(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20230925BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F16B35/00 Q
F16B35/00 K
F16B5/02 A
(21)【出願番号】P 2021209624
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593104132
【氏名又は名称】イワタボルト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】影山 正直
(72)【発明者】
【氏名】藤原 文哉
(72)【発明者】
【氏名】大久保 辰得
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-156364(JP,A)
【文献】特開2011-058548(JP,A)
【文献】特開2003-130025(JP,A)
【文献】特表2014-500444(JP,A)
【文献】特開2016-200226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を有し、第1孔を有する第1の部品と、第2孔を有する第2の部品とを接合させるため、前記第1孔と前記第2孔とに装着されるボルトにおいて、
前記第2の部品に当接するフランジ部と、
前記フランジ部に連結され、前記第1の部品の前記第1孔内に挿入されるねじ部と、
前記フランジ部の前記ねじ部側とは反対側に設けられた頭部と、
前記フランジ部と前記ねじ部との間に設けられ、前記第2の部品の前記第2孔内に挿入されるセンタリング部と、を備え、
前記センタリング部は、センタリング部本体と、前記センタリング部本体の外周に設けられ、円周方向に延びる複数の羽根部と、を有し、
各羽根部は、前記ボルトの締め付け回転方向とは反対側の方向に向かって前記軸線から外縁までの距離が徐々に増加し、かつ前記フランジ部に向かう軸線方向に沿って前記軸線から前記外縁までの距離が徐々に増加する、外径増加部を有する、ボルト。
【請求項2】
前記外径増加部は、第1傾斜面と、前記第1傾斜面よりも前記軸線方向の前記ねじ部側に位置する第2傾斜面とを有し、
前記ボルトの前記軸線を通る断面において、前記第1傾斜面は前記軸線に対して傾斜する第1角度θ1を有し、前記第2傾斜面は前記軸線に対して傾斜する第2角度θ2を有し、
前記第2角度θ2は前記第1角度θ1よりも大きい、請求項1に記載のボルト。
【請求項3】
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とは、傾斜面稜線において接続し、
前記傾斜面稜線は、前記締め付け回転方向に向かうにつれて前記フランジ部から遠ざかるように傾斜する、請求項2に記載のボルト。
【請求項4】
前記センタリング部は、3以上6以下の個数の前記羽根部を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のボルト。
【請求項5】
前記羽根部の前記軸線方向における幅は、0.7mm以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のボルト。
【請求項6】
前記羽根部の前記軸線方向における幅は、第2の部品の厚みの0.8倍以上1倍以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のボルト。
【請求項7】
前記軸線から前記羽根部の外縁までの最大距離は、前記第2孔の半径の0.95倍以上1倍以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の部品と第2の部品とを接合させるボルトが知られている。特に、ボルトを用いて第1の部品と第2の部品とを接合させる過程で、第1の部品に対する第2の部品の位置が修正されるボルトが知られている。例えば特許文献1には、円錐台形状の部分であるセンタリングコーンの付いたボルトを第1の部品の穴および第2の部品の穴に差し込むことによって、第1の部品の穴の軸と第2の部品の穴の軸とのずれなどを補正しつつ、第1の部品と第2の部品とを接合させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のボルトにおいては、ボルトを第1の部品の穴および第2の部品の穴に差し込まれることによって、第2の部品の穴を区画する面が円錐台形状のセンタリングコーンの面に接触する。そして、第2の部品がセンタリングコーンの面に沿ってスライドする。これによって、第1の部品に対する第2の部品の位置が修正される。しかしながら、特許文献1に記載のボルトによって第1の部品に対する第2の部品の位置を修正するためには、センタリングコーンの面に沿って第2の部品をスライドさせるために、ボルトを第1の部品の穴および第2の部品の穴に差し込む際に、強い力を加える必要が生じる。このため、より容易に第1の部品に対する第2の部品の位置を修正できるボルトが求められていた。
【0005】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、第1の部品と第2の部品とを接合させるボルトであって、第1の部品に対する第2の部品の位置を修正できるボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によるボルトは、
軸線を有し、第1孔を有する第1の部品と、第2孔を有する第2の部品とを接合させるため、前記第1孔と前記第2孔とに装着されるボルトにおいて、
前記第2の部品に当接するフランジ部と、
前記フランジ部に連結され、前記第1の部品の前記第1孔内に挿入されるねじ部と、
前記フランジ部の前記ねじ部側とは反対側に設けられた頭部と、
前記フランジ部と前記ねじ部との間に設けられ、前記第2の部品の前記第2孔内に挿入されるセンタリング部と、を備え、
前記センタリング部は、センタリング部本体と、前記センタリング部本体の外周に設けられ、円周方向に延びる複数の羽根部と、を有し、
各羽根部は、前記ボルトの締め付け回転方向とは反対側の方向に向かって前記軸線から外縁までの距離が徐々に増加し、かつ前記フランジ部に向かう軸線方向に沿って前記軸線から外縁までの距離が徐々に増加する、外径増加部を有する。
【0007】
本開示によるボルトにおいて、
前記外径増加部は、第1傾斜面と、前記第1傾斜面よりも前記軸線方向の前記ねじ部側に位置する第2傾斜面とを有し、
前記ボルトの前記軸線を通る断面において、前記第1傾斜面は前記軸線に対して傾斜する第1角度θ1を有し、前記第2傾斜面は前記軸線に対して傾斜する第2角度θ2を有し、
前記第2角度θ2は前記第1角度θ1よりも大きい方が好ましい。
【0008】
本開示によるボルトにおいて、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とは、傾斜面稜線において接続し、
前記傾斜面稜線は、前記締め付け回転方向に向かうにつれて前記フランジ部から遠ざかるように傾斜した方が好ましい。
【0009】
本開示によるボルトにおいて、
前記センタリング部は、3以上6以下の個数の前記羽根部を有した方が好ましい。
【0010】
本開示によるボルトにおいて、
