IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-制御装置及び制御方法 図1
  • 特許-制御装置及び制御方法 図2
  • 特許-制御装置及び制御方法 図3
  • 特許-制御装置及び制御方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021566368
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2020061354
(87)【国際公開番号】W WO2021130577
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019236390
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】山田 康夫
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099035(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096644(WO,A1)
【文献】特開2019-073077(JP,A)
【文献】特開2016-177465(JP,A)
【文献】特開2010-086269(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(10)のライダーに対する報知を行う報知装置(15)の動作を制御する制御装置(12)であって、
前記鞍乗り型車両(10)の前方を走行する前走車(20)による今後の車線変更に関する予測情報を取得する取得部(121)と、
前記鞍乗り型車両(10)すり抜け走行中であると判定され、且つ、前記予測情報が判定基準を満たすと判定された場合に、前記ライダーに対する前記車線変更の警告を前記報知装置(15)に行わせる制御部(122)と、
を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部(122)は、前記予測情報の種類に応じて、前記警告の態様を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部(122)は、前記予測情報における前記車線変更の可能性の度合いに応じて、前記警告の態様を変化させる、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部(122)は、前記鞍乗り型車両(10)の走行モードに応じて、前記判定基準を変化させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予測情報は、複数の前記前走車(20)間の位置関係情報を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予測情報は、前記前走車(20)の仕様情報を含む、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記予測情報は、前記前走車(20)のウィンカー情報を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記予測情報は、前記前走車(20)の舵角情報を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記予測情報は、前記前走車(20)の乗員の動作情報を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記予測情報は、前記鞍乗り型車両(10)の両側のレーン(L1、L2)のそれぞれにおける車両走行情報を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記予測情報は、前記鞍乗り型車両(10)に搭載される環境センサ(11)の出力に基づいて取得される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記予測情報は、前記鞍乗り型車両(10)と他車両又はインフラ設備との間での無線通信によって取得される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
鞍乗り型車両(10)のライダーに対する報知を行う報知装置(15)の制御方法であって、
制御装置(12)の取得部(121)が、前記鞍乗り型車両(10)の前方を走行する前走車(20)による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、
前記制御装置(12)の制御部(122)が、前記鞍乗り型車両(10)すり抜け走行中であると判定され、且つ、前記予測情報が判定基準を満たすと判定された場合に、前記ライダーに対する前記車線変更の警告を前記報知装置(15)に行わせる、
制御方法。
【請求項14】
鞍乗り型車両(10)の動作を制御する制御装置(12)であって、
前記鞍乗り型車両(10)の前方を走行する前走車(20)による今後の車線変更に関する予測情報を取得する取得部(121)と、
前記鞍乗り型車両(10)すり抜け走行中であると判定され、且つ、前記予測情報が判定基準を満たすと判定された場合に、前記鞍乗り型車両(10)に、自車両を制動させる動作、又は、自車両の存在を周囲の車両のドライバに認知させる動作を実行させる制御部(122)と、
を備える、
制御装置。
【請求項15】
鞍乗り型車両(10)の制御方法であって、
制御装置(12)の取得部(121)が、前記鞍乗り型車両(10)の前方を走行する前走車(20)による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、
