培地化合物の具体的な濃度及び複雑な相互作用も考慮する必要があるという事実によってももたらされるということが指摘されている。
【0010】
Fletcherによると、培地の設計には3つの基本的なアプローチが存在する。これらはi)(単一)成分の滴定(例えば力価に関する用量反応を規定するための実験)、ii)培地の混合(既存の(複合)培地を単に混合し、最善の混合を同定する)、iii)使用済み培地の分析(使用済み培地対新鮮な培地の化学分析による栄養分の枯渇を表わす;細胞毎の特定の代謝需要はこのアプローチでは考慮されないことを注記する)、iv)自動スクリーニング(例えばマルチウェルプレート中でのスループットを重視したロボット液体ハンドリング)である。これらのどの方法も全ての点で最善というわけではなく、Fletcherによると、各々が独自の特定の弱点を有する。例えば、i)成分の滴定は、莫大な量の試料の分析を引き起こし、これは、多くの理由(例えば限度容量、費用、資源)から工業的実施には実行不可能である、ii)培地の混合はスループットの向上をもたらすが、このアプローチはあまり教唆的ではなく、範囲が非常に限定されている、iii)使用済み培地の分析は、培養液の化学組成が時間の経過と共にどのように変化するかの重要な情報を提供し得るが、典型的には使用済み培地の分析が、極めて限定された数の成分のみに焦点を当てる(例えば、20種類全てのアミノ酸の完全なアミノ酸分析は典型的には実施されず、2つの最も重要なアミノ酸のグルタミンとグルタミン酸塩のみが慣用的には測定されることを注記する)という事実に基づき細胞培養の必要条件の全体像を提供することはできない、iv)自動スクリーニングは、培養系を最小化することによってスループットを向上させるが、このような小型化系は大規模な細胞培養の成績を正しく予測することができないので、大規模プロセスを(正しく)モデル化することに対して有害な影響を及ぼす。したがって、Fletcherは、現実的で合理的な培地の設計は、多次元アプローチとして記載することができると結論付けた。単一の技術に依拠するのではなく、合理的な培地の設計は、いくつかの補完的な方法、すなわちDoE(実験計画法)、及び複数の成分の複雑な相互作用を取得しそして様々な統計ツールを使用する完全実施要因計画を利用する。この概念は以前の培地設計の概念を統合し、最適な実験計画のために進歩したDoEアプローチを適用するが、細胞に特異的な必要条件、すなわち、細胞の栄養供給の展望及び細胞代謝を明らかに欠いている。したがって、改善された細胞培養培地が依然として必要とされる。
【0011】
細胞培養培地:
哺乳動物細胞培養では、細胞培養培地は、約100個までの及びそれ以上の化合物を含み得る。例えば、炭水化物(例えば、異化反応によるエネルギー発生のための又はアナプレロティック反応による構築ブロックとしての)、アミノ酸(例えば、治療用タンパク質の生産の場合、細胞内タンパク質及び産物のための構築ブロック)、脂質及び/又は脂肪酸(例えば、細胞膜の合成用)、DNA及びRNA(例えば、増殖及び細胞の有糸分裂及び減数分裂用)、ビタミン(例えば、酵素反応のための補因子として)、微量元素、様々な塩、増殖因子、担体、及び輸送体など。これらの成分又は化合物の群は、技術的な培養環境において哺乳動物細胞の複雑な栄養必要条件を満たすことが要求される。DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)などの古典的な細胞培養培地が存在し、ここでは全ての成分及び全ての濃度が公表されている。このような細胞培養培地の開発は1950年代後半にまで遡り、学術的文献に網羅的に記載されている。別の例は、1970年代に開発されたハムF12(ハムF12栄養混合培地)、又はこのような古典的な細胞培養液の混合物/改変物、例えば1970年代及び1980年代に開発されたDMEM:F12(ダルベッコ改変イーグル培地/ハムF12栄養混合培地)である。既知の組成及び濃度を有する別の広く使用されている細胞培養培地はRPMIである。RPMIは、ロズウェルパーク記念研究所(Roswell Park Memorial Institute)(したがって頭文字RPMI)のMoore et al.によって1970年代に開発された。様々な変種、例えばRPMI-1640が動物細胞培養に使用されている。これらの中の多くの古典的な培地は数十年前に開発されたが、これらの調合は依然として今日行なわれている多くの細胞培養研究の基礎を形成し、そして各化合物に対する組成が完全に既知であり、濃度が完全に既知である培地についての動物細胞の培養における最新技術を代表する。これらに全ての培地は市販され、供給業者(例えばシグマ-アルドリッチ社)から得ることができる。バイオ医薬品の仕事の増加により、培地の市販供給業者は、ここ数年で哺乳動物細胞培養に使用するための自社の細胞培養培地を開発した。
【0012】
しかしながら、古典的な細胞培養培地とは対照的に、このような市販の細胞培養培地の正確な処方は、販売会社が特許所有権を有している。この理由から、このような市販の培地は、合理的な培地の設計のための基準物質及び開始点として使用することができない。なぜなら正確な処方が不明であるからである(アミノ酸などの主要な化合物についてさえ)。例えば、基礎培地(ActiCHO P)及びフィード培地(ActiCHOフィードA+B)からなる市販の培地ActiCHO(PAAによる)は、供給業者の定義に従って組成が化学的に規定されている(たった1つの化学物質、動物由来物質非含有、増殖因子、ペプチド、及びペプトン)。しかし正確な処方は特許所有権を有している。2つのフィードは、濃縮されたアミノ酸、ビタミン、塩、微量元素、及び炭素源(フィードA)及び濃縮形の選択されたアミノ酸(フィードB)からなる。別の例は、Ex-Cell CD CHO(SAFC Biosciences社)である。この培地は、動物成分を含有せず、SAFCに従って組成が化学的に規定され、無血清であり、そして該処方は特許所有権も有する。CHOを使用して哺乳動物細胞培養に広く使用されている第三の培地の例は、CD CHO(ライフテクノロジーズ社)である。この培地はタンパク質を含有せず、無血清であり、ライフテクノロジーズ社に従って組成が化学的に規定されている。それは、動物、植物、又は合成起源のタンパク質/ペプチド、又は組成が既定されていない溶解物/加水分解物を含有していない。ここでも処方は特許所有権を有している。このCD CHO基礎培地は、エフィシェントフィードA、B及びCと命名されたフィード培地と配合することができる。フィードについても処方は特許所有権を有する。フィードは動物を起源とするものを含有せず、成分は高濃度で含有されている。フィードは、組成が化学的に明らかである。タンパク質も、脂質も、増殖因子も、加水分解物も、及び組成が未知である成分も全く使用されていない。それは炭素源、濃縮されたアミノ酸、ビタミン、及び微量元素を含有している。Cell Boost 1~6と命名された市販されている別のフィードは、サーモフィッシャー社によって得ることができる。ここでも、処方は特許所有権を有する。それはサーモフィッシャー社によって組成が化学的に規定され、タンパク質を含有せず、動物由来成分を含有していない。Cell Boost 1及び2は、アミノ酸、ビタミン、及びグルコースを含有している。Cell Boost 3は、アミノ酸、ビタミン、グルコース、及び微量元素を含有している。Cell Boost 4は、アミノ酸、ビタミン、グルコース、微量元素、及び増殖因子を含有している。そして、Cell Boost 5及び6は、アミノ酸、ビタミン、グルコース、微量元素、増殖因子、脂質及びコレステロールを含有している。
【0013】
アミノ酸
アミノ酸は、細胞内タンパク質のため、及び組換えタンパク質又はタンパク質由来物質の場合の産物の生成のための両方における、タンパク質合成のために必須な役割を果たす。例えば、タンパク質は、1つのアミノ酸分子から細胞内機械によって合成されて、より大きなタンパク質又はタンパク質複合体を形成する。哺乳動物細胞での培養では、必須アミノ酸を細胞培養培地に提供する必要がある。なぜなら、哺乳動物細胞は他の前駆体及び構築ブロックから必須アミノ酸を合成することができないからである。アミノ酸はまた、生化学的に重要である。なぜなら、これらの分子は、他の生物学的分子との相互作用を可能とする2つの官能基(アミノ基及び酸性基)を有するからである。これらの理由から、アミノ酸を含有している細胞培養培地にはまた、様々な(組成が明らかな及び組成が明らかでない)小型ペプチド、加水分解物、タンパク質、及び様々な起源に由来する(動物由来、植物由来、又は組成が化学的に規定された)タンパク質混合物を補充されることが多い。
【0014】
本発明の脈絡において、(基礎)細胞培養培地中及びフィード培地中の両方における具体的なアミノ酸の組成及び新規なアミノ酸比は、最終産物の力価を有意に高めることが判明した。この新規なアミノ酸組成及びアミノ酸比は、最新技術の市販の細胞培養培地(例えばRPMI、DMEM:F12 1:1)とは有意に異なり、より高い産物の力価を提供する。
【0015】
鉄及び鉄担体
鉄は、(i)微量元素として、及び(ii)トランスフェリンの置換物(例えば鉄キレート剤としての鉄)として、哺乳動物細胞培養培地中の必須成分である。トランスフェリンは典型的には血漿に由来する。この化合物は典型的には、部分的に鉄で飽和されているヒトトランスフェリンの凍結乾燥粉末として供給される。トランスフェリンは、相同なN末端及びC末端鉄結合ドメインを有する糖タンパク質であり、いくつかの他の鉄結合タンパク質、例えばラクトフェリン、メラノトランスフェリン、及びオボトランスフェリンに関連している。トランスフェリンは、動物細胞の培養に使用するために市販されている(例えばシグマアルドリッチ社によって、CAS番号11096-37-0)。トランスフェリンの置換物として使用されるいくつかの他の鉄化合物が存在する。これらはII/III形で、様々な塩として、水和/脱水形として存在する。例は、リン酸化鉄(III)、ピロリン酸化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄アンモニウム(III)、鉄-デキストラン、又はエチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム塩である。
【0016】
本発明者らは、クエン酸鉄コリンを同定した(クエン酸鉄(iron/ferric)コリン、CAS番号1336-80-7、5%の結晶水含有に因り分子量Mw=991.5g/mol+/-49.57g/mol、約10.2~12.4%の鉄含有量の鉄複合体、鉄:コリン:クエン酸の分子比は2:3:3、分子式C33H57Fe2N3O24)。しかしながら、鉄:コリン:クエン酸の比が1:1:1、分子量Mw=348.11g/molのような、他の適切なクエン酸鉄コリン複合体も知られている。リン酸化鉄、ピロリン酸化鉄、又はクエン酸鉄などの市販されている細胞培養培地に使用される最新技術の鉄源と比較して、クエン酸鉄コリンの使用は、有意により高い産物の力価に貢献する。この効果はまた、培地中のクエン酸鉄コリンの濃度にも依存する。
【0017】
発明の要約
本発明は、哺乳動物細胞培養プロセス、例えばCHO培養プロセス及びタンパク質産生プロセスの成績、特に産物の力価(例えば、モノクローナル抗体(mAb)の力価)を改善させる、新規なアミノ酸比及び/又は鉄担体としてのクエン酸鉄コリンを有する、基礎細胞培養培地及びフィード培地を提供する。また、哺乳動物細胞を培養し、そして該基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地を使用して関心対象のタンパク質を産生するための方法も提供する。本発明はまた、(i)基礎細胞培養培地及び(ii)フィード培地を含む、培地プラットフォームも提供する。好ましくは、(基礎)細胞培養培地及びフィード培地は両方共に組成が化学的に明らかである。
【0018】
1つの態様では、本発明は、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:L-ロイシン/L-イソロイシンが約1.2~2.2であるL-ロイシン、L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.5~0.9であるL-フェニルアラニン、L-チロシン/L-イソロイシンが約1.5~2.7であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-トレオニン、及びL-バリン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-バリンを含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地に関し、該基礎細胞培養培地は、約25~150mMのアミノ酸総含量を有する。1つの実施態様では、基礎細胞培養培地はさらに、イソロイシンに対する約1.6~2.9(mM/mM)のモル比のL-リジンを含む。基礎細胞培養培地は、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、又はL-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.7であるL-メチオニンをさらに含み得る。好ましくは、基礎細胞培養培地は、上記に定義されているような該モル比で各々、L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを含む。本発明の基礎細胞培養培地は、無血清培地であるか、好ましくは組成が化学的に明らかな培地であるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有の培地である。1つの実施態様では、基礎細胞培養培地はさらに、約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度のクエン酸鉄コリンを含む。特定の実施態様では、基礎細胞培養培地は、約30~約130、好ましくは約35~約120、より好ましくは約40~約100mMのアミノ酸総含量を有する。
【0019】
本発明はまた、約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度のクエン酸鉄コリンを含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地にも関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.3~4.2であるL-ロイシン、L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-フェニルアラニン、L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.3~2.4であるL-トレオニン、及びL-バリン/L-イソロイシンが約1.1~2.0であるL-バリンを含む哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地に関し、該フィード培地は、約100~1000mMのアミノ酸総含量を有する。本発明の1つの実施態様では、該フィード培地は、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:L-チロシン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-チロシン、及び/又はL-リジン/L-イソロイシンが約1.1~2.1であるL-リジンをさらに含む。本発明によるフィード培地は、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.6であるL-トリプトファン、L-プロリン/L-イソロイシンが約0.9~1.8であるL-プロリン、又はL-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.8であるL-メチオニンをさらに含み得る。好ましくは、該フィード培地は、上記に定義されているような該モル比で各々、L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを含む。該フィード培地は、典型的には、濃縮されたフィード培地である。好ましくは、本発明のフィード培地は、無血清培地であるか、より好ましくは組成が化学的に明らかな培地であるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有の培地である。1つの実施態様では、該フィード培地は、約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1.0mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度のクエン酸鉄コリンをさらに含む。1つの実施態様では、該フィード培地は、低塩含量、好ましくは約100mM以下の、より好ましくは約50mM以下の低塩含量によって特徴付けられる。特定の実施態様では、本発明のフィード培地は、約200~約900、好ましくは約300~約800、より好ましくは約400~約700mMのアミノ酸総含量を有する。
【0021】
本発明はまた、約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1.0mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度のクエン酸鉄コリンを含む、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地にも関する。
【0022】
関連した態様では、本発明は、本発明の基礎細胞培養培地及び本明細書に記載のような本発明のフィード培地を含む、哺乳動物細胞を培養するための培地プラットフォームに関する。
【0023】
本発明の基礎細胞培養培地及びフィード培地は、げっ歯類又はヒトの細胞を培養するのに特に適し、ここでのげっ歯類細胞は、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、CHO-DUKX B11細胞、又はCHOグルタミンシンターゼ(GS)欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44又はCHO GS欠損細胞である。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、a)基礎細胞培養培地を準備する工程、及びb)本発明に従ってアミノ酸を加えるか又はアミノ酸比を最終モル比に調整する工程を含む、基礎細胞培養培地を作製する方法に関する。該方法はさらに、鉄源としてのクエン酸鉄コリンを約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度で加えるか又は調整する工程を含み得る。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、フィード培地を準備する工程、及び本発明に従ってアミノ酸を加えるか又はアミノ酸比を最終モル比に調整する工程を含む、フィード培地を作製する方法に関する。該方法はさらに、鉄源としてのクエン酸鉄コリンを約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度で加えるか又は調整する工程を含み得る。
【0026】
本発明はさらに、以下の工程:a)哺乳動物細胞を準備する工程、b)本発明の基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及びc)場合により、本発明のフィード培地を基礎細胞培養培地に加える工程を含む、哺乳動物細胞を培養する方法に関し、該細胞は、該細胞の増殖を可能とする条件下で培養される。
【0027】
本発明はまた、以下の工程:a)関心対象のタンパク質をコードしている関心対象の遺伝子を含む哺乳動物細胞を準備する工程、b)本発明の基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及びc)場合により、本発明のフィード培地を基礎細胞培養培地に加える工程、及びd)場合により、関心対象の該タンパク質を細胞培養液から分離及び/又は単離及び/又は精製する工程を含む、関心対象のタンパク質を生成する方法に関し、該細胞は、関心対象のタンパク質の発現を可能とする条件下で培養される。関心対象のタンパク質は、分泌されたタンパク質であり得、好ましくは関心対象のタンパク質は抗体又はFc-融合タンパク質である。
【0028】
本発明の方法のいずれかに使用される哺乳動物細胞は、げっ歯類又はヒトの細胞であり、好ましくはげっ歯類細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞又はCHO GS欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO GS欠損細胞である。本発明の方法のいずれかに使用されるフィード培地は、基礎細胞培養培地中で培養される細胞に添加されるものであり、ここで(a)フィード培地は、培養開始容量に基づいて約10~50ml/L/日で基礎細胞培養培地に添加され、(b)フィード培地は、0、1、2、又は3日目に開始して添加され、及び/又は(c)フィード培地は、連続的に、又は1日に数回、1日2回、1日1回、2日おきに、又は3日おきにボーラスとして添加される。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の基礎細胞培養培地及び/又は本発明のフィード培地、及び場合により哺乳動物細胞を含む、部品のキットに関する。
【0030】
本発明はさらに、細胞増殖及びタンパク質の産生に適した時間及び条件下、該培地中で関心対象のタンパク質を産生する哺乳動物細胞を培養する工程、関心対象のタンパク質を収集する工程、及び培養培地又は細胞溶解液から該タンパク質を回収する工程を含む、タンパク質を産生するための本発明の基礎細胞培養培地の使用に関する。使用はさらに、該培養期間中に該細胞に本発明のフィード培地をフィードする工程を含み得る。
【0031】
本発明はまた、細胞増殖及びタンパク質の産生に適した時間及び条件下、本発明の基礎細胞培養培地中で関心対象のタンパク質を産生する哺乳動物細胞を培養する工程、該細胞に該フィード培地をフィードする工程、関心対象のタンパク質を収集する工程、及び培養培地から該タンパク質を回収する工程を含む、タンパク質を産生するための本発明のフィード培地の使用に関する。
【0032】
また、哺乳動物細胞培養培地中の鉄担体としてのクエン酸鉄コリンの使用にも言及し、ここでのクエン酸鉄コリンは、哺乳動物細胞培養培地中に約0.2~2.0mMの濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1-1】様々なアミノ酸総濃度のバッチ実験におけるアミノ酸が最適に調整された及び調整されていないRPMIをベースとした基礎培地。(A~D):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、44mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.1及び培地5.0中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.0中での培養(44mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.1中での培養(44mM)。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(E~H):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.1中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.1中での培養(66mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(I):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22又は36mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.3及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、▲>▼(右向き黒三角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.3中での培養(22mM)、+はアミノ酸比が最適化されていない培地4.0中での培養(36mM)。示されているのは(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。(J):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22及び66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、●はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。
【
図1-2】様々なアミノ酸総濃度のバッチ実験におけるアミノ酸が最適に調整された及び調整されていないRPMIをベースとした基礎培地。(A~D):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、44mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.1及び培地5.0中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.0中での培養(44mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.1中での培養(44mM)。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(E~H):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.1中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.1中での培養(66mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(I):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22又は36mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.3及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、▲>▼(右向き黒三角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.3中での培養(22mM)、+はアミノ酸比が最適化されていない培地4.0中での培養(36mM)。示されているのは(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。(J):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22及び66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、●はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。
【
図1-3】様々なアミノ酸総濃度のバッチ実験におけるアミノ酸が最適に調整された及び調整されていないRPMIをベースとした基礎培地。(A~D):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、44mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.1及び培地5.0中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.0中での培養(44mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.1中での培養(44mM)。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(E~H):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.1中で2連で(N=2)培養した。●はアミノ酸比が最適化された培地5.1中での培養(66mM)、▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[g/L]である。(I):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22又は36mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.3及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、▲>▼(右向き黒三角)はアミノ酸比が最適化されていない培地4.3中での培養(22mM)、+はアミノ酸比が最適化されていない培地4.0中での培養(36mM)。示されているのは(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。(J):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、22及び66mMのアミノ酸総濃度の、アミノ酸比が最適化されていない及び最適化されたRPMIをベースにした培地4.2及び培地5.2中で2連で(N=2)培養した。▲□▼(黒四角)はアミノ酸比が最適化された培地5.2中での培養(22mM)、●はアミノ酸比が最適化されていない培地4.2中での培養(66mM)。示されているのは(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。
【
図2-1】バッチ実験において最適化されたアミノ酸比に基づいて-20%又は-40%だけ1つのアミノ酸が変化しているRPMIをベースとした基礎培地。(A~D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸を-20%だけ改変させている)中で培養した。▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-20%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-20%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-20%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-20%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-リジン、-20%)、×培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-20%)、○培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-20%)、◇培地5.3.1中での培養(L-セリン、-20%)、△培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-20%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-20%)、(白抜き左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-20%)。示されているのは、(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(E~G):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-ロイシン、L-バリン、又はL-フェニルアラニンを-20%だけ改変させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)。示されているのは、(E~G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(H~K):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、又はL-バリンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-40%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-40%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-40%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-40%)、+培地5.3.1中での培養(L-リジン、-40%)、□培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-40%)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、◇培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-40%)、△培地5.3.1中での培養(L-セリン、-40%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、(白抜きの左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-40%)、(白抜きの右向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)。示されているのは(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(L-O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、又はL-イソロイシンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシンを-40%減少させている)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)。示されているのは(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率(%)、(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。
