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特許7354284香りの経時的な変化を表わす立体物の生成方法、プログラム、装置、および立体物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】香りの経時的な変化を表わす立体物の生成方法、プログラム、装置、および立体物
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230925BHJP
【FI】
G01N27/62 Y
G01N27/62 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021560811
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046232
(87)【国際公開番号】W WO2021106087
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健
(72)【発明者】
【氏名】森下 薫
(72)【発明者】
【氏名】横山 琢矢
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-058217(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157187(WO,A1)
【文献】特開2017-190982(JP,A)
【文献】特開2009-162731(JP,A)
【文献】特開2004-205258(JP,A)
【文献】米国特許第06212938(US,B1)
【文献】大森 憲 伊藤慎一郎,飲食中にリアルタイムに変化する匂いを捉える試み,香料 ,No. 276,日本香料協会,2017年12月,Pages 63-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/92
G01N 33/00 - G01N 33/46
G01N 30/00 - G01N 30/96
G01N 1/00 - G01N 1/44
A45D 34/00 - A45D 37/00
A61Q 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各時刻における人が香りを嗅いだときに感じる前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記各時刻における測定機器が測定する前記香りに含まれる各成分の量を取得するステップと、
前記取得した、前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記香りに含まれる各成分の量に基づいて、時刻を示す軸と、前記香りの各質の強さを示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りの各質の強さを表わし、前記時刻を示す軸と、前記香りに含まれる各成分の量を示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りに含まれる各成分の量を表わす立体物の3次元形状情報を生成するステップと
を含み、
前記質の強さと、前記質に対応する前記成分の量と、は同一の態様で表示される、方法。
【請求項2】
前記測定機器は、プロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンピュータを
各時刻における人が香りを嗅いだときに感じる前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記各時刻における測定機器が測定する前記香りに含まれる各成分の量を取得する取得部、
前記取得した、前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記香りに含まれる各成分の量に基づいて、時刻を示す軸と、前記香りの各質の強さを示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りの各質の強さを表わし、前記時刻を示す軸と、前記香りに含まれる各成分の量を示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りに含まれる各成分の量を表わす立体物の3次元形状情報を生成する生成部
として機能させ
前記質の強さと、前記質に対応する前記成分の量と、は同一の態様で表示される、プログラム。
【請求項4】
各時刻における人が香りを嗅いだときに感じる前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記各時刻における測定機器が測定する前記香りに含まれる各成分の量を取得する取得部と、
前記取得した、前記香りの強さおよび前記香りの各質の前記香りの全体に対する割合、および、前記香りに含まれる各成分の量に基づいて、時刻を示す軸と、前記香りの各質の強さを示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りの各質の強さを表わし、前記時刻を示す軸と、前記香りに含まれる各成分の量を示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りに含まれる各成分の量を表わす立体物の3次元形状情報を生成する生成部と
を備え
前記質の強さと、前記質に対応する前記成分の量と、は同一の態様で表示される、装置。
【請求項5】
各時刻における人が香りを嗅いだときに感じる前記香りの各質の強さを示す軸と、時刻を示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りの各質の強さを表わし、前記各時刻における測定機器が測定する前記香りに含まれる各成分の量を示す軸と、前記時刻を示す軸と、が交差する面に、前記各時刻における前記香りに含まれる各成分の量を表わし、前記質の強さと、前記質に対応する前記成分の量と、は同一の態様で表示される、立体物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香りの経時的な変化を表わす立体物の生成方法、プログラム、装置、および立体物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香水等の香りを発する物は、複数の香料を混ぜ合わせて作られている。複数の香料のうち揮発性の高い香料から低い香料へと順に香りを発するので、香水等の香りは、時間の経過に伴って変化していく。このような香りの変化は、香り立ちとも呼ばれており、また、変化していく香りは、時間の経過順に、トップノート、ミドルノート、ラストノートとも呼ばれている。
