(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】生体液からの細胞外小胞の単離及びセルフリーDNAの同時単離のための自動及び手動方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20230925BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230925BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230925BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
G01N33/48 S
G01N33/50 P
C12N15/10 100Z
(21)【出願番号】P 2022033452
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2018559313の分割
【原出願日】2017-05-15
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513282272
【氏名又は名称】エクソサム ダイアグノスティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク シュトール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エンダーレ
(72)【発明者】
【氏名】ミッケル ノアーホルム
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン カール オラブ スコグ
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/007755(WO,A1)
【文献】特表2008-510456(JP,A)
【文献】特表2016-502862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0115471(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0010951(US,A1)
【文献】国際公開第2014/107571(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/120445(WO,A1)
【文献】ENDERLE D; ET AL,DEVELOPMENT OF A ONE-STEP ISOLATION PLATFORM FOR EXOSOMAL RNA AND CIRCULATING CELL-FREE DNA FROM CAN,EUROPEAN JOURNAL OF CANCER - POSTER SESSION,2014年11月,VOL:50, NR:SUPPL.6,PAGE(S):102,http://dx.doi.org/10.1016/S0959-8049(14)70439-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6806
G01N 33/48-33/98
G01N 33/50
C12N 15/10
C12N 15/113
C12P 19/34
C12N 5/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルからの微小胞の単離方法であって、以下:
(a)前記生物学的サンプルと、固体捕捉表面及び化学クラウディング剤(chemical crowding agent)とを接触させ、それによって、前記固体捕捉表面上又は中に、前記生物学的サンプルからの微小胞を保持し、ここで、前記化学クラウディング剤は、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、ここで、前記固体捕捉表面は、少なくとも1つのアニオン交換膜又は少なくとも1つのアニオン交換ビーズを含み;そして
(b)前記固体捕捉表面から前記微小胞を溶出させ、それによって、前記生物学的サンプルから前記微小胞を単離すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記微小胞が、工程(b)において、イオン強度の変化を用いて、前記固体捕捉表面から溶出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小胞が、工程(b)において、pHの変化を用いて、前記固体捕捉表面から溶出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下:
(c)工程(b)において前記固体捕捉表面から溶出した前記微小胞を溶解し、それによってホモジネートを生成し;そして
(d)前記ホモジネートから核酸を抽出すること、
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が、前記微小胞とグアニジンチオシアネートベースの溶解試薬とを接触させること、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)が、前記ホモジネートとシリカベースの固体表面とを接触させること、を含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記固体捕捉表面が磁性である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアニオン交換膜又は少なくとも1つのアニオン交換ビーズが、第四級アンモニウム部分により官能化される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアニオン交換膜又は少なくとも1つのアニオン交換ビーズが
、スルフェート、スルホネート、第三級アミン、又はそれらの任意の組合せにより官能化される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的サンプルが、血漿、血清又は尿である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的サンプルが、0.2~20mlである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的サンプルが尿である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記尿が、初尿である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グアニジンチオシアネートベースの溶解試薬が、グアニジンチオシアネート及び少なくとも1つの変性剤及び緩衝物質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記グアニジンチオシアネートベースの溶解試薬が、グアニジンチオシアネート及び少なくとも1つのβ-メルカプトエタノール(BME)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、及びジチオスレイトール(DTT)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)がさらに、ホモジネートからの核酸の抽出の前に、ホモジネートにタンパク質沈殿緩衝液を添加することを含み、ここで、前記タンパク質沈殿緩衝液は、3.1~4.1の規定されたpH範囲を有する、請求項4から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質沈殿緩衝液が、遷移金属イオンをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記遷移金属イオンが亜鉛である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記PEGの濃度が、0.5~10%(w/v)である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年5月13日に出願された米国仮出願第62/336,203号の利益を請求し、その内容は参照により本明細書に組込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、セルフリーDNA(cell-free DNA)、及び/又はセルフリーDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を含む生体液からの細胞外小胞の単離及びセルフリーDNAの同時単離のための完全自動高処理方法のための新規方法及びキット、並びに、セルフリーDNA、及び/又はセルフリーDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を含む生体液からの細胞外小胞の単離及びセルフリーDNAの同時単離のための、フェノール又はクロロホルムの使用を必要としない新規方法及びキット、並びに細胞外小胞及び/又は生物学的サンプルから核酸を抽出するための新規方法及びキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
分子生物学的においては、混合された有機材料、例えば植物、微生物培養物、動物組織及び血液からの純粋な単離分子の調製は、中心的に重要なことである。単離された材料を分析するための下流プロセスは前提条件である。サンプルの単離技法に対する種々のアプローチが存在し、そしてすべてが、あらゆる用途のために同等に適しているわけではない。特に、サンプル材料中の分子が制限され、そして下流のアッセイ技法が高感度であることを目指す場合、抽出技法が最も重要である。これは、ヒト生体液が診断目的を念頭において分析される液体生検の場合である。ここで、サンプル単離における技術進歩は、現行のケア基準に広範且つ多大な影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
ヒト生体液は、細胞及びまた、セルフリーの分子源を含む。セルフリー源は、細胞外小胞、及びその内部に担持される分子(例えば、RNA、DNA、脂質、小代謝物及びタンパク質)及びアポトーシス及び壊死組織に由来する可能性があるセルフリーDNAを含む。各源からの分子の絶対量は低いので(例えば、Bettegowda et al. 2014 Sci Transl Med)、臨床サンプル量から全ての利用可能な分子を同時単離し、多量の出発材料を使用できることが所望される。さらに、低コスト/高スループット抽出のための液体処理装置に基く抽出方法を自動化することが望ましい。
【0005】
従って、同じ体積の生体液からの細胞外小胞及びセルフリーDNAの同時抽出のためのビーズベースの方法、及び医学的状態及び疾患の正確な診断のための高品質の核酸を抽出する方法の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、セルフリーDNA、及び/又はセルフリーDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を含む生体液からの細胞外小胞の単離及びセルフリーDNAの同時単離のための改良された方法のための新規方法及びキットを提供する。一態様によれば、それらの新規方法及びキットは、フェノール又はクロロホルムの使用を必要としない、セルフリーDNA、及び/又はセルフリーDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を含む生体液からの細胞外小胞の自動化された単離及びセルフリーDNAの同時単離を提供する。別の態様では、それらの新規方法及びキットは、フェノール又はクロロホルムの使用を必要としない、セルフリーDNA、及び/又は無細胞DNAセルフリーDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を含む生体流体生体液からの細胞外小胞の単離及び無細胞DNAセルフリーDNAの同時単離を提供する。
【0007】
本開示は、生物学的サンプルからのDNA及びRNAの抽出方法を提供し、ここで前記方法は、(a)生物学的サンプルを提供し;(b)前記生物学的サンプルと、固体捕捉表面とを、前記生物学的サンプルからセルフリーDNA及び微小胞を、前記捕捉表面上又は中に保持するのに十分な条件下で接触させ;そして(c)セルフリーDNA及び微小胞が捕捉表面上又は中にある間、前記捕捉表面とGTCベースの溶出緩衝液とを接触させ、それにより、サンプルからDNA及びRNAを放出し、そしてホモジネートを生成することを含む。
【0008】
本開示はまた、生物学的サンプルからのDNA及びRNAの抽出方法を提供し、ここで前記方法は、(a)生物学的サンプルを提供し;(b)前記生物学的サンプルと、固体捕捉表面とを、前記生物学的サンプルからセルフリーDNA及び微小胞を、前記捕捉表面上又は中に保持するのに十分な条件下で接触させ;(c)セルフリーDNA及び微小胞が捕捉表面上又は中にある間、前記捕捉表面とGTCベースの溶出緩衝液とを接触させ、それにより、サンプルからDNA及びRNAを放出し、そしてホモジネートを生成し;そして(d)前記ホモジネートからDNA、RNA、又はDNA及びRNAの両者を抽出することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、固体捕捉表面はビーズである。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は膜である。いくつかの実施形態によれば、固体捕捉表面は磁性である。いくつかの実施形態によれば、ビーズはイオン交換(IEX)ビーズである。いくつかの実施形態によれば、ビーズは正に荷電している。いくつかの実施形態によれば、ビーズは負に荷電している。いくつかの実施形態によれば、ビーズは第四級アミンにより官能化される。いくつかの実施形態によれば、ビーズは、スルフェート、スルホネート、第三級アミン、任意の他のIEXグループ、及びそれらの任意の組合せにより官能化される。いくつかの実施形態によれば、IEXビーズは、磁性高容量IEXビーズである。いくつかの実施形態によれば、IEXビーズは、強い強磁性高容量ビーズである。いくつかの実施形態によれば、IEXビーズは、強い強磁性、高容量、酸化鉄含有磁性ポリマーである。いくつかの実施形態によれば、IEXビーズは、酸化しやすい液体に曝露される表面を有さない。いくつかの実施形態によれば、IEXビーズは、高い、ビーズ電荷:曝露表面の比を有する。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、血漿、血清又は尿である。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、0.2~20mlである。