(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230925BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20230925BHJP
F16K 31/50 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/35
F16K31/50 A
(21)【出願番号】P 2022143587
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2020070271の分割
【原出願日】2017-01-25
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540933(JP,A)
【文献】特開2010-43727(JP,A)
【文献】特開2016-23710(JP,A)
【文献】特開2016-153673(JP,A)
【文献】特開2001-343083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05,31/50
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材の雄ネジと雌ネジ部材の雌ネジとのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記雌ネジ部材は、樹脂で形成され、
前記ロータは、磁性粉を含有する樹脂で形成され、
前記雄ネジ部材が貫通して固定される貫通孔が形成され、前記ロータの回転を前記雄ネジ部材に伝達する円筒状のブッシュ部材を備え、
前記雄ネジ部材は、前記ブッシュ部材の前記貫通孔に対して前記ロータ側の一端が自由な状態で前記雌ネジ部材とネジ螺合され、
前記ブッシュ部材と前記雄ネジ部材との間には隙間が形成され、かつ前記ブッシュ部材は、溶接して前記雄ネジ部材に固定されており、
前記貫通孔の内周径と前記雄ネジ部材の外周径との差が、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジの山径と前記雌ネジ部材の前記雌ネジの谷径との差と、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジの谷径と前記雌ネジ部材の前記雌ネジの山径との差のうちいずれか小さい方よりも小さいことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記雄ネジ部材の前記弁体が位置する側に配置された筒状の弁ガイドを備え、
前記ブッシュ部材は、前記弁体が位置する側と反対側の端部が前記雄ネジ部材に溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ブッシュ部材の外径および前記弁ガイドの外径が、前記雌ネジ部材の雌ネジの山径よりも大きく、
前記雄ネジ部材と前記弁ガイドを繋ぐ部分が、前記雌ネジ部材において前記弁ガイドを収容する収容室内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ケースの内周径と前記ロータの外周径との差が、
前記雄ネジ部材の雄ネジの山径と前記雌ネジ部材の雌ネジの谷径との差と、前記雄ネジ部材の雄ネジの谷径と前記雌ネジ部材の雌ネジの山径との差のうちいずれか大きい方よりも大きいことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~4の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッケージエアコン、ルームエアコン、冷凍機などに用いられる電動弁が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この電動弁100においては、
図6に示すように、ステッピングモータが駆動してロータ103が回転すると、雌ネジ131aと雄ネジ121aのネジ送り作用により、弁体114が中心軸L方向に移動する。これにより、弁ポート121を開閉する調整がなされ、管継手111から流入して管継手112から流出する冷媒の流量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の電動弁100においては、雄ネジ121aと雌ネジ131aとの間の隙間に起因して電動弁100の良好な作動性が得られなくなる恐れがあった。
【0005】
たとえば、ブッシュ部材133の貫通孔133aに弁軸141を溶接した際に、
図7に示すように、弁軸141が軸芯からずれ、偏った位置に固定されることもあり得る。この場合、雄ネジ121aと雌ネジ131aの噛み合いの隙間が大きければ、ロータ103が偏った軸を中心に回転するため、電動弁100の作動性が阻害され、ロータ103を高い精度で回転させ難くなる。
【0006】
本発明の目的は、ロータを適正に回転させることができ、高い作動性を有する電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材の雄ネジと雌ネジ部材の雌ネジとのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記雌ネジ部材は、樹脂で形成され、
前記ロータは、磁性粉を含有する樹脂で形成され、
前記雄ネジ部材が貫通して固定される貫通孔が形成され、前記ロータの回転を前記雄ネジ部材に伝達する円筒状のブッシュ部材を備え、
前記雄ネジ部材は、前記ブッシュ部材の前記貫通孔に対して前記ロータ側の一端が自由な状態で前記雌ネジ部材とネジ螺合され、
前記ブッシュ部材と前記雄ネジ部材との間には隙間が形成され、かつ前記ブッシュ部材は、溶接して前記雄ネジ部材に固定されており、
前記貫通孔の内周径と前記雄ネジ部材の外周径との差が、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジの山径と前記雌ネジ部材の前記雌ネジの谷径との差と、
前記雄ネジ部材の前記雄ネジの谷径と前記雌ネジ部材の前記雌ネジの山径との差のうちいずれか小さい方よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
このように、ブッシュ部材の貫通孔と雄ネジ部材の間の隙間を狭くすることにより、ロータ回転時にロータが軸芯に対して偏芯することを抑制することができる。よって、ロータを適正に回転させることができ、高い作動性を有する電動弁を提供することができる。また、前記雌ネジ部材が樹脂で形成されているため、雌ネジ部材の摩擦係数を低くすることができ、耐久性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明による電動弁は、
前記雄ネジ部材の前記弁体が位置する側に配置された筒状の弁ガイドを備え、
前記ブッシュ部材は、前記弁体が位置する側と反対側の端部が前記雄ネジ部材に溶接されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による電動弁は、
前記ブッシュ部材の外径および前記弁ガイドの外径が、前記雌ネジ部材の雌ネジの山径よりも大きく、
