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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】海藻のための培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230925BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230925BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/00 D
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【請求項の数】 51
(21)【出願番号】P 2021577676
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 US2020039948
(87)【国際公開番号】W WO2020264391
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】62/867,707
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン イー.クロフ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087153(WO,A1)
【文献】特開2003-158928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造を有する培養基材を含む培養システムであって、前記微細構造は、フィブリル間空間であって、前記フィブリル間空間は前記微細構造内に三次元すべてで存在し、前記フィブリル間空間は200μm以下の平均フィブリル間距離を有する、フィブリル間空間、および前記平均フィブリル間距離は前記胞子の直径の1~1.5倍であり、前記培養基材は延伸ポリマー、延伸フルオロポリマーまたは延伸熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする、培養システム。
【請求項2】
微細構造を有する培養基材を含む培養システムであって、前記培養システムの少なくとも一部は胞子を保持し、生存可能に維持するように構成され、前記微細構造は、前記培養基材の微細構造内に少なくとも部分的に胞子を保持するように構成されており、前記微細構造は、フィブリル間空間であって、前記フィブリル間空間は前記微細構造内に三次元すべてで存在する、フィブリル間空間、および200μm以下の平均細孔サイズであり、前記平均細孔サイズは前記胞子の直径の1~7/6倍であること、および前記培養基材は延伸ポリマー、延伸フルオロポリマーまたは延伸熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする、培養システム。
【請求項3】
前記微細構造は1~200μmの平均フィブリル間距離を特徴とする、請求項1記載の培養システム。
【請求項4】
前記微細構造は1~200μmの平均細孔サイズを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の培養システム。
【請求項5】
前記培養基材の少なくとも一部に連携する栄養素相をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項6】
前記栄養素相の少なくとも一部は、前記培養基材内に位置するか、前記培養基材上に位置するか、又は、前記培養基材内及び前記培養基材上に位置する、請求項5記載の培養システム。
【請求項7】
前記栄養素相は、前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する、請求項5記載の培養システム。
【請求項8】
前記栄養素相は、前記栄養素相が適用される又は含まれる前記培養基材の所定の位置に前記胞子を選択的に誘引する化学誘引物質として作用する、請求項5~7のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項9】
前記栄養素相は、i)前記微細構造内の胞子の発芽及び成長を促進し、及び/又はii)前記胞子による微細構造への付着及び微細構造内での統合を維持及び/又は促進するように構成されている、請求項5~8のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項10】
前記培養基材の少なくとも一部に連携する液体含有相をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項11】
前記液体含有相の少なくとも一部は前記微細構造内に同伴されるか、前記微細構造上に同伴されるか、又は、前記微細構造内及び前記微細構造上に同伴される、請求項10記載の培養システム。
【請求項12】
前記液体含有相は前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する、請求項10又は請求項11記載の培養システム。
【請求項13】
前記液体含有相は、ヒドロゲル、スラリー、ペースト又はそれらの組み合わせを含む、請求項10~12のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項14】
複数の胞子、発芽胞子又は胞子及び発芽胞子の両方をさらに含み、それは前記培養基材の微細構造によって保持されている、請求項1~13のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項15】
前記培養基材は、平均フィブリル間距離を規定する複数のフィブリルを含む微細構造を有するフィブリル化材料を含む、請求項1~14のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項16】
前記培養基材の微細構造は200μm以下の平均胞子サイズを有する胞子を保持するように構成されている、請求項1~15のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項17】
前記胞子は藻類胞子を含む、請求項1~16のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項18】
前記胞子は真菌胞子を含む、請求項1~16のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項19】
前記胞子は植物胞子を含む、請求項1~16のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項20】
前記培養基材は、0.1~1.0g/cmの平均密度を有する材料を含む、請求項1~19のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項21】
前記培養基材は、前記材料を含む成長培地を含み、そしてフィブリル化材料の、平均フィブリル間距離(μm)の平均密度(g/cm)に対する比は1~2000である、請求項20記載の培養システム。
【請求項22】
前記培養基材は、繊維、膜、織物物品、不織物品、編組物品、編物物品、布帛、粒子分散体又は上述の2つ以上の組み合わせとして構成されている、請求項1~21のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項23】
前記培養基材は、バッカー層、キャリア層、複数の層のラミネート、複合材料又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~22のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項24】
前記培養基材の少なくとも一部は親水性である、請求項1~23のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項25】
前記培養基材の少なくとも一部は疎水性である、請求項1~24のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項26】
前記培養基材の1つ以上の部分は疎水性であり、前記培養システムの1つ以上の部分は親水性であり、それにより、前記培養システムが前記培養基材の1つ以上の親水性部分に前記胞子の保持を選択的に促進するように構成されている、請求項1~25のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項27】
前記延伸フルオロポリマーは、延伸フッ素化エチレンプロピレン(eFEP)、多孔質ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、延伸エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、延伸フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレンポリマー(eVDF-コ-(TFE又はTrFE))及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のうちの1つである、請求項1~26のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項28】
前記延伸熱可塑性ポリマーは、延伸ポリエステルスルホン(ePES)、延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、延伸ポリ乳酸(ePLA)及び延伸ポリエチレン(ePE)のうちの1つである、請求項記載の培養システム。
【請求項29】
前記延伸ポリマーは延伸ポリウレタン(ePU)である、請求項記載の培養システム。
【請求項30】
前記培養基材はエキスパンデッド化学蒸着(CVD)によって形成されたポリマーを含む、請求項1~26のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項31】
前記培養基材は延伸ポリパラキシリレン(ePPX)である、請求項30記載の培養システム。
【請求項32】
前記培養基材に連携する生物活性剤をさらに含む、請求項1~31のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項33】
前記培養基材の表面に適用された、前記培養基材の微細構造内に吸収された、又は、前記培養基材の表面に適用されかつ前記培養基材の微細構造内に吸収された接着剤をさらに含む、請求項1~32のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項34】
前記培養基材に連携する塩をさらに含む、請求項1~33のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項35】
前記塩は塩化ナトリウム(NaCl)である、請求項34記載の培養システム。
【請求項36】
前記培養基材は高密度部分及び低密度部分のパターンを含み、前記低密度部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を少なくとも部分的に保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、請求項1~35のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項37】
前記低密度部分は1g/cm以下の密度を特徴とし、前記高密度部分は1.7g/cm以上の密度を特徴とする、請求項36記載の培養システム。
【請求項38】
前記培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記低多孔性部分は前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、請求項1~37のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項39】