【
図2-2】バッチ実験において最適化されたアミノ酸比に基づいて-20%又は-40%だけ1つのアミノ酸が変化しているRPMIをベースとした基礎培地。(A~D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸を-20%だけ改変させている)中で培養した。▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-20%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-20%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-20%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-20%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-リジン、-20%)、×培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-20%)、○培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-20%)、◇培地5.3.1中での培養(L-セリン、-20%)、△培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-20%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-20%)、(白抜き左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-20%)。示されているのは、(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(E~G):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-ロイシン、L-バリン、又はL-フェニルアラニンを-20%だけ改変させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)。示されているのは、(E~G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(H~K):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、又はL-バリンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-40%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-40%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-40%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-40%)、+培地5.3.1中での培養(L-リジン、-40%)、□培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-40%)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、◇培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-40%)、△培地5.3.1中での培養(L-セリン、-40%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、(白抜きの左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-40%)、(白抜きの右向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)。示されているのは(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(L-O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、又はL-イソロイシンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシンを-40%減少させている)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)。示されているのは(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率(%)、(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。
【
図2-3】バッチ実験において最適化されたアミノ酸比に基づいて-20%又は-40%だけ1つのアミノ酸が変化しているRPMIをベースとした基礎培地。(A~D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸を-20%だけ改変させている)中で培養した。▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-20%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-20%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-20%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-20%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-リジン、-20%)、×培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-20%)、○培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-20%)、◇培地5.3.1中での培養(L-セリン、-20%)、△培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-20%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-20%)、(白抜き左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-20%)。示されているのは、(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(E~G):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-ロイシン、L-バリン、又はL-フェニルアラニンを-20%だけ改変させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)。示されているのは、(E~G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(H~K):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、又はL-バリンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-40%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-40%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-40%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-40%)、+培地5.3.1中での培養(L-リジン、-40%)、□培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-40%)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、◇培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-40%)、△培地5.3.1中での培養(L-セリン、-40%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、(白抜きの左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-40%)、(白抜きの右向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)。示されているのは(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(L-O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、又はL-イソロイシンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシンを-40%減少させている)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)。示されているのは(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率(%)、(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。
【
図2-4】バッチ実験において最適化されたアミノ酸比に基づいて-20%又は-40%だけ1つのアミノ酸が変化しているRPMIをベースとした基礎培地。(A~D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸を-20%だけ改変させている)中で培養した。▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-20%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-20%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-20%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-20%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-リジン、-20%)、×培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-20%)、○培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-20%)、◇培地5.3.1中での培養(L-セリン、-20%)、△培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-20%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-20%)、(白抜き左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-20%)。示されているのは、(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞の濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(E~G):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-ロイシン、L-バリン、又はL-フェニルアラニンを-20%だけ改変させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、□培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-20%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-20%)、+培地5.3.1中での培養(L-バリン、-20%)。示されているのは、(E~G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(H~K):CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、又はL-バリンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、●培地5.3.1中での培養(L-アルギニン、-40%)、◆培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン、-40%)、▲△▼(黒三角)培地5.3.1中での培養(L-アスパラギン酸、-40%)、▲▽▼(下向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ヒスチジン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシン、-40%)、+培地5.3.1中での培養(L-リジン、-40%)、□培地5.3.1中での培養(L-メチオニン、-40%)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、◇培地5.3.1中での培養(L-プロリン、-40%)、△培地5.3.1中での培養(L-セリン、-40%)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、(白抜きの左向三角印)培地5.3.1中での培養(L-トリプトファン、-40%)、(白抜きの右向三角印)培地5.3.1中での培養(L-チロシン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)。示されているのは(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。(L-O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMIをベースとした培地5.3(最適化された比の全てのアミノ酸を含む、対照)及び培地5.3.1(たった1つのアミノ酸、例えばL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、又はL-イソロイシンを-40%減少させている)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地5.3中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、○培地5.3.1中での培養(L-フェニルアラニン、-40%)、×培地5.3.1中での培養(L-バリン、-40%)、▲>▼(右向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-ロイシンを-40%減少させている)、▽培地5.3.1中での培養(L-トレオニン、-40%)、▲<▼(左向き黒三角)培地5.3.1中での培養(L-イソロイシン、-40%)。示されているのは(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率(%)、(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩濃度[mg/L]。対照は3連で(N=3)実施され、試験実行は2連で(N=2)実施された。
【
図3】バッチ実験における基礎培地中の最適化されたアミノ酸比に基づき1つのアミノ酸の-40%の変化。(A~C):細胞をバッチ方式で培地6.4.10~6.4.15(たった1つのアミノ酸、例えばL-リジン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、若しくはL-チロシン、又はL-チロシンとL-リジンという2つのアミノ酸を-40%減少させている)又は対照培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。▲□▼(黒四角)培地6.4.0.1中での培養(全てのアミノ酸を含む、対照)、+培地6.4.10中での培養(L-チロシン及びL-リジン、-40%)、▲△▼(黒三角)培地6.4.11中での培養(L-チロシン、-40%)、□培地6.4.12中での培養(L-リジン、-40%)、●培地6.4.13中での培養(L-メチオニン、-40%)、◇培地6.4.14中での培養(L-トリプトファン、-40%)、(×)培地6.4.15中での培養(L-プロリン、-40%)。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]。全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図4-1】標準的な又は減速したフィード速度での流加実験における最適化培地及びフィード培地の効果。(A~C):標準的なフィード速度での流加実験における最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):減速したフィード速度での最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。全ての培養液についてのフィード速度を、培養液の強い応答を誘起させるために減速させた。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比及び減速したフィード速度を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~J):2L規模での最適化培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で完全に制御された2Lの系中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩の濃度[g/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(K~M):最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI基礎培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(N~P):最適化されたアミノ酸(AA)比を有さない基礎培地及びフィード培地又はアミノ酸比の最適化された使用済み培地と比較した、最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)、RPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMI基礎培地とRPMIフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、○RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、□RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中での培養。示されているのは(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(P)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図4-2】標準的な又は減速したフィード速度での流加実験における最適化培地及びフィード培地の効果。(A~C):標準的なフィード速度での流加実験における最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):減速したフィード速度での最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。全ての培養液についてのフィード速度を、培養液の強い応答を誘起させるために減速させた。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比及び減速したフィード速度を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~J):2L規模での最適化培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で完全に制御された2Lの系中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩の濃度[g/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(K~M):最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI基礎培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(N~P):最適化されたアミノ酸(AA)比を有さない基礎培地及びフィード培地又はアミノ酸比の最適化された使用済み培地と比較した、最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)、RPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMI基礎培地とRPMIフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、○RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、□RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中での培養。示されているのは(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(P)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図4-3】標準的な又は減速したフィード速度での流加実験における最適化培地及びフィード培地の効果。(A~C):標準的なフィード速度での流加実験における最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):減速したフィード速度での最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。全ての培養液についてのフィード速度を、培養液の強い応答を誘起させるために減速させた。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比及び減速したフィード速度を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~J):2L規模での最適化培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で完全に制御された2Lの系中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩の濃度[g/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(K~M):最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI基礎培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(N~P):最適化されたアミノ酸(AA)比を有さない基礎培地及びフィード培地又はアミノ酸比の最適化された使用済み培地と比較した、最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)、RPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMI基礎培地とRPMIフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、○RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、□RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中での培養。示されているのは(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(P)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図4-4】標準的な又は減速したフィード速度での流加実験における最適化培地及びフィード培地の効果。(A~C):標準的なフィード速度での流加実験における最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):減速したフィード速度での最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。全ての培養液についてのフィード速度を、培養液の強い応答を誘起させるために減速させた。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比及び減速したフィード速度を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~J):2L規模での最適化培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で完全に制御された2Lの系中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩の濃度[g/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(K~M):最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI基礎培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(N~P):最適化されたアミノ酸(AA)比を有さない基礎培地及びフィード培地又はアミノ酸比の最適化された使用済み培地と比較した、最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)、RPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMI基礎培地とRPMIフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、○RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、□RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中での培養。示されているのは(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(P)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図4-5】標準的な又は減速したフィード速度での流加実験における最適化培地及びフィード培地の効果。(A~C):標準的なフィード速度での流加実験における最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):減速したフィード速度での最適化された基礎培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地とフィード培地の様々な組合せ中で培養した。全ての培養液についてのフィード速度を、培養液の強い応答を誘起させるために減速させた。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比及び減速したフィード速度を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~J):2L規模での最適化培地及びフィード培地の効果。細胞を、培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)、フィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)、及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中で完全に制御された2Lの系中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)及びフィード培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆基礎培地6.3(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]、(J)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの乳酸塩の濃度[g/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(K~M):最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI基礎培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化された基礎培地とフィード培地との様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養。示されているのは(K)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(L)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、(M)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(N~P):最適化されたアミノ酸(AA)比を有さない基礎培地及びフィード培地又はアミノ酸比の最適化された使用済み培地と比較した、最適化されたRPMI培地及びRPMIフィード培地の効果。細胞を、RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)、及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)、RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)、RPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中で培養した。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、RPMI基礎培地とRPMIフィード培地の様々な組合せ中で培養した。▲□▼(黒四角)RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、●RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、◆RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、▲△▼(黒三角)RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない)及びRPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する)中での培養、○RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない)中での培養、□RPMI培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)及びRPMIフィード培地3.5(アミノ酸の補充された使用済み培地)中での培養。示されているのは(N)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(O)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(P)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図5-1】流加実験における5又は7個のアミノ酸の+/-20%又は+/-40%の変化。(A~C):最適化された培地及びフィード中での新規なアミノ酸比に基づく+/-40%の5個のアミノ酸の変化。