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは尿サンプルであり、そして前記尿サンプルは初尿(first-catch urine)収集装置を用いて収集される。いくつかの実施形態によれば、初尿収集装置は、EZPZ、Colli-Pee又は他の市販の第1キャッチ((first-catch)収集装置である。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、GTCベースの溶出緩衝液は、変性剤、界面活性剤、緩衝物質及びそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態によれば、GTCベースの溶出緩衝液は、変性剤及び還元剤を含む。いくつかの実施形態によれば、還元剤は、β-メルカプトエタノール(BME)である。いくつかの実施形態によれば、還元剤は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。いくつかの実施形態によれば、還元剤は、DTTである。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)はさらに、ホモジネートからのDNA、RNA、又はDNA及びRNAの両者の抽出の前に、ホモジネートにタンパク質沈殿緩衝液を添加することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)はさらに、酵素消化を含む。いくつかの実施形態によれば、工程(d)はプロテイナーゼ消化を含む。いくつかの実施形態によれば、工程(d)は、固体表面からの材料の前溶出の有無に関わらず行われる。いくつかの実施形態によれば、前記工程は、最適温度、GTC濃度、界面活性剤含量、酵素濃度及び時間で実施される。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)は、プロテイナーゼ、DNアーゼ、RNアーゼ、又はそれらの組合せを用いての消化を含む。いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液は、遷移金属イオン、緩衝剤、又は遷移金属イオン及び緩衝剤の両者を含む。いくつかの実施形態によれば、遷移金属イオンは亜鉛である。いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の続く緩衝液は、下流のアッセイへの遷移イオンの潜在的キャリーオーバーを中和するために、少なくとも1つの物質を含む。いくつかの実施形態によれば、中和物質はキレート化剤である。いくつかの実施形態によれば、中和物質はEDTAである。いくつかの実施形態によれば、二価カチオンの少なくとも1つの追加のキレーターが使用される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液は、3.1~4.1の規定されたpH範囲を有する。いくつかの実施形態によれば、緩衝剤は酢酸ナトリウム(NaAc)である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、工程(a)はさらに、生物学的サンプルを濾過することにより生物学的サンプルを処理することを含む。いくつかの実施形態によれば、濾過は0.8μmのフィルターを用いて実施される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)はさらに、生物学的サンプルと捕捉表面とを接触させた後に、遠心分離工程を含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)がさらに、生物学的サンプルと捕捉表面とを接触させた後に、捕捉表面を洗浄することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、工程(c)がさらに、捕捉表面とGTCベースの溶出緩衝とを接触させた後に、遠心分離工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)がさらに、ホモジネートに核酸対照スパイクイン(nucleic acid control spike-in)を添加することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、シリカカラムへのタンパク質沈殿された溶出液の結合工程(f);及びシリカカラムからの抽出物の溶出工程(h)をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、工程(c)が表面からの無傷の小胞の溶出を含む。いくつかの実施形態によれば、前記方法は、pHの変化を使用する。いくつかの実施形態によれば、前記方法は、イオン強度の変化を使用する。
【0024】
本明細書に提供される実施形態のいずれかによれば、前記方法は、細胞外小胞及び/又はセルフリーDNAの単離のための任意のハイスループット方法への使用のために適合され得る。いくつかの実施形態によれば、すべての工程は、固体捕捉表面として磁性ビーズを用いる。いくつかの実施形態によれば、前記方法はロボット液体処理プラットフォーム上で実施される。いくつかの実施形態によれば、前記方法は、マイクロ流体ポイント・オブ・ケア(point-of-care)装置上で実施される。いくつかの実施形態によれば、オービタルシェーカー又は他の混合装置は、表面に単離物を効果的に結合するために使用される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)は、シリカベースの固体表面を用いることを含む。いくつかの実施形態によれば、固体表面はスピンカラム膜である。いくつかの実施形態によれば、固体表面はビーズである。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)は、ビーズへのEV及びcfDNAの結合を増強するために化学クラウディング剤(chemical crowding agent)を用いることを含む。いくつかの実施形態によれば、化学クラウディング剤として機能する物質は、ポリエチレングリコール(PEG)である。いくつかの実施形態によれば、前記物質は、0.5~10%(W/V)の濃度範囲でのポリエチレングリコールである。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)は、固体表面への小分子RNAの結合を増強するために1又は複数の化学物質を用いることを含む。いくつかの実施形態によれば、前記物質は、最適濃度のイソプロパノール、酢酸ナトリウム及びグリコーゲンから成る。いくつかの実施形態によれば、前記小分子RNAはマイクロRNA(miRNA)である。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)はパート(c)のために使用されたのと同じビーズを用いることを含む。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズは下流アッセイに直接使用される。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)は省略される。いくつかの実施形態によれば、前記固体表面は下流アッセイに直接使用される。いくつかの実施形態によれば、前記下流アッセイは、逆転写、続く定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)である。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、残りの液体量は、非結合血漿成分を分析するために使用される。いくつかの実施形態によれば、前記成分は、Ago2タンパク質結合miRNAである。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)はさらに、ホモジネートのタンパク質成分を単離するために改変される。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、工程(d)は、有機溶媒による抽出を使用しない。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、2つの連続的単離原理が、単離された分子分析物の純度を高めるために使用される。いくつかの実施形態によれば、前記2つの単離原理は、イオン交換及びシリカ精製の固体表面である。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)が、固体捕捉表面の異なる集団を利用する。いくつかの実施形態によれば、固体捕捉表面はサンプル量に連続的に曝露される。いくつかの実施形態によれば、固体捕捉表面は単一工程でサンプル量に曝露される。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)は、カチオンの濃度、アニオンの濃度、界面活性剤、pH、時間及び温度、及びそれらの任意の組合せを含み得る結合条件の最適な組合せを利用する。いくつかの実施形態によれば、塩化ナトリウムの最適濃度は、50~500mMの範囲である。
【0036】
本開示はまた、生物学的サンプルからのDNA及びRNAの抽出方法も提供し、ここで前記方法は、(a)尿サンプルを提供し、ここで前記尿サンプルは初尿収集装置を用いて収集され;(b)前記尿サンプルと、固体捕捉表面とを、前記生物学的サンプルからセルフリーDNA及び微小胞を、前記捕捉表面上又は中に保持するのに十分な条件下で接触させ;そして(c)セルフリーDNA及び微小胞が捕捉表面上又は中にある間、前記捕捉表面とGTCベースの溶出緩衝液とを接触させ、それにより、尿サンプルからDNA及びRNAを放出し、そしてホモジネートを生成することを含む。いくつかの実施形態によれば、前記方法は、ホモジネートからDNA、RNA、又はDNA及びRNAの両者を抽出する工程(d)をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、前記ホモジネートは、下流のアッセイに使用される。いくつかの実施形態によれば、前記固体表面は下流アッセイに直接使用される。いくつかの実施形態によれば、前記下流アッセイは、逆転写、続く定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)である。いくつかの実施形態によれば、前記初尿収集装置は、EZPZ、Colli-Pee、又は他の市販の第一キャッチ収集装置である。
【0037】
本開示はまた、生体液サンプル中のエキソソーム及び細胞外小胞(EV)を単離するための方法も提供し、ここで前記方法は,荷電した捕捉表面を提供し、化学クラウディング剤の存在下で生体液サンプル及び荷電した捕捉表面を接触させ、荷電した捕捉表面へのエキソソーム及びEVの結合を増強することを含む。
【0038】
この方法は、本明細書に記載される任意の捕捉表面、緩衝液、他の試薬及び/又は条件と共に使用され得る。いくつかの実施形態によれば、前記化学クラウディング剤は、ポリエチレングリコール(PEG)である。いくつかの実施形態によれば、前記固体捕捉表面はビーズである。いくつかの実施形態によれば、前記固体捕捉表面はカラム膜である。いくつかの実施形態によれば、前記固体捕捉表面は磁性である。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズはイオン交換(IEX)ビーズである。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズは正に荷電している。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズは負に荷電している。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズは第四級アミンにより官能化される。いくつかの実施形態によれば、前記ビーズは、スルフェート、スルホネート、第三級アミン、任意の他のIEXグループ、及びそれらの任意の組合せにより官能化される。いくつかの実施形態によれば、前記IEXビーズは、磁性高容量IEXビーズである。いくつかの実施形態によれば、前記IEXビーズは、強い強磁性高容量ビーズである。いくつかの実施形態によれば、前記IEXビーズは、強い強磁性、高容量、酸化鉄含有磁性ポリマーである。いくつかの実施形態によれば、前記IEXビーズは、酸化しやすい液体に曝露される表面を有さない。いくつかの実施形態によれば、前記IEXビーズは、高い、ビーズ電荷:曝露表面の比を有する。いくつかの実施形態によれば、前記生物学的サンプルは、血漿、血清又は尿である。いくつかの実施形態によれば、前記生物学的サンプルは、0.2~20mlである。いくつかの実施形態によれば、前記生物学的サンプルは尿であり、そして前記尿サンプルは初尿収集装置を用いて収集される。
【0039】
本発明は、細胞外小胞のビーズベースの抽出及び生体液からのセルフリーDNAの同時抽出のための方法である。本明細書に提供される方法は、例えば多くのサンプルを処理する臨床検査室での日常的使用のためのハイスループット適用を可能にする単離技法の自動化バージョンとして有用である。本明細書に提供される方法は、細胞外小胞及び/又はセルフリーDNAを単離するために、荷電ベースのイオン交換クロマトグラフィー(IEX)を用いる。当業者は、小胞単離のために荷電ベースのIEXを用いる方法は簡単ではなく、そしてすべてのビーズが、細胞外小胞及び/又はセルフリーDNAを都合よく、確実に且つ効果的に単離するのに十分に強いIEXビーズではないことを理解するであろう。
【0040】
セルフリーDNA(cell-free DNA)(cf-DNA)に関しては、大部分、全体積の生体液の溶解、及び続くシリカ膜カラム又はシリカビーズを用いてのDNA抽出に基いて、生体液からの抽出を可能にするいくつかの方法が存在する。生体液からの細胞外小胞(EV)の抽出に関しては、以前の方法論は、小胞の亜集団のみを単離するために抗体に依存するカラム又は沈殿ベースの方法又はビーズベースの方法を有する。しかしながら、同じ体積の生体液から細胞外小胞及びセルフリーDNAのビーズベースの同時抽出の現在の方法は存在しない。
【0041】
本開示の方法は、磁性ビーズを用いて、多量の生体液から、EVを捕捉し、そして濃縮し、そしてセルフリーDNAを同時捕捉するよう設計された反応を提供する。また本開示の方法は、また磁性ビーズに基づいて、単離物の分子含有物を放出し、そして精製する、捕捉の下流の反応を提供する。本開示の方法は、液体ハンドリング機械に容易に適合されるように設計されている。
【0042】
