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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】室内冷暖房システム及び熱伝達床構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/10 20060101AFI20230925BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230925BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230925BHJP
   F24F 13/068 20060101ALI20230925BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230925BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
F24F7/10 A
F24F7/08 A
F24F13/02 C
F24F13/068 A
F24F5/00 K
E04B1/76 200A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022158305
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】津村 文治
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-113280(JP,A)
【文献】特開2022-113281(JP,A)
【文献】特開2010-112566(JP,A)
【文献】特開2023-077655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
F24F 7/08
F24F 13/02
F24F 13/068
F24F 5/00
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和装置において床部上側の室内空間の空気を吸い込んで温調空気を生成し、該温調空気を床部下側の床下空間にダクトを介して流入させた後に元の室内空間に戻すようにした室内冷暖房システムであって、
上記床部は、床材を固定支持する複数の中空構造の根太鋼と、該根太鋼に直交状に交差して配置され、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼とを備えており、
上記根太鋼は、上記大引鋼との交差部で根太鋼の内部が大引鋼の内部と連通していない構造であり、
上記床下空間に、上記空気調和装置からの温調空気をダクトを介して流入させるチャンバーが上記複数の根太鋼に亘るように配置され、
上記各根太鋼は、上記チャンバー内の温調空気を直接に各根太鋼内に流入させる流入口と、各根太鋼内の温調空気を床下空間に噴き出す噴出口とを備え、
上記チャンバー内の温調空気を各根太鋼内のみに流入口により流入させ、該各根太鋼内の温調空気を噴出口から床下空間へ噴出させた後に室内空間に還流させるように構成されていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項2】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
複数の根太鋼の内部同士を連通して該根太鋼間で温調空気を拡散させる、大引鋼とは異なる中空構造の根太連結部材が設けられていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項3】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
各根太鋼の噴出口は、床材と接する上面の角部に設けられていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項4】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
床材においてチャンバーと反対側位置に、床下空間の温調空気を室内空間に還流する還流口が開口していることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項5】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
チャンバーは根太鋼に支持されていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項6】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
各根太鋼は、下側に開口する根太鋼本体と、該根太