(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】エンジンの電子制御スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20230925BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F02D9/10 H
F02D9/02 351M
F02D9/02 351P
(21)【出願番号】P 2021541773
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033122
(87)【国際公開番号】W WO2021038641
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 大輔
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053713(JP,A)
【文献】特開2012-247279(JP,A)
【文献】特開2013-127267(JP,A)
【文献】特開2012-154257(JP,A)
【文献】特開2003-214196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/10
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルボアを有する第1及び第2バルブボディと、前記第1及び第2バルブボディの各スロットルボア内を貫通する1本のスロットル軸と、前記各スロットルボア内に配設され、前記スロットル軸に支持されるスロットル弁と、前記第1及び第2バルブボディの間で前記スロットル軸上に固定される被動ギヤと、前記被動ギヤの一側面と前記第1バルブボディとの間に配設され、前記スロットル軸の軸線を中心として前記被動ギヤと共に前記スロットル軸を所定方向に付勢するリターンバネと、前記リターンバネの付勢力に抗して前記被動ギヤを回転させて、前記スロットル軸を介して前記各スロットル弁を開閉駆動するモータと、前記スロットル軸の回転角を検出するスロットルセンサとを備えたエンジンの電子制御スロットル装置において、
前記スロットルセンサは、
前記被動ギヤの他側面に設けられた励起導体と、
前記被動ギヤの他側面と前記第2バルブボディとの間に配設され、前記被動ギヤの励起導体と相対向する励磁導体及び信号検出導体を有する基板とを備え
、
前記励起導体は、スロットル軸の軸線を中心に3等分した120°間隔で外周方向に略楕円状に膨出させた形状を有している
ことを特徴とするエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項2】
前記励起導体は、前記被動ギヤに環状をなす芯金と共に一体成形される
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項3】
前記第1及び第2バルブボディの間には、ギヤ収容室を有するギヤカバーが配設され、
前記基板は、前記ギヤカバーに固定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの電子制御スロットル装置
【請求項4】
前記第1バルブボディに設けられ、前記スロットル軸の前記被動ギヤに近接した箇所を回転可能に支持する第1ベアリングと、
前記第2バルブボディに設けられ、前記スロットル軸の前記基板に近接した箇所を回転可能に支持する第2ベアリングと、
前記スロットル軸上に設けられ、前記第2ベアリングに当接して、前記第2ベアリング側への前記スロットル軸の位置変位を規制する係合部と、
前記被動ギヤと前記第1ベアリングとの間に配設され、前記被動ギヤと共に前記スロットル軸を前記第2ベアリング側に付勢する付勢部材と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項5】
前記リターンバネは、前記スロットル軸の軸線を中心として巻回された捩りバネであり、
前記付勢部材は、前記スロットル軸の軸線を中心として巻回された圧縮バネであり、
前記捩りバネ及び前記圧縮バネは、何れか一方を内周側とし、何れか他方を外周側として内外二重に配設されている
ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項6】
前記被動ギヤは、一側面にはスロットル軸方向に突出する筒部を備え、他側面に前記励起導体を備え、
前記付勢部材は、前記筒部と前記スロットル軸との間に配設され、
前記リターンバネは、前記被動ギヤの筒部の外側に配設されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項7】
前記被動ギヤは、中間ギヤを介して前記モータから駆動力を伝達されて回転し、