1つの実施形態によれば、単離物からの全てのDNA及びRNAが抽出される。いくつかの実施形態によれば、前記方法は、高容量イオン交換(IEX)磁性ビーズが同じ体積の生体液からEVの単一工程単離及びセルフリーDNAの同時単離のために使用される第1の工程を含む。IEXによるEVのビーズベースの単離に関しては、高容量のIEXマトリックスが必要とされる。セルフリーDNAのみのビーズベースの単離に関しては、低容量で十分であろう。多量の低容量磁性ビーズは、取扱いには実用的ではなく、そして多くの分離時間を要する。本明細書に提供される方法は、設計により高いIEX容量を有し、そしてまた、他のビーズに見られる取扱いの問題なしに、より高いビーズ体積を用いることを可能にする新規タイプの磁性ビーズを利用する。
【0043】
磁性高容量IEXビーズは、EV及びcfDNAの両者を捕捉する。磁性高容量IEXビーズは、EV亜集団のみならず、全てのEVを捕捉する。いくつかの実施形態によれば、必要なら、無傷の小胞が高塩条件によりIEXビーズから溶出される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、小胞枯渇及びcfDNA枯渇上清液は、例えば相補的データ点(例えば、遊離タンパク質含量、タンパク質結合miRNA、等)を作成するために使用され得る。
【0045】
結合及び洗浄緩衝液の化学製剤、インキュベーション時間、ビーズ量及び温度は、単離の成功におけるパラメーターである。
【0046】
EV及びcfDNAの差異的結合は、前記パラメーターを変更することにより達成され得る。
【0047】
大きなIEXビーズは、強力な強磁性材料の使用を可能にし、迅速な分離時間、及び多くの磁性装置及びプラスチック製品のより柔軟な使用を可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、磁性高容量IECビーズに結合された材料が第1反応で溶解され、そして第2反応でNA単離ビーズへの結合のために条件付けされる、第2工程を含む。溶解は、濃縮された強力な変性剤を用いて実施される。条件付けは、溶解物希釈及びプロテイナーゼ消化から成る。プロテイナーゼ消化は、容易に自動化できる工程として、ここでは使用される(フェノール・クロロホルム抽出又はタンパク質沈殿とは対照的に)。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、溶解された核酸が共結合され、洗浄され、そして磁性シリカビーズに溶出される、第3工程を含む。
【0050】
ビーズは、miRNA、mRNA及びDNAを結合する。ビーズは、小量の溶出緩衝液により溶出され得る。
【0051】
1つの実施形態によれば、それらの方法は、生体液から核酸を抽出するために使用され得る。別の実施形態によれば、それらの方法は、無傷の小胞及び循環ヌクレオソームを単離するために使用され得る。別の実施形態によれば、前記方法は、タンパク質、脂質又は他の分子を単離するために使用され得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は、固体捕捉マトリックスの使用を含む。いくつかの実施形態によれば、固体マトリックスは、固体ビーズ集団、多孔性エマルジョン由来のビーズ集団、1又は2以上のゲル、ポリマースラリー、任意の他の適切な固体マトリックスは、又はそれらの組合せである。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、固体捕捉マトリックスは、例えばエキソソーム、セルフリーDNA、又はcfDNA+エキソソームの同時単離などの実体を捕捉するために使用される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、固体捕捉マトリックスは、磁性であり、そして捕捉された実体は、磁性により単離される。いくつかの実施形態によれば、固体捕捉マトリックスは、非磁性であり、そして捕捉された実体は、重力、遠心分離又は濾過により単離される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、固体捕捉マトリックスは、表面修飾される。いくつかの実施形態によれば、固体捕捉マトリックスの表面は、IEX、抗体、受容体-リガンド、及び/又はそれらの組合せにより修飾される。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、捕捉された実体は、無傷の小胞の単離のための非変性、非溶解性の高塩条件により、あるいは、核酸、DNA、RNA、タンパク質及び/又は核酸+タンパク質の下流の単離のための溶解条件により、固体捕捉マトリックスから放出される。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、溶解条件は、非フェノールベースの溶解により、トリ試薬ベースの溶解により、又はそれらの組合せにより達成される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、溶解された溶液からの核酸単離は、磁性シリカビーズ、非磁性シリカビーズ、シリカカラム、又はそれらの組合せにより実施される。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は、シリカ接着からの核酸回収を改善するために、溶解された溶液からのタンパク質除去の工程を含む。いくつかの実施形態によれば、タンパク質除去は、プロテイナーゼ消化、フェノール-クロロホルム抽出、タンパク質沈殿、又はそれらの組合せにより達成される。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は、タンパク質除去の工程を含まない。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は、ZnCl2によるタンパク質沈殿の工程を含む。いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿は、錯化結合による(例えば、EDTAによる)余分なカチオンの除去により達成される。
【0062】
本発明は、DNA及び/又はDNA及びRNAを表面に捕捉し、続いて、微小胞を溶解し、そこに含まれる核酸、特にRNAを放出し、そして捕捉表面からDNA、及び/又はDNA及び少なくともRNAを含む核酸を溶出することにより、サンプルからのセルフリーDNA(「cfDNA」、循環DNAとしても知られている)の単離、及び/又はcfDNA、及び微小胞からのRNAを少なくとも含む核酸の組み合された単離のための方法を提供する。当業者は、微小胞画分がまた、DNAも含むことを理解するであろう。従って、微小胞画分の溶解は、RNA及びDNAの両者を放出する。
【0063】
微小胞画分からのRNAは、例えば疾患組織における生細胞に由来すると思われる。セルフリー(cf)DNAは、死細胞、例えば疾患組織における壊死細胞に由来すると思われる。従って、cfDNAの検出は、治療応答の指標として有用であるが、微小胞からのRNAの検出は、上昇する抵抗性突然変異の指標として有用であり得る。本明細書に提供される方法は、両核酸源を組合せ、そして従って、両機構の分析を可能にするのに有用である。
【0064】
本明細書において提供される方法は、種々の臨床徴候のいずれかに適切である。サンプルからの核酸、例えばcfDNA及び/又はDNA、及びサンプルの微小胞画分からの少なくともRNAを含む核酸を単離し、そして抽出するために使用されるこれまでの手順は、有害物質の使用、例えば核酸抽出の間、別個のフェノール/クロロホルム精製工程に依存した。本明細書に提供される単離及び抽出のための方法及びキットは、それらの欠点を克服し、そして迅速且つ堅牢で、大量に容易に拡張でき、そして有害物質の使用を含まない、単離及び抽出のためのスピンベースのカラムを提供する。
【0065】
さらに、本明細書に提供される方法はまた、種々の生物学的サンプル中の他の非核酸バイオマーカー、例えば微小胞画分からのタンパク質の単離及び抽出を可能にする。単離された核酸と同様に、それらの追加のバイオマーカー、例えば微小胞からのタンパク質は、種々の当技術分野で認識されているアッセイ及び他の技法、例えばqPCR、及び次世代配列決定(NGS)アッセイのいずれかを用いて分析され得る。それらのタンパク質及び/又は核酸バイオマーカーはまた、種々の診断用途のいずれかにおいて有用である。
【0066】
前記方法及びキットは、サンプルから核酸、例えばDNA及び/又はDNA、及び少なくともRNAを含む核酸を単離し、そして抽出する。いくつかの実施形態によれば、前記方法及びキットは、以下の一般的手順を用いて実施される。第1に、サンプル中の核酸、例えばDNA及び/又はDNA及び微小胞画分が、捕捉表面、例えば膜フィルターに結合され、そして捕捉表面が洗浄される。次に、溶出試薬が、膜上の溶解及び核酸、例えばDNA及び/又はDNA及びRNAの放出を実施し、それにより溶出物を形成するために使用される。次に、溶出物が、遷移金属及び緩衝剤を含むタンパク質沈殿緩衝液と接触される。cfDNA及び/又はDNA及び微小胞からのRNAを少なくとも含む核酸は、次に種々の当技術分野で認識されている技法のいずれか、例えばシリカカラムへの結合、続く洗浄及び溶出を用いて、タンパク質沈殿された溶出物から単離される。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、規定の溶液のpHを維持するために、変性剤、界面活性剤、緩衝物質、及び/又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、強変性剤を含む。いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、強変性剤及び還元剤を含む。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、小胞膜を破壊し、ヌクレアーゼを不活性化し、そして固相吸着のためのイオン強度を調節する変性剤であるグアニジンチオシアネート(GTC)を含む。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、微小胞膜の破壊を助け、そして捕捉表面からのバイオマーカーの効果的溶出を支持するために、界面活性剤、例えばTween、TritonX-100、等を含む。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、分子内ジスルフィド結合Cys-Cysを還元し、そして溶出液に存在する変性タンパク質、特にRNアーゼを助けるために、還元剤、例えばβメルカプトエタノール(BME)を含む。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、GTC、界面活性剤、及び還元剤を含む。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液中の遷移金属イオンは、亜鉛である。いくつかの実施形態によれば、亜鉛は、塩化亜鉛としてタンパク質沈殿緩衝液に存在する。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝中の緩衝剤は、酢酸ナトリウム(NaAc)である。いくつかの実施形態によれば、緩衝剤は、pH≦6.0でのNaAcである。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液は、pH≦6.0での塩化亜鉛及びNaAc緩衝剤を含む。
【0075】
本明細書において提供される方法及びキットに使用される膜は、大きな孔を有し、そして正に荷電している。いくつかの実施形態によれば、2以上の膜が前記方法及びキットに使用され、例えば複数の膜が使用される。いくつかの実施形態によれば、3つの膜が使用される。前記方法及びキットに使用される膜の数は、一度に分析され得るサンプルの総量と相関する。いくつかの実施形態によれば、約1mlのサンプルが、前記方法及びキットに使用される膜の各層のために処理される。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、膜は正に荷電した膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、アニオン交換体である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、第四級アミンを有するアニオン交換体である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、正に荷電した膜であり、そして第四級アミンを有するアニオン交換体であるQ膜である。例えば、Q膜は、第四級アンモニウムR-CH2-N+(CH3)により官能化される。いくつかの実施形態によれば、前記膜は、少なくとも3μmである孔サイズを有する。
【0077】
微小胞画分を含むサンプルの精製は、イオン交換技法を用いて実施される。いくつかの実施形態によれば、イオン交換技法は、本明細書に提供される実施例に示されるものから選択された技法である。
【0078】
本明細書に提供される方法は、(i)細胞外小胞の効果的な溶解及び放出される核酸の溶出を少なくとも可能にし;そして(ii)ヌクレアーゼ、例えばRNアーゼを効果的に阻害し;そして(iii)固相、例えばシリカ膜への溶出された核酸の効果的吸収を可能にするのに十分であるイオン強度のものである溶出緩衝液組成物を用いての核酸及び/又はタンパク質バイオマーカーの効果的溶出を提供する。
【0079】
一態様によれば、生物学的サンプルから核酸を抽出するための方法は、(a)生物学的サンプルを提供し;(b)前記生物学的サンプルと、捕捉表面とを、捕捉表面上又は中に微小胞画分を保持するのに十分な条件下で接触させ;(c)微小胞が捕捉表面上又は中にある間、微小画分を溶解し;そして(d)微小胞画分から核酸を抽出することを含む。代替的に、生物学的サンプルから核酸を抽出するための方法はさらに、工程(b)の後に、捕捉表面から微小胞画分を溶出し、溶出された微小胞画分を収集し、そして溶出された微小胞表面から核酸を抽出することを含む。任意には、溶出された微小胞画分は、回転濃縮機により濃縮され、そして続いて、核酸が、濃縮された微小胞画分から抽出される。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は膜である。一態様によれば、膜は再生セルロースを含む。例えば、膜は、3~5μmの範囲の孔サイズを有する。別の態様によれば、膜は、ポリエーテルスルホン(PES)を含む。例えば、膜は、20nm~0.8μmの範囲の孔サイズを有する。別の態様によれば、膜は正に荷電している。
【0081】
いくつかの態様によれば、膜は官能化される。例えば、膜は第4アンモニウムR-CH2-N+(CH3)3により官能化される。
【0082】