前記雄ネジ部材と前記弁ガイドを繋ぐ部分が、前記雌ネジ部材において前記弁ガイドを収容する収容室内に収容されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電動弁は、
前記ケースの内周径と前記ロータの外周径との差が、
前記雄ネジ部材の雄ネジの山径と前記雌ネジ部材の雌ネジの谷径との差と、前記雄ネジ部材の雄ネジの谷径と前記雌ネジ部材の雌ネジの山径との差のうちいずれか大きい方よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
このように、ケースとロータの間の隙間の間隔を広げることにより、ロータ回転時にロータがケースの内側に接触し、ロータがケースの内周面に摺動することを防止することができる。
【0013】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る発明によれば、ロータを適正に回転させることができ、高い作動性を有する電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施の形態に係る電動弁のネジ結合部分の拡大断面図である。
【
図3】実施の形態に係るブッシュ部材の弁軸の間の隙間の拡大断面図である。
【
図4】実施の形態に係るケースとロータの間の隙間の拡大断面図である。
【
図5】電動弁において、回転軸の軸芯が傾斜した状態を示す図である。
【
図7】電動弁において、弁軸が軸芯からずれてブッシュ部材に固定された状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。
図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
この電動弁2では、非磁性体の金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
【0017】
ここで、弁本体30は、ステンレス等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通するステンレス製や銅製の第1の管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の下方内側には、断面円形の弁ポート16aが形成された弁座部材16が組み込まれている。弁座部材16には、弁ポート16aを介して弁室11に連通するステンレス製や銅製の第2の管継手15が固定装着されている。
【0018】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。ブッシュ部材33で結合されたこの弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0019】
ここで、ブッシュ部材33は、ステンレス等の金属から成り、中央に弁軸41が貫通する貫通孔33aが形成された円筒状の部材である。ロータ4は、磁性粉を含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料やフェライト磁石等の磁性を有する素材で形成されている。また、ブッシュ部材33は、ロータ4にインサート成形により固定されている。なお、弁軸41は、ブッシュ部材33の貫通孔33aに弁軸41を貫通させて溶接41cすることにより、ブッシュ部材33に固定される。このように、ロータ4とブッシュ部材33、ブッシュ部材33と弁軸41がそれぞれ固定されることにより、ロータ4の回転が弁軸41に伝達される。
【0020】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
ケース60の天井面にはガイド支持体52が固定されている。ガイド支持体52は、円筒部53と、円筒部53の上端側に形成された傘状部54とを有し、全体をプレス加工により一体成形されている。傘状部54はケース60の頂部内側と略同形状に成形されている。
【0021】
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ結合Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0022】
弁軸ホルダ6は、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料で形成されており、摩擦係数を低減させるため添加剤が含有されている。添加材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂やカーボンファイバー等が用いられる。
【0023】
この弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6aと下部側の筒状大径部6bと弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cとリング状のフランジ部6fとからなる。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁本体30の上端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。
【0024】
また、この弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ結合Aが構成されている。
【0025】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、筒状大径部6b内の弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁軸ホルダ6の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0026】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0027】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0028】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
【0029】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部には貫通孔が形成されたワッシャ70が設置されている。ワッシャ70は、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂ワッシャあるいは高滑性樹脂コーティングの金属製ワッシャ、高滑性樹脂を含有する各種樹脂ワッシャなどであることが好ましい。
さらに、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。
【0030】
次に、本発明の要点となる電動弁2を構成する部品の寸法関係について説明する。
図2は、実施の形態に係る電動弁2のネジ結合A部分の拡大断面図である。
図2に示すように、結合A部分における弁軸41の外周には、雄ネジ41aが形成され、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周には、雌ネジ6dが形成されている。なお、雌ネジ6dの内径は、雄ネジ41aの外径よりも大きくなるように設計されており、雄ネジ41aのネジ山41m、ネジ谷41vと雌ネジ6dのネジ山6m、ネジ谷6vとの間には、それぞれ径方向にクリアランス66が形成されている。