前記羽根部の前記軸線方向における幅は、0.7mm以下であることが好ましい。
【0011】
本開示によるボルトにおいて、
前記羽根部の前記軸線方向における幅は、第2の部品の厚みの0.8倍以上1倍以下であることが好ましい。
【0012】
本開示によるボルトにおいて、
前記軸線から前記羽根部の外縁までの最大距離は、前記第2孔の半径の0.95倍以上1倍以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、第1の部品と第2の部品とを接合させるボルトであって、第1の部品に対する第2の部品の位置を修正できるボルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態によるボルトの一例を示す斜視図。
【
図2】本開示の実施の形態によるボルトの一例を示す斜視図。
【
図3】本開示の実施の形態によるボルトが第1の部品と第2の部品とを接合させている様子の一例を示す断面図。
【
図4】本開示の実施の形態によるボルトが第1の部品と第2の部品とを接合させている様子の他の一例を示す断面図。
【
図5】本開示の実施の形態によるボルトが第1の部品と第2の部品とを接合させている様子の他の一例を示す断面図。
【
図6】本開示の実施の形態によるボルトの一例を示す平面図。
【
図7】本開示の実施の形態によるボルトの
図6の線VIIA-VIIAに沿った部分断面図。
【
図8】本開示の実施の形態によるボルトの一例を示す側面図。
【
図9】本開示の実施の形態によるボルトの作用を示す図。
【
図10】本開示の実施の形態によるボルトの
図7の線X-Xに沿った断面図。
【
図11】本開示の実施の形態によるボルトの
図7の線XI-XIに沿った断面図。
【
図13】変形例によるボルトが複数の部品を接合させている様子の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、
図1乃至
図11を参照して、本開示の実施の形態のボルトについて説明する。本開示の実施の形態のボルトは、後述する第1孔71を有する第1の部品7と第2孔81を有する第2の部品8とを接合させるボルトであって、第1の部品7に対する第2の部品8の位置を修正できる、ボルト1である。ボルト1は、センタリングを目的とする。すなわち、ボルト1は、後述するように、第1の部品7に対する第2の部品8の位置を修正する機能を有する。
【0016】
ここで、
図1は、ボルト1を示す斜視図である。
図2は、ボルト1を、
図1における観察方向とは異なる方向から観察した様子を示す斜視図である。
図1および
図2に示すように、ボルト1は、軸線LAを有し、第2の部品に当接するフランジ部2と、フランジ部2に連結され、第1の部品7の第1孔71内に挿入されるねじ部3と、フランジ部2のねじ部3側とは反対側に設けられた頭部4と、フランジ部2とねじ部3との間に設けられ、第2の部品8の第2孔81内に挿入されるセンタリング部5とを備えている。
図1および
図2に示す例において、ボルト1を構成するフランジ部2、ねじ部3、頭部4およびセンタリング部5は、一体的に形成されている。
図1および
図2に示すように、ねじ部3は、外ねじ31を有する。ボルト1の材料は、例えば一般的なボルトの材料と同様の金属材料である。
【0017】
ボルト1は、第1の部品7と第2の部品8とを接合させる際に、軸線LAを中心として回転させられる。軸線LAの方向を軸線方向DA、軸線LAを周回する方向を円周方向DBと称する。また、軸線方向DAのうち、ボルト1が締め付けられた際進入する方向を進入方向SA1といい、ボルト1が緩められた際後退する方向を後退方向SA2という。また、ボルト1の半径方向は半径方向DCとなる。
【0018】
円周方向DBのうち、ボルト1を締め付ける際にボルト1を回転させる方向を、締め付け回転方向SB1という。また、円周方向DBのうち、ボルト1を緩める際にボルト1を回転させる方向を、緩め回転方向SB2という。
【0019】
図3は、ボルト1が第1の部品7と第2の部品8とを接合させている様子の一例を示す断面図である。
図3に示す破線は、フランジ部2、ねじ部3、頭部4およびセンタリング部5の境界を便宜的に示す線である。
図3に示す例において、上述のように、第1の部品7は第1孔71を有し、第2の部品8は第2孔81を有する。
図3に示す例において、第1の部品7と第2の部品8は、板状の形状を有している。
図3に示すように、ボルト1は、第1の部品7と第2の部品8とを接合させるため、第1孔71と第2孔81に装着される。第1の部品7および第2の部品8の材料は、ボルト1によって接合させ得るものであれば特に限られない。第1の部品7および第2の部品8は、例えば金属および樹脂の少なくともいずれか一方を含む。
【0020】
第1孔71の内壁の少なくとも一部には、内ねじ72が設けられている。
図3に示す例において、第1の部品7は、一体的に形成された板状の部品である。また、
図3に示す例において、内ねじ72は、第1孔71の内壁の全体にわたって設けられている。第2孔81は、ねじ部3を通過させることができる大きさを有する。第2孔81は、半径方向DCにおけるねじ部3の最大幅よりも大きな直径を有する。また、ねじ部3は後述のようにねじ部本体32と、ねじ部本体32に設けられた外ねじ31を有する。本実施の形態において、ねじ部3を進入方向SA1の側の先端から第1孔71に進入させて、締め付け回転方向SB1にボルト1を回転させることで、外ねじ31を内ねじ72に噛み合わせ、第1の部品7に対してボルト1を締め付けることができる。ねじ部3を第2孔81内に通過させ、外ねじ31を内ねじ72に噛み合わせ、第1の部品7に対してボルト1を締め付ける。このことによって、ボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とを接合できる。また、
図3に示すようにボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とが接合された状態において、緩め方向SB2にボルト1を回転させる。このことにより、外ねじ31の内ねじ72への噛み合わせを緩めて、第1の部品7に対するボルト1を緩めることができる。このように、第1の部品7に対するボルト1を緩めることによって、ボルト1による第1の部品7と第2の部品8との接合を解除して、第1の部品7と第2の部品8とを離間させることができる。
【0021】
図3に示すように第1の部品7が一体的に形成された板状の部品であり、第1孔71の内壁に設けられた内ねじ72を有する場合、第1の部品7は、例えば金属からなる。第1の部品7が金属からなる場合、外ねじ31を内ねじ72に噛み合わせるときなど、内ねじ72に対して力が加わるときに、内ねじ72の耐久性が向上する。
【0022】
なお、第1の部品7の形態は、
図3に示す形態に限られない。また、第1の部品7の形態には、機械的強度が低い樹脂などからなり、ねじ部3を第1孔71に挿入する前には第1孔71に内ねじ72が切られておらず、ねじ部3を第1孔71に挿入してボルト1を締め込むことで第1孔71に内ねじ72が形成されるような形態も含まれる。
図4は、ボルト1が第1の部品7と第2の部品8とを接合させている様子の、
図3とは異なる一例を示す断面図である。また、
図5は、ボルト1が第1の部品7と第2の部品8とを接合させている様子の、
