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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】家具ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/16 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
E05D3/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021525869
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 AT2019060367
(87)【国際公開番号】W WO2020097644
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】A50977/2018
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デュア
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ハメラー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ホレンシュタイン
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00758932(GB,A)
【文献】米国特許第04564975(US,A)
【文献】特開2000-310080(JP,A)
【文献】国際公開第2018/129568(WO,A1)
【文献】米国特許第02674761(US,A)
【文献】特開2004-137789(JP,A)
【文献】米国特許第02144977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/06,3/16
E05D 15/26,15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動に支持された少なくとも1つの家具部分(3a)を家具本体(2)の側壁(13a)に対して相対的にガイドするためのガイドシステム(5)であって、
― 組付け状態で前記側壁(13a)の奥行き方向(Z)に前記家具本体(2)に対して相対的に走行可能に支持された支持体(11)と、
― 前記少なくとも1つの家具部分(3a)を前記家具本体(2)に対して相対的に可動に支持するための家具ヒンジ(10)と、を備え、
前記家具ヒンジ(10)
― 家具部分に固定するためのまたは家具本体(2)に対して相対的に可動に支持された支持体(11)に固定するための第1の金具部分(14)と、
― 可動に支持された家具部分(3a)に固定するための第2の金具部分(15)と、
― 前記第1の金具部分(14)と前記第2の金具部分(15)とを互いに枢動自在に結合するジョイント機構(19)であって、少なくとも7つの枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)を有するジョイント機構(19)と
を備え、
― 前記ジョイント機構(19)は、少なくとも1つの支持レバー(16)を有し、前記少なくとも1つの支持レバー(16)は、前記第1の金具部分(14)と前記第2の金具部分(15)とを互いに直接結合しており、
― 前記ジョイント機構(19)は、前記少なくとも1つの支持レバー(16)とは別個の、前記第1の金具部分(14)と前記第2の金具部分(15)との間の運動過程を制御するための制御機構(17)を有し、前記制御機構(17)は、互いに枢動自在に結合された少なくとも3つの制御レバー(17a,17b,17c)を有し、
第1の制御レバー(17a)が、枢動軸(C)を介して前記第1の金具部分(14)に結合されており、第2の制御レバー(17b)が、枢動軸(E)を介して前記第2の金具部分(15)に結合されており、第3の制御レバー(17c)が、前記第1の制御レバー(17a)と前記第2の制御レバー(17b)とを互いに結合しており、
前記第3の制御レバー(17c)は、枢動軸(G)を介して前記少なくとも1つの支持レバー(16)に旋回可能に結合されており、
前記第3の制御レバー(17c)を前記少なくとも1つの支持レバー(16)に結合する枢動軸(G)は、前記第3の制御レバー(17c)を前記第1の制御レバー(17a)に結合する枢動軸(D)と、前記第3の制御レバー(17c)を前記第2の制御レバー(17b)に結合する枢動軸(F)と、の間に配置され、且つ、当該2つの枢動軸(D,F)を結ぶ直線に重なるように配置されており、