【0031】
また、
図3は、実施の形態に係る電動弁2において、
図1の円B内に示された部分の拡大断面図である。
図3に示すように、貫通孔33aに貫通する部分の弁軸41の外周41oにネジは形成されておらず、ブッシュ部材33の貫通孔33aの内周33iと弁軸41の外周41oとの間には隙間34が存在する。この隙間34は、クリアランス66よりも狭く形成されている。すなわち、貫通孔33aの内周径と弁軸41(雄ネジ部材)の外周径との差は、以下の(1)、(2)に示す差のうちいずれか小さい方よりも小さくなるように形成されている。
【0032】
(1)弁軸41(雄ネジ部材)の雄ネジ41aの山径(ネジ山41mの外周径)と弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の雌ネジ6dの谷径(ネジ谷6vの内周径)との差
(2)弁軸41(雄ネジ部材)の雄ネジ41aの谷径(ネジ谷41vの外周径)と弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)の雌ネジ6dの山径(ネジ山6mの内周径)との差
さらに、
図4は、実施の形態に係る電動弁2において、
図1の円C内に示された部分の拡大断面図である。
図4に示すように、電動弁2において、ケース60の内周60iとロータ4の外周4oの間には、クリアランス66よりも広い隙間68が存在する。すなわち、ケース60の内周径とロータ4の外周径との差は、上述の(1)、(2)に示す差のうちいずれか大きい方よりも大きくなるように形成されている。
【0033】
この実施の形態に係る電動弁2によれば、ブッシュ部材33の貫通孔33aと弁軸41の間の隙間34を、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間のクリアランス66よりも狭くすることにより、ロータ4の回転時にロータ4が軸芯に対して偏芯することを抑制することができる。よって、ロータ4を適正に回転させることができ、高い作動性を有する電動弁2を提供することができる。
【0034】
なお、上述したように、弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂で形成されているため、摩擦係数が低く耐久性に優れている。一方、一般に射出成形により成形される樹脂製の部品は、射出成形によるヒケや反り等の寸法変形や、線膨張、膨潤等の樹脂成形特有の寸法変化を考慮すると、精密な成形は困難である場合が多い。
【0035】
このため、樹脂製の弁軸ホルダ6を採用した場合には、雄ネジ41aと雌ネジ6dの噛み合いに生じるクリアランス66が大きくなりやすくなる傾向がある。クリアランス66が大きくなると、
図5に示すように、ロータ4だけでなく弁軸41(雄ネジ部材)までもが偏った軸を中心に回転するおそれがある。
【0036】
しかしながら、ブッシュ部材33の貫通孔33aと弁軸41の間の隙間34を、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間のクリアランス66よりも狭くすることにより、ロータ4が偏心することを抑制できる。このため、電動弁2において弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)を樹脂製とした場合における、作動性に対する影響を低減することができる効果は顕著なものとなる。
【0037】
また、実施の形態に係る電動弁2によれば、ケース60の内周とロータ4の外周の間の隙間68を広げ、クリアランス66よりも大きくすることにより、ロータ4の回転時にロータ4がケース60の内側に接触し、ロータ4がケース60の内周面に摺動することを防止することができる。したがって、ロータ4を高い精度で適正に回転させることができる。
【0038】
ここで、樹脂製の弁軸ホルダ6を採用した場合、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間のクリアランス66が大きくなることで、
図5に示すように、回転軸の軸芯が傾斜し、ロータ4がケース60と接触して(円F内参照)、ロータ4の回転が阻害されることも考えられる。
【0039】
しかしながら、ケース60の内周とロータ4の外周の間の隙間68(
図4参照)を広げ、隙間68をクリアランス66よりも大きくすることにより、弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)を樹脂製とした場合であってもロータ4がケース60と接触しないようにすることができる。
【0040】
なお、ロータ4とケース60との隙間68の間隔は、過剰に広くする必要性がない。このため、ロータ4とケース60との隙間68を広げても、隙間68を所定の間隔以下に維持することができれば、ロータ4とコイルとのエアギャップを小さく抑えることができ、トルクの減少を低減することができる。
【0041】
また、本実施の形態の電動弁2においては、ブッシュ部材33がロータ4とは別々の部材である場合を例に説明しているが、ロータ4とブッシュ部材33は、一つの部材として形成されていてもよい。この場合においても、ロータ4の回転は弁軸41に伝達される。
【0042】
また、本実施の形態の電動弁2においては、弁軸ホルダ6(雌ネジ部材)が樹脂で形成されている場合を例に説明しているが、弁軸ホルダ6は、金属で形成されていてもよい。弁軸ホルダ6が金属製であっても、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間のクリアランス66が大きければ、ブッシュ部材33の貫通孔33aと弁軸41の間の隙間34を狭くすることにより、ロータ回転時にロータ4が軸芯に対して偏芯することを抑制することができる。
【0043】
なお、本実施の形態の電動弁2は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0044】
2 電動弁
4 ロータ
4o ロータの外周
6 弁軸ホルダ
6a 筒状小径部
6b 筒状大径部
6c 嵌合部
6d 雌ネジ
6f フランジ部
6g 上部開口部
6h 収容室
6m 雌ネジのネジ山
6v 雌ネジのネジ谷
11 弁室
12 管継手
15 管継手
16 弁座部材
16a 弁ポート
17 弁体
18 弁ガイド
18a 貫通孔
21 天井部
27 弁バネ
30 弁本体
33 ブッシュ部材
33a 貫通孔
33i 貫通孔の内周
34 隙間
41 弁軸
41a 雄ネジ
41b 鍔部
41c 溶接
41m 雄ネジのネジ山
41o 弁軸の外周
41v 雄ネジのネジ谷
51 均圧孔
52 ガイド支持体
53 円筒部
54 傘状部
60 ケース
60i ケースの内周
66 クリアランス
67 ロータ収容室
68 隙間
70 ワッシャ
83 弁軸ホルダ室
100 電動弁
103 ロータ
111 管継手
112 管継手
114 弁体
121 弁ポート
121a 雄ネジ
131a 雌ネジ
133 ブッシュ部材
133a 貫通孔
141 弁軸