前記基板は、前記スロットル軸の軸線方向において前記中間ギヤと互いに重なり合う位置関係で配設されると共に、前記中間ギヤとの干渉を回避する逃げ部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによりスロットル弁を開閉駆動する電子制御スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルワイヤーを介してスロットル弁を機械的に開閉駆動するスロットル装置では、アクセル操作量とスロットル開度との関係が一義的に決定されるため、エンジン性能や排ガス特性の面で改良の余地があった。そこで、例えば特許文献1に記載のように、アクセル操作量等から算出した目標スロットル開度に基づき、モータによりスロットル弁を開閉駆動する電子制御スロットル装置(以下、単にスロットル装置と称することもある)が実用化されている。
【0003】
特許文献1のスロットル装置では、一対のバルブボディが互いに連結されて、各バルブボディのスロットルボアを貫通する1本のスロットル軸により、各スロットルボア内のスロットル弁が開閉可能に支持されている。両バルブボディの間においてスロットル軸上には被動ギヤが固定され、この被動ギヤには、モータの出力軸に固定された駆動ギヤが中間ギヤを介して噛合している。被動ギヤのボス部の外周には捩りバネが巻回され、その一端が被動ギヤに連結され、他端がバルブボディに連結され、被動ギヤと共に各スロットル弁が閉弁位置に付勢されている。従って、モータの回転が駆動ギヤ、中間ギヤ及び被動ギヤを介してスロットル軸に伝達され、捩りバネの付勢力に抗して各スロットル弁が開閉駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の電子制御式のスロットル装置では、アクセル操作量等から算出したスロットル開度を目標値としてモータを駆動制御することから、目標値との比較のために実際のスロットル開度を検出するスロットルセンサが必要となる。そこで、例えば特許文献1のような形式のスロットル装置では、一方のバルブボディから突出したスロットル軸の一端にインダクティブ式のスロットルセンサが設けられる場合がある。周知のように、この種のスロットルセンサは、ロータに設けた励起導体と基板に設けた励磁導体及び信号導体との相対的な角度変化をスロットル開度として検出する原理を採用している。従って、ロータをスロットル軸の一端に固定し、このロータに基板を相対向させた配置が採られている。しかしながら、スロットル軸線方向においてスロットルセンサを設置した分だけ直接的にスロットル装置の外寸が増加してしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで、両バルブボディの間の被動ギヤの箇所にスロットルセンサを設けることが考えられるが、被動ギヤの周辺には既に捩りバネ等の部材が配設されている。このため、被動ギヤや捩りバネ等の部材との干渉を防止した上でロータを配設し、さらにロータと相対向する正規の位置関係で基板を配設する必要があり、このような条件を満足する効率的なレイアウトが従来から要望されていた。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、互いに連結された一対のバルブボディの間でスロットル軸上に被動ギヤ及び捩りバネを配設し、これらの部材との干渉を防止した上で、その周辺のスペースを効率的に利用してスロットルセンサを配設することができる電子制御スロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの電子制御スロットル装置は、スロットルボアを有する第1及び第2バルブボディと、第1及び第2バルブボディの各スロットルボア内を貫通する1本のスロットル軸と、各スロットルボア内に配設され、スロットル軸に支持されるスロットル弁と、第1及び第2バルブボディの間でスロットル軸上に固定される被動ギヤと、被動ギヤの一側面と第1バルブボディとの間に配設され、スロットル軸の軸線を中心として被動ギヤと共にスロットル軸を所定方向に付勢するリターンバネと、リターンバネの付勢力に抗して被動ギヤを回転させて、スロットル軸を介して各スロットル弁を開閉駆動するモータと、スロットル軸の回転角を検出するスロットルセンサとを備えたエンジンの電子制御スロットル装置において、スロットルセンサが、被動ギヤの他側面に設けられた励起導体と、被動ギヤの他側面と第2バルブボディとの間に配設され、被動ギヤの励起導体と相対向する励磁導体及び信号検出導体を有する基板とを備え、励起導体が、スロットル軸の軸線を中心に3等分した120°間隔で外周方向に略楕円状に膨出させた形状を有していることを特徴とする。
【0009】