前記家具ヒンジ(10)の全ての前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)は、可動の前記家具部分(3a)への前記家具ヒンジ(10)の組付け状態で、可動の前記家具部分(3a)の壁厚の外側に配置されており、
前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)は、前記家具ヒンジ(10)の組付け状態で実質的に鉛直方向に延在しており、
前記支持レバー(16)において、前記第3の制御レバー(17c)が結合される前記枢動軸(G)に対し、前記第1の金具部分(14)に結合する枢動軸(A)の方が、前記第2の金具部分(15)に結合する枢動軸(B)よりも離れており、
前記家具ヒンジ(10)の前記第1の金具部分(14)は、前記支持体(11)に結合されるようになっており、前記家具ヒンジ(10)の前記第2の金具部分(15)は、前記少なくとも1つの家具部分(3a)に結合されるようになっており、
― 前記家具ヒンジ(10)の前記第1の金具部分(14)と前記第2の金具部分(15)とは、組付け状態で、前記少なくとも1つの家具部分(3a)が前記側壁(13a)に対して実質的に平行に整列させられて前記支持体(11)と一緒に前記家具本体(2)の前記奥行き方向(Z)に走行可能である第1の位置と、組付け状態で、前記少なくとも1つの家具部分(3a)が前記側壁(13a)の一方の端面(20)を少なくとも部分的に覆う第2の位置との間で互いに相対的に可動に支持されていることを特徴とする、ガイドシステム(5)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持レバー(16)は、枢動軸(A)を介して前記第1の金具部分(14)に旋回可能に結合されていて、第2の枢動軸(B)を介して前記第2の金具部分(15)に旋回可能に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のガイドシステム(5)
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持レバー(16)は、前記支持レバー(16)の長手延在方向に沿って、前記第1の制御レバー(17a)が前記第1の金具部分(14)に結合される前記枢動軸(C)に向かって凸となるように、少なくとも部分的に湾曲して形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のガイドシステム(5)
【請求項4】
前記支持レバー(16)および前記第1の制御レバー(17a)は、前記第3の制御レバー(17c)の同じ面に重ねられ、第1の制御レバー(17a)は、支持レバー(16)に向かって凸となるように角度付けられた形態を有することを特徴とする、請求項1または2記載のガイドシステム(5)
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持レバー(16)は、枢動軸(A,B)に沿って互いに間隔を置いて配置された、前記枢動軸(A,B)を収容するための少なくとも2つの回動支持部を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のガイドシステム(5)
【請求項6】
前記第1の金具部分(14)は、家具部分または支持体(11)に固定するための少なくとも1つの固定箇所(18)を有する、および/または、前記第2の金具部分(15)は、家具部分(3a)に固定するための少なくとも1つの固定箇所(18)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のガイドシステム(5)
【請求項7】
前記家具ヒンジ(10)の全ての前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)は、前記家具ヒンジ(10)の全ての動作位置で、可動の前記家具部分(3a)の壁厚の外側に配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガイドシステム(5)
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持レバー(16)は前記枢動軸(B)を介して、かつ前記第2の制御レバー(17b)は前記枢動軸(E)を介して、それぞれ前記第2の金具部分(15)に支持されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガイドシステム(5)
【請求項9】
前記少なくとも1つの支持レバー(16)は、前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの部分レバー(16a,16b)を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガイドシステム(5)
