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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】炭化水素油の接触分解方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/18 20060101AFI20230925BHJP
   B01J 8/28 20060101ALI20230925BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20230925BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J8/28
B01J38/12 C
B01J29/90 M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021502767
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CN2019095950
(87)【国際公開番号】W WO2020015602
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】201810779819.0
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲きょう▼劍洪
(72)【発明者】
【氏名】張執剛
(72)【発明者】
【氏名】魏曉麗
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530436(JP,A)
【文献】特表2011-513558(JP,A)
【文献】特表2009-531338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357917(US,A1)
【文献】特開2015-025134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油原料を、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む反応器で接触分解触媒と接触反応させる工程を含む炭化水素油の接触分解方法であって、
前記高速流動床中に1つ以上の補充触媒のストリームを導入し、前記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の20%-90%の高さに導入されて、前記触媒の軸方向固形分率εが下方から上方へ0.1~0.2の範囲に維持される、方法。
【請求項2】
重質原料油から低炭素オレフィンを製造するために使用され、以下の工程を含む、請求項1に記載の方法
i)軽質原料油及び/又は重質原料油を含む第1の反応原料油を、希薄相輸送流動床中で接触分解触媒と接触させて、第1の接触分解反応を行う工程、及び
ii)工程i)の反応流出物と、任意に軽質原料及び/又は重質原料油を含む第2の反応原料とを高速流動床中で第2の接触分解反応させる工程、
前記軽質原料がC4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の反応原料の少なくとも1つが、前記重質原料油を含み、
ただし、前記高速流動床中に1つ以上の補充触媒のストリームを導入し、前記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の20%-90%の高さに導入されて、前記高速流動床において、前記触媒の軸方向固形分率εが下方から上方へ0.1~0.2の範囲内に維持される。
【請求項3】
以下の工程をさらに含む、請求項2記載の方法
iii)前記反応器からの反応流出物を分離して、低炭素オレフィンに富む反応生成物及び使用済み触媒を得る工程、
iv)前記使用済み触媒を再生し、得られた再生触媒の少なくとも一部を前記接触分解触媒として工程i)に戻す工程、及び
v)任意に、前記反応生成物を分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る工程。
【請求項4】
記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、0-1.0重量%の炭素含有量を有し、またそれぞれ独立して、再生、半再生または使用済みの接触分解触媒から選択され、且つ前記1つ以上の補充触媒のストリームの総量は、反応器触媒の循環量の5-50重量%を占め、及び、
前記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の20%-80%の高さに導入される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の補充触媒のストリームの総量は、反応器触媒の循環量の5-30重量%を占め、
前記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の30%-75%の高さに導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、1-50重量%のゼオライト、5-99重量%の無機酸化物、及び0-70重量%のクレーを含み、
前記ゼオライトがメソ細孔性ゼオライト及び任意のマクロ細孔性ゼオライトを含み、前記メソ細孔性ゼオライトがZSM系ゼオライト、ZRPゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、前記マクロ細孔性ゼオライトが希土類Y型ゼオライト、希土類水素Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、高ケイ素Y型ゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項2-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、5-45重量%のゼオライト、10-80重量%の無機酸化物、及び5-60重量%のクレーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、10-40重量%のゼオライト、20-70重量%の無機酸化物、及び10-50重量%のクレーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が500-600℃であること、反応時間が0.05-5秒であること、触媒対油重量比が1:1-50:1であること、水対油重量比が0.03:1-0.5:1であること、触媒密度が20-100kg/m3であること、蒸気速度が4-18m/sであること、反応圧力が130-450kpaであること、触媒質量流量Gs が180-500kg/(m2・s)であること、を含み、
記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が510-650℃であること、反応時間が1-20秒であること、触媒対油重量比が3:1-50:1であること、水対油重量比が0.03:1-0.8:1であること、触媒密度が120-290kg/m3であること、蒸気速度が0.8-2.5m/sであること、反応圧力が130-450kpaであること、触媒質量流量Gs が15-150kg/(m2・s)であること、を含む、請求項2-8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が520-580℃であること、反応時間が1-3秒であること、触媒対油重量比が5:1-25:1であること、水対油重量比が0.05:1-0.3:1であること、を含み、
前記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が550-620℃であること、反応時間が3-15秒であること、触媒対油重量比が10:1-30:1であること、水対油重量比が0.05:1-0.5:1であること、触媒密度が150-250kg/m 3 であること、蒸気速度が1-1.8m/sであること、反応圧力が130-450kpaであること、触媒質量流量G s が20-130kg/(m 2 ・s)であること、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重質原料油は、低質重油であり、その性質は、以下の指標、即ち、20℃の密度が900-1000kg/m3であり、残留炭素が2-10重量%であり、ニッケル及びバナジウムの合計含有量が2-30ppmであり、固有係数K値が12.1未満である、と言う指標の少なくとも1つを満たす、請求項2-10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記重質原料油は、重質石油炭化水素、他の鉱油及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される低質重油であり、
前記重質石油炭化水素は、減圧残油、低質常圧残油、低質水素化残油、コーカー軽油、脱瀝油、減圧蝋油、高酸価原油、高金属原油、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、且つ
前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、シェール油、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項2-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の反応原料及び第2の反応原料の少なくとも一方は、前記C4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される軽質原料を含む、請求項2-10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の反応原料は、軽質原料及び重質原料油を含み、且つ前記軽質原料の少なくとも一部は、前記重質原料油が前記希薄相輸送流動床に導入される位置の上流で前記希薄相輸送流動床に導入され、