1つの実施形態によれば、捕捉表面は2つ以上の膜を含む。いくつかの態様によれば、捕捉表面は、少なくとも2つの膜を含み、ここで各膜は接近して他の膜の隣にある。1つの実施形態によれば、捕捉表面は、少なくとも3つの膜を含み、ここで3つの膜の個々は互いに直接的に隣接している。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、少なくとも4つの膜を含み、ここで4つの膜の個々は互いに直接的に隣接している。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、捕捉表面はビーズである。例えば、ビーズは磁性である。代替的に、ビーズは非磁性である。さらに別の実施形態によれば、ビーズは親和性リガンドにより官能化される。
【0084】
本明細書に記載される方法は、微小胞からの核酸の抽出を提供する。いくつかの実施形態によれば、抽出された核酸は、DNA、及び/又はDNA及びRNAである。抽出されたRNAは、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、トランスファーRNA、又は小分子RNA、例えばマイクロRNA、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0085】
種々の核酸配列決定技法が、生物学的サンプルからの核酸、例えばセルフリーDNA及び/又は微小胞画分から抽出されたRNAを検出し、そして分析するために使用される。核酸、例えば診察目的のために微小胞から抽出されたセルフリーDNA及び/又は核酸の分析は、微小胞が容易に収集され得る非侵襲的性質のために広範囲な意味を有する。侵襲的組織生検の変わりに微小胞分析の使用は、患者の福祉に効果的に影響し、縦方向の患者モニタリングを行う能力を改善し、そして組織細胞が容易にアクセスできない場合でさえ、発現プロフィールを得る能力を改善するであろう(例えば、卵巣癌又は脳患者において)。
【0086】
生物学的サンプルは、体液である。体液は、対象の体のどこからでも、例えば末梢位置から単離された流体、例えば以下であり得るが、但しそれらだけには限定されない:血液、血漿、血清、尿、痰、脊髄液、脳脊髄液、胸膜液、乳頭吸引液、リンパ液、呼吸器系、腸系及び尿生殖器系の流体、涙液、唾液、母乳、リンパ系からの流体、精液、脳脊髄液、臓器内臓器液、腹水、腫瘍嚢液、羊水、及びそれらの組合せ。例えば、体液は、尿、血液、血清、又は脳脊髄液である。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、血漿である。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、血清である。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、尿である。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、脳脊髄液である。いくつかの実施形態によれば、生物額的サンプルは、細胞培養上清液である。
【0088】
適切には、約0.1ml~約30mlの流体のサンプル体積が使用され得る。流体の体積は、いくつかの因子、例えば使用される流体のタイプに依存する。例えば、血清サンプルの体積は、約0.1ml~約4ml、例えば約0.2ml~4mlである。血漿サンプルの体積は、約0.1ml~約4ml、例えば0.5ml~4mlである。尿サンプルの体積は、約10ml~約30ml、例えば約20mlであり得る。
【0089】
いくつかの態様によれば、本明細書に記載される方法はさらに、生物学的サンプルと、負荷緩衝液とを接触することを含む。負荷緩衝液は、pH4~8の範囲である。一態様によれば、負荷緩衝液は、中性pHを有する。
【0090】
前述の方法のいずれかによれば、核酸は、DNA、及び/又はDNA及びRNAである。RNAの例は、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボソームRNA、小分子RNA(非タンパク質コードRNA、非メッセンジャーRNA)、マイクロRNA、piRNA、exRNA、snRNA及びsnoRNAを含む。
【0091】
前述の方法のいずれかによれば、核酸は、サンプルの微小胞画分から単離されたRNAを含むサンプルから単離されるか、又は代替的に、そのサンプルに由来する。
【0092】
前述の方法のいずれかによれば、核酸は、循環核酸としても本明細書においては言及されているセルフリー核酸である。いくつかの実施形態によれば、セルフリー核酸は、DNA又はRNAである。
【0093】
本発明の様々な態様及び実施形態について詳細に説明する。 本発明の範囲から逸脱することなく、細部の修正を行うことができることが理解されよう。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0094】
同定された全ての特許、特許出願及び刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載された方法論を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。 この点に関して、発明者が先の発明のおかげで、又は他の何らかの理由で、そのような開示よりも先行する資格がないという承認として解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表現に関するすべての記述は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性についての承認を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】
図1は、サンプルからDNA及びRNAを単離する本開示の方法のワークフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、DNA及び微小胞を表面に捕捉し、続いて微小胞を溶解し、そこに含まれている核酸、特にRNAを放出し、そして捕捉表面からDNA、及び/又はDNA及び少なくともRNAを含む核酸を溶出することにより、セルフリーDNA(cfDNA)、及び/又はcfDNA及び微小胞からの少なくともRNAを含む核酸を単離するための方法を提供する。微小胞は、真核細胞により細胞外に放出されるか、又は原形質膜から細胞外に出芽する。それらの膜小胞は、約10nm~約5000nmの範囲の直径を有する不均一なサイズである。直径が0.8μm未満の細胞により放出される膜小胞は、本明細書において集合的に「微小胞」と呼ばれる。それらの微小胞は、微小胞、微小胞様粒子、プロスタソーム、デキソソーム、テキソソーム、エクトソーム、オンコソーム、アポトーシス小体、レトロウィルス様粒子、及びヒト内因性レトロウィルス(HERV)粒子を包含する。細胞内多小胞体のエキソサイトーシスにより放出される小微小胞(約10~1000nm、及びよりしばしば、30~200nmの直径)は、「微小胞」として当業界においては呼ばれている。
【0097】
前記方法及びキットは、以下の一般的手順を用いて、サンプルから核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及び少なくともRNAを含む核酸を単離し、そして抽出する。第1にサンプル中の核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及び微小胞画分が、捕捉表面、例えば膜フィルターに結合され、そして捕捉表面が洗浄される。次に、溶出試薬を用いて、核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及びRNAを膜上で溶解し、そして放出し、それにより、溶出液を形成する。次に、溶出液が、遷移金属及び緩衝剤を含むタンパク質沈殿緩衝液と接触される。次にcfDNA、及び/又はDNA及び微小胞からのRNAを少なくとも含む核酸が、例えばシリカカラムに結合し、続いて洗浄及び溶出するなどの種々の当業界において認識されている技法のいずれかを用いて、タンパク質沈殿溶出液から単離される。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、規定の溶出pHを維持するために、変性剤、界面活性剤、緩衝物質、及び/又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、強変性剤を含む。いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、強変性剤及び還元剤を含む。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、小胞膜を破壊し、ヌクレアーゼを不活性化し、そして固相吸着のためにイオン強度を調節する変性剤であるグアニジンチオシアネート(GTC)を含む。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、微小胞膜の破壊を助け、そして捕捉表面からのバイオマーカーの効果的溶出を支持するために、界面活性剤、例えばTween,TritonX-100、等を含む。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、分子内ジスルフィド結合Cys-Cysを還元し、そして溶出液中のタンパク質、特にRNアーゼの変性を助けるために、還元剤、例えばβ-メルカプトエタノール(BME)を含む。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、溶出緩衝液は、GTC、界面活性剤、及び還元剤を含む。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液中の遷移金属イオンは、亜鉛である。いくつかの実施形態によれば、亜鉛は、塩化亜鉛としてタンパク質沈殿緩衝液に依存する。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝中の緩衝剤は、酢酸ナトリウム(NaAc)である。いくつかの実施形態によれば、緩衝剤は、pH≦6.0でのNaAcである。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質沈殿緩衝液は、pH≦6.0での塩化亜鉛及びNaAc緩衝剤を含む。
【0106】
DNA、及び/又はDNA、及び小胞からの少なくともRNAを含む核酸を単離する現方法は、有害物質、超遠心分離、例えば100kDのフィルターを用いての限外濾過、ポリマー沈殿技法、及び/又はサイズに基く濾過を含む。しかしながら、微小胞を単離し、そして任意には、診断目的を含む種々の用途への使用のために、その微小胞に含まれる核酸、例えば、いくつかの実施形態によれば、微小胞RNAを抽出するために効率的且つ有効であるほかの方法の必要性がある。
【0107】
本明細書に提供される単離及び抽出方法及び/又はキットは、セルフリーDNA及び/又は微小胞を結合する親和性膜を用いてのスピンスピンカラムベースの精製工程を使用する。本開示の方法及びキットは、単一カラムで0.2~4mlまでの体積を使用して、多数の臨床サンプルを並行して実行する能力を可能にする。本明細書に提供される手順を用いて単離されたセルフリーDNAは、非常に純粋である。単離されたRNAは、非常に純粋であり、溶解まで小胞膜により保護され、そして、無傷の小胞が膜から溶出し得る。その手順は、実質的に全てのセルフリーDNAを血漿インプットから枯渇させ、そして、DNA収量において、市販のキット及び/又は以前の単離方法と比較して等しいか、又はそれ以上である。その手順は、実質的に全てのセルフリーmRNAを血漿インプットから枯渇させ、そして超遠心分離又は直接的溶解に比較して、mRNA/miRNA収量において、等しいか、又はそれ以上である。市販のキット及び/又は以前の単離方法と比較して、本方法及び/キットは、miRNAの微小胞結合画分を富化し、そしてそれらは、多量のインプット材料に容易に拡張できる。この拡張能力は、興味ある、低い量の転写物の研究を可能にする。他の市販されている製品と比較して、本開示の方法及びキットは、本明細書に提供される実施例により実証されるユニークな能力を提供する。
【0108】
この方法及びキットは、以下の一般的手順を用いて、生物学的サンプルからの核酸、例えばDNA、及び/又はDNA、及び少なくともRNAを含む核酸を単離し、そして抽出する。第1に、cfDNA及び微小画分を含むサンプルが、膜フィルターに結合され、そしてフィルターが洗浄される。次に、GTCベースの試薬を用いて、核酸、例えばDNA、及び又はDNA及びRNAの膜上溶解及び放出を実施する。次に、タンパク質沈殿が実施される。次に、核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及びRNAが、シリカカラムに結合され、洗浄され、そして次に、溶出される。次に、抽出された核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及びRNAが例えば、種々の下流アッセイのいずれかを用いて、分析され得る。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は以下の工程を含む。フィルターは、スピンカラムに含まれる。溶解試薬の添加の前に、サンプルは、スピンカラム中の膜フィルターに結合され、そして次に、スピンカラムが約500xgで1分間、回転される。次に、フロースルーが廃棄され、緩衝液がスピンカラムに添加され、そしてスピンカラムが約5000xgで5分間、再び回転され、カラム残留容量が除去される。フロースルーは、この第2の回転の後に、廃棄される。次に、スピンカラムが、GTCベースの溶解試薬と接触され、そして約5000xgで5分間、回転され、溶解された微小胞及び捕捉されたcfDNAを含むホモジネートが集められる。いくつかの実施形態によれば、溶解緩衝液は、GTCベースの溶解緩衝液である。次に、ホモジネートが核酸単離及び抽出の対象とされる。いくつかの実施形態によれば、RNA単離効率のための対照、例えばQ-ベータ又は本明細書に記載される他の任意の対照が、核酸単離及び、抽出の前に、ホモジネートにスパイクインされる。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、核酸は、以下の工程に従って単離される。溶解試薬の添加の後に、タンパク質沈殿緩衝液がホモジネートに添加され、そしてその溶液が、短時間、激しく混合される。次に、その溶液が12,000xgで室温で3分間、遠心分離される。次に、その溶液は、核酸の単離及び/又は抽出のための種々の当業界において認識されている方法のいずれかを用いて処理され得る。
【0111】