前記制御装置(12)の制御部(122)が、前記鞍乗り型車両(10)すり抜け走行中であると判定され、且つ、前記予測情報が判定基準を満たすと判定された場合に、前記鞍乗り型車両(10)に、自車両を制動させる動作、又は、自車両の存在を周囲の車両のドライバに認知させる動作を実行させる、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ライダーによる鞍乗り型車両の運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル等の鞍乗り型車両では、四輪の自動車等と比較して、車幅が狭いので、レーンの幅方向における走行位置の自由度が高い。ゆえに、鞍乗り型車両は、レーンを区切るレーン境界上又はレーン境界の近傍を走行するすり抜け走行(いわゆるレーン・スプリッティング)を行うことができる。ここで、すり抜け走行中には、他車両との衝突を回避するために、ライダーによる鞍乗り型車両の運転を適切に支援する必要性が高くなる。そのような運転支援の技術として、例えば、特許文献1には、モータサイクルに自動減速動作を実行させる制御において用いられる前方環境検出装置の検出角度範囲を、モータサイクルのすり抜け走行中に広げて設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-099035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鞍乗り型車両の運転支援に関する技術分野では、ライダーによる鞍乗り型車両の運転をより適切に支援することが望ましいと考えられる。例えば、特許文献1に開示されている技術によれば、モータサイクルのすり抜け走行中に前方環境検出装置の検出角度範囲が広げて設定されることによって、前走車によるモータサイクルの進路へ接近する挙動の発生を広範囲で検知することができるので、運転支援のための制御を早いタイミングで実行することができる。ここで、すり抜け走行中に、ライダーによる鞍乗り型車両の運転をより適切に支援することが望ましいと考えられる。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーによる鞍乗り型車両の運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、鞍乗り型車両のライダーに対する報知を行う報知装置の動作を制御する制御装置であって、前記鞍乗り型車両の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得する取得部と、前記鞍乗り型車両のすり抜け走行中に、前記予測情報が判定基準を満たす場合に、前記ライダーに対する前記車線変更の警告を前記報知装置に行わせる制御部と、を備える。
【0007】
本発明に係る制御方法は、鞍乗り型車両のライダーに対する報知を行う報知装置の制御方法であって、制御装置の取得部が、前記鞍乗り型車両の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、前記制御装置の制御部が、前記鞍乗り型車両のすり抜け走行中に、前記予測情報が判定基準を満たす場合に、前記ライダーに対する前記車線変更の警告を前記報知装置に行わせる。
【0008】
本発明に係る制御装置は、鞍乗り型車両の動作を制御する制御装置であって、前記鞍乗り型車両の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得する取得部と、前記鞍乗り型車両のすり抜け走行中に、前記予測情報が判定基準を満たす場合に、前記鞍乗り型車両に安全動作を実行させる制御部と、を備える。
【0009】
本発明に係る制御方法は、鞍乗り型車両の制御方法であって、制御装置の取得部が、前記鞍乗り型車両の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、前記制御装置の制御部が、前記鞍乗り型車両のすり抜け走行中に、前記予測情報が判定基準を満たす場合に、前記鞍乗り型車両に安全動作を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、鞍乗り型車両の動作を制御する制御装置の取得部が、鞍乗り型車両の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、制御装置の制御部が、鞍乗り型車両のすり抜け走行中に、予測情報が判定基準を満たす場合に、鞍乗り型車両に安全動作を実行させる(例えば、ライダーに対する車線変更の警告を報知装置に行わせる)。それにより、鞍乗り型車両のすり抜け走行時に、安全動作(例えば、ライダーに対する車線変更の警告)を、前走車によるモータサイクルの進路へ接近する挙動の発生に応じて当該安全動作が実行される場合と比較して、より早いタイミングで鞍乗り型車両に実行させることができる。ゆえに、ライダーによる鞍乗り型車両の運転を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が搭載されるモータサイクルの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係るモータサイクルがすり抜け走行をしている様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが、本発明に係る制御装置は、二輪のモータサイクル以外の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、四輪のバギー車、自転車等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味し、スクーター等を含む。
【0014】
また、以下では、モータサイクルの車輪を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジン(具体的には、後述される図1中のエンジン13)が搭載されている場合を説明しているが、モータサイクルの駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、モータ)が搭載されていてもよく、複数の駆動源が搭載されていてもよい。
【0015】
また、以下では、ライダーに対する報知を行う報知装置として、音出力機能及び表示機能を備える装置(具体的には、後述される図1中の報知装置15)が用いられる場合を説明しているが、報知装置として、他の報知装置(例えば、音出力機能のみを備える装置、表示機能のみを備える装置、又は、振動発生機能を備える装置等)が用いられてもよく、複数の報知装置が用いられてもよい。また、例えば、ブレーキシステム(例えば、後述される図1中の液圧制御ユニット14を含むシステム)、駆動源(例えば、後述される図1中のエンジン13)等を用いた瞬時的な減速をライダーに対する警告として利用してもよく、この場合、そのブレーキシステム、駆動源等が報知装置に相当する。