【請求項10】
前記制御レバー(17a,17b,17c)のうちの少なくとも1つの制御レバーは、少なくとも部分的に前記支持レバー(16)の前記部分レバー(16a,16b)同士の間に配置されている、かつ/または前記制御レバー(17a,17b,17c)のうちの少なくとも1つの制御レバーは、前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの部分レバーを有することを特徴とする、請求項記載のガイドシステム(5)
【請求項11】
前記制御レバー(17a,17b,17c)のうち全ての前記制御レバー(17a,17b,17c)は、少なくとも部分的に前記支持レバー(16)の前記部分レバー(16a,16b)同士の間に配置されている、かつ/または前記制御レバー(17a,17b,17c)のうち全ての前記制御レバー(17a,17b,17c)は、前記枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの部分レバーを有することを特徴とする、請求項10記載のガイドシステム(5)
【請求項12】
前記第2の位置において、前記少なくとも1つの家具部分(3a)が前記側壁(13a)の一方の端面(20)を実質的に完全に覆うことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項記載のガイドシステム(5)。
【請求項13】
家具本体(2)と、前記家具本体(2)に対して相対的に可動の少なくとも1つの家具部分(3a)と、可動の前記家具部分(3a)を前記家具本体(2)に対して相対的に運動させるための、請求項1~12のいずれか1項記載のガイドシステム(5)とを備える、家具(1)。
【請求項14】
前記家具ヒンジ(10)の前記制御機構(17)は、少なくとも1つの家具部分(3a)が、前記家具部分(3a)が前記家具本体(2)の側壁(13a)に対して実質的に平行に整列させられた第1の位置と、前記家具部分(3a)が前記家具本体(2)の前記側壁(13a)に対して実質的に直交方向に整列させられた第2の位置との間で可動に支持されているように形成されていることを特徴とする、請求項13記載の家具(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの家具部分(3a)は、前記家具部分(3a)が前記家具本体(2)の前記側壁(13a)に対して実質的に直交方向に整列させられた前記第2の位置で、前記側壁(13a)の一方の端面(20)を少なくとも部分的に覆うことを特徴とする、請求項14記載の家具(1)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの家具部分(3a)は、前記家具部分(3a)が前記家具本体(2)の前記側壁(13a)に対して実質的に直交方向に整列させられた前記第2の位置で、前記側壁(13a)の前記端面(20)を実質的に完全に覆うことを特徴とする、請求項15記載の家具(1)。
【請求項17】
前記家具(1)は、少なくとも2つの家具部分(3a,3b)を有し、前記少なくとも2つの家具部分(3a,3b)は、少なくとも1つのヒンジ金具(9)を介して互いに枢動自在に結合されていて、それぞれ前記家具本体(2)に対して相対的に可動に支持されていることを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の家具(1)。
【請求項18】
第1の前記家具部分(3a)と第2の前記家具部分(3b)とは、前記第1の家具部分(3a)と前記第2の家具部分(3b)とが互いに実質的に同一平面を成すように整列させられた第1の位置と、前記第1の家具部分(3a)と前記第2の家具部分(3b)とが互いに実質的に平行に整列させられた第2の位置との間で可動に支持されていることを特徴とする、請求項17記載の家具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具ヒンジであって、
― 家具部分に固定するためのまたは家具本体に対して相対的に可動に支持された支持体に固定するための第1の金具部分と、
― 可動に支持された家具部分に固定するための第2の金具部分と、
― 第1の金具部分と第2の金具部分とを互いに枢動自在に結合するジョイント機構であって、少なくとも5つ、好ましくは少なくとも7つの枢動軸を有するジョイント機構と
を備え、
― ジョイント機構は、少なくとも1つの支持レバーを有し、この少なくとも1つの支持レバーは、第1の金具部分と第2の金具部分とを互いに直接結合しており、
― ジョイント機構は、上記少なくとも1つの支持レバーとは別個の、第1の金具部分と第2の金具部分との間の運動経過を制御するための制御機構を有し、この制御機構は、互いに枢動自在に結合された少なくとも3つの制御レバーを有する
家具ヒンジに関する。
【0002】