前記第1の反応原料は重質原料油を含み、また前記第2の反応原料は前記軽質原料を含み、または
前記第1の反応原料は前記軽質原料を含み、また前記第2の反応原料は重質原料油を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記高速流動床は、下から順に、全濃密相反応ゾーン及び移行部を備え、前記全濃密相反応ゾーンは、断面がほぼ円形で、底端及び頂端が開口した等径または変径の中空筒体の形態であり、前記希薄相輸送流動床は前記全濃密相反応ゾーンの底端に連通され、前記全濃密相反応ゾーンの頂端は、前記移行部を介して前記反応器の出口部に連通され、前記全濃密相反応ゾーンの底部には、任意に、前記第2の反応原料を供給するための入口が1つ以上設けられ、
ただし、前記全濃密相反応ゾーンの底端の断面直径は、前記希薄相輸送流動床の直径以上であり、頂端の断面直径は前記出口部の直径より大きく、前記全濃密相反応ゾーンの側壁には、1つ以上の補充触媒入口が設けられ、前記1つ以上の補充触媒入口は、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の20%-90%の高さに配置される、請求項2-14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記全濃密相反応ゾーンは、等径の中空円筒体の形態、または下方から上方へ直径が連続的または不連続的に増大する中空筒体の形態である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記全濃密相反応ゾーンは、逆中空截頭円錐体、2段以上の直径が連続的に増大する円筒体から構成された中空筒体、2段以上の直径が連続的に増大する逆截頭円錐体から構成された中空筒体、または1段以上の円筒体と1段以上の逆截頭円錐体から構成された中空筒体の形態である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、発明の名称が「希薄相輸送流動床と高速流動床を採用した接触分解の方法とシステム」である、2018年7月16日に中国特許庁に出願された中国特許出願第201810779819.0号に基づく優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本願は、接触分解の技術分野に属し、特に、炭化水素油の接触分解方法及びシステムに関する。
【0003】
〔背景技術〕
エチレンとプロピレンに代表される低炭素オレフィンは、化学産業の最も基本のな原料である。国内外の多くは天然ガスまたは軽質石油留分を原料とし、エチレン複合プラントにおける水蒸気分解プロセスを用いて低級オレフィンを製造する。ベンゼン、トルエン、キシレン(BTX)はBTXの消費量の45%程度を占める重要な基礎化学原料である。中国において、ポリエステルなどの産業の発展に伴い、BTXに対するニーズは急速に高まていくことが見込まれている。エチレンの約90%、プロピレンの約70%、ブタジエンの90%、および芳香族炭化水素の30%は、全て水蒸気分解から副産するものである。水蒸気分解技術は数十年の発展を経て、技術的に完備されつつあるが、エネルギー消費量が高く、製造コストが高く、CO2排出量が多く、製品構造の調整が容易ではない等の技術的限界があり、石油化学工業は、従来の水蒸気分解によるエチレン、プロピレンを製造するルートを採用すると、軽質原油が不足し、製造能力が不十分になり、コストが高すぎるなど幾つかの大きな制約因子に直面し、また、水蒸気分解原料の軽量化に伴い、プロピレンと軽質芳香族炭化水素の収率低下もさらに激化される需給矛盾になる。接触分解技術は、低炭素オレフィンおよび軽質芳香族炭化水素を製造するための製造プロセスに対する有益な補充として有用であり、石油精製および化学工業が一体化された企業にとって、触媒技術によるルートを用いた化学工業の原料の製造は、社会的および経済的に非常に有益である。
中国特許出願公開CN1234426Aには、重質油から低炭素オレフィン及び高級芳香族炭化水素ガソリンを同時に製造する方法であって、ライザー及び濃密相流動床からなる複合反応器内で、重質石油炭化水素及び水蒸気を接触分解反応させて、低炭素オレフィン、特にプロピレンの収率の向上を到達したと同時に、ガソリンにおける芳香族炭化水素の含有量を80重量%程度に増加させたことを含む方法が開示された。
【0004】
中国特許出願公開CN1393510Aには、重質石油炭化水素を接触転化してエチレンおよびプロピレンの生成を増加する方法であって、炭化水素油原料を、また、ライザーまたは流動床反応器内で、高シリカペンタシルゼオライトを含む触媒と接触して、反応させることを含む方法が開示されており、当該方法は、エチレンおよびプロピレンの収率を高めることだけでなく、触媒の水熱失活をある程度緩和するものである。
【0005】
中国特許出願公開CN1721510Aには、2反応ゾーン接触分解により低炭素オレフィンおよび芳香族炭化水素を製造する方法であって、2つの反応ゾーンで異なる重量時間空間速度を用いることにより、重質原料からプロピレン、エチレン等の低炭素オレフィンを最大限に製造し、プロピレンの収率を20重量%超にしながら、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素も同時に製造すると言う目的を達成する方法が開示されている。
【0006】
米国特許出願公開US2002003103AおよびUS2002189973Aには、分解反応によって生成されたガソリン(60-300°F/15-150℃)を第2のライザーに供給してさらに反応させ、触媒がUSYモレキュラーシーブ触媒とZSM-5モレキュラーシーブ触媒との混合物である、二重ライザーを採用したプロピレンの生成を増加するFCC装置が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開US2002195373A及び国際特許出願公開WO2017223310Aに開示された方法は、高温(1020-1200°F /550-650℃)、短い接触時間( <0.5秒)及び高い触媒対油比(15~25)の条件下で、ダウンフロー反応器を用いて操作されるものである。主触媒( Y型フォージャサイト)は、低い水素移動活性を有し、その配合は、軽質オレフィンの収率を最大化するように、操作条件と合わせて決定される。高効率分離器は、二次反応およびコークの形成を最小限にするために、0.1秒以内に生成物および触媒を分離する。さらに、LCOを用いて、分離されたガス生成物を約930°F /500℃に急冷し、過分解を防止する。
【0008】
米国特許第US6538169A号および米国特許出願公開第US2003121825A号に開示された方法も、2つの反応ゾーンおよび1つの共通の再生器から構成された反応-再生システムが採用されている。第1の反応ゾーンでは、重質原料を高温及び高い触媒対油比で分解して軽質オレフィン又は軽質オレフィンに転化しうる中間生成物にする。第2の反応ゾーンは、より厳しい運転条件下でガソリン製品からより多くの軽質成分を製造する第2ライザーからなる。ZSM-5のような形状選択性モレキュラーシーブを使用してガソリンから軽質オレフィンへの転化を助力するが、適用する原料としては、VGO、HVGO、及び水素化ガスオイルが挙げられる。
【0009】
中国特許出願公開CN1403540Aには、エチレンとプロピレンを製造するための触媒転化方法であって、ライザーと濃密相流動床とを直列に接続した反応器を使用し、軽質原料をライザーに注入し、より高過酷度で反応させ、反応生成物をコークス堆積触媒(coke-deposited catalyst)と共に流動床に入れ、比較的穏やかな条件下で反応を継続する方法が開示され、この方法では、エチレン+プロピレン+ブテンの収率がより高くなっている。
【0010】
中国特許出願公開CN102051213Aには、重質原料を少なくとも2つの反応ゾーンを含む第1のライザー反応器内で触媒と接触させて分解反応させる工程と、軽質原料及び分解された重油を第2ライザー反応器及び流動床反応器内で触媒と接触させて分解反応させる工程とを含む接触分解方法が開示された。この方法は、重油の接触分解に使用され、重油の転化率及びプロピレンの収率が高く、乾性ガス及びコークスの収率が低い。
【0011】
石油精製・化学工業における構造的矛盾は益々深刻であり、一方では従来の石油化学製品は過剰製造され、精製油の供給と需要との矛盾が顕著であり、他方では資源系製品や高級石油化学製品の不足も大きく、石油精製から化学産業への転換は急務となっている。精製と化学工業との間の橋梁としての触媒分解装置は、これまでにない圧力および挑戦に直面している。現在、接触分解装置では常圧残残油のブレンド割合が増加しており、減圧残残油をブレンドする要求も提案されているが、現在の接触分解技術は、減圧蝋状油又はパラフィン系常圧残残油を原料とすることが多く、最先端の接触分解技術は、二重ライザー又はライザーを直列に接続した密相床層を有する反応器を用いて、より高過酷度で、低炭素オレフィン及び/又は軽芳香族炭化水素の多産化を目指しており、かかる反応器は、残渣配合重油を処理する際に、高い乾気及びコークス収率を有することが避けられないという問題があった。ダウンフロー式反応器を採用するとコークス収率の低減は達成できるが、反応転化率が比較的低く、専用の触媒が必要となる。原料の重質化に伴って、接触分解装置での残油のブレンドの要求はますます高まり、低質重油資源を効率的に活用し、低炭素オレフィンや芳香族炭化水素等の化学工業原料の需要の高まりに対応するために、低質重油資源を高付加価値製品に転化する接触分解方法の開発が必要となっている。