アミノ酸のL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシンを、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、×基礎培地6.4.3及びフィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、●基礎培地6.4.4及びフィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、+基礎培地6.4.7及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、●基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~H):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、減速したフィード速度でのプラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-20%及び+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照としての標準的なフィード速度及びまた減速したフィード速度)、基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で減速したフィード速度で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での標準的なフィード速度での培養、●基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中で減速したフィード速度で培養、+基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、×基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図5-2】流加実験における5又は7個のアミノ酸の+/-20%又は+/-40%の変化。(A~C):最適化された培地及びフィード中での新規なアミノ酸比に基づく+/-40%の5個のアミノ酸の変化。アミノ酸のL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシンを、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、×基礎培地6.4.3及びフィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、●基礎培地6.4.4及びフィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、+基礎培地6.4.7及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、●基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~H):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、減速したフィード速度でのプラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-20%及び+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照としての標準的なフィード速度及びまた減速したフィード速度)、基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で減速したフィード速度で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での標準的なフィード速度での培養、●基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中で減速したフィード速度で培養、+基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、×基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図5-3】流加実験における5又は7個のアミノ酸の+/-20%又は+/-40%の変化。(A~C):最適化された培地及びフィード中での新規なアミノ酸比に基づく+/-40%の5個のアミノ酸の変化。アミノ酸のL-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシンを、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、×基礎培地6.4.3及びフィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、●基礎培地6.4.4及びフィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(C)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(D~F):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での培養、+基礎培地6.4.7及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、●基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(D)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(E)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(F)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(G~H):最適化された培地及びフィード中の新規アミノ酸比に基づいた7つのアミノ酸の変化。L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジンのアミノ酸を、対照(最適化されたアミノ酸比を有する)と比較して、減速したフィード速度でのプラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-20%及び+/-40%変化させた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照としての標準的なフィード速度及びまた減速したフィード速度)、基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)、フィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中で減速したフィード速度で流加培養した。▲□▼(黒四角)基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中での標準的なフィード速度での培養、●基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する、対照)中で減速したフィード速度で培養、+基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、×基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)及びフィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)中での培養、▲△▼(黒三角)基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)及びフィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)中での培養。示されているのは(G)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(H)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生存率[%]、及び(I)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図6】様々な治療用分子を産生するCHO-DG44由来細胞株の流加バッチを、最適化された基礎培地6.2及びフィード培地6.2(ヒドロキシル-L-プロリンを含まない、基礎培地及びフィード培地中に、最適化されたアミノ酸の比を有する)中で培養した。▲▽▼(下向き黒三角)CHO-DG44細胞中で産生されたFc-融合タンパク質、▲□▼(黒四角)CHO-DG44細胞(CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ)中で産生されたリツキシマブ(IgG1カッパ)抗体、▲>▼(右向き黒三角)CHO-DG44細胞中で産生されたmAb5/IgG1カッパ抗体、▲<▼(左向き黒三角)CHO-DG44細胞中で産生されたmAb6/IgG1カッパ。示されているのは(A)生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO-DG44の生存率[%]、(C)mAb5/IgG1及びmAb6/IgG1についての産物の濃度[mg/L]、及び(D)Fc-融合タンパク質及びリツキシマブの産物の濃度[mg/L]であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。
【
図7】クエン酸鉄コリンをほぼ等モル量の他の鉄担体と比較。(A、B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地中に指定された鉄担体を有する基礎培地6.2a及びクエン酸鉄コリンを有さないフィード培地6.2a中で流加方式で培養した。▲□▼(黒四角)0.2g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養、●1.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養;◆2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養;▲△▼(黒三角)0.5g/Lのピロリン酸鉄を有する基礎培地中での培養;+0.8g/Lのピロリン酸鉄を有する基礎培地中での培養、(塗りつぶされた星印)1.3g/Lのピロリン酸鉄を有する基礎培地中での培養、▲▽▼(下向き黒三角)0.3g/Lのリン酸鉄を有する基礎培地中での培養、(塗りつぶされた五角形)0.5g/Lのリン酸鉄を有する基礎培地中での培養、▲>▼(右向き黒三角)0.7g/Lのリン酸鉄を有する基礎培地中での培養。示されているのは(A)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の生細胞濃度[1×10
5個の細胞/mL]、(B)CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度であり、全ての実験は2連で(N=2)実施された。(C)様々な濃度のクエン酸鉄コリンを有する基礎培地6.2a及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを含有しているフィード培地6.2a中で流加方式で培養されたCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の産物の濃度[mg/L](N=2)、▲□▼(黒四角)クエン酸鉄コリンを有さない基礎培地中での培養、◆0.2g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養;▲△▼(黒三角)0.4g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養;+2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養。(D)ほぼ等モル量のクエン酸鉄コリン又はクエン酸鉄を有する基礎培地6.2a及びフィード培地6.2a中で流加方式で培養されたCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の産物の濃度[mg/L]。▲□▼(黒四角)クエン酸鉄コリンを有さない基礎培地及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを有するフィード培地中での培養、(塗りつぶされた星印)0.2g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを有するフィード培地中での培養;▲▽▼(下向き黒三角)0.1g/Lのクエン酸鉄を有する基礎培地及び0.25g/lのクエン酸鉄を有するフィード培地中での培養。
【
図8】RPMIをベースとした培地中におけるほぼ等モル量のクエン酸鉄コリンとクエン酸鉄の比較。ほぼ等モル量のクエン酸鉄コリン又はクエン酸鉄を有する基礎培地3.1及び0.25g/lのクエン酸鉄を含有しているフィード培地2中で流加方式で培養されたCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞の産物の濃度(N=2)。▲□▼(黒四角)クエン酸鉄コリンを有さない基礎培地中での培養、●0.2g/Lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地中での培養;+0.1g/Lのクエン酸鉄を有する基礎培地中での培養。示されているのは(A)0.2g/lのクエン酸鉄コリン(●)と0.1g/lのクエン酸鉄(+)、(B)0.4g/lのクエン酸鉄コリン(▲△▼(黒三角))と0.2g/lのクエン酸鉄(五角形)、(C)2g/lのクエン酸鉄コリン(▲<▼(左向き黒三角))と1g/lのクエン酸鉄(●)、及び(D)0.2g/l(●)のクエン酸鉄コリンと2g/l(▲<▼(左向き黒三角))のクエン酸鉄コリンを比較した、CHO2(CHO-DG44)リツキシマブの産物の濃度[mg/L]である。
【
図9】2Lのバイオリアクター中の流加方式の培地6.2a又はRPMIをベースとした培地中のほぼ等モル量のクエン酸鉄コリンとクエン酸鉄の比較。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、(A~C)クエン酸鉄コリン又はクエン酸鉄を有する基礎培地6.2a及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを含有しているフィード培地6.2a中、又は(D)クエン酸鉄コリン又はクエン酸鉄を有する基礎培地3.1及び0.25g/lのクエン酸鉄を含有しているフィード培地-2中で流加方式で培養した(N=2)。+0.2g/lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地6.2a及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを有するフィード培地6.2a中での培養、(塗りつぶされた星印)2g/lのクエン酸鉄コリンを有する基礎培地6.2a及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを有するフィード培地6.2a中での培養;(塗りつぶされた五角形)1g/lのクエン酸鉄を有する基礎培地6.2a及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを有するフィード培地6.2a中での培養、▲□▼(黒四角)0.2g/lのクエン酸鉄コリンを有するRPMIをベースとした基礎培地3.1及び0.25g/lのクエン酸鉄を有するフィード培地2中での培養、●2g/lのクエン酸鉄コリンを有するRPMIをベースとした基礎培地3.1及び0.25g/lのクエン酸鉄を有するフィード培地2中での培養;◆1g/Lのクエン酸鉄を有するRPMIをベースとした基礎培地3.1及び0.25g/lのクエン酸鉄を有するフィード培地2中での培養。
【
図10】リツキシマブを産生しているCHO-K1 GS由来細胞株の2つの流加培養液を、どちらもアミノ酸の比が最適化されている、基礎培地6.2GS及びフィード培地6.2GS中で平行して培養した。示されているのは(A)生細胞濃度[1×10
6個の細胞/mL]、(B)リツキシマブを産生しているCHO-K1 GS細胞の生存率[%]、及び(C)14日間の培養プロセス後の最終産物濃度[mg/L]である。
【0034】
詳細な説明
定義
一般的な実施態様の「含んでいる」又は「含んだ」は、より具体的な実施態様の「からなる」を包含する。さらに、単数形及び複数形は制限するものとして使用されない。本発明の経緯に使用される用語は、以下の意味を有する。
【0035】
本明細書において使用する「細胞培養培地」という用語は、好ましくは緩衝化された培地(好ましくはpHは約7.0、pH=7.3~6.6、pH=7.0)中に最小限の必須栄養分及び成分、例えばビタミン、微量元素、塩、バルク塩、アミノ酸、脂質、炭水化物を含む、哺乳動物細胞を培養するための培地である。このような細胞培養培地の非制限的な例としては、RPMI、DMEM:F12、DMEM、ハム/F12などのような市販の培地、並びに様々な入手源の特許所有権を有する培地(例えば培地6.2)が挙げられる。細胞培養培地は、基礎細胞培養培地であり得る。細胞培養培地はまた、フィード培地及び/又は添加剤が加えられている基礎細胞培養培地であってもよい。細胞培養培地はまた、細胞を発酵槽又はバイオリアクター中で培養する場合には、発酵ブロスとも称され得る。
【0036】
本明細書において使用する「基礎培地」又は「基礎細胞培養培地」という用語は、以下に定義されているような哺乳動物細胞を培養するための細胞培養培地である。それは、細胞が細胞培養実行開始時から培養される培地を指し、別の培地への添加剤として使用されないが、様々な成分が該培地に添加されていてもよい。基礎培地は、培養中に、すなわち細胞培養実行中に場合によりさらなる添加剤又はフィード培地が添加されてもよい基剤としての役目を果たす。基礎細胞培養培地は、細胞培養プロセス開始時から提供される。一般的に、基礎細胞培養培地は、炭素源、アミノ酸、ビタミン、バルク塩(例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウム)、様々な微量元素(例えば硫酸マンガン)、pH緩衝液、脂質、及びグルコースなどの栄養分を提供する。主要なバルク塩は、通常、基礎培地中にのみ提供され、そして細胞培養液は妥当な浸透圧ストレスで成長及び増殖することができるように、細胞培養液中で約280~350mOsmo/kgの最終モル浸透圧濃度を超えてはならない。
【0037】
本明細書において使用する「フィード」又は「フィード培地」という用語は、哺乳動物細胞の培養液中のフィードとして使用される栄養分の濃縮液/濃縮された栄養組成物に関する。それは、細胞培養液の希釈を回避するために「濃縮されたフィード培地」として提供され、典型的には、フィード培地は、容器内の培養開始容量(CSV、0日目における開始容量を意味する)に基づいて、10~50ml/L/日、好ましくは15~45ml/L/日、より好ましくは20~40ml/L/日、さらにより好ましくは30ml/L/日で提供される。フィード速度は、フィード期間におよぶ平均的なフィード速度として理解される。フィード培地は典型的には、基礎細胞培養培地の全てではないが大半の成分をより高い濃度で有する。一般的には、フィード培地は、アミノ酸及び炭水化物などの細胞培養中に消費される栄養分を代用するが、塩及び緩衝液はあまり重要ではなく、一般的に基礎培地と共に提供される。フィード培地は典型的には、(基礎)細胞培養培地/発酵ブロスに流加方式で添加される。しかしながら、フィードは、連続的な添加又はボーラスでの添加又は灌流に関連した技術を介して(ケモスタット又はハイブリッド-灌流系)のような様々な方式で添加されてもよい。好ましくは、フィード培地は1日1回添加されるが、1日2回などのより頻繁に、又は二日おきになどのより頻繁ではない頻度で添加されてもよい。栄養分の添加は一般的に培養中(すなわち0日目以後)に実施される。基礎培地とは対照的に、フィードは、主要なバルク塩(例えばNaCl、KCl、NaHCO3、MgSO4、Ca(NO3)2)などの「非常にモル浸透圧濃度が高い化合物」を除いて、基礎培地と類似した全ての成分を提供する非常に濃縮された栄養溶液(例えば6倍超)からなる。典型的には、低減されたバルク塩を有さない又は有する基礎培地の6倍超又はそれ以上が、化合物の良好な可溶性及び十分に低いモル浸透圧濃度(例えば270~1500mOsmo/kg、好ましくは310~800mOsmo/kg;培地6.2フィードのモル浸透圧濃度は、高グルコース、塩、及び最適化されたアミノ酸に因り約1500mOsmo/kgである)を維持することにより、細胞培養液中のモル浸透圧濃度を約270~550mOsmo/kg、好ましくは約280~450mOsmo/kg、より好ましくは約280~350mOsmo/kgに維持する。
【0038】
細胞培養培地、すなわち基礎培地及び/又はフィード培地のどちらも、無血清であるか、組成が化学的に明らかであるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有であり得る。本明細書において使用する「無血清培地」は、動物起源の血清を含有しないインビトロでの細胞培養液のための細胞培養培地を指す。これは好ましい。なぜなら、血清はウイルスなどの該動物に由来する混入物を含有している可能性があり、そしてなぜなら血清は組成が不明確であり、バッチ毎に異なるからである。本発明による基礎培地及びフィード培地は無血清である。
【0039】
本明細書において使用する「組成が化学的に明らかな培地」は、全ての成分が既知である、インビトロでの細胞培養に適した細胞培養培地を指す。より具体的には、動物の血清又は植物、酵母若しくは動物の加水分解物などのあらゆるサプリメントを含まない。それは、全ての成分が分析され、その正確な組成が既知でありかつ再現性をもって調製することができる場合にのみ加水分解物を含んでもよい。本発明に記載の基礎培地及びフィード培地は好ましくは組成が化学的に明らかである。
【0040】
本明細書において使用する「タンパク質非含有培地」は、培養しようとする細胞によって産生されるタンパク質を除いて、タンパク質を全く含まないインビトロでの細胞培養のための細胞培養培地を指し、ここでの該タンパク質は、あらゆる長さのポリペプチドを指すが、単一のアミノ酸、ジペプチド、又はトリペプチドは除外される。具体的には、インシュリン及びインシュリン様増殖因子(IGF)などの増殖因子は、培地中に存在しない。好ましくは、本発明に記載の基礎培地及びフィード培地は、組成が化学的に明らかであり、タンパク質を含有していない。
【0041】
本明細書において使用する「培地(medium)プラットフォーム」又は「培地(media)プラットフォーム」は、細胞培養プロセス開始時から提供される基礎細胞培養培地と、培養中に基礎細胞培養培地に添加されるフィード培地とからなる。場合によりさらなる添加剤、例えばグルコースなどが、細胞培養プロセス中に添加されてもよい。フィード培地は、あらゆる種類の流加プロセス方式(例えば連続的に、フィード速度を変化させながら、又はボーラスでのフィード添加物として)で供給され得る。
【0042】
本明細書において使用する「市販の培地/培地系」という用語は、完全に既知の組成を有する市販の細胞培養培地を指す。これらの培地は、正確な栄養組成が要求されることにより、本発明の培地の基準としての役目を果たす。市販の培地は、例えば、DMEM:F12(1:1)、DMEM、ハムF12、及びRPMIである。本明細書において使用する市販の培地のフィード培地は、バルク塩を含まない基礎培地の12倍の濃縮液として調製された。「市販の培地系」という用語は、市販の基礎細胞培養培地、例えば、DMEM:F12(1:1)、DMEM、ハムF12、及びRPMIと、低減されたバルク塩を有さない又は有するそれぞれ濃縮された(例えば12倍濃縮された)基礎培地であるフィード培地とを含む系に関する。
【0043】
本明細書において使用する「1倍」は、特定の基礎培地中で通常使用される標準的な濃度を意味し、「2倍」は標準濃度の2倍を意味するなどである。フィード培地は、例えば、好ましくは6倍から20倍の溶液であり、すなわち、塩化ナトリウム又は塩化カリウムなどのバルク塩を考慮することなくアミノ酸の最適化に使用される基礎培地の標準濃度の6~20倍である。しかしながら、当業者は、細胞培養必要条件は、例えば指数関数的増殖期とタンパク質産生期との間で異なることを理解しているだろう。したがって、好ましくは基礎培地及びフィード培地を、これらの変化した必要条件に適応させる。したがって、フィード培地中のアミノ酸比は典型的には、基礎培地中のアミノ酸比とは異なる。
【0044】
「細胞培養(cell cultivation)」又は「細胞培養(cell culture)」という用語は、全ての規模での(例えばマイクロタイタープレートから大規模な工業的バイオリアクターまで、すなわちmL以下の規模から10,000Lを超える規模まで)、全ての様々なプロセス方式での(例えばバッチ培養、流加培養、灌流培養、連続的培養)、全てのプロセス制御方式での(例えばpH、温度、酸素含量の制御に関して、制御されていない系、完全に自動化され制御された系)、全種類の発酵系での(例えば1回使用の系、ステンレス鋼の系、ガラス製品の系)細胞培養プロセス及び発酵プロセスを含む。本発明の好ましい実施態様では、細胞培養は哺乳動物細胞培養であり、そしてバッチ培養又は流加培養である。
【0045】
本明細書において使用する「流加バッチ」という用語は、細胞に連続的に又は周期的に栄養分を含有しているフィード培地がフィードされる細胞培養に関する。フィードは、0日目に細胞培養を開始した直後に開始され得るか、又は典型的には培養を開始した1日後、2日又は3日後に開始され得る。フィードは、毎日、2日毎、3日毎などの予め設定された計画に従い得る。あるいは、培養液を、細胞増殖、栄養分、又は毒性の副産物についてモニタリングし得、フィードはそれに応じて調整されてもよい。動物細胞培養をモニタリングする一般的な方法は、以下の実験部に記載されている。一般的に、以下のパラメーターが1日1回の割合で決定されることが多く、これには生細胞の濃度、産物の濃度、及びいくつかの代謝物、例えばグルコース又は乳酸(pHを低下させかつ細胞によるグルコースの変換に由来する、酸性の老廃代謝物)、pH、モル浸透圧濃度(塩含量の指標)、及びアンモニウム(増殖速度に悪影響を及ぼし、生存可能なバイオマスを減少させる増殖阻害物質)が網羅される。バッチ培養(フィードを行なわない培養)と比較して、流加方式では産物のより高い力価を達成することができる。典型的には、流加培養をいくつかの時点で停止させ、培地中の関心対象の細胞及び/又はタンパク質を収集し、そして場合により精製する。
【0046】
「生命力」及び「生存率」という用語は同義語として使用され、当技術分野において公知である方法、例えば、自動化顕微鏡細胞計数に基づいたCedex装置(イノバティスAG社、ビーレフェルト)を用いてのトリパンブルー排除によって決定されるような、細胞培養中の生細胞%を指す。しかしながら、蛍光測定法(例えばヨウ化プロピジウムに基づく)、熱量測定法、又は生細胞のエネルギー代謝を反映するために使用される酵素測定法、例えばLDH乳酸デヒドロゲナーゼ又は特定のテトラゾリウム塩、例えばアラマーブルー、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)又はTTC(テトラゾリウムクロリド)を使用する方法などの多くの他の生存率の決定法が存在する。
【0047】
本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、汎用的な遺伝子コードによってコードされる20種類の天然アミノ酸、典型的にはL型アミノ酸(すなわち、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリン)を指す。アミノ酸(例えばグルタミン及び/又はチロシン)は、好ましくはL-アラニン(L-ala-x)又はL-グリシン(L-gly-x)で伸張されているもの、例えばグリシル-グルタミン及びアラニル-グルタミンを含有している、安定性及び/又は溶解性の向上したジペプチドとして提供され得る。さらに、システインは、L-シスチンとしても提供され得る。本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、その全ての異なる塩、例えば(以下に限定されないが)L-アルギニン一塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-システイン塩酸塩一水和物、L-シスチン二塩酸塩、L-ヒスチジン一塩酸塩二水和物、L-リジン一塩酸塩、及びヒドロキシルL-プロリン、L-チロシン二ナトリウム脱水和物を包含する。アミノ酸の正確な形は、溶解性、モル浸透圧濃度、安定性、純度などの特徴が損なわれない限り、本発明にとって重要ではない。典型的にはそして好ましくは、L-アルギニンはL-アルギニン×HClとして使用され、L-アスパラギンはL-アスパラギン×H2Oとして使用され、L-システインはL-システイン×HCl×H2Oとして使用され、L-シスチンはL-シスチン×2HClとして使用され、L-ヒスチジンはL-ヒスチジン×HCl×H2Oとして使用され、L-チロシンはL-チロシン×2Na×2H2Oとして使用され、各々の好ましいアミノ酸の形は、他とは独立して、又は一緒に、又はその任意の組合せで選択され得る。1つ又は2つの関連アミノ酸を含むジペプチドも包含される。例えば、L-グルタミンは、保存中又は長期間の培養中の安定性の向上のために及びアンモニウム発生を減少させるために、L-アラニル-L-グルタミンなどのジペプチドの形で細胞培養培地に添加されることが多い。これはL-グリシン含有ジペプチド又は他のL-アラニン含有ジペプチドにも有効であり、これはアミノ酸比の計算のために考慮される。
【0048】
本明細書において使用する「培地中の全てのアミノ酸」又は「アミノ酸総含量」という用語は、mMで上記に定義されているような「アミノ酸」の総和を指す。ジペプチドでは、各々のアミノ酸は別々に計数されるので、1mMのアラニル-グルタミンは、1mM L-アラニン及び1mM L-グルタミン(モル比1:1)と計数される。同様にL-シスチンでは、各システインは別々に計数されるので、1mM L-シスチンは2mM L-シスチン(モル比1:2)として計数される。典型的には、基礎細胞培養培地と比較して、濃縮フィード培地中のアミノ酸総含量は、約5~20倍、好ましくは約7~15倍、より好ましくは約10倍以上である。本発明に記載の基礎培地のアミノ酸総含量は、約25~150mM、好ましくは約30~130mM、より好ましくは約35~120mM、さらにより好ましくは約40~100mMである。フィード培地のアミノ酸総含量は、約100~1000mM、好ましくは約200~900mM、より好ましくは約300~800mM、さらにより好ましくは約400~700mMであり得る。汎用的な遺伝子コードによって直接コードされない他のアミノ酸、例えばL-オルニチン、ヒドロキシルL-プロリン、又はその代謝物、例えば例えばタウリンはさらに、基礎細胞培養培地又はフィード培地中に存在してもよいが、これらはアミノ酸総含量には計数されない。
【0049】
本明細書において使用する「アミノ酸比」という用語は、基準アミノ酸のモル濃度に対する各アミノ酸のモル濃度の比を指す。基準アミノ酸に対して全てのアミノ酸についてのモル比が計算される([mM/mM]という単位を用いて)。本発明に従ってアミノ酸の比を計算するために、L-イソロイシンが基準アミノ酸として使用される(理論的にはフェニルアラニン又はメチオニンなどの他のアミノ酸を、基準アミノ酸として使用してもよい)。これはさらに、イソロイシンに対するモル比(mM/mM)と称され得る。典型的には、基準アミノ酸は、統計学的に低い水準の変動を用いて容易に測定することができ、一般的に使用される培地中で同じような濃度範囲で提供される。
【0050】
「使用済み培地のアミノ酸比の調整」という用語は、アミノ酸が、細胞需要及び代謝需要並びに特定の細胞内又は細胞外速度を考慮することはなく、使用済み培地の分析にのみ基づいて調整されることを意味する。したがって、アミノ酸分析は、様々な日に細胞培養上清から採取された試料について実施され、特定の閾値を下回るアミノ酸が、基礎培地及びフィード培地に補充される。
【0051】
本明細書において使用する「クエン酸鉄コリン」という用語は、クエン酸鉄コリン複合体を形成する、CAS番号1336-80-7に該当するクエン酸鉄コリンという化合物に関する。使用される一般的な異名は、例えば、クエン酸フェロコリナート、クエン酸鉄コリン、クエン酸コリン、クエン酸鉄(III)コリン、クエン酸コリン鉄、クエン酸トリコリン、クエン酸コリン鉄、2-ヒドロキシエチル-トリメチル-アンモニウム、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボキシラート、ボキシラト(4-)鉄酸塩(1-)、エタナミニウム、2-ヒドロキシ-n,n,n-トリメチル-ヒドロキシ(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカー(propanetricar)である。この化合物を、基礎培地及びフィード培地の両方に鉄担体として添加してもよい。好ましくは、鉄:コリン:クエン酸のモル比が2:3:3であるクエン酸鉄コリン(クエン酸鉄コリン、CAS番号1336-80-7、5%の結晶水含有率により分子量Mw=991.5g/mol+/-49.57g/mol、約10.2~12.4%の鉄含量である鉄複合体、鉄:コリン:クエン酸のモル比が2:3:3、分子式C33H57Fe2N3O24、これは例えばドクターポールローマンGmbH KG社から得ることができる)が使用される。しかしながら、他の適切なクエン酸鉄コリンも、鉄濃度に基づいて等モル量で使用してもよく、例えば、1:1:1の比の鉄:コリン:クエン酸塩、分子量Mw=348.11g/mol、又は(2):3:3の比の(鉄):コリン:クエン酸塩、分子量Mw=501.61g/mol、C21H47N3O10(鉄を含まない総和式)で使用し得る。リン酸鉄、ピロリン酸鉄、又はクエン酸鉄などの市販の細胞培養培地に使用される最新技術の鉄源と比較して、クエン酸鉄コリンの使用は、等モル量で有意により高い産物の力価に寄与する。