さらに、本発明は、可動に支持された少なくとも1つの家具部分をガイドするための、以下に説明する形態の家具ヒンジを備えたガイドシステムに関する。
【0003】
さらに、本発明は、家具本体と、家具本体に対して相対的に可動の少なくとも1つの家具部分と、家具ヒンジまたは少なくとも1つの家具部分を運動させるためのガイドシステムとを備えた家具に関する。
【0004】
本出願人の国際公開第2006/053364号には、広角ヒンジとして形成された家具ヒンジが示されている。この場合、約170°の最大開き角を達成するためには、比較的手間のかかる構造が必要である。ヒンジの運動に連結されていて、ヒンジアームの延長部として用いられる中間部材によって、両家具部分を互いに旋回させることができるだけでなく、旋回時に両家具部分相互の間隔を増大させることもできる。
【0005】
米国特許第2,674,761号明細書には、冷蔵庫扉用のヒンジが示されている。ヒンジは、第1の組付けプレートの形態の第1の金具部分と、この第1の金具部分に枢動自在に結合された、第2の組付けプレートの形態の第2の金具部分とを有する。ヒンジは、7つの枢動軸を備えた多関節ヒンジとして形成されており、支持レバー(符号8)を有する。支持レバーは、家具部分に固定されるべき金具部分を互いに直接結合する。支持レバーは強化された構成になっており、互いに接触する8つのプレートの積層体によって形成される。支持レバーに加えて、金具部分を互いに枢動自在に結合する複数の別のレバーが設けられている。欠点は、この構造が比較的大きな構成スペースを要することと、このヒンジが、扉の最大開き角が約90°に制限されている用途にしか使用できないことである。
【0006】
英国特許出願公告第758,932号明細書には、7つの枢動軸を備えた多関節ヒンジが示されている。支持レバー(符号3)が、本体に固定されるべき金具部分と、扉の壁厚内に配置された枢動軸とを、互いに直接結合する。
【0007】
国際公開第2007/148366号には、鉛直方向に延在する軸を介して互いに枢動自在に結合された可動の2つの扉を備えた家具が示されている。2つの扉は、ガイドシステムによって、同一平面を成す位置と平行な位置との間で互いに相対的に可動になっている。平行な位置では、扉は家具本体の側方の押込みポケット内に収容することができる。
【0008】
家具ヒンジの最大開き角を増大させるための5つまたはそれ以上の枢動軸を備えた家具ヒンジにおける両金具部分の連結は、一般に、第1の金具部分にも第2の金具部分にも枢動自在に結合された2つまたはそれ以上のレバーを介して行われ、これらのレバーのうちの2つのレバーは、金具部分とは別個の枢動軸を介して互いに旋回可能に結合されている。家具ヒンジの大きな荷重を受け止める場合、両金具部分は互いに相対的に沈下し、これによって摩擦が高まり、可動の家具部分の運動特性に不利な影響が生じてしまう。
【0009】
本発明の課題は、冒頭に述べたカテゴリーの家具ヒンジを改良して、上述した欠点が回避されているようにすることである。
【0010】
このことは、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の更なる有利な構成は、従属請求項に定義してある。
【0011】
したがって、本発明によれば、第1の制御レバーが、枢動軸を介して第1の金具部分に結合されており、第2の制御レバーが、枢動軸を介して第2の金具部分に結合されており、第3の制御レバーが、第1の制御レバーと第2の制御レバーとを互いに結合していることが特定されている。
【0012】
本発明によれば、5つまたはそれ以上の枢動軸を備えた家具ヒンジの場合、旋回可能な少なくとも1つの支持レバーが設けられており、この支持レバーが、家具ヒンジの第1の金具部分と第2の金具部分とを互いに枢動自在に直接(すなわち、別のジョイントレバーを介在させることなしに)結合することが特定されている。こうして、家具ヒンジにおいて、耐荷重を増大させ、安定性を改善し、最大開き角を増大させることができる。
【0013】
家具ヒンジの剛性の改善および沈下の低減のほかに、本発明の別の利点は、上記少なくとも1つの支持レバーが家具ヒンジの主荷重を引き受け、ひいては、支持レバーとは別個の、第1の金具部分と第2の金具部分との間の運動経過を制御するための制御機構が、実質的に支持機能を引き受けずに済むことである。したがって、支持レバーとは別個のこの制御機構を、安定性を維持しながら、はるかに精巧に構成することができる。制御機構の制御レバーは、例えば比較的薄い材料から製作することができ、これによって家具ヒンジはよりコンパクトに構成されており、制御機構の精巧な構造形式に基づき、より廉価に製造可能でもある。
【0014】