【0012】
〔発明の概要〕
本願の目的は、炭化水素油原料、特に重質原料油から接触分解によってエチレンおよびプロピレンなどの低炭素オレフィンを製造するのに特に適した、新規な炭化水素油接触分解方法およびシステムを提供することである。本願の方法およびシステムを用いて接触分解を行うと、乾性ガスおよびコークスの収率が低く、製品の分布が良好である。
【0013】
上記目的を達成するために、一つの態様において、本願は、炭化水素油原料、特に重質原料油を、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む反応器で接触分解触媒と接触反応させる工程を含む炭化水素油の接触分解方法であって、前記高速流動床において、前記触媒の軸方向固形分率εが約0.1~約0.2の範囲に制御される、方法を提供する。
【0014】
別の態様では、本願は、炭化水素油、特に重質原料油の接触分解に有用なシステムであって、接触分解反応器、触媒分離デバイス、任意の反応生成物分離器、及び再生器を含むシステムを提供する。
【0015】
前記接触分解反応器は、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含み、反応物質の流れ方向において、前記希薄相輸送流動床が高速流動床と流体連通しており、且つ前記希薄相輸送流動床が前記高速流動床の上流に配置され、
前記希薄相輸送流動床は、底部に触媒入口、下部に第1の反応原料入口を備え、前記高速流動床は、頂部に出口及び底部に任意の第2の反応原料入口を備え、前記触媒分離デバイスは、入口、触媒出口及び反応生成物出口を備え、前記任意の反応生成物分離器は、反応生成物入口、乾性ガス出口、LPG出口、ガソリン出口、ディーゼル油出口及びスラリー出口を備え、前記再生器は、触媒入口及び触媒出口を備え、
前記希薄相輸送流動床の触媒入口は、前記再生器の触媒出口と流体連通しており、前記高速流動床の出口は、前記触媒分離デバイスの入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの反応生成物出口は、前記任意の反応生成物分離器の反応生成物入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの触媒出口は、前記再生器の触媒入口と流体連通している。
【0016】
本願によれば、高速流動床の触媒の軸方向固形分率εを約0.1から約0.2の範囲内に制御することにより、高速流動床における触媒密度を効果的に増加させることができ、その結果、反応の瞬間における触媒と炭化水素油原料との比率を大幅に増加させ、また、炭化水素と触媒との滞留時間を比較的長く制御して、触媒と炭化水素油原料、特に低質重油と十分に接触して反応させることができる。これにより、反応転化率だけでなく、低炭素オレフィン及び軽質芳香族炭化水素の収率を向上させることができると同時に、乾性ガスやコークスの発生を効果的に低減させて、製品の分布および製品の品質を改良させることができる。
【0017】
さらに、本願では、高速流動床に補充触媒を導入することにより、触媒対油比をより広い範囲で調整して、分解反応のためのより多くの活性部位を提供することができる。同時に、補充触媒の導入により、反応温度調整の機動性を増加し、高速流動床における温度及び触媒活性の勾配を効果的に調整することができる。
【0018】
本願の方法及びシステムを使用することにより、石油化学企業は、安価な低質重油から、高付加価値の化学工業原料を最大限に製造することができ、石油精製企業の精製および化学一体化プロセスを促進することができ、石油化学原料不足の問題を解決するだけでなく、石油化学産業の経済的・社会的利益を向上させることもできる。
【0019】
本願の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態の部分で詳細に説明される。
【0020】
〔図面の簡単な説明〕
図面は、本発明のさらなる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、以下の発明を実施するための形態とともに本発明を説明するために使用されるが、本発明を限定するものではない。図面において:
図1は、本願の好ましい実施形態の概略図であり、及び
図2は、本願の別の好ましい実施形態の概略図である。
【0021】
〔符号の説明〕
【0022】
【表1】
【0023】
〔発明を実施するための形態〕
本願は、特定の実施形態により以下にさらに詳しく説明されるが、本明細書に記載された特定の実施形態は、本願を例示し説明することのみを意図しているが、本発明をいかなる方法でも限定するものではないことが理解されるべきである。
【0024】
本明細書に開示された任意の特定の数値(数値範囲の端点を含む)は、当該数値の正確な値に限定されず、当該正確な値に近い値、例えば、当該正確な値の±5%の範囲内のすべての可能な数値を包含することを理解されるべきである。そして、開示された数値の範囲については、範囲の端点値の間、端点値と範囲内の特定の点値との間、及び各々の特定の点値の間を組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値の範囲を与えることができ、これらの新しい数値の範囲も本明細書に具体的に開示されているものと見なすべきである。
【0025】
本願では、前記希薄相輸送流動床及び高速流動床は、前記反応器の直列に接続された二つの反応ゾーンを構成しているため、それぞれ希薄相輸送流動床反応ゾーン及び高速流動床反応ゾーンと呼ばれることもある。
【0026】
本願では、「希薄相輸送流動床」という用語は、当技術分野の当業者によく知られている意味を有し、具体的には、触媒粒子が流体中に懸濁した状態で希薄相を形成し、流体とともに流動床の外に巻き込む流動床の形態を指す。
【0027】
本願において、「高速流動床」という用語は、当技術分野の当業者によく知られている意味を有し、具体的には、触媒粒子が高速流動化状態にある流動層の形態を指し、ここで高速流動化は、気泡のない気体-固体接触流動化であり、その重要な特徴は、固体粒子がクラスター状に移動する傾向があることである。触媒が高速流動化状態にあるとき、流動床における触媒の軸方向固形分率εは、通常に約0.05~約0.4の範囲にある。しかしながら、従来の高速流動層では、触媒は、通常には、上から下に向かって希薄~濃密なパターンで分布しており、例えば、上部の触媒の軸方向固形分率εは、約0.05~約0.1の範囲内であってもよく、下部の触媒の軸方向固形分率εは、約0.3~約0.4の範囲内であってもよい。
【0028】
本願によれば、前記高速流動床において、触媒の軸方向固形分率εは、下から上に向かって常に約0.1~約0.2の範囲内に制御される(即ち、当該反応ゾーンの軸方向に均等に分割された上、中、下の3つの部分において測定された触媒の軸方向固形分率εが、いずれも約0.1以上約0.2以下である)場合、前記高速流動床全体にわたる触媒は、擬均一な全濃密相分布になっている。したがって、触媒がこのような全濃密相分布になっている高速流動化反応ゾーンは、「全濃密相反応ゾーン」と呼ぶことができる。
【0029】
本願において、「水対油重量比」と言う用語は、反応器に注入された蒸気の総重量と原料の重量との比を意味する。
【0030】
本願において、「上流」及び「下流」とは、いずれも反応物質の流れ方向に基づくものである。例えば、反応物流が下から上へ流れる場合は、「上流」は下方に、「下流」は上方に位置していることを意味する
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有し、用語が本明細書で定義され、その定義が当業者の通常の理解と異なる場合、本明細書の定義が優先される。
【0031】
本出願において、明示的に記載された事項以外に言及されていない事柄または事項は、当該技術分野で公知のものをそのまま適用することができ、変更を要しない。さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれも、本明細書に記載される1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、それによって形成される技術案または技術思想は、その組み合わせが当業者の意見で明らかに不合理でない限り、本発明の元の開示または元の記載の一部と考えられるべきである。
【0032】
本明細書で言及される、教科書および定期刊行物などを含むがこれらに限定されないすべての特許および非特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
第1の態様において、本願は、炭化水素油原料、特に重質原料油を、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む反応器で接触分解触媒と接触反応させる工程を含む炭化水素油の接触分解方法であって、前記高速流動床において、前記触媒の軸方向固形分率εが約0.1~約0.2の範囲に制御される、方法を提供する。
【0034】
好ましい実施形態において、本願による方法は、重質原料油からエチレンおよびプロピレンなどの低炭素オレフィンを製造するためのものであり、かつ、以下の工程をさらに有する。
i) 軽質原料油及び/又は重質原料油を含む第1の反応原料油を、希薄相輸送流動床中で接触分解触媒と接触させて、第1の接触分解反応を行う工程、及び
ii) 工程i) の反応流出物と、任意に軽質原料及び/又は重質原料油を含む第2の反応原料とを高速流動床中で第2の接触分解反応させる工程、
前記軽質原料がC4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の反応原料の少なくとも1つが、前記重質原料油を含み、