【0003】
香りの変化に関して、特許文献1では、対象物の外観の経時変化を示す第一動画と対象物に対応する香気成分の量または比率の経時変化をグラフ形式で示す第二動画とが時系列が対応付けられて再生される表示を出力する、ことが開示されている(特許文献1の段落[0014])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6532847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、調香師等の人が実際に香りを嗅いだときに感じる香りの変化は、特許文献1の香気成分の量または比率の変化に必ずしも連動しない。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態では、香りの2つの経時的な変化の違いを提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、人が香りを嗅いだときに感じる前記香りの第1の指標の時系列、および、測定機器が測定する前記香りの第2の指標の時系列を取得するステップと、前記取得したそれぞれの時系列に基づいて、前記第1の指標と前記第2の指標との経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、香りの2つの経時的な変化の違いを提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生成装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る香りの強さの時系列の一例である。
図4】本発明の一実施形態に係る香りの質の時系列の一例である。
図5】本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値の一例である。
図6】本発明の一実施形態に係る香りの強さと香りの質とを掛け合わせた時系列の一例(積み上げ面グラフ)である。
図7】本発明の一実施形態に係る香りの強さと香りの質とを掛け合わせた時系列の一例(棒グラフ)である。
図8】本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値のスムージングを説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値に基づく近似曲線の一例(積み上げ面グラフ)である。
図10】本発明の一実施形態に係る3次元形状情報の一例である。
図11】本発明の一実施形態に係る生成処理のフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る生成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
なお、本明細書では、主に、香水の香りについて説明するが、本発明は、任意の物が発する任意の香り(例えば、製品が発する香り、動植物が発する香り、空間や場所等における香り等)に適用することができる。
【0012】
また、本明細書で用いられる「香り」は、空気中を漂ってきて嗅覚を刺激するものであればよく、香水等の好ましいにおいに限らず、悪臭等の不快感をもたらすにおいも含まれる。
【0013】
<全体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成図である。図1に示されるように、生成装置10は、任意のネットワークまたは記憶媒体を介して、第1の指標入力端末20および第2の指標入力端末30とデータを送受信することができる。また、第2の指標入力端末30は、任意のネットワークまたは記憶媒体を介して、測定機器40が測定したデータを取得することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0014】
第1の指標入力端末20は、香りの第1の指標が入力される端末である。香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じる香りの指標である。例えば、香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じる、香りの強さおよび香りの質である。第1の指標入力端末20は、第1の指標入力端末20に入力された(例えば、調香師等の人が入力した)、人が香りを嗅いだときに感じる香りの指標の時系列のデータを、ネットワークまたは記憶媒体を介して、生成装置10へ渡す。第1の指標入力端末20は、パーソナルコンピュータ等の任意の端末であってよい。
【0015】
第2の指標入力端末30は、香りの第2の指標が入力される端末である。香りの第2の指標は、測定機器40が測定する香りの指標である。例えば、香りの第2の指標は、測定機器40が測定する、香りに含まれる成分および成分の量である。第2の指標入力端末30は、第2の指標入力端末30に入力された(例えば、測定機器40から取得した)、測定機器40が測定する香りの指標の時系列のデータを、ネットワークまたは記憶媒体を介して、生成装置10へ渡す。第2の指標入力端末30は、パーソナルコンピュータ等の任意の端末であってよい。
【0016】
測定機器40は、香りの第2の指標を測定する機器である。測定機器40は、香りに含まれる成分および成分の量を測定することができる。例えば、測定機器40は、プロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)である。なお、測定機器40は、PTR-MSに限らず、DART-MS、ガスクロマトグラフィー、センサー等の任意の測定機器であってよい。
【0017】
ここで、PTR-MSについて説明する。PTR-MSは、ヒドロニウムイオンHによるプロトン移動反応を利用したオンラインの化学イオン化質量分析計である。本発明の一実施形態では、PTR-MSを用いることによって、香料が空中に気化する様子を、時間変化と共に、リアルタイムで定性・定量的に各香料成分ごとに数値化することができるようになる。
