(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】重合体粒子
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20230925BHJP
C08F 212/06 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C08F220/10
C08F212/06
(21)【出願番号】P 2022053078
(22)【出願日】2022-03-29
(62)【分割の表示】P 2018201694の分割
【原出願日】2018-10-26
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 智
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057279(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038731(WO,A1)
【文献】特開平05-017513(JP,A)
【文献】特開2017-197684(JP,A)
【文献】特開2012-173665(JP,A)
【文献】特開2002-040707(JP,A)
【文献】特開平08-262783(JP,A)
【文献】特開昭62-039878(JP,A)
【文献】特開2017-105906(JP,A)
【文献】特開2011-213768(JP,A)
【文献】特開平9-40794(JP,A)
【文献】特開2015-221789(JP,A)
【文献】特開平8-311132(JP,A)
【文献】特開2017-66362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/10
C08F 212/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン、メチルメタクリレート、および1分子中にエチレン性不飽和基を2~6つ有する多官能モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、
前記モノマー成分100質量%中、前記スチレンの含有量が20~65質量%の範囲であり、前記メチルメタクリレートの含有量が30~75質量%の範囲であり、前記多官能モノマーの含有量が0.5~8質量%の範囲であり、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。
【請求項2】
前記多官能モノマーが、エチレングリコールジメタクリレートである、請求項1に記載の重合体粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系粒子などの重合体粒子は、トナー成分用途、塗料への添加剤用途、光学材料用途、化粧品用途、成形用樹脂用途などの各種用途に広く利用されている。
【0003】
重合体粒子は基材樹脂と混合して用いられることが多く、重合体粒子の耐熱性が悪いと、成形加工時の加熱による分解、成形品の外観不良や機械的特性低下を引き起こす。そのため、重合体粒子は耐熱性に優れることが求められる。
【0004】
(メタ)アクリル系重合体粒子の耐熱性を向上させる手段として、メタクリル系単量体にアクリル系単量体を一定量共重合させる方法があるが、当該方法ではアクリル系単量体を共重合しない場合と比べて重合体粒子のガラス転移温度(Tg)が低下し、粉体製造工程で粒子同士の融着やハンドリング性の低下を招くという問題があった。
【0005】
また、(メタ)アクリル系重合体粒子の耐熱性を向上させる別の手段として、スチレン系モノマーを一定量共重合させる方法もある。当該方法では製造工程における粒子同士の融着等の問題を起こさず粒子の耐熱性を向上できるものの、加熱時に黄変する問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1には、充分な光拡散性と、光透過性とを有し、成形時の着色が少なく、変色防止能が向上した光拡散性ポリカーボネート系樹脂組成物が知られている。特許文献1には、ポリカーボネート系樹脂と、該樹脂に分散させた、ホスファイト系酸化防止剤を含有させた架橋(メタ)アクリル系重合体粒子とを含む光拡散性ポリカーボネート系樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から重合体粒子の耐熱性を向上させることは望まれていたが、未だ充分な耐熱性を有する重合体粒子は提供されていなかった。
【0009】
本発明は、高温に晒された際に、分解や黄変が抑制された、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れた重合体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合することにより得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は例えば以下の[1]~[3]に関する。
【0012】
[1] スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する、重合体粒子の製造方法。
【0013】
[2] 前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤である、[1]に記載の重合体粒子の製造方法。
【0014】
[3] スチレン系モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、下記条件(i)および(ii)を満たす、重合体粒子。
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の重合体粒子の製造方法により、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れる重合体粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明について具体的に説明する。
【0017】
<重合体粒子の製造方法>
本発明の重合体粒子の製造方法は、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
【0018】
モノマー成分としては、スチレン系モノマーを含んでいればよく、モノマー成分100質量%中、スチレン系モノマーの含有量は、好ましくは10~100質量%、より好ましくは15~80質量%、特に好ましくは20~65質量%の範囲である。
【0019】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のアルキルスチレン類;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロメチルスチレンおよびヨウ化スチレン等のハロゲン化スチレン類;ニトロスチレン;アセチルスチレン;メトキシスチレン等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0020】
モノマー成分としては、スチレン系モノマー以外のモノマーが含まれていてもよく、スチレン系モノマー以外のモノマーとしては、例えばビニル系単量体である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。スチレン系モノマー以外のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
モノマー成分100質量%中、スチレン系モノマー以外のモノマーの含有量は、好ましくは0~90質量%、より好ましくは20~85質量%、特に好ましくは35~80質量%の範囲である。
【0022】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
【0023】
((メタ)アクリル酸アルキルエステル)
本発明では、スチレン系モノマー以外のモノマー成分として、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。前記アルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8が特に好ましい。
【0024】
アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種単独であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
モノマー成分100質量%中、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、特に限定されるものではないが、通常0~90質量%、好ましくは15~80質量%、より好ましくは30~75質量%の範囲である。
【0026】
(多官能モノマー)