【0052】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」又は「産物」又は「タンパク質産物」又は「アミノ酸残基配列」という用語は同義語として使用される。これらの用語は、あらゆる長さのアミノ酸のポリマーを指す。これらの用語はまた、グリコシル化、糖化、アセチル化、リン酸化、酸化、アミド化、又はタンパク質プロセシングを含むがこれらに限定されない反応を通して翻訳後に修飾されるタンパク質も含む。修飾及び変化、例えば他のタンパク質への融合、アミノ酸配列の置換、欠失、又は挿入を、該分子がその生物学的機能的活性を維持したままで、ポリペプチドの構造内に行なうことができる。例えば、特定のアミノ酸配列の置換は、ポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列内に行なうことができ、類似した特性又は修飾された特性を有するタンパク質を得ることができる。アミノ酸の修飾は、例えば、部位特異的突然変異誘発又はポリメラーゼ連鎖反応媒介突然変異誘発をその基礎にある核酸配列に対して実施することによって準備することができる。したがって「ポリペプチド」、「タンパク質」、「産物」及び「タンパク質産物」という用語はまた、例えば、免疫グロブリン成分(例えばFc成分)と増殖因子(例えばインターロイキン)からなる融合タンパク質、抗体又はあらゆる抗体に由来する分子フォーマット又は抗体断片も含む。
【0053】
「関心対象のタンパク質」又は「関心対象の産物」又は「関心対象のポリペプチド」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、その断片、ペプチド、融合タンパク質を含み、そのすべてが選択された宿主細胞において発現され得る。典型的には、関心対象のタンパク質は、組換えタンパク質、すなわち分子クローニングから生じた組換えDNAによってコードされるタンパク質である。このような関心対象のタンパク質は、抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、その受容体及び誘導体又は断片、並びに、アゴニスト若しくはアンタゴニストとしての役目を果たし得、及び/又は治療用途若しくは診断用途を有し得るか、又は研究試薬として使用され得る任意の他のポリペプチドであり得る。好ましくは、関心対象のタンパク質は、分泌タンパク質又はタンパク質断片、より好ましくは抗体又は抗体断片又はFc融合タンパク質である。「関心対象の産物」はまた、アンチセンスRNA、tRNA、rRNA、リボタンパク質の一部である他のRNA、又は他の調節RNAであり得る。
【0054】
本明細書において使用する「関心対象の遺伝子」、「所望の配列」、「関心対象のポリヌクレオチド」又は「所望の遺伝子」という用語は同じ意味を有し、そして関心対象の産物をコードする任意の長さのポリヌクレオチド配列を指す。該遺伝子はさらに、コード配列の前に(5’非コード配列又は非翻訳配列)及び後に(3’非コード配列又は非翻訳配列)調節配列を含み得る。選択された配列は、完全長の遺伝子又は切断短縮された遺伝子、融合又はタグ化遺伝子であり得、そしてcDNA、ゲノムDNA、又はDNA断片であり得る。ポリペプチド又はRNAをコードしているゲノムDNAは、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)からスプライシングされ、それ故、同ポリペプチド又はRNAをコードしているcDNAには存在していない、非コード領域(すなわちイントロン)を含むことが一般的に理解されている。それは天然配列、すなわち天然に存在する形態(群)であっても、又は、突然変異していても、又は異なる起源に由来する配列を含んでいても、又は所望のように別様に修飾されていてもよい。これらの修飾は、選択された宿主細胞内でのコドン使用頻度を最適化するためのコドン最適化、又はタグ化を含む。さらにそれらは、ほんのいくつかのしかし制限的ではない例を挙げると、シス作用部位、例えば(隠れた)スプライスドナー、アクセプター部位、及び分岐点、ポリアデニル化シグナル、TATAボックス、カイ部位、リボソーム進入部位、反復配列、二次構造(例えばステムループ)、転写因子又は他の調節因子のための結合部位、制限酵素部位などの除去又は付加を含み得る。選択された配列は、分泌ポリペプチド、細胞質内ポリペプチド、核内ポリペプチド、膜結合ポリペプチド、又は細胞表面ポリペプチドをコードし得る。
【0055】
細胞培養培地及びアミノ酸比
汎用的な遺伝子コードによってコードされる20種類の標準的なアミノ酸(L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリン)は、タンパク質の合成にとって必須な役割を果たす。なぜならそれらは細胞内タンパク質及び関心対象のタンパク質(例えばモノクローナル抗体)の両方のための構築ブロックを提供するからである。したがって、アミノ酸は、細胞の代謝において多様に相互作用する。それらは細胞培養培地から特定の量だけ採取され、それらは細胞内代謝で相互変換され、宿主細胞タンパク質へ又はタンパク質産物へのいずれかに指向され、副産物として細胞によって分泌され、そして様々な点で細胞の代謝異化及び同化に、例えばアミノ酸の代謝とクエン酸サイクルの間に接続される。基礎培地及びフィード培地の両方において、アミノ酸の最適な組成、濃度、及び比を、細胞培養の生活環(接種、lag期、指数関数増殖期、移行期、静止期、細胞生存率の有意な低下によって特徴付けられる死滅期)を通じて最適な栄養の供給のために提供される必要がある。しかしながら、アミノ酸比は、各々の個々のアミノ酸の実際の正確な濃度よりも重要であるようである。
【0056】
したがって、本発明の1つの態様では、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:L-ロイシン/L-イソロイシンが約1.2~2.2であるのL-ロイシン、L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.5~0.9であるL-フェニルアラニン、L-チロシン/L-イソロイシンが約1.5~2.7であるL-チロシン、L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-トレオニン、及びL-バリン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-バリンを含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地が提供され、該基礎細胞培養培地は、約25~150mMのアミノ酸のアミノ酸総含量を有する。1つの実施態様では、イソロイシンに対するモル比(mM/mM)は:約1.2~2.1、好ましくは約1.3~1.8、より好ましくは約l.5~1.8、さらにより好ましくは約1.7のL-ロイシン/L-イソロイシン;約0.5~0.9、好ましくは0.6~0.9、より好ましくは約0.6~0.8、さらにより好ましくは約0.7のL-フェニルアラニン/L-イソロイシン;約l.6~2.6、好ましくは約l.7~2.5、より好ましくは約l.9~2.3.さらにより好ましくは約2.1のL-チロシン/L-イソロイシン;約1.1~1.8、好ましくは約1.2~1.8、より好ましくは約1.3~1.6、さらにより好ましくは約1.5のL-トレオニン/L-イソロイシン;及び約1.1~1.9、好ましくは約1.2~1.8、より好ましくは約l.3~1.6、さらにより好ましくは約1.5のL-バリン/L-イソロイシンである。特定の実施態様では、本発明の培地はさらに、イソロイシンに対して約1.6~2.9、好ましくは約1.7~2.8、より好ましくは約1.8~2.7、より好ましくは約2.0~2.5、さらにより好ましくは約2.2のモル比のL-リジンを含む。特定の実施態様では、本発明の基礎培地はさらに、イソロイシンに対して約0.3~0.5、好ましくは約0.3~0.5、より好ましくは約0.3~0.4、より好ましくは約0.3~0.4、さらにより好ましくは約0.4のモル比のL-トリプトファン;又はイソロイシンに対して約1.6~3.0、好ましくは約1.7~2.8、より好ましくは約1.8~2.7、より好ましくは約2.0~2.5、さらにより好ましくは約2.3のモル比のL-プロリン、又はイソロイシンに対して約0.4~0.7、好ましくは約0.4~0.6、より好ましくは約0.4~0.6、より好ましくは約0.5~0.6、さらにより好ましくは約0.5のモル比のL-メチオニンを含む。特定の実施態様では、L-イソロイシンに対するL-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンのモル比は、上記に定義されている通りである。基礎細胞培養培地中のアミノ酸総含量は、約25~150mM、好ましくは30~130mM、より好ましくは35~120mM、さらにより好ましくは約40~100mMであり得る。
【0057】
好ましくは、L-イソロイシンに対するL-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-バリン、及びL-チロシン並びに場合によりさらにL-リジン、L-トリプトファン、L-プロリン、及び/又はL-メチオニンのアミノ酸比は、表2aの基礎培地6.2について提供された比の30%、25%、20%、又は10%以内である。
【0058】
本発明の基礎細胞培養培地(基礎培地6.2)のより具体的で例示的なアミノ酸比は、以下の表Aに、選択された市販の基礎細胞培養培地中のアミノ酸比と直接比較して提供されている。
【0059】
【0060】
本発明の別の態様では、イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.3~4.2であるL-ロイシン、L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-フェニルアラニン、L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.3~2.4であるL-トレオニン、及びL-バリン/L-イソロイシンが約1.1~2.0であるL-バリンを含む哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地が提供され、該フィード培地は、約100~1000mMのアミノ酸総含量を有する。1つの実施態様では、イソロイシンに対するモル比(mM/mM)は:約2.4~4.0、好ましくは約2.6~3.9、より好ましくは約2.9~3.5、さらにより好ましくは約3.2のL-ロイシン/L-イソロイシン;約0.6~1.1、好ましくは約0.7~1.0、より好ましくは約0.8~0.9、さらにより好ましくは約0.9のL-フェニルアラニン/L-イソロイシン;約1.4~2.3、より好ましくは約1.5~2.2、より好ましくは約1.7~2.0、さらにより好ましくは約1.8のL-トレオニン/L-イソロイシン;及び、約1.2~2.0、好ましくは約1.3~1.9、より好ましくは1.4~1.7、より好ましくは約1.6のL-バリン/L-イソロイシンである。
【0061】
1つの実施態様では、フィード培地はさらに、イソロイシンに対して約0.6~1.1のモル比のL-チロシン及び/又はイソロイシンに対して約1.1~2.1のモル比のL-リジンを含む。好ましくは、チロシンは、フィード培地中に約0.6~1.0、好ましくは約0.7~1.0、より好ましくは約0.7~0.9、さらにより好ましくは約0.8の比で存在する。好ましくは、リジンは、フィード培地中に約1.2~2.0、好ましくは約1.3~1.9、より好ましくは約1.4~1.8、さらにより好ましくは約1.6の比で存在する。好ましくは、L-チロシン及びL-リジンのモル比は上記に定義されている通りである。特定の実施態様では、本発明のフィード培地はさらに、イソロイシンに対して約0.3~0.6、好ましくは約0.3~0.6、より好ましくは約0.4~0.5、より好ましくは約0.4~0.5、さらにより好ましくは約0.5のモル比のL-トリプトファン;又はイソロイシンに対して約0.9~1.8、好ましくは約1.0~1.7、より好ましくは約1.1~1.6、より好ましくは約1.2~1.5、さらにより好ましくは約1.4のモル比のL-プロリン、又はイソロイシンに対して約0.4~0.8、好ましくは約0.4~0.7、より好ましくは約0.5~0.7、より好ましくは約0.5~0.6、さらにより好ましくは約0.6のモル比のL-メチオニンを含む。特定の実施態様では、L-イソロイシンに対するL-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンのモル比は、上記に定義されている通りである。基礎細胞培養培地中のアミノ酸総含量は、約100~1000mM、好ましくは約200~約900、より好ましくは約300~約800、さらにより好ましくは約400~約700mMであり得る。
【0062】
好ましくは、L-イソロイシンに対するL-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、及びL-バリン、並びに場合によりさらにL-チロシン、L-リジン、L-トリプトファン、L-プロリン、及び/又はL-メチオニンのアミノ酸比は、表6のフィード培地6.2について提供された比の30%、25%、20%、又は10%以内である。
【0063】
本発明のフィード培地(フィード培地6.2)のより具体的で例示的なアミノ酸比は、以下の表Bに、選択された市販のフィード培地中のアミノ酸比と直接比較して提供されている。
【0064】
【0065】
フィード培地は、濃縮されたフィード培地として、基礎細胞培養培地又は培養培地に添加される。例えば、フィード培地は、培養開始容量(CSV)に基づいて、約10~50ml/L/日で、好ましくは約15~45ml/L/日で、より好ましくは約20~40ml/L/日で、さらにより好ましくは約30ml/L/日で添加され得る。細胞培養液(mL/L/日)へのフィード培地の添加速度(容量/日)(1日あたりの容器中の培養開始容量1Lあたりに添加された容量ml)はフィード期間におよぶ平均速度として理解され、添加される容量はフィード期間中の個々の添加毎に変更されてもよい。また、フィードは、培養及び/又は収集の終了の約1日前から3日前に停止してもよい。細胞培養液中の他の栄養分の希釈を回避するために少量加え、そして培養容量をできるだけ一定に維持することが好ましい。フィード培地は、連続的に、1日に数回、1日1回、又は二日おきに添加され得る。好ましくは、該フィード培地は、0日目、1日目、又は2日目に開始して、毎日又は二日おきに添加される。
【0066】
本発明の基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地は無血清であるか、好ましくは組成が化学的に明らかであるか、又は組成が化学的に明らかでありかつタンパク質非含有である。さらに本発明の基礎細胞培養培地及びフィード培地は、哺乳動物細胞を培養するのに適し、すなわち、それらはそれぞれ基礎哺乳動物細胞培養培地及び哺乳動物フィード培地である。本発明の基礎細胞培養培地及びフィード培地は、げっ歯類又はヒトの細胞などの全ての種類の哺乳動物細胞を培養するのに適し、ここでげっ歯類細胞が好ましい。より好ましくは、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞又はCHO GS欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO GS欠損細胞である。
【0067】
本発明のアミノ酸比を含む基礎細胞培養培地はさらに、本明細書において以下に基礎細胞培養培地について記載されているような濃度のクエン酸鉄コリンを含んでいてもよい。同様に、本発明のアミノ酸比を含むフィード培地はさらに、本明細書において以下にフィード培地について記載されているような濃度のクエン酸鉄コリンを含んでいてもよい。
【0068】
培養培地及び鉄担体
哺乳動物細胞培養において、鉄は微量元素として必要とされる。インビボでは鉄は主に、血清中でフェリチン及びトランスフェリンに結合している。細胞培養培地中の典型的な鉄源はトランスフェリンである。進歩した無血清又はさらにはタンパク質非含有の哺乳動物細胞培養培地では、鉄に関連したいくつかの状況、例えば適切な鉄担体の同定、鉄の低いバイオアベイラビリティ、適切な生理学的濃度範囲の同定(潜在的な鉄化合物の毒性に関するインビトロでの有害なフリーラジカルの存在に起因する、例えば細胞生存率に対する最小限の影響を有する/全く影響を及ぼさない)、複雑な結合行動(鉄は、培地調合物内の複数の物質に結合することができ、それにより、細胞培養にとって容易に生物学的に利用不可能になる可能性がある)、酸化状態、及び最適な細胞培養の成績(例えば力価)を解決する必要がある。
【0069】
本発明では、細胞培養に使用される確立された鉄担体と比較して改善された特徴を有する、クエン酸鉄コリンという化合物が、新規な鉄担体として、哺乳動物細胞培養液中に提供される。
【0070】
したがって、別の態様では、本発明は、約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度のクエン酸鉄コリンを含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地を提供する。
【0071】
さらに別の態様では、本発明は、約0.4~5.0mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度のクエン酸鉄コリンを含むフィード培地を提供する。
【0072】
基礎培地及びフィード培地中のクエン酸鉄コリンの濃度は、2:3:3の鉄:コリン:クエン酸塩のモル比を有するクエン酸鉄コリンに基づく(クエン酸鉄コリン、CAS番号1336-80-7、5%の結晶水含有に因り分子量Mw=991.5g/mol+/-49.57g/mol、約10.2~12.4%の鉄含有量の鉄複合体、鉄:コリン:クエン酸の分子比は2:3:3、分子式C33H57Fe2N3O24)。しかしながら、他のクエン酸鉄コリン構造も本発明によって包含され、鉄濃度に基づいた等モル量で、例えば約1:1:1の比の鉄:コリン:クエン酸塩、分子量Mw=348.11g/molで使用され得る。これは、例えば、鉄:コリン:クエン酸塩のモル比が2:3:3である1mMのクエン酸鉄コリンは、鉄:コリン:クエン酸塩のモル比が1:1:1である2mMのクエン酸鉄コリンと等しいことを意味する。
【0073】
鉄担体としてのクエン酸鉄コリンの使用により、産物の力価は上昇する。さらに、クエン酸鉄などの鉄担体として確立されている他の鉄源と比較して、新規な鉄担体であるクエン酸鉄コリンは、典型的には、クエン酸鉄と比較してより高い純度によって化学的に特徴付けられる。クエン酸鉄などの確立された鉄担体のロット間のばらつきの可能性が高くなればなるほど、バイオ医薬品の製造において負の影響を及ぼす可能性がある(例えば、製造の再現性においてマイナスの影響を受ける)。クエン酸鉄コリンは、基礎培地及び/又はフィード培地の両方に使用することができ、好ましくはクエン酸鉄コリンは基礎培地及びフィード培地の両方に添加される。リン酸鉄(III)又はピロリン酸鉄(III)などの細胞培養培地中に使用される他の鉄源と比較して、クエン酸鉄コリンの使用により、改善された培養成績、例えば有意により高い産物の力価が得られる。本発明に記載のクエン酸鉄コリンを含む基礎細胞培養培地はさらに、上記のように、本発明に記載の基礎培地の新規なアミノ酸比を含んでいてもよい。同様に、本発明に記載のクエン酸鉄コリンを含むフィード培地はさらに、上記のような本発明に記載のフィード培地の新規なアミノ酸比を含んでいてもよい。
【0074】
本発明の基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地は、無血清であるか、好ましくは組成が化学的に明らかであるか、又は組成が化学的に明らかでかつタンパク質非含有である。さらに、本発明の基礎細胞培養培地及びフィード培地は、哺乳動物細胞を培養するのに適し、すなわち、それらはそれぞれ基礎哺乳動物細胞培養培地及び哺乳動物フィード培地である。本発明の基礎細胞培養培地及びフィード培地は、げっ歯類又はヒトの細胞などの全ての種類の哺乳動物細胞を培養するのに適し、ここでげっ歯類細胞が好ましい。より好ましくは、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞又はCHO GS欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO GS欠損細胞である。
【0075】
培養培地及び他の成分
哺乳動物細胞を培養するための細胞培養培地はさらに、必須栄養分及び成分、例えばビタミン、微量元素、塩、バルク塩、脂質又は脂質前駆体、及び炭水化物を、好ましくは緩衝化培地中に含み得る。また、基礎細胞培養培地又はフィード培地に、増殖因子、例えば組換えインシュリン様増殖因子(IGF)又は組換えインシュリンを添加してもよい。
【0076】
適切なビタミンの非制限的な例は、ビオチン(B7)、パントテン酸カルシウム、シアノコバラミン(B12)、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン(B2)、及び/又はチアミン(B1)である。微量元素の非制限的な例は、モリブデン酸アンモニウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、亜セレン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、及び硫酸亜鉛、及び/又は塩化亜鉛である。脂質前駆体の非制限的な例は、塩化コリン、エタノールアミン、グリセロール、イノシトール、リノール酸、脂肪酸、リン脂質、又はコレステロール関連化合物である。
【0077】
さらに、塩は、以下に限定されることはないが、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、及び/又は塩化ナトリウムであり得る。塩の1つの機能は、培地中のモル浸透圧濃度を調整することである。好ましくは、基礎細胞培養培地のモル浸透圧濃度は、典型的には280~350mOsmo/kgの至適範囲を超えない。典型的には、濃縮されたフィード培地のモル浸透圧濃度は、2000mOsmo/kg未満、好ましくは1500mOsmo/kg未満、より好ましくは1000mOsmo/kg未満である。フィード培地のモル浸透圧濃度はより高くてもよいが、細胞培養液中のモル浸透圧濃度は添加時に270~550mOsmo/kg、好ましくは280~450mOsmo/kgの、より好ましくは280~350mOsmo/kgの至適範囲を超えて上昇すべきではない。
【0078】
好ましくは、その実施態様のいずれかにおける本発明のフィード培地は、低減された又は低い塩含量を有する。低減された又は低い塩含量は、例えば、約100mM以下、好ましくは約50mM以下の塩総濃度を意味する(例えば、塩化ナトリウムを含まないフィード培地、及び低減された濃度の塩化カリウム)。通常の増殖培地として使用するためにフィード培地を本発明の基礎細胞培養培地と配合する場合には、本発明のフィード培地中の低減された低い塩含量が特に好ましい。
【0079】
モル浸透圧濃度に対して最も重要な寄与因子は、ナトリウムイオン、塩化物イオン、及び重炭酸塩、並びに、グルコース及び他の炭素源、例えばアミノ酸である。培地の開発業者にとって、以下の必要条件(好ましくは基礎培地組成のx倍の濃縮液(サプライチェーン管理及び規制の面でプラスの影響))を満たす製造用の高度に濃縮された栄養混合物及び粉末製剤を作り出し、必須栄養分及び細胞自体によって適切な量で(好ましくは合理的に平衡のとれた組成として)合成されることができない栄養分を提供し、フィード濃縮液についての可溶性の状況を克服し、モル浸透圧濃度の理由からバルク塩を除去し、毒性範囲を回避し、ガレヌスの理由のために炭素担体を必要とする粉末製剤を設計することが課題である。さらに、一般的な流加プロセスでは、フィード培地は培養期間中の培養容量を最小限にするために濃縮する必要がある。バイオリアクターのサイズは、培養開始容量の約30%(25~35%)のフィード総用量しか可能ではないフィードに関する制約を実際に引き起こし得る。
【0080】
炭水化物は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、又はグルコサミンなどであり得るがこれらに限定されない。これらの炭水化物は、基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地に直接添加されても、又は、細胞培養液に別々に添加されてもよい。他のエネルギー源としては、ピルビン酸ナトリウムが挙げられるがこれに限定されない。
【0081】
哺乳動物細胞は、中性pHで、例えば約pH6.5から約pH7.5、好ましくは約pH6.6から約pH7.3、より好ましくはpH約7で培養すべきである。したがって、緩衝剤を、基礎細胞培養培地に添加すべきである。フィード培地については、フィード培地の添加により細胞培養液のpHがこの範囲外とならない限り、pHは該範囲から僅かに外れていてもよい。なぜなら、フィード培地は濃縮液として添加されるからである。フィード培地の好ましいpH範囲は、約6から約8である。適切な緩衝剤としては、Hepes、リン酸緩衝液(例えば、リン酸カリウム一塩基性及びリン酸カリウム二塩基性及び/又はリン酸ナトリウム二塩基性無水和物及びリン酸ナトリウム一塩基性)、フェノールレッド、重炭酸ナトリウム、及び/又は炭酸水素ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
一般的に、フィード培地は、アミノ酸及び炭水化物などの細胞培養中に消費される栄養分を含むが、塩及び緩衝液はあまり重要ではない。それ故、いくつかの塩は、フィード培地から完全に排除されている場合がある。
【0083】
細胞培養の成績
本発明の基礎細胞培養培地及び/若しくはフィード培地、又は本発明の組成が化学的に明らかな基礎培地及び組成が化学的に明らかなフィード培地を含む細胞培養培地プラットフォームにより、細胞培養の成績は改善される。本明細書において使用する「改善された細胞培養の成績」という用語は、例えば、有意に改善された産物の力価、改善された細胞増殖(例えば生細胞数、細胞生存率)、及び細胞培養プロセスの好ましい表現型行動、例えば所望ではない毒性の副産物のオーバーフロー代謝の低減(例えば低減された乳酸塩の形成)を含む。それはまた、細胞培養プロセスにおけるモル浸透圧濃度レベルの低減に寄与する。
【0084】
本発明の基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地は、細胞培養の時間経過中における哺乳動物細胞培養液の細胞特異的な必要条件及び代謝需要を満たす。換言すれば、それは(iii)培養実行の生活環(これは約10~20日間である)を通して、(ii)細胞培養系において、(i)哺乳動物細胞の細胞特異的需要を満たす。培養液中の哺乳動物細胞は、細胞培養プロセスの異なる期間において異なる栄養要求を有する。しかし、理想的には、たった1つの至適基礎培地及びたった1つの(又は極めて少ない)至適フィード培地(medium)/培地(media)が、頑強で安全で効率的なバイオプロセスの設計を可能とするように設計される必要がある。本明細書において提供された基礎培地及び/又はフィード培地はこの需要を満たす。
【0085】
本発明の基礎培養培地及び/又はフィード培地は、改善された細胞培養成績を有する。改善された細胞培養成績についての非制限的な例は、産物の力価の上昇、改善された生細胞の濃度、及び/又は細胞生存率である。また、細胞増殖も改善され得、これはスケールアップした手順での一連の接種にとって必要とされる。例えば、培養の規模を、細胞バンクの解凍(mLの規模)から生産規模(10,000Lを超える規模)まで段階的に増加させる。各々のN-x段階における増殖が良くなればなるほど(N段階は最終生産規模を意味し、N-xは通常バッチ方式での最終生産段階前の細胞増殖段階を意味する)、次段階への各々の移行はより迅速にかつより良好に行なわれ得る。具体的には、より良好な細胞増殖及びより高い生細胞濃度により、N-x培養を短縮した実行時間で(したがってより迅速に)実施し得ることを可能とする。また、より良好な細胞増殖及びより高い生細胞濃度によって移行が改善され、その結果、全体的な成績が改善される。例えば、あるN-x段階をある接種細胞密度で接種すべきであり、かつ生細胞濃度が高い場合、比較的少容量の細胞培養液をある段階から次の段階へと移す必要がある(CSVあたりの接種容量の移行は継代比率として定義され、通常1:5から1:20が一般的である)。このことは、同時に、低減させた容量の「使用された」細胞培養培地のみがある段階から次の段階へと移行され、最大容量の「新たな」培地を次の段階に加えることができることを意味する(一定の全培養容量)。これによりまた、最終N段階における全体的な細胞培養の成績は改善される(例えば、上昇した産物の力価)。本発明において提供された新規な基礎細胞培養培地及びフィード培地を用いて、これらの全ての段階が改善される。新規な鉄担体であるクエン酸鉄コリン及び/又は新規なアミノ酸比のプラスの効果は、最終生産段階における基礎培地及びフィード培地に限定されない。また、培地プラットフォーム、特にアミノ酸比についてのプラスの効果は、N-x段階にも適用されることが示される。これらのプラスの効果はまた、N-x段階における培地の改変の場合にも維持される。例えば、CHO細胞株、好ましくはCHO-DG44細胞株などの組換え細胞株を使用して哺乳動物細胞培養液中の選択圧を維持するために、典型的にはMTX(メトトレキサート)が一連の接種の初期段階に提供される。また、このような例では、本発明の基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地又は培地プラットフォームの適用により、生細胞濃度は有意に改善される。
【0086】
細胞培養/フィード培地の添加
濃縮されたフィード培地が全培養期間中に培養液に全く添加されない一般的なバッチ発酵とは対照的に、標準的な流加適用には「フィード培地」と命名された栄養濃縮液の添加が必要とされる。バッチ適用とは対照的に、流加プロセスにおいては、細胞培養の成績、例えば最大生細胞数、最終産物の力価、代謝老廃物の蓄積が、栄養分、ビタミン、塩、及び他の成分の補充に因り、有意に改善されることは周知である。典型的には、培養時間中に培養液に添加されたフィード溶液の最大量は、技術的な状況に依存するが、代謝により導かれる状況にも依存し:バイオリアクターの最大容量は、添加しようとするフィード総容量を制約する一方、培養中にいつでも現実の細胞栄養需要にかなうように非技術的なフィード用量が適用される。さらに、細胞株及びプロセス方式に依存して、フィード添加物は連続的に、例えば2~80Lの小規模で(展開、あまり大変な労力ではない)、例えば5~60mlフィード/L/日の一定のフィード速度で、又は混入のリスクを最小限にするために非連続的な(大規模製造、より大変な労力)アプローチで、例えば2000~10,000Lの大規模で添加することができる。例えば11日間の流加培養中の典型的なフィード添加間隔は、1日数回、1日1回、又は2~4日間に1回の間で変化し得、実際の栄養レベル、増殖期、培養条件、例えばpH、又は培養液の栄養需要に依存することが多い。
【0087】
乳酸塩/二酸化炭素/グルコース
大半の細胞培養液における主要な炭素についての理想的ではない栄養燃焼は、オーバーフロー代謝に因り決定され得る。このことは、主要な炭素源のグルコースが非効率的に利用され、そしてこれによって、例えば乳酸などの有機酸の増加の原因となることを意味する。この上昇したレベルの乳酸は6.65未満へとpHが下降する原因となり、そしてこれは培養培地の緩衝能に負の影響を及ぼし、したがって培養液中の生存率に対しても負の影響を及ぼすだろう。このような理由のために、培養雰囲気中のCO2濃度を、培養培地中の酸性レベルを最小限にするために、指数対数増殖期の開始時において低下させる。
【0088】
細胞株及び細胞培養
本発明の基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地又は培地プラットフォームは、全ての哺乳動物細胞株に適用することができる。しかしながら、本発明の培地はさらに、他の真核細胞、例えば酵母細胞、植物細胞、又は昆虫細胞にも適し得る。本発明による哺乳動物細胞は、卵母細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、又はあらゆる種類の分化細胞であり得る。好ましくは、哺乳動物細胞は、ヒト、サル、マウス、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ブタの細胞、又はげっ歯類の細胞株、例えばラット、ウサギ、又はハムスターである。哺乳動物細胞は、単離された初代細胞又は細胞株であってもよい。組換えバイオ医薬品の生産のために好ましい細胞株又は「宿主細胞」は、ヒト、サル、又はげっ歯類の細胞株(マウス、ラット、又はハムスター)である。好ましいヒト細胞はPER.C6又はHEK293細胞である。
【0089】
より好ましいのは、げっ歯類細胞、例えばハムスター細胞、好ましくはBHK21、BHK TK-、チャイニースハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO-K1、CHO-DXB11(CHO-DUKX又はDuxB11とも称される)、CHO-DUKX B1、CHO-S、CHO-DG44及びCHOグルタミンシンターゼ(GS)欠損細胞又はこのような細胞株のいずれかの誘導体/子孫である。特に好ましいのは、CHO-DG44、CHO-DUKX、CHO-K1、CHO-S、CHO-DG44GS欠損細胞株及びBHK21であり、さらにより好ましいのはCHO-DG44細胞、CHO GS欠損細胞(例えばCHO-K1 GS欠損細胞)及びCHO-DUKX細胞である。さらに、マウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0及びSp2/0細胞又はこのような細胞株のいずれかの誘導体/子孫もまた、バイオ医薬品用タンパク質のための生産細胞株として知られている。
【0090】
全ての細胞及び細胞株を、例えばプラスチック製のマイクロタイタープレート(nLからmLの規模)から工業的規模のステンレス鋼のバイオリアクター(LからkLの規模)に至るすべての種類の細胞培養において使用し得、それらはまた、あらゆる種類の使い捨てシステム、及び例えば進化したオンラインモニタリング及び進化した制御戦略を含む非制御システムから完全制御システムに至る全ての種類のプロセス制御戦略も含む。哺乳動物細胞に適した培養条件は当技術分野において公知である。哺乳動物細胞は、例えば、懸濁液中で培養しても、又は固相表面に付着させてもよい。