【0016】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0017】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0018】
<モータサイクルの構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置12が搭載されるモータサイクル10の構成について説明する。
【0019】
図1は、制御装置12が搭載されるモータサイクル10の概略構成を示す模式図である。図1に示されるように、モータサイクル10は、環境センサ11と、制御装置12と、エンジン13と、液圧制御ユニット14と、報知装置15とを備える。
【0020】
エンジン13は、モータサイクル10の駆動源の一例に相当し、車輪を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン13には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン13の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
【0021】
液圧制御ユニット14は、車輪に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。例えば、液圧制御ユニット14は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する油路上に設けられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁及びポンプ)を含む。液圧制御ユニット14のコンポーネントの動作が制御されることによって、車輪に生じる制動力が制御される。なお、液圧制御ユニット14は、前輪及び後輪の双方に生じる制動力をそれぞれ制御するものであってもよく、前輪及び後輪の一方に生じる制動力のみを制御するものであってもよい。
【0022】
報知装置15は、ライダーに対する報知を行う。報知装置15は、音出力機能及び表示機能を備える。音出力機能は、音を出力する機能であり、例えば、スピーカによって実現される。表示機能は、情報を視覚的に表示する機能であり、例えば、液晶ディスプレイ又はランプ等によって実現される。
【0023】
環境センサ11は、モータサイクル10の胴体の前部に設けられており、モータサイクル10の周囲環境(具体的には、モータサイクル10の前方の環境)に関する情報を検出する。環境センサ11としては、例えば、モータサイクル10の前方を撮像するカメラ及びモータサイクル10に対する前方の対象物の相対位置を検出可能なレーダーが用いられる。カメラにより撮像される画像及びレーダーの検出結果を利用することによって、周囲環境に関する情報が検出される。
【0024】
なお、環境センサ11の構成は上記の例に限定されない。例えば、環境センサ11において、レーダーがLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)に置き換えられてもよい。また、例えば、環境センサ11が、複数のカメラを含み、それらの出力に基づいて画像認識と相対位置の検出が行われてもよい。
【0025】
制御装置12は、モータサイクル10の動作を制御する。
【0026】
例えば、制御装置12の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置12の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置12は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0027】
図2は、制御装置12の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、制御装置12は、例えば、取得部121と、制御部122とを備える。また、制御装置12は、モータサイクル10内の各装置(例えば、環境センサ11、エンジン13、液圧制御ユニット14及び報知装置15)と通信する。
【0028】
取得部121は、制御部122が行う処理において用いられる各種情報を取得し、制御部122に出力する。例えば、取得部121は、環境センサ11の出力に基づいて、各種情報を取得してもよい。また、例えば、モータサイクル10には、当該モータサイクル10の外部の装置と通信可能な通信装置が設けられており、取得部121は、当該通信装置を用いて、モータサイクル10と他車両又はインフラ設備との間での無線通信を行うことによって各種情報を取得してもよい。
【0029】
具体的には、取得部121は、モータサイクル10がすり抜け走行中であるか否かを判定する後述する判定処理で用いられる走行位置情報を取得する。走行位置情報は、モータサイクル10のレーンの幅方向における走行位置を示す情報である。また、取得部121は、モータサイクル10の前方を走行する前走車による今後の車線変更が予測されるか否かを判定する後述する判定処理(具体的には、予測情報が判定基準を満たすか否かを判定する判定処理)で用いられる予測情報を取得する。予測情報は、前走車による今後の車線変更に関する情報である。
【0030】
制御部122は、例えば、プログラムと協働して機能する、駆動制御部122aと、制動制御部122bと、報知制御部122cとを含む。
【0031】
駆動制御部122aは、エンジン13の各装置(例えば、スロットル弁、燃料噴射弁及び点火プラグ等)の動作を制御する。それにより、エンジン13からモータサイクル10の車輪に伝達される駆動力が制御され、モータサイクル10の加速度が制御される。
【0032】
制動制御部122bは、液圧制御ユニット14の各装置(例えば、制御弁及びポンプ等)の動作を制御する。それにより、モータサイクル10の車輪に生じる制動力が制御され、モータサイクル10の減速度が制御される。
【0033】
報知制御部122cは、報知装置15の動作を制御する。それにより、ライダーに対する報知が行われるタイミングや報知される内容が制御される。