その他の態様として、励起導体が、被動ギヤに環状をなす芯金と共に一体成形されていてもよい。
【0010】
その他の態様として、第1及び第2バルブボディの間には、ギヤ収容室を有するギヤカバーが配設され、基板が、ギヤカバーに固定されていてもよい。
【0011】
その他の態様として、第1バルブボディに設けられ、スロットル軸の被動ギヤに近接した箇所を回転可能に支持する第1ベアリングと、第2バルブボディに設けられ、スロットル軸の前記基板に近接した箇所を回転可能に支持する第2ベアリングと、スロットル軸上に設けられ、第2ベアリングに当接して、第2ベアリング側へのスロットル軸の位置変位を規制する係合部と、被動ギヤと第1ベアリングとの間に配設され、被動ギヤと共にスロットル軸を第2ベアリング側に付勢する付勢部材とをさらに備えていてもよい。
【0012】
その他の態様として、リターンバネが、スロットル軸の軸線を中心として巻回された捩りバネであり、付勢部材が、スロットル軸の軸線を中心として巻回された圧縮バネであり、捩りバネ及び圧縮バネが、何れか一方を内周側とし、何れか他方を外周側として内外二重に配設されていてもよい。
【0013】
その他の態様として、被動ギヤが、一側面にはスロットル軸方向に突出する筒部を備え、他側面に励起導体を備え、付勢部材が、筒部とスロットル軸との間に配設され、リターンバネが、被動ギヤの筒部の外側に配設されていてもよい。
【0014】
その他の態様として、被動ギヤが、中間ギヤを介してモータから駆動力を伝達されて回転し、基板が、スロットル軸の軸線方向において中間ギヤと互いに重なり合う位置関係で配設されると共に、中間ギヤとの干渉を回避する逃げ部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの電子制御スロットル装置によれば、互いに連結された一対のバルブボディの間でスロットル軸上に被動ギヤ及びリターンバネを配設し、これらの部材との干渉を防止した上で、その周辺のスペースを効率的に利用してスロットルセンサを配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のエンジンの電子制御スロットル装置を示す斜視図である。
【
図4】ギヤ収容室内の中間ギヤと基板との関係を示す分解斜視図である。
【
図5】ギヤ収容室内の被動ギヤ上の励起導体を示す分解斜視図である。
【
図6】ギヤ収容室内のスロットル軸上に設けられた各部材を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を自動二輪車用の4気筒エンジンを対象とする電子制御スロットル装置に具体化した一実施形態を説明する。
【0018】
図1,2に示すように本実施形態のスロットル装置1は、スロットルボア2a及びスロットルボア2bが設けられた第1バルブボディ2と、スロットルボア3a及びスロットルボア3bが設けられた第2バルブボディ3とをボルト4により連結してなる。図示はしないが自動二輪車への搭載状態では、
図1中の右側に相当する各スロットルボア2a,2b,3a,3bの一端にエアクリーナからのホースが接続され、反対側の他端にエンジンの吸気マニホールドが接続される。
【0019】
第1及び第2バルブボディ2,3には、各スロットルボア2a,2b,3a,3bを貫通して1本のスロットル軸5が配設され、各バルブボディ2,3の両側にそれぞれ配設された計4個のベアリング6a,6bにより、スロットル軸5の両端部及び中央部が回転可能に支持されている。スロットルボア2a,2b,3a,3b内にはスロットル弁7がそれぞれ配設され、各スロットル弁7はスロットル軸5に対しビス8により固定されている。以下、スロットル軸5の回転中心をスロットル軸線Lと称し、
図2の左右方向に相当するスロットル軸線Lに沿った方向をスロットル軸線方向と称する。
【0020】
図3に示すように、第1及び第2バルブボディ2,3には所定間隔をおいて相対向するボス部2c,3cがそれぞれ一体形成され、これらのボス部2c,3c内に、スロットル軸5の中央部を支持する一対のベアリング6a,6bが圧入固定されている。以下、第1バルブボディ2側のものを第1ベアリング6aと称し、第2バルブボディ3のものを第2ベアリング6bと称する。
【0021】
第1及び第2ベアリング6a,6bの間においてスロットル軸5上には被動ギヤ9が固定されると共に、捩りバネ10によりスロットル軸線Lを中心として被動ギヤ9と共にスロットル軸5が所定方向に付勢されている。なお、捩りバネ10の付勢方向は、スロットル弁7の全閉位置でも全開位置でもよいし、或いは、後述するモータ17等の故障時のリンプホームのためのエンジン出力の確保を目的として、所定の中間開度に向けて付勢してもよい。被動ギヤ9の周辺の構造は本発明の特徴部分に関わるため、詳細については後述する。
【0022】