【0091】
本発明の培地とともに使用することのできる哺乳動物細胞の非制限的な例は、表Cに要約されている。
【0092】
【0093】
前記の産生細胞を、細胞の増殖を可能とする条件下で優先的に培養する。さらに、該産生細胞を、関心対象の所望の遺伝子(群)及び/又はタンパク質の発現のために好ましい条件下で優先的には培養する。次いで、関心対象のタンパク質を、細胞及び/又は細胞培養上清から単離する。好ましくは、関心対象のタンパク質を培養培地から分泌ポリペプチドとして回収するか、又は分泌シグナルを伴わずに発現される場合には宿主細胞溶解液から回収することができる。
【0094】
典型的には、実質的に相同な関心対象のタンパク質の調製物が得られるように、他の組換えタンパク質、宿主細胞タンパク質、及び混入物から関心対象のタンパク質を精製することが必要である。第一工程として、細胞及び/又は粒子状細胞片を、培養培地又は溶解液から除去し得る。典型的には、次いで、関心対象の産物を、混入物の可溶性タンパク質、ポリペプチド及び核酸から、例えばイムノアフィニティカラム又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈降、逆相HPLC、セファデックスクロマトグラフィー、シリカクロマトグラフィー、又は陽イオン交換樹脂、例えばDEAEによって精製する。
【0095】
培養培地の使用
本発明の基礎細胞培養培地又はフィード培地を、増殖培地として、接種培地として、トランスフェクション、増幅、又はその両方を含む、細胞増殖用又は細胞株の発生用の培地として使用することができる。さらに、基礎細胞培養培地又はフィード培地は、関心対象の該タンパク質を発現している哺乳動物細胞から関心対象のタンパク質を産生するために、好ましくは組み合わせて使用され得る。
【0096】
具体的には、本発明の基礎培地及びフィード培地は、以下の工程:a)哺乳動物細胞を準備する工程、b)本発明の基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及びc)場合により、基礎細胞培養培地に本発明のフィード培地を添加する工程を含む、哺乳動物細胞を培養するための方法において使用され得、ここで該細胞は、細胞の増殖を可能とする条件下で培養される。好ましくはフィード培地も該方法において使用される。
【0097】
本発明の基礎培地及びフィード培地はさらに、以下の工程:a)関心対象のタンパク質をコードしている関心対象の遺伝子を含む哺乳動物細胞を準備する工程、b)本発明の基礎細胞培養培地中で該細胞を培養する工程、及びc)場合により、基礎細胞培養培地に本発明のフィード培地を添加する工程、及びd)場合により、細胞培養液から関心対象の該タンパク質を分離及び/又は単離及び/又は精製する工程を含む、関心対象のタンパク質を産生する方法において使用され得、ここでの細胞は、関心対象のタンパク質の発現を可能とする条件下で培養される。好ましくは、フィード培地は該方法において使用される。フィード培地は、基礎細胞培養培地中に培養された細胞に、培養開始容量(CSV)に基づいて約10~50ml/L/日、好ましくは約15~45ml/L/日、より好ましくは約20~40ml/L/日、より好ましくは約30ml/L/日で添加され得、ここでの培地は連続的に又はボーラスとして1日数回、1日2回、1日1回、2日間に1回、又は3日間に1回添加され得る。好ましくはフィード培地は、0日目、1日目、2日目、又は3日目に開始して添加される。細胞培養液へのフィード培地の添加速度(容量/日)(ml/L/日)(1日あたりの培養開始容量1リットルあたりのフィード容量ml)は、フィード期間中の平均速度として理解され、添加容量は、フィード期間中の個々の添加の間で変更されてもよい。また、フィードは、培養及び/又は収集終了の約1~3日間前に停止してもよい。
【0098】
細胞培養液からの関心対象のタンパク質の分離は、例えば、遠心分離、ろ過、又は、細胞又は細胞片からタンパク質を含む上清を分離するための当技術分野において公知である任意の他の方法によって行われ得る。タンパク質が細胞内で産生される場合には、これは溶解も含み得る。細胞培養液からの関心対象のタンパク質の精製は、複合混合物、例えば細胞培養上清又は溶解液から、1つ又はいくつかのタンパク質を、当技術分野において公知である方法、例えば沈降、クロマトグラフィー、又はゲル電気泳動によって単離することを意味する。
【0099】
本発明の基礎培地及びフィード培地は、大規模な細胞培養液、好ましくは100L以上、より好ましくは1000L以上、又はさらにより好ましくは10000L以上の細胞培養液において使用され得る。
【0100】
関心対象のタンパク質は、抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体、又はその誘導体若しくは断片、及びアゴニスト若しくはアンタゴニストとして作用することができる及び/又は治療用途若しくは診断用途を有するか又は研究用試薬として使用することのできる任意の他のポリペプチドであり得る。関心対象のタンパク質は、例えば、抗体、例えばリツキシマブ、又はFc-融合タンパク質であり得る。好ましくは、該抗体は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を有するか、又は、配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を有するモノクローナルIgG1抗体である。Fc-融合タンパク質は好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0101】
関心対象のタンパク質はまた、いわゆる「細胞工学操作」の範囲内の宿主細胞の特性を変化させるために使用されるタンパク質/ポリペプチド、例えば抗アポトーシスタンパク質、シャペロン、代謝酵素、糖化酵素、及びその誘導体又は断片であり得るが、これらに限定されない。
【0102】
特に、関心対象の所望のタンパク質/ポリペプチド又はタンパク質は、以下に限定されないが、例えば、インシュリン、インシュリン様増殖因子(IGF1)、hGH、tPA、サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、インターフェロン(IFN)α、IFNβ、IFBγ、IFNω、又はIFNτ、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFα及びTNFβ、TNFγ、TRAIL;G-CSF、GM-CSF、M-CSF、MCP-1、VEGF、及びナノボディである。また、エリスロポエチン又は任意の他のホルモン増殖因子、並びにアゴニスト若しくはアンタゴニストとして作用することができ及び/又は治療用途若しくは予防用途を有する任意の他のポリペプチドの産生も含まれる。本発明による方法はまた、抗体、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、及び一本鎖抗体、又はそれに由来する断片、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fc、及びFc’-断片、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン、及びその定常領域、可変領域、又は超可変領域、並びに、Fv-及びFd-断片の産生のために有利には使用され得る。
【0103】
本明細書において使用する「抗体」、「抗体群」又は「免疫グロブリン(群)」という用語は、分化したBリンパ球(形質細胞)から外来物質(=抗原)に対する宿主生物の反応として形成された、グロブリンの中から選択されたタンパク質に関する。それらは具体的にはこれらの外来物質に対して防御するように作用する。様々なクラスの免疫グロブリンが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY、IgW。好ましくは、該抗体はIgG抗体、より好ましくはIgG1抗体である。免疫グロブリン及び抗体という用語は同義語として使用される。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、一本鎖抗体、抗体の抗原結合断片(例えばFab又はF(ab’)2断片)、ジスルフィド結合したFvなどが含まれる。抗体は任意の種であり得、キメラ抗体及びヒト化抗体が含まれる。「キメラ」抗体は、抗体ドメイン又は抗体領域が異なる種に由来する分子である。例えば重鎖及び軽鎖の可変領域は、ラット又はマウスの抗体に由来し得、定常領域はヒトの抗体に由来し得る。「ヒト化」抗体では、最小限の配列しか、非ヒト種に由来していない。しばしばヒト抗体のCDRアミノ酸残基のみが、マウス、ラット、ウサギ、又はラマなどの非ヒト種のCDRアミノ酸残基で置換されている。時に、抗原結合特異性及び親和性に対する影響を有するいくつかの重要なフレームワークアミノ酸残基もまた、非ヒトアミノ酸残基によって置換されている。抗体は、化学合成を通して、組換え又はトランスジェニック手段を介して、細胞(例えばハイブリドーマ)培養を介して、又は他の手段によって産生され得る。
【0104】
免疫グロブリンは、各々が重鎖及び軽鎖によって形成された、2つの対のヘテロ二量体から構成された四量体ポリペプチドである。ヘテロ二量体並びに四量体ポリペプチド構造の両方の安定化は、鎖間ジスルフィド橋を介して起こる。各鎖は、「免疫グロブリンドメイン」又は「免疫グロブリン領域」と呼ばれる構造ドメインから構成され、ここでの「ドメイン」又は「領域」という用語は同義語として使用される。各ドメインは、約70~110個のアミノ酸を含有し、そして緻密な三次元構造を形成している。重鎖及び軽鎖の両方が、そのN末端に、抗原の認識及び結合に関与するあまり保存されていない配列を有する「可変ドメイン」又は「可変領域」を含有している。軽鎖の可変領域はまた「VL」とも称され、そして重鎖の可変領域は「VH」とも称される。
【0105】
「Fab断片(群)」(抗原結合断片、Fragment antigen-binding=Fab)又は「Fab」という用語は、隣接する定常領域(CH1及びCL)に互いにくっついている抗体の重鎖及び軽鎖(VH及びVL)の両方の可変領域からなる。これらは、例えばパパインなどのプロテアーゼによる消化によって、慣用的な抗体から形成され得るが、類似のFab断片は一方では遺伝子工学によっても作製されてもよい。さらなる抗体断片としては、抗体の両方のFabアームが依然として、ヒンジ領域内に位置する重鎖間ジスルフィド橋を介して連結されている「F(ab’)2断片」又は「F(ab’)2」が挙げられ、これはペプシンを用いてのタンパク質分解切断によって、又は遺伝子工学によって調製され得る。
【0106】
抗体の重鎖のCH2ドメイン及びCH3ドメインから構成される免疫グロブリン断片は、その結晶化傾向のために(Fc=結晶性断片、fragment crystallizable)、「Fc断片」、「Fc領域」又は「Fc」と呼ばれる。これらは、例えばパパイン又はペプシンなどのプロテアーゼによる消化によって、慣用的な抗体から形成され得るが、遺伝子工学によっても作製されてもよい。Fc断片のN末端部分は、ヒンジ領域のどのぐらいの数のアミノ酸が依然として存在しているかどうかに依存して変化し得る。
【0107】
「Fc-融合タンパク質」という用語は、融合対として、天然の又は改変された(例えば置換、欠失、挿入)免疫グロブリンのFc領域を含有しているポリペプチドを表わす。Fc融合タンパク質は、天然のタンパク質(例えば抗体)又は工学操作された組換えタンパク質(例えばTNF受容体-Fc融合タンパク質又はFc領域に融合したVH領域)のいずれかであり得る。Fc融合タンパク質は、単量体又は多量体のいずれかとして存在し得、ここでのポリペプチドは、同一の配列を有していても異なる配列を有していてもよく、2つの融合対の間及び/又はヒンジ領域若しくは改変されたヒンジ領域の部分の間にリンカー配列を含有していてもよいか、又は該ポリペプチドはCH2ドメインに直接融合している。
【0108】
遺伝子工学操作法を使用して、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域のみからなる短縮された抗体断片を作製することが可能である。これらは、「Fv断片」(可変断片=可変部分の断片)又は「Fv」と称される。これらのFv断片は定常鎖のシステインによる2本の鎖の共有結合を欠失しているので、Fv断片は安定化されていることが多い。重鎖及び軽鎖の可変領域を、例えば10~30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸の短いペプチド断片によって連結させることが有利である。このように、ペプチドリンカーによって連結されたVHとVLからなる1本のペプチド鎖が得られる。この種類の抗体タンパク質は、「一本鎖Fv」又は「scFv」として知られる。この種類のscFv-抗体タンパク質の例は先行技術から公知である。さらに、1つを超えるVH及び/又はVL領域を互いに連結させてもよい。
【0109】
近年、多量体誘導体としてscFvを調製するための様々な戦略が開発されている。これは、特に、改善された薬物動態及び体内分布特性並びに高まった結合力を有する組換え抗体をもたらすことを目的とする。scFvの多量体化を達成するために、scFvは、多量体化ドメインとの融合タンパク質として調製された。多量体化ドメインは、例えば、IgGのCH3領域又はコイルドコイル構造(へリックス構造)、例えばロイシン-ジッパードメインであり得る。しかしながら、scFvのVH/VL領域間の相互作用が多量体化に使用される戦略も存在する(例えばジアボディ、トリボディ、及びペンタボディ)。ディアボディによって、当業者は、二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。scFv分子内におけるリンカーを5~10アミノ酸へと短縮することにより、VH/VLの鎖間の重ね合わせが起こっているホモ二量体が形成される。ディアボディはさらに、ジスルフィド橋の取り込みによって安定化され得る。ディアボディ-抗体タンパク質の例は、先行技術から公知である。
【0110】
ミニボディによって、当業者は、二価のホモ二量体のscFv誘導体を意味する。それは、免疫グロブリン、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1のCH3領域を、ヒンジ領域(例えばこれもIgG1に由来)及びリンカー領域を介してscFvに接続された二量体化領域として含有している融合タンパク質からなる。ミニボディ-抗体タンパク質の例は先行技術から公知である。
【0111】
トリアボディによって、当業者は、三価のホモ三量体scFv誘導体を意味する。VH-VLがリンカー配列を伴わずに直接融合しているscFv誘導体により、三量体が形成される。
【0112】
当業者はまた、二価、三価、又は四価構造を有しかつscFvに由来するいわゆるミニ抗体をよく知っているだろう。多量体化は、二量体、三量体、又は四量体のコイルドコイル構造によって行なわれる。本発明の好ましい実施態様では、関心対象の遺伝子は、上記の所望のポリペプチドのいずれか、好ましくはモノクローナル抗体、その誘導体又は断片をコードしている。
【0113】
「抗体由来分子(群)」という用語は、「抗体由来断片」又は「抗体断片」と同義語として使用され、そして、1つ以上の抗体ドメイン(群)若しくは領域(群)の一部(群)のみ及び/又は完全なドメイン(群)若しくは領域(群)を含有するポリペプチドを指す。抗体断片は、a)単独で分子を形成していても、b)様々な組み合わせで互いに連結されていても、c)非抗体配列に融合していても、d)非ポリペプチド(例えば放射性核種)に融合又は連結されていても、又はd)上記の任意の組み合わせでもよい。これらのポリペプチドは、単量体又は多量体のいずれかとして存在し得、ここでのポリペプチドは同一の配列を有していても、異なる配列を有していてもよい。
【0114】
実施例
材料及び方法
細胞株
CHO細胞株(CHO-DG44)を無血清培地条件に適合させ、そしてさらにDNAを用いてトランスフェクトして、工業的製造に関連性のあるモノクローナル抗体、融合タンパク質、又は二重/多重特異的タンパク質などの組換え産物を生成した。具体的には、異なるIgG構築物を発現している無血清培地(HEX I及びHEX IIと命名)に独立して適合した特許所有権を有する2つのBI HEX(Boehringer-Ingelheim High Expression)CHO-DG44由来CHO細胞株を使用した。これらの細胞はDHFR-(デヒドロ葉酸還元酵素)欠損であり、メトトレキサートを選択マーカーとして使用する。特記しない限り、実験に使用される細胞は、培養培地中に分泌される、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号2の配列を有する軽鎖とを有する組換えタンパク質としてリツキシマブを発現しているCHO-DG44(HEX II)細胞である。この細胞株は、以下においてCHO2、CHO-DG44リツキシマブ、又はCHO2(CHO-DG44)リツキシマブと称される。
【0115】
分析法
細胞濃度及び細胞生存率を、セデックス(タイプ5.00、バージョン2.2)の自動細胞分析装置(Roche Innovatis社、ビーレフェルト、ドイツ)を使用してトリパンブルー排除法によって決定した。培地中に産生された組換えタンパク質、例えばIgG抗体の濃度を、測光法に基づいたKonelab 60i(サーモサイエンティフィック社、ドライアイヒ、ドイツ)分析装置によって、又はHPLC法の使用によって定量した。Konelab 60i装置はまた、細胞培養上清中のグルコース、乳酸(乳酸塩)、グルタミン、グルタミン酸塩、及びアンモニウムなどの代謝物の定量のためにも使用された。アミノ酸の濃度は、GC6890N/FIDガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジーGmbH&Co.KG社、ヴァルトブロン、ドイツ)の使用によって決定された。アミノ酸の分析は、フェノメネクス社(アシャッフェンブルク、ドイツ)製のEZ-faastプロトールによって行なわれた。モル浸透圧濃度のプロファイルは、osmomat自動装置(ゴノテックGmbH社、ベルリン、ドイツ)によって分析された。この方法は、溶解している粒子の量に比例する、特定の溶液の凝固点降下による凝固点に基づく。溶存二酸化炭素pCO2、溶存酸素pO2、及びpHは、1日1回の割合で、Rapidlab248/348装置(シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティクスGmbH社、エシュボルン、ドイツ)を用いて決定された。これらの装置及び必要とされる方法は当技術分野において周知であり、バイオ医薬品のプロセス開発及び製造におけるプロセスのモニタリング及び制御のために使用されている。
【0116】
振盪フラスコ培養
振盪フラスコ(コーニングB.V.ライフサイエンス社、アムステルダム、オランダ)実験は一般的に、小規模で、60~500mlの範囲の作業容量で、バッチ方式で(培養中にフィードを全く添加しない)又は流加方式で(培養中に30ml/L/日の栄養フィード添加という標準的なフィード速度で)行なわれた。接種時の生細胞濃度は典型的には、全ての実験において0.3×106個の細胞/mlに設定された。必要であれば異なる実験設定間での相互比較を確実なものとするために、振盪フラスコでの培養は、同じ種菌の前培養から得られた(細胞の年齢ごとのシードトレインにおける細胞の解凍、増殖)。細胞培養のために標準的な振盪フラスコインキュベーター(Infors AG社、ボットミンゲン、スイス)を、120rpmの振盪速度、37℃の温度設定点で使用し、湿度を70%に設定した。上記のような分析法を使用して、1日1回の割合で標準的なプロセスパラメーターを測定し、これは細胞総数及び生細胞数、細胞生存率、代謝物の濃度、及び他の関連する細胞培養パラメーター、例えば溶存酸素pO2(DO)、溶存二酸化炭素pCO2(DCO)含量、又はpHである。これは、各々の実験組立のための培養条件をモニタリングしかつ制御するために、全培養期間を通じて慣用的に行なわれた。流加実験では、濃縮されたフィード溶液を、流加実験において、2日目に開始して、制御されていない振盪フラスコシステム内の60mlの培養開始容量に(培養開始容量に基づいて30ml/L/日の栄養フィード速度に相当する)、1日あたり1.8mlのフィードのボーラス添加物として添加した。
【0117】
バッチ方式及び流加方式
組換えタンパク質及び抗体の産生のために、典型的には流加プロセスが最終産生段階において使用されるが、バッチ培養は主に、最終産生段階より前の細胞増殖段階において行なわれる。一連のバッチ培養液は、細胞増殖中のシードトレインと称され、これは各増殖工程における細胞が、より大きな培養容量を有する培養容器に移されることを意味する。最終産生段階におけるバッチプロセスは一般的に高い生産性をもたらさず、それ故、組換えタンパク質の製造のためには稀にしか使用されない。流加プロセスでは、濃縮されたフィード培地が培養中に添加され、新たな培地を用いての栄養分の補充を補う。これらのプロセスはより高い生産性を達成し、それ故、主に組換えタンパク質の産生に使用される。バッチ方式とは対照的に、濃縮されたフィード培地の添加による栄養分の補充は、乳酸塩又はアンモニウムなどの所望ではない代謝性副産物による細胞増殖の抑制を低減する。典型的には、流加プロセスは、撹拌タンクの最大容量よりもはるかに少ない容量で開始され、よって濃縮された栄養溶液は、バイオリアクターの全培養時間におよび添加され得る。
【0118】
バイオリアクターでの培養
バイオリアクター実験は、開始容量が1.8Lである制御された2Lのシステムで(ベーリンガーインゲルハイムが特許所有権を有する複発酵槽システム)又は開始容量が最大15mlである制御された48小型バイオリアクターシステムで行なわれた。完全に制御されたバイオリアクターは、バッチ方式又は流加方式で行なわれた。流加方式では、濃縮されたフィード溶液が、培養液からフィードポンプによって、30ml/L/日のフィード速度で(培養開始容量に基づいて)、通常1~3日目以降から連続的に添加された。接種密度は、振盪フラスコシステムに類似した0.3×106個の細胞/mlに設定された。より長い時間枠におよぶ細胞の増殖は、表現型の安定性を確実なものとするために、細胞増殖及び培養継代のための標準的なシードトレインプロトコールに従った。この手順は、様々な時点における様々な実験設定間の相互比較を確実なものとする。典型的なバイオリアクターでの培養のために、標準的なプロセスフォーマットは、3日目からのpHシフトを含む7.10~6.95(+/-0.25)のpH範囲、30~60%のDO設定点(空気飽和)、140rpmの一定した撹拌速度(4枚刃のラシュトンタービン攪拌機)、及び36.5~37℃の温度設定点からなる。細胞培養液への理想的な栄養供給を提供するために、上記のような分析法を使用して、細胞数、細胞生存率、及び主要な炭素代謝物濃度などの主要な培養パラメーターを決定した。振盪フラスコ実験とは対照的に、バイオリアクターシステムでは、pH及びpO2はオンラインでモニタリングされる。オフラインプロセスパラメーター及び設定点は、例えばpH制御、栄養フィードの添加、温度制御、撹拌、及びガス排出をモニタリングするための自動閉回路システムを使用して制御ソフトウェア(シーメンス社、ミュンヘン、ドイツ)によって完全に制御された。
【0119】
実施例1
CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、アミノ酸の総累積量が異なる、RPMIアミノ酸(AA)比を有する、対、最適化されたアミノ酸(AA)比を有する、RPMIをベースとした基礎培地中で培養した。22mM~66mMの範囲のアミノ酸の総累積量を有する(培地4のみ37mM)、RPMIアミノ酸比を有する培地4(培地4.0、4.1、4.2及び4.3)及び最適化されたAA比を有する培地(培地5.0、5.1及び5.2)の培地組成を表1に示し、対応するアミノ酸比を表2に示す。
【0120】
アミノ酸総濃度の僅かな差異は、分子量の差異及び使用されるアミノ酸の粉末の最小限の差異に起因する。この実験の目的は、様々な累積総アミノ酸レベルにおける最適化されたアミノ酸比の影響を実証するためであった。実験はバッチ方式で2連で(N=2)行なわれた。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
材料及び方法:
この実験に使用されるRPMI基礎培地は、Moore及び共同研究者によって1966年にロズウェルパーク記念研究所において初めて開発された、市販されているRPMI培地R8755(メディアテックカタログ番号90022PB又はシグマアルドリッチカタログ番号R8755)に基づく(SAFC, Biosciences社の製品情報)。無血清での使用のために、それは、塩化ナトリウム(NaCl 6.0g/l)、塩化カリウム(KCl 0.4g/l)、硫酸マグネシウム(MgSO4 0.0488g/L)を108.4mmol/Lの累積和のバルク塩で含有するように表1に示されているように補充されている。
【0125】
バッチ実験を、500mlの振盪フラスコにおいて125mlの開始容量で行なった。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、培地4、4.1、4.2、又は4.3(RPMIアミノ酸比)及び培地5、5.1、又は5.2(最適化されたアミノ酸比)中に0.3×106個の細胞/mlで播種した。振盪フラスコ培養液を、36.5℃で、0~3日目は5%CO2及び4日目から培養終了時までは3%CO2を含むインキュベーター中でインキュベートした。
【0126】
アミノ酸のシステインは、培地5の粉末製剤に提供されたが、培地4にはストック溶液から別々に添加された。培養液のモニタリング及び制御のために、細胞総数、生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を7日目まで測定した。
【0127】
結果:
図1(A~D)は、RPMI比(塗りつぶされた四角)及び最適化されたアミノ酸比(塗りつぶされた丸)を有するRPMI培地中で培養された細胞についての結果、すなわち、44mMのアミノ酸の総濃度における、生細胞の濃度、生存率、産物の濃度、及び乳酸塩の濃度を示す。最も高い生存可能な増殖及び産物の濃度が、44mM(
図1A及びC)及び66mM(
図1E及びG)という異なるアミノ酸の累積濃度において、最適化されたアミノ酸比を有する培養液中で達成された。例えば、産物の濃度は、5日目及び7日目において最適化されたアミノ酸比を有する細胞培養液中で約2.3倍高く(
図1C)、産物の最大濃度は166mg/Lであり、これに対して、RPMI比を含有している培地中で増殖させた細胞の産物の最大濃度は72mg/Lであった。これは、より多数の生細胞を伴った(
図1A、培地5において最大2.82×10
6個の細胞/ml、及び培地4.1において1.13×10
6個の細胞/ml)。両方の培養液の生存率プロファイルは互いに良く一致し、そして3日目以降から98%から7日目の25%まで生存率の明らかな減少を示した(
図1B)。グルコースの濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度は、両方の培養液中において類似した傾向を示した。例えば、グルコース濃度は、あらゆる制限を回避するために、全ての培養液について全培養期間にわたって1.0g/Lを超えるように維持され、そしてpHは細胞培養プロセスについての典型的な範囲内に維持された。このことは、全ての培養液が、細胞増殖、代謝、及び産物の形成のためのグルコースなどの主要な炭素源を十分量で提供されたことを実証する。予想された通り、代謝性老廃産物である乳酸塩のプロファイルは増殖依存性パターンを示した、すなわち、上昇した細胞濃度は、より多量の代謝性老廃産物である乳酸塩の原因となる(
図1D)。乳酸の産生は、常に増殖に関連しているわけではなく、そして、効率的なグルコースの利用のための指標としてさらに理解され得ることが注記されるべきである(例えば
図4J)。
【0128】
類似の結果が、RPMI比(塗りつぶされた四角)及び最適化されたアミノ酸比(塗りつぶされた丸)を含有している培地中で培養された細胞において66mMのアミノ酸総濃度で得られた(
図1E~H)。産物の濃度は、5日目及び7日目において最適化されたアミノ酸比を有する細胞培養液中で約3倍高く(
図G)、産物の最大濃度は311mg/Lであり、これに対して、RPMIアミノ酸比を含有している培地中で増殖させた細胞の産物の最大濃度は96mg/Lであった。これは、増加した数の生細胞を伴った(
図E、培地5.1において最大3.44×10
6個の細胞/ml、及び培地4.2において1.32×10
6個の細胞/ml)。両方の培養液の生存率プロファイルは類似したパターンを示すが、培地5.1中の培養液は、5日目に約1日間だけ延長された生存率を示す(94%に対して、培地4.2では70%)。両方の培養液の生存率は、3日目以降から98%から7日目の55%及び25%の生存率まで明らかな減少を示す(
図1F)。乳酸塩の濃度、グルコースの濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度並びにpHの進行については、44mMのアミノ酸総濃度を有する培養液について上記したように類似の傾向が観察された。生細胞の総濃度及び産物の濃度は、特に最適化されたアミノ酸比と共に培養された細胞について(RPMI比を含有している培地の産物の濃度:培地4.2(66mM)対培地4.1(44mM)、5日目:96~72mg/l=+24mg/l;最適化されたアミノ酸比を含有している培地の産物の濃度:培地5.1(66mM)対培地5.0(44mM)、5日目:290~166mg/l=+123mg/l)、より高いアミノ酸総濃度における方がより高かった(66mM(
図1E及びG)と44mM(
図1A及びC)を比較)。
【0129】
類似の傾向が、22及び36mMのアミノ酸総濃度でも観察された(図lI)。約45mg/lの産物の最大濃度(22mM、培地4.3、RPMIアミノ酸比;塗りつぶされた右向き三角)は、アミノ酸総濃度の上昇につれて、65mg/lという産物の最大濃度まで増加した(36mM、培地4.0、RPMIアミノ酸比;塗りつぶされた十字形)。しかしながら、この効果は、
図1Iに示されているような、117mg/lの産物の最大濃度(22mM、培地5.2、及び最適化されたアミノ酸比;塗りつぶされた四角)と45mg/l(22mM、培地4.3、RPMI比)を比較すると、最適化されたアミノ酸比に伴う効果よりも小さい。
【0130】
図1Jから解釈することができるように、22mMという試験された中で最も低いアミノ酸総濃度における最適化されたアミノ酸比(塗りつぶされた四角)により、66mMという試験された中で最も高いアミノ酸総濃度におけるRPMIアミノ酸比(塗りつぶされた丸、産物の最大濃度は96mg/ml、RPMIアミノ酸比)よりも高い生産性(産物の最大濃度は117mg/l、最適化されたアミノ酸比、22mM)がもたらされた。したがって、最も高い生産性は、最適化されたアミノ酸比を有する培地を使用して達成され、産物の最大濃度は117mg/L(22mM、最適化されたアミノ酸比;
図1I、J)、166mg/l(44mM、最適化されたアミノ酸比、
図1C)、及び290mg/l(66mM、最適化されたアミノ酸比、
図1E)であった。このことは、アミノ酸比の最適化が、生産性を強力に高め、そしてこれはアミノ酸総濃度を単に上昇させることによっては非常に僅かな程度しか打ち消すことができないことを示す。
【0131】
実施例2
基礎培地5(RPMIをベースとした)中の最適化されたアミノ酸の比に基づき、いくつかのアミノ酸を、一成分アプローチとして、そのモル濃度を+/-20%及び+/-40%だけ変化させた(計算は、最適化されたアミノ酸比についてのモル比率に基づく)。次いで、成績を、培地5.3(培地5.0と同一であるが、全てのアミノ酸がストック溶液として個々に添加された)中で増殖させた対照培養液と比較した。様々な培地の組成を設計するために、全ての必要とされるアミノ酸が、濃縮されたストック溶液によって提供された。したがって、培地は、約43~44mMという同等な累積アミノ酸総量を有したが、アミノ酸比は異なる。1つの実験において、対照培地5.3に対して、1つのアミノ酸の濃度(L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸塩、L-ヒスチジン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリンについての一成分アプローチ)の+20%及び-20%の変化を試験した。対照と比較して、1つのアミノ酸の濃度(L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸塩、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン)の+40%及び-40%の変化について、類似したアプローチを実施した。実験はバッチ方式でRPMIをベースとした培地を用いて行なった。アミノ酸の+/-20%又は+/-40%の変化は、使用される具体的な培地について(20)又は(40)として示される。
【0132】
材料及び方法:
この実験は、250mlの振盪フラスコにおいて75ml及び100mlの開始容量で行なった。全ての培養液においてCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、対照培地5.3(N=3)及び改変培地5.3.1(20)(N=2)(1つのアミノ酸の濃度を+/-20%変化させた)及び培地5.3.1(40)(1つのアミノ酸の濃度を+/-40%変化させた)中に0.3×106個の細胞/mlで播種した。振盪フラスコを、36.5℃でインキュベーター中(5%CO2雰囲気が0日目から3日目まで、次いで3%CO2が培養終了時まで提供された)でインキュベートした。グルコースを2日目及び4日目に、そしてまた必要に応じて2.5g/lから4.5g/lの最終グルコース濃度を維持するためにフィードした。L-グルタミンがまた必要に応じて添加された。