【0018】
生成装置10は、香りの第1の指標の時系列および香りの第2の指標の時系列に基づいて、第1の指標と第2の指標との経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成する。生成装置10は、1つまたは複数のコンピュータからなる。また、生成装置10は、任意のネットワークまたは記憶媒体を介して、第1の指標入力端末20および第2の指標入力端末30からデータを取得することができる。後段で、図2を参照しながら、生成装置10について詳細に説明する。
【0019】
なお、図1では、第1の指標入力端末20と第2の指標入力端末30とを別々の装置として説明したが、1つの装置で実装するようにしてもよい。また、生成装置10が、第1の指標入力端末20と第2の指標入力端末30との機能の少なくとも一部を有するようにしてもよい。
【0020】
<機能ブロック>
図2は、本発明の一実施形態に係る生成装置10の機能ブロック図である。図2に示されるように、生成装置10は、取得部101と、生成部102と、を備える。また、生成装置10は、プログラムを実行することで、取得部101、生成部102として機能する。
【0021】
取得部101は、香りの第1の指標の時系列および香りの第2の指標の時系列を取得する。以下、第1の指標と第2の指標とに分けて説明する。
【0022】
<第1の指標>
取得部101は、任意のネットワークまたは記憶媒体を介して、第1の指標入力端末20から、香りの第1の指標の時系列のデータを取得する。上述したように、香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じる香りの指標である。なお、香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じることができる内容であれば、香りの強さ、香りの質、香りを嗅いで感じられる気分等の任意の指標であってよい。すなわち、香りの第1の指標は、人により評価される香りの実感(つまり、香りを嗅いだときに感じられるもの)を示す。また、香りの第1の指標として、1つの指標が用いられてもよいし、複数の指標が組み合わされて用いられてもよい。
【0023】
例えば、香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じる、香りの強さおよび香りの質である。以下、図3および図4を参照しながら、香りの強さの時系列と香りの質の時系列について説明する。
【0024】
<<香りの強さ>>
図3は、本発明の一実施形態に係る香りの強さの時系列の一例である。香りの強さは、香りの強度を示す。例えば、香りの強さは、下記の6段階臭気強度表示法の基準を用いて評価されうる。
5:強烈なにおい
4:強いにおい
3:楽に感知できるにおい
2:何のにおいであるか分かる弱いにおい(認知閾値)
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
0:無臭
【0025】
図3に示されるように、調香師等の人は、所定の時(図3の例では、所定の開始時から、5分後、30分後、60分後、120分後、240分後、360分後)に、香りの強さ(例えば、上記の6段階のうちのいずれであるか)を評価する。
【0026】
<<香りの質>>
図4は、本発明の一実施形態に係る香りの質の時系列の一例である。香りの質は、香りの種類を示す。例えば、香りの質は、ムスキー、アンバー、ウッディ、フローラル、フルーティ、グリーン、シトラス等の香水等の香りの種類である。
【0027】
図4に示されるように、調香師等の人は、所定の時(図4の例では、所定の開始時から、5分後、30分後、60分後、120分後、240分後、360分後)に、香りの種類、および、各種類の香りの全体に対する割合(つまり、どの種類の香りが強く、どの種類の香りが弱いか)を評価する。
【0028】
なお、嗅覚の順応を防ぐために、調香師等の人は、所定の時以外には香りを嗅がないようにしてもよい。
【0029】
<第2の指標>
取得部101は、任意のネットワークまたは記憶媒体を介して、第2の指標入力端末30から、香りの第2の指標の時系列のデータを取得する。上述したように、香りの第2の指標は、測定機器が測定する香りの指標である。なお、香りの第2の指標は、測定機器が測定することができる内容であれば、任意の指標であってよい。すなわち、香りの第2の指標は、測定機器により評価される香りの実態(つまり、香りの成分の挙動)を示す。また、香りの第2の指標として、1つの指標が用いられてもよいし、複数の指標が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
例えば、香りの第2の指標は、測定機器(例えば、PTR-MS)が測定する、香りに含まれる1つまたは複数の成分および各成分の量である。以下、図5を参照しながら、香りに含まれる成分および成分の量の時系列について説明する。
【0031】
<<香りに含まれる成分および成分の量>>
図5は、本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値の一例である。図5に示されるように、PTR-MSは、香りに含まれる成分、および、各成分の量を測定する。
【0032】
生成部102は、香りの第1の指標の時系列および香りの第2の指標の時系列に基づいて、第1の指標と第2の指標との経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成する。生成部102は、第1の指標のグラフおよび第2の指標のグラフを作成して、第1の指標のグラフおよび第2の指標のグラフに基づいて3次元形状情報を生成する。以下、図6図10を参照しながら、3次元形状情報の生成について詳細に説明する。
【0033】
<第1の指標のグラフの作成>
生成部102は、香りの強さ(例えば、図3のグラフ)と、香りの質(例えば、図4のグラフ)と、に基づいて、図6のような積み上げ面グラフを作成する。
【0034】
具体的には、生成部102は、各時点において、"香りの強さ"と"各質(つまり、各種類)の香りの全体に対する割合"を乗算して、各種類の香りの強さを算出する。また、生成部102は、各種類の香りの強さの時系列を面で表示し、各種類の香りの強さの面を積み上げて積み上げ面グラフを作成する。なお、生成部102は、各種類の香りの強さの面を異なる色や模様等で表示することによって、区別しやすいようにする。