前記培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記高多孔性部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、請求項1~37のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項40】
前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記小フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、請求項1~39のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項41】
前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記大フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、請求項1~39のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項42】
前記パターンは、組織化された又は選択的なパターンである、請求項40又は請求項41記載の培養システム。
【請求項43】
前記パターンはランダムパターンである、請求項40又は請求項41記載の培養システム。
【請求項44】
前記微細構造は、最初は胞子を保持するための第一の保持段階にあり、続いて、前記微細構造上及び/又は微細構造内に前記胞子から胞子発芽体の内部成長を誘導し、前記胞子発芽体を前記微細構造に機械的に結合する第二の成長段階にある、請求項1~43のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項45】
養素は、滅菌海水を介してデリバリーされるように構成されている、請求項1~44のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項46】
前記微細構造は、各胞子の一部を取り外し不可能に固定するように構成されている、請求項1~45のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項47】
前記微細構造は、発芽胞子を取り外し不可能に固定するように構成されている、請求項1~46のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項48】
前記培養基材は、バッカー層又はキャリア基材上へ堆積するように配合された分散体中の複数の粒子によって提供される、請求項1~47のいずれか1項記載の培養システム。
【請求項49】
海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団の少なくとも一部が培養システムによって保持されるまで、海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団を請求項1~48のいずれか1項記載の培養システムと接触させることを含む、海藻を培養する方法。
【請求項50】
海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団の一部を含む培養システムを開放水環境に配置することをさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記海藻胞子、配偶体又は胞子体の保持された集団は三次元すべてで前記培養システム内に成長する、請求項49記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月27日に出願された仮出願第62/867,707号の利益を主張し、この全体を、あらゆる目的のために参照により本明細書に取り込む。
【0002】
分野
本開示は、一般に、培養システム、より具体的には、海藻胞子を含む胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された培養システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
胞子から海藻を栽培する現在の方法は、実験室ベースの播種方法の間に胞子が弱く付着し、次に、外部栄養システムを通して栄養を与えられる、テクスチャー加工されたナイロン「培養ストリング」又は「シードストリング」を使用することを含む。次に、弱く付着した幼生海藻(配偶体及び胞子体)を含む培養ストリングを海藻養殖場でロープに巻き付け、次いでロープを水中に置く。この方法は、主に海藻が海流、温度の変化、栄養素の利用可能性などによって損傷を受けやすいため、収量及びスループットの点で本質的に変動する。さらに、包装及び取り扱いが不十分であると、幼生海藻の損傷及び損失をもたらす可能性がある。培養ストリング上の幼生海藻の安定性を改善するための現在のアプローチは、既存の繊維の表面テクスチャーに焦点が合わせられている。実際、培養ストリングの繊維テクスチャーは、海藻培養の成功にとって非常に重要である。しかしながら、表面テクスチャーへの改善には限界がある。
【発明の概要】
【0004】
要旨
様々な実施形態は、胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された培養システムを対象とする。
【0005】
1つの例(「例1」)によれば、胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造を有する培養基材であって、前記微細構造は、200μm以下の平均フィブリル間距離を特徴とする培養基材である。
【0006】
別の例(「例2」)によれば、前記培養基材は微細構造を有し、培養システムの少なくとも一部は胞子を保持し、生存可能に維持するように構成され、前記微細構造は、前記培養基材の微細構造内に少なくとも部分的に胞子を保持するように構成されており、前記微細構造は、200μm以下の平均細孔サイズを特徴とする、培養システム。
【0007】
例1に加えて別の例(「例3」)によれば、前記微細構造は1~200μmの平均フィブリル間距離を特徴とする。
【0008】
先行する例1又は2のいずれか1つに加えて別の例(「例4」)によれば、前記微細構造は1~200μmの平均細孔サイズを特徴とする。
【0009】
先行する例1~4のいずれか1つに加えて別の例(「例5」)によれば、前記培養システムは前記培養基材の少なくとも一部に連携する栄養素相を含む。
【0010】
例5に加えて別の例(「例6」)によれば、前記栄養素相の少なくとも一部は、前記培養基材内に位置するか、前記培養基材上に位置するか、又は、前記培養基材内及び前記培養基材上の両方に位置する。
【0011】
例5に加えて別の例(「例7」)によれば、前記栄養素相は、前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する。
【0012】
先行する例5~7のいずれか1つに加えて別の例(「例8」)によれば、前記栄養素相は、前記栄養素相が適用される又は含まれる前記培養基材の所定の位置に前記胞子を選択的に誘引する化学誘引物質として作用する。
【0013】
先行する例5~8のいずれか1つに加えて別の例(「例9」)によれば、前記栄養素相は、i)前記微細構造内の胞子の発芽及び成長を促進し、及び/又はii)前記胞子による微細構造への付着及び微細構造内での統合を維持及び/又は促進するように構成されている。
【0014】
先行する例1~9のいずれか1つに加えて別の例(「例10」)によれば、前記培養システムは、前記培養基材の少なくとも一部に連携する液体含有相を含む。
【0015】
先行する例10に加えて別の例(「例11」)によれば、前記液体含有相の少なくとも一部は前記微細構造内に同伴されるか、前記微細構造上に同伴されるか、又は、前記微細構造内及び前記微細構造上の両方に同伴される。
【0016】
先行する例10又は11のいずれか1つに加えて別の例(「例12」)によれば、前記液体含有相は前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する。
【0017】
先行する例10~12のいずれか1つに加えて別の例(「例13」)によれば、前記液体含有相は、ヒドロゲル、スラリー、ペースト又はそれらの組み合わせを含む。
【0018】
先行する例1~13のいずれか1つに加えて別の例(「例14」)によれば、前記培養システムは、複数の胞子、発芽胞子又は胞子及び発芽胞子の両方を含み、それは前記培養基材の微細構造によって保持されている。
【0019】
先行する例1~14のいずれか1つに加えて別の例(「例15」)によれば、前記培養基材は、平均フィブリル間距離を規定する複数のフィブリルを含む微細構造を有するフィブリル化材料を含む。
【0020】
先行する例1~15のいずれか1つに加えて別の例(「例16」)によれば、前記培養基材の微細構造は200μm以下の平均胞子サイズを有する胞子を保持するように構成されている。
【0021】
先行する例1~16のいずれか1つに加えて別の例(「例17」)によれば、前記胞子は藻類胞子を含む。
【0022】
先行する例1~16のいずれか1つに加えて別の例(「例18」)によれば、前記胞子は真菌胞子を含む。
【0023】
先行する例1~16のいずれか1つに加えて別の例(「例19」)によれば、前記胞子は植物胞子を含む。
【0024】
先行する例1~16のいずれか1つに加えて別の例(「例20」)によれば、前記胞子は細菌胞子を含む。
【0025】
先行する例1~20のいずれか1つに加えて別の例(「例21」)によれば、前記培養基材は、0.1~1.0g/cmの平均密度を有する材料を含む。
【0026】
例21に加えて別の例(「例22」)によれば、前記培養基材は、前記材料を含む成長培地を含み、そしてフィブリル化材料の平均密度(g/cm)に対する平均フィブリル間距離(μm)の比が1~2000である。
【0027】
先行する例1~22のいずれか1つに加えて別の例(「例23」)によれば、前記培養基材は、繊維、膜、織物物品、不織物品、編組物品、編物物品、布帛、粒子分散体又は上述の2つ以上の組み合わせとして構成されている。
【0028】
先行する例1~23のいずれか1つに加えて別の例(「例24」)によれば、前記培養基材は、バッカー層、キャリア層、複数の層のラミネート、複合材料又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
先行する例1~24のいずれか1つに加えて別の例(「例25」)によれば、前記培養基材の少なくとも一部は親水性である。
【0030】
先行する例1~25のいずれか1つに加えて別の例(「例26」)によれば、前記培養基材の少なくとも一部は疎水性である。
【0031】
先行する例1~26のいずれか1つに加えて別の例(「例27」)によれば、前記培養基材の1つ以上の部分は疎水性であり、前記培養システムの1つ以上の部分は親水性であり、それにより、前記培養システムが前記培養基材の1つ以上の親水性部分に前記胞子の保持を選択的に促進するように構成されている。
【0032】
先行する例1~27のいずれか1つに加えて別の例(「例28」)によれば、前記培養システムは、前記培養基材に連携する生物活性剤を含む。
【0033】
先行の例1~28のいずれか1つに加えて別の例(「例29」)によれば、前記培養システムは、前記培養基材の表面に適用された、前記培養基材の微細構造内に吸収された、又は、前記培養基材の表面に適用されかつ前記培養基材の微細構造内に吸収された接着剤を含む。
【0034】
先行の例1~29のいずれか1つに加えて別の例(「例30」)によれば、前記培養システムは、前記培養基材の微細構造に連携する塩を含む。
【0035】
先行の例30に加えて別の例(「例31」)によれば、前記塩は塩化ナトリウム(NaCl)である。
【0036】
先行する例1~31のいずれか1つに加えて別の例(「例32」)によれば、前記培養基材は高密度部分及び低密度部分のパターンを含み、前記低密度部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を少なくとも部分的に保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する。