第1及び第2バルブボディ2,3の間にはギヤ収容室12が設けられている。詳しくは
図2~4に示すように、第1バルブボディ2には第2バルブボディ3側に開口する凹部2dが一体形成され、この凹部2dと連通するようにモータ収容室2eが画成されている。凹部2dには第2バルブボディ3側からギヤカバー13が配設されてパッキン14を介してビス15により固定され、このギヤカバー13により凹部2dが閉鎖されて内部にギヤ収容室12が画成されている。ギヤカバー13には軸孔13aが貫設され、軸孔13a内に第2バルブボディ3のボス部3cがOリング16を介して嵌合し、これによりギヤ収容室12内が水密保持されている。
【0023】
モータ収容室2e内にはモータ17が収容され、その出力軸17aはギヤ収容室12内に突出して駆動ギヤ18が固定されている。駆動ギヤ18と被動ギヤ9との間には中間ギヤ19がギヤ収容室12に突設したギヤ軸27により回転可能に支持され、中間ギヤ19は大径の入力ギヤ19aと小径の出力ギヤ19bとを一体形成してなる。中間ギヤ19の入力ギヤ19aは駆動ギヤ18と噛合し、中間ギヤ19の出力ギヤ19bは被動ギヤ9と噛合している。従って、モータ17の回転が駆動ギヤ18、中間ギヤ19及び被動ギヤ9を介して減速されてスロットル軸5に伝達され、捩りバネ10の付勢力に抗してモータ17の回転方向に対応して各スロットル弁7が開閉駆動される。以下、
図2の上下方向に相当する各ギヤ9,18,19が並んだ方向をギヤ列方向と称する。
【0024】
第1及び第2バルブボディ2,3のギヤ列方向下側には各スロットルボア2a,2b,3a,3bに先端を臨ませた姿勢で燃料噴射弁11が取り付けられ、デリバリパイプ20を介して図示しない燃料ポンプから加圧燃料が供給される。エンジンの各気筒の燃焼サイクルに同期して各燃料噴射弁11が開閉し、それに応じて対応する気筒の吸気マニホールド内に燃料が噴射される。
【0025】
一方、本実施形態のスロットル装置1はスロットル開度を検出するために、ギヤ収容室12内にインダクティブ式のスロットルセンサ21が設けられており、以下、このスロットルセンサ21を含めた被動ギヤ9の周辺の構造を説明する。
【0026】
図5~7に示すように被動ギヤ9は、芯金22及びスロットルセンサ21の励起導体23と共に合成樹脂材料により一体成形(インサート成型)されて製作され、以下、樹脂部分をギヤ本体24と称する。ギヤ本体24は、スロットル弁7の開閉に要求される角度領域と対応する扇状をなし、その第1ベアリング6a側に面した一側面には、スロットル軸線Lを中心として、スロットル軸方向に突出した円筒状をなす筒部24aが一体形成されている。
【0027】
芯金22は平板環状をなし、その外周側がギヤ本体24に埋め込まれ、内周はギヤ本体24内から露出して円筒状をなす嵌合筒25の一端が圧入固定される。嵌合筒25は、その外周をギヤ本体24の筒部24aにより包囲されて、内外二重の位置関係で配設される。この嵌合筒25がスロットル軸5に外嵌されて貫通ピン26が圧入されることにより、被動ギヤ9全体がスロットル軸5上に固定されている。芯金22には一対のストッパ部22aが形成されてギヤ本体24内から第1ベアリング6a側に突出し、被動ギヤ9の回転に伴ってギヤ収容室12内に設けられた図示しないストッパ面にそれぞれ当接して、スロットル弁7の開度を全開位置と全閉位置との間で規制する。
【0028】
励起導体23は、ギヤ本体24の第2ベアリング6b側に面した他側面に設けられている。全体として励起導体23は薄板状をなすと共に、スロットル軸線方向から見て、スロットル軸線Lを中心とした等分3箇所(120°間隔)を外周方向に略楕円状に膨出させた形状をなし、以下、このギヤ本体24の他側面に露出した励起導体23の箇所を本体23aと称する。
【0029】
励起導体23の本体23aの外周全体には、第1バルブボディ2側に向けて直角に屈曲した断面形状をなす外周縁部23bが形成されている。また本体23aの中心には、芯金22の内周と対応する円形状の透孔23cが形成され、透孔23cの内周縁のスロットル軸線Lを中心とした等分3箇所(
図7に2箇所を示す)には、それぞれ第1バルブボディ2側に向けて直角に屈曲した断面形状をなす内周縁部23dが形成されている。各内周縁部23dからはかえし部23eが延設され、各かえし部23eは本体23aの外周側に向けて直角に屈曲した断面形状をなしている。これらの外周縁部23b、各内周縁部23d及び各かえし部23eはギヤ本体24内に埋め込まれ、各かえし部23eは本体23aに対して
図3に示す間隙Gを介して相対向している。これらのかえし部23eにより、ギヤ本体24の他側面からの励起導体23の剥離が防止されている。
【0030】
また