図3および
図4とは異なる一例を示す断面図である。
図4および
図5に示す破線は、フランジ部2、ねじ部3、頭部4およびセンタリング部5の境界を便宜的に示す線である。
【0023】
図4に示す例において、第1の部品7は、部品本体73と、ナット74とを有する。部品本体73は、板状の形状を有する。また、部品本体73は、本体孔731を有する。本体孔731は、ボルト1のねじ部3を通過させることができる大きさを有する。
図4において、本体孔731の内壁には、内ねじ72は設けられていない。ナット74は、例えば一般的な形状のナットである。ナット74は、ナット孔741を有する。ナット孔741の内壁には、内ねじ72が設けられている。
図4に示すように、ナット74は、ナット孔741が本体孔731に重なるような位置関係にて、溶接などによって部品本体73に固定されている。これにより、本体孔731とナット孔741とによって第1孔71が構成されている。上述のように、ナット孔741の内壁には内ねじ72が設けられているが、本体孔731の内壁には内ねじ72が設けられていないため、第1孔71は、内壁の一部に内ねじ72が設けられたものとなっている。
図4に示す第1の部品7において、部品本体73の材料は、例えば金属である。ナット74の材料は、例えば金属である。
【0024】
図5に示す例において、第1の部品7は、部品本体73と、インサートナット75とを有する。
図5に示す例において、部品本体73は埋め込み孔76を有している。インサートナット75は、埋め込み孔76に埋め込まれている。インサートナット75と埋め込み孔76の内壁との接触面は、凹凸形状を有している。インサートナット75と埋め込み孔76の内壁との接触面が凹凸形状を有することによって、インサートナット75が埋め込み孔76から抜けることが抑制される。
図5に示す例において、第1孔71は、第1の部品7のうちインサートナット75に設けられている。また、内ねじ72は、インサートナット75に設けられた第1孔71の内壁の全体にわたって設けられている。
【0025】
図5において、部品本体73と、部品本体73の埋め込み孔76に埋め込まれたインサートナット75と、を有する第1の部品7を形成する方法は、特に限られない。
図5に示す部品本体73とインサートナット75とを有する第1の部品7は、例えば、拡張方式、圧入方式、熱圧入方式又は同時成形方式によって形成できる。
図5に示す第1の部品7において、部品本体73の材料は、例えば樹脂である。インサートナット75の材料は、例えば金属である。
【0026】
図5に示すように、部品本体73とインサートナット75とを有する第1の部品7によれば、第1孔71が設けられるインサートナット75の材料を金属とすることができる。これによって、部品本体73の材料を金属以外の材料、例えば樹脂としつつ、内ねじ72が設けられる第1孔71の内壁を金属によって構成して、内ねじ72の耐久性を向上できる。
【0027】
図4および
図5に示す例においても、ねじ部3を第2孔81に通過させた上で、ねじ部3の外ねじ31を第1孔71に設けられた内ねじ72に噛み合わせることによって、ボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とを接合できる。
【0028】
一例として、第1の部品7の平面形状は、第2の部品8の平面形状よりも大きい。
図3乃至
図5に示す例において、第1の部品7および第2の部品8は板状の形状を有する。また、第1の部品7の厚みは、第2の部品8の厚みよりも大きい。また、第1の部品7の最大の面の面積は、第2の部品8の最大の面の面積よりも大きい。一例として、第1の部品7は、自動車のボディおよびフレーム、並びに機械や電子機器の筐体などの、ボルト1を用いて製造される製品の外形をなす部品である。この場合、第2の部品8は、例示した第1の部品7に取り付けられる部品である。
【0029】
次に、ボルト1の各構成要素についてさらに説明する。
【0030】
まず、ボルト1のフランジ部2について述べる。
図3乃至
図5に示すように、フランジ部2は、第2の部品8に当接する。
図1乃至
図5に示す例において、フランジ部2は、ボルト1の後退方向SA2の側に位置する第1面2aと、ボルト1の進入方向SA1の側に位置する第2面2bと、半径方向DCにおける外面をなす第3面2cとを有する。
図3乃至
図5に示すように、フランジ部2は、第2面2bにおいて第2の部品8に当接する。
【0031】
図6は、ボルト1を軸線方向DAから見た様子を示す平面図である。
図6は、特に、ボルト1をねじ部3側から見た様子を示している。
図6においては、ボルト1のねじ部3の外ねじ31については図示を省略して、ねじ部3のうちねじ部本体32の外形を図示している。
図6に示すように、フランジ部2は、ねじ部3側から見て、軸線LAを中心とする円形の輪郭を有する。
【0032】
次に、ボルト1のねじ部3について述べる。ねじ部3は、フランジ部2に連結され、第1の部品7の第1孔71内に挿入される。
図3乃至
図5に示すように、ボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とが接合された状態において、ねじ部3の少なくとも一部は、第1の部品7の第1孔71内に位置する。
図3乃至
図5に示すように、ねじ部3は、フランジ部2の進入方向SA1の側に位置し、センタリング部5を介してフランジ部2に連結される。
図3乃至
図5に示す例において、ねじ部3は、一部が第1孔71内に位置するとともに、一部が第2孔81内に位置している。図示はしないが、ボルト1が第1の部品7と第2の部品8とを接合させた状態において、ねじ部3は、第2孔81内に位置する部分を有しなくてもよい。
【0033】
ねじ部3は、上述のように、ねじ部本体32と、ねじ部本体32に設けられた外ねじ31とを有する。ねじ部本体32は、軸線方向DAに延びる略円柱状の形状を有する。ねじ部本体32は、軸線LAを中心として回転対称な形状を有する。外ねじ31は、ねじ部本体32の側面に設けられている。外ねじ31は、ねじ部本体32を螺旋状に周回するように設けられている。
【0034】
次に、頭部4について述べる。頭部4は、フランジ部2のねじ部3側とは反対側に設けられる。換言すれば、頭部4は、フランジ部2の後退方向SA2の側に設けられる。一例として、頭部4は、ボルト1を回転させて外ねじ31を内ねじ72に噛み合わせ、第1の部品7に対してボルト1を締め付ける際に、ボルト1に回転力を加えるために、工具などによって保持される。一例として、頭部4は、一般的なボルトを回転させるための工具、例えば一般的なレンチに保持される。
図2に示す例において、頭部4は、軸線方向DAに延びる略六角柱状の形状を有する。このため、頭部4は、一般的なソケットレンチの六角ソケットに保持される。このため、六角ソケットを有するソケットレンチを用い、六角ソケットによって頭部4を保持してソケットレンチを操作することによって、ボルト1を回転させることができる。
【0035】
図1乃至
図5に示す例において、頭部4の面は、フランジ部2の第1面2aに接続している。図示はしないが、ボルト1を頭部4側から見た場合に頭部4の外形形状とフランジ部2の外形形状とが一致して、頭部4の外面がフランジ部2の第3面2cに接続していてもよい。この場合、フランジ部2は第1面2aを有しない。例えば、頭部4とフランジ部2とが一体となって、全体として略円柱状または略角柱状の形状を成していてもよい。