本発明では、モノマー成分として、1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることが好ましい。多官能モノマーの1分子中のエチレン性不飽和基の数は2~8が好ましく、2~6がより好ましい。
【0027】
1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能モノマーが挙げられる。これらは1種単独であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
モノマー成分100質量%中、1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーの含有量は、通常0~15質量%、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%の範囲である。1分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーの使用量が前記範囲にあると、適切な架橋度を有し、かつ高分子量であり、耐熱性および耐溶剤性に優れる重合体粒子が得られる点で好ましい。
【0029】
(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)
本発明では、モノマー成分として、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0030】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
(アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)
本発明では、モノマー成分として、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0032】
アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
(官能基含有モノマー)
本発明では、モノマー成分として、官能基含有モノマーを用いてもよい。
【0034】
官能基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5-カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーが挙げられる。
【0035】
(脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレート)
本発明では、モノマー成分として、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートを用いてもよい。
【0036】
脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートは、1種単独であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
モノマー成分100質量%中、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートの含有量は合計で、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0039】
(酸化防止剤)
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子の製造においては、上述したモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
【0040】
酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられるが、高温に晒された際の黄変を効果的に抑制する観点から、リン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0041】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル〕ホスファイト、トリス(モノ又はジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4'-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2-エチルへキシルジフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデセン、2,2 '-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-2-エチルへキシルホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(アデカスタブPEP-36:ADEKA製)等が挙げられる。
【0042】
フェノール系酸化防止剤としては、α-トコフェロール、4-メトキシフェノール、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、β-トコフェロール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、プロピオン酸ステアリル-β-(3.5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)等が挙げられる。
【0043】
アミン系酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、ジクミルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、2,2'-ジエチル-4-ノニルジフェニルアミンと2,2'-ジエチル-4,4'-ジノニルジフェニルアミンとの混合物等が挙げられる。
【0044】
硫黄系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリル-β,β'-チオジブチレート、チオビス(β-ナフトール)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジプチルジチオカルバメート等が挙げられる。
【0045】
酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
酸化防止剤は、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部用いられる。
【0047】
(チオ硫酸塩)
本発明の(メタ)アクリル系重合体粒子の製造においては、上述したモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
【0048】
チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウムが挙げられ、チオ硫酸ナトリウムが好ましい。
【0049】
チオ硫酸塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
チオ硫酸塩は、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部用いられる。
【0051】
本発明では、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合を行うことにより得られる重合体粒子は、高温に晒された際に、分解や黄変を起こしづらい。すなわち、本発明の製造方法で得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れる。この理由は明らかではないが、本発明者らは、チオ硫酸塩と酸化防止剤の相乗効果による活性ラジカル補足能の向上により、本発明の製造方法で得られる重合体粒子が耐熱性に優れると推定した。
【0052】
(製造条件)
本発明の重合体粒子の製造方法は、スチレン系モノマーを含むモノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合する。
【0053】
本発明の製造方法では、前記モノマー成分を、酸化防止剤およびチオ硫酸塩の存在下で重合すればよく、重合方法としては、特に限定は無いが、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができる。
【0054】
具体的な重合方法としては例えば、反応容器内に重合溶媒あるいは分散媒、モノマー成分を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃、好ましくは50~90℃に設定し、通常50~90℃、好ましくは60~90℃の温度に反応系を維持して、1~20時間、好ましくは1~5時間反応させることにより重合体粒子を得ることができる。