【0034】
ここで、モータサイクル10の走行モードは、通常走行モードと、クルーズコントロールモードとの間で切り替え可能となっている。通常走行モードは、モータサイクル10の加減速度がライダーによる加減速操作(つまり、アクセル操作及びブレーキ操作)に応じて制御される走行モードである。一方、クルーズコントロールモードは、クルーズコントロールが実行されてモータサイクル10の加減速度がライダーによる加減速操作によらずに自動で制御される走行モードである。クルーズコントロールでは、車速を設定速度に維持する車速維持制御が少なくとも行われる。なお、クルーズコントロールは、車速維持制御に加えて車間距離維持制御(つまり、自車両と前走車との車間距離を設定距離に維持する制御)が行われるアダプティブクルーズコントロールであってもよい。
【0035】
制御部122は、例えば、モータサイクル10に設けられる押しボタンスイッチ等の入力装置を用いたライダーによる操作に応じて、走行モードを切り替える。そして、制御部122は、設定されている走行モードに応じて、モータサイクル10の加減速度を制御する。具体的には、走行モードが通常走行モードに設定されている場合、制御部122は、ライダーによる加減速操作に応じてモータサイクル10の加減速度を制御する。一方、走行モードがクルーズコントロールモードに設定されている場合、制御部122は、クルーズコントロールを実行し、ライダーによる加減速操作によらずに自動でモータサイクル10の加減速度を制御する。
【0036】
なお、クルーズコントロールでは、モータサイクル10の加減速度の大きさが、ライダーの快適性を過度に損なわない程度の上限値以下に制限される。また、制御部122は、走行モードがクルーズコントロールモードに設定されている時に、ライダーによる特定の操作(例えば、ブレーキ操作)が行われた場合、走行モードを通常走行モードに切り替えてもよい。
【0037】
上記のように、制御装置12は、モータサイクル10の動作(例えば、ライダーに対する報知を行う報知装置15の動作)を制御する。ここで、制御装置12では、取得部121は、モータサイクル10の前方を走行する前走車による今後の車線変更に関する予測情報を取得し、制御部122は、モータサイクル10のすり抜け走行中に、予測情報が判定基準を満たす場合に、モータサイクル10に安全動作を実行させる(例えば、ライダーに対する車線変更の警告を報知装置15に行わせる)。それにより、ライダーによるモータサイクル10の運転を適切に支援することを実現することができる。上記の安全動作は、他車両との衝突を回避するための動作であり、例えば、ライダーに対する車線変更の警告を含む。以下では、制御装置12が行う処理のうち、ライダーに対する車線変更の警告に関する処理について、詳細に説明する。
【0038】
<制御装置の動作>
図3及び図4を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置12の動作について説明する。
【0039】
図3は、制御装置12が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、図3に示される制御フローは、繰り返し行われる。図3におけるステップS101及びステップS107は、図3に示される制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。なお、図3に示される制御フローは、走行モードによらずに行われる。
【0040】
図4は、モータサイクル10がすり抜け走行をしている様子を示す模式図である。具体的には、図4に示される例では、隣接する2つのレーンL1,L2のレーン境界LV上をモータサイクル10が走行している。また、図4では、モータサイクル10の前走車20として、前走車20a,20b,20cが示されている。前走車20a及び前走車20cは、モータサイクル10の左側のレーンL1を走行しており、前走車20aが前走車20cより前方に位置している。前走車20bは、モータサイクル10の右側のレーンL2を走行している。
【0041】
以下、図4を適宜参照しながら、図3に示される制御フローについて説明する。
【0042】
図3に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、取得部121は、走行位置情報を取得する。走行位置情報は、上述したように、モータサイクル10のレーンの幅方向における走行位置を示す情報である。
【0043】
例えば、取得部121は、環境センサ11の出力に基づいて、レーンの幅方向におけるレーン境界(具体的には、モータサイクル10から最も近いレーン境界)とモータサイクル10との距離を走行位置情報として取得する。レーン境界は、レーンを区切る境界を意味する。なお、取得部121は、レーンの幅方向におけるレーン境界とモータサイクル10との距離に実質的に換算可能な他の物理量を走行位置情報として取得してもよい。
【0044】
具体的には、環境センサ11は、当該環境センサ11のカメラにより撮像される画像に画像認識処理を施すことによって、レーン境界を認識し、モータサイクル10に対するレーン境界の相対位置を検出する。取得部121は、このように検出される情報に基づいて走行位置情報を取得することができる。
【0045】
次に、ステップS103において、制御部122は、モータサイクル10がすり抜け走行中であるか否かを判定する。モータサイクル10がすり抜け走行中であると判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS104に進む。一方、モータサイクル10がすり抜け走行中でないと判定された場合(ステップS103/NO)、図3に示される制御フローは終了する。
【0046】
ステップS103の判定処理は、例えば、走行位置情報に基づいて行われる。例えば、制御部122は、レーンの幅方向におけるレーン境界(具体的には、モータサイクル10から最も近いレーン境界)とモータサイクル10との距離が基準距離ΔDより短い場合に、モータサイクル10がすり抜け走行中であると判定する。基準距離ΔDは、モータサイクル10が前走車20の側方を通過できる程度にモータサイクル10がレーン境界に近いと判断し得る距離に設定される。例えば、図4に示されるように、レーンの幅方向でレーン境界LVから基準距離ΔD以内の領域内にモータサイクル10が位置している場合、制御部122は、モータサイクル10がすり抜け走行中であると判定する。