次に、単離された核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及びRNAは、種々の下流アッセイのいずれかを用いて、さらなる分析の対象となり得る。いくつかの実施形態によれば、DNA及びRNAの組合わされた検出は、実行可能な突然変異の感度を高めるために用いられる。循環核酸中に検出可能な突然変異の複数の潜在源が存在する。例えば、生存腫瘍細胞は、サンプルの微小胞画分から単離されたRNA及びDNAのための潜在源であり、そして死亡腫瘍細胞は、アポトーシス小胞DNA及び壊死腫瘍細胞からのセルフリーDNAなどのセルフリーDNA源のための潜在源である。突然変異した核酸は循環において比較的まれであるので、検出感度の最大化が非常に重要になる。DNA及びRNAの組合わされた単離は、疾患の進行及び治療に対する患者の応答を評価するための包括的な臨床情報を提供する。しかしながら、本明細書に提供される方法及びキットとは対照的に、循環核酸を検出するための市販のキットは、血漿から、すなわち死細胞からのcDNAを単離できるに過ぎない。当業者は、突然変異又は他のバイオマーカーのより多くのコピーが、突然変異及び他のバイオマーカーの同定において高められた感度及び正確性を導くことを理解するであろう。
【0112】
本開示の方法は、血漿サンプルから全DNAを単離するために使用され得る。本開示の方法は、同じサンプル体積に対して同様のレベルでRNA及びDNAを分離し、そしてRNA及びDNAは互い分離され得る。本開示のそれらの方法は、市販の単離キットと同じか又はより多くのセルフリーDNA(cfDNA)、同じか又は多くのmRNA、及びより多くのmRNAを捕捉する。
【0113】
本開示の方法はまた、RNA及びDNAの同時精製のためにも使用され得る。本開示の方法(また、本明細書においては、手順(procedures)とも呼ばれる)は、0.2~4mlの血漿又は血清を用いて、エキソソーム及び他の微小胞からRNA及びDNAを単離するために使用され得る。適合できる血漿管のリストは、添加物EDTA、クエン酸ナトリウム、及びクエン酸塩-リン酸塩-デキストロースを含む血漿を含む。ヘパリンを含む血漿は、RT-qPCRを阻害し得る。
【0114】
次に、単独での又は結合緩衝液により希釈されたサンプルが、捕捉膜を有するスピンカラム上に負荷され、そして500xgで1分間、回転される。フロースルーが廃棄され、そして次に、カラムが同じ収集管中に戻される。次に、洗浄緩衝液が添加され、そしてカラムが5000xgで5分間、回転され、カラムから残質容積を除去する。注:遠心分離の後に、スピンカラムは、カラムがフロースルーと接触しないよう、収集管から除かれる。次に、スピンカラムは、新鮮な収集管に移され、そしてGTCベースの溶出緩衝液が膜に添加される。次に、スピンカラムが5000xgで5分間、回転され、溶解されたエキソソームを含むホモジネートが収集される。次に、タンパク質沈殿が行われる。
【0115】
本明細書に提供される方法は、生物学的サンプルからDNAを単離し、そして検出するために有用である。小胞RNAは、例えば疾患組織における生細胞に由来すると思われる。セルフリーDNA(cfDNA)は、疾患組織における死細胞、例えば壊死細胞に由来すると思われる。従って、cfDNAは、治療応答のための指標として有用であり、そしてRNAは上昇する抵抗性変異の指標である。
【0116】
本明細書に提供される方法は、十分な量の核酸上に適用され得る十分に感受性の方法を提供するので、血液における希な突然変異の検出のために有用である。生体液中の実際のDNA及びRNA分子の量は、非常に限定され、そしてその方法は、効果的な下流処理及び/又は分析のために十分に小さな体積で、突然変異検出に関連する血液の全ての分子を抽出する単離方法を提供する。
【0117】
本明細書において使用される場合、用語「核酸」とは、DNA及びRNAを言及する。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。場合によっては、核酸はDNAである。場合によっては、核酸は、RNAである。RNAは、以下を包含するが、但しそれらだけには限定されない:メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボソームRNA、非コードRNA、マイクロRNA、及びHERV要素。
【0118】
本明細書において使用される場合、用語「生物学的サンプル」とは、生物学的材料、例えばDNA、RNA及びタンパク質を含むサンプルを言及する。
【0119】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、対象由来の体液を適切に含むことができる。体液は、対象の体のどこからでも、例えば末梢位置から単離された流体、例えば以下であるが、但しそれらだけには限定されない:血液、血漿、血清、尿、痰、脊髄液、脳脊髄液、胸膜液、乳頭吸引液、リンパ液、呼吸器系、腸系及び尿生殖器系の流体、涙液、唾液、母乳、リンパ系からの流体、精液、臓器内臓器液、腹水、腫瘍嚢液、羊水、及び細胞培養上清液、及びそれらの組合せ。生物学的サンプルはまた、糞又は便サンプル、又はそれから単離された上清液も含むことができる。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、適切には、細胞培養上清液を含むことができる。
【0121】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、対象由来の組織サンプルを適切に含むことができる。組織サンプルは、対象の体内のどこからでも単離され得る。
【0122】
体液の適切なサンプル体積は、例えば約0.1ml~約30ml流体の範囲にある。流体の体積は、いくつかの因子、例えば使用される流体タイプに依存する。例えば、血清サンプルの体積は、約0.1ml~約4ml、例えば、いくつかの実施形態によれば、約0.2ml~4mlであり得る。血漿サンプルの体積は、約0.1ml~約4ml、例えば、いくつかの実施形態によれば、0.5ml~4mlである。尿サンプルの量は、約10ml~約30ml、例えば、いくつかの実施形態によれば、約20mlであり得る。
【0123】
本明細書に提供される実施例は血漿サンプルを使用するが、当業者は、それらの方法が種々の生物学的サンプルに適用できることを理解するであろう。
【0124】
本開示の方法及びキットは、ヒト対象由来のサンプルでの使用に適切である。本開示の方法及びキットは、ヒト対象由来のサンプルでの使用に適切である。さらに、本開示の方法及びキットは、ヒト対象由来のサンプルでの使用にも適切である。本開示の方法及びキットは、非ヒト対象、例えば齧歯類、非ヒト霊長類、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ、ウマ)及び/又は家畜(例えば、ニワトリ)由来のサンプルでの使用に適切である。
【0125】
用語「対象(subject)」とは、核酸含有粒子を有することが示されているか、又は予測される全ての動物を含むことが意図される。特定の実施形態によれば、対象は、哺乳類、ヒト又は非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、他の家畜、又は齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、等)である。ヒト対象は、観察できる異常性、例えば疾患を有さない正常なヒトであり得る。ヒト対象は、観察できる異常性、例えば疾患を有するヒトであり得る。観察できる異常性は、ヒト自身により、又は医療従事者により観察され得る。用語「対象、」、「患者」及び「個体」は、本明細書では互換的に使用される。
【0126】
本明細書において提供される実施例は、捕捉表面として膜を使用するが、捕捉表面のフォーマット、例えばビーズ又はフィルター(本明細書においては、膜とも呼ばれる)は、生物学的サンプルからの微小胞を効率的に捕捉する、本明細書に提供される方法の能力に影響を及ぼさないことが理解されるべきである。
【0127】
広範囲の表面が、本明細書に提供される方法に従って微小胞を捕捉することができるが、しかし全ての表面が微小胞を捕捉するわけではない(一部の表面は何も捕捉しない)。
【0128】
本開示はまた、使い捨てプラスチック部品及び遠心分離装置を用いて、生物学的又は臨床サンプルから微小胞を単離し、そして濃縮するための装置も記載する。例えば、装置は、捕捉表面(すなわち、膜フィルター)を含むカラム、捕捉表面を外側フリットと内側管との間に固定するホルダー、及び収集管を含む。外側フリットは、液体の通過を可能にするために大きなネット構造を含み、そして好ましくは、カラムの一端にある。内側管は、捕捉表面を定位置に保持し、そして好ましくは、わずかに円錐形である。収集管は、市販されており、すなわち50mlのファルコン管であり得る。カラムは、好ましくは、回転するのに適切であり、すなわちそのサイズは、標準的な遠心分離機及びマイクロ遠心分離機と適合できる。
【0129】
捕捉表面が膜である実施形態によれば、生物学的サンプルから微小胞画分を単離するための装置は、少なくとも1つの膜を含む。いくつかの実施形態によれば、その装置は、1、2、3、4、5又は6つの膜を含む。いくつかの実施形態によれば、その装置は3つの膜を含む。装置が2つ以上の膜を含む実施形態によれば、膜は全て、カラムの一端で互いに直接隣接している。装置が2つ以上の膜を含む実施形態によれば、膜は全て、互いに同一であり、すなわち同じ荷電のものであり、そして/又は同じ官能基を有する。
【0130】
微小胞よりも小さな孔サイズを通しての濾過による捕捉は、本明細書に提供される方法による捕捉の主要メカニズムではないことが注目されるべきである。しかしながら、それにもかかわらず、フィルター孔サイズは非常に重要である。なぜならば、例えばmRNAは20nmのフィルター上に付着して回収できないが、マイクロRNAは容易に溶出され得、そしてフィルター孔サイズは、利用可能な表面捕捉領域における重要なパラメーターであるからである。
【0131】
本明細書に提供される方法は、種々の捕捉表面のいずれかを使用する。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、フィルター又は膜フィルターとしても本明細書において呼ばれる膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、市販の膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、荷電した市販の膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉膜は中性である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、以下から選択される: PALL CorporationからのMustang(登録商標)イオン交換膜; Sartorius AGからのVivapure(登録商標)Q膜; Sartobind Q、又はVivapure(登録商標)Q Maxi H; Sartorius AGからのSartobind(登録商標)D;Sartorius AGからのSartobind(S);Sartorius AGからのSartobind(登録商標)Q;Sartorius AGからのSartobind(登録商標)IDA;Sartorius AGからのSartobind(登録商標)Aldehyde;SigmaからのWhatman(登録商標)DE81;EMD Milliporeからのファストトラップウイルスの精製カラム ; Thermo Scientific * Pierce 強力なカチオンおよびアニオン交換スピンカラム。
【0132】
捕捉表面が荷電している実施形態によれば、捕捉表面は、0.65μmの正の荷電したQ PES真空濾過(Millipore)、3~5umの正に荷電したQ RCスピンカラム濾過(Sartorius)、0.8μm正に荷電したQ PES自製スピンカラム濾過(Pall)、0.8μm正に荷電したQ PES注射器濾過(Pall)、0.8μm負に荷電したS PES自家製スピンカラム濾過(Pall)、0.8μの負に荷電したSES注射器濾過(Pall)、及び50nmの負に荷電したナイロン注射器濾過(Sterlitech)からなる群から選択された荷電したフィルターであり得る。いくつかの実施形態によれば、核酸がフィルターから出るのをより困難にし得るので、荷電したフィルターは、注射器濾過装置に収容されない。いくつかの実施形態によれば、荷電したフィルターは、カラムの一端で収容される。
【0133】
捕捉表面が膜である実施形態によれば、膜は種々の適切な材料から製造され得る。いくつかの実施形態によれば、膜は、ポリエーテルスルホン(PES)(例えば、Millipore 又は PALL Corp.からの)である。いくつかの実施形態によれば、膜は、再生セルロース(RC)(例えば、Sartorius 又は Pierceからの)である。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、正の荷電した膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、正に荷電した膜であり、そして第四級アミンを有するアニオン交換体であるQ膜である。例えば、Q膜は、第四級アンモニウム(R-CH2-N+(CH3)3)により官能化される。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、負に荷電した膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、負に電化された膜であり、そしてスルホン酸基を有するカチオン交換体であるS膜である。例えば、S膜は、スルホン酸(R-CH2-SO3-)により官能される。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、ジエチルアミン基R-CH2-NH+(C2H5)2を有する弱塩基性アニオン交換体であるD膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、金属キレート膜である。例えば、膜は、イミノジ酢酸-N(CH2COOH-)2により官能化されたIDA膜である。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、アルデヒド基-CHOにより官能化された微多孔性膜である。他の実施形態によれば、膜は、ジエチルアミノエチルセルロースを有する弱塩基性アニオン交換体である。全ての荷電した膜が本明細書に提供される方法への使用のために適切であるわけではなく、例えばSartorius Vivapure S膜スピンカラムを用いて単離されたRNAはRT-qPCR阻害を示し、そして従ってPCR関連の下流アッセイのためには不適切である。
【0135】
捕捉表面が荷電している実施形態によれば、微小胞は、正に荷電したフィルターにより単離され得る。
【0136】
捕捉表面が荷電している実施形態によれば、微小胞捕捉の間のpHは、pH≦7である。いくつかの実施形態によれば、pHは、4よりも大きく、8以下である。
【0137】