ただし、前記高速流動床において、前記触媒の軸方向固形分率εは、約0.1~約0.2の範囲内に制御される。
【0035】
本願によれば、前記高速流動床における触媒の軸方向固形分率εを下から上に向かって常に約0.1~約0.2の範囲内に制御することにより、触媒が当該高速流動床において上から下に向かって希薄~濃密なパターンで分布することを防止し、前記高速流動床上下の実際の触媒対油比を一致にすることができ、それによって乾性ガス及びコークの収率を減少し、目的生成物の収率を向上することができる。
【0036】
さらなる好ましい実施形態では、本願の方法は、以下の工程をさらに含む。
i) 前記第1の反応原料と接触分解触媒とを希薄相輸送流動床中で接触させ、第1の接触分解反応を行う工程、
ii )工程i )の反応流出物および任意の第2の反応原料を、低炭素オレフィンを生成するのに有効な条件下で高速流動床中で第2の接触分解反応させる工程であって、前記高速流動床における前記触媒の軸方向固形分率εが約0.1~約0.2の範囲に制御される工程、
iii) 前記反応器からの反応流出物を分離して、低炭素オレフィンに富む反応生成物及び使用済み触媒を得る工程、
iv) 前記使用済み触媒を再生し、得られた再生触媒の少なくとも一部を前記接触分解触媒として工程i)に戻す工程、及び
v) 任意に、前記反応生成物を分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る工程。
【0037】
本願によれば、「低炭素オレフィンを生成するのに有効」とは、反応原料の少なくとも一部を前記高速流動床中で効果的な分解、例えば深い接触分解を受けて、エチレン及びプロピレンのような低炭素オレフィン生成物を生成し、得られた生成物混合物は、低炭素オレフィンに富むようにすることを意味する。
【0038】
本願によれば、「低炭素オレフィンに富む」とは、前記反応生成物または生成物混合物における低炭素オレフィン(例えばエチレン及びプロピレン)の合計含有量が、前記反応生成物または生成物混合物の約10%重量超、好ましくは約15%重量超、より好ましくは約20%重量超であることを意味する。
【0039】
ある特定の実施形態では、前記工程i)の前及び/または前記工程ii)の後に、本願の方法は、1つ以上の追加の反応工程、例えば、希薄相輸送流動床、濃密相流動床、従来の高速流動床などの追加の流動床反応ゾーン中で接触分解及び/または接触異性化などの反応工程をさらに含んでもよい。
【0040】
他の特定の実施形態では、本願の方法は、工程i )の前および工程ii )の後に追加の反応工程を含まない。
【0041】
ある特定の特に好ましい実施形態では、本願の方法は、以下の工程をさらに含む。
i) 予熱された低質重油を含む第1の反応原料を、希薄相輸送流動床の下部から希薄相輸送流動床に導入して接触分解触媒と接触させ、前記希薄相輸送流動床を下から上へ通過する間に第1の接触分解反応を行い、第1の反応生成物及び半使用済み触媒を含む反応流出物を得る工程、
ii) 工程i)の反応流出物を高速流動床の底部に導入し、任意の、高速流動床の底部から導入された軽質原料を含む第2の反応原料とともに、前記高速流動床を下から上へ通過する間に第2の接触分解反応を行い、第2の反応生成物及び使用済み触媒を含む反応流出物を得る工程であって、前記高速流動床において、触媒の軸方向固形分率εが0.1≦ε≦0.2を満たすように制御される工程、
iii) 工程ii)の反応流出物における第2の反応生成物を使用済み触媒から分離する工程、
iv) 前記使用済み触媒をコークス燃焼による再生のために再生器に供給し、得られた再生触媒の少なくとも一部を前記接触分解触媒として工程i)に戻す工程、及び
v) 任意に、得られた第2の反応生成物を分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る工程。
【0042】
他の特に好ましい実施形態において、本願の方法は、以下の工程をさらに含む。
i) 軽質原料を含む第1の反応原料を、希薄相輸送流動床の下部から希薄相輸送流動床に導入して接触分解触媒と接触させ、前記希薄相輸送流動床を下から上へ通過する間に第1の接触分解反応を行い、第1の反応生成物及び半使用済み触媒を含む反応流出物を得る工程、
ii) 工程i)の反応流出物を高速流動床の底部に導入し、高速流動床の底部から導入された予熱された低質重油を含む第2の反応原料とともに、前記高速流動床を下から上へ通過する間に第2の接触分解反応を行い、第2の反応生成物及び使用済み触媒を含む反応流出物を得る工程であって、前記高速流動床において、触媒の軸方向固形分率εが0.1≦ε≦0.2を満たすように制御される工程、
iii) 工程ii)の反応流出物における第2の反応生成物を使用済み触媒から分離する工程、
iv) 前記使用済み触媒をコークス燃焼による再生のために再生器に供給し、得られた再生触媒の少なくとも一部を前記接触分解触媒として工程i)に戻す工程、及び
v) 任意に、得られた第2の反応生成物を分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る工程。
【0043】
好ましい実施形態において、本願の方法は、1つ以上の補充触媒のストリームを前記高速流動床に導入し、前記高速流動床内の物質と接触させて接触分解反応を行うことをさらに含む。
【0044】
本願によれば、前記1つ以上の補充触媒のストリームの炭素含有量は、それぞれ独立して約0-1.0重量%であってもよく、例えば、前記1つ以上の補充触媒のストリームは、それぞれ独立して、再生触媒、使用済み触媒及び半再生触媒、即再生、使用済み及び半再生の接触分解触媒から選択されてもよい。
【0045】
本願によれば、前記1つ以上の補充触媒のストリームの総量は、反応器触媒の循環量の約0-50重量%、好ましくは約5-30重量%を占めることができる。
【0046】
本願によれば、前記高速流動層の底部から、前記1つ以上の補充触媒のストリームの導入位置までの距離は、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の約0%-約90%である。好ましくは、前記1つ以上の補充触媒のストリームの導入位置は、それぞれ独立して、前記高速流動床の約20%-約80%、より好ましくは約30%-約75%の高さに配置される。例えば、前記導入位置は、前記高速流動床の底部にあってもよく、前記高速流動床の全高の約1/3にあってもよい。前記補充触媒の温度は、所望の反応温度に応じて調整することができ、例えば、冷たい及び/または熱い再生触媒を導入こともできるし、冷たい及び/または熱い使用済み触媒を導入することもできる。
【0047】
本願によれば、前記高速流動床に補充触媒を導入することにより、より広い範囲で触媒対油比を調整して、分解反応のためのより多くの活性部位を提供することができる。同時に、補充触媒の導入により、反応温度調整の機動性を増加し、高速流動床における温度及び触媒活性の勾配を効果的に調整することができる。また、高速流動床に補充触媒を導入することにより、当該流動床における触媒密度の均一性をできるだけ維持し、触媒密度の分布を効果的に調整し、分解反応を十分的且つ効果的に進行させ、目的生成物の選択性を向上させることができる。
【0048】
本願によれば、高速流動床における蒸気速度を調整すること、及び/または高速流動床に触媒分布板を設置することにより、高速流動床内の触媒分布をさらに調整することができ、これにより、前記触媒を擬均一な全濃密相分布にすることができる。
【0049】
本願によれば、重質原料油、特に低質重油のような炭化水素油原料は、1つ以上の位置で、前記希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む反応器に導入され得る。例えば、前記炭化水素油原料は、1つの注入位置で全て前記希薄相輸送流動床に導入されることができるし、1つの注入位置で全て前記高速流動床に導入されることもできる。任意に、前記炭化水素油原料は、同じ又は異なる比率で2つ以上の注入位置から前記希薄相輸送流動床及び/または高速流動床に導されることができ、例えば、炭化水素油原料の一部は1つの注入位置から前記希薄相輸送流動床に導入され、炭化水素油原料の別の一部は別の注入位置から前記高速流動床に導入されるか、前記炭化水素油原料は2つ以上の注入位置から、前記希薄相輸送流動床に導入されるか、または前記炭化水素油原料は2つ以上の注入位置から、前記高速流動床に導入される。
【0050】
本願によれば、低質重油とは、従来の重油よりも接触分解処理に不適な重油を指す。例えば、前記低質重油の性質は、以下の指標、即ち、20℃の密度が約900-1000kg/m3、好ましくは約910-940kg/m3であり、残留炭素が約2-10重量%、好ましくは約3-8重量%であり、ニッケル及びバナジウムの合計含有量は約2-30 ppm、好ましくは約5-20 ppmであり、固有係数K値は約12.1未満、好ましくは約12.0未満である、と言う指標の少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つまたは4つを満たすことができる。低質重油における残留炭素は、ASTMD-189に準拠して、コンラドソン残留炭素試験法により測定した。
【0051】
例として、前記低質重油は、重質石油炭化水素及び/または他の鉱油であってもよく、前記重質石油炭化水素は減圧残油(VR)、低質常圧残油(AR)、低質水素化残油、コーカー軽油、脱瀝油、減圧蝋油、高酸価原油、高金属原油及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、シェール油及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0052】