【0047】
ステップS103でYESと判定された場合、ステップS104において、取得部121は、予測情報を取得する。予測情報は、上述したように、前走車20による今後の車線変更に関する情報である。
【0048】
予測情報は、種々の情報を含み得る。例えば、予測情報は、複数の前走車20間の位置関係情報、前走車20の仕様情報、前走車20のウィンカー情報、前走車20の舵角情報、前走車20の乗員の動作情報、及び、モータサイクル10の両側のレーンL1,L2のそれぞれにおける車両走行情報の少なくとも1つを含む。なお、モータサイクル10の両側のレーンL1,L2は、具体的には、モータサイクル10から最も近いレーン境界LVに対して左側のレーンL1及び当該レーン境界LVに対して右側のレーンL2を意味する。
【0049】
複数の前走車20間の位置関係情報は、複数の前走車20間の位置関係に関する情報であり、例えば、複数の前走車20間のレーンの幅方向の位置関係を示す情報であってもよく、複数の前走車20間のレーンの長手方向の位置関係を示す情報であってもよく、複数の前走車20間のレーンの幅方向及び長手方向の位置関係を示す情報であってもよい。なお、取得部121は、複数の前走車20間の位置関係に実質的に変換可能な他の情報を位置関係情報として取得してもよい。
【0050】
前走車20の仕様情報は、前走車20の仕様に関する情報であり、例えば、前走車20の車種又は車長等を示す情報である。
【0051】
前走車20のウィンカー情報は、前走車20のウィンカーに関する情報であり、例えば、前走車20のウィンカーの作動状態(具体的には、左のウィンカーの点滅の有無及び右のウィンカーの点滅の有無)を示す情報である。
【0052】
前走車20の舵角情報は、前走車20の舵角に関する情報であり、例えば、前走車20の舵角(具体的には、ステアリングホイールの操舵角又はタイヤ舵角)を示す情報である。なお、取得部121は、前走車20の舵角に実質的に換算可能な他の物理量を舵角情報として取得してもよい。
【0053】
前走車20の乗員の動作情報は、前走車20の乗員の動作に関する情報であり、例えば、前走車20の乗員がどのような動作を行っているかを示す情報である。
【0054】
モータサイクル10の両側のレーンL1,L2のそれぞれにおける車両走行情報は、レーンL1,L2のそれぞれにおける車両の走行に関する情報であり、例えば、レーンL1,L2の各レーンにおける車両の密度情報であってもよく、レーンL1,L2の各レーンにおける車両の車速情報であってもよい。密度情報は、各レーンにおける車両の密度に関する情報であり、例えば、レーンL1,L2の各レーンにおける単位距離あたりの車両数を示す情報である。なお、取得部121は、各レーンにおける車両の密度に実質的に換算可能な他の物理量を密度情報として取得してもよい。車速情報は、レーンL1,L2の各レーンにおける車両の車速に関する情報であり、例えば、各レーンにおける車速の平均値を示す情報である。なお、取得部121は、各レーンにおける車速に実質的に換算可能な他の物理量を車速情報として取得してもよい。
【0055】
上記で例示した各種情報を含む予測情報の取得方法は、種々の方法をとり得る。
【0056】
具体的には、予測情報は、モータサイクル10に搭載される環境センサ11の出力に基づいて取得されてもよい。例えば、複数の前走車20間の位置関係情報は、環境センサ11のレーダーにより検出されるモータサイクル10に対する各前走車20の相対位置に基づいて取得され得る。また、前走車20の仕様情報、ウィンカー情報、舵角情報及び乗員の動作情報は、環境センサ11のカメラにより撮像される画像に画像認識処理を施すことによって取得され得る。また、レーンL1,L2の各レーンにおける密度情報は、環境センサ11のカメラにより撮像される画像に画像認識処理を施すことによって前走車20の数を特定し、当該画像に映るレーンの長手方向の距離として想定される距離と、特定された前走車20の数とに基づいて取得され得る。また、レーンL1,L2の各レーンにおける車速情報は、環境センサ11により検出されるモータサイクル10に対する各前走車20の相対位置の推移に基づいて各前走車20の相対速度を特定することによって、取得され得る。
【0057】
また、予測情報は、モータサイクル10と他車両又はインフラ設備との間での無線通信によって取得されてもよい。例えば、複数の前走車20間の位置関係情報は、各前走車20からモータサイクル10に送信される情報に基づいて取得されてもよく、レーンL1,L2の近傍に設置され、各レーンを走行する車両の位置を検出する路側機からモータサイクル10に送信される情報に基づいて取得されてもよい。また、前走車20の仕様情報、ウィンカー情報、舵角情報及び乗員の動作情報は、当該前走車20からモータサイクル10に送信される情報に基づいて取得されてもよい。また、レーンL1,L2の各レーンにおける密度情報及び車速情報は、レーンL1,L2の近傍に設置され、これらの情報を検出する路側機からモータサイクル10に送信される情報に基づいて取得されてもよい。
【0058】
次に、ステップS105において、制御部122は、予測情報が判定基準を満たすか否かを判定する。予測情報が判定基準を満たすと判定された場合(ステップS105/YES)、ステップS106に進み、後述されるように、ライダーに対する車線変更の警告が行われる。一方、予測情報が判定基準を満たさないと判定された場合(ステップS105/NO)、図3に示される制御フローは終了する。
【0059】
予測情報が判定基準を満たす場合は、前走車20による今後の車線変更が予測される場合に相当する。つまり、ステップS105の判定処理は、前走車20による今後の車線変更が予測されるか否かを判定する判定処理に相当する。
【0060】
ステップS105の判定処理は、予測情報の種類に応じた判定基準で行われる。以下、図4を参照して、複数の前走車20間の位置関係情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合について説明する。
【0061】