【0037】
先行する例32に加えて別の例(「例33」)によれば、前記低密度領域は1g/cm以下の密度を特徴とし、前記高密度部分は1.7g/cm以上の密度を特徴とする。
【0038】
先行する例1~33のいずれか1つに加えて別の例(「例34」)によれば、前記微細構造は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記低多孔性部分は前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された微細構造の部分に対応する。
【0039】
先行する例1~33のいずれか1つに加えて別の例(「例35」)によれば、前記培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記高多孔性部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する。
【0040】
先行する例1~35のいずれか1つに加えて別の例(「例36」)によれば、前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記小フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する。
【0041】
先行する例1~35のいずれか1つに加えて別の例(「例37」)によれば、前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記大フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する。
【0042】
先行する例32~37のいずれか1つに加えて別の例(「例38」)によれば、前記パターンは、組織化された又は選択的なパターンである。
【0043】
先行する例32~37のいずれか1つに加えて別の例(「例39」)によれば、前記パターンはランダムパターンである。
【0044】
先行する例1~39のいずれか1つに加えて別の例(「例40」)によれば、前記微細構造は、最初は胞子を保持するための第一の保持段階にあり、続いて、前記微細構造上及び/又は微細構造内に前記胞子から胞子発芽体の内部成長を誘導し、前記胞子発芽体を前記微細構造に機械的に結合する第二の成長段階にある。
【0045】
先行する例1~40のいずれか1つに加えて別の例(「例41」)によれば、栄養素は、滅菌海水を介してデリバリーされるように構成されている。
【0046】
先行する例1~41のいずれか1つに加えて別の例(「例42」)によれば、前記微細構造は、各胞子の一部を取り外し不可能に固定するように構成されている。
【0047】
先行する例1~42のいずれか1つに加えて別の例(「例43」)によれば、前記微細構造は、発芽胞子を取り外し不可能に固定するように構成されている。
【0048】
先行する例1~43のいずれか1つに加えて別の例(「例44」)によれば、前記培養基材は、バッカー層又はキャリア基材上へ堆積するように配合された分散体中の複数の粒子によって提供される。
【0049】
先行する例1~44のいずれか1つに加えて別の例(「例45」)によれば、前記培養基材は延伸(expanded:エキスパンデッド、延伸、膨張、または発泡)フルオロポリマーを含む。
【0050】
先行する例5~45のいずれか1つに加えて別の例(「例46」)によれば、前記培養基材は、前記栄養素相が延伸フルオロポリマーと共ブレンドされた延伸フルオロポリマーを含む。
【0051】
例45又は46に加えて別の例(「例47」)によれば、前記延伸フルオロポリマーは、延伸フッ素化エチレンプロピレン(eFEP)、多孔質ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、延伸エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、延伸フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレンポリマー(eVDF-コ-(TFE又はTrFE))及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のうちの1つである。
【0052】
先行する例1~44のいずれか1つに加えて別の例(「例48」)によれば、前記培養基材は延伸(expanded:エキスパンデッド、延伸、膨張、または発泡)熱可塑性ポリマーを含む。
【0053】
先行の例48に加えて別の例(「例49」)によれば、延伸熱可塑性ポリマーは、延伸ポリエステルスルホン(ePES)、延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、延伸ポリ乳酸(ePLA)及び延伸ポリエチレン(ePE)のうちの1つである。
【0054】
先行する例1~44のいずれか1つに加えて別の例(「例50」)によれば、前記培養基材は延伸ポリマーを含む。
【0055】
先行する例5~44及び53のいずれか1つに加えて別の例(「例51」)によれば、前記培養基材は、前記栄養素相が延伸ポリマーと共ブレンドされた延伸ポリマーを含む。
【0056】
先行する例50又は51のいずれか1つに加えて別の例(「例52」)によれば、前記延伸ポリマーは延伸ポリウレタン(ePU)である。
【0057】
先行する例1~44のいずれか1つに加えて別の例(「例53」)によれば、前記培養基材はエキスパンデッド(expanded:エキスパンデッド、延伸、膨張、または発泡)化学蒸着(CVD)によって形成されたポリマーを含む。
【0058】
例53に加えて別の例(「例54」)によれば、前記エキスパンデッドCVDによって形成されたポリマーは延伸ポリパラキシリレン(ePPX)である。
【0059】
上述の例はまさに実施例であり、本開示によって他の方法で提供される本発明の概念のいずれかの範囲を制限又は他の方法で狭めるように読まれるべきではない。複数の実施例が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な実施例を示し、説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に限定的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0061】
図1図1は、幾つかの実施形態による培養基材の微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。
【0062】
図2図2は、図1に示された微細構造を示すSEM顕微鏡写真であるが、より高い倍率である。
【0063】
図3図3は、幾つかの実施形態による培養基材の微細構造を示すSEM顕微鏡写真である。
【0064】
図4図4は、図3に示された微細構造を示すSEM顕微鏡写真であるが、より高い倍率である。
【0065】
図5図5は、幾つかの実施形態による培養基材の微細構造を示す概略図である。
【0066】
図6図6は、幾つかの実施形態による、フィブリル間空間内で上に重ねられた直径10μm又は30μmのいずれかの胞子の漫画表現を伴う図2の顕微鏡写真である。
【0067】
図7A図7Aは、幾つかの実施形態による、ダルス海藻の培養基材の微細構造への内部成長を示す断面SEM顕微鏡写真である。
【0068】
図7B図7Bは、図7Aに示された内部成長を示す断面SEM顕微鏡写真であるが、より高い倍率である。
【0069】
図7C図7Cは、幾つかの実施形態による、ダルス海藻の培養基材の微細構造への内部成長を示す断面光学蛍光顕微鏡写真である。
【0070】
図8図8は、幾つかの実施形態による、カラフトコンブ胞子を播種する前の培養基材の微細構造を示す表面SEM顕微鏡写真(上パネル)、及びカラフトコンブ胞子及びその発芽物を播種した後の培養基材を示す光学蛍光顕微鏡写真(下パネル)を示す。
【0071】
図9図9は、幾つかの実施形態による、微細構造への幼生ダルスの内部成長を示す、異なる倍率で撮影された2つの表面SEM顕微鏡写真を示す。
【0072】
図10図10は、幾つかの実施形態による、ダルス海藻の培養基材の微細構造への内部成長を示す表面光学蛍光顕微鏡写真である。
【0073】
図11図11は、幾つかの実施形態による、高密度材料の表面繊維への発育中の海藻の表面付着を示すSEM顕微鏡写真である。
【0074】
図12図12は、幾つかの実施形態による、織物培養基材を示すSEM顕微鏡写真である。
【0075】
図13図13は、市販の多孔質ポリエチレンを示すSEM顕微鏡写真である。
【0076】
図14図14は、幾つかの実施形態による、ゲル処理されたポリエチレン膜(膜1)及び市販の多孔質ポリエチレン(膜2)上でのダルスの成長を示す写真のコレクションである。
【0077】
図15図15は、幾つかの実施形態による、ゲル処理ポリエチレン膜(膜1)及び市販の多孔質ポリエチレン(膜2)上での昆布の成長を示す写真のコレクションである。
【0078】
図16図16は、幾つかの実施形態による、パターン化された膜上でのダルスの成長を示す写真である。
【0079】
図17図17は、幾つかの実施形態による、パターン化された膜上での昆布の成長を示す写真である。
【0080】
図18図18は、幾つかの実施形態による、膜へのカラフトコンブの幼若胞子体の付着を示す写真である。
【0081】
当業者は、本明細書で参照される添付の図面が必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を例示するために誇張又は概略的に表されることができ、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことを容易に理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
定義及び用語
本開示は、限定的な方法で読まれることが意図されない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の用語がそのような用語に帰する意味の関係で広く読まれるべきである。
【0083】
不正確さの用語に関して、「約」及び「ほぼ」という用語は、交換可能に、記載された測定値を含み、また、記載された測定値に合理的に近い測定値を含む測定値を指すために使用されうる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され、容易に確認されるように、記載された測定値から合理的に少量だけ逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的エラー、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた小さな調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調整及び/又は操作などに起因する可能性がある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合には、「約」及び「ほぼ」という用語は、記載された値の±10%を意味すると理解することができる。
【0084】
本明細書では、便宜上、特定の用語を使用している。例えば、「上(top)」、「下(bottom)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、「上向き(upward)」、「下向き(downward)」などの用語は、図に示されている構成、又は取り付け位置での部品の向きを単に記載する。実際、参照される構成要素は、様々な方向のいずれの方向に向けることもできる。同様に、プロセス又は方法が示され又は記載される本開示全体を通して、方法が最初に実行される特定の動作に依存することが文脈から明らかでない限り、方法は任意の順序で又は同時に実行されうる。
【0085】
座標系は、図に示され、記載において参照され、「Y」軸は垂直方向に対応し、「X」軸は水平又は横方向に対応し、「Z」軸は内部/外部方向に対応する。