【0036】
次に、センタリング部5について述べる。センタリング部5は、フランジ部2とねじ部3との間に設けられ、第2の部品8の第2孔81内に挿入される。
図3乃至
図5に示すように、ボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とが接合された状態において、センタリング部5の少なくとも一部は、第2の部品8の第2孔81内に位置する。センタリング部5は、フランジ部2とねじ部3との間に設けられ、上述したように、フランジ部2とねじ部3とを連結する。
図1乃至
図5に示す例において、センタリング部5は、フランジ部2の第2面2bに接続している。
【0037】
センタリング部5は、センタリング部本体52と、センタリング部本体52の外周に設けられ、円周方向DBに沿って所定間隔をもって均等若しくは略均等に配置された複数、例えば3以上6以下の個数の羽根部51と、を有する。羽根部51は、均等に配置されることが好適であるが、±5°の許容差内の略均等であってもよい。
図7は、
図6の線VIIA-VIIAに沿って切断したボルト1の断面において、センタリング部5の周辺を示す部分断面図である。
図7は、特に、ボルト1の軸線LAを通る断面を示す断面図に相当する。また、
図7は、
図3の符号VIIBが付された一点鎖線で囲まれた範囲におけるボルト1の断面を拡大して示す図に相当する。
図7に示す破線は、センタリング部本体52と羽根部51との境界、およびフランジ部2とセンタリング部5との境界を便宜的に示す線である。
【0038】
図1および
図7に示すセンタリング部本体52は、軸線LAを中心として回転対称な円柱状の形状を有する。一例として、センタリング部本体52とねじ部本体32とは一体となって、全体として略円柱状の形状を成している。
【0039】
複数の羽根部51は、円柱状の形状を有するセンタリング部本体52の側面に、円周方向DBに沿って並ぶように設けられている。
【0040】
センタリング部本体52の外周に設けられた各羽根部51は、ボルト1の締め付け回転方向SB1とは反対側の方向に向かって(緩め回転方向SB2に向かって)軸線LAから外縁までの距離w6が徐々に増加し、かつフランジ部2に向かう軸線方向DAに沿って(後退方向SA2に向かって)軸線LAから外縁までの距離w6が徐々に増加する、外径増加部53を有する。そして、距離w6は、
図7に示すように、半径方向DCにおける外径増加部53の外縁と軸線LAとの距離に対応している。
【0041】
ところで、
図1、
図6および
図7において、羽根部51は、半径方向DCに突出した突起からなる。突起からなる羽根部51は、外径増加部53の外縁に対応する外径増加面531と、後述する接続部54の外縁に対応する外径減少面541とを有する。外径増加面531は、外径減少面541よりも、締め付け回転方向SB1の側に設けられている。
【0042】
図6に示すように、外径増加面531は、円周方向DBにおける1つの羽根部51が設けられた領域A1の一部に位置している。そして、羽根部51は、外径増加面531を有する外径増加部53と、外径減少面541を有する接続部54とを有し、このうち外径増加部53は、領域A1の一部をなす領域A2に位置する。また、接続部54は、領域A1のうち領域A2以外の領域A3に位置する。
【0043】
図1および
図7に示すように、外径増加面531は、緩め回転方向SB2に向かって軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6を徐々に増加させるように、円周方向DBに対して傾斜している。このために、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、緩め回転方向SB2に向かって、換言すればボルト1の締め付け回転方向SB1とは反対側の方向に向かって、徐々に増加する。また、外径増加面531は、後退方向SA2に向かって軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6を徐々に増加させるように、軸線方向DAに対して傾斜している。このために、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、後退方向SA2に向かって、換言すればフランジ部2に向かう軸線方向DAに沿って、徐々に増加する。
【0044】
接続部54は、センタリング部本体52と、羽根部51のうち外径増加部53とを接続する部分である。接続部54の形状は、後述する外径増加部53の作用を大きく妨げない限り、特に限られない。接続部54は、センタリング部5が第2の部品8の第2孔81内に挿入されてボルト1が締め付け回転方向SB1に回転する際に、第2孔81の内壁に接触しないことが好ましい。外径減少面541は、緩め回転方向SB2に向かって軸線LAから接続部54の外縁までの距離w7を徐々に減少させるように、円周方向DBに対して傾斜している。また、外径減少面541は、後退方向SA2に向かって軸線LAから接続部54の外縁までの距離w7を徐々に増加させるように、軸線方向DAに対して傾斜している。距離w7は、
図7に示すように、半径方向DCにおける接続部54の外縁と軸線LAとの距離に対応している。
【0045】
距離w6および距離w7について「徐々に増加」するとは、距離w6および距離w7が減少に転じることなく増加することを意味する。距離w6および距離w7が「徐々に増加」するとの表現は、距離w6および距離w7が一定の領域(距離w6および距離w7が変化しない領域)が存在することを除外しない。すなわち、距離w6および距離w7が「徐々に増加」する形態には、距離w6および距離w7が増加する領域とともに、距離w6および距離w7が一定の領域が存在する形態も含まれる。具体的には、距離w6および距離w7が「徐々に増加」する形態には、距離w6および距離w7が増加する第1の増加領域および第2の増加領域と、第1の増加領域と第2の増加領域との間に位置し且つ距離w6および距離w7が一定の一定領域と、が存在する形態が含まれる。また、距離w6および距離w7について「徐々に減少」するとは、距離w6および距離w7が増加に転じることなく減少することを意味する。距離w6および距離w7が「徐々に減少」するとの表現は、距離w6および距離w7が一定の領域(距離w6および距離w7が変化しない領域)が存在することを除外しない。すなわち、距離w6および距離w7が「徐々に減少」する形態には、距離w6および距離w7が減少する領域とともに、距離w6および距離w7が一定の領域が存在する形態も含まれる。具体的には、距離w6および距離w7が「徐々に減少」する形態には、距離w6および距離w7が減少する第1の減少領域および第2の減少領域と、第1の減少領域と第2の減少領域との間に位置し且つ距離w6および距離w7が一定の一定領域と、が存在する形態が含まれる。
【0046】
図1に示す例において、外径増加部53の外径増加面531は、フランジ部2の第2面2bおよびセンタリング部本体52の側面に接続している。また接続部54の外径減少面541は、フランジ部2の第2面2bおよびセンタリング部本体52の側面に接続している。また、外径増加面531と外径減少面541とは、突起からなる羽根部51の稜線55において接続している。