図4に示される例において、ステップS105の判定基準は、例えば、レーンL1を走行する前走車20aと前走車20cとの車間距離D1(具体的には、前走車20aの後端と前走車20cの前端との間の距離)が閾値より長く、かつ、レーンL2を走行する前走車20bがレーンの長手方向において前走車20aと前走車20cとの間に位置するとの条件を含む。閾値は、前走車20bが前走車20aと前走車20cとの間に向けて車線変更し得る程度に前走車20aと前走車20cとが十分に離れていると判断し得る値に設定される。ゆえに、制御部122は、車間距離D1が閾値より長く、かつ、前走車20bがレーンの長手方向において前走車20aと前走車20cとの間に位置する場合に、予測情報としての位置関係情報が判定基準を満たすと判定する。
【0062】
複数の前走車20間の位置関係情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合において、前走車20の仕様情報が予測情報としてさらに用いられてもよい。例えば、図4に示される例において、制御部122は、車間距離D1との比較対象である閾値を、前走車20bの車長が長いほど、大きくしてもよい。また、例えば、制御部122は、車間距離D1との比較対象である閾値を、前走車20bの車種が大型な車種である場合に、前走車20bの車種が小型な車種である場合と比べて大きくしてもよい。ここで、前走車20bが前走車20aと前走車20cとの間に向けて車線変更するために必要な車間距離D1は、前走車20bの車長が長いほど長くなり、前走車20bが大型であるほど長くなる。ゆえに、前走車20bの仕様情報に応じて閾値を上記のように調整することによって、ステップS105の判定処理を適正化することができる。なお、制御部122は、仕様情報以外の情報(例えば、前走車20bの車速)に基づいて閾値を変化させてもよい。例えば、制御部122は、前走車20bの車速が大きいほど閾値を大きくしてもよい。
【0063】
上述したように、ステップS105の判定処理で用いられる予測情報は、種々の情報を含み得る。上記では、複数の前走車20間の位置関係情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合について説明したが、ステップS105の判定処理は、他の予測情報を用いて行われてもよい。
【0064】
前走車20のウィンカー情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合、ステップS105の判定基準は、例えば、レーン境界LVを跨ぐ車線変更と対応する作動状態でウィンカーが作動している前走車20が存在するとの条件を含む。特に、当該条件は、車線変更を実際には開始していないものの、レーン境界LVを跨ぐ車線変更と対応する作動状態でウィンカーが作動している前走車20が存在するとの条件を含む。例えば、図4に示される例において、制御部122は、モータサイクル10の右側に位置する前走車20bのウィンカーのうち左のウィンカーのみが点滅している場合、予測情報としてのウィンカー情報が判定基準を満たすと判定する。
【0065】
前走車20の舵角情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合、ステップS105の判定基準は、例えば、レーン境界LVを跨ぐ車線変更が予測される程度の向き及び大きさの舵角を有する前走車20が存在するとの条件を含む。特に、当該条件は、車線変更を実際には開始していないものの、レーン境界LVを跨ぐ車線変更が予測される程度の向き及び大きさの舵角を有する前走車20が存在するとの条件を含む。例えば、図4に示される例において、制御部122は、モータサイクル10の右側に位置する前走車20bの舵角が当該前走車20bを左旋回させる方向に傾いており、当該舵角の大きさがレーン境界LVを跨ぐ車線変更が予測される程度に大きい場合、予測情報としての舵角情報が判定基準を満たすと判定する。
【0066】
前走車20の乗員の動作情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合、ステップS105の判定基準は、例えば、レーン境界LVを跨ぐ車線変更を示唆する動作を行っている乗員が搭乗している前走車20が存在するとの条件を含む。特に、当該条件は、車線変更を実際には開始していないものの、レーン境界LVを跨ぐ車線変更を示唆する動作を行っている乗員が搭乗している前走車20が存在するとの条件を含む。例えば、図4に示される例において、制御部122は、モータサイクル10の右側に位置する前走車20bの乗員が左側の窓を開けて車線変更を示す合図を手で行っている場合、予測情報としての乗員の動作情報が判定基準を満たすと判定する。
【0067】
レーンL1,L2の各レーンにおける車両の密度情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合、ステップS105の判定基準は、例えば、レーンL1における車両の密度とレーンL2における車両の密度との差が基準密度差より大きいとの条件を含む。基準密度差は、例えば、密度が高い方のレーンから密度の低い方のレーンへの車線変更が予測されると判断し得る程度の大きさの値に設定される。
【0068】
レーンL1,L2の各レーンにおける車両の速度情報を予測情報として用いてステップS105の判定処理が行われる場合、ステップS105の判定基準は、例えば、レーンL1における車両の速度とレーンL2における車両の速度との差が基準速度差より大きいとの条件を含む。基準速度差は、例えば、速度が低い方のレーンから速度の高い方のレーンへの車線変更が予測されると判断し得る程度の大きさの値に設定される。
【0069】
ここで、制御部122は、モータサイクル10の走行モードに応じて、判定基準を変化させることが好ましい。具体的には、制御部122は、走行モードがクルーズコントロールモードである場合、走行モードが通常走行モードである場合と比較して、ステップS105でYESと判定されやすくなるように(つまり、ライダーに対する車線変更の警告が行われやすくなるように)判定基準を変化させることが好ましい。例えば、図4に示される例において、制御部122は、走行モードがクルーズコントロールモードである場合、走行モードが通常走行モードである場合と比較して、ステップS105の判定処理において車間距離D1との比較対象である閾値を小さくしてもよい。クルーズコントロールモード中には、通常走行モード中と比較して、ライダーによる前方への注意力が低下しやすくなるので、ライダーに対する車線変更の警告を行われやすくすることによって、ライダーによるモータサイクル10の運転をより適切に支援することができる。