本願で使用される接触分解触媒は、特に限定されず、例えば、重質原料油のような炭化水素油原料から低炭素オレフィンを製造することに適宜した当業者に公知の種々の接触分解触媒であってもよい。好ましい実施形態において、前記接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、約1-50重量%、好ましくは約5-45重量%、より好ましくは約10-40重量%のゼオライト、約5-99重量%、好ましくは約10-80重量%、より好ましくは約20-70重量%の無機酸化物、及び約0-70重量%、好ましくは約5-60重量%、より好ましくは約10-50重量%のクレーを含み、前記ゼオライトは、活性成分として、メソ細孔性ゼオライト及び任意のマクロ細孔性ゼオライトを含むことができる。好ましくは、乾燥重量に基づいて、前記メソ細孔性ゼオライトは、ゼオライトの合計重量の約0-50重量%、好ましくは約0-20重量%を占める。
【0053】
本願において、前記メソ細孔性ゼオライト及びマクロ細孔性ゼオライトは、当技術分野の従来の定義に従うものであり、即ち、メソ細孔性ゼオライトの平均細孔径は約0.5-0.6 nm、マクロ細孔性ゼオライトの平均細孔径は約0.7-1.0 nmである。
【0054】
例として、前記マクロ細孔性ゼオライトは、希土類Y(REY)型ゼオライト、希土類水素Y(REHY)型ゼオライト、様々な方法で得られる超安定Y型ゼオライト及び高ケイ素Y型ゼオライトからなる群から選択される1つ以上であってもよい。前記メソ細孔性ゼオライトは、ZSM系ゼオライト及び/またはZRPゼオライトのような、MFI構造を有するゼオライトから選択することができる。任意に、上記メソ細孔性ゼオライトは、リンなどの非金属元素及び/または鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属元素で修飾されていてもよい。ZRPゼオライトに関するより詳細な説明は、米国特許US5,232,675Aを参照することができる。ZSM系ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48及び同様の構造を有するその他のゼオライトから選択される1種または2種以上の混合物であることが好ましい。ZSM-5のより詳細な説明は、米国特許US3,702,886Aを参照することができる。
本願によれば、前記無機酸化物は、バインダーとして、好ましくは、シリカ(SiO2)及び/またはアルミナ(Al2O3)である。前記クレーは、マトリックス(即ち、担体)として、カオリン及び/またはハロイサイトであることが好ましい。
【0055】
本願で用いられる接触分解反応条件は、厳密に限定されるものではなく、例えば、重質原料油のような炭化水素油原料から低炭素オレフィンを製造することに適宜した当業者に公知の接触分解反応条件であってもよい。好ましい実施形態において、前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が約500-600℃であること、反応時間が約0.05-5秒であること、触媒対油重量比が約1:1-約50:1であること、水対油重量比が約0.03:1-約0.5:1であること、触媒密度が約20-100kg/m3であること、蒸気速度が約4-18m/sであること、反応圧力が約130-450kpaであること、触媒質量流量Gsが約180-500kg/(m2・s)であることを含み得る。さらに好ましくは、前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が約520-580℃であること、反応時間が約1-3秒であること、触媒対油重量比が約5:1-約25:1であること、水対油重量比が約0.05:1-約0.3:1であること、を含む。
【0056】
好ましい実施形態において、前記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が約510-650℃であること、反応時間が約1-20秒であること、触媒対油重量比が約3:1-約50:1であること、水対油重量比が約0.03:1-約0.8:1であること、触媒密度が約120-290kg/m3であること、蒸気速度が約0.8-2.5m/sであること、反応圧力が約130-450kpaであること、触媒質量流量Gsが約15-150kg/(m2・s)であることを含み得る。さらに好ましくは、前記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が約550-620℃であること、反応時間が約3-15秒であること、触媒対油重量比が約10:1-約30:1であること、水対油重量比が約0.05:1-約0.5:1であること、触媒密度が約150-250kg/m3であること、蒸気速度が約1-1.8m/sであること、反応圧力が約130-450kpaであること、触媒質量流量Gsが約20-130kg/(m2・s)であることを含む。
【0057】
本願によれば、反応生成物と使用済み触媒との分離は、当業者に公知の方法で、例えば、サイクロンを使用して、沈降器で行うことができる。前記反応生成物をさらに分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る方法も、当業者によく知られているものである。好ましい実施形態において、前記乾性ガス及び液化石油ガスを、さらに当技術分野の通常の分離手段により分離して、エチレン、プロピレンなどの生成物等を得ることができる。
【0058】
好ましい実施形態において、本願による方法は、前記第1及び/または第2の反応原料における軽質原料として、C4炭化水素留分及び/またはC5-C6軽質ガソリン留分を、1つ以上の位置で前記高速流動床及び/または希薄相輸送流動床に導入して、接触分解反応を行うことをさらに含む。例えば、幾つかの好ましい実施形態において、前記第1の反応原料及び第2の反応原料の少なくとも一方は、C4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される軽質原料を含む。幾つかのさらに好ましい実施形態において、前記第1の反応原料は、軽質原料及び重質原料油を含み、且つ前記軽質原料の少なくとも一部は、前記重質原料油が前記希薄相輸送流動床に導入される位置の上流で前記希薄相輸送流動床に導入される。他のさらに好ましい実施形態において、前記第1の反応原料は低質重油のような重質原料油を含み、また前記第2の反応原料は前記軽質原料を含む。他のさらに好ましい実施形態において、前記第1の反応原料は前記軽質原料を含み、また前記第2の反応原料は低質重油のような重質原料油を含む。
【0059】
本願によれば、前記「C4炭化水素留分」とは、C4留分を主成分とする常温、常圧で気体として存在する低分子炭化水素化合物を意味し、分子中の炭素数4のアルカン、アルケンおよびアルキンが含まれる。それは、本願の方法で製造されるC4炭化水素留分に富むガス状炭化水素製品(例えば液化石油ガス)を含んでもよく、他の装置で製造されるC4留分に富むガス状炭化水素、好ましくは本願の方法で製造されるC4炭化水素留分を含んでもよい。前記C4炭化水素留分は、C4アルケンの含有量が約50重量%超、好ましくは約60重量%超、より好ましくは約70重量%以上である、アルケンに富むC4炭化水素留分であることが好ましい。
【0060】
本願によれば、前記「C5-C6軽質ガソリン留分」とは、ガソリンにおける炭素数がC5-C6である成分を意味し、本願の方法で製造される分解ガソリンを含んでもよいし、他の装置で製造されるガソリン留分を含んでもよく、例えば、ディープ接触分解ガソリン、接触分解ガソリン、直留ガソリン、コーカーガソリン、熱分解ガソリン、熱クラッキングガソリン及び水素化ガソリンからなる群から選択される少なくとも1つのC5-C6留分であってもよい。
【0061】
本願によれば、使用済み触媒は、当業者に周知の方法で、例えば、再生器でコークス燃焼による再生することができ、具体的に、空気等のような酸素含有ガスを再生器に導入して、使用済み触媒と接触させることができる。コークス燃焼による再生により得られた排煙は、再生器中で触媒から分離された後、後続のエネルギー回収システムに送ることができる。
【0062】
本願の幾つかの好ましい実施形態において、再生器でのコークス燃焼による再生後の再生触媒は、触媒冷却器により約600-680℃まで冷却されてから前記反応器に戻されてもよい。熱い再生触媒を冷却して、反応器に戻すことは、油触媒接触温度の低下、原料油と触媒との接触状態の改善、ひいては乾性ガス及びコークス生成に対する選択性の改善に寄与する。
【0063】
幾つかの好ましい実施形態において、前記高速流動床は、下から順に、全濃密相反応ゾーン及び移行部を備え、前記全濃密相反応ゾーンは、断面がほぼ円形で、底端及び頂端が開口した等径または変径の中空筒体の形態であり、前記希薄相輸送流動床は前記全濃密相反応ゾーンの底端に連通され、前記全濃密相反応ゾーンの頂端は、前記移行部を介して前記反応器の出口部に連通され、前記全濃密相反応ゾーンの底部には、任意に、前記第2の反応原料を供給するための入口が1つ以上設けられ、ただし、前記全濃密相反応ゾーンの底端の断面直径は、前記希薄相輸送流動床の直径以上であり、頂端の断面直径は前記出口部の直径より大きく、前記全濃密相反応ゾーンの底部または側壁には、1つ以上の補充触媒入口が設けられ、前記1つ以上の補充触媒入口は、それぞれ独立して、前記高速流動床の全高の約0%-約90%、好ましくは約20%-約80%、より好ましくは約30%-約75%の高さに配置される。
【0064】
本願によれば、前記全濃密相反応ゾーンは、様々な断面がほぼ円形で、底端及び頂端が開口した、等径または変径の中空筒体の形態であってもよく、例えば、等径の中空円筒体、または下方から上方へ直径が連続的または不連続的に増大する中空筒体の形態であってもよい。
【0065】