【0035】
図6は、本発明の一実施形態に係る香りの強さと香りの質とを掛け合わせた時系列の一例(積み上げ面グラフ)である。図6に示されるように、各質(つまり、各種類)の香りの強さの経時的な変化が表わされる。
【0036】
なお、生成部102は、図6の積み上げ面グラフのような面グラフの代わりに、図7のような棒グラフを作成する構成とすることもできる。
【0037】
<第2の指標のグラフの作成>
生成部102は、測定機器(例えば、PTR-MS)が測定した各成分の実測値についてスムージングを行う。具体的には、生成部102は、測定機器(例えば、PTR-MS)が測定した各成分の実測値の近似曲線を作成する。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値のスムージングを説明するための図である。例えば、図8の左側では、香りに含まれるムスク香調の成分である"MUSCENONE"のPTR-MSの実測値の近似曲線が示されている。また、図8の右側では、香りに含まれるシトラス香調の成分である"LIMONENE"のPTR-MSの実測値の近似曲線が示されている。
【0039】
生成部102は、図8を参照しながら説明したスムージングが行われた各成分の近似曲線を積み上げて、図9のような積み上げ面グラフを作成する。なお、生成部102は、スムージングが行われていない各成分の実測値を積み上げて、積み上げ面グラフを作成する構成とすることもできる。
【0040】
具体的には、生成部102は、香りに含まれる各成分の量の時系列を面で表示し、各成分の量の面を積み上げて積み上げ面グラフを作成する。なお、生成部102は、各成分の量の面を異なる色や模様等で表示することによって、区別しやすいようにする。
【0041】
図9は、本発明の一実施形態に係るPTR-MSの実測値に基づく近似曲線の一例(積み上げ面グラフ)である。図9に示されるように、各成分の量の経時的な変化が表わされる。
【0042】
ここで、積み上げ面グラフの、香りの第1の指標の面(つまり、各種類の香りの強さの面)と、香りの第2の指標の面(つまり、香りに含まれる各成分の量の面)と、の対応関係について説明する。生成部102は、ある種類の香りの強さの面と、その種類に対応する(例えば、その種類の香りを発する)成分の量の面と、を同一の色や模様等で表示することができる。
【0043】
<3次元形状情報の生成>
図10は、本発明の一実施形態に係る3次元形状情報の一例である。生成部102は、香りの第1の指標の積み上げグラフと、香りの第2の指標の積み上げグラフと、に基づいて、図10のような3次元形状情報を生成する。
【0044】
生成部102は、例えば、時間を示す軸をx軸とし、香りの第1の指標(つまり、各種類の香りの強さ)を示す軸をy軸とし、香りの第2の指標(つまり、香りに含まれる各成分の量)を示す軸をz軸とする3次元形状情報(つまり、x軸の座標、y軸の座標、z軸の座標)を生成する。なお、生成部102は、x軸とy軸とが交差する面およびx軸とz軸とが交差する面以外の座標の値を内挿(または補間)することができる。
【0045】
生成部102は、3次元形状情報を出力する。例えば、生成部102は、生成した3次元形状情報に基づいて、3Dプリンタに立体物を出力させることができる。なお、生成部102は、ディスプレイ等の表示装置上で、立体物の3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)を表示させる構成とすることもできる。
【0046】
<処理方法>
図11は、本発明の一実施形態に係る生成処理のフローチャートである。
【0047】
ステップ11(S11)において、取得部101は、第1の指標入力端末20から、香りの第1の指標の時系列のデータを取得する。上述したように、香りの第1の指標は、人が香りを嗅いだときに感じる香りの指標である。
【0048】
ステップ12(S12)において、取得部101は、第2の指標入力端末30から、香りの第2の指標の時系列のデータを取得する。上述したように、香りの第2の指標は、測定機器が測定する香りの指標である。
【0049】
なお、S11とS12とは順序が逆であってもよい。
【0050】
ステップ13(S13)において、生成部102は、S11およびS12で取得された香りの第1の指標の時系列および香りの第2の指標の時系列に基づいて、第1の指標と第2の指標との経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成する。
【0051】
具体的には、生成部102は、各時点において、"香りの強さ"と"各質(つまり、各種類)の香りの全体に対する割合"を乗算して、各種類の香りの強さを算出する。また、生成部102は、各種類の香りの強さの時系列を面で表示し、各種類の香りの強さの面を積み上げて積み上げ面グラフを作成する。
【0052】
次に、生成部102は、香りに含まれる各成分の量の時系列を面で表示し、各成分の量の面を積み上げて積み上げ面グラフを作成する。なお、第1の指標の積み上げグラフの作成と第2の指標の積み上げグラフの作成とは順序が逆であってもよい。
【0053】
次に、生成部102は、香りの第1の指標の積み上げ面グラフと、香りの第2の指標の積み上げ面グラフと、に基づいて、3次元形状情報を生成する。
【0054】
ステップ14(S14)において、生成部102は、S13で生成した3次元形状情報を出力する。例えば、生成部102は、S13で生成した3次元形状情報に基づいて、3Dプリンタに立体物を出力させることができる。なお、生成部102は、ディスプレイ等の表示装置上で、立体物の3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)を表示させる構成とすることもできる。
【0055】
<効果>
このように、本発明の一実施形態では、香りの主観的な指標(つまり、人が香りを嗅いだときに感じる香りの第1の指標)、および、香りの客観的な指標(つまり、測定機器が測定する香りの第2の指標)、という2つの指標を数値化して、香りの経時的な変化を表わす立体物にすることによって、香りの変化を可視化する。そのため、目で見ることができない香りの変化の実像を、主観的な指標と客観的な指標という2つの観点から同時に比較しながら見たり触れたりして確認することができる。