【0133】
培地5.3(培地5.0と同一であるが、全てのアミノ酸はストック溶液として個々に添加された)は、この実験のための基礎としての役割を果たした。全部で14種類のアミノ酸を、+/-20%の一成分アプローチについて試験した:L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸塩、L-ヒスチジン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリン。全部で7種のアミノ酸を試験しなかった:L-アラニン、L-システイン/L-シスチン、L-グルタミン、L-グルタミン酸塩、L-グルタミン、L-イソロイシン、及びL-グリシン。全部で15種のアミノ酸を、+/-40%の一成分アプローチについて試験した:L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸塩、L-ヒスチジン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、及びL-イソロイシン。全部で6種のアミノ酸を試験しなかった:L-アラニン、L-システイン/L-シスチン、L-グルタミン、L-グルタミン酸塩、L-グルタミン、及びL-グリシン。
【0134】
試験されなかったアミノ酸は、細胞培養液中で過剰に産生される代謝性老廃物として認定され(L-アラニン、L-グリシン、L-グルタミン酸塩);化合物の酸化に因り化学的に不安定であると考えられるか、又は、特に細胞ピーク後の強化された増殖のために必須な化合物であるとは判断されなかった(例えばL-グルタミン)。
【0135】
培地5.3を水中に溶解して、アミノ酸を含まない1.2倍の濃縮液を形成して、培地5.3.1(20)を調製し、ここでの全てのアミノ酸はストック溶液から別々に添加され、水を用いて調整された。培地5.3.1(40)は、培地5.3から1.25倍の濃縮液として調製され、ここでの全てのアミノ酸はストック溶液から別々に添加され、水を用いて調整された。
【0136】
結果:
1つのアミノ酸の比の変化は、最適化されたアミノ酸比を有する培地中におけるL-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-バリン、又はL-イソロイシンの40%の減少により、生産性は低下したことを示した(
図2J及びN)。生産性の僅かな低下はまた、L-フェニルアラニン、L-バリン、又はL-ロイシンを20%減少させた場合にも観察された(
図2C及びE~G)。
【0137】
例えば、
図2Jに示されているように、産物の平均濃度は、対照培地5.3(最適化されたアミノ酸比)及び改変培地5.3.1(40)(1つのアミノ酸を-40%減少させている)における5日目の129~184mg/Lから7日目の127~186mg/Lの範囲である。この幅広い最終力価の範囲は、最終産物の濃度は大半の培地において類似しているが、7日目の180mg/Lの最大対照力価と比較して5つの培養液において減少していたことを示す(
図2J及び2N)。対照培地5.3(最適化されたアミノ酸比)中の180mg/Lの産物の最大濃度は180mg/Lであり、これは、L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、又はL-イソロイシンが-40%減少した改変培地5.3.1(40)において培養5日目に129~149mg/Lの範囲内の産物の最大濃度まで減少している。類似の傾向が7日目に、対照培地5.3中の179mg/Lの産物の濃度、及び5つの改変培地中の127~143mg/Lの産物の濃度において認めることができる。
【0138】
最適化されたアミノ酸比を有する培地中のL-ロイシン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-バリン、又はL-イソロイシンを40%減少させることによりさらに、3日目以後に生細胞濃度の減少が起こり、これは生存率の低下及び代謝性老廃物(乳酸塩)の産生増加を伴った(
図2H、2L、2M、2O)。これらのアミノ酸を20%だけ減少させた場合、生細胞の濃度、細胞の生存率、又は乳酸塩の産生における差異は全く観察されなかった(
図2A、2B、2D参照)。生細胞の濃度及び生存率の低下が、バッチ方式において一般的な栄養の欠乏及びフィードの添加が行なわれないことに因り、予想された通り、ほぼ全ての培養液中で起こった(
図2A、2B、2H、2I、2L、及び2M)。グルコースは臨界レベルを超えて維持され、乳酸塩の産生は、予想された通り、全ての培養液中で増殖に関連した動態に従った(
図2K及びO)。モル浸透圧濃度、pCO
2及びpHなどの他のいずれかの測定されたパラメーターに対する影響は全く観察されなかった。
【0139】
結果は、いくつかのアミノ酸の減少が、生細胞の濃度及び/又は産物の形成に負の影響を及ぼすことを示す。
【0140】
生産性、生細胞の濃度、細胞の生存率、又は乳酸塩の濃度に対する影響は、20又は40%だけアミノ酸を増加させた培地中では全く観察されなかった(データは示されていない)。
【0141】
実施例3
基礎培地5(RPMIをベースとした)中の実施例2に同定された最適化されたアミノ酸比及びアミノ酸に基づき、様々な培地バックグラウンド中のさらなるアミノ酸のそのモル濃度を-40%だけ一成分アプローチとして変化させた。最適化されたアミノ酸比を含有しているこの培地は、無血清での組換えタンパク質の産生のためにさらに最適化され、そして組成が化学的に明らかであり、そして以前の実験に使用されたRPMI改変培地よりも優れている。この実験では、1つのアミノ酸をバッチ方式において減少させることにより、pH、溶存酸素(DO)及び温度について制御されたバイオリアクター条件下における基礎培地中の最適化されたアミノ酸比の効果を実証する。
【0142】
基礎培地6.2中の最適化されたアミノ酸比に基づき、L-リジン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トリプトファン、若しくはL-チロシンの1つのアミノ酸のそのモル濃度を40%減少させたか、又はL-チロシン及びL-リジンを両方共に20%又は40%減少させた。得られた成績を、最適化されたアミノ酸比を含有している対照培養培地と比較した。対照培地6.2(最適化されたアミノ酸比、アミノ酸は予め混合された粉末として添加された)及び対照培地6.4.1(最適化されたアミノ酸比、アミノ酸はストック溶液から個々に添加された)中で培養された細胞と、培地6.4.9-培地6.4.15(改変されたアミノ酸比、アミノ酸はストック溶液から個々に添加された)中で培養された細胞を比較した。試験された全ての培地組成物は、約44mMという同等な累積アミノ酸総濃度を示した。
【0143】
材料及び方法:
対照培地6.2(最適化されたアミノ酸比、アミノ酸は予め混合された粉末として添加された)及び対照培地6.4.1(最適化されたアミノ酸比、アミノ酸はストック溶液から個々に添加された)中で培養された細胞を、培地6.4.9(L-リジン及びL-チロシン、-20%)、培地6.4.10(L-リジン及びL-チロシン、-40%)、培地6.4.11(L-チロシン、-40%)、培地6.4.12(L-リジン、-40%)、培地6.4.13(L-メチオニン、-40%)、培地6.4.14(L-トリプトファン、-40%)、培地6.4.15(L-プロリン、-40%)中で培養された細胞と比較した。試験された全ての培地組成物は、44~45mMという同等な累積アミノ酸総濃度を示した。必要とされる全てのアミノ酸は、濃縮されたストック溶液によって提供され、そして培地6.4.0(培地6.2及び6.4.1と同一であるが、アミノ酸を含まない)に添加されることにより、異なる培地組成の6.4.1及び6.4.9-15を調製した。
【0144】
実験は、14mlの開始容量で、48-小型化バイオリアクターシステムで行なわれた。全ての細胞培養液においてCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、それぞれの培地に、0.3×106個の細胞/mlで播種した。バイオリアクターを全培養期間にわたって36.5℃でインキュベートし、そして溶存CO2を(7.20~6.80)+/-0.2のpH設定点に基づき2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。対照培養液及び実験の実行は2連で(N=2)行なわれた。
【0145】
【0146】
【0147】
結果:
対照培養液中では(最適化されたアミノ酸比、培地6.4.0.1)、317mg/Lという産物の最大濃度が8日目に測定された。全ての試験培養液において、産物の最大濃度は、対照培養液に比較して減少し、8日目において249~279mg/Lの範囲であった。具体的には、培地中のL-リジン又はL-チロシンを減少させることにより、8日目にそれぞれ268mg/L及び279mg/Lの産物の濃度が得られた。興味深いことに、L-リジン及びL-チロシンを両方共に40%減少させることにより、249mg/Lというさらに低い産物の濃度が得られ、このことは、相加作用又はさらには相乗作用を示す(
図3C、塗りつぶされた十字形)。培地中のL-メチオニン、L-プロリン、又はL-トリプトファンを同様に減少させることにより、8日目に産物の濃度は減少した(それぞれ、265mg/L、274mg/L、277mg/L)。要約すると、結果は、最適化されたアミノ酸比を有する培地により、試験された培地の最善の生産性がもたらされたことを示す。
【0148】
増殖プロファイルは、試験培地及び対照培地について同等な結果を示した(
図3A及び3B)。いくつかの培養液中における生細胞の最大濃度は、対照培養液(塗りつぶされた四角)と比較して、数日間早くかつさらには僅かにより高かった。例えば、全ての培養液の生細胞の濃度は、4日目の3.7×10
6個の細胞/mlのピーク細胞密度から6日目の2.8×10
6個の細胞/mlというより低い細胞密度(対照)の範囲であった。全ての培養液の生存率プロファイルは類似した傾向を示し、培養6日目に鋭い減少を示した。しかしながら、生存率は、培養期間の終了に向けて、いくつかの試験培養液中において僅かにより高くさえあった。要するに、対照培養液中のより高い生産性は、より高い細胞特異的な生産性によって説明され得る。代謝物及びpHプロファイルは1日1回の割合で慣用的にモニタリングされたが、培養液間の差異は全く示さなかった。
【0149】
実施例4
基礎培地及びフィード培地の両方における新規なアミノ酸比の組合せが最善の成績を示したことがさらに判明した。基礎培地(バッチ方式)においてのアミノ酸比の最適化が効果を示しただけでなく、フィード培地(流加方式)においてのアミノ酸比の最適化も効果を及ぼした。細胞を、最適化されたアミノ酸比又はRPMIアミノ酸比を有する基礎培地中でインキュベートし、そして最適化されたアミノ酸比又はRPMIアミノ酸比を有するいずれかのフィード培地をフィードした。
【0150】
実施例4A
基礎培地及びフィード培地の影響を、CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、最適化されたアミノ酸比(最適化されたアミノ酸比、培地6.2及びフィード6.2)又は最適化されていないアミノ酸比(RPMIアミノ酸比、培地6.3及びフィード6.3)を有する培地中、流加方式で、4つ全てを組み合わせて、全ての培養液について培養開始容量に基づき30ml/L/日の標準的なフィード速度で培養することによって分析した。最適化されたアミノ酸比を含有している基礎培地及びフィード培地6.2をさらに、無血清での組換えタンパク質の産生のために最適化し、そしてこれは組成が化学的に明らかであり、そして使用されるRPMI改変培地よりも優れている。別の実験では(2Lのバイオリアクターシステム、実施例4C)、フィード溶液中の最終グルコース濃度(フィード培地6.2.1及びフィード培地6.3.1)を上昇させてることにより、ストック溶液を添加することによるグルコースの添加回数及び作業者の労働を最小限とした(表3)。
【0151】
材料及び方法:
約44mMのアミノ酸総量を含むがアミノ酸比は異なる、基礎培地6.2及び培地6.3を同じように設計した(表2及び2a)。同様に、約508~511mMのアミノ酸総量を含むがアミノ酸比は異なる、フィード培地6.2及びフィード培地6.3を同じように設計した(表3及び6)。浸透圧上昇を回避するために、フィード培地6.2及び6.3中のグルコース濃度を42g/lの最終濃度まで減少させた。グルコースをさらに、必要に応じて添加して、実験経過中のグルコースが1g/Lを超えるように維持した。
【0152】
実験は、14mlの開始容量で48-小型化バイオリアクターシステムで行なった。全ての培養液中においてCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、以下のように、試験培地又は対照培地中に0.3×106個の細胞/mlで播種した:基礎培地6.2及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比、アミノ酸は予め混合された粉末として添加された)、基礎培地6.3及びフィード培地6.3(RPMIアミノ酸比、アミノ酸は予め混合された粉末として添加された)。バイオリアクターを、全培養期間にわたって36.5℃でインキュベートし、そして溶存CO2を(7.20~6.80)+/-0.2のpH設定点に基づき2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。
【0153】
【0154】
結果:
流加バッチ(n=2)の制御された小型バイオリアクターシステムにおけるIgG1抗体(リツキシマブ)の産生についての基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比の効果を
図4Cに示す。10日目において2786mg/L(12日目において2677mg/L)の産物の最大濃度が、基礎培地及びフィード培地の両方において最適化されたアミノ酸比を用いて達成された。RPMIアミノ酸比を有する基礎培地を使用することにより、12日目に2126mg/Lという産物のかなり低い最大濃度がもたらされたが、最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地ではもたらされなかった。培養液中の生産性は、最適化されたアミノ酸比を有する基礎培地及びRPMIアミノ酸比を有するフィード培地を使用してさらに一層減少し、その結果、12日目の最終力価は1662mg/Lであった。産物の最も低い濃度が、基礎培地及びフィード培地の両方において最適化されていないアミノ酸比を用いて達成され、12日目における産物の濃度は1577mg/Lであった。
【0155】
最適化されていないアミノ酸比を有する基礎培地を使用し、続いて最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地を使用することにより、生細胞の濃度は僅かに遅れたが、ほぼ同等な生細胞の最大濃度に達した。最適化されたアミノ酸比を有する基礎培地を使用したそれぞれの細胞培養と比較して、細胞特異的な生産性も僅かに減少した(161.3mg/106個の細胞に対して、132.91mg/106個の細胞)。同様に、生産性は特に初期の頃に(4日目から8日目)僅かに遅れ、そして時間が経過しても低いままであった。このことは、最適化されたアミノ酸比が、基礎培地及びフィード培地の両方における細胞の生産性にとって有益であることを示す。
【0156】
これは、最適化されたアミノ酸比を使用した培地、好ましくは基礎培地及びフィード培地の両方における培養において、生細胞の濃度及び生存率の上昇を伴う。基礎培地中及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有する培地中で培養された細胞についての生細胞の最大濃度は、8日目に16.6×106個の細胞/mlであることが判明した。RPMIアミノ酸比を有する基礎培地及び最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地中で細胞を培養することにより、16.0×106個の細胞/mlという生細胞のほぼ同じ最大濃度が得られたが(10日目)、約2日後であった。したがって、基礎培地中の最適化されていないアミノ酸比は、生細胞の増殖を遅らせるようである。RPMIアミノ酸比を有するフィード培地中で細胞を培養することにより、8日目に生細胞の最大濃度は13.3×106個の細胞/ml(最適化されたアミノ酸比を有する基礎培地)又は11.5×106個の細胞/ml(RPMIアミノ酸比を有する基礎培地)へとひどく減少した。したがって、フィード培地中の最適化されたアミノ酸比は、より高い生細胞の濃度を支えるようである。
【0157】
類似の傾向が生存率についても観察され(
図4B)、フィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有さない培養液中の生存率はより早期にかつよりひどく低下した。他のあらゆる測定されたパラメーターに対する有意な影響は全く観察されなかった。
【0158】
要約すると、最適化されたアミノ酸比を有さない基礎培地の効果は、細胞特異的な生産性の低下をもたらすようであり、これは最適化されたフィード培地を使用することによっても完全に補うことができない。一方で、最適化されたアミノ酸比を有さないフィード培地の使用は、生細胞数の減少(
図4A)及び生存率の低下(
図4B)をもたらした。したがって、最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地は、生存率及び生細胞の濃度を改善し、これにより生産性を向上させたが、細胞特異的な生産性に対しても効果を示した(161.2mg/10
6個の細胞対124.9mg/10
6個の細胞)。それとは対照的に、増殖、生存率及び最終力価についての結果によって、最大の増殖及び産物の最大濃度が、基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比によって明らかに影響を受けたことが判明した。
【0159】
実施例4B
基礎培地及びフィード培地の影響を、最適化されたアミノ酸比(最適化されたアミノ酸比、基礎培地6.2及びフィード6.2)又は最適化されていないアミノ酸比(RPMIアミノ酸比、培地6.3及びフィード6.3)を使用して、流加方式で、4つ全て組み合わせて、減速させたフィード速度で、制御されていない振盪フラスコシステム(pH及び溶存酸素は制御されていない)においても分析した。標準的な流加バッチフィード速度は、30ml/L/日(対照)から20ml/L/日及び8ml/L/日に調整して、過剰フィード及びしたがって効果の遮蔽を回避した。
【0160】
材料及び方法:
CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地及びフィード培地6.2(最適化されたアミノ酸比)又は基礎培地及びフィード培地6.3(RPMIアミノ酸比)中に0.3×106個の細胞/mlで播種した。フィード培地6.2及びフィード培地6.3は、振盪フラスコ実験及び2Lのバイオリアクターの同等な代謝プロファイル(例えばグルコース)を確保するために、代謝的に調整された42g/lのグルコース濃度を含有していた。生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を、試料の間隔に従って上記のように測定した。実験及び対照は2連で(N=2)行なわれた。
【0161】
この実験において500mlの振盪フラスコを60mlの開始容量で使用して、最適化されたアミノ酸比を有する又は有さない基礎培地及びフィード培地中で細胞を培養した。振盪フラスコ培養液を、インキュベーター(0日目から2日目には8%CO2、2日目からは5%CO2、及び3日目から培養終了時までは3%CO2)中で36.5℃でインキュベートした。フィード速度は、1日目から5日目には20ml/L/日に、5日目から11日目までは8ml/L/日に設定された。グルコースの過剰フィードを防ぎかつ上昇したグルコースレベルによって引き起こされる浸透圧を最小限にすることを目的として、フィード溶液を2日間毎に培養液に加えた。フィード速度は、以下のように計算された、例えば30ml/L/日×0.06L=1.8mlフィード/日=3.6mlフィード/2日間、代謝的に調整されたフィード速度20ml/L/日=1.2ml/日=2.4mlフィード/2日間。グルタミンは培養中に0.1g/Lを超えるように維持され、開始時の基礎培地中の上昇したL-グルタミン濃度から主に補充されたが、フィード培地からは補充されなかった。
【0162】
結果:
制御されていない振盪フラスコシステムにおいて流加方式で減速させたフィード速度でのIgG1抗体(リツキシマブ)産生のための培地及びフィード中の最適化されたアミノ酸比の効果(N=2)。
【0163】
基礎培地6.3中に最適化されていないアミノ酸比及びフィード培地6.2中に最適化されたアミノ酸比を有する培養液中の897mg/Lという産物の最大濃度を(塗りつぶされた菱形)、基礎培地6.2中に最適化されたアミノ酸比及びフィード培地6.2中に最適化されたアミノ酸比を有する培養液中の1049mg/L(塗りつぶされた四角)という産物の最大濃度と比較すると(どちらも減速したフィード速度)、基礎培地の効果を認めることができる(
図4F)。基礎培地中に最適化されていないアミノ酸比を有するので、遅くかつ低減した産物の形成が行なわれた。基礎培地6.2中に最適化されたアミノ酸比及びフィード培地6.3中に最適化されていないアミノ酸比を有する培養液中の641mg/Lという産物の最大濃度(塗りつぶされた丸)は、基礎培地及びフィード培地中の最適化されていないアミノ酸比を有する培養液中の468mg/Lという産物の最大濃度(塗りつぶされた三角)よりも高かった(
図4F)。この結果は明らかに、産物の最大力価に対する基礎培地中の最適化されたアミノ酸のプラスの影響を実証する。
【0164】
さらに、1049mg/Lという産物の最大濃度は、基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有する培養液中で達成され、これは、減速したフィード速度で最適化されていないアミノ酸比を有するフィード培地を使用した場合には641mg/Lに減少した(
図4F)。産物の産生に関する類似した傾向が、最適化されたアミノ酸比を有さない基礎培地及び最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地(897mg/L)又は最適化されたアミノ酸比を有さないフィード培地(468mg/L)中で培養された細胞について認められた。このことは、産物の最大性能に対してフィード培地中の最適化されたアミノ酸の強くプラスの効果があるが、最善の結果は、基礎培地及びフィード培地の両方において最適化されたアミノ酸比を使用した場合に達成された。
【0165】
生存率のプロファイルは、全ての培養液について5日目に96%から急激に減少するという類似した傾向を追随した(
図4E)。生細胞の最大濃度は5~6日目に3.8~9.6×10
6個の細胞/mlの範囲であった(
図4D)。一般的に、最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地は、生細胞の濃度を上昇させた(
図4D)。この結果は、改善された生存率と一致した(
図4E)。
【0166】
さらに、基礎培地中の最適化されたアミノ酸比は、細胞増殖に対してプラスの効果を及ぼした。これは、5日目の、最適化されたアミノ酸比を有する(7.27×106個の細胞/ml、塗りつぶされた丸)又は有さない(3.8×106個の細胞/ml、塗りつぶされた三角)基礎培地及び最適化されたアミノ酸比を有さないフィード培地中で培養された細胞についての生細胞濃度の比較から解釈され得る。この結果は、最大増殖成績に対する最適化された基礎培地のプラスの効果を示す。
【0167】
最適なアミノ酸比を有するフィード培地を使用した場合、生細胞の最大濃度は、最適化されたアミノ酸比を有さない(9.6×10
6個の細胞/ml、塗りつぶされた菱形)及び最適化されたアミノ酸比を有する(7.9×10
6個の細胞/ml、塗りつぶされた四角)基礎培地において同等であった。基礎培地中の最適化されたアミノ酸比及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比と共に培養された細胞の最大増殖(7.9×10
6個の細胞/ml、塗りつぶされた四角)、又はフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を伴わずに培養された細胞の最大増殖(7.2×10
6個の細胞/ml、塗りつぶされ丸)を比較すると、フィード効果を表わすことができる。同様に、最適化されたアミノ酸比を有さない基礎培地を使用した場合、生細胞の最大濃度は、最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地中で培養された細胞では9.6×10
6個の細胞/mlであり、これは、最適化されたアミノ酸比を有さないフィード培地中で培養された細胞では3.9×10
6個の細胞/mlまで減少した(
図4D)。
【0168】
一般的に、生細胞の増殖に良く一致する2つの主要な状況がある。第一に、37~40%の最も高い残留生存率が、フィード中に最適化されたアミノ酸比を有する培養液(基礎培地中に最適化されたアミノ酸比を有する又は有さない)について9日目に達成された。第二に、5日目以降の生存率の下降は、フィード培地中に最適化されたアミノ酸を有する培養液では約1日間シフトした。これらの結果は明らかに、より高い生存率及び生存率プロファイルの延長を、最適化された基礎培地及びフィード培地を用いて得ることができることを示す。
【0169】
実施例4C
最適化されたアミノ酸比を有する及び有さない基礎培地及びフィード培地の影響をさらに、スケールアップし完全に制御された2Lのバイオリアクターシステムにおいて標準的な流加フォーマットで試験した。
【0170】
2Lのバイオリアクターシステムは、商業的製造のための大規模なバイオリアクターのための代表的なモデルである(12,000L以下及びそれを超える規模)。30ml/L/日の標準的な流加フィード速度を適用し、フィード溶液を2日目から開始して14日目まで連続モードでフィードした。他のプロセスパラメーター、すなわち、酸素導入、剪断力、CO2除去、pH範囲、撹拌、及び容量あたりのパワー入力を、本発明者らの経験に基づいて成功裡のスケールアップのために本発明者らのプラットフォーム条件に設定した。培地の組合せを2連で(N=2)試験した。
【0171】
材料及び方法:
実験を、1.8Lの開始容量で完全に制御された2Lのバイオリアクターシステムで行なった。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、基礎培地6.2(最適化されたアミノ酸比)又は基礎培地6.3(RPMIアミノ酸比)及びフィード培地6.2.1(最適化されたアミノ酸比及び65g/lの適応させたグルコース濃度)又はフィード培地6.3.1(RPMIアミノ酸比及び65g/lの適応させたグルコース濃度)を使用して全ての培養液中に0.3×106個の細胞/mlで播種した。バイオリアクターを、全培養期間中36.5℃でインキュベートし、溶存CO2を(0~3日目には6.95、及び3日目から14日目まで6.80)+/-0.20のpH設定点に基づいて2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。
【0172】
グルコースの過剰フィードによって引き起こされる浸透圧を最小限にするために、しかしまた必要であればストック溶液からのグルコースの添加回数を減少させるために、フィード溶液中のグルコース濃度を65g/lの最終濃度に最適化した。フィード培地6.2及びフィード培地6.2.1の設計は、最終グルコース濃度を除いて同一であった。同様に、フィード培地6.3及びフィード培地6.3.1は、最終グルコース濃度を除いて同一であった。
【0173】
生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度は、試料の間隔に従って上記のように測定された。フィード培地は、グルコースを含有していたがL-グルタミンは全く含有せず、したがってグルタミンの濃度を0.1~0.4g/lの範囲内に維持するために、グルタミンは必要に応じてストック溶液から添加された。グルコースレベルは、全培養期間中において2g/Lを超えるように維持されるべきである。実験は2連で(N=2)行なわれた。
【0174】
結果:
一般的に、2Lシステムの結果は、最大力価及び生存可能な増殖に関して、以前の振盪フラスコ実験からの所見と良く一致した。例えば、2213mg/Lという産物の最大濃度(塗りつぶされた四角)は、基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸を用いて達成された(
図4I)。フィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有さない細胞の培養により、
図4Iに示されているように産物の最大濃度は1654mg/Lまで減少した(塗りつぶされた丸)。最適化されたアミノ酸比を有さない基礎培地中での細胞の培養は、産物の形成を強く遅延させた。2213mg/L(基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比)対2144mg/L(フィード培地中にのみ最適化されたアミノ酸比)という産物の同じような最大濃度が、最適化されたフィード培地のプラスの効果に因り得られた。しかしながら、産物の形成動態は、最適化されていない基礎培地の影響に因り明確に異なっていた。したがって、最適な産物の濃度のために、最適化されたアミノ酸比は、基礎培地及びフィード培地の両方に存在することが必要とされる。
【0175】
これらの観察は、生細胞の濃度と良く一致した。12.7×10
6個の細胞/mlという生細胞の最大ピークは、基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を用いて達成され、これに対し、基礎培地又はフィード培地のいずれかに最適化されていないアミノ酸比を用いると8.7×10
6個の細胞/mlという細胞の最大ピークとなった(
図4G)。12.7×10
6個の細胞/mlという生存可能な増殖の最大ピークは、流加培養のための基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比の生細胞濃度に対する複合効果に起因していた。さらに、基礎培地中に最適化されたアミノ酸を有さずフィード培地中に最適化されたアミノ酸を有する培養液と、基礎培地中に最適化されたアミノ酸を有しフィード培地中に最適化されたアミノ酸を有さない培養液の、4日目から9日目までの指数関数的増殖期を比較すると、基礎培地の効果及びフィードの効果を認めることができる。
図4Gは、最適化された基礎培地についての増殖動態は、最適化されていない基礎培地と比較してより急勾配であったが、どちらの培養液も約8.6×10
6個の細胞/mlという同じような最大細胞ピークを達成したことを示す。これに対し、最適化されたフィード培地によるものではなく、最適化されていない基礎培地によるより緩徐な増殖動態により、生細胞は10日目から14日目に延長された。
【0176】
生存率のプロファイルは、上記に考察されているような類似した傾向を追随した。より長期間の実行時間にわたる最大生存率は、フィード効果に起因し得る(14日目における79%と49~54%の生存率を比較)(
図4H)。基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有する細胞、又は基礎培地中に最適化されたアミノ酸比を有する細胞、及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有さない細胞の生存率プロファイルは、類似した傾向を追随した。代謝物及びpHなどの他の測定されたパラメーターは全く有意差を示さなかった。
【0177】
実施例4D
基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比の影響を、CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を使用して、4つ全ての組合せについて、RPMI環境において流加方式でさらに調べた(RPMI基礎培地3.9及びRPMIフィード培地3中の最適化されたアミノ酸比、又はRPMI基礎培地3.1及びRPMIフィード培地2中の最適化されていないアミノ酸比RPMIアミノ酸比)。RPMIは、既知の組成を有する市販の培地である。
【0178】
RPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地中のアミノ酸総濃度を、アミノ酸比を本発明の最適化されたアミノ酸比に調整しつつ増加させた。観察された効果が単に上昇したアミノ酸総濃度に起因していたことを除外するために、別の実験においてRPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地を、様々なアミノ酸比を用いて調整した(使用済み培地がアミノ酸比を最適化した)。
【0179】
材料及び方法:
この実験に使用されるRPMI基礎培地は、Moore及び共同研究者によって1966年にロズウェルパーク記念研究所において初めて開発された、市販されているRPMI培地R8755(メディアテックカタログ番号90022PB又はシグマアルドリッチカタログ番号R8755)に基づく(SAFC, Biosciences社の製品情報)。無血清での使用のために、それは、表4に示されているように補充されている。
【0180】