【0047】
外径増加部53は、第1傾斜面532と、第2傾斜面533とを有する。
【0048】
図1に示すように、外径増加部53の外径増加面531は、軸線LAに対して傾斜した第1傾斜面532と、第1傾斜面532よりも軸線方向DAのねじ部3側に位置する第2傾斜面533とを有している。第2傾斜面533は、第1傾斜面532よりも進入方向SA1の側、換言すれば第1傾斜面532よりも軸線方向DAのねじ部3側に位置する。第1傾斜面532が軸線LAに対して傾斜する角度と、第2傾斜面533が軸線LAに対して傾斜する角度とは、異なっている。すなわち、ボルト1の軸線LAを通る断面において、第1傾斜面532は軸線LAに対して第1角度θ1だけ傾斜し、第2傾斜面533は軸線LAに対して第2角度θ2だけ傾斜している。
【0049】
上述したように、
図7は、ボルト1の軸線LAを通る断面を示す断面図に相当する。
【0050】
図7に示すように、第2傾斜面533の第2角度θ2は第1傾斜面532の第1角度θ1よりも大きい。より具体的に説明すると、ボルト1の断面において、第2傾斜面533が軸線LAに対して傾斜する角度である第2角度θ2は、第1傾斜面532が軸線LAに対して傾斜する角度である第1角度θ1よりも大きい。
【0051】
一例として、第1傾斜面532は、滑らかな曲面である。第1傾斜面532および第2傾斜面533の各々は、緩め回転方向SB2に向かって軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6を徐々に増加させるように、円周方向DBに対して傾斜している。また、第1傾斜面532および第2傾斜面533の各々は、後退方向SA2に向かって軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6を徐々に増加させるように、軸線方向DAに対して傾斜している。
【0052】
図8は、ボルト1のセンタリング部5の周辺を、半径方向DCから見た様子を示す側面図である。
図1および
図8に示すように、第1傾斜面532と第2傾斜面533は、傾斜面稜線534において接続している。そして、
図1および
図8に示すように、傾斜面稜線534は、締め付け回転方向SB1に向かうにつれてフランジ部2から遠ざかるように傾斜する。
図8に示す例において、傾斜面稜線534は、締め付け回転方向SB1に向かうにつれてフランジ部2から遠ざかるように、軸線方向DAに対して傾斜している。また、傾斜面稜線534は、締め付け回転方向SB1に向かうにつれて軸線LAに近づくように、円周方向DBに対して傾斜している。
【0053】
図1、
図7および
図8に示す例において、第1傾斜面532は、フランジ部2の第2面2bに接続している。また、
図1、
図7および
図8に示す例において、第2傾斜面533は、センタリング部本体52の側面に接続している。
【0054】
一例として、センタリング部5は、3以上6以下の個数の羽根部51を有する。
図1および
図6に示す例において、センタリング部5は3個の羽根部51を有する。一例として、複数の羽根部51は同一の形状を有する。
図6に示す例において、複数の羽根部51は、円周方向DBに等間隔に並んでいる。
【0055】
(作用)
次に、このような構成からなるボルト1の作用について説明する。特に、
図3に示すような板状の形状を有する第1の部品7と第2の部品8とをボルト1によって接合させる際の、ボルト1の作用について説明する。まず、第1孔71を有する第1の部品7と、第2孔81を有する第2の部品8とを準備する。
【0056】
次に、
図9に示すように、第1孔71と第2孔81とが合うようにして第1の部品7と第2の部品8とを重ねて配置する。
図9に示す例においては、板状の形状を有する第1の部品7および第2の部品8が、水平面Gに非平行に配置されている。特に、第1の部品7および第2の部品8は、水平面Gに垂直に配置されている。
図9に示す例において、第2の部品8は、水平面Gに支持されているが、第1の部品7は、水平面Gから離間している。
【0057】
次に、ボルト1のねじ部3を進入方向SA1の側の先端から第2孔81に通過させた上で、ねじ部3の外ねじ31を第1孔71に設けられた内ねじ72に部分的に噛み合わせる。例えば、第1の部品7および第2の部品8を保持して固定した上で、ボルト1のねじ部3の進入方向SA1の側の先端を第1孔71に近づけつつ、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させることによって、外ねじ31を内ねじ72に部分的に噛み合わせることができる。ねじ部3の外ねじ31を第1孔71に設けられた内ねじ72に部分的に噛み合わせる操作は、例えばボルト1の使用者の手で行われる。
【0058】
次に、ボルト1を締め付け回転方向SB1にさらに回転させる。これによって、ボルト1が第1の部品7に締め付けられて、ボルト1が第1の部品7に対して進入方向SA1に進入する。ボルト1を締め付け回転方向SB1にさらに回転させる場合、例えばボルト1の頭部4を保持できる工具を用いてボルト1を回転させることができる。
図2に示す略六角柱状の形状の頭部4を有するボルト1の場合、ボルト1を回転させる工具として、例えば六角ソケットを有するソケットレンチが用いられる。
【0059】
ボルト1を締め付け回転方向SB1へ回転させる場合、まず第1の部品7が第2の部品8に接触し、次にボルト1のフランジ部2が第2面2bにおいて第2の部品8に接触する。これによって、
図3に示すように、第2の部品8がボルト1のフランジ部2と第1の部品7との間に挟まれて、第1の部品7に対する第2の部品8の位置が固定される。以上により、ボルト1によって第1の部品7と第2の部品8とが接合される。
【0060】
ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させ、ボルト1を第1の部品7に対して進入方向SA1に進入させることにより、センタリング部5の作用によって、第1の部品7に対する第2の部品8の位置を修正できる。特に、
図9に示すように第1の部品7および第2の部品8が水平面Gに対して直交し、かつ第2の部品8が水平面Gから離間している場合には、第2の部品8は重力の作用のために下方にずれやすい。このような場合にも、センタリング部5の作用によって、第1の部品7に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0061】
以下、ボルト1のセンタリング部5の作用について説明する。ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させ、ボルト1の第1の部品7に対する進入方向SA1への進入を進行させることにより、センタリング部5は第2の部品8の第2孔81に進入する。センタリング部5が第2孔81に進入すると、羽根部51の外径増加部53が第2孔81の内壁に接触する。特に、センタリング部5が第2孔81に十分に進入すると、複数の羽根部51の外径増加部53の各々が、外径増加面531において第2孔81の内壁に接触する。一例として、外径増加部53の各々は、第1傾斜面532において第2孔81の内壁に接触する。
【0062】
センタリング部5を、進入方向SA1の側の先端から