本願によれば、「直径が連続的に増大する」とは、直径が線形又は非線形に連続的増大することを意味する。「下方から上方へ直径が連続的に増大する中空筒体」の例として、逆中空截頭円錐体が挙げられる。
【0066】
本願によれば、「直径が不連続的に増大する」とは、直径が不連続的に、例えば段階的に増大することを意味する。「下方から上方へ直径が不連続的に増大する中空筒体」の例として、2段以上の直径が連続的に増大する円筒体から構成された中空筒体が挙げられる。
【0067】
例として、前記全濃密相反応ゾーンは、中空円筒体、逆中空截頭円錐体、2段以上の直径が連続的に増大する円筒体から構成された中空筒体、2段以上の直径が連続的に増大する逆截頭円錐体から構成された中空筒体、または1段以上の円筒体と1段以上の逆截頭円錐体から構成された中空筒体の形態であってもよい。
【0068】
幾つかの好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンの底部には、触媒分布板が設けられる。
【0069】
幾つかの好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンの底部には、1つ以上の第2の反応原料入口が設けられ、好ましくは、前記第2の反応原料入口の位置には、ガス分配器が設けられている。
【0070】
好ましい実施形態において、前記高速反応床の全高に対する前記全濃密相反応ゾーンの最大断面直径の比は、約0.005:1-約1:1、好ましくは約0.01:1-約0.8:1、より好ましくは約0.05:1-約0.5:1であり、前記高速反応床の全高に対する全濃密相反応ゾーンの高さの比は、約0.1:1-約0.9:1、好ましくは約0.3:1-約0.85:1、より好ましくは約0.5:1-約0.8:1である。
【0071】
幾つかの好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンは、縦断面が等脚台形であり、底端断面の直径が約0.2-10m、好ましくは約0.5-8m、より好ましくは約1-5mである、逆中空截頭円錐体の形態であり、頂端断面直径の底端断面直径に対する比は、1超-約50、好ましくは約1.2-約10、より好ましくは約1.5-約5であり、最大断面の直径の前記高速反応床の全高に対する比は、約0.005:1-約1:1、好ましくは約0.01:1-約0.8:1、より好ましくは約0.05:1-約0.5:1であり、全濃密相反応ゾーンの高さの前記高速反応床の全高に対する比は、約0.1:1-約0.9:1、好ましくは約0.3:1-約0.85:1、より好ましくは約0.5:1-約0.8:1である。
【0072】
他の幾つかの好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンは1段の逆截頭円錐体と1段の円筒体から構成された中空筒体の形態であり、好ましくは、縦断面が等脚台形であり、底端断面の直径が約0.2-10m、好ましくは約0.5-8m、より好ましくは約1-5mである、截頭円錐体が円筒体の下方にあり、頂端断面直径の底端断面直径に対する比は、1超-約50、好ましくは約1.2-約10、より好ましくは約1.5-約5であり、前記円筒体の直径は、前記截頭円錐体の頂端断面の直径とほぼ同じであり、前記中空円筒体の高さの前記截頭円錐体の高さに対する比が約0.4:1-2.5:1、好ましくは約0.8:1-約1.5:1であり、前記全濃密相反応ゾーンの最大断面の直径の前記高速反応床の全高に対する比が約0.005:1-約1:1、好ましくは約0.01:1-約0.8:1、より好ましくは約0.05:1-約0.5:1であり、全濃密相反応ゾーンの高さの前記高速反応床の全高に対する比が約0.1:1-約0.9:1、好ましくは約0.3:1-約0.85:1、より好ましくは約0.5:1-約0.8:1である。
【0073】
さらに別の好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンは直径が約0.2-10m、好ましくは約1-5mである中空の円筒体の形態であり、前記全濃密相反応ゾーンの直径の前記高速反応床の全高に対する比は、約0.005:1-約1:1、好ましくは約0.01:1-約0.8:1、より好ましくは約0.05:1-約0.5:1であり、全濃密相反応ゾーンの高さの前記高速反応床の全高に対する比は、約0.1:1-約0.9:1、好ましくは約0.3:1-約0.85:1、より好ましくは約0.5:1-約0.8:1である。
【0074】
好ましい実施形態において、前記全濃密相反応ゾーンの高さは、約2-50m、好ましくは約5-40m、より好ましくは約8-20mである。
【0075】
好ましい実施形態において、前記移行部の高さの前記高速反応床の全高に対する比は、約01:1-約0.9:1、好ましくは約0.2:1-約0.5:1である。さらに好ましくは、当該移行部は、中空の截頭円錐体の形態であり、縦断面が等脚台形であり、等脚台形の側辺の内傾斜角αが約25-85o、好ましくは約30-75 oである。
【0076】
幾つかの特定の実施形態において、本願で用いられる反応器は、前記希薄相輸送流動床の上流及び/または前記高速流動床の下流に、1つまたは複数の追加の流動床反応ゾーン、例えば希薄相輸送流動床、濃密相流動床、従来の高速流動床等をさらに含んでもよい。
【0077】
他の幾つかの特定の実施形態において、本願で用いられる反応器は、前記希薄相輸送流動床の上流及び前記高速流動床の下流に、追加の反応ゾーンを含まない。
【0078】
幾つかの特定の実施形態において、本願で用いられる反応器は、沈降器と同軸に配置されてもよく、沈降器と上下に並べて配置されてもよい。
【0079】
第2の態様では、本願は、炭化水素油、特に重質原料油の接触分解に有用なシステムであって、接触分解反応器、触媒分離デバイス、任意の反応生成物分離器、及び再生器を含むシステムを提供する。
【0080】
前記接触分解反応器は、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含み、反応物質の流れ方向において、前記希薄相輸送流動床が高速流動床と流体連通しており、且つ前記希薄相輸送流動床が前記高速流動床の上流に配置され、
前記希薄相輸送流動床は、底部に触媒入口、下部に第1の反応原料入口を備え、前記高速流動床は、頂部に出口及び底部に任意の第2の反応原料入口を備え、前記触媒分離デバイスは、入口、触媒出口及び反応生成物出口を備え、前記任意の反応生成物分離器は、反応生成物入口、乾性ガス出口、液化石油ガス出口、ガソリン出口、ディーゼル油出口及びスラリー出口を備え、前記再生器は、触媒入口及び触媒出口を備え、
前記希薄相輸送流動床の触媒入口は、前記再生器の触媒出口と流体連通しており、前記高速流動床の出口は、前記触媒分離デバイスの入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの反応生成物出口は、前記任意の反応生成物分離器の反応生成物入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの触媒出口は、前記再生器の触媒入口と流体連通している。
【0081】
好ましい実施形態において、前記高速流動床は、希薄相輸送流動床と上下に同軸に設置され、且つ高速流動床は、希薄相輸送流動床の上方に配置される。
【0082】
幾つかの好ましい実施形態において、前記高速流動床には、触媒分布板が設けられ、当該触媒分布板は、前記高速流動床の底部、例えば前記希薄相輸送流動床と高速流動床との接合部において配置され得る。
【0083】
本願によれば、前記触媒分布板は、工業的によく見られる種々の形状の分布板であってもよく、例えば、平板状、ドーム状、ディスク状、リング状及び傘状のうちの1種以上であってもよい。触媒分布板を使用することにより、触媒を全濃密相反応ゾーンの軸方向に均一な濃度で原料油と接触させ、接触分解反応させることができ、触媒濃度が高すぎたり低すぎたりすることによる剥離性コークス及び熱反応コークスの生成を低減することができる。
【0084】
幾つかの好ましい実施形態において、前記高速流動床底部に、1つ以上の第2の反応原料入口が設けられており、好ましくは、前記入口の位置にガス分配器が設けられている。
【0085】
幾つかの好ましい実施形態において、前記高速流動床は、上記のような構造を有し、即ち、下から順に、全濃密相反応ゾーン及び移行部を含み、前記全濃密相反応ゾーン及び移行部の詳細な構成はここでは詳述しない。
【0086】
幾つかの特定の実施形態において、前記接触分解反応器は、前記希薄相輸送流動床の上流及び/または前記高速流動床の下流に、1つまたは複数の追加の流動床反応ゾーン、例えば希薄相輸送流動床、濃密相流動床、従来の高速流動床等をさらに含んでもよい。
【0087】
他の幾つかの特定の実施形態において、前記接触分解反応器は、前記希薄相輸送流動床の上流及び前記高速流動床の下流に、追加の反応ゾーンを含まない。
【0088】
本願によれば、前記触媒分離デバイス及び反応生成物分離器は、いずれも当業者に公知の装置を採用することができる。例えば、前記触媒分離デバイスはサイクロン、沈降器及びストリッパー等を含んでもよく、また前記反応生成物分離器は分留塔等であってもよい。
【0089】
以下、本願を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明するが、本願はこれらに限定されるものではない。
【0090】