【0070】
ステップS105でYESと判定された場合、ステップS106において、制御部122は、ライダーに対する車線変更の警告を報知装置15に行わせ、図3に示される制御フローは終了する。
【0071】
例えば、制御部122は、車線変更の警告をライダーに認知させる音を報知装置15に出力させる。ここで、車線変更の警告で報知装置15により発せられる音の音量は、ライダーを過度に驚かせない程度の大きさであることが好ましい。また、例えば、制御部122は、車線変更の警告をライダーに認知させる表示を報知装置15に行わせてもよい。
【0072】
ここで、制御部122は、予測情報に基づいてライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させることが好ましい。それにより、前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いに応じて車線変更の警告の態様を変化させることができる。
【0073】
制御部122は、例えば、予測情報の種類に応じて、ライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させてもよい。例えば、ステップS105で前走車20のウィンカー情報が用いられた場合、ステップS105で複数の前走車20間の位置関係情報が用いられた場合と比較して、前走車20による今後の車線変更の可能性が高いと想定される。そこで、制御部122は、ステップS105で前走車20のウィンカー情報が用いられた場合、ステップS105で複数の前走車20間の位置関係情報が用いられた場合と比較して、例えば、音出力による警告における音量を大きくしてもよく、音出力による警告における音が発せられている時間を長くしてもよく、表示による警告における照度や表示色を変化させてもよい。
【0074】
また、制御部122は、例えば、予測情報における車線変更の可能性の度合いに応じて、ライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させてもよい。具体的には、制御部122は、ステップS105でYESと判定された場合に、予測情報に基づいて車線変更の可能性の度合いを予測し、当該車線変更の可能性の度合いに応じて、ライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させてもよい。例えば、ステップS105で複数の前走車20間の位置関係情報が用いられた場合、制御部122は、車間距離D1が大きいほど車線変更の可能性の度合いとして高い度合いを予測し、予測された車線変更の可能性の度合いが高いほど、音出力による警告における音量を大きくしてもよく、音出力による警告における音が発せられている時間を長くしてもよい。また、制御部122は、予測された車線変更の可能性の度合いに応じて、表示による警告における照度や表示色を変化させてもよい。
【0075】
上記では、モータサイクル10がすり抜け走行中であるか否かの判定が走行位置情報に基づいて行われる例を説明したが、制御部122は、上記の判定を他の方法によって行ってもよい。例えば、制御部122は、モータサイクル10に設けられるボタン又はスイッチ等の入力装置を用いたライダーによる操作に応じて、モータサイクル10がすり抜け走行中であるか否かを判定してもよい。また、環境センサ11によってレーン境界LVが認識されない場合において、制御部122は、モータサイクル10と周囲の車両との間の位置関係に基づいて、モータサイクル10がすり抜け走行中であるか否かを判定してもよい。例えば、同一方向に並走する2つの車両の間をモータサイクル10が走行している場合に、制御部122は、モータサイクル10がすり抜け走行中であると判定してもよい。なお、モータサイクル10と周囲の車両との間の位置関係は、環境センサ11の出力に基づいて取得され得る。
【0076】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置12の効果について説明する。
【0077】
制御装置12では、取得部121は、モータサイクル10の前方を走行する前走車20による今後の車線変更に関する予測情報を取得する。また、制御部122は、モータサイクル10のすり抜け走行中に、予測情報が判定基準を満たす場合に、ライダーに対する車線変更の警告を報知装置15に行わせる。それにより、ライダーに対する車線変更の警告を、前走車20によるモータサイクル10の進路へ接近する挙動の発生に応じて当該警告が行われる場合と比較して、より早いタイミングで報知装置15に行わせることができる。ゆえに、ライダーによるモータサイクル10の運転を適切に支援することができる。
【0078】
好ましくは、制御装置12では、制御部122は、予測情報の種類に応じて、ライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させる。ここで、判定基準を満たした予測情報の種類に応じて前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いは異なり得る。ゆえに、予測情報の種類に応じて警告の態様を変化させることによって、前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いに応じて車線変更の警告の態様を変化させることができる。よって、前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いをライダーに認知させることができる。
【0079】
好ましくは、制御装置12では、制御部122は、予測情報における車線変更の可能性の度合いに応じて、ライダーに対する車線変更の警告の態様を変化させる。それにより、予測情報の種類が同一である場合であっても、前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いに応じて車線変更の警告の態様を変化させることができる。よって、前走車20による今後の車線変更の可能性の度合いをライダーに認知させることができる。