【0056】
本発明の一実施形態に係る立体物を用いることによって、例えば、香水を購入しようとする者は、購入前に、香水の香りの主観的な指標の変化および客観的な指標の変化の違いを見たり触れたりして確認することができる。
【0057】
<別の実施形態>
なお、本発明は、第1の指標と第2の指標との両方が、人が香りを嗅いだときに感じる香りの指標(主観的な指標)である場合にも適用することができる。また、本発明は、第1の指標と第2の指標との両方が、測定機器が測定する香りの指標(客観的な指標)である場合にも適用することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0058】
<主観的な指標と主観的な指標との場合>
生成装置10は、例えば、別々の調香師等の人が同一の香りを嗅いだときに感じる香りの指標の時系列に基づいて、ある人がある香りを嗅いだときに感じる香りの指標と、別の人が同じ香りを嗅いだときに感じる香りの指標と、の経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成することができる。そのため、人(例えば、年齢層、性別)によって異なる香りの感じ方を比較することができる。
【0059】
また、生成装置10は、例えば、同一の調香師等の人が別々の香りを嗅いだときに感じる香りの指標の時系列に基づいて、ある人がある香りを嗅いだときに感じる香りの指標と、同じ人が別の香りを嗅いだときに感じる香りの指標と、の経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成することができる。そのため、香りよって異なる香りの感じ方を比較することができる。
【0060】
<客観的な指標と客観的な指標との場合>
生成装置10は、例えば、別々の測定機器が同一の香りを測定したときの香りの指標の時系列に基づいて、ある測定機器がある香りを測定したときの香りの指標と、別の測定機器が同じ香りを測定したときの香りの指標と、の経時的な変化を表わす立体物の3次元形状を生成することができる。そのため、測定機器によって異なる測定の結果を比較することができる。
【0061】
また、生成装置10は、例えば、同一の測定機器が別々の香りを測定したときの香りの指標の時系列に基づいて、ある測定機器がある香りを測定したときの香りの指標と、同じ測定機器が別の香りを測定したきの香りの指標と、の経時的な変化を表わす立体物の3次元形状情報を生成することができる。そのため、香りによって異なる測定の結果を比較することができる。
【0062】
<ハードウェア構成>
図12は、本発明の一実施形態に係る生成装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。生成装置10は、CPU(Central Processing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、RAM(Random Access Memory)3を有する。CPU1、ROM2、RAM3は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0063】
また、生成装置10は、補助記憶装置4、表示装置5、操作装置6、I/F(Interface)装置7、ドライブ装置8を有することができる。なお、生成装置10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0064】
CPU1は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0065】
ROM2は、不揮発性メモリである。ROM2は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムをCPU1が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM2はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0066】
RAM3は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM3は、補助記憶装置4にインストールされている各種プログラムがCPU1によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0067】
補助記憶装置4は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0068】
表示装置5は、生成装置10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0069】
操作装置6は、生成装置10の管理者が生成装置10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0070】
I/F装置7は、ネットワークに接続し、第1の指標入力端末20および第2の指標入力端末30と通信を行うための通信デバイスである。
【0071】
ドライブ装置8は記憶媒体9をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体9には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体9には、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0072】
なお、補助記憶装置4にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体9がドライブ装置8にセットされ、該記憶媒体9に記録された各種プログラムがドライブ装置8により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置4にインストールされる各種プログラムは、I/F装置7を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 生成装置
20 第1の指標入力端末
30 第2の指標入力端末
40 測定機器
101 取得部
102 生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12