捕捉表面が正に荷電したQフィルターである実施形態によれば、緩衝液系は、pH6.5-7.0での250mMのビストリスプロパンを含む洗浄緩衝液を含む。捕捉表面が正に荷電したQフィルターである実施形態によれば、溶解緩衝液は、GTCベースの試薬である。捕捉表面が正に荷電したQフィルターである実施形態によれば、溶解緩衝液は、1容量で存在する。捕捉表面が正に荷電したQフィルターである実施形態によれば、溶解緩衝液は2つ以上の容量で存在する。
【0138】
膜材料に依存して、膜の孔サイズは、3μm~20nmの範囲である。
【0139】
捕捉表面の表面電荷は、陽性、陰性又は中性であり得る。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、正に荷電したビーズである。
【0140】
本明細書に提供される方法は、溶解試薬を含む。いくつかの実施形態によれば、膜上溶解のために使用される剤は、GTCベースの試薬である。いくつかの実施形態によれば、溶解試薬は、高塩ベースの緩衝液である。
【0141】
本明細書に提供される方法は、負荷及び洗浄緩衝液を含む種々の緩衝液を含む。負荷及び洗浄緩衝液は、高いか又は低いイオン強度のものであり得る。塩濃度、例えばNaCl濃度は、0~2.4Mであり得る。緩衝液は、種々の成分を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、緩衝液は、1又は2以上の以下の成分を含む:トリス、ビス - トリス、ビス - トリス - プロパン、イミダゾール、クエン酸塩、メチルマロン酸、酢酸、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン(TEA)及びリン酸ナトリウム。本明細書に提供される方法においては、負荷及び洗浄緩衝液のpHは重要である。フィルターは、負荷の前、血漿サンプルが、pH≦5.5に設定される場合(血漿はカラムを通してまったく回転しない)、詰まる傾向があり、そしてより高いpHで、微小胞RNA回収率は、微小胞の不安定性のために低い。中性pHで、微小胞からのRNA回収率は最適である。いくつかの実施形態によれば、使用される緩衝液は、1倍濃度、2倍濃度、3倍濃度又は4倍濃度である。例えば、負荷又は結合緩衝液は、2倍濃度であり、一方、洗浄緩衝液は1倍濃度である。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、前記方法は、例えば生物学的サンプルと捕捉表面とを接触させた後に、1又は2以上の洗浄工程を含む。いくつかの実施形態によれば、界面活性剤が、洗浄緩衝液に添加され、非特異的結合(すなわち、夾雑物、細胞残屑、及び循環タンパク質複合体又は核酸)の除去が促進され、より純粋な微小胞画分が得られる。使用のために適切な界面活性剤は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Tween-20、Tween-80、Triton X-100、Nonidet P-40(NP-40)、Brij-35、Brij-58、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS又はCHAPSO。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、捕捉表面、例えば膜は、遠心分離、例えばスピンカラム、又は真空システム、例えば真空フィルターホルダー、又は圧力を伴っての濾過、例えば注射器フィルターのために使用される装置内に収容される。いくつかの実施形態によれば、捕捉表面は、スピンカラム又は真空システムに収容される。
【0144】
核酸の抽出の前の、生物学的サンプルからの微小胞の単離は、以下の理由により有利である:1)微小胞からの核酸の抽出は、流体サンプル内の他の微小胞とは別に疾患又は腫瘍特異的微小胞を単離することにより得られる疾患又は腫瘍特異的核酸を選択的に分析する機会を提供し;2)核酸含有微小胞は、最初に微小胞を単離しないで流体サンプルから直接的に核酸を抽出することにより得られる収率/完全性と比較して、より高い完全性を有する核酸種の有意に高い収率を産生し;3)スケーラビリティ、例えば低レベルで発現される核酸を検出するために、感度が、本明細書に記載される方法を用いて、より大きな体積のサンプルから微小胞を濃縮することにより高められ得;4)タンパク質、脂質、細胞残屑、細胞及び他の潜在的な夾雑物、及び生物学的サンプル内に天然において見出されるPCRインヒビターが、核酸抽出工程の前に排除されるという点で、抽出された核酸のより純粋な又はより高品質/完全性が得られ;そして5)核酸抽出方法の選択肢の利用拡大により、単離された微小胞画分は出発サンプルの体積よりも小さな体積のものであるので、より多くの核酸抽出方法の選択肢を利用することができ、小さな体積のカラムフィルターを用いて、それらの画分又はペレットからの核酸の抽出を可能にする。
【0145】
生物学的サンプルから微小胞を単離するためのいくつかの方法が、当核分野において記載されている。例えば、分画遠心分離の方法は、Raposo et. al.(Raposo et al., 1996)による論文、Skog et. al.(Skog et al., 2008) による論文及びNilsson et. al. (Nilsson et al., 2009)による論文に記載されている。イオン交換及び/又はゲル浸透クロマトグラフィーの方法は、米国特許第6,899,863号及び第6,812,023号に記載されている。ショ糖密度勾配法又はオルガネラ電気泳動は、米国特許第7,198,923号に記載されている。磁性活性化されたセルソーティング(MACS)の方法は、Taylor and Gercel Taylor (Taylor and Gercel-Taylor, 2008)の論文に記載されている。ナノ膜限外濾過濃縮の方法は、Cheruvanky et al. (Cheruvanky et al., 2007)による論文に記載されている。Percoll勾配単離の方法はMiranda et al. (Miranda et al., 2010)による出版物に記載されている。さらに、微小胞は、微小流体装置(Chen et al., 2010)により、対象の体液から同定され、そして単離され得る。核酸バイオマーカーの研究開発、及び商業的応用において、生物学的サンプルから高品質の核酸を、一貫して、信頼でき、そして実用的な態様で抽出することが所望される。
【0146】
従って、本発明の目的は、生物学的サンプル、例えば体液から核酸含有粒子の迅速且つ容易な単離、並びに単離された粒子からの高品質の核酸の抽出のための方法を提供することである。本発明の方法は、実験室又は臨床施設、又は現場での使用のためのコンパクト装置又は器具への適応及び組込みのために適切であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、サンプルは、生物学的サンプルからの核酸、例えばDNA、及び/又はDNA及びRNAの単離及び抽出の前に、前処理されていない。
【0148】
いくつかの実施形態によれば、サンプルは、生物学的サンプルに存在する大きな所望しない粒子、細胞及び/又は細胞残屑、及び他の夾雑物を除去するために、微小胞の単離、精製又は富化の前に、前処理工程に供される。前処理工程は、1又は2以上の遠心分離工程(例えば、分画遠心分離)又は1又は2以上の濾過工程(例えば、限外濾過)、又はそれらの組合せを通して達成され得る。2つ以上の遠心分離前処理工程が実施される場合、生物学的サンプルは、まず低速度で遠心分離され、そして次に、より早い速度で遠心分離され得る。所望により、さらなる適切な遠心分離前処理が行われ得る。代替的に代替的に、又は1又は2以上の遠心分離前処理工程に加えて、生物学的サンプルは濾過され得る。例えば生物学的サンプルはまず、20,000gで1時間、遠心分離され、大きな所望しない粒子が除去され、次に、サンプルが例えば、0.8μmのフィルターを通して濾過され得る。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、サンプルは、前もって濾過され、0.8μmよりも大きな粒子が排除される。いくつかの実施形態によれば、サンプルは、添加剤、例えばEDTA、クエン酸ナトリウム及び/又はクエン酸塩-リン酸塩-デキストロースを含む。いくつかの実施形態によれば、サンプルはヘパリンを含まない。なぜならば、ヘパリンはRT-qPCR及び他の核酸分析に悪影響を及ぼすからである。いくつかの実施形態によれば、サンプルは、精製及び/又は核酸単離及び/又は抽出の前に、緩衝液と混合される。いくつかの実施形態によれば、緩衝液は、結合緩衝液である。
【0150】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の遠心分離工程が、生物学的画分から微小胞を分離し、そして単離された微小胞を濃縮するために、生物学的サンプルと、捕捉表面とを接触する前又は後に、実施される。例えば、サンプルは、20,000gで4℃で1時間、遠心分離される。所望しない大きな粒子、細胞及び/又は細胞残屑を除去するために、サンプルは、約100-500g、例えば、いくつかの実施形態によれば、約250-300gの低速度で遠心分離され得る。代替的に又はさらに、サンプルは、より早い速度で遠心分離され得る。適切な遠心分離速度は、最大で約200,000g、例えば約2,000~約200,000g未満である。いくつかの実施形態によれば、約15,000g~約200,000g未満、又は約15,000g~約100,000g未満、又は約15,000g~約50,000gの速度が使用される。約18,000g~約40,000g又は約30,000gの速度、及び約18,000g~約25,000gの速度がより好ましい。いくつかの実施形態によれば、約20,000gの遠心分離速度が好ましい。一般的に、遠心分離のための適切な時間は、約5分~約2時間、例えば約10分~約1.5時間、又は約15分~約1時間である。約0.5時間が使用され得る。いくつかの実施形態によれば、約20,000gで約0.5時間の遠心分離に生物学的サンプルをゆだねることが、時々有用である。しかしながら、上記速度及び時間は、適切には、任意の組合せで使用され得る(例えば、約18,000g~約25,000g、又は約30,000g~約40,000gで、約10分~約1.5時間、又は約15分~約1時間、又は約0,5時間、等)。遠心分離工程は、周囲温度以下、例えば約0~10℃、例えば約1~5℃、例えば約3℃又は約4℃で実施され得る。
【0151】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の濾過工程が、生物学的サンプルと捕捉表面との接触の前又は後に、実施される。約0.1~約1.0μmの範囲のサイズ、例えば約0.8μm又は0.22μmのサイズを有するフィルターが使用され得る。濾過はまた、減少する多孔性を有するフィルターを用いて連続的な濾過を行うことができる。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の濃縮工程が、生物学的サンプルと捕捉表面とを接触する前又は後に、クロマトグラフィー処理段階の間、処理されるサンプルの体積を減らすために、実施される。濃縮は、微小胞の沈降を引起すために、高速度、例えば10,000g及び100,000gでのサンプルの遠心分離を通してであり得る。これは、一連の分画遠心分離から成る。得られるペレット中の微小胞は、続く工程のために、より小量で適切な緩衝液により再構成され得る。濃縮工程は、また、限外濾過によっても実施され得る。実際、この限外濾過は、生物学的サンプルを濃縮し、そして微小胞画分の追加の精製を行う。別の実施形態によれば、濾過は限外濾過、例えば接線限外濾過である。接線限外濾過は、決定されたカットオブ閾値の膜により分離された2つの区画(濾液及び濃縮液)間の溶液の濃縮及び分画から成る。分離は、濃縮液区画における流れ、及びこの区画と濾液の区画との間に膜間圧力を適用することにより実施される。異なるシステムが、限外濾過、例えば螺旋膜(Millipore、Amicon)、平膜又は中空繊維(Amicon、Millipore、Sartorius、Pall、GF、Sepracorを行うために使用され得る。本発明の範囲内で、1000kDa未満、例えば、いくつかの実施形態によれば、100kDa~1000kDa、又は例えば、いくつかの実施形態によれば、100kDa~600kDaのカットオフ閾値を有する膜の使用が好都合である。
【0153】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上のサイズ排除クロマトグラフィー工程、又はゲル浸透クロマトグラフィー工程が、生物学的サンプルと捕捉表面との接触の前又は後に、実施される。ゲル浸透クロマトグラフィー工程を実施するために、シリカ、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、エチレングリコール-メタクリレート共重合体又はそれらの混合物、例えばアガロース - デキストラン混合物から選択される支持体が、いくつかの実施形態によれば、使用される。例えば、そのような支持体は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:SUPERDEX(登録商標)200HR(Pharmacia)、TSK G6000(TosoHaas)又はSEPHACRYL(登録商標)S(Pharmacia)。
【0154】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の親和性クロマトグラフィー工程が、生物学的サンプルと捕捉表面との接触の前又は後に、実施される。いくつかの微小胞はまた、特定の表面分子によって特徴づけられ得る。微小胞は細胞原形質膜の出芽から形成するので、それらの微小胞はしばしば、それらが由来する細胞上に見出される同じ表面分子の多くを共有する。本明細書において使用される場合、「表面分子」とは、集合的には、微小胞の表面、又は膜内又は膜上に見出される、抗原、タンパク質、脂質、炭水化物及びマーカーを言及する。それらの表面分子は、例えば受容体、腫瘍関連抗原、膜タンパク質修飾(例えば、グリコシル化構造)を含むことができる。例えば、腫瘍細胞から出芽する微小胞はしばしば、それらの細胞表面上に腫瘍関連抗原を示す。このように、親和性クロマトグラフィー又は親和性排除クロマトグラフィーはまた、特定のドナー細胞型由来の微小胞の特定集団を単離し、同定し、そして富化するために、本明細書に提供される方法と組合して利用され得る(Al-Nedawi et al., 2008; Taylor and Gercel-Taylor, 2008)。例えば、腫瘍(悪性又は非悪性)微小胞は、腫瘍関連表面抗原を担持し、そしてそれらの特定腫瘍関連表面抗原を介して検出され、単離され、そして/又は富化され得る。1つの例によれば、表面抗原は、長鎖(long)、結腸直腸、乳房、前立腺、頭頸部、及び肝臓起源の癌腫からの微小胞に対して特異的であるか、血漿学的細胞起源のものではない、上皮細胞接着分子(EpCAM)である(Balzar et al., 1999; Went et al., 2004)。さらに、腫瘍特異的微小胞はまた、特定の表面マーカー、例えばCD80及びCD86の欠失により特徴付けられ得る。それらの場合、それらのマーカーを有する微小胞は、例えば親和性排除クロマトグラフィーにより、腫瘍特異的マーカーのさらなる分析のために排除され得る。親和性クロマトグラフィーは、例えば、微小胞上の所望する表面分子を特異的に標的とする、異なる支持体、樹脂、ビーズ、抗体、アプタマー、アプタマー類似体、分子インプリントポリマー又は当核分野において公知の他の分子を用いることにより達成され得る。