図3,5,6に示すように、ギヤ収容室12内においてギヤカバー13の内側面にはスロットルセンサ21の基板28が固定され、図示はしないが基板28はギヤカバー13の一側に設けられたコネクタ13bに配線を介して接続されている。結果として基板28は被動ギヤ9の他側面と第2ベアリング6bとの間に位置し、スロットル軸線方向において中間ギヤ19に対して互いに重なる位置関係で配設されている。基板28上には制御回路28cが設けられる。また、基板28に設けられる励磁導体29及び信号検出導体30は、その被動ギヤ9側の面に形成された励起導体23と微小ギャップを介して相対向している。
【0031】
インダクティブ型のスロットルセンサ21の原理は、例えば特許第4809829号明細書等により周知であるため、概略のみを述べる。スロットル軸5と一体で被動ギヤ9と共に励起導体23が回転すると、その回転角度に応じて基板28側の励磁導体29及び信号検出導体30と間にスロットル軸線Lを中心とした位置変位が生じる。ギヤカバー13のコネクタ13bを介して車体側からの電力が基板28に供給され、その励磁導体29に流される交流電流に応じて被動ギヤ9の励起導体23に電流が励起される。励起された電流により基板28の信号検出導体30には交流電流が励起され、この交流電流に基づき、制御回路28cによりスロットル軸5の回転角度、ひいてはスロットル開度信号が生成され、コネクタ13bを介して車体側に出力される。
【0032】
被動ギヤ9の周辺の説明を続けると、被動ギヤ9の筒部24aと第1バルブボディ2のボス部2cとは同一外径で相対向し、それらの外周にスロットル軸線Lを中心として捩りバネ10がコイル状に巻回されている。図示はしないが、捩りバネ10の一端は第1バルブボディ2に掛止され、他端は被動ギヤ9に掛止され、これにより被動ギヤ9と共に各スロットル弁7が所定方向に付勢されている。本実施形態では、捩りバネ10が本発明のリターンバネとして機能する。
【0033】
また、
図3,6に示すように被動ギヤ9の周辺には、スロットル軸5の軸線方向のガタツキを解消するガタ詰め機構が設けられている。ギヤ収容室12内においてスロットル軸5に形成されたリング溝5aにはEリング31が嵌め込まれ、Eリング31がワッシャ32を介して第2ベアリング6bのインナレースに当接することにより、スロットル軸5が第2ベアリング6b側へ位置変位することを規制するように構成されている。
【0034】
また、被動ギヤ9の嵌合筒25の外周には、スロットル軸線Lを中心として圧縮バネ33がコイル状に巻回されている。圧縮バネ33の一端は被動ギヤ9の芯金22に当接し、他端はスロットル軸5上に嵌め込まれたリテーナ34を介して第1ベアリング6aのインナレースに当接している。被動ギヤ9は貫通ピン26によりスロットル軸5上に固定されているため、圧縮バネ33の付勢力は被動ギヤ9と共にスロットル軸5を第1ベアリング6aから離間させる方向、即ち、第2ベアリング6b側へと作用している。結果としてスロットル軸5は、ワッシャ32を介したEリング31の当接により第2ベアリング6b側への位置変位を規制され、圧縮バネ33の付勢力を受けて第1ベアリング6a側への位置変位を規制され、スロットル軸線方向においてガタツキなく位置決めされる。
【0035】
スロットル軸5にガタツキが生じると、制御上では目標値に相当するスロットル開度が達成されても吸気量に誤差が生じてしまう。スロットル軸5のガタツキを解消することで、このような事態を未然に防止してエンジンの吸気量をより高精度に制御することができる。
【0036】
本実施形態では、ワッシャ32及びEリング31が本発明の係合部として機能し、圧縮バネ33が本発明の付勢部材として機能する。なお、Eリング31に代えて、スロットル軸5に段差を形成して第2ベアリング6bに当接させてもよいし、圧縮バネ33に代えてウェーブワッシャを用いてもよい。これらの場合には、段差が本発明の係合部として機能し、ウェーブワッシャが本発明の付勢部材として機能することになる。
【0037】
次いで、以上のように構成されたスロットル装置1において、被動ギヤ9の周辺の各部材の位置関係を説明する。
【0038】
図3に示すように、第1ベアリング6aと第2ベアリング6bとの間でスロットル軸5上に被動ギヤ9が固定され、その第1ベアリング6a側に面した一側面と第1バルブボディ2との間に捩りバネ10が配設されている。被動ギヤ9の第2バルブボディ3側に面した他側面には励起導体23が設けられ、他側面と第2バルブボディ3との間には励磁導体29及び信号検出導体30が設けられた基板28が配設されている。
【0039】
本発明においては、励起導体23を被動ギヤ9に設けた構成となっているため、スロットル軸5上で励起導体23を支持するロータを必要としない。被動ギヤ9とは別部材のロータに励起導体23を設けた場合には、スロットル軸線方向において少なくともロータの厚み分の設置スペースを必要とする。被動ギヤ9に設けられた励起導体23は実質的に設置スペースを必要としないため、基板28及び励起導体23を含めたスロットルセンサ21全体を無理なく設置できる。