本発明によれば、第1の金具部分と第2の金具部分との間の運動経過を制御するための制御機構は、互いに枢動自在に結合された少なくとも3つの制御レバーを有することが特定されている。第1の制御レバーは枢動軸を介して第1の金具部分に結合され、第2の制御レバーは枢動軸を介して第2の金具部分に結合されている。第1の制御レバーと第2の制御レバーとを互いに結合する第3の制御レバーは、枢動軸を介して上記少なくとも1つの支持レバーに旋回可能に結合されていてよい。
【0015】
好ましくは、可動の家具部分への家具ヒンジの組付け状態で、家具ヒンジの全ての枢動軸が、好ましくは家具ヒンジの全ての動作位置において、可動の家具部分の壁厚の外部に配置されていることが特定されている。このことは、可動の家具部分に第2の金具部分を収容するために手間をかけて製作される凹部または孔を設ける必要なしに、第2の金具部分を簡単に可動の家具部分に固定することができるという利点を有する。
【0016】
本発明の更なる詳細および利点は、以下の図面の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】家具本体と、この家具本体に対して相対的に可動の家具部分とを備えた家具の斜視図である。
図1b】家具本体と、この家具本体に対して相対的に可動の家具部分とを備えた家具の斜視図である。
図2a図1aおよび図1bに示した家具を家具部分相互の別の位置で示す図である。
図2b図1aおよび図1bに示した家具を家具部分相互の別の位置で示す図である。
図3】家具部分が家具本体の側壁に対して平行に整列させられた場合の、家具ヒンジの横断面図である。
図4】家具部分が家具本体の側壁に対してある角度を成す位置にある場合の、家具ヒンジの横断面図である。
図5】家具部分が家具本体の側壁に対して直交方向に整列させられた場合の、家具ヒンジの横断面図である。
図6】家具ヒンジの斜視図である。
図7】家具ヒンジの分解図である。
図8a】別の実施形態による家具ヒンジの平面図である。
図8b図8aに示した家具ヒンジの斜視図である。
【0018】
図1aには、家具本体2と、この家具本体2に対して相対的に可動の、プレート状に形成された扉の形態の家具部分3a,3b;4a,4bとを備えた家具1の斜視図を示している。家具部分3a,3bおよび家具部分4a,4bは、それぞれガイドシステム5によって、家具部分3a,3b;4a,4bが互いに実質的に同一平面を成すように整列させられた第1の位置と、家具部分3a,3b;4a,4bが互いに実質的に平行に整列させられた第2の位置との間で可動に支持されている。家具部分3a,3bが、第2の(平行な)位置で家具本体2の側方の収容ポケット(収容室)8a内に押込み可能となるのに対して、家具部分4a,4bは、互いに平行な位置で別の収容ポケット8b内に押込み可能となる。以下に家具部分3aおよび3bに基づき機能形式を説明する。なお、家具部分4a,4bについても同じ構成が当てはまる。ガイドシステム5は、長手方向(L)を有する第1のガイドレール7aを備えている。第2の家具部分3bに結合可能なガイドキャリッジ6が、第1のガイドレール7aに沿って走行可能に支持されている。
【0019】
図1bには、家具1が示してある。同図では、家具部分3a,3bが、図1aに示した同一平面の位置から出発して、互いにある角度を成す位置に移動させられている。第1の家具部分3aは、2つまたはそれ以上の家具ヒンジ10を介して支持体11に支持されている。この支持体11は、収容ポケット8a内に奥行き方向(Z)に押込み可能である。図中、支持体11は、支持体11が長手方向(L)で第1のガイドレール7aに接続されている移送位置にあり、これによって、ガイドキャリッジ6が第1のガイドレール7aと支持体11との間で往復移送可能となる。図示の移送位置では、支持体11が第1のガイドレール7aに解除可能にロックされている。第1のガイドレール7aと支持体11との間のロックは、支持体11内または支持体11上へのガイドキャリッジ6の進入によって解除可能となる。支持体11は、家具部分3a,3bの高さの少なくとも半分の高さに相当する長さを有する細長いピラーの形態で形成されている。両家具部分3a,3bは、少なくとも1つのヒンジ金具9を介して、鉛直方向に延びる軸線を中心として互いに枢動自在に結合されている。第2の家具部分3bは、ガイドキャリッジ6を介して第1のガイドレール7aに沿って走行可能に支持されている。
【0020】
図2aには、現状で互いに平行に整列させられている家具部分3a,3bを備えた家具1が示してある。支持体11は、ガイドキャリッジ6の進入によって第1のガイドレール7aからロック解除されており、これによって、支持体11は(ガイドキャリッジ6および家具部分3a,3bと一緒に)奥行き方向(Z)に、例えばガイドシステム5の、長手方向(L)に対して横方向に延在する第2のガイドレール(図示せず)に沿って収容ポケット8a内に押込み可能となる。
【0021】