【0055】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0056】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物が挙げられる。
【0057】
過酸化物系重合開始剤としては、有機過酸化物類、過硫酸塩類が挙げられる。
【0058】
有機過酸化物類としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシビバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0059】
過硫酸塩類としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0060】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、重合中に、重合開始剤を複数回添加することも制限されない。
【0061】
重合開始剤は、モノマー成分100質量部に対して、通常0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部の範囲内の量で使用される。
【0062】
また、本発明の製造方法では、上記重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、モノマー成分、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0063】
分散媒としては、水性媒体が挙げられる。本発明において、水性媒体とは、水あるいは水を主成分とする媒体を意味する。具体的には、水単独、あるいはメタノールやエタノールなどの低級アルコールと水との混合物などが挙げられるが、これらのうちでは水単独が好ましい。水性媒体の使用量は、重合条件にもよるため特に限定されるものではないが、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは100~3000質量部、より好ましくは200~1000質量部である。
【0064】
本発明の重合体粒子の製造方法は、連鎖移動剤を用いてもよい。例えば、メチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー等の極性基を含有しない連鎖移動剤等が挙げられる。
【0065】
これらのチオール系連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の種類および重合条件にもよるため特に限定されるものではないが、モノマー成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0067】
本発明の重合体粒子の製造方法は通常、重合後、得られた重合体粒子を回収する。重合体粒子を回収する方法としては、従来公知の方法等を適宜選択することができ、特に制限ない。
【0068】
本発明の製造方法で得られる重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)に優れるため、トナー成分用途、塗料への添加剤用途、フィルムへの添加剤用途、光学材料用途、化粧品用途、成形用樹脂用途などの各種用途に広く使用することが可能である。
【0069】
<重合体粒子>
本発明の重合体粒子は、スチレン系モノマーを含むモノマー成分由来の構成成分を含む重合体粒子であって、下記条件(i)および(ii)を満たす。
【0070】
(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下である。
【0071】
(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下である。
【0072】
本発明の重合体粒子は、(i)重合体粒子を大気中150℃で1時間加熱した後に測定したYI値が10以下であり、好ましくは8以下である。
【0073】
本発明の重合体粒子は、(ii)重合体粒子を窒素雰囲気下10℃/minで昇温し、350℃に到達した際の重量減少率が10重量%以下であり、好ましくは0~8重量%であり、より好ましくは0~5重量%である。
【0074】
本発明の重合体粒子は、(i)を満たすため、耐熱黄変性に優れ、(ii)を満たすため耐熱分解性に優れる。このため、本発明の重合体粒子は、トナー成分用途、塗料への添加剤用途、光学材料用途、フィルムへの添加剤用途、化粧品用途、成形用樹脂用途などの各種用途に広く使用することが可能である。
【0075】
本発明の重合体粒子は、スチレン系モノマー由来の構成成分を含むため、高耐熱分解性を有する。また、モノマー成分としては、<重合体粒子の製造方法>の項で記載したモノマー成分を用いることが好ましい。
【0076】
本発明の重合体粒子は、耐熱性(耐熱分解性および耐熱黄変性)の観点から、酸化防止剤およびチオ硫酸塩を含むことが好ましい。前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0077】
本発明の重合体粒子は、平均粒径が、好ましくは0.01~10000μmであり、より好ましくは0.01~100μmである。
【0078】
本発明の重合体粒子は、前述の<重合体粒子の製造方法>の項に記載された方法で製造することが、容易に(i)および(ii)を満たすことができるため好ましい。
【実施例】
【0079】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素道入管を備えた反応装置にMMA(メチルメタクリレート)59質量部、St(スチレン)40質量部、EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)1質量部、酸化防止剤(アデカスタブPEP-36:ADEKA製)0.2質量部、イオン交換水400質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。
【0081】
次いで、過硫酸カリウム(KPS)0.3質量部、チオ硫酸ナトリウム0.3質量部を加え、窒素雰囲気下で70℃にて7時間重合反応を行った。
【0082】
反応液を冷却した後、ろ過・乾燥を行い、平均粒径が0.4μmの重合体粒子(A-1)を得た。
【0083】
[実施例2]
重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)に変えて、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様に行い、平均粒径が0.4μmの重合体粒子(A-2)を得た。
【0084】
[比較例1~3]
重合時に使用した各成分の組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に行い、平均粒径が0.4μmの重合体粒子(A'-1)~(A'-3)を得た。
【0085】
なお、表1中BAは、n-ブチルアクリレートを意味する。
【0086】
実施例、比較例で得られた重合体粒子の重量減少率、YI値、平均粒径を以下の方法で測定した。
【0087】
(重量減少率)
得られた重合体粒子について、熱重量・示差熱分析(TG-DTA)により、下記条件で、重合体粒子の重量減少率(耐熱分解性)を求めた。・測定装置:STA7220((株)日立ハイテクサイエンス製)・雰囲気:窒素 200ml/min・加熱温度:500℃・昇温速度:10℃/min・試料測定容器:アルミ製 オープンセル
【0088】
アルミ製のオープンセルに、実施例・比較例で得られた重合体粒子を5mg入れ、測定部にセットした。その後、窒素を200ml/minで注入しながら、500℃まで、昇温速度10℃/minで測定部を加熱した。
【0089】
350℃に到達時の重合体粒子の重量を測定し、減量率(wt%)を求めた。減少量が小さい程、重合体粒子の熱分解が起こりにくいことを表し、耐熱分解性に優れていることを示す。
【0090】
(YI値)
得られた重合体粒子2gを、150℃に設定した乾燥機に入れ、大気雰囲気下、150℃で1時間加熱した。
【0091】
次いで、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ(株)製)を用いて、加熱後の重合体粒子のYI値を求めた。なお、YI値は3回測定を行った平均値で算出した。
【0092】
YI値が小さいほど、耐熱黄変性に優れていることを示す。
【0093】
実施例、比較例の重合に使用した各成分および評価結果を表1にまとめる。
【0094】
(平均粒径)
得られた重合体粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製)より得られる画像から任意の粒子100個の粒子径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。顕微鏡による平均粒子径の観察は、15000倍の観察倍率で行った。
【0095】