図1は、本願の好適な実施形態の一つを示しており、この実施形態では、プレリフト媒体は、プレリフト媒体配管1を介して、プレリフト部2の底部から希薄相輸送流動床Iの底部に入る。前記プレリフト媒体は、乾性ガス、水蒸気またはこれらの混合物であってよい。再生触媒立て管11からの再生触媒は、プレリフト部2の下部に入り、プレリフト媒体のリフト作用下に希薄相輸送流動床Iに入り、上方に移動する。C4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及び/または低質重油のような炭化水素油原料を含む第1の反応原料は、第1のフィードパイプライン14を通して、希薄相輸送流動床Iの下部に注入され、希薄相輸送流動床I内の既存の流れと混合接触し、第1の接触分解反応を行い、第1の反応生成物及び半使用済み触媒を含む反応流出物が得られる。当該反応流出物は、上方に移動し、高速流動床IIの底部に入り、補充パイプライン15から導入された、再生触媒または使用済み触媒であり得る補充触媒と接触し、第2の接触分解反応を行う。補充パイプライン15は、高速流動床IIの高さの約0%-約90%、好ましくは約20%-約80%、より好ましくは約30%-約75%で接続される。任意に、第2のフィードパイプライン16を介して高速流動床IIの底部に、C4炭化水素留分、C5-C6軽質ガソリン留分及び/または低質重油のような炭化水素油原料を含む第2の反応原料が送られる。第2の反応生成物及び失活された使用済み触媒を含む反応からの反応流出物は、出口部3を介して、沈降器4におけるサイクロン6に入り、使用済み触媒と第2の反応生成物との分離が実現される。分離された第2の反応生成物は、集気室7に入り、集気室7における反応生成物は、反応器蒸気パイプライン8を経由して後続の生成物分離システム(図示せず)に入る。触媒微粉は、サイクロン6のディップレグから沈降器4に戻され、沈降器4における使用済み触媒は、ストリッパー5へ流れる。使用済み触媒からストリッピングされた反応生成物は、サイクロン6を経て集気室7に入る。ストリッピングされた使用済み触媒は、使用済み触媒立て管9を経て再生器10に入り、空気は、空気分配器13で分配されてから再生器10に入り、再生器10底部に位置する密相床層における使用済み触媒上のコークを焼失させ、失活された使用済み触媒を再生して再生触媒を得る。再生触媒は、再生触媒立て管11を経てプレリフト部2に戻され、排煙は排煙パイプライン12を経て後続のエネルギー回収システム(図示せず)に入る。
【0091】
図2は、前記高速流動床IIが下から順に全濃密相反応ゾーン17及び移行部18を含むことを除いて、図1に示された実施形態と実質的に同一である、本願の別の好ましい実施形態を示す。全濃密相反応ゾーン17は、縦断面が等脚台形である逆中空截頭円錐体の形態である。移行部18は中空截頭円錐体の形態であり、縦断面は等脚台形であり、等脚台形の側辺の内傾斜角αが約25-85o、好ましくは約30-75 oである。
【0092】
幾つかの好ましい実施形態において、本願は、以下の技術案を提供する。
【0093】
〔1〕 希薄相輸送流動床及び高速流動床を用いる行接触分解の方法であって、
i)予熱された低質重油を、希薄相輸送流動床の下部から希薄相輸送流動床に導入して、接触分解触媒と接触させ、そして下から上に向かって第1の接触分解反応を行って、第1の反応生成物及び半使用済み触媒を得る工程、
ii)得られた第1の反応生成物及び半使用済み触媒を高速流動床の底部に導入し、そして下から上に向かって第2の接触分解反応を行って、第2の反応生成物及び使用済み触媒を得る工程であって、前記高速流動床における触媒は、全濃密相分布となっており、前記高速流動床における軸方向固形分率ε分布は、0.1≦ε≦0.2を満たす工程、
iii)使用済み触媒を再生器に送り、コークス燃焼による再生を行って、少なくとも得られた再生触媒の一部を前記接触分解触媒として希薄相輸送流動床の底部に戻する工程、及び
iv)得られた第2の反応生成物を分離して、乾性ガス、液化石油ガス、ガソリン、ディーゼル油及びスラリーを得る工程、を含む方法。
【0094】
〔2〕 前記低質重油の性質は、以下の指標、即ち、20℃の密度が900-1000kg/m3であり、残留炭素が2-10重量%であり、ニッケル及びバナジウムの合計含有量が2-30ppmであり、固有係数K値は12.1未満である、と言う指標の1つ、2つ、3つまたは4つを満たす、項目1に記載の方法。
【0095】
〔3〕 前記低質重油の性質は、以下の指標、即ち、20℃の密度が910-940kg/m3であり、残留炭素が3-8重量%であり、ニッケル及びバナジウムの合計含有量が5-20ppmであり、固有係数K値は12.0未満である、と言う指標の1つ、2つ、3つまたは4つを満たす項目1に記載の方法。
【0096】
〔4〕 前記低質重油は、重質石油炭化水素及び/または他の鉱油であり、
前記重質石油炭化水素は、減圧残油、低質常圧残油、低質水素化残油、コーカー軽油、脱瀝油、減圧蝋油、高酸価原油及び高金属原油からなる群から選択される1種以上であり、前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、及びシェール油からなる群から選択される1種以上である、項目1に記載の方法。
【0097】
〔5〕 前記接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、1-50重量%のゼオライト、5-99重量%の無機酸化物及び0-70重量%のクレーを含み、
前記ゼオライトがメソ細孔性ゼオライト及び任意のマクロ細孔性ゼオライトを含み、前記メソ細孔性ゼオライトがZSM系ゼオライト及び/またはZRPゼオライトであり、前記マクロ細孔性ゼオライトが、希土類Y、希土類水素Y、超安定Y及び高ケイ素Yからなる群から選択される1種以上である、項目1に記載の方法。
【0098】
〔6〕 乾燥重量に基づいて、前記メソ細孔性ゼオライトは、ゼオライトの合計重量の0-50重量%を占める、項目5に記載の方法。
【0099】
〔7〕 乾燥重量に基づいて、前記メソ細孔性ゼオライトは、ゼオライトの合計重量の0-20重量%を占める、項目5に記載の方法。
【0100】
〔8〕 前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が500-600℃であること、反応時間が0.05-5秒であること、触媒対油重量比が(1-50):1であること、水対油重量比が(0.03-0.5):1であること、触媒密度が20-100kg/m3であること、蒸気速度が4-18m/sであること、反応圧力が130-450kpaであること、触媒質量流量Gsが180-500kg/(m2・s)であることを、含み、
前記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が510-650℃であること、反応時間が1-20秒であること、触媒対油重量比が(3-50):1であること、水対油重量比が(0.03-0.8):1であること、触媒密度が120-290kg/m3であること、蒸気速度が0.8-2.5m/sであること、反応圧力が130-450kpaであること、触媒質量流量Gsが15-150kg/(m2・s)であることを含む、項目1に記載の方法。
【0101】
〔9〕 前記第1の接触分解反応の条件は、反応温度が520-580℃であること、反応時間が1-3秒であること、触媒対油重量比が(5-25):1であること、水対油重量比が(0.05-0.3):1であること、を含み、
前記第2の接触分解反応の条件は、反応温度が550-620℃であること、反応時間が3-15秒であること、触媒対油重量比が(10-30):1であること、水対油重量比が(0.05-0.5):1であること、触媒密度が150-250kg/m3であること、蒸気速度が1-1.8m/sであること、触媒質量流量Gsが20-130kg/(m2・s)であることを含む、項目1に記載の方法。
【0102】
〔10〕 前記方法は、C4炭化水素留分及び/またはC5-C6軽質ガソリン留分を、前記高速流動床及び/または希薄相輸送流動床に導入して、接触分解反応を行うことをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0103】
〔11〕 前記C4炭化水素留分及び/またはC5-C6軽質ガソリン留分が、低質重油が希薄相輸送流動床に導入される注入位置よりも前に導入される、項目10に記載の方法。
【0104】
〔12〕 前記方法は、触媒を高速流動床に補充して、前記第1の反応生成物及び半使用済み触媒とともに前記第2の接触分解反応を行うことをさらに含み、補充された触媒の炭素含有量が、0-1.0重量%である、項目1に記載の方法。
【0105】
〔13〕 補充された触媒が、希薄相輸送流動床及び高速流動床触媒の全循環量の0-50重量%を占める、項目12に記載の方法。
【0106】
〔14〕 補充された触媒が、希薄相輸送流動床及び高速流動床触媒の全循環量の5-30重量%を占める、項目12に記載の方法。
【0107】
〔15〕 触媒が高速流動床に補充される位置は、高速流動床の底部である、項目12に記載の方法。
【0108】
〔16〕 希薄相輸送流動床、高速流動床、触媒分離デバイス、反応生成物分離器及び再生器を含む、接触分解システムであって、
反応物質の流れ方向において、前記希薄相輸送流動床が高速流動床と流体連通しており、前記希薄相輸送流動床が前記高速流動床の上流に配置され、
前記希薄相輸送流動床は底部に触媒入口、下部に低質重油入口を備え、前記高速流動床は頂部に出口を備え、前記触媒分離デバイスは入口、触媒出口及び反応生成物出口を備え、前記反応生成物分離器は反応生成物入口、乾性ガス出口、液化石油ガス出口、ガソリン出口、ディーゼル油出口及びスラリー出口を備え、前記再生器は触媒入口及び触媒出口を備え、
前記希薄相輸送流動床の触媒入口は、前記再生器の触媒出口と流体連通しており、前記高速流動床の出口は、前記触媒分離デバイスの入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの反応生成物出口は、前記反応生成物分離器の反応生成物入口と流体連通しており、前記触媒分離デバイスの触媒出口は、前記再生器の触媒入口と流体連通している、接触分解システム。
【0109】
〔17〕 前記高速流動床は、希薄相輸送流動床と上下に同軸に設置され、且つ高速流動床は、希薄相輸送流動床の上方に配置されている、項目16に記載のシステム。