【0086】
様々な実施形態の説明
本開示は、培養基材を含む培養システムに関する。培養基材は、胞子の保持、培養及び/又は成長のために使用され(例えば、藻類の胞子を保持及び維持し、そこから成熟海藻を成長させるため)、そして関連する方法及び装置に使用される。様々な例において、培養システムは、多細胞生物(例えば、海藻)を成長させるように動作可能である。幾つかの実施形態において、培養システムは、開放水環境で多細胞生物を成長させるように動作可能である。
【0087】
本開示による培養システムは、胞子の捕獲、胞子の培養及び成長、ならびに胞子及び/又は配偶体/胞子体の輸送及び堆積を含む、様々な用途で使用することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載の培養基材は、海藻形態(例えば、胞子、配偶体、胞子体)の成長及び培養のための改善された成長基材として使用でき、現在の培養慣行と比較して改善された収量及びスループットをもたらす。
【0088】
幾つかの実施形態において、培養システムは、平均フィブリル間距離を規定する複数のフィブリルを含む微細構造を有するフィブリル化材料をそれ自体が含む培養基材を含む。図1は、幾つかの実施形態による、フィブリル化材料を含む培養基材の微細構造100を示すSEM顕微鏡写真である。微細構造100を有する図1に示されるフィブリル化材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。図示のように、微細構造100は、ノード104を相互接続する複数のフィブリル102によって画定される。フィブリル102は、フィブリル間空間103を画定する。
【0089】
フィブリル102は、規定された平均フィブリル間距離を有し、これは、幾つかの実施形態において、約1μm~約200μm、約1μm~約50μm、約1μm~約20μm、約1μm~約10μm、約1μm~約5μm、約5μm~約50μm、約5μm~約20μm、約5μm~約10μm、約10μm~約100μm、約10μm~約75μm、約10μm~約50μm、約10μm~約25μm、約25μm~約200μm、約25μm~約150μm、約25μm~約100μm、約25μm~約50μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約100μm~約150μm又は約150μm~約200μmであることができる。幾つかの実施形態において、フィブリル102は、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm又は約200μmの平均フィブリル間距離を有することができる。
【0090】
図2は、図1に示される微細構造のより高倍率のSEM顕微鏡写真である。図2は、選択されたフィブリル間空間103の寸法をμmで識別する。
【0091】
図3は、幾つかの実施形態による、フィブリル化ePTFE材料を含む培養基材の別の微細構造を示すSEM顕微鏡写真である。
【0092】
図4は、図3に示される微細構造のより高倍率のSEM顕微鏡写真である。
【0093】
フィブリル102の少なくとも幾つかは、フィブリル間空間103に胞子を保持するために互いに十分に離間している。
【0094】
図5は、幾つかの実施形態による培養基材の微細構造の概略斜視図である。図示のように、微細構造500は、複数の細孔502によって画定されている。
【0095】
細孔502は、円形、ほぼ円形又は矩形であることができる。細孔502は、約1μm~約200μm、約1μm~約50μm、約1μm~約20μm、約1μm~約10μm、約1μm~約5μm、約5μm~約50μm、約5μm~約20μm、約5μm~約10μm、約10μm~約100μm、約10μm~約75μm、約10μm~約50μm、約10μm~約25μm、約25μm~約200μm、約25μm~約150μm、約25μm~約100μm、約25μm~約50μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約100μm~約150μm又は約150μm~約200μmの直径又はおおよその直径を有することができる。幾つかの実施形態において、細孔502は、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm又は約200μmの直径又はおおよその直径を有することができる。
【0096】
幾つかの実施形態において、図1のフィブリル間空間103は図5の細孔502を形成する。すなわち、複数のフィブリル102を有する微細構造100は多孔質微細構造500を形成することができる。しかしながら、細孔502を有するすべての微細構造500がフィブリル化されているわけではない。
【0097】
培養基材の微細構造は、胞子及び胞子体、配偶体、又は保持された胞子から成長した他の生物を保持するように構成されている。幾つかの実施形態において、微細構造は、藻類胞子、藻類胞子体及び/又は配偶体、植物胞子、実生、細菌内生胞子、真菌胞子又はそれらの組み合わせを保持するように構成されている。幾つかの実施形態において、培養基材は、複数の胞子及び/又はそこから成長した生物(例えば、胞子体及び/又は配偶体)を保持する。複数の胞子及び/又は生物は、すべて同じタイプであってもよく、又は2つ以上の異なるタイプであってもよい。幾つかの実施形態において、培養基材は、一緒に培養又は成長されたときに共生関係を示す2つの異なる胞子タイプを保持する。簡単にするために、本開示全体を通して「胞子」に言及するが、配偶体、胞子体、実生又は胞子から成長する他の生物もこの用語によって考えられ、本開示の範囲内であると考えられる。
【0098】
幾つかの実施形態において、胞子を保持することに加えて、本開示の培養システム及び基材は、保持された胞子の発芽及び成長を促進する。すなわち、培養システム及び基材は、保持された胞子を生存可能に維持する。特定の実施形態において、微細構造は、胞子の少なくとも一部を取り外し不可能に固定するように構成されている。
【0099】
培養基材は、例えば、保持された胞子の発芽及び成長を助長する微小環境を作り出す。幾つかの実施形態において、微細構造は、最初に、微細構造が、標的胞子を保持及び維持するように機能する第一の保持段階にある。微細構造は、その後、胞子の発芽が誘導され、胞子から微細構造上及び/又は微細構造内への胞子発芽体(例えば、胞子体、配偶体、実生など)の内部成長が誘導され、それにより胞子発芽体の微細構造への機械的結合又は固定をもたらす第二の成長段階にある。したがって、幾つかの実施形態において、微細構造は、発芽胞子を取り外し不可能に固定し、例えば、圃場での輸送又は配置(例えば、開放水環境)中の発芽胞子の損失、又は環境要因(例えば、電流)の損失を防止するように構成されている。
【0100】
特定の実施形態において、培養基材は、非標的胞子又は他の細胞の発芽、成長及び/又は増殖を阻害又は防止しながら、標的胞子の発芽及び成長を助長する選択的微小環境を作り出す。選択的な微小環境は、例えば、非標的胞子又は他の細胞の発芽、成長及び/又は増殖を阻害又は防止しながら、フィブリル間距離及び/又は細孔サイズ、材料密度、材料の平均密度に対するフィブリル間距離の比、深さ又は厚さ、疎水性、及び、標的胞子の発芽及び成長を支持する栄養源、湿分、生物活性剤及び接着剤の有無の組み合わせを提供することによって達成することができる。
【0101】
幾つかの要因は、胞子及びそこから成長する生物の保持及び/又は生存可能な維持に影響を及ぼすことができる。そのような要因としては、例えば、フィブリル間距離及び/又は細孔サイズ、材料密度、材料の平均密度に対するフィブリル間距離の比、深さ又は厚さ、疎水性、及び、栄養源、湿分、生物活性剤及び接着剤の有無が挙げられる。これらの要因について、それぞれ詳細に記載する。
【0102】
2つのフィブリル間の距離(すなわち、フィブリル間距離)は、フィブリル間空間103を画定する。幾つかの実施形態において、フィブリル間空間103、したがってフィブリル間距離は、その中に胞子を保持するのに十分であり、胞子は、フィブリル間空間を画定する2つのフィブリル間に保持される。フィブリル間距離は、胞子の少なくとも一部がフィブリル間空間103を画定する2つのフィブリル間に入ることを可能にするのに十分である。幾つかの実施形態において、胞子はそれによって培養基材の微細構造内に保持される。図6は、図2の写真の修正版であり、フィブリル化材料を含み、直径が約10μm(例えば、海苔及び昆布の胞子)又は約30μm(例えば、ダルスの胞子)のいずれかである代表的な胞子で覆われた培養基材の微細構造を示す。図6は、標的胞子がフィブリル間空間を画定する2つのフィブリルの間にどのようにそしてどこに入ることができるかを示している。
【0103】
幾つかの実施形態において、胞子の少なくとも一部の微細構造への侵入を促進するために、平均フィブリル間距離は制御される。例えば、微細構造が約30μmの直径を有するダルス(パルマリアパルマタ)の胞子を保持することが望まれる場合に、微細構造の平均フィブリル間距離は、約30μm又はわずかに大きい(例えば、約32μm~約35μm)。微細構造が、それぞれ直径約10μmの胞子を有する海苔又は昆布の胞子を保持することが望まれる場合に、微細構造の平均フィブリル間距離は約10μm又はわずかに大きい(例えば、約12μm~約15μm)。幾つかの実施形態において、複数種(例えば、ダルス、海苔及び昆布)の胞子を保持することが望ましい場合がある。そのような実施形態において、平均フィブリル間距離は、複数種の胞子の少なくとも一部がフィブリル間空間に入り、そこに保持されることを可能にするのに十分である。幾つかの実施形態において、標的胞子は約0.5μm~約200μmの直径を有する。
【0104】
幾つかの実施形態において、標的胞子の約半分がフィブリル間空間103に入ることができる。そのような実施形態において、フィブリル間距離は、標的胞子の寸法(例えば、直径又は幅)に少なくとも等しい。幾つかの実施形態において、フィブリル間距離は、標的胞子の寸法よりわずかに大きい。これにより、胞子全体がフィブリル間空間103に入り、その中に保持されることが可能になる。
【0105】
幾つかの実施形態において、標的胞子の半量より多くは、胞子全体まで、フィブリル間空間103に入ることができる。そのような実施形態において、フィブリル間空間103に入る胞子の部分は、細孔の深さによって支配されることができ、その開口部は、フィブリル間空間によって画定される。細孔の深さは、例えば、材料密度によって制御することができる。
【0106】
幾つかの実施形態において、胞子の一部のみがフィブリル間空間103に入る。したがって、フィブリル間距離が標的胞子の直径よりも小さい場合において、標的胞子は部分的にのみフィブリル間空間103に入ることができる。標的胞子がフィブリル間空間103に部分的にのみ入る場合に、標的胞子は、それにもかかわらず、標的胞子の十分な部分がフィブリル間空間103に入るならば、その中に保持されうる。幾つかの実施形態において、微細構造に適用された接着剤などの物質は、フィブリル間空間103に入るのに必要な胞子の部分を減らし、保持を助けることができる。
【0107】
幾つかの実施形態において、微細構造は非フィブリル化材料によって形成される。特定の実施形態において、細孔開口部502は培養基材の材料に固有のものである。異なる材料は異なる細孔開口特性を有することができ、及び、材料は、所望の細孔開口特性を提供するように製造又は他の方法で操作されうることが認識されるであろう。他の実施形態において、細孔開口部502は、例えば、超音波ドリル、粉末ブラスト又は研磨ウォータジェット機械加工(AWJM)などの機械的マイクロドリル、レーザ機械加工などの熱マイクロドリル、ウェットエッチング、ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)又はプラズマエッチングを含む化学マイクロドリル、スパークアシスト化学彫刻(SACE)、振動アシストマイクロマシニング、レーザ誘起プラズママイクロマシニング(LIPMM)及び水アシストマイクロマシニングなどのハイブリッドマイクロドリル技術などのマイクロドリル技術によって形成される。