この実験は、100mlの開始容量を用いて250mlの振盪フラスコで行なわれた。全ての培養液は、振盪フラスコ内の特定の培地組成物中に0.3×106個の細胞/mlで播種された:対照RPMI培地3.1(最適化されたアミノ酸比を有さない、アミノ酸総量10.0mM)、RPMI培地3.9(最適化されたアミノ酸比を有する、アミノ酸総量15.2mM)、RPMIフィード培地-2(最適化されたアミノ酸比を有さない、アミノ酸総量124mM)、RPMIフィード培地-3(最適化されたアミノ酸比を有する、アミノ酸総量538mM)、RPMI培地3.5(RPMI培地3.1+アミノ酸、使用済み培地による最適化、アミノ酸総量12mM)、RPMIフィード培地3.5(RPMIフィード-2+アミノ酸、使用済み培地による最適化、アミノ酸総量140mM)。使用済み培地による基礎培地の最適化のために添加された7つのアミノ酸は、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、及びL-チロシン×2Na×2H2O及びL-バリンであり、各々30mg/lで添加され、そして使用済み培地によるフィード培地の最適化のために添加されたアミノ酸は、L-システイン、L-メチオニン、L-プロリン、L-トレオニン、L-チロシン×2Na×2H2O及びL-バリンであり、各々360mg/lで添加された。基礎培地3.1、3.5及び3.9は、培養開始時に初期増殖を支援するために植物加水分解物を用いて強化された。この理由から、加水分解物は、フィード溶液には提供されなかった。上記の実験から解釈され得るように(培地4及び培地5参照)、RPMIをベースとした基礎培地はまた、Hypepを用いずに使用してもよい。
【0181】
振盪フラスコをインキュベーター(5%CO2雰囲気は0日目から3日目まで提供され、次いで培養終了時まで3%CO2が提供された)中で36.5℃でインキュベートした。フィード溶液を、2日目から4日目までは30ml/L/日のフィード速度で2日おきに、5日目から8日目までは3ml/L/日の減速したフィード速度で添加した。グルコースを必要に応じてフィードして、培養全期間におよび2~4g/lの実際のグルコース濃度を維持した。細胞総数、生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を、培養終了時まで2日おきに測定し、実験の進行をモニタリング及び制御した。実験を2連で(N=2)行なった。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
使用済み培地の分析では、市販のRPMI培地を改変し、そして様々な栄養補給を用いて強化することにより、流加バッチ実験における栄養制限を回避しそして改善された増殖及び産物の形成を確保した。この目的のために、アミノ酸サプリメントを培地3.1のための培地レシピに従って培地に添加した。L-アルギニン以外についてのアミノ酸分析を、4日目及び7日目に細胞培養上清から採取された試料について行なった。結果として、以下の7つのアミノ酸の濃度は15mg/L未満であったことが判明した:L-バリン、L-トレオニン、L-プロリン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、及びL-トリプトファン。先行技術の使用済み培地の分析に基づき、これらのアミノ酸が基礎培地(RPMI培地3.5)に追加的に補充された。具体的には、アミノ酸のL-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリンが各々30mg/Lずつ基礎培地にさらに提供された(表4及び4a)。フィード培地では、アミノ酸のL-メチオニン、L-トレオニン、L-プロリン、L-シスチン、L-チロシン、及びL-バリンが各々360mg/Lずつさらに提供された(表5及び6)。実験は、最適化されたアミノ酸比を有する又は有さないRPMI基礎細胞培養培地、及び最適化されたアミノ酸比を有する及び有さないRPMIフィード培地を使用して基本的に上記のように実施された。さらに細胞を、RPMI基礎細胞培養培地又はRPMIフィード培地のいずれか又はその両方に使用済みアミノ酸比を含むRPMI基礎培地及びフィード培地と共にインキュベートした。
【0188】
結果:
要約すると、流加方式での細胞培養成績に対する、RPMI基礎細胞培養培地及び/又はRPMIフィード培地中の最適化されたアミノ酸比の効果を、リツキシマブ抗体を産生するCHO2(CHO-DG44)細胞を使用して調べた。具体的には、細胞生存率(
図4L、O)、生細胞(
図4K、N)、産物の力価(
図4M、P)、及び乳酸塩の濃度(データは示されていない)をモニタリングした。
【0189】
最適化されたフィード培地又は基礎培地の主な効果は、
図4Mに示されているように、最終産物の濃度及びまた産物の動態(曲線の勾配)にも見ることができた。
【0190】
例えば、どちらも最適化されたアミノ酸比を含むRPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地中で培養された細胞の産物の力価(259mg/L)は、
図4Mに示されているように、最適化されたアミノ酸比を有さないRPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地中で培養された対照細胞(162mg/L)と比較してより高かった。基礎培地中に最適化されたアミノ酸比を有するが、フィード培地中には最適化されていないアミノ酸比を有する培養液中では、産物の最大力価は171mg/mlまで減少した。興味深いことに、フィード培地中の最適化されたアミノ酸比の効果は、4日目まで類似し(167mg/L対161mg/L)、その後の培養日においてしか異なっていなかった。さらに、最適化されていない基礎培地の場合には、産物の形成及び曲線の動態(曲線の勾配)は遅延し、その結果、8日目に約152~162mg/Lという産物の最大濃度がもたらされた(基礎培地中には最適化されたアミノ酸比を有さず、そしてフィード培地中には最適化されたアミノ酸を有する又は有さない)。
【0191】
RPMI培地系(RPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地)を使用して生細胞の濃度及び生存率について同じようなプラスの効果を観察することができた。最も高い生細胞の濃度(生細胞の最大濃度は約3.5×10
6個の細胞/mlである)(
図4K)及び最も高い細胞生存率(
図4L)が、最適化されたアミノ酸比をRPMI基礎細胞培養培地及びRPMIフィード培地の両方に使用した場合に達成された。最適化されたアミノ酸比が基礎細胞培養培地にのみ適用された場合には、生細胞の濃度(
図4K)及び生存率(
図4L)の急激な減少が6日目以降に観察された。生細胞の最大濃度は、最適化されたアミノ酸を有さない基礎細胞培養培地及び最適化されたアミノ酸比を有するフィード培地中で培養された細胞においては低く(2.2×10
6個の細胞/ml)、どちらも最適化されたアミノ酸比を有さない基礎細胞培養培地及びフィード培地中で培養された細胞においてはさらにより低かった(1.70×10
6個の細胞/ml以下の生存可能な最大増殖、4日目)。要約すると、この例は、RPMIをベースとした培地中の細胞培養の成績、すなわち産物の力価、生細胞の濃度、及び細胞生存率に対する最適化されたアミノ酸比の優越性を示す。
【0192】
同じような結果が、同じ培地、及び使用済み培地の分析に従ってアミノ酸の補充された培地を含む他の実験においても得られた。
【0193】
上記されているように、RPMI基礎細胞培養培地中の最適化されたアミノ酸比を調整することにより、改変されていないRPMI培地系と比較して産物の力価は有意に改善された。基礎培地及びフィード培地の両方に最適化されたアミノ酸比を含む細胞培養液中の産物の力価は、RPMI中に最適化されたアミノ酸比の実行を全く行わなかった対照と比較してより高かった(0.406g/L対0.173g/Lの力価)。したがって、基礎培地中及びフィード培地中の両方における最適化されたアミノ酸比によるアミノ酸比の調整によって、産物の力価は、RPMIなどの市販の培地系の約2.3倍増加した。最適化されたアミノ酸比を含むRPMI基礎細胞培養培地及びアミノ酸の調整されていないRPMIフィード培地中の産物の力価は、基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を実行していない対照と比較してより高かった(0.267g/L対0.173g/Lの力価)。RPMIフィード培地中にのみ最適化されたアミノ酸比を有する培養液中の産物の力価は、基礎培地又はフィード培地のいずれかにおいて新規なアミノ酸比が実行されていない対照とほぼ同等であった(0.159g/L対0.173g/Lの力価)。ここでも、この結果は、最適化されたアミノ酸比が、培養実験の開始時から、すなわち基礎培地及びフィード培地の両方に適用されるべきであることを実証する。この設定では、フィード培地中のみへの最適化されたアミノ酸比の適用は、産物の最大力価を達成するには十分ではなかった。
【0194】
基礎培地中及びフィード培地中の両方において使用済み培地のアミノ酸比を有するRPMI中の産物の力価(0.302g/L、白抜きの四角)は、アミノ酸比が全く調整されていない対照(0.173g/L、塗りつぶされた菱形)と比較してより高かったが、RPMI培地及びRPMIフィード培地中の最適化されたアミノ酸比と比較してより低かった(0.406g/L、塗りつぶされた四角)。さらに、RPMI基礎培地中の使用済み培地によるアミノ酸の調整はされているがRPMIフィード培地中のアミノ酸は調整されていない産物の力価(0.193g/L、白抜きの丸)は、基礎培地又はフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有さない対照(0.173g/L、塗りつぶされた菱形)と比較してより高かったが、RPMI基礎培養培地のみにおける最適化されたアミノ酸比(力価0.267g/L、塗りつぶされた丸)と比較して明らかに低かった(
図4P)。
【0195】
したがって、基礎細胞培養培地及びフィード培地中の使用済み培地によるアミノ酸比の調整の効果(最大力価は302mg/L)は、基礎細胞培養培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比の全体的な細胞培養成績に対する影響と比較して低かった(最大力価は406mg/L)。基礎培地中のみの使用済み培地によるアミノ酸比が調整されフィード培地中のは調整されていないものについては、193mg/Lの最大力価しか得られなかった。
【0196】
力価によると、全ての細胞培養液について達成された生細胞濃度は類似の傾向を追随し、最大細胞ピークは4日目であった。基礎培地中に全く補充を行なわなかった培養液を除いて(1.7~2×10
6個の細胞/ml)、大半の培養液は、約3.5×10
6個の細胞/mlという生細胞の最大濃度を有する。時間の経過と共に最も多い生細胞数を示す生存可能な増殖は、基礎培地及びフィード培地の両方における最適化されたアミノ酸比における細胞を用いて達成された。この結果は、
図4N及びPに示されているように最適化された基礎培地と最適化されたフィードの複合効果を実証する。
【0197】
生存率のプロファイル(
図4O)は類似の傾向を追随し、基礎培地及びフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有する培養液を除いて、大半の培養液において4日目に下降を示した。この所見は
図4Nに示されるような生存可能な増殖パターンと良く一致する。代謝物及びpHなどの他のパラメーターに対する培地の有意な影響は全く観察されなかった。
【0198】
実施例5
特定のアミノ酸が、産物の最大濃度、生細胞の濃度、及び生存率に関して細胞代謝に対して影響を及ぼすことが判明した。これらのアミノ酸を変化させる影響をさらに、無血清で組成が化学的に明らかである培地を用いて流加方式で組み合わせて分析した。a)L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン(5つのアミノ酸)、及びb)L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジン(7つのアミノ酸)という2つのアミノ酸群内のアミノ酸の変化を調べた。次いで、基礎培地及びフィード培地中のアミノ酸を、対照(基礎培地6.4.0.1及びフィード培地6.4)由来の最適化されたアミノ酸比に基づきプラス又はマイナスを交互にする方式で+/-20%及び+/-40%だけ変化させた。交互にする方式は、同じ方向に20%又は40%(モル基準で計算される)だけ、基礎培地及びフィード培地中の第一のアミノ酸を増加させ、第二のアミノ酸を減少させ、第三のアミノ酸を増加させるなどを意味する。交互にする方式は、小文字(例えばhis、tyrの-20%又は-40%の減少)及び大文字(例えばHIS、TYRの+20%又は+40%の増加)の使用によって表わされる。最大増殖及び産物の形成に関して強力な細胞応答を誘起するために、いくつかの実験において栄養フィード速度を減速させた。
【0199】
材料及び方法:
CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、標準的なフィード速度及び減速したフィード速度で培地6.4.0.1及びフィード培地6.4(最適化されたアミノ酸比を有する)中で流加培養した。実験を、a)基礎培地及びフィード培地中の5つのアミノ酸の+/-40%の変化、b)基礎培地及びフィード培地中の7つのアミノ酸の+/-40%の変化、及びc)基礎培地及びフィード培地中の7つのアミノ酸の+/-20%又は+/-40%の変化という、アミノ酸の変化の組合せを減速したフィード速度で試験する3つのアプローチに分けた。
【0200】
5つのアミノ酸の設定では、L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシンのアミノ酸を、基礎培地及びフィード培地の両方に最適化されたアミノ酸比を有する対照と比較して、プラス又はマイナスを交互にする方式(大文字又は小文字のアミノ酸)で+/-40%変化させた。使用された培地は:基礎培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4.3(PHE、val、LEU、thr、ILEの5つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.4(phe、VAL、leu、THR、ileの5つのアミノ酸を+/40%変化させた、マイナス)であった。
【0201】
7つのアミノ酸の設定では、以下の培地を使用した:基礎培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、基礎培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、TYR、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)、フィード培地6.4.5(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.7(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、プラス)、フィード培地6.4.8(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた、マイナス)。溶解度の理由から、L-チロシンはフィード培地6.4.8の交互方式においては増加させなかったことを付け加えるべきであり、これは7アミノ酸の+40%の変化のみに関連し、20%のアミノ酸の変化には関連していなかった。上昇したチロシン濃度を欠失している、フィード培地6.4.8を除いて、フィード培地中に使用されるアミノ酸の変化は、全ての培養液中の基礎培地中のものと同じであった。
【0202】
実験は、14mlの開始容量を用いて小型化バイオリアクターシステムで行なわれた。全ての細胞培養液中でCHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、流加培養のために基礎培地中に0.3×10
6個の細胞/mlで播種した。バイオリアクターを、全培養期間中36.5℃でインキュベートし、溶存pCO
2を(7.20~6.80)+/-0.2のpH設定点に基づいて2~15%の間に制御して毒性濃度を防いだ。30mL/L/日の標準的なフィード速度を、+/-40%だけ5つのアミノ酸が変化した培養液(
図5A~C)及び+/-40%だけ7つのアミノ酸が変化した培養液(
図5D~F)に適用した。1~5日目における20ml/L/日及び6~11日目における8ml/L/日という減速したフィード速度を、+/-20%及び+/-40%だけ7つのアミノ酸が変化した培養液に適用した(
図G~I)。フィード溶液を連続的に培養液に加え、そしてグルコースの過剰フィードを防ぎ、増加したグルコースの添加によって引き起こされる浸透圧を最小限にするために注意を払った。例えば、フィード培地6.4.3、フィード培地6.4.4、フィード培地6.4.7、又はフィード培地6.4.8は、42g/lという低下したグルコース濃度を含有していた。全てのフィード培地がグルコースを含有していたがL-グルタミンは含有せず、したがって、0.1~0.4g/lの範囲内にグルタミン濃度が維持されるように必要に応じてストック溶液からグルタミンを添加した。全培養期間中のグルコースレベルが2g/l超を維持するように必要に応じてグルコースも添加された。生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を、試料の間隔に従って上記のように測定した。実験及び対照は2連で(N=2)行なわれた。
【0203】
結果:
その他の点では最適なアミノ酸比を有する培地中における、5つのアミノ酸又は7つのアミノ酸の変化の組合せ(標準的なフィード速度で+/-40%)及び特に減速したフィード速度での7つのアミノ酸の変化の組合せ(減速したフィード速度で+/-20%及び+/-40%の7つのアミノ酸)により、細胞培養液中の生産性及び生存可能な増殖は減少した。
【0204】
5つのアミノ酸の変化:1909mg/Lという産物の最も高い最大濃度が、対照培養液(基礎培地及びフィード培地中の最適化されたアミノ酸比)中において10日目に達成された(
図5C)。5つのアミノ酸の変化について、産物の最大濃度は、5つのアミノ酸を両方向に交互に変化させることによって、それぞれ、1523mg/L(phe、VAL、leu、THR、ile、+/-40%、交互方式)及び1799mg/L(PHE、val、LEU、thr、ILE、+/-40%、交互方式)まで減少した。興味深いことに、産物の形成は、10日目の産物の力価から分かるように、1909mg/L(対照)対1523mg/L対1498mg/L(それぞれ、PHE、val、LEU、thr、ILEと、phe、VAL、leu、THR、ile、+/-40%、交互方式)という異なる動態(曲線の勾配)を示した。5つのアミノ酸の+/-20%の変化の組合せは、対照培養液よりほんの僅かに減少した(phe、VAL、leu、THR、Ileを+/-20%変化させた、10日目に1806mg/L)又は対照培養液と同等(PHE、val、LEU、thr、ILEを+/-20%変化させた、12日目に2058mg/L)であった産物の最大濃度を示した。結果は、5つのアミノ酸の組合せを+/-20%のみ変化させただけでは、産物の形成又は産物の最大力価に対して有意な影響を全く及ぼさなかったことを示す。
【0205】
生細胞の濃度プロファイルは、全ての培養液において類似した傾向を追随し(対照と試験培養液では+/-40%変化していた)、8日目に生細胞の最大ピーク密度は13.8~19.4×10
6個の細胞/mlの範囲内であった(
図5A)。19.4×10
6個の細胞/mlという生細胞の最大密度が、基礎培地(基礎培地6.4.0.1)及びフィード培地(フィード培地6.4)中に最適化されたアミノ酸比を有する対照培養液中に観察された。アミノ酸比を変化させた培養液中の生細胞の最大濃度は、かなり低かった(PHE、val、LEU、thr、ILEは+/-40%、生細胞の濃度は13.8×10
6個の細胞/ml;phe、VAL、leu、THR、ile、+/-40%、生細胞の濃度は15.3×10
6個の細胞/ml)(
図5A)。アミノ酸(5つのアミノ酸)を+/-20%変化させた試験培養液の生存可能な増殖は、最適化されたアミノ酸比を有する対照培養液と同等であった(データは示されていない)。
【0206】
さらに、全ての培養液の生存率プロファイルはかなり同等であり、全ての培養液において8日目から始まる生存率の低下を示した。興味深いことに、5つのアミノ酸(PHE、val、LEU、thr、ILE)のアミノ酸比を+/-40%変化させた培養液の1つにおいて、培養期間終了時(11~14日目)に生存率は56%というかなり高いままであり、これに対して、14日目の対照培養液では生存率は13%であった(
図5B)。5つのアミノ酸のアミノ酸比を+/-20%変化させた試験培養液については、全ての曲線が対照と同等であった(データは示されていない)。
【0207】
7つのアミノ酸の変化:類似の結果が、7つのアミノ酸(L-フェニルアラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-チロシン、L-リジン)の+/-40%の変化で得られた。例えば、10日目における1618mg/L(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysを+/-40%、交互方式)又は1456mg/L(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSを/-40%、交互方式)という産物の濃度は、10日目の対照培養液中で測定された1909mg/Lという産物の最大濃度と比較して減少していた(
図5F)。この結果は、5つのアミノ酸の変化で得られた結果と良く一致した。7つのアミノ酸を+/-20%だけ変化させることにより、10日目に1909mg/lという産物の最大濃度を有する対照培養液と比較して、同等な1861mg/lという産物の最大濃度(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-20%変化)又は1622mg/lという僅かに減少した産物の最大濃度(phe、VAL、leu、THR、ile、tyr、lysの7つのアミノ酸を+/-20%変化、マイナスな交互方式)がもたらされた(データは示されていない)。このことは、7つのアミノ酸を+/-20%変化させるだけでは、細胞培養液中の産物の形成及び産物の最大濃度に対して僅かな影響しか及ぼさなかったことを意味する。
【0208】
生細胞の最大濃度は、8日目において14.4~19.4×10
6個の細胞/mlの範囲であった(
図5D)。7つの変化したアミノ酸を有する試験培養液の生存可能な増殖は、+/-40%変化させた5つの変化させたアミノ酸を含む培地を含む培養液の生存可能な増殖と同等であった(
図5Aと5Dを比較)。同様に、+/-40%変化させた7つのアミノ酸についての生存率は、40%変化させた5つのアミノ酸を有する培養液と同等であった(
図5Bと5Eを比較)。ここでも1つの培養液(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYSの7つのアミノ酸を+/-40%変化させた)は、培養終了時の対照と比較して45%というより高い生存率を示した。
【0209】
7つのアミノ酸を+/-20%変化させることによって、対照培養液をはじめとする全ての培養液について同等な増殖プロファイルが得られ、8日目に18.9~20.1×106個の細胞/mlという同じような最大ピーク細胞密度が得られた(データは示されていない)。また、生存率プロファイルは全ての培養液において同等であり、培養8日目まで95%というかなり高いままであったが、その後、培養期間終了時に30%未満へと下降した(データは示されていない)。
【0210】
減速したフィード速度での7つのアミノ酸の変化:効果を増強するために、細胞を減速したフィード速度を使用して流加方式でさらに培養した。標準的なフィード速度を有する対照培養液(培地6.4.0.1及びフィード培地6.4、標準的なフィード)と、減速したフィード速度を有する対照培養液(減速したフィード速度での培地6.4.0.1及びフィード培地6.4)と、減速したフィード速度での+/-20%又は+/-40%変化させた7つのアミノ酸を含む試験培養液とを比較した。標準的なフィード速度での対照培養液中の産物の最大濃度は10日目に1909mg/l(12日目に1782mg/L、塗りつぶされた四角)であり、減速したフィード速度での対照培養液については1611mg/l(12日目、塗りつぶされた丸)であった(
図5I)。7つのアミノ酸(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYS;減速したフィード速度)の濃度を20%変化させることにより、1448mg/lという産物の最大濃度(12日目、塗りつぶされた十字形)が得られた。7つのアミノ酸を+/-40%変化させた培養液中のこの力価は、12日目に1269mg/Lという産物の最大濃度(phe、VAL、leu、THR、ile、Tyr、lys;減速したフィード速度、塗りつぶされた三角)又は999mg/L(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYS;減速したフィード速度、塗りつぶされたX)へとさらに減少した。したがって、7つの重要なアミノ酸のアミノ酸比の変化により、対照培養液と比較して生産性は低下し、そしてこれは、フィード培地を減速したフィード速度で添加した場合にはより顕著であった。
【0211】
生細胞の濃度は、フィード速度に関係なく同等な傾向を示した(
図5Dと5Gを比較)。生細胞の濃度は、6日目から8日目までに最大の細胞ピークを示した(
図5G)。例えば、対照培養液は、標準的なフィード速度では19.4×10
6個の細胞/mlという生細胞の最大濃度を示し、これは減速したフィード速度では16.5×10
6個の細胞/mlまで僅かに減少した。7つのアミノ酸(PHE、val、LEU、thr、ILE、tyr、LYS)を+/-20%変化させた培養液の最大細胞濃度は、約13.5×10
6個の細胞/mlであり、7つのアミノ酸を+/-40%変化させた培養液では約11×10
6個の細胞/mlでさらに低かった。
【0212】
全ての培養液の生存率プロファイルは類似の傾向を追随し、明らかな低下が8日目から10日目に始まった(
図5H)。グルコース、モル浸透圧濃度、又はpHの進行などの他のパラメーターは、対照培養液と比較して全く有意差を示さなかった。
【0213】
実施例6
この流加バッチ実験において、細胞培養液の成績に対する最適化された培地及びフィード培地の影響が、薬学的に関連性のあるタンパク質の一例としての様々なモノクローナル抗体又は融合タンパク質を産生する、いくつかのCHO-DG44細胞株において実証された。目的は、最適化された細胞培養培地(基礎培地中に最適化されたアミノ酸比を有し、そしてフィード培地中に最適化されたアミノ酸比を有する)が、多目的な製造施設の生産性の向上に明らかに寄与することを実証することである。
【0214】
材料及び方法:
この実験は、15mlの開始容量で小型化バイオリアクターシステムにおいて行なわれた。様々な治療用分子を発現している全てのCHO-DG44細胞株を、どちらも最適化されたアミノ酸比を有する基礎培地6.2及びフィード培地6.2中に0.3×106個の細胞/mlで播種した。CHO-DG44細胞において発現される治療用分子は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するリツキシマブ、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するmAb6、mAb5、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するFc-融合タンパク質であった。バイオリアクターを、全培養期間中36.5℃でインキュベートし、溶存CO2を3日目以降から6.95(+/-0.15)及び6.80+/-0.15のpH設定点に基づいて2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。この流加バッチの適用のために、成功裡のスケールアップのためのプラットフォームプロセスを適用し、これには30ml/L/日という標準的なフィード速度を含んでいた。このことは、栄養フィード溶液が、全培養期間にわたり1日目から培養終了時まで1日1回添加されたことを意味する。グルタミン濃度を0.1~0.4g/lの範囲内に維持するために、必要に応じてストック溶液からグルタミンを添加した。全培養期間にわたりグルコースレベルを0.6g/l超に維持するために、必要に応じてグルコースも添加された。生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を上記のように測定した。実験及び対照は2連で(N=2)行なわれた。
【0215】
結果:
様々な治療用タンパク質を発現しているいくつかのCHO-DG44細胞株の産物の濃度は、全てのタンパク質について高かったが、僅かに異なっていた。産物の最大濃度は、mAb6産生細胞については11日目に8213mg/L(
図6C)、mAb5産生細胞については11日目に4655mg/L(
図6C)、Fc-融合タンパク質及びリツキシマブ産生細胞については11日目に1778~2061mg/L(
図6D)と異なっていた。1.7g/lから8.2g/l超までの範囲におよぶ力価のこの変動は、変動性の生細胞濃度及び生存率を伴う。これらの結果は、多種多様な異なる組換えタンパク質を発現している様々なCHO-DG44細胞は、流加方式で最適化された培養培地中で成長及び増殖することができたことを実証する(
図6A~D)。
【0216】
実施例7
細胞培養の成績、具体的には細胞増殖及び産物の形成に対する、クエン酸鉄コリンの様々な濃度の影響を、振盪フラスコ実験において培地6.2aを使用して調べた。(i)クエン酸鉄コリンは産物の力価を上昇させ、(ii)新規な化合物であるクエン酸鉄コリンは、例えば、ピロリン酸鉄、リン酸鉄、及びクエン酸鉄などの一般的に使用される鉄担体と比較して優れていることが判明した。
【0217】
材料及び方法:
実験を、100mlの開始容量で250mlの振盪フラスコにおいて行なった。全ての培養液は、3つの異なる濃度(0.2g/l、1g/l、又は2g/l)のクエン酸鉄コリン、又はピロリン酸鉄(0.5g/l、0.8g/l、又は1.3g/l)又はリン酸鉄(0.3g/l、0.5g/l、0.7g/l)をほぼ等モル量で含有している基礎培地6.2a、及びクエン酸鉄コリンを含まないフィード培地6.2a中に0.3×106個の細胞/ml(リツキシマブを産生するCHO2(CHO-DG44)細胞)で播種した。ピロリン酸鉄及びリン酸鉄の濃度範囲は、クエン酸鉄コリンと同じ範囲内(モル基準で)になるように選択された。例えば、1.0g/L(2.81d/Lの力価)のクエン酸鉄コリンは、0.3g/L(2.29g/Lの力価)のリン酸鉄とほぼ等モルであり、そして1.3g/L(2.26g/L)のピロリン酸鉄とほぼ等モルである。
【0218】
基礎培地6.2aは、いくつかの必須ではない補因子及びヌクレオチドをさらに含み、コハク酸を全く含有せず、プトレシンを僅か4.8mg/lだけ含み、アミノ酸総濃度は44mMではなく40mMであるという以外は、基礎培地6.2とほぼ同一である前駆培地である。さらにグルタミンが、より少量添加され、その結果、イソロイシンに対する比は37.42となった。
【0219】
平行実験において、CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、様々な濃度(0g/l、0.2g/l、0.4g/l、又は2g/l)のクエン酸鉄コリンを有する基礎培地6.2a、及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを含有しているフィード培地6.2a、又は0.1g/lのクエン酸鉄を有する基礎培地6.2a、及び0.25g/lのクエン酸鉄を含有しているフィード培地6.2a中で培養した。クエン酸鉄の濃度(0.1g/l及び0.25g/l)は、基礎培地中の0.2g/l及びフィード培地中の0.56g/lのクエン酸鉄コリンにほぼ等しくなるように選択された。
【0220】
フィード培地6.2aは、いくつかの必須ではない補因子及びヌクレオチド及び僅かにより多い重炭酸ナトリウムをさらに含み、プトレシンを僅か33.02mg/lだけ含有し、アミノ酸総濃度は508mMではなく511mMであるという以外は、フィード培地6.2とほぼ同一である前駆培地である。さらにアラニンが培地中にさらに存在し、イソロイシンに対する比は0.15であった。
【0221】
250mlのフラスコ中に60mlの開始容量を有する振盪フラスコを、インキュベーター(10%CO2雰囲気が0日目から3日目に提供され、その後、3%CO2が1日間、培養終了時まで0%CO2が提供された)中で37℃でインキュベートした。フィード溶液を2日目に開始して30ml/L/日のフィード速度で毎日添加した。全培養期間におよび実際のグルコース濃度を2~4g/lに維持するために必要に応じてグルコースをフィードした。細胞総数、生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を培養終了時まで2日おきに測定して、実験の進行をモニタリング及び制御した。実験は2連で(N=2)行なわれた。
【0222】
結果:
1.0g/Lのクエン酸鉄コリンを含む産物の力価は、0.2g/Lのクエン酸鉄コリンでの対照よりも有意により高く(対照での2.07g/Lの力価に対して2.81g/Lの力価)、2.0g/lのクエン酸鉄コリンを有する産物の力価よりもさらに僅かにより高かった(2.67g/Lの力価)(
図7B)。さらに、産物の力価は、ほぼ等モル量のピロリン酸鉄(2.24g/Lから2.37g/Lの力価)又はリン酸鉄(2.29g/Lから2.38g/Lの力価)と比較して、2.0g/L又は1.0g/L(2.67g/L又は2.81g/の力価)のクエン酸鉄コリンにおいてはるかにより高かった(
図7B)。
【0223】
生細胞の最大濃度は、基礎培地中に2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを用いて達成され、その結果、対照(基礎培地中に0.2g/Lのクエン酸鉄コリン)及び様々な濃度で試験された最も一般的に使用される鉄担体と比較して、改善された細胞培養の成績がもたらされた(