図7の線X-Xの位置まで、第2孔81に進入させたときに、複数の羽根部51の外径増加部53の各々が、外径増加面531において第2孔81の内壁に接触する。さらにボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させることによって、センタリング部5を、さらに
図7の線XI-XIの位置まで第2孔81に進入させる。
【0063】
このときのボルト1のセンタリング部5の作用を、図面を用いてさらに述べる。ここで、
図10は、
図7の線X-Xに沿って切断したボルト1のフランジ部2が位置する側の部分を、ねじ部3側から見た様子を示す断面図である。
図11は、
図7の線XI-XIに沿って切断したボルト1のフランジ部2が位置する側の部分を、ねじ部3側から見た様子を示す断面図である。
図10および
図11においては、ボルト1のうち、センタリング部5の周辺のみを示している。
【0064】
図10に示す一点鎖線は、
図7の線X-Xにおけるセンタリング部5の断面を示す
図10における、センタリング部5の断面の輪郭線の外接円C1である。
図11に示す一点鎖線は、
図7の線XI-XIにおけるセンタリング部5の断面を示す
図11における、センタリング部5の断面の輪郭線の外接円C2である。
図10および
図11に示す例において、外接円C1および外接円C2は、複数の羽根部51の外径増加部53の各々に接している。特に、外接円C1および外接円C2は、外径増加部53の各々に第1傾斜面532において接している。
【0065】
図7に示すように、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、フランジ部2に向かう軸線方向DAに沿って、徐々に増加する。このために、
図11に示すセンタリング部5の断面の輪郭線の外接円C2の半径w3は、
図10に示すセンタリング部5の断面の輪郭線の外接円C1の半径w2よりも大きい。このため、複数の羽根部51の外径増加部53の各々が外径増加面531において第2孔81の内壁に接触した状態から、さらにセンタリング部5の第2孔81への進入を進行させることによって、以下の効果が得られる。すなわち、センタリング部5の、より外径の大きな部分を第2孔81に進入させて、センタリング部5を第2孔81により強固に密着させて、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。ボルト1が第1の部品7に締め付けられ、かつセンタリング部5に対する第2の部品8の位置が修正されることによって、第1の部品7に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0066】
また、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、ボルト1の締め付け回転方向SB1とは反対側の方向に向かって、徐々に増加する。本実施の形態において、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6が徐々に増加していることにより、以下のような効果を奏する。以下、本実施の形態による作用効果について、比較例と比較することによって説明する。比較例として、センタリング部5を有さず、センタリング部5の位置に円錐台形状部105を有する以外は、本開示の実施の形態のボルト1と同様の形状を有するボルト100が用いられる。
図12は、比較例のボルト100を半径方向DCから見た様子を示す側面図である。
図12に示す破線は、比較例のボルト100におけるフランジ部102、ねじ部103、頭部104および円錐台形状部105の境界を便宜的に示す線である。
図12に示すように、比較例のボルト100の円錐台形状部105は、後退方向SA2に向かって円錐台形状部105の外径を徐々に増加させるように傾斜した側面105aを有する。
【0067】
比較例のボルト100においてボルト100を締め付け回転方向SB1に回転させ、ボルト100を第1の部品7に対して進入方向SA1に進入させるにつれて、円錐台形状部105が第2の部品8の第2孔81に進入する。円錐台形状部105を第2孔81に進入させることで、円錐台形状部105の側面105aが軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる。このことによって、円錐台形状部105に対する第2の部品8の位置が修正される。比較例のボルト100においては、ボルト100が第1の部品7に締め付けられ、かつ円錐台形状部105に対する第2の部品8の位置が修正されることによって、第1の部品7に対する第2の部品8の位置が修正される。
【0068】
しかしながら、比較例のボルト100においては、側面105aが軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられることによって、第2孔81の内壁および側面105aが変形するおそれがある。第2孔81の内壁および側面105aの変形を抑制するために、側面105aの傾斜に対応した傾斜を第2孔81の内壁に形成して、第2孔81の内壁に側面105aが押し付けられた際に第2孔81の内壁および側面105aに加わる力を低減することも考えられる。しかしながら、この場合、第2孔81の内壁に傾斜を形成する加工を施す分だけ、第2の部品8の製造の工程数が増えてしまう。また、第2の部品8の厚みが小さいと、第2孔81の内壁に傾斜を形成することが困難になってしまう。このため、比較例のボルト100を用いて第1の部品7と接合できる第2の部品8が、一定以上大きな厚みを有する部品に限定されてしまう。
【0069】
これに対して、本開示の実施の形態のボルト1においては、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、フランジ部2に向かう軸線方向DAに沿って、徐々に増加する。また、軸線LAから外径増加部53の外縁までの距離w6は、ボルト1の締め付け回転方向SB1とは反対側の方向に向かって、徐々に増加する。このため、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させると、外径増加部53が第2孔81の内壁に接触する。外径増加部53が第2孔81の内壁に接触することで、ボルト1の回転する回転力を外径増加部53から第2孔81の内壁側へ半径方向DCに向かう力として伝えるカム作用により、センタリング部5に対して第2の部品8の位置を修正できる。
【0070】
特に、複数の羽根部51の外径増加部53の各々が第2孔81の内壁に接触した状態で、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させることによって、ボルト1の回転力を複数の外径増加部53の各々から第2孔81の内壁の複数箇所に伝えることができる。これによって、特に効率的にボルト1の回転力を利用して、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0071】