【0155】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上の対照粒子又は1又は2以上の核酸が、微小胞精製及び/又は核酸抽出の効率又は品質を評価するための内部対照として作用するために、微小胞単離及び/又は核酸抽出の前に、サンプルに添加され得る。本明細書に記載される方法は、微小胞画分と共に、効率的単離及び対照核酸を提供する。それらの対照核酸は、Q-βバクテリオファージからの1又は2以上の核酸、ウィルス粒子からの1又は2以上の核酸、又は天然に存在するか、又は組換えDNA技法により操作され得る任意の対照核酸(例えば、少なくとも1つの対照標的遺伝子)を含む。いくつかの実施形態によれば、対照核酸の量は、サンプルに添加する前に知られている。対照標的遺伝子は、リアルタイムPCR分析を用いて定量化され得る。対照標的遺伝子の定量化が、微小胞精製又は核酸抽出工程の効率又は品質を決定するために使用され得る。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、対照核酸は、本明細書において「Q-β対照核酸」と呼ばれるQ-βバクテリオファージからの核酸である。本明細書に記載される方法に使用されるQ-β対照核酸は、天然に存在するウィルス対照核酸であり得るか、又は組換え又は操作された対照核酸であり得る。Q-βは、4種のウィルスタンパク質:コートタンパク質、成熟タンパク質、溶解タンパク質及びRNAレプリカーゼをコードする3つの遺伝子からなる線状、一本鎖RNAゲノムにより特徴づけられる、レビビリダエ科(leviviridae)のメンバーである。平均的微小胞と同様のサイズのために、Q-β粒子自体が対照として使用される場合、Q-βは、本明細書に記載されるように、微小胞を単離するのに使用される同じ精製方法を用いて、生物学的サンプルから容易に精製され得る。さらに、Q-βウィルス一本鎖遺伝子構造の低い複雑性が、増幅ベースの核酸アッセイでの対照としてのその使用のために好都合である。Q-β粒子は、サンプルにおけるQ-βの量の定量化のために検出されるか又は測定されるべき対照標的遺伝子又は対照標的配列を含む。例えば、対照標的遺伝子は、Q-βコードタンパク質遺伝子である。生物学的サンプルへのQ-β粒子の添加の後に、Q-β粒子自体が対照として使用される場合、Q-β粒子からの核酸は、本明細書に記載される抽出方法を用いて、生物学的サンプルから核酸と共に抽出される。Q-βからの核酸、例えばQ-βからのRNAが対照として使用される場合、Q-β核酸は、本明細書に記載される抽出方法を用いて、生物学的サンプルから核酸と共に抽出される。Q-β対照標的遺伝子の検出は、例えば、目的のバイオマーカーと同時に、RT-PCR分析により決定される。対照標的遺伝子の10倍希釈における少なくとも2、3又は4の既知濃度の標準曲線が、コピー数を決定するために使用され得る。検出されるコピー数及び添加されるQ-β粒子の量、又は検出されるコピー数及びQ-β核酸、例えば添加されるQ-β DNAの量が、単離及び/又は抽出工程の品質を決定するために比較され得る。
【0157】
いくつかの実施形態によれば、Q-β粒子又はQ-β核酸、例えばQ-β RNAの50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、1,000又は5,000のコピーが、体液サンプルに添加される。いくつかの実施形態によれば、Q-β粒子又はQ-β核酸、例えばQ-β RNAの100のコピーが、体液サンプルに添加される。Q-β粒子自体が対照として使用される場合、Q-β粒子のコピー数は、Q-βバクテリオファージの標的細胞を感染する能力に基いて計算され得る。従って、Q-β粒子のコピー数は、Q-βバクテリオファージのコロニー形成単位に相関する。
【0158】
任意には、対照粒子は、微小胞精製及び/又は核酸抽出の効率又は品質を評価するために内部対照として作用するよう、微小胞単離又は核酸抽出の前に、サンプルに添加され得る。本明細書に記載される方法は、微小胞画分と共に、効率的単離及び対照粒子を提供する。それらの対照粒子は、Q-βバクテリオファージ、ウィルス粒子、又は天然に存在するか、又は組換えDNA技法により操作され得る対照核酸(例えば、少なくとも1つの対照標的遺伝子)を含む任意の他の粒子を含む。いくつかの実施形態によれば、対照粒子の量は、サンプルへの添加の前に、知られている。対照標的遺伝子は、リアルタイムPCR分析を用いて定量化され得る。対照標的遺伝子の定量化は、微小胞精製又は核酸抽出工程の効率又は品質を決定するために使用され得る。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、対照粒子は、「Q-β粒子」として本明細書において呼ばれるQ-βバクテリオファージである。本明細書に記載される方法に使用されるQ-β粒子は、天然に存在するウィルス粒子であり得るか、又は組換え又は操作されたウィルスであり、ここでウィルス粒子の少なくとも1つの成分(例えば、ゲノム又はコートタンパク質の一部)は、当業界において知られている組換えDNA又は分子生物学技法により合成される。Q-βは、4種のウィルスタンパク質:コートタンパク質、成熟タンパク質、溶解タンパク質及びRNAレプリカーゼをコードする3つの遺伝子からなる線状、一本鎖RNAゲノムにより特徴づけられる、レビビリダエ科(leviviridae)のメンバーである。平均的微小胞と同様のサイズのために、Q-βは、本明細書に記載されるように、微小胞を単離するのに使用される同じ精製方法を用いて、生物学的サンプルから容易に精製され得る。さらに、Q-βウィルス一本鎖遺伝子構造の低い複雑性が、増幅ベースの核酸アッセイでの対照としてのその使用のために好都合である。Q-β粒子は、サンプルにおけるQ-βの量の定量化のために検出されるか又は測定されるべき対照標的遺伝子又は対照標的配列を含む。例えば、対照標的遺伝子は、Q-βコードタンパク質遺伝子である。生物学的サンプルへのQ-β粒子の添加の後に、Q-β粒子からの核酸は、本明細書に記載される抽出方法を用いて、生物学的サンプルから核酸と共に抽出される。Q-β対照標的遺伝子の検出は、例えば、目的のバイオマーカーと同時に、RT-PCR分析により決定される。対照標的遺伝子の10倍希釈における少なくとも2、3又は4の既知濃度の標準曲線が、コピー数を決定するために使用され得る。検出されるコピー数及び添加されるQ-β粒子の量が、単離及び/又は抽出工程の品質を決定するために比較され得る。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、Q-β粒子は、核酸抽出の前に、尿サンプルに添加される。例えば、Q-β粒子は、限外濾過の前及び/又は前濾過工程の後に、尿サンプルに添加される。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される方法及びキットは、1又は2以上のインプロセス制御を含む。いくつかの実施形態によれば、インプロセス制御は、サンプル品質を示す参照遺伝子(すなわち、生物学的サンプル、例えば生体液サンプルの指標)の検出及び分析である。いくつかの実施形態によれば、インプロセス制御は、血漿品質を示す参照遺伝子(すなわち、血漿サンプルの品質の指標)の検出及び分析である。いくつかの実施形態によれば、参照遺伝子は、追加のqPCRにより分析される。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、インプロセス制御は、逆転写酵素及び/又はPCR性能についてのインプロセス制御である。それらのインプロセス制御は、非制限的な例として、RNA単離の後に、及び逆転写の前に、スパイクインされる参照RNA(また、本明細書においては、ref.RNAとも呼ばれる)を含む。いくつかの実施形態によれば、ref.RNAは、Q-βのような対照である。いくつかの実施形態によれば、ref.RNAは、さらなるPCRにより分析される。
【0163】
核酸抽出
本発明は、微小胞の改良された単離、精製又は富化のためへの捕捉表面の使用に向けられる。本明細書に開示される方法は、前記微小胞からの高品質の核酸の抽出のための高度に富化された微小胞画分を提供する。本明細書に記載される方法により得られる核酸抽出は、疾患又は医学的状態の診断、予後又はモニタリングへの使用のために、高品質の核酸抽出が必要とされるか、又は好ましい種々の用途のために有用である。
【0164】
最近の研究は、微小胞内の核酸が、バイオマーカーとしての役割を有することを明らかにしている。例えば、国際公開第2009/100029号は、とりわけ、医学的診断、予後及び治療評価のためのGBM患者血清中の微小胞から抽出された核酸の使用を記載している。国際公開第2009/100029号はまた、同じ目的のためにヒト尿における微小胞から抽出された核酸の使用を記載している。微小胞から抽出された核酸の使用は、生検の必要性を潜在的に回避し、微小胞生物学の莫大な診断能力を強調していると思われる(Skogなど.、2008)。
【0165】
単離された微小胞の品質又は純度は、抽出された微小胞核酸の品質に直接的に影響を及ぼし、次に疾患診断、予後、及び/又はモニタリングのためのバイオマーカーアッセイの効率及び感受性に直接的に影響を及ぼす。臨床分野での正確で且つ敏感な診断試験の重要性を考慮すると、生物学的サンプルから高く富化された微小胞画分を単離する方法が必要とされる。この必要性に対処するために、本発明は、生物学的サンプルからの高品質の核酸の抽出のために生物学的サンプルから微小胞を単離するための方法を提供する。本明細書に示されるように、高く富化された微小胞画分は、本明細書に記載される方法により生物学的サンプルから単離され、そして続いて、高品質の核酸が、高く富化された微小胞画分から抽出される。それらの高品質の抽出された核酸は、疾患又は他の医学的状態の診断、予後、及び/又はモニタリングを助けるためにバイオマーカーの存在又は不在を測定するか、又は評価するために有用である。
【0166】
本明細書において使用される場合、核酸抽出に関して用語「高品質」とは、例えば、いくつかの実施形態によれば、約1:1~約1:2の比で18S rRNA:28S rRNAを検出でき;そして/又はいくつかの実施形態によれば、約1:2の比で18S rRNA:28S rRNAを検出できる抽出を意味する。理想的には、本明細書に記載される方法により得られる高品質核酸抽出はまた、低タンパク質生物学的サンプル(例えば、尿)については5以上のRNA完全性数を有し、又は高タンパク質生物学的サンプル(例えば、血清)については3以上の等しいRNA完全性数を有し、そして20mlの低タンパク質生物学的サンプル又は1mlの高タンパク質生物学的サンプルから50pg/ml以上か又はそれに等しい核酸収量を有するであろう。
【0167】
RNA分解は、遺伝子発現及びmRNA分析、並びに非コードRNA、例えば小分子RNA及びマイクロRNAの分析において、抽出されたRNAの下流評価に悪影響を及ぼし得るので、高品質RNA抽出が所望される。本明細書に記載される新規方法は、生物学的サンプルから単離された微小胞から高品質核酸の抽出を可能にし、結果的に、微小胞内の核酸の正確な分析が行われ得る。
【0168】
生物学的サンプルからの微小胞の単離に続いて、核酸は、単離され又は富化された微小胞画分から抽出され得る。これを達成するために、いくつかの実施形態によれば、微小胞は最初に、溶解され得る。微小胞の溶解及び核酸の抽出は、国際公開第2016/007755号及び第2014/107571号(それらの個々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる)に記載される、当業界において知られている種々の方法により達成され得る。いくつかの実施形態によれば、核酸抽出は、当業界において知られている標準方法及び技法に従って、タンパク質沈殿法を用いて達成され得る。そのような方法はまた、微小胞内に含まれる核酸を捕捉するために核酸結合カラムも利用できる。いったん結合されると、核酸は、核酸と結合カラムとの間の相互作用を破壊するのに適切な緩衝液又は溶液を用いて溶出され、それにより核酸を都合よく溶出できる。
【0169】
いくつかの実施形態によれば、核酸抽出方法はまた、生物学的サンプルから高品質核酸抽出を妨げる有害な因子を除去又は緩和する工程も含む。そのような有害因子は、異なる生物学的サンプルが種々の種類の有害因子を含むことができることで、異質である。いくつかの生物学的サンプルにおいては、過剰なDNAなどの因子がそのようなサンプルからの核酸抽出の品質に影響を及ぼす可能性がある。他のサンプルにおいては、過剰な内因性RNアーゼなどの因子が、そのようなサンプルからの核酸抽出の品質に影響を及ぼし得る。多くの剤及び方法が、それらの有害因子を除去するために使用され得る。それらの方法及び剤は、本明細書においては集合的に、「抽出促進操作」と呼ばれる。場合によっては、抽出促進操作は、生物学的サンプルへの核酸抽出促進剤の添加を包含する。有害因子、例えば内在性RNアーゼを除去するためには、本明細書に記載されるようなそのような抽出促進剤は、以下のものを含むか、但しそれらだけには限定されない:RNアーゼ阻害剤、例えばSuperase-In(Ambion Inc.から市販されている)又はRnaseINplus(Promega Corp.から市販されている)、又は類似する態様で機能する他の剤;プロテアーゼ(RNアーゼ阻害剤として機能できる);DNアーゼ;還元剤;デコイ基質、例えば合成RNA及び/又はキャリヤーRNA;RNアーゼを結合できる可溶性受容体;低分子干渉RNA(siRNA);RNA結合分子、例えば抗-RNA抗体、塩基性タンパク質又はシャペロンタンパク質;RNアーゼ変性物質、例えば高浸透圧溶液、界面活性剤、又はそれらの組合せ。
【0170】