【0108】
微細構造が非フィブリル化材料によって形成される実施形態において、細孔開口部502は、記載されたフィブリル間空間103と同様に機能し、標的胞子の少なくとも一部が細孔開口部502に入ることを可能にするのに十分なサイズである。幾つかの実施形態において、胞子は、それによって、培養基材の微細構造内に保持される。幾つかの実施形態において、細孔開口部502のサイズは、標的胞子の最少量部分の微細構造への侵入を促進するように制御される。例えば、微細構造が約30μmの直径を有するダルス(パルマリアパルマタ)の胞子を保持することが望まれる場合に、微細構造の細孔開口部502は、約30μm又はわずかに大きい直径(例えば、約32μm~約35μm)を有する。幾つかの実施形態において、標的胞子は約0.5μm~約200μmの直径を有する。
【0109】
幾つかの実施形態において、標的胞子の約半分が細孔開口部502に入ることができる。そのような実施形態において、細孔開口部は、標的胞子の寸法(例えば、直径又は幅)に少なくとも等しい。幾つかの実施形態において、細孔開口部は、標的胞子の寸法よりもわずかに大きい。これにより、胞子全体が細孔開口部502に入り、その中に保持されることが可能になる。
【0110】
幾つかの実施形態において、標的胞子の半量より多くは、胞子全体まで、細孔開口部502に入ることができる。そのような実施形態において、細孔開口部502に入る胞子の部分は細孔の深さによって支配されうる。細孔の深さは、例えば、材料密度によって制御することができる。
【0111】
幾つかの実施形態において、胞子の一部のみが細孔開口部502に入る。したがって、細孔開口部が標的胞子の直径よりも小さい場合に、標的胞子は、部分的にのみ細孔開口部502に入ることができる。胞子が部分的にのみ細孔開口部502に入る場合に、標的胞子は、それにもかかわらず、標的胞子の十分な部分が細孔開口部に入るときに、その中に保持されうる。幾つかの実施形態において、微細構造に適用された接着剤などの物質は、細孔開口部302に入るのに必要な胞子の部分を減らし、保持を助けることができる。
【0112】
幾つかの実施形態において、培養基材は低密度材料を含む。低密度材料は、フィブリル化又は非フィブリル化されることができ、幾つかの実施形態において、培養基材の微細構造を画定する。低密度材料の密度は、約0.1g/cm、約0.2g/cm、約0.3g/cm、約0.4g/cm、約0.5g/cm、約0.6g/cm、約0.7g/cm、約0.8g/cm、約0.9g/cm又は約1.0g/cmである。幾つかの実施形態において、低密度材料の密度は、約0.1g/cm~約1g/cmである。
【0113】
幾つかの実施形態において、低密度材料は、フィブリル間空間103又は細孔開口部502に胞子を保持するのに十分な細孔深さを提供する。
【0114】
幾つかの実施形態において、細孔開口部の寸法(長さ(μm)及び幅(μm))は、フィブリル化又は非フィブリル化材料によって形成されたかどうかにかかわらず、標的胞子が細孔に入る深さ(μm)とともに、捕獲比を規定する。胞子の種類ごとに、微細構造による胞子の適切な保持に必要な異なる捕捉比を有することができる。必要な捕捉比は、微細構造を構成する材料の特性、及び、栄養素、接着剤及び/又は生物活性剤の有無によって影響を受ける可能性がある。
【0115】
幾つかの実施形態において、低密度材料は、胞子が発芽し、低密度材料内に成長することを可能にする。例えば、本明細書に記載の微細構造を有する低密度材料内に保持されたダルス胞子が配偶体、次に胞子体に発達するにつれて、ダルスは三次元すべてで(すなわち、水平方向にx及びy次元で、深さ方向にz次元で)低密度材料中に成長する。この三次元の成長は、ダルス配偶体と胞子体の保持を改善することを可能にする。
【0116】
図7A及び7Bは、幾つかの実施形態による低密度微細構造材料の2つの異なる倍率で撮影された断面SEM顕微鏡写真であり、低密度材料へのダルス海藻の三次元内部成長を示している。図7Cは、光学蛍光顕微鏡を使用して生成された断面顕微鏡写真であり、低密度材料へのダルス海藻の内部成長を示している。
【0117】
図8(上のパネル)は、幾つかの実施形態による低密度微細構造材料の表面のSEM顕微鏡写真である。図8(下のパネル)は、カラフトコンブ胞子の播種及びその発芽後の上のパネルと同じ培養基材材料を示している。
【0118】
図9は、2つの異なる倍率で撮影された微細構造の表面のSEM顕微鏡写真を示しており、ここでは、ダルス海藻は微細構造内に付着して成長しているのをはっきりと見ることができる。図10は、ダルス海藻が微細構造内に付着して成長している微細構造の表面の蛍光顕微鏡写真を示している。海藻の成長は、三次元すべての「成長ネットワーク」で微細構造内に成長していることが観察される。
【0119】
ダルス海藻が、三次元すべてでフィブリル化ePTFEの微細構造中に成長し、微細構造内に海藻をしっかりと固定することができることは図7A図10の顕微鏡写真から明らかである。
【0120】
逆に、図11は、高密度フィブリル化材料の表面上に成長するダルス海藻を示す顕微鏡写真である。成長しているダルスは、より高密度の材料中に成長することができず、むしろ材料の表面でフィブリルにのみ付着している。これにより、発達中のダルス配偶体が固定される低密度材料に比べてダルス配偶体の保持が弱くなる。
【0121】
幾つかの実施形態において、発芽した胞子は、微細構造の奥深くまで成長する。この深い内部成長と微細構造への取り込みは、発芽した胞子を外部環境(例えば、海藻配偶体の場合には、海及びその流れ)から保護する上で追加の利点をもたらす。幾つかの実施形態において、胞子の初期サイズに対する発芽胞子の侵入の深さは、約1:1~約200:1である。例えば、初期直径が約30μmであるダルス胞子の場合には、ダルス胞子体は、約30μm~約6mmの深さまで微細構造中に成長しうる。
【0122】
幾つかの実施形態において、低密度材料は、所望のレベルの内部成長を可能にするのに十分な厚さを有する。幾つかの実施形態において、培養基材は、低密度材料の単層を含む。幾つかの実施形態において、培養基材は、低密度材料の2つ以上の層を含む。特定の実施形態において、2つ以上の層は、ラミネート、すなわち、低密度材料の複数の層のラミネート中に存在する。
【0123】
幾つかの実施形態において、微細構造を有する材料のフィブリル間距離及び密度は、フィブリル化材料の平均密度(g/cm)に対する平均フィブリル間距離(μm)の比を規定する。幾つかの実施形態において、フィブリル化材料の、平均フィブリル間距離(μm):平均密度(g/cm)の比は、約1:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約125:1、約150:1、約175:1 、約200:1、約225:1、約250:1、約275:1、約300:1、約325:1、約350:1、約375:1、約400:1、約425:1、約450:1、約475:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、約800:1、約900:1 、約1000:1、約1250:1、約1500:1、約1750:1又は約2000:1であることができる。幾つかの実施形態において、フィブリル化材料の、平均フィブリル間距離(μm):平均密度(g/cm)の比は、約1:1~約2000:1である。
【0124】
幾つかの実施形態において、培養基材は、1つ以上の接着剤を含む。接着剤は、微細構造の表面に適用されるか、微細構造内に吸収させるか、又は、表面に適用されかつ微細構造内に吸収させることの両方を行うことができる。幾つかの実施形態において、接着剤は、培養基材によって保持される胞子に特異的な1つ以上の細胞接着性リガンドを含む。
【0125】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の培養基材は、培養基材の少なくとも一部に連携する栄養素相を含む。栄養素相は、培養基材によって保持された胞子及び発芽胞子を生存可能に維持するのに役立つ。幾つかの実施形態において、栄養素相は、微細構造内に保持された胞子の発芽及び成長を促進する。幾つかの実施形態において、栄養素相は、微細構造への付着及び微細構造への内部成長又は微細構造内での統合を維持及び/又は促進するように作用する。
【0126】
幾つかの実施形態において、栄養素相は、栄養素相が適用又は含まれる培養基材の所定の位置に胞子を引き付けることができる化学誘引物質として作用する。
【0127】
栄養素相は、培養基材の微細構造内、微細構造上(例えば、その表面上)、又は微細構造内及び微細構造上の両方に位置することができる。幾つかの実施形態において、栄養素相は、コーティングとして培養基材の表面に適用される。幾つかの実施形態において、栄養素相は、微細構造を形成する材料内に含まれる。栄養素相が微細構造を形成する材料内に含まれる場合に、栄養素相は、微細構造中への内部成長又は微細構造内への統合を促進することができる。
【0128】
幾つかの実施形態において、栄養素相は、培養基材によって保持される標的胞子及び結果として生じる発芽胞子に有益な少なくとも1つの栄養素を含む。例えば、胞子が微細構造によって保持される場合に、栄養素相は、主要栄養素(例えば、窒素、リン、炭素など)、微量栄養素(例えば、鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデンなど)、及び、ビタミン(例えば、ビタミンB12、チアミン、ビオチン)を含むことができ、発芽したダルス胞子の成長及び健康を支持する。栄養素相の栄養素は、様々な形で提供することができる。例えば、窒素は、硝酸アンモニウム(NHNO)、硫酸アンモニウム((NHSO)、硝酸カルシウム(Ca(NO)、硝酸カリウム(KNO)、尿素(CO(NH)などとして提供できる。培養基材によって保持される胞子及び結果として生じる発芽胞子を生存可能に維持するために、どの栄養素を栄養素相に含めることが有益であるかは、当業者によって認識されるであろう。
【0129】
様々な胞子の種類及び発芽胞子は異なる栄養素の必要性、ならびに培養システムの意図された使用があるので、栄養素相中にどの栄養素を含めるかは、どの胞子が培養基材によって保持されるかに依存する。例えば、胞子及び/又は発芽胞子を保持する培養基材を、必須栄養素が不足している環境に導入する場合に、胞子/発芽胞子に必要なすべての栄養素を栄養素相に含めることができる。胞子/発芽胞子を保持する培養基材が少なくとも1つの必須栄養素を有する環境に導入される場合に、それらの環境的に利用可能な必須栄養素は、栄養素相から除外されるか、又は、より低い濃度で含まれることができる。培養基材はまた、微細構造中に環境栄養素を捕捉することにより、環境からの栄養素を濃縮するように作用しうる。これは、環境栄養素が低濃度でのみ存在する環境で有利なことがある。
【0130】
幾つかの実施形態において、そして本明細書の他の場所でさらに記載されるように、培養システムを使用して、保持された胞子/発芽胞子をある場所から別の場所に輸送することができる。培養システムが輸送システムとして機能する場合には、栄養素相は、輸送中に保持された胞子/発芽胞子を生存可能に支持するのに十分な栄養レベルを含むことができる。幾つかの実施形態において、栄養素相は、保持された胞子/発芽胞子を新しい環境に導入した後に、輸送後の保持された胞子/発芽胞子を生存可能に維持するのに十分な栄養レベルを含むことができる。
【0131】
幾つかの実施形態において、栄養素相は、1つ以上のキャリアを含む。キャリアとしては、例えば、液体キャリア、ゲルキャリア及びヒドロゲルキャリアを挙げることができる。幾つかの実施形態において、栄養素相のキャリアは接着剤である。栄養素相のキャリアとして接着剤を含めると、栄養素相が培養基材上及び/又は培養基材内に確実に確保するように機能することができる。栄養素相が培養基材の表面に適用され、キャリアとして接着剤を含む場合には、栄養素面はまた、微細構造内の胞子の保持を促進するように機能することができる。
【0132】
幾つかの実施形態において、栄養素相は、栄養素の解放速度を制御するように配合される。