図7A)。鉄担体としてリン酸鉄及びピロリン酸鉄を含む基礎培地中で培養された細胞の生細胞濃度は10日目から11日目に急激に下降し、細胞培養の成績に対してマイナスな影響があった。
【0224】
類似の結果が平行実験において認められた。2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する産物の力価は、クエン酸鉄コリンを含まない陰性対照培養液(陰性対照における2.19g/Lの力価に対して、3.06g/Lの力価)、又は基礎培地中に0.4g/L(2.87g/L)若しくは0.2g/L(2.66g/L)でクエン酸鉄コリンを有する培養液よりも高かった(
図7C)。より低いクエン酸鉄コリン濃度(1g/l未満)では、効果は濃度依存的のようであり、クエン酸鉄コリンが0.2g/Lで添加された場合、クエン酸鉄コリンを含まない陰性対照と比較して産物の濃度のかなりの上昇が達成された。
【0225】
さらに、0.1g/Lのクエン酸鉄を含む産物の力価は、0.2g/Lの等モルのクエン酸鉄コリンよりも低かった(2.38g/L対2.66g/Lの力価)(
図7D)。
【0226】
実施例8
細胞培養の成績、具体的には細胞増殖及び産物の形成に対する、クエン酸鉄コリンの様々な濃度の効果を、振盪フラスコ実験において、RPMIをベースとした培地を使用して調べた。(i)クエン酸鉄コリンは産物の力価を上昇させ、(ii)新規な化合物であるクエン酸鉄コリンは、クエン酸鉄などの一般的に使用される鉄担体と比較して優れていることが判明した。
【0227】
材料及び方法:
実験は、60mlの開始容量で250mlの振盪フラスコにおいて行なわれた。全ての培養液は、様々な濃度(0g/l、0.2g/l、0.4g/l、又は2g/l)のクエン酸鉄コリン又はほぼ等モル量のクエン酸鉄(0.1g/l、0.2g/l、又は1g/l)を含有している基礎培地3.1、及び0.25g/lのクエン酸鉄を含有しているフィード培地2中に、0.3×106個の細胞/ml(リツキシマブを産生しているCHO2(CHO-DG44)細胞)で播種された。0.1g/l、0.2g/l、及び1g/lのクエン酸鉄の濃度は、それぞれ基礎培地中の0.2g/l、0.4g/l、及び2g/lのクエン酸鉄コリンとほぼ等モルとなるように選択された。
【0228】
振盪フラスコを、インキュベーター中(10%CO2雰囲気は0日目から3日目に提供され、その後、1日間5%CO2が、培養終了時まで0%CO2が提供された)37℃でインキュベートした。フィード溶液を、2日目に開始して30ml/L/日のフィード速度で毎日添加した。全培養期間におよび実際のグルコース濃度を2~4g/lに維持するために必要に応じてグルコースがフィードされた。細胞総数、生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を、培養終了時まで2日おきに測定して、実験の進行をモニタリング及び制御した。実験は2連で(N=2)行なわれた。
【0229】
結果:
2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する産物の力価は、クエン酸鉄コリンを含まない陰性対照(陰性対照における0.156g/Lの力価に対して、0.244g/Lの力価)又は基礎培地中に0.4g/L(0.217g/Lの力価)又は0.2g/L(0.194g/Lの力価)のクエン酸鉄コリンを有する培養液よりも高かった(
図8D参照、そして
図8Aと8Bと8Cを比較)。したがって、クエン酸鉄コリンの効果は濃度依存性であるようであり、クエン酸鉄コリンが0.2g/Lで添加された場合に、クエン酸鉄コリンを含まない陰性対照と比較して産物の濃度のかなりの上昇が達成された。
【0230】
さらに、0.1g/Lのクエン酸鉄を有する産物の力価は、0.2g/Lの等モルのクエン酸鉄コリンよりも低かった(0.184g/L対0.194g/Lの力価;
図8A)。同様に、0.2g/Lのクエン酸鉄を有する産物の力価は、0.4g/Lの等モルのクエン酸鉄コリン(0.200g/L対0.217g/Lの力価;
図8B)よりも低く、そして1.0g/Lのクエン酸鉄を有する産物の力価は、2.0g/Lの等モルのクエン酸鉄コリンよりも有意により低かった(0.201g/L対0.244g/Lの力価;
図8C)。
【0231】
生細胞の総濃度は、クエン酸鉄コリン及びクエン酸鉄について類似したプロファイルを示したが、等モル濃度のクエン酸鉄コリン対クエン酸鉄により、生細胞のより高い濃度が得られた(例えば、1.0g/Lの等モルのクエン酸鉄によって得られた力価(力価201mg/L)は、2.0g/lのクエン酸鉄コリンで得られた力価(力価244mg/L)よりも明らかに低かった)。さらに、クエン酸鉄などの市販のイオン担体と比較して、(等モルの)クエン酸鉄コリンの適用により、より低いモル浸透圧濃度値が得られ、これは、生細胞の濃度及び細胞の生存率に関して哺乳動物細胞培養にとって有益であると考えられる。陰性対照(クエン酸鉄コリンが全く添加されていない)と比較して、クエン酸鉄コリンはほんの僅かしかモル浸透圧濃度を増加させなかった(データは示されていない)。生細胞の濃度及び細胞の生存率は、クエン酸鉄コリンを漸増濃度で添加した場合にほんの僅かに改善された。
【0232】
実施例9
流加方式で2Lのバイオリアクター中での細胞培養の成績、具体的には細胞増殖及び産物の形成に対する、培地プラットフォーム6.2又はRPMIをベースとした培地プラットフォーム(基礎培地3.1及びフィード培地2)中のクエン酸鉄コリン及び等モルのクエン酸鉄の効果を調べた(リツキシマブを産生しているCHO2(CHO-DG44))。(i)クエン酸鉄コリンは産物の力価を上昇させ、(ii)クエン酸鉄などの一般的に使用される鉄担体と比較して優れていたことが判明した。したがって、鉄コリンのプラスの効果は、適用された培養系(例えば、振盪フラスコ実験又は制御された2Lのバイオリアクター又は使用された培地)から独立していた。
【0233】
材料及び方法:
実験は、1.8Lの開始容量で完全に制御された2Lのバイオリアクターシステムにおいて行なわれた。CHO2(CHO-DG44)リツキシマブ細胞を、クエン酸鉄コリン(0.2g/l又は2.0g/l)又はクエン酸鉄(1g/l)を含有している基礎培地6.2a、及び0.56g/lのクエン酸鉄コリンを含有しているフィード培地6.2a(
図9A~C)、又はクエン酸鉄コリン(0.2g/l又は2.0g/)又はクエン酸鉄(1g/l)を含有しているRPMIをベースとした基礎培地3.1、及び0.25g/lのクエン酸鉄を含有しているRPMIをベースとしたフィード培地2を使用して、全ての培養液中に0.3×10
6個の細胞/mlで播種した。クエン酸鉄の濃度範囲は、クエン酸鉄コリンと同じ範囲内になるように選択された(モル基準で)。バイオリアクターを全培養期間中37℃でインキュベートし、そして溶存CO
2を、(0~3日目に7.07、そして3日目から14日目において6.92)+/-0.17のpH設定点に基づいて2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。溶存酸素設定点は60%であり、そしてフィードは30ml/L/日で連続的に添加された。生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度を、試料の間隔に従って上記のように測定した。フィード培地はグルコースを含有し、そしてグルコースレベルは全培養期間におよび2g/L超に維持された。グルタミンの濃度を0.1~0.4g/lの範囲内に維持するために、必要に応じてストック溶液からグルタミンが添加された。実験は2連で(N=2)行なわれた。
【0234】
結果:
基礎培地6.2a中に2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する産物の力価は、0.2g/Lのクエン酸鉄コリン(対照における1.62g/Lの力価に対して、2.04g/Lの力価)又は1.0g/Lのクエン酸鉄(1.73g/Lの力価)を有する対照培養液と比較してより高かった(
図9C)。このことは、産物の力価に対するクエン酸鉄コリンの効果が、等モル濃度のクエン酸鉄と比較して優れていたことを実証する。産物の濃度は上昇したが、様々な濃度のクエン酸鉄コリン又は等モル濃度のクエン酸鉄を使用した生細胞の濃度及び細胞生存率は同等であった。クエン酸鉄コリンを用いて処置された培養液についての8日目に始まる生細胞の濃度及び生存率の僅かにより急速な低下が観察された(
図9A及びB)。培地プラットフォーム6.2aを使用した培養液中の総モル浸透圧濃度は、全ての試料において許容可能な範囲内であった(280から約400mOsmo/kg、0日目から12日目、データは示されていない)。
【0235】
同様に、RPMIをベースとした培地中に2.0g/Lのクエン酸鉄コリンを有する産物の力価は、0.2g/Lのクエン酸鉄コリン(対照における0.237g/Lの力価に対して、0.257g/Lの力価)又は0.1g/lのクエン酸鉄(0.200g/Lの力価)の対照と比較してより高かった(
図9D)。産物の濃度は上昇したが、様々な濃度のクエン酸鉄コリン又は等モルのクエン酸鉄におけるRPMIをベースとした培地系中の細胞の濃度及び生細胞の生存率は同等であった。RPMIをベースとした培地プラットフォームを使用した培地中の総モル浸透圧濃度は僅かに増加した(350~440mOsmo/kg、0日目から12日目、データは示されていない)。
【0236】
実施例10
CHO-K1(CHO-K1 GS)に由来するグルタミンシンターゼ(GS)欠損細胞株をトランスフェクトすることにより、グルタミンシンターゼをベースとしたタンパク質発現系を使用した例示的なタンパク質としてのリツキシマブを発現及び産生した。リツキシマブを産生しているこのCHO-K1 GS細胞株の増殖及び例示的タンパク質としてのリツキシマブの産生を分析した。改善されたアミノ酸比を有する培地もまた、GS欠損細胞株のために使用することができ、そして関心対象の産生されたタンパク質の量は、他の細胞株よりも比較的高いことが判明した(
図6C参照)。
【0237】
材料及び方法:
この実験は、15mlの開始容量で小型化バイオリアクターシステムで行なわれた。リツキシマブを発現しているCHO-K1 GS細胞株を、基礎培地6.2GS中に0.7×106個の細胞/mlで播種し、フィード培地6.2GSを使用して培養した(どちらも最適化されたAA比を有する)。基礎培地6.2及びフィード培地6.2と比較して、いくつかの小さな変化がなされた:
-基礎培地6.2GS:GS系に因るアミノ酸プレミックス粉末(最適化されたアミノ酸比)からのグルタミンの排除、コハク酸1.5g/Lからコハク酸二ナトリウム6H2O 3.43g/Lの製剤への変更、及びクエン酸鉄コリンを0.2g/Lから1.8g/Lへと増加。
-フィード培地6.2GS:グルコースを35.4g/Lから83.4g/Lへと増加させ、コハク酸5.26g/Lからコハク酸二ナトリウム6H2O 12.0g/lの製剤へと変更。
【0238】
CHO-K1 GS細胞において発現された治療用分子は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖とを有するリツキシマブであった。バイオリアクターを、全培養期間中34.5℃でインキュベートし、溶存CO2を6.95(+/-0.25)のpH設定点に基づいて2~15%に制御することにより、毒性濃度を防いだ。この流加バッチ適用のために、30ml/L/日という標準的なフィード速度を含む成功裡なスケールアップのためのプラットフォームプロセスが適用された。このことは、栄養フィード溶液は、全培養期間にわたり1日目から培養終了時まで1日1回添加されたことを意味する。全培養期間にわたりグルコースレベルを0.6g/L超に維持するために、必要に応じてグルコースも添加された。生細胞、生存率、産物の濃度、グルコースの濃度、乳酸の濃度、アンモニウムの濃度、及びモル浸透圧濃度は、上記のように測定された。実験は2連で(N=2)行なわれた。
【0239】
結果:
リツキシマブを発現しているCHO-K1 GS細胞株からの生細胞の密度、生存率、及び産物の濃度(2連測定)というパラメーターは、他の細胞株と同等であるか又はさらにはより良好であった。2つの小規模なバイオリアクターは、14日間の流加培養プロセスの後に、8665mg/L及び8102mg/Lという収集前の産物の高い濃度を示した。これらの結果は、CHO-K1に由来するグルタミンシンターゼ(GS)欠損細胞株が、最適化されたアミノ酸を有する培養培地を使用して、増殖し、そして非常に高い力価で関心対象のタンパク質を産生することができたことを実証する(
図10A~C)。
【0240】
上記の観点から、本発明はまた、以下の項目にも関することが理解されるだろう:
【0241】
項目
1.イソロイシンに対する以下のモル比のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約1.2~2.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.5~0.9であるL-フェニルアラニン、
L-チロシン/L-イソロイシンが約1.5~2.7であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.0~1.9であるL-バリン
を含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地であって、該基礎細胞培養培地は、約25~150mMのアミノ酸総含量を有する。
【0242】
2.イソロイシンに対して約1.6~2.9(mM/mM)のモル比のL-リジンをさらに含む、項目1の基礎細胞培養培地。
【0243】
3.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシン約0.4~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目1又は2の基礎細胞培養培地。
【0244】
4.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目3に記載のモル比で含む、項目3の基礎細胞培養培地。
【0245】
5.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約1.3~1.8であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.6~0.9であるL-フェニルアラニン、
L-チロシン/L-イソロイシンが約1.7~2.5であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.2~1.8であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.3~1.6であるL-バリン
を含む哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地であって、該基礎細胞培養培地は、約25~100mMのアミノ酸総含量を有する。
【0246】
6.イソロイシンに対して約1.8~2.7(mM/mM)のモル比のL-リジンをさらに含む、項目1~5の基礎細胞培養培地。
【0247】
7.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目1、2、5又は6の基礎細胞培養培地。
【0248】
8.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目7に記載のモル比で含む、項目7の基礎細胞培養培地。
【0249】
9.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
(a)L-リジン/L-イソロイシンが約1.8~2.7であるL-リジン、及び/又は
(b)L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.7であるL-メチオニン、
をさらに含む、項目5の基礎細胞培養培地。
【0250】
10.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約1.5~1.8であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.6~0.8であるL-フェニルアラニン、
L-チロシン/L-イソロイシンが約1.9~2.3であるL-チロシン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.3~1.6であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.3~1.6であるL-バリン
を含む哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地であって、該基礎細胞培養培地は、約25~100mMのアミノ酸総含量を有する。
【0251】
11.イソロイシンに対して約2.0~2.5(mM/mM)のモル比のL-リジンをさらに含む、項目1、5又は10の基礎細胞培養培地。
【0252】
12.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目1、2、5、6、10又は11の基礎細胞培養培地。
【0253】
13.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目12に記載のモル比で含む、項目12の基礎細胞培養培地。
【0254】
14.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
(a)L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.0~2.5であるL-ロイシン、及び/又は
(b)L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.6~3.0であるL-プロリン、及び
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目10の基礎細胞培養培地。
【0255】
15.培地は、無血清培地であるか、好ましくは組成が化学的に明らかな培地であるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有の培地である、項目1~14のいずれか1つの基礎細胞培養培地。
【0256】
16.約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度でクエン酸鉄コリンをさらに含む、項目1~15のいずれか1つの基礎細胞培養培地。
【0257】
17.基礎細胞培養培地は、約30~約80、好ましくは約35~約65、より好ましくは約40~約50mMのアミノ酸総含量を有する、項目1~16のいずれか1つの基礎細胞培養培地。
【0258】
18.0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度でクエン酸鉄コリンを含む、哺乳動物細胞を培養するための基礎細胞培養培地。
【0259】
19.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.3~4.2であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-フェニルアラニン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.3~2.4であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.1~2.0であるL-バリン
を含む、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地であって、該フィード培地は約100~1000mMのアミノ酸総含量を有する。
【0260】
20.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-チロシン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-チロシン、及び/又はL-リジン/L-イソロイシンが約1.1~2.1であるL-リジン、好ましくはL-チロシン/L-イソロイシンが約0.6~1.1であるL-チロシン、及びL-リジン/L-イソロイシンが約1.1~2.1であるL-リジンをさらに含む、項目19のフィード培地。
【0261】
21.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.3~0.6であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約0.9~1.8であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.4~0.8であるL-メチオニン
をさらに含む、項目19又は20のフィード培地。
【0262】
22.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目21に記載のモル比で含む、項目21のフィード培地。
【0263】
23.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.6~3.9であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.7~1.0であるL-フェニルアラニン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.5~2.2であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.3~1.9であるL-バリン
を含む、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地であって、該フィード培地は、約100~1,000mMのアミノ酸総含量を有する。
【0264】
24.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~1.0であるL-チロシン、及び/又はL-リジン/L-イソロイシンが約1.3~1.9であるL-リジン、好ましくはL-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~1.0であるL-チロシン、及びL-リジン/L-イソロイシンが約1.3~1.9であるL-リジンをさらに含む、項目19又は23のフィード培地。
【0265】
25.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.4~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.1~1.6であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.5~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目19、20、23又は24のフィード培地。
【0266】
26.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目25に記載のモル比で含む、項目25のフィード培地。
【0267】
27.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
(a)L-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~1.0であるL-チロシン、及び
L-リジン/L-イソロイシンが約1.3~1.9であるL-リジン、及び/又は
(b)L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.4~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.1~1.6であるL-プロリン、及び
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.5~0.7であるL-メチオニン
をさらに含む、項目23のフィード培地。
【0268】
28.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-ロイシン/L-イソロイシンが約2.9~3.5であるL-ロイシン、
L-フェニルアラニン/L-イソロイシンが約0.8~0.9であるL-フェニルアラニン、
L-トレオニン/L-イソロイシンが約1.7~2.0であるL-トレオニン、及び
L-バリン/L-イソロイシンが約1.4~1.7であるL-バリン
を含む、哺乳動物細胞を培養するためのフィード培地であって、該フィード培地は、約100~1000mMのアミノ酸総含量を有する。
【0269】
29.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸:
L-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~0.9であるL-チロシン、及び/又はL-リジン/L-イソロイシンが約1.4~1.8であるL-リジン、好ましくはL-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~0.9であるL-チロシン、及びL-リジン/L-イソロイシンが約1.4~1.8であるL-リジンをさらに含む、項目19、23、又は28のフィード培地。
【0270】
30.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.4~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.2~1.5であるL-プロリン、又は
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.5~0.6であるL-メチオニン
をさらに含む、項目19、20、23、24、28又は29のフィード培地。
【0271】
31.L-トリプトファン、L-プロリン、及びL-メチオニンを各々項目30に記載のモル比で含む、項目30のフィード培地。
【0272】
32.イソロイシンに対する以下のモル比(mM/mM)のアミノ酸の少なくとも1つ:
(a)L-チロシン/L-イソロイシンが約0.7~0.9であるL-チロシン、及び
L-リジン/L-イソロイシン約1.4~1.8であるL-リジン、及び/又は
(b)L-トリプトファン/L-イソロイシンが約0.4~0.5であるL-トリプトファン、
L-プロリン/L-イソロイシンが約1.2~1.5であるL-プロリン、及び
L-メチオニン/L-イソロイシンが約0.5~0.6であるL-メチオニン
をさらに含む、項目28のフィード培地。
【0273】
33.フィード培地は、培養開始容量に基づいて約10~50ml/L/日で、好ましくは約15~45ml/L/日で、より好ましくは約20~40ml/L/日で、より好ましくは約30ml/L/日で細胞培養液に添加するための濃縮されたフィード培地である、項目19~32のいずれか1つのフィード培地。
【0274】
34.培地は無血清培地であるか、好ましくは組成が化学的に明らかな培地であるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有の培地である、項目19~32のいずれか1つのフィード培地。
【0275】
35.約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1.0mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度でクエン酸鉄コリンをさらに含む、項目19~34のいずれか1つのフィード培地。
【0276】
36.それは低い塩含量、好ましくは約100mM以下、より好ましくは50mM以下を有することによってさらに特徴付けられる、項目19~35のいずれか1つのフィード培地。
【0277】
37.フィード培地は、約200~約900、好ましくは約300~約800、より好ましくは約400~約700mMのアミノ酸総含量を有する、項目19~36のいずれか1つのフィード培地。
【0278】
38.約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1.0mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度でクエン酸鉄コリンを含む、細胞を培養するためのフィード培地。
【0279】
39.a)項目1~18の基礎細胞培養培地、及び
b)項目19~38のフィード培地
を含む、哺乳動物細胞を培養するための培地プラットフォーム。
【0280】
40.哺乳動物細胞は、げっ歯類又はヒトの細胞であり、げっ歯類の細胞は好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞又はCHO GS欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO GS欠損細胞である、項目1~18のいずれか1つの細胞培養培地、又は項目19~38のいずれか1つのフィード培地。
【0281】
41.a)基礎細胞培養培地を準備する工程、及び
b)項目1~17に従ってアミノ酸を加えるか又はアミノ酸比を最終モル比に調整する工程
を含む、基礎細胞培養培地を作製する方法。
【0282】
42.鉄源として、クエン酸鉄コリンを約0.1~5.0mM、約0.2~2.0mM、約0.2~1.0mM、又は約0.4~1.0mMの濃度で加えるか又は調整する工程をさらに含む、項目41の方法。
【0283】
43.a)フィード培地を準備する工程、及び
b)項目19~37に従ってアミノ酸を加えるか又はアミノ酸比を最終モル比に調整する工程
を含む、フィード培地を作製する方法。
【0284】
44.鉄源として、クエン酸鉄コリンを約0.4~5mM、約0.4~1.0mM、又は約0.5~1.0mM、好ましくは約0.5~0.6mMの濃度で加えるか又は調整する工程をさらに含む、項目43の方法。
【0285】
45.培地は、無血清培地であるか、好ましくは組成が化学的に明らかな培地であるか、又は組成が化学的に明らかでタンパク質非含有の培地である、項目41~44のいずれか1つの方法。
【0286】
46.以下の工程:
a)哺乳動物細胞を準備する工程、
b)項目1~18のいずれか1つの基礎細胞培養培地中で細胞を培養する工程、及び
c)場合により、基礎細胞培養培地に項目19~38のいずれか1つのフィード培地を添加する工程
を含む、哺乳動物細胞を培養する方法であって、該細胞は、細胞の増殖を可能とする条件下で培養される。
【0287】
47.以下の工程:
a)関心対象のタンパク質をコードしている関心対象の遺伝子を含む哺乳動物細胞を準備する工程、
b)項目1~18のいずれか1つの基礎細胞培養培地中で細胞を培養する工程、及び
c)場合により、項目19~38のいずれか1つのフィード培地を基礎細胞培養培地に添加する工程、及び
d)場合により、細胞培養液から関心対象の該タンパク質を分離及び/又は単離及び/又は精製する工程
を含む、関心対象のタンパク質を生成する方法であって、該細胞は、関心対象のタンパク質の発現を可能とする条件下で培養される。
【0288】
48.関心対象のタンパク質は分泌タンパク質であり、好ましくは関心対象のタンパク質は抗体又はFc-融合タンパク質である、項目47の方法。
【0289】
49.哺乳動物細胞は、げっ歯類又はヒトの細胞であり、好ましくはげっ歯類の細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞又はCHO GS欠損細胞であり、最も好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO GS欠損細胞である、項目46~48のいずれか1つの方法。
【0290】
50.項目19~38のいずれか1つのフィード培地は、基礎細胞培養培地中で培養された細胞に添加され、そして
(a)フィード培地は、培養開始容量に基づいて約10~50ml/L/日で、好ましくは約15~45ml/L/日で、より好ましくは約20~40ml/L/日で、より好ましくは約30ml/L/日で基礎細胞培養培地に添加され、
(b)フィード培地は、0、1、2、又は3日目に開始して添加され、及び/又は
(c)フィード培地は、連続的に、又は1日に数回、1日2回、1日1回、2日おきに、又は3日おきにボーラスとして添加される、項目46~49のいずれか1つの方法。
【0291】
51.細胞培養液は、大規模な細胞培養液、好ましくは100L以上、より好ましくは1000L以上、又はさらにより好ましくは10000L以上の作業容量の細胞培養液である、項目46~50のいずれか1つの方法。
【0292】
52.項目1~18のいずれか1つの基礎細胞培養培地及び/又は項目19~39のいずれか1つのフィード培地、及び場合により哺乳動物細胞を含む、部品のキット。
【0293】
53.細胞増殖及びタンパク質の産生に適した時間及び条件下、該培地中で関心対象のタンパク質を産生する哺乳動物細胞を培養する工程、関心対象のタンパク質を収集する工程、及び培養培地又は細胞溶解液から該タンパク質を回収する工程を含む、タンパク質を産生するための項目1~18のいずれか1つの基礎細胞培養培地の使用。
【0294】
54.前記培養期間中の項目19~38のいずれか1つのフィード培地を細胞にフィードする工程をさらに含む、項目53の使用。
【0295】
55.細胞増殖及びタンパク質の産生に適した時間及び条件下、項目1~18のいずれか1つの基礎細胞培養培地中で関心対象のタンパク質を産生する哺乳動物細胞を培養する工程、該細胞に該フィード培地をフィードする工程、関心対象のタンパク質を収集する工程、及び培養培地から該タンパク質を回収する工程を含む、タンパク質を産生するための項目19~39のいずれか1つのフィード培地の使用。
【0296】
56.クエン酸鉄コリンは、約0.2~2.0mMの濃度で哺乳動物細胞培養培地中に存在する、哺乳動物細胞培養培地中の鉄担体としてのクエン酸鉄コリンの使用。
【配列表】