【0040】
したがって、スロットル軸線方向でのスロットル装置1の外寸を大きく増加させずにスロットルセンサ21を設置でき、スロットル装置1の小型化を達成することができる。
【0041】
本実施形態では、スロットル軸5のガタ詰め機構のために圧縮バネ33が設けられているが、その配置によりスロットル装置1の外寸の増加が防止されている。仮に被動ギヤ9を挟んだ捩りバネ10とは反対側に圧縮バネ33を配設した場合には、スロットルセンサ21の基板28の配置を妨げてしまうし、双方のバネ10,33がスロットル軸線方向に並設されることによりスロットル装置1の外寸が増加してしまう。
【0042】
本実施形態では、被動ギヤ9のギヤ本体部24にスロットル軸方向に突出する筒部24aを設け、筒部24aの外周に捩りバネ10を巻回し、スロットル軸5と筒部24aの内周側との間に、圧縮バネ33を配設し、スロットル軸5に固定された嵌合筒25の外周に圧縮バネ33を巻回している。
【0043】
被動ギヤ9のギヤ本体部24のスロットル軸5まわりのスペースに捩りバネ10を外周側とし、圧縮バネ33を内周側とした内外二重の位置関係で配設されているため、スロットル装置1の外寸をスロットル軸線方向のみならずギヤ列方向にも増加させずに、ガタ詰めによる作用効果を達成することができる。なお、捩りバネ10と圧縮バネ33との内外関係を逆転させて、圧縮バネ33を外周側とし、捩りバネ10を内周側としてもよい。
【0044】
加えて本実施形態では、被動ギヤ9のギヤ本体24に埋め込まれた環状の芯金22に嵌合筒25を圧入固定し、この嵌合筒25をスロットル軸5に外嵌させることで被動ギヤ9を固定している。このため、スロットル軸5と嵌合筒25とがスロットル軸線方向において十分に長い領域で接触している。
【0045】
本実施形態では、
図5,6に示すように、基板28にはスロットル軸5が挿通される軸孔28aが形成されると共に、ギヤ列方向における中間ギヤ19側の箇所が大きく切り欠かれて軸孔28aと連続する逃げ部28bが形成されている。励磁導体29及び信号検出導体30は、ギヤ列方向においてスロットル軸5を挟んだ中間ギヤ19とは反対側の領域に配設されている。
【0046】
バタフライ式のスロットル弁7の開閉角度の領域は90°程度であり、その領域内で被動ギヤ9上の励起導体23も角度変化する。したがって、本実施形態ではスロットル弁7の角度領域を検出するに足りるだけの範囲領域に合わせて、励磁導体29及び信号検出導体30が形成されており、これにより上記のような電流の励起作用が問題なく奏される。
【0047】
そして、仮に基板28に逃げ部28bが形成されていない場合には、中間ギヤ19との干渉回避のために、スロットル軸線方向において中間ギヤ19に対して基板28を第1ベアリング6a側にオフセット配置するか、或いは、ギヤ列方向において中間ギヤ19に対して基板28を大きく離間配置する必要が生じる。スロットル装置1の外寸は、前者の配置ではスロットル軸線方向に増加し、後者の配置ではギヤ列方向に増加してしまう。
【0048】
上記のような逃げ部28bを有する基板形状とすることにより、中間ギヤ19との干渉を回避した上で、スロットル軸線方向では基板28を中間ギヤ19と重ねて配置できると共に、ギヤ列方向では基板28を中間ギヤ19に接近して配置することができる。結果として、スロットル軸線方向とギヤ列方向との何れにおいてもスロットル装置1の外寸を縮小することができる。
【0049】
本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、自動二輪車用の4気筒エンジンを対象とする電子制御スロットル装置1に具体化したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ATV(All Terrain Vehicle)に動力源として搭載されるエンジン、或いは発電機用のエンジンを対象としたスロットル装置に具体化してもよいし、気筒数が異なるエンジンのスロットル装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 電子制御スロットル装置
2 第1バルブボディ
2a,2b,3a,3b スロットルボア
3 第2バルブボディ
5 スロットル軸
6a 第1ベアリング
6b 第2ベアリング
7 スロットル弁
9 被動ギヤ
10 捩りバネ(リターンバネ)
17 モータ
19 中間ギヤ
21 スロットルセンサ
22 芯金
23 励起導体
24a 筒部
25 嵌合筒
26 貫通ピン
28 基板
28b 逃げ部
29 励磁導体
30 信号検出導体
31 Eリング(係合部)
32 ワッシャ(係合部)
33 圧縮バネ(付勢部材)
L 軸線