【0133】
幾つかの実施形態において、培養基材は、微細構造に連携する塩をさらに含む。幾つかの実施形態において、塩は塩化ナトリウム(NaCl)である。微細構造に連携する塩は、保持された胞子/発芽胞子のための塩水微小環境を生成及び維持することができる。これは、海藻及び水生植物が培養基材によって保持されているときに特に有利である。幾つかの実施形態において、培養基材が淡水に沈められたときに、培養基材内の塩水微小環境を維持することができ、それにより、海洋種を生存可能に維持し、困難かつ費用がかかる可能性がある塩水培養環境を維持する必要性を回避する。
【0134】
幾つかの実施形態において、培養基材は、培養基材の少なくとも一部に連携する液体含有相を含む。液体含有相は、微細構造の微小環境内に湿分を供給及び維持するのに役立ち、これは、そこに保持されている胞子/発芽胞子の生存可能な維持に有益であることができる。
【0135】
幾つかの実施形態において、培養基材は、液体ウィッキング材料を含む。液体ウィッキング材料は、微細構造を形成する材料と同じ材料にすることができる。液体ウィッキング材料は、微細構造の微小環境内の湿分を維持するように機能する。
【0136】
胞子及び内生胞子は乾燥環境で生存可能に維持されうるが、発芽胞子は、一般に、成長及び/又は増殖するために湿分を必要とする。湿分微小環境を維持することにより(例えば、液体含有基材及び/又は液体ウィッキング材料を含むことにより)、培養システムを水性環境に維持する必要なしに、胞子/発芽胞子をその中に保持する培養システムを輸送することができる。
【0137】
幾つかの実施形態において、液体含有相は、微細構造内に同伴されるか、微細構造上に同伴されるか、又は、微細構造内及び微細構造上の両方に同伴される。幾つかの実施形態において、液体含有相は、培養基材の表面上のコーティングとして存在する。
【0138】
幾つかの実施形態において、液体含有相は、例えば、ヒドロゲル、スラリー、ペースト、又は、ヒドロゲル、スラリー及び/又はペーストの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、液体含有相は、栄養素相のためのキャリアである。
【0139】
幾つかの実施形態において、培養基材の少なくとも一部は親水性である。培養基材のそのような親水性部分は、胞子を保持することができる微細構造の能力に寄与することができる。
【0140】
幾つかの実施形態において、培養基材の少なくとも一部は疎水性である。培養基材のそのような疎水性部分は、胞子の保持を減少させるか又は防止するか又は抵抗することができる。これは、所望しない胞子又は他の細胞の生物付着及び取り付けを低減又は防止するのに役立つことができる。
【0141】
幾つかの実施形態において、培養基材の1つ以上の部分は疎水性であり、培養基材の1つ以上の部分は親水性であり、その結果、胞子は、培養基材の1つ以上の親水性部分に保持されることが選択的に促進される。
【0142】
幾つかの実施形態において、培養基材は、培養基材に連携する1つ以上の生物活性剤を含むことができる。生物活性剤としては、薬剤と接触する細胞又は生物に対して、陽性又は陰性にかかわらず効果を有する任意の薬剤が挙げられる。適切な生物活性剤としては、例えば、殺生物剤及び血清を挙げることができる。殺生物剤は、微細構造の部分への所望されない細胞又は生物の付着及び成長を防ぐために、微細構造のそれらの部分と連携されうる。所望されない細胞としては、例えば、細菌、酵母、藻類などの非標的細胞を挙げることができる。殺生物剤はまた、昆虫などのペストを阻止することができる。幾つかの実施形態において、殺生物剤は、付着及び成長が望まれない培養基材の部分への標的胞子の付着及び成長を防止する。幾つかの実施形態において、血清は、培養基材の一部に適用されうる。血清は、胞子の付着及び保持を助け、及び/又は、胞子の発芽又は成長を促進することができる。血清としては、例えば、細胞接着性リガンドを挙げることができ、また、成長因子、ホルモン及び付着因子の供給源を提供しうる。
【0143】
幾つかの実施形態において、培養基材の微細構造はパターン化されている。微細構造を特異的にパターン化することにより、微細構造の記載された部分で標的胞子を特異的に保持し、一方、他の部分から細胞を排除することができる。
【0144】
幾つかの実施形態において、微細構造は、高密度部分及び低密度部分のパターンを含む。そのような構成において、低密度部分は、標的胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造の部分に対応し、一方、高密度部分は、細胞の保持を阻害又は防止する。密度パターンは、任意の次元に拡張できる。例えば、高密度/低密度のパターンは、培養基材のx又はy次元、あるいは、z次元に広がることができる。z次元で拡張するときに、最も外側の部分は、一般に、標的胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された低密度部分である。下方にある部分は、より高密度であることができ、又は、最も外側の部分よりもさらに低い密度であることができる。下方にある部分の密度が高い場合には、発芽胞子の内部成長は阻害又は防止される。下方にある部分が最も外側の部分よりも密度が低い場合には、発芽胞子の内部成長は促進され及び/又は容易にされる。幾つかの実施形態において、z次元の密度パターン又は勾配は、異なる密度を有する微細構造材料の同心円状のラップ、又は各薄層が異なる密度を有するラミネート構成に起因する。幾つかの実施形態において、密度パターンは、二次元又はすべての三次元に拡張することができる。幾つかの実施形態において、微細構造の一部は密度勾配を有する。
【0145】
密度は、例えば、材料の寸法及び重量の測定を含む、様々な方法で測定することができる。さらに、湿潤実験を行って密度値を導き出すことができる。密度は、例えば、フィブリル間距離、単位体積あたりのフィブリルの数、単位体積あたりの細孔の数及び細孔サイズを変更することによって変化させることができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、低密度部分は、約1.0g/cm以下の材料密度を特徴とし、一方、高密度部分は、約1.7g/cm以上の密度を特徴とする。図7A~7C及び11によって示されるように、発芽胞子(描かれているダルス海藻胞子体)の付着及び保持は、微細構造材料密度によって有意に影響を受けることができ、低密度材料(すなわち、約1.0g/cm以下)は、改善された内部成長及び保持を示す。
【0147】
幾つかの実施形態において、密度は、微細構造を形成する材料自体の密度であり、すなわち、栄養素相、液体含有相などの含有物は含まれない。
【0148】
幾つかの実施形態において、密度は、栄養素相、液体含有相又は密度変更性フィラーなどの材料及び含有物の密度である。幾つかの実施形態において、微細構造の一部は、密度を変えるためにフィラーで充填され、それによって、胞子を保持する及び/又は微細構造中への内部成長を防ぐ微細構造のその部分の能力を変える。
【0149】
幾つかの実施形態において、培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを有する材料を含む。幾つかの実施形態において、低多孔性部分は、標的胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造の部分に対応する。幾つかの実施形態において、高多孔性部分は、標的胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造の部分に対応する。
【0150】
幾つかの実施形態において、培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含む。幾つかの実施形態において、小フィブリル間距離部分は、胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造の部分に対応する。そのような実施形態において、大フィブリル間距離部分は、標的胞子を保持するには大きすぎるフィブリル間距離を有する。幾つかの実施形態において、大フィブリル間距離部分は、胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造の部分に対応する。そのような実施形態において、小フィブリル間距離部分は、標的胞子を保持するには小さすぎるフィブリル間距離を有する。
【0151】
幾つかの実施形態において、パターン化培養基材のパターンは、密度、多孔性及び平均フィブリル間距離のうちの少なくとも2つを制御することによって生成される。幾つかの実施形態において、パターン化培養基材のパターンは、密度、多孔性、平均フィブリル間距離又はそれらの組み合わせが関与するかどうかにかかわらず、組織化又は選択的パターンであることができ、又はランダムパターンであることができる。
【0152】
幾つかの実施形態において、パターンは、長手方向の張力を選択的に適用することによって設定又は調整することができる。長手方向の張力を加えることによってパターンを設定又は調整することにより、パターンを機械的に変更することができる。幾つかの実施形態において、長手方向の張力を選択的に適用することにより、フィブリル化材料にパターンを設定又は調整することができる。
【0153】
幾つかの実施形態において、パターン化培養基材は、胞子の保持に有利な2つ以上の特徴を有する部分を含む。例えば、パターン化培養基材は、標的胞子を保持するように選択される、低密度の部分(すなわち、約1.0g/cm以下)及び平均フィブリル間距離(例えば、ダルス胞子の場合は約30μm)を有することができる。これらの同じ部分は、さらに親水性であることができ、及び/又は栄養素相、接着剤及び生物活性剤のうちの1つ以上を含むことができる。例えば、密度、フィブリル間距離、疎水性、栄養素相、接着剤及び生物活性剤は、例えば、標的胞子を優先的に保持するようにそれぞれ選択することができる。
【0154】
幾つかの実施形態において、培養基材は、繊維、膜、織物物品、不織物品、編組物品、布帛、編物物品、粒子分散体又はこれらの組み合わせとして構成される。図12は、特定の実施形態による培養基材の写真であり、培養基材は、織物物品として構成されている。図12に示されるように、織物物品の各ストランドは微細構造を含む。そのような構成において、標的胞子が保持され、発芽胞子がストランドの深さを通して成長するだけでなく、織物ストランドの間の空間で成長することもできる。ダルス海藻の場合において、これは、海藻が織物ストランドの周りで成長するときに、追加の機械的保持能力を提供することができる。
【0155】
幾つかの実施形態において、培養システムは、バッカー層、キャリア層、複数の層のラミネート、複合材料のうちの少なくとも1つ又はこれらの組み合わせを含む。培養基材は、バッカー層又はキャリア層上に堆積させるか、又はラミネートに含めることができる。バッカー層は、例えば、ロープ又は金属ケーブルであることができる。例えば、培養基材が海藻胞子を保持し、生存可能に維持する場合に、培養基材をロープ又は金属ケーブル上に堆積させてシードロープを製造することができ、海藻のオープンウォータロープ培養のフィールドでロープの周りにシードストリングを巻き付ける必要がなくなる。
【0156】
幾つかの実施形態において、微細構造自体を有する材料は、発芽胞子の収穫を含む、保持された胞子の様々な成長段階を通ってコンベヤベルトとして移動するのに十分な強度を有する。幾つかの実施形態において、微細構造を有する材料は、バッカー層、キャリア層上に堆積されるか、又は、ラミネートに加工されて、発芽胞子の収穫を含む、保持された胞子の様々な成長段階を通してコンベヤベルトとして移動するのに十分な強度を有する培養システムを生成する。
【0157】