図2bには、現状で収容ポケット8a内に完全に押し込まれた状態にある家具部分3a,3bを備えた家具1が示してある。つまり、家具部分3a,3bは、ガイドシステム5によって、家具部分3a,3bが互いに実質的に同一平面を成すように整列させられた図1aに示した第1の位置と、家具部分3a,3bが互いに実質的に平行に整列させられていて、収容ポケット8aの内部に収容されている図2bに示した第2の位置とから出発して可動に支持されている。こうして、例えば、図2aおよび図2bに示したキッチン12を完全に覆うことができ、これによって、このキッチン12を外側の居住空間の領域から視覚的に分離することができる。収容ポケット8aは、図示の実施例では、側壁13aと、この側壁13aから平行に間隔を置いて配置された分離壁13bとによって形成される。家具部分3a,3bは、互いに平行な位置で側壁13aと分離壁13bとの間に押込み可能となる。
【0022】
図3には、側壁13aと分離壁13bとの間に配置された支持体11が横断面図で示されている。この図示は、図2aに示した家具部分3a,3bの位置に対応する。支持体11は奥行き方向(Z)に収容ポケット8a内に押込み可能である。図中、支持体11は長手方向に延在する中空形材によって形成されている。支持体11と第1の家具部分3aとの間の旋回可能な結合のために、少なくとも1つの家具ヒンジ10が設けられている。家具ヒンジ10は、支持体11に固定するための第1の金具部分14と、家具部分3aに固定するための第2の金具部分15とを有する。第1の金具部分14は、図示の支持体11か、または代替的には別の家具部分(例えば側壁13aまたは分離壁13b)に固定されてよい。固定するために、第1の金具部分14および/または第2の金具部分15は、少なくとも1つの固定箇所18を有していてよい。この固定箇所18は、例えばねじ21(図7)を収容するための穴としてまたは好ましくは拡開可能なアンカーとして形成されていてよい。
【0023】
第1の金具部分14は、支持体11または家具部分(例えば側壁13aまたは分離壁13b)に当て付けるための平坦な第1の当付け面14aを有し、一方、第2の金具部分15には、平坦な第2の当付け面15aが設けられている。両金具部分14,15は、当付け面14aと当付け面15aとが互いに実質的に直交方向に配置された第1の位置(図3)と、当付け面14aと当付け面15aとが互いに実質的に平行に配置された第2の位置(図5)との間で互いに相対的に可動に支持されている。
【0024】
家具ヒンジ10は、ジョイント機構19を有する。ジョイント機構19は、第1の金具部分14と第2の金具部分15とを互いに枢動自在に結合しており、少なくとも5つ、好ましくは少なくとも7つの枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)を有する。さらにジョイント機構19は、少なくとも1つの支持レバー16を有する。支持レバー16は、第1の金具部分14と第2の金具部分15とを互いに直接結合している。すなわち支持レバー16は、第1の枢動軸(A)を介して第1の金具部分14に結合され、第2の枢動軸(B)を介して第2の金具部分15に直接結合されており、支持レバー16が家具ヒンジ10の主荷重を支持する。支持レバー16とは別個の制御機構17によって、第1の金具部分14と第2の金具部分15との間の運動過程が制御可能である。制御機構17は、旋回可能な少なくとも3つの制御レバー17a,17b,17cを有する。第1の制御レバー17aは、第3の枢動軸(C)を介して第1の金具部分14に結合され、第4の枢動軸(D)を介して第3の制御レバー17cに結合されており、この第3の制御レバー17cは、第7の枢動軸(G)を中心として旋回可能に支持レバー16に支持されている。第2の制御レバー17bは、第5の枢動軸(E)を介して第2の金具部分15に結合され、第6の枢動軸(F)を介して第3の制御レバー17cに枢動自在に結合されている。
【0025】
好ましくは、家具ヒンジ10の全ての枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)が、可動の家具部分3aへの家具ヒンジ10の組付け状態で、好ましくは家具ヒンジ10の全ての動作位置で、可動の家具部分3aの壁厚の外部に配置されていることが特定されている。
【0026】
図4には、第1の金具部分14と第2の金具部分15との互いに対する更なる移動が示されている。この場合、第1の家具部分3aの位置は図1bにほぼ対応する。支持レバー16が、第1の枢動軸(A)を介して第1の金具部分14に直接結合され、第2の枢動軸(B)を介して第2の金具部分15に直接結合されていることを良好に認めることができる。第3の制御レバー17cは、第7の枢動軸(G)を中心として支持レバー16に結合されており、第3の制御レバー17cの第1のレバー端部が第4の枢動軸(D)によって第1の制御レバー17aに結合され、第3の制御レバー17cの第2のレバー端部が第6の枢動軸(F)によって第2の制御レバー17bに結合されている。1つの実施例によれば、支持レバー16は、支持レバー16の長手延在方向に沿って、少なくとも部分的に湾曲して形成されていることが特定されていてよい。少なくとも1つの支持レバー16が枢動軸(B)を介して、かつ第2の制御レバー17bが枢動軸(E)を介して、それぞれ第2の金具部分15に支持されていることを認めることができる。