例えば、抽出促進操作は、核酸の抽出の前に、生物学的サンプル、及び/又は単離された微小胞画分へのRNアーゼ阻害剤の添加を含むことができ;例えば、いくつかの実施形態によれば、RNアーゼ阻害剤は、1μlに等しいか又はそれ以上の体積のサンプルに対して0.027AU(1X)以上の濃度を有し;代替的に、1μlに等しいか又はそれ以上の体積のサンプルに対して0.135AU(5X)以上か又はそれに等しい濃度を有し;代替的に、1μlに等しいか又はそれ以上の体積のサンプルに対して0.27AU(10X)以上か又はそれに等しい濃度を有し;代替的に、1μlに等しいか又はそれ以上の体積のサンプルに対して0.675AU(25X)以上か又はそれに等しい濃度を有し;そして代替的に、1μlに等しいか又はそれ以上の体積のサンプルに対して1.35AU(50X)以上か又はそれに等しい濃度を有し;;ここでIX濃度とは、酵素条件を言及し、ここで0.027AU又はそれ以上のRNアーゼ阻害剤が1μl又はそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために使用され、5X濃度とは、酵素条件を言及し、ここで0.135AU又はそれ以上のRNアーゼ阻害剤が1μl又はそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために使用され、10X濃度とは、酵素条件を言及し、ここで0.27AU又はそれ以上のRNアーゼ阻害剤が1μl又はそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために使用され、25X濃度とは、酵素条件を言及し、ここで0.675AU又はそれ以上のRNアーゼ阻害剤が1μl又はそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために使用され、そして50X濃度とは、酵素条件を言及し、ここで1.357AU又はそれ以上のRNアーゼ阻害剤が1μl又はそれ以上の体液から単離された微小胞を処理するために使用される。いくつかの実施形態によれば、RNアーゼ阻害剤はプロテアーゼであり、この場合、1AUは、1分当たり1μモルのチロシンに対応するフォリン陽性アミの酸及びペプチドを放出するプロテアーゼ活性である。
【0171】
それらの増強剤は、RNアーゼ活性の阻害(例えば、RNアーゼ阻害剤)、タンパク質の偏在分解(例えば、プロテアーゼ)、又はRNAを結合し、そして保護するシャペロンタンパク質(例えば、RNA結合タンパク質)を介して、種々の手段でそれらの機能を発揮することができる。全ての場合、そのような抽出増強剤は、生物学的サンプルにおけるか、又は単離された粒子からの核酸の高品質抽出を妨げるか又は干渉する単離された粒子に関連する有害因子の一部又は全てを除去するか、又は少なくとも軽減する。
【0172】
いくつかの実施形態によれば、抽出される18S及び28S rRNAの定量化は、核酸抽出の品質を決定するために使用され得る。
【0173】
核酸バイオマーカーの検出
いくつかの実施形態によれば、抽出された核酸は、DNA、及び/又はDNA及びRNAを含む。抽出された核酸がDNA及びRNAを含む実施形態によれば、RNAは、さらなる増幅の前に、相補的DNA(cDNA)に逆転写される。そのような逆転写は、単独で、又は増幅工程と組合して実施され得る。逆転写及び増幅工程を組合す方法の1つの例は、その教示のために参照により本明細書に組込まれる米国特許第5,639,606号に記載のように、定量的、例えば定量的RT-PCRであるよう、さらに修飾され得る逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)である。この方法の別の例は、以下の2つの別々の工程を含む:1つの工程はcDNAにRNAを転換する逆転写であり、そして第2の工程は定量的PCRを用いてcDNAの量を定量化する。以下の実施例において実証されるように、本明細書に開示される方法を用いて核酸含有粒子から抽出されたRNAは、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:多くの種の転写体、例えばリポソーム18S及び28S rRNA、マイクロRNA、トランスファーRNA、疾患又は医学的状態に関連する転写体、及び診断、予後及び医学的状態のモニタリングのために重要であるバイオマーカー。
【0174】
例えば、RT-PCR分析は、各反応についてCt(サイクル閾値)値を決定する。RT-PCRにおいては、陽性反応は、蛍光シグナルの蓄積により検出される。Ct値は、蛍光シグナル閾値を越える(すなわち、バックグラウンドを越える)ために必要とされるサイクル数として定義される。Ctレベルは、サンプル中の標的核酸又は対照核酸の量に反比例する(すなわち、Ctレベルが低いほど、サンプル中の対照核酸の量が多い)。
【0175】
別の実施形態によれば、対照核酸のコピー数は、RT-PCRを含む種々の当業界において認識される技法のいずれかを用いて測定される。対照核酸のコーピー数は、当業界において知られている方法を用いて、例えば較正又は標準曲線を生成し、そして利用することにより決定され得る。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、1又は2以上のバイオマーカーは、本明細書において、核酸量、及び核酸含有粒子内の核酸変異体を言及するために使用される遺伝子異常の1つ又は集合であり得る。具体的には、遺伝子異常は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:遺伝子(例えば、腫瘍遺伝子)遺伝子群の過剰発現、遺伝子(例えば、腫瘍抑制遺伝子、例えばp53又はRB)又は遺伝子群の過小発現、遺伝子又は遺伝子群のスプライス変異体の代替生成、遺伝子コピー数変異体(CNV)(例えば、DNA二分)(Hahn、1993)、核酸修飾(例えば、エチル化、アセチル化及びリン酸化)、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)、染色体再編成(例えば、逆位、欠失及び重複)、及び遺伝子又は遺伝子群の突然変異(挿入、欠失、重複、ミスセンス、ナンセンス、類似又は任意の他のヌクレオチド変化)の突然変異、この突然変異は、多くの場合、最終的に、遺伝子産物の活性及び機能に影響を及ぼし、別の転写スプライス変異体及び/又は遺伝子発現レベルの変化、又は前述のいずれかの組合せを導く。
【0177】
単離された粒子に存在する核酸の分析は、定量的及び/又は定性的である。定量分析に関しては、単離された粒子内の目的の特定核酸の量(発現レベル)(相対的又は絶対的)は、当業界において知られている方法(下記に記載される)により測定される。定性分析に関しては、単離された微小胞内の目的の特定核酸の種は、野生型又は変異体のいずれでも、当業界において知られている方法により同定される。
【0178】
本発明はまた、(i)対象の診断を助け、(ii)対象における疾患又は他の医学的状態の進行又は再発をモニタリングし、又は(iii)患者又は他の医学的状態の治療を受けるか又は検討している対象の治療効力の評価を助けるために、生物学的サンプルから微小胞を単離する新規方法の種々の使用も含み;ここで前記方法から得られた核酸抽出における1又は2以上のバイオマーカーの存在又は不在が決定され、そしてそれらの1又は2以上のバイオマーカーは、疾患又は他の医学的状態の診断、進行、再発又は治療効率にそれぞれ関連している。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、核酸を分析する前に、微小胞の核酸を増幅することが有益であるか、又はそうでなければ、所望される。核酸増幅の方法が一般的に使用され、そして当業界において一般的に知られており、その多くの例が本明細書に記載されている。所望には、増幅は、定量的であるよう実施される。定量的増幅は、遺伝子又は発現プロファイルを生成するために、種々の核酸の相対量の定量的決定を可能にする。
【0180】
核酸増幅方法は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:ポリメラーゼ鎖反応(PCR)(米国特許第5,219,727号)及びその変異体、現場ポリメラーゼ鎖反応(米国特許第5,538,871号)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第5,219,727号)、入れ子状のポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第5,556,773号)、自己複製配列複製及びその変異体(Guatelliら、1990)、転写増幅系及びその変異体(Kwohら、1989)、Qbレプリカーゼ及びその変異体(Mieleら、1983)、 cold -PCR(Li ら、2008)、BEAMing(Li ら、2006)又は任意の他の核酸増幅法、続いて、当業者に良く知られている技法を用いての増幅された分子の検出、核酸分子が非常に少ない数で存在する場合、そのような分子の検出のために設計されたそれらの検出スキームが特に有用である。前述の参考文献は、それらの方法の教示のために本明細書に組込まれる。他の実施形態によれば、核酸増幅の工程は行われていない。代わりに、抽出核酸は直接的に(例えば、次世代配列決定を介して)、分析される。
【0181】
そのような遺伝的異常の決定は、当業者に公知の種々の技法により実施され得る。例えば、核酸の発現レベル、選択的スプライシング変異体、染色体再配列及び遺伝子コピー数は、マイクロアレイ分析(例えば、米国特許第6,913,879号、 第7,364,848号、第 7,378,245号、第 6,893,837号 及び第6,004,755号を参照のこと)及び定量的PCRにより決定され得る。特に、コピー数変化は、Illumina Infinium II全ゲノム遺伝子型判定アッセイ又はAgilent Human Genome CGH Microarray (Steemers et al., 2006)により検出され得る。核酸修飾は、例えば米国特許第7,186,512号及び国際公開第2003/023065号に記載される方法によりアッセイされ得る。特に、メチル化プロフィールは、Illumina DNA Methylation OMA003 Cancer Panelにより決定され得る。SNP及び突然変異は、以下により検出され得る:対立遺伝子特異的プローブとのハイブリダイゼーション、酵素的変異検出、ミスマッチヘテロ二重鎖の化学的切断(Cottonら、1988)、ミスマッチ塩基のリボヌクレアーゼ切断(Myersら、1985)、質量分析法(米国特許第6,994,960号、第7,074,563号、及び第7,198,893号)、核酸配列決定、一本鎖高次構造多型(SSCP)(Oritaら、1989)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Fischer and Lerman、1979; Fischer and Lerman、1979b)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)(Fischer and Lerman、1979; Fischer and Lerman、1979b)、制限フラグメント長多型(RFLP)(Kan and Dozy、1978a; Kan and Dozy、1978b)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)、対立遺伝子特異的PCR(ASPCR)(米国特許第5,639,611号)、ライゲーション連鎖反応(LCR)及びその変異体(Abravayaら、1995; Landegrenら、1988; Nakazawaら、1994)、フローサイトメトリーヘテロ二本鎖分析(国際公開第 2006/113590号)及びそれらの組み合わせ/修飾。特に、遺伝子発現レベルは、遺伝子発現技術の連続分析(SAGE)(Velculescuら、1995)により決定され得る。一般的に、遺伝的異常を分析するための方法は、本明細書に引用されものに限定されない多数の出版物に報告されており、そして当業者に利用可能である。分析の適切な方法は、分析の特定の目標、患者の状態/病歴、及び検出され、モニターされ又は治療される特定の願、疾患又は他の医学的状態に依存するであろう。前述の参考文献は、それらの方法の教示のために本明細書に組込まれる。
【0182】
多くのバイオマーカーは、対象における疾患又は他の医学的状態の存在又は不在に関連し得る。従って、本明細書に開示される方法に従って、単離された粒子からの核酸抽出におけるバイオマーカー又はバイオマーカーの組合せの存在又は不在の検出は、対象における疾患又は他の医学的状態の診断を助ける。
【0183】
さらに、多くのバイオマーカーは、対象における医学的状態のモニタリングを助けることができる。本明細書に開示される方法に従って、単離された粒子からの核酸抽出におけるそのようなバイオマーカーの存在又は不在の検出は、対象における疾患又は他の医学的状態の進行又は再発のモニタリングを助けることができる。
【0184】
多くのバイオマーカーはまた、特定の患者における治療の有効性に影響を及ぼすことが見出されている。従って、本明細書に開示される方法に従って、単離された粒子からの核酸抽出におけるそのようなバイオマーカーの存在又は不在の検出は、所定の患者における所定の治療の効能の評価を助けることができる。患者からの生物学的サンプルからの単離された粒子から抽出された核酸におけるそれらのバイオマーカーの同定は、患者のための治療の選択を導くことができる。
【0185】
本発明の前述の態様の特定の実施形態によれば、疾患又は他の医学的状態は、腫瘍性疾患又は状態(例えば、癌又は細胞増殖性障害)である。
【0186】
いくつかの実施形態によれば、抽出された核酸、例えばexoRNAはさらに、バイオマーカー又はバイオマーカーの組合せの検出に基いて分析される。いくつかの実施形態によれば、さらなる分析は、機械学習に基くモデリング、データマイニング方法及び/又は統計学的分析を用いて実施される。いくつかの実施形態によれば、データは、患者の疾患の結果を同定するか又は予測するために分析される。いくつかの実施形態によれば、データは、患者集団内の患者を階層化するために分析される。いくつかの実施形態によれば、データは、患者が治療に耐性があるかどうかを同定するか、又は予測するために分析される。いくつかの実施形態によれば、データは、対照の無進行生存経過を測定するために使用される。
【0187】
いくつかの実施形態によれば、データは、バイオマーカー又はバイオマーカーの組合せが検出される場合、対象についての治療選択肢を選択するために分析される。いくつかの実施形態によれば、治療選択肢は、治療法の組合せによる治療である。
【0188】
生物学的サンプルから微小胞を単離するためのキット
本発明の一態様は、本明細書に開示される方法への使用のためのキットにさらに向けられる。このキットは、生物学的サンプルに存在する望ましくない粒子、残骸及び小分子から微小胞を分離するのに十分な捕捉表面装置を含む。本発明はまた、任意には、単離及び続く任意の核酸抽出工程において前述の試薬を使用するための説明書も含む。
他の実施形態
【0189】
本発明は、その詳細な説明と共に記載されているが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。 他の態様、利点、及び修飾は、以下の範囲内にある。