幾つかの実施形態において、培養基材は粒子分散体として構成される。微細構造は、培養システムを形成するためにバッカー層又はキャリア基材上に堆積するために配合された分散体中の複数の粒子によって提供される。粒子は、例えば、本明細書に記載の微細構造を有する繊維、膜、織物物品、不織物品、編組物品、布帛又は編物物品の細断され又は断裁され又は他の方法で断片化された片であることができる。幾つかの実施形態において、胞子は、バッカー層又はキャリア基材上に堆積する前に粒子と接触させられる。他の実施形態において、胞子は、バッカー層又はキャリア基材上に堆積された後に、粒子と接触させられる。粒子分散体は、例えば、噴霧、浸漬コーティング、ブラッシング又は他のコーティング手段によって、バッカー層又はキャリア基材上に堆積させることができる。胞子が堆積前に粒子の微細構造に保持される実施形態において、堆積方法が保持された胞子に悪影響を及ぼさないことを確保するように注意を払わなければならない。胞子及び内生胞子は、より弾力性があり、そのような方法での堆積に耐えることができる。
【0158】
幾つかの実施形態において、培養基材は延伸フルオロポリマーを含む。幾つかの実施形態において、延伸フルオロポリマーは、培養基材の微細構造を形成する。幾つかの実施形態において、延伸フルオロポリマーは、延伸フッ素化エチレンプロピレン(eFEP)、多孔性ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、延伸エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、延伸フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレンポリマー(eVDF-コ-TFE又はTrFE))、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)及び変性ePTFEの群から選択される。適切な延伸フルオロポリマーの例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、多孔性ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリエステルスルホン(PES)、米国特許公開第2016/0032069号明細書に教示されているポリ(p-キシリレン)(ePPX)、Sbrigliaの米国特許第9,926,416号明細書で教示されている超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、Sbrigliaの米国特許第9,932,429号明細書で教示されているエチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、Sbrigliaらの米国特許第7,932,184号明細書で教示されているポリ乳酸(ePLLA)、Sbrigliaの米国特許第9,441,088号明細書に教示されているフッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレン[VDF-コ-(TFE又はTrFE)]ポリマーが挙げられる。
【0159】
幾つかの実施形態において、延伸フルオロポリマーは栄養素相を含む。これは、フルオロポリマーの押出及び延伸の前に、栄養素相をフルオロポリマー樹脂と共混合することによって達成することができる。
【0160】
幾つかの実施形態において、培養基材は延伸熱可塑性ポリマーを含む。幾つかの実施形態において、延伸熱可塑性ポリマーは培養基材の微細構造を形成する。幾つかの実施形態において、延伸熱可塑性ポリマーは、延伸ポリエステルスルホン(ePES)、延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、延伸ポリ乳酸(ePLA)及び延伸ポリエチレン(ePE)の群から選ばれる。
【0161】
幾つかの実施形態において、培養基材は延伸ポリマーを含む。幾つかの実施形態において、延伸ポリマーは、培養基材の微細構造を形成する。幾つかの実施形態において、延伸ポリマーは延伸ポリウレタン(ePU)である。
【0162】
幾つかの実施形態において、延伸ポリマーは栄養素相を含む。これは、ポリマーの延伸前に栄養素相をフルオロポリマー樹脂と共混合することによって達成することができる。
【0163】
幾つかの実施形態において、培養基材は、エキスパンデッド化学蒸着(CVD)によって形成されたポリマーを含む。幾つかの実施形態において、エキスパンデッドCVDによって形成されたポリマーは、培養基材の微細構造を形成する。幾つかの実施形態において、エキスパンデッドCVDによって形成されるポリマーはポリパラキシリレン(ePPX)である。
【0164】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の培養システムを使用して、胞子を発芽させることができる。胞子は、十分な時間及び所定の条件下で、胞子の少なくとも一部が培養基材の微細構造内に保持されるまで胞子を保持し、生存可能に維持するための所望の特性を有する培養基材と接触させられる。幾つかの実施形態において、培養基材による胞子の保持の際に、培養基材は、胞子の発芽及び発芽した胞子の成長を助長する培地中でインキュベートされうる。他の実施形態において、培養システム自体が、少なくとも一定期間(例えば、一時的な輸送中)、胞子の発芽及び発芽した胞子の成長を助長する微小環境を提供する。
【0165】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される培養基材は、胞子からの多細胞生物のための成長基材として使用されうる。例えば、培養基材は、胞子から成熟海藻への海藻の成長を支持するために使用することができる。幾つかの実施形態において、多細胞生物に成熟する胞子は、胞子を保持及び生存可能に維持し、胞子の少なくとも一部が培養基材の微細構造内に保持されるまで、そこからの多細胞生物の成長を支持するための所望の特性を有する培養基材と、十分な時間及び所定の条件下で接触される。
【0166】
幾つかの実施形態において、海藻胞子は、培養基材の微細構造に導入され、配偶体及び胞子体は、胞子が実験室設定で培養基材に導入される従来の培養ストリングと同様の方法で成熟させられる。あるいは、胞子は、圃場(すなわち、海藻養殖場)にある培養基材の微細構造に導入される。これは、培養基材の微細構造の保持特性により達成される。ここに記載されている微細構造(その中に胞子が保持されている又は保持されていない)を有する材料をロープ、ケーブル又は圃場にある他の支持体の上に堆積させることにより、ロープラインの周囲に培養ストリングを巻き付ける従来の工程を省略することができる。これは、微細構造が分散体中の複数の粒子によって提供される場合に達成することができる。
【0167】
他の実施形態において、海藻胞子体及び/又は配偶体は、培養基材の微細構造に直接導入される。このような直接播種は、胞子播種と比較して、培養ストリングを生産するために必要な実験室時間を短縮することができる。
【0168】
培養ストリングは、伝統的に、滅菌された海水を使用して実験室環境で維持及び培養される。本培養システムは、微細構造内に十分な塩を含めることで、微細構造内に塩水微小環境を提供することにより、滅菌海水の循環に必要な高価で面倒なシステムの必要性を回避する。幾つかの実施形態において、培養基材及び保持された胞子は、栄養素が滅菌海水を介してデリバリーされる標準的な海藻培養タンク内に維持される。海藻の成長を支持するのに十分な栄養素相を微細構造内に含めることにより、成長する海藻に外部栄養素を提供する必要性をなくすことができる。
【0169】
培養ストリングは、配偶体及び胞子体がストリングから脱離するのを防ぐように衝撃を避けながら、海水中で注意深く輸送されなければならない。逆に、ここで記載されている培養システムは、配偶体及び胞子体が海水なしで安全に輸送されることを可能にする。これは、微細構造内に塩及び液体含有相を含めることで達成できる。これにより、輸送中に幼生海藻を支持するのに十分な湿分を含む塩水微小環境が提供される。さらに、幼生海藻は、例えば培養ストリングの表面に単に表面的に付着するのではなく、微細構造中に成長することができるので、脱離による損失が最小限に抑えられる。この有益な効果は、海流が、弱く固定された幼生海藻を脱離させる可能性がある海藻養殖場にまで及ぶ。
【実施例
【0170】

実施例1-多孔質ポリエチレン
【0171】
ダルス及び昆布の培養試験を、2つの多孔質ポリエチレンベースの膜で実施した。
【0172】
膜1は、幅500ミリメートル、厚さ30ミクロン、面密度18.1g/m及びおよそ36%の多孔度を有するゲル処理されたポリエチレン膜である。続いて、このテープを、摂氏120度に設定された熱風乾燥機を通して、2:1の延伸比で4.3%/秒の延伸速度で機械方向に延伸した。これに続いて、摂氏130度のオーブン内で4.7:1の比で15.6%/秒の延伸速度で横断方向に延伸した。得られた膜は、以下の特性を有していた:幅697ミリメートル、厚さ14ミクロン、多孔度66%、ASTMD412に従って試験してそれぞれ機械方向及び横断方向の最大荷重7.65ニュートン×6.23ニュートン及び最大荷重時伸び率25.6%×34.3%。膜のガーレー時間は15.7秒であった。ガーレー時間は、100立方センチメートル(1デシリットル)の空気が4.88インチ水柱(0.176psi)の圧力差で特定の材料1.0平方インチを通過するのに必要な秒数として定義される(ISO 5636-5:2003)。
【0173】
膜2は、UE 1ミクロンの実験室用フィルタディスクとして等級化されたサンゴバンからの市販の多孔質ポリエチレンである。膜2の微細構造は図13に示されている。
【0174】
膜サンプルを直径2インチのPVCカップに固定した。すべてのサンプルにアルコールを噴霧し、播種直前に淡水ですすいだ。播種は、胞子溶液をサンプル上に注ぎ、胞子を基材表面に定着させることによって達成された。サンプルを10ガロンのタンクで播種し、海水を毎週交換した。ダルスサンプルを2週後に40ガロンのグラスファイバタンクに移した。昆布を10ガロンのタンクで培養した。すべての培養物は通気を受けた。播種から2か月後に、植物が見える状態でサンプルを撮影した。
【0175】
すべてのダルスサンプルを淡水で穏やかにすすぎ、次に評価の前に海水に浸して、汚れを除去した。膜1及び2の両方は、ダルス実生の健康な中密度から高密度の成長を示した(図14を参照されたい)。膜1は膜2よりも高密度の植物成長を示した。膜1及び2の両方は強い実生の付着及び安定性を示した。
【0176】
昆布サンプルを、写真撮影の前に海水で軽くすすいだ。膜1及び2の両方は、ケルプ実生の健康な中密度から高密度の成長を示した(図15を参照されたい)。膜1は膜2よりも高密度の植物成長を示した。膜1及び2の両方は強い実生の付着及び安定性を示した。
【0177】
例2-パターン化された膜
【0178】
特定の実施形態によるパターン化されたフルオロポリマーベースの膜を、低多孔性及び高多孔性の大きな正方形の領域でもって生成した。パターンは「チェッカーボード」デザインの形であった。
【0179】
膜サンプルを直径2インチのPVCカップに固定した。すべてのサンプルにアルコールを噴霧し、播種直前に淡水ですすいだ。播種は、胞子溶液をサンプルに注ぎ、胞子を基材表面に定着させることによって達成された。サンプルを10ガロンのタンクに播種し、海水を毎週交換した。ダルスサンプルを2週後に40ガロンのグラスファイバタンクに移した。昆布サンプルを10ガロンのタンクで培養した。すべての培養物は通気を受けた。播種から2か月後に、植物が見える状態でサンプルを撮影した。
【0180】
すべてのダルスサンプルを淡水で穏やかにすすぎ、次に等級化の前に海水に浸して汚れを除去した。図16を参照すると、チェッカーボードパターンは植物密度に大きな違いを示し、高多孔性(白)の正方形は強い付着を伴う植物の健康で高密度の被覆を支持し、低多孔性(透明)の正方形は植物の非常に低密度の被覆を示した。
【0181】
昆布サンプルを、写真撮影の前に海水で軽くすすいだ。図17を参照すると、チェッカーボードパターンは植物密度に大きな違いを示し、高多孔性(白)の正方形は強い付着を伴う植物の健康で高密度の被覆を支持し、低多孔性(透明)の正方形は植物の非常に低密度の被覆を示した。
【0182】
例3-直接胞子体播種
【0183】