【0027】
図5には、第1の金具部分14と第2の金具部分15との互いに対する更なる運動が示してある。この場合、第1の家具部分3aの位置は図1aに対応し、家具部分3a,3bが互いに実質的に同一平面を成すように整列させられている。家具ヒンジ10の制御機構17は、第1の家具部分3aが側壁13aの一方の端面20を少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に覆うように設計されていることが認められる。こうして、家具1を手前側から見た場合に、側壁13aと可動の家具部分3aとの間に、手前側から見て取れる段部または間隙が発生することはなく、全体として平滑な表面が存在する。
【0028】
図6には、家具ヒンジ10が斜視図で示してある。1つの実施例によれば、少なくとも1つの支持レバー16は、少なくとも2つの部分レバー16a,16bを有し、この少なくとも2つの部分レバー16a,16bが、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置されていることが特定されていてよい。これによって、特に重量のある家具部分3aを支持するために適した安定性のある構造を実現することができる。
【0029】
別の実施例によれば、制御レバー17a,17b,17cのうちの少なくとも1つの制御レバー、好ましくは全ての制御レバー17a,17b,17cが、少なくとも部分的に支持レバー16の部分レバー16a,16bの間に配置されている、かつ/または制御レバー17a,17b,17cのうちの少なくとも1つの制御レバー、好ましくは全ての制御レバー17a,17b,17cが、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの部分レバーを有することが特定されていてよい。
【0030】
図7には、家具ヒンジ10が分解図で示してある。家具ヒンジ10の安定性を向上させるためには、図示のように、支持レバー16および/または少なくとも1つの制御レバー17a,17b,17c、好ましくは全ての制御レバー17a,17b,17cが、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)に沿って互いに間隔を置いて配置された、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)を収容するための少なくとも2つの回動支持部を有していてよい。この場合、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)がこれらの回動支持部に回動可能かつ/または制限された範囲で摺動可能に支持されているように構成されていてよい。
【0031】
第2の金具部分15は、少なくとも1つのウェブ22a,22bを有する。ウェブ22a,22bは、第2の金具部分15の当付け面15aから横方向に、好ましくは実質的に直交方向に突出しており、支持レバー16を支持するために(本実施例では、支持レバー16の両部分レバー16a,16bを両枢動軸(B,E)で支持するために)設けられている。
【0032】
図8aには、別の実施形態による家具ヒンジ10が平面図で示してある。この実施形態も7つの枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)を備えた家具ヒンジ10であり、ジョイント機構19の支持レバー16は、枢動軸(A)によって第1の金具部分14に直接結合され、枢動軸(B)によって第2の金具部分15に直接結合されている。第1の金具部分14が支持体11における固定のために形成されているのに対し、第2の金具部分15は家具部分3aに固定される。この実施形態は、枢動軸(A,B,C,D,E,F,G)の異なる位置と、支持レバー16および制御レバー17a,17b,17cの異なる形態において、前述の実施例とは違っている。この実施形態では、支持レバー16は実質的にまっすぐに形成されている一方で、制御レバー17aは角度付けられた形態を有する。図8bには、図8aに示した実施形態が斜視図で示してある。この実施形態は、特に単一の家具部分3aを家具本体2に対して相対的に運動させるためにも適している。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b