本開示の実施の形態のボルト1によれば、センタリング部5が軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる力とともに、ボルト1の回転力を利用して、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。このため、センタリング部5が軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる力を、比較例のボルト100において円錐台形状部105の側面105aが軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる力ほど大きくしなくても、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。これによって、本開示の実施の形態のボルト1においては、センタリング部5が軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる力を小さくして、第2孔81の内壁およびセンタリング部5の変形を抑制できる。また、本開示の実施の形態のボルト1においては、第2孔81の内壁に傾斜を形成する必要がない。このため、第2の部品8の製造の工程数の増加を抑制できる。さらに、第2の部品8として、第2孔81の内壁に傾斜を形成することが困難な、厚みの小さい部品を用いることができる。
【0072】
特に、
図9に示すように第1の部品7および第2の部品8が水平面Gに非平行に配置されており、第2の部品8が重力の作用のために下方にずれやすい場合に、ボルト1の回転力を利用して、第2の部品8の下方へのずれを修正できる。
【0073】
また、本開示の実施の形態のボルト1においては、センタリング部5が軸線方向DAから第2孔81の内壁に押し付けられる力とともに、ボルト1の回転力を利用して、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。このために、
図8に示す羽根部51の軸線方向DAにおける幅w4を、
図12に示す比較例のボルト100の円錐台形状部105の軸線方向DAにおける幅w5と比較して小さくしつつ、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正するセンタリング部5の効果を十分に得ることができる。これによって、第2の部品8として厚みの小さい部品を用いた場合であっても、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正するセンタリング部5の効果を十分に得ることができる。羽根部51の軸線方向DAにおける幅w4は、例えば0.7mm以下である。また、
図3に示す第2の部品8の厚みw8が小さい場合であっても、羽根部51の軸線方向DAにおける幅w4を、第2の部品8の厚みw8以下とすることができる。一例として、羽根部51の軸線方向DAにおける幅w4は、第2の部品8の厚みw8の0.8倍以上1倍以下である。なお、羽根部51の軸線方向DAにおける幅w4は、第2の部品8の厚みw8より大きくてもよい。
【0074】
また、
図6に示す軸線LAから羽根部51の外縁までの最大距離w9は、
図3に示す第2の部品8の第2孔81の半径w10の、0.95倍以上1倍以下であることが好ましい。距離w9が半径w10の0.95倍以上1倍以下であることによって、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正する羽根部51の効果を、より効率的に生じさせることができる。
【0075】
また、本開示の実施の形態のボルト1において、外径増加部53は、第1傾斜面532と、第1傾斜面532よりも軸線方向DAのねじ部3側に位置する第2傾斜面533とを有する。第1傾斜面532は、ボルト1の軸線LAを通る断面において、軸線LAに対して第1角度θ1だけ傾斜する。また、第2傾斜面533は、ボルト1の軸線LAを通る断面において、軸線LAに対して第2角度θ2だけ傾斜する。そして、第2角度θ2は第1角度θ1よりも大きい。これによって、以下の効果が得られる。
【0076】
まず、ボルト1を第1の部品7の第1孔71と第2の部品8の第2孔81に挿入する際、ボルト1のセンタリング部5は、最初に、第2傾斜面533において第2の部品8の第2孔81内に挿入される。この場合、第2傾斜面533の傾斜する第2角度θ2は、第1傾斜面532の傾斜する第1角度θ1よりも大きな角度に設定される。これによって、
図6に示すようにボルト1をねじ部3側から見た場合に視認される第2傾斜面533の面積は、第1傾斜面532の面積と比較して大きくなりやすい。このため、第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きいことによって、次のような効果が得られる。まず、第1の部品7に対する第2の部品8の位置が大きくずれた状態で、ボルト1のねじ部3を第2孔81に通過させた上で、第1の部品7に対するボルト1の締め付けを進行させる場合について考える。ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させ、第1の部品7に対してボルト1を締め付けると、第2の部品8の第2孔81に対してボルト1のセンタリング部5が進入方向SA1に接近する。この場合、第1の部品7に対する第2の部品8の位置が大きくずれていると、第2孔81に対してセンタリング部5を進入方向SA1に接近させるのみでは、第2孔81の内壁が第1傾斜面532に接触しないことがあり得る。本実施の形態によれば、羽根部51が第2傾斜面533を有し、第2角度θ2が第1角度θ1よりも大きいことによって、第2孔81の内壁が第2傾斜面533に接触しやすくなる。そして、第2孔81の内壁を第2傾斜面533の少なくとも一部に接触させた上で、第1の部品7に対するボルト1の締め付けをさらに進行させることによって、第2孔81の内壁を第2傾斜面533に沿ってスライドさせて、第1傾斜面532に接触させることができる。
【0077】
次に、ボルト1のセンタリング部5は、第1傾斜面532において第2の部品8の第2孔81の内壁と接触する。このとき、第1傾斜面532の傾斜する第1角度θ1は、第2傾斜面533の傾斜する第2角度θ2よりも小さな角度に設定される。第1角度θ1が小さいほど、半径方向DCにおける第1傾斜面532と軸線LAとの距離が、フランジ部2から離間した位置においても比較的大きくなる。これによって、フランジ部2から離間した位置においても、第1傾斜面532が第2孔81の内壁に接触しやすくなる。複数の羽根部51の外径増加部53の各々が第1傾斜面532において第2孔81の内壁に接した状態で、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させることによって、ボルト1の回転力を外径増加部53の各々から第2孔81の内壁に伝えることができる。これによって、ボルト1の回転力を効率的に利用して、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0078】