事前に誘導条件にあった幼生カラフトコンブの胞子体を、バインダなしで、幅4mmを有する本開示の実験膜、及び、直径2mmを有する編組ポリエステル対照物の上に播種した。幼生胞子体の付着を播種後19日間評価した。胞子体は両方の基材上での付着及び成長を示した。本開示の膜上での健康な胞子体の成長は図18に示されている。
【0184】
2つの基材への付着強度を定量化するために、1から5のスケールで、各基材に付着した20以上の胞子体にスコアを与えた。1は非常に弱い付着であり、5は非常に強い付着である。編組ポリエステル対照物に付着した胞子体の大部分は「1」と等級化され、付着は非常に弱かった。実験膜に付着した胞子体の大部分は「5」と等級化され、非常に強い付着であった。2つの基材間の付着強度の違いは、実験膜に付着した胞子体が、基材に付着したままピンセットで手渡し及び移動できることによってさらに実証された。編組ポリエステル対照物に取り付けられた胞子体は、基材から脱離させずに取り扱うことも、動かすことも、又は攪拌することもできなかった。
【0185】
本出願の発明は、一般的に、及び、特定の実施形態に関しての両方で上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の変更及び変形を網羅することが意図されている。
(態様)
(態様1)
胞子を保持し、生存可能に維持するように構成された微細構造を有する培養基材を含む培養システムであって、前記微細構造は200μm以下の平均フィブリル間距離を特徴とする、培養システム。
(態様2)
微細構造を有する培養基材を含む培養システムであって、前記培養システムの少なくとも一部は胞子を保持し、生存可能に維持するように構成され、前記微細構造は、前記培養基材の微細構造内に少なくとも部分的に胞子を保持するように構成されており、前記微細構造は200μm以下の平均細孔サイズを特徴とする、培養システム。
(態様3)
前記微細構造は1~200μmの平均フィブリル間距離を特徴とする、態様1記載の培養システム。
(態様4)
前記微細構造は1~200μmの平均細孔サイズを特徴とする、態様1又は態様2記載の培養システム。
(態様5)
前記培養基材の少なくとも一部に連携する栄養素相をさらに含む、態様1~4のいずれか1項記載の培養システム。
(態様6)
前記栄養素相の少なくとも一部は、前記培養基材内に位置するか、前記培養基材上に位置するか、又は、前記培養基材内及び前記培養基材上に位置する、態様5記載の培養システム。
(態様7)
前記栄養素相は、前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する、態様5記載の培養システム。
(態様8)
前記栄養素相は、前記栄養素相が適用される又は含まれる前記培養基材の所定の位置に前記胞子を選択的に誘引する化学誘引物質として作用する、態様5~7のいずれか1項記載の培養システム。
(態様9)
前記栄養素相は、i)前記微細構造内の胞子の発芽及び成長を促進し、及び/又はii)前記胞子による微細構造への付着及び微細構造内での統合を維持及び/又は促進するように構成されている、態様5~8のいずれか1項記載の培養システム。
(態様10)
前記培養基材の少なくとも一部に連携する液体含有相をさらに含む、態様1~9のいずれか1項記載の培養システム。
(態様11)
前記液体含有相の少なくとも一部は前記微細構造内に同伴されるか、前記微細構造上に同伴されるか、又は、前記微細構造内及び前記微細構造上に同伴される、態様10記載の培養システム。
(態様12)
前記液体含有相は前記培養基材の表面上のコーティングとして存在する、態様10又は態様11記載の培養システム。
(態様13)
前記液体含有相は、ヒドロゲル、スラリー、ペースト又はそれらの組み合わせを含む、態様10~12のいずれか1項記載の培養システム。
(態様14)
複数の胞子、発芽胞子又は胞子及び発芽胞子の両方をさらに含み、それは前記培養基材の微細構造によって保持されている、態様1~13のいずれか1項記載の培養システム。
(態様15)
前記培養基材は、平均フィブリル間距離を規定する複数のフィブリルを含む微細構造を有するフィブリル化材料を含む、態様1~14のいずれか1項記載の培養システム。
(態様16)
前記培養基材の微細構造は200μm以下の平均胞子サイズを有する胞子を保持するように構成されている、態様1~15のいずれか1項記載の培養システム。
(態様17)
前記胞子は藻類胞子を含む、態様1~16のいずれか1項記載の培養システム。
(態様18)
前記胞子は真菌胞子を含む、態様1~16のいずれか1項記載の培養システム。
(態様19)
前記胞子は植物胞子を含む、態様1~16のいずれか1項記載の培養システム。
(態様20)
前記培養基材は、0.1~1.0g/cm の平均密度を有する材料を含む、態様1~19のいずれか1項記載の培養システム。
(態様21)
前記培養基材は、前記材料を含む成長培地を含み、そしてフィブリル化材料の、平均フィブリル間距離(μm)の平均密度(g/cm )に対する比は1~2000である、態様20記載の培養システム。
(態様22)
前記培養基材は、繊維、膜、織物物品、不織物品、編組物品、編物物品、布帛、粒子分散体又は上述の2つ以上の組み合わせとして構成されている、態様1~21のいずれか1項記載の培養システム。
(態様23)
前記培養基材は、バッカー層、キャリア層、複数の層のラミネート、複合材料又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、態様1~22のいずれか1項記載の培養システム。
(態様24)
前記培養基材の少なくとも一部は親水性である、態様1~23のいずれか1項記載の培養システム。
(態様25)
前記培養基材の少なくとも一部は疎水性である、態様1~24のいずれか1項記載の培養システム。
(態様26)
前記培養基材の1つ以上の部分は疎水性であり、前記培養システムの1つ以上の部分は親水性であり、それにより、前記培養システムが前記培養基材の1つ以上の親水性部分に前記胞子の保持を選択的に促進するように構成されている、態様1~25のいずれか1項記載の培養システム。
(態様27)
前記培養基材は延伸フルオロポリマーを含む、態様1~26のいずれか1項記載の培養システム。
(態様28)
前記延伸フルオロポリマーは、延伸フッ素化エチレンプロピレン(eFEP)、多孔質ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、延伸エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、延伸フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレンポリマー(eVDF-コ-(TFE又はTrFE))及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のうちの1つである、態様1~27のいずれか1項記載の培養システム。
(態様29)
前記培養基材は延伸熱可塑性ポリマーを含む、態様1~26のいずれか1項記載の培養システム。
(態様30)
前記延伸熱可塑性ポリマーは、延伸ポリエステルスルホン(ePES)、延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、延伸ポリ乳酸(ePLA)及び延伸ポリエチレン(ePE)のうちの1つである、態様29記載の培養システム。
(態様31)
前記培養基材は延伸ポリマーを含む、態様1~26のいずれか1項記載の培養システム。
(態様32)
前記延伸ポリマーは延伸ポリウレタン(ePU)である、態様31記載の培養システム。
(態様33)
前記培養基材はエキスパンデッド化学蒸着(CVD)によって形成されたポリマーを含む、態様1~26のいずれか1項記載の培養システム。
(態様34)
前記培養基材は延伸ポリパラキシリレン(ePPX)である、態様33記載の培養システム。
(態様35)
前記培養基材に連携する生物活性剤をさらに含む、態様1~34のいずれか1項記載の培養システム。
(態様36)
前記培養基材の表面に適用された、前記培養基材の微細構造内に吸収された、又は、前記培養基材の表面に適用されかつ前記培養基材の微細構造内に吸収された接着剤をさらに含む、態様1~35のいずれか1項記載の培養システム。
(態様37)
前記培養基材に連携する塩をさらに含む、態様1~37のいずれか1項記載の培養システム。
(態様38)
前記塩は塩化ナトリウム(NaCl)である、態様37記載の培養システム。
(態様39)
前記培養基材は高密度部分及び低密度部分のパターンを含み、前記低密度部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を少なくとも部分的に保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、態様1~38のいずれか1項記載の培養システム。
(態様40)
前記低密度領域は1g/cm 以下の密度を特徴とし、前記高密度部分は1.7g/cm 以上の密度を特徴とする、態様39記載の培養システム。
(態様41)
前記培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記低多孔性部分は前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、態様1~40のいずれか1項記載の培養システム。
(態様42)
前記培養基材は、高多孔性部分及び低多孔性部分のパターンを含み、前記高多孔性部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、態様1~40のいずれか1項記載の培養システム。
(態様43)
前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記小フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、態様1~42のいずれか1項記載の培養システム。
(態様44)
前記培養基材は、大フィブリル間距離部分及び小フィブリル間距離部分のパターンを含み、前記大フィブリル間距離部分は、前記培養基材の微細構造内に胞子を保持するように構成された前記培養基材の部分に対応する、態様1~42のいずれか1項記載の培養システム。
(態様45)
前記パターンは、組織化された又は選択的なパターンである、態様43又は態様44記載の培養システム。
(態様46)
前記パターンはランダムパターンである、態様43又は態様44記載の培養システム。
(態様47)
前記微細構造は、最初は胞子を保持するための第一の保持段階にあり、続いて、前記微細構造上及び/又は微細構造内に前記胞子から胞子発芽体の内部成長を誘導し、前記胞子発芽体を前記微細構造に機械的に結合する第二の成長段階にある、態様1~46のいずれか1項記載の培養システム。
(態様48)
栄養素は、滅菌海水を介してデリバリーされるように構成されている、態様1~47のいずれか1項記載の培養システム。
(態様49)
前記微細構造は、各胞子の一部を取り外し不可能に固定するように構成されている、態様1~48のいずれか1項記載の培養システム。
(態様50)
前記微細構造は、発芽胞子を取り外し不可能に固定するように構成されている、態様1~49のいずれか1項記載の培養システム。
(態様51)
前記培養基材は、バッカー層又はキャリア基材上へ堆積するように配合された分散体中の複数の粒子によって提供される、態様1~50のいずれか1項記載の培養システム。
(態様52)
海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団の少なくとも一部が培養システムによって保持されるまで、海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団を態様1~51のいずれか1項記載の培養システムと接触させることを含む、海藻を培養する方法。
(態様53)
海藻胞子、配偶体又は胞子体の集団の一部を含む培養システムを開放水環境に配置することをさらに含む、態様52記載の方法。
図1
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