【0110】
本願では、各パラメータの定義及び計算方法は、以下の通りである。
【0111】
(1)、触媒の軸方向固形分率ε=差圧計により測定された反応ゾーン内の軸方向の2点間の差圧÷前記軸方向の2点間の距離÷触媒粒子密度、
ここで、差圧の単位はkg/m2であり、軸方向の2点間の距離の単位はmであり、触媒粒子密度の単位はkg/m3である。
【0112】
触媒粒子密度=骨格密度/(触媒細孔容積×骨格密度+1)、ここで、骨格密度の単位はkg/m3であり、触媒細孔容積の単位はm3であり、骨格密度及び触媒細孔容積は、それぞれピクノメーター法及び水滴定法により測定した。
【0113】
(2)、反応時間=反応ゾーンの体積/油蒸気の対数平均体積流量、
ここで、反応ゾーン体積の単位はm3であり、油蒸気対数平均体積流量の単位はm3/sである。
油蒸気対数平均体積流量=(Vout-Vin)/ln(Vout/Vin)であり、Vout及びVinはそれぞれ反応ゾーン出口及び入口での油蒸気体積流量である。
反応ゾーン出口油蒸気体積流量Vout=m/ρ3
反応ゾーン入口油蒸気体積流量Vin=m/ρ4
ここで、mは、単位時間当たりの原料油及び霧化蒸気のフィード量であり、単位はkg/sである。ρ3は、反応ゾーン出口での油蒸気密度であり、単位はkg/m3である。ρ4は、反応ゾーン入口での油蒸気密度であり、単位はkg/m3である。
【0114】
(3)、反応ゾーン(またはその上、中、下部)の触媒密度=差圧計により測定された反応ゾーン内(またはその上、中、下部)の軸方向の2点間の差圧÷前記軸方向の2点間の距離、
ここで、差圧の単位はkg/m2であり、反応ゾーンは、軸方向に均等に上、中、下の3つの部分に分割され、軸方向の2点間の距離の単位はmである。
【0115】
(4)、蒸気速度=油蒸気対数平均体積流量÷反応ゾーン断面積、
反応ゾーンが非円筒体形態である場合、蒸気速度は、反応ゾーン底端での蒸気速度と反応ゾーン頂端での蒸気速度の対数平均値を取る。
【0116】
(5)、触媒質量流量Gs=反応器触媒循環量÷反応ゾーン断面積、
反応ゾーンが非円筒体形態である場合、触媒質量流量Gsは、反応ゾーン底端でのGsと反応ゾーン頂端でのGsの対数平均値を取る。
ここで、触媒循環量の単位はkg/sである。
反応器触媒循環量=コーク生成速度÷(使用済み触媒炭素含有量-再生触媒炭素含有量)、
ここで、コーク生成速度の単位はkg/sであり、使用済み触媒炭素含有量及び再生触媒炭素含有量は、いずれも重量含有量である。
コーク生成速度=排煙量×(CO2%+CO%)÷Vm×M、
ここで、Vmは、22.4×10-3m3/molの値を取る気体のモル体積であり、Mは、12×10-3kg/molの値を取る炭素元素のモル質量である。
排煙量=(再生空気量×79体積%)/(1-CO2%-CO%-O2%)、
ここで、再生空気量の単位はm3/sであり、排煙量の単位はm3/sであり、CO2%、CO%、O2%は、それぞれ排煙中のCO2、CO及びO2の体積パーセントである。
【0117】
〔実施例〕
以下の実施例は、本願の方法をさらに説明するが、本願を限定するものではない。
【0118】
以下の実施例と比較例で用いた原料油は、いずれも水素化残油であり、その性質は、表1に示す通りである。使用した触媒は、中国石油化工股フン有限公司の触媒支公司から購入した市販の接触分解触媒であり、商品ブランドはDMMC-2である。
【0119】
【表2】
【0120】
〔実施例1〕
図1に示すフローに従って試験を行い、原料油が水素化残油であり、DMMC-2触媒を使用して、中型装置で試験を行う。反応器は、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む複合式反応器とした。予熱された原料油は、希薄相輸送流動床に入り、接触分解触媒と接触し、第1の分解反応に供され、反応流出物は、下から上に向かって高速流動床に入り、補充された再生触媒と混合されてから、第2の接触分解反応に供される。補充された再生触媒の炭素含有量は0.05重量%であり、触媒が補充される位置は、高速流動床の全高の1/3高さに配置され、補充された触媒は、反応器触媒循環量の5重量%を占める。蒸気速度を調整すること、及び高速流動床底部に傘状の触媒分布板を設置することにより、高速流動床中の触媒が全濃密相分布になるように制御し、高速流動床中の触媒の軸方向固形分率εが下から上に向かって0.1-0.2の範囲内とする。反応生成物及び使用済み触媒は、迅速に分離され、反応生成物は、生成物分離システム内で蒸留範囲に応じて分割される。使用済み触媒は、重力作用下でストリッパーに送られ、使用済み触媒に吸着した反応生成物は、水蒸気によりストリッピングされ、ストリッピングされた触媒は、熱交換をせずに直接再生器に送られ、空気と接触させてコークス燃焼による再生を行い、再生触媒は、反応器に戻されて循環使用される。使用した操作条件及び製品分布は、表2に示す。
【0121】
表2から明らかなように、本実施例では、エチレン収率が5.2重量%、プロピレン収率が18.2重量%、軽質芳香族炭化水素収率が11.5重量%、乾性ガス及びコーク収率がそれぞれ10.8重量%及び8.5重量%であった。
【0122】
〔実施例2〕
図2に示すフローに従って試験を行い、原料油が水素化残油であり、DMMC-2触媒を使用して、中型装置で試験を行う。反応器は、直列に接続された希薄相輸送流動床及び高速流動床を含む複合式反応器とした。予熱された原料油は、全濃密相反応ゾーン底部に入り、接触分解触媒と接触し、第1の分解反応に供され、反応流出物は、下から上に向かって高速流動床の全濃密相反応ゾーンに入り、補充された再生触媒と混合されてから、第2の接触分解反応に供される。補充された再生触媒の炭素含有量は0.05重量%であり、触媒が補充される位置は、高速流動床の全高の1/3高さにあり、補充された触媒は、反応器触媒循環量の5重量%を占める。蒸気速度を調整すること、及び全濃密相反応ゾーン底部に傘状の触媒分布板を設置することにより、全濃密相反応ゾーン中の触媒は、全濃密相分布になるように制御され、その結果、前記全濃密相反応ゾーン中の触媒の軸方向固形分率εが下から上に向かって0.1-0.2の範囲内であった。反応生成物及び使用済み触媒は、迅速に分離され、反応生成物は、生成物分離システム内で蒸留範囲に応じて分割される。使用済み触媒は、重力作用下でストリッパーに送られ、使用済み触媒に吸着した反応生成物は、水蒸気によりストリッピングされ、ストリッピングされた触媒は、熱交換をせずに直接再生器に送られ、空気と接触させてコークス燃焼による再生を行い、再生触媒は、反応器に戻されて循環使用される。反応生成物を分割して得られた混合C4留分は、希薄相輸送流動床底部に戻され、更なる反応に供される。使用した作業条件及び製品の分布は、表2に示す。
表2から明らかなように、本実施例では、エチレン収率が5.9重量%、プロピレン収率が21.1重量%、軽質芳香族炭化水素収率が11.8重量%、乾性ガス及びコーク収率がそれぞれ10.7重量%及び8.4重量%であった。
【0123】
〔比較例1〕
原料油が水素化残油であり、DMMC-2触媒を使用して、中型装置で試験を行う。反応器形態はライザーと流動床が直列に接続された複合式反応器とした。予熱された原料油は、ライザー下部に入り、触媒と接触し、接触分解反応を行い、反応オイル蒸気及び水蒸気、並びに使用済み触媒は、ライザー出口から濃密相流動床に入り、反応を続ける。反応後の流れは、閉鎖式サイクロンに入り、反応生成物及び使用済み触媒を迅速に分離し、反応生成物は、生成物分離システムにおいて、蒸留範囲に応じて分割される。使用済み触媒は、重力作用下でストリッパーに送られ、使用済み触媒に吸着した反応生成物は、水蒸気によりストリッピングされ、ストリッピングされた触媒は、熱交換をせずに直接再生器に送られ、空気と接触させてコークス燃焼による再生を行い、再生後の触媒は、ライザーに戻され循環使用される。使用した操作条件及び製品分布は、表2に示す。
【0124】
表2から明らかなように、当該比較例のエチレン収率が3.7重量%、プロピレン収率が12.8重量%、軽質芳香族炭化水素収率が5.5重量%、乾性ガス及びコーク収率がそれぞれ12.9重量%及び13.3重量%であった。
【0125】
〔比較例2〕
比較例2は、高速流動床底部に触媒分布板を設置していないこと、高速流動床における触媒の軸方向固形分率εが上から下に向かって0.1→0.2→0.3と増加させたことを除いて、実施例1と実質的に同一である。使用した操作条件は実施例1と同じ、製品分布は、表2に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
以上の実施例及び比較例の結果から、本願の方法は、エチレン、プロピレン及び軽質芳香族炭化水素の収率がより高く、乾性ガス及びコークの収率もより低いことが分かった。
【0128】
以上、本願の好ましい実施形態について詳述したが、本願は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願の技術的思想の範囲内で、本願の技術案に対して種々な簡単変形を行うことができ、このような簡単変形も本願の保護範囲に属するものである。
【0129】
なお、上記の発明を実施するための形態に記載の各特定の技術特徴は、矛盾でない限り、任意の適切な方法で組み合わせることができ、不必要な重複を避けるために、本願において様々な可能な組み合わせについては別途記載しない。
【0130】
また、本願の様々な異なる実施形態の間は、本願の趣旨に反しない限り、任意に組み合わせることができ、これらも本願発明の内容と同様に考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1図1は、本願の好ましい実施形態の概略図である。
図2図2は、本願の別の好ましい実施形態の概略図である。
図1
図2