また、本開示の実施の形態のボルト1において、第1傾斜面532と第2傾斜面533とが接続することによって形成される傾斜面稜線534は、締め付け回転方向SB1に向かうにつれてフランジ部2から遠ざかるように傾斜する。このため、外径増加面531の、より進入方向SA1の側においては、外径増加面531の全体に対して第1傾斜面532が占める割合が小さくなり、第2傾斜面533が占める割合が大きくなる。また、外径増加面531の、より後退方向SA2の側においては、外径増加面531の全体に対して第1傾斜面532が占める割合が大きくなり、第2傾斜面533が占める割合が小さくなる。このため、センタリング部5の、より進入方向SA1の側においては、第2孔81の内壁が第2傾斜面533に接触しやすくなる。これによって、センタリング部5の、より進入方向SA1の側においては、外径増加面531のうち特に第2傾斜面533によって発揮される効果を得やすくなる。すなわち、センタリング部5の、より進入方向SA1の側においては、第2の部品8の位置が大きくずれている場合に、第2孔81の内壁を第2傾斜面533に沿ってスライドさせて、第1傾斜面532に接触させやすくなる。その一方で、センタリング部5の、より後退方向SA2の側においては、第2孔81の内壁が第1傾斜面532に接触しやすくなる。これによって、センタリング部5の、より後退方向SA2の側においては、外径増加面531のうち特に第1傾斜面532によって発揮される効果を得やすくなる。すなわち、複数の羽根部51の外径増加部53の各々を、第1傾斜面532において第2孔81の内壁に接触させ、ボルト1の回転力を効率的に利用して、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0079】
また、本開示の実施の形態のボルト1において、センタリング部5は、上記のように3以上6以下の個数の羽根部51を有する。
【0080】
センタリング部5が有する羽根部51の数が3以上であることによって、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させ、センタリング部5を第2孔81に進入させた際に、第2孔81の内壁を羽根部51に3箇所以上で接触させることができる。これによって、ボルト1をさらに締め付け回転方向SB1に回転させるときに、第2孔81の内壁が羽根部51を有するセンタリング部5に3箇所以上で支持されている状態を維持して、安定的にセンタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正できる。
【0081】
他方センタリング部5が有する羽根部51の数が6以下であることによって、以下の効果が得られる。羽根部51の1つあたりの円周方向DBに沿った長さを、大きくできる。特に、羽根部51のうち外径増加部53の1つあたりの円周方向DBに沿った長さを、大きくできる。これによって、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正する羽根部51の効果を、より効率的に生じさせることができる。また、ボルト1や第2の部品8の第2孔81の形状の歪みなどに起因して、センタリング部5を第2孔81に進入させた際に、第2孔81の内壁に接触しない羽根部51が生じ得る。羽根部51の数を6以下とすることで、第2孔81の内壁に接触しない羽根部51の数が多くなることを抑制し、センタリング部5に対する第2の部品8の位置を修正するというセンタリング部5の効果を、より効率的に生じさせることができる。
【0082】
なお、上述した実施の形態に対して、様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0083】
(変形例)
上述した実施の形態においては、ボルト1が、第1の部品7と第2の部品8との2つの部品を接合させる例について説明した。しかしながら、ボルト1が接合させる対象は、これに限られない。ボルト1により、第1の部品7および第2の部品8を含む3つ以上の部品を接合してもよい。
【0084】
図13は、変形例のボルト1が、第1の部品7および第2の部品8を含む3つ以上の部品を接合させている様子の一例を示す断面図である。
図13に示す破線は、フランジ部2、ねじ部3、頭部4およびセンタリング部5の境界を便宜的に示す線である。
図13に示す例において、ボルト1により、第1の部品7および第2の部品8とともに、第3の部品9が接合される。
【0085】
ボルト1によって接合される複数の部品のうち第1の部品7および第2の部品8以外の第3の部品9は、ボルト1の一部が挿入される第3孔91を有する。第3の部品9の第3孔91には、ボルト1のねじ部3およびセンタリング部5の少なくともいずれか一方が挿入される。
図13に示す例において、第3の部品9は、矛盾しない限り、上述した第2の部品8と同様の構造をもつ。
【0086】
第1の部品7および第2の部品8を含む3つ以上の部品は、以下の方法によって、ボルト1によって接合され得る。まず、第1孔71と、第2孔81と、第3の部品9の第3孔91と、が一致するように、第1の部品7と第2の部品8とを重ね、かつ第1の部品7と第2の部品8との間に第3の部品9を挟む。次に、ボルト1のねじ部3を、進入方向SA1の側の先端から、第2孔81および第3の部品9の第3孔91に通過させる。次に、ボルト1を締め付け回転方向SB1に回転させて、ねじ部3の外ねじ31を第1孔71に設けられた内ねじ72に噛み合わせ、ボルト1を第1の部品7に締め付ける。以上により、ボルト1によって第1の部品7および第2の部品8を含む3つ以上の部品を接合させることができる。
図13に示す例において、第3の部品9は、第1孔71と第2孔81と第3孔91とが一致するように、第1の部品7と第2の部品8との間に挟まれている。また、ボルト1のねじ部3は第2孔81および第3孔91を通過しており、ボルト1は第1の部品7に締め付けられている。
【0087】
上記変形例において、センタリング部5は、第2孔81に挿入されるとともに、第3の部品9の第3孔91に挿入されてもよい。特に、センタリング部5のうち羽根部51の外径増加部53は、第3の部品9の第3孔91に位置してもよい。これによって、第3の部品9の第3孔91の壁面に羽根部51の外径増加部53を接触させ得る。このため、第3の部品9についても、センタリング部5の効果により、センタリング部5に対する位置を修正し、これにより第1の部品7に対する位置を修正し得る。
【0088】
図13に示す例においては、センタリング部5の一部が、第3の部品9の第3孔91に挿入されている。特に、センタリング部5のうち羽根部51の外径増加部53が、第3孔91に位置している。この場合、第3の部品9の第3孔91の壁面に羽根部51の外径増加部53を接触させて、センタリング部5の効果により、センタリング部5に対する第3の部品9の位置を修正し得る。上記変形例において、第1の部品7および第2の部品8以外の部品として、第3の部品9を第1の部品7と第2の部品8との間に介在させた例を示したが、これに限らず、第1の部品7および第2の部品8以外の部品として第3の部品9および第4の部品を設け、この第3の部品9および第4の部品を第1の部品7と第2の部品8との間に介在させてもよい。
【0089】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 ボルト
2 フランジ部
3 ねじ部
31 外ねじ
32 ねじ部本体
4 頭部
5 センタリング部
51 羽根部
52 センタリング部本体
53 外径増加部
531 外径増加面
532 第1傾斜面
533 第2傾斜面
534 傾斜面稜線
54 接続部
541 外径減少面
55 稜線
7 第1の部品
71 第1孔
72 内ねじ
8 第2の部品
81 第2孔