【0080】
好ましくは、制御装置12では、制御部122は、モータサイクル10の走行モードに応じて、判定基準を変化させる。上述したように、設定されている走行モードに応じてライダーによる前方への注意力は変化し得る。ゆえに、走行モードに応じて判定基準を変化させることによって、車線変更の警告の行われやすさを、ライダーによる前方への注意力の変化に応じて適切に変化させることができる。よって、ライダーによるモータサイクル10の運転をより適切に支援することができる。
【0081】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、複数の前走車20間の位置関係情報を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、複数の前走車20間の位置関係情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0082】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、前走車20の仕様情報を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、前走車20の仕様情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0083】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、前走車20のウィンカー情報を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、前走車20のウィンカー情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0084】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、前走車20の舵角情報を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、前走車20の舵角情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0085】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、前走車20の乗員の動作情報を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、前走車20の乗員の動作情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0086】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、モータサイクル10の両側のレーンL1,L2のそれぞれにおける車両走行情報(例えば、各レーンにおける車両の密度情報又は車速情報)を含む。それにより、前走車20による今後の車線変更を、レーンL1,L2の各レーンにおける車両走行情報に応じて精度良く予測することができる。ゆえに、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0087】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、モータサイクル10に搭載される環境センサ11の出力に基づいて取得される。それにより、予測情報が他車両又はインフラ設備との間での無線通信によって取得される場合と比較して、予測情報の取得処理における通信遅延を短縮することができる。ゆえに、ライダーに対する車線変更の警告をさらに早いタイミングで報知装置15に行わせることができる。ゆえに、ライダーによるモータサイクル10の運転を適切に支援することができる。
【0088】
好ましくは、制御装置12では、予測情報は、モータサイクル10と他車両又はインフラ設備との間での無線通信によって取得される。ここで、環境センサ11により検出可能な範囲は、モータサイクル10の周囲環境のうちの一部の範囲に限られ得る。例えば、モータサイクル10と検出対象の前走車20との間に障害物(例えば、他の前走車20)が位置している場合、検出対象の前走車20に関する情報を適切に検出することが困難となる場合がある。ゆえに、モータサイクル10と他車両又はインフラ設備との間での無線通信によって予測情報を取得することによって、予測情報が環境センサ11の出力に基づいて取得される場合と比較して、より多くの情報を予測情報として取得することができる。ゆえに、前走車20による今後の車線変更を精度良く予測することができる。よって、前走車20により車線変更が今後行われる場合に、ライダーに対する車線変更の警告を適切に報知装置15に行わせることができる。
【0089】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。また、予測情報が判定基準を満たす場合にモータサイクル10に実行させる安全動作は、上記で主に説明したライダーに対する車線変更の警告に限定されず、例えば、クルーズコントロールモードの実行中に当該クルーズコントロールモードの設定速度を低下させることによりモータサイクル10を制動させる動作、モータサイクル10に比較的小さな制動力を自動で生じさせるプリブレーキ動作等を含み得る。また、上記で主に説明したライダーに対する車線変更の警告に加えて又は置き換えて、自車両の存在を周囲の車両のドライバに認知させる動作(例えば、モータサイクル10のヘッドライトを用いてパッシングを行う動作)が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 モータサイクル、11 環境センサ、12 制御装置、13 エンジン、14 液圧制御ユニット、15 報知装置、20,20a,20b,20c 前走車、121 取得部、122 制御部、122a 駆動制御部、122b 制動制御部、122c 報知制御部、D1 車間距離、L1 レーン、L2 レーン、LV レーン境界。
図1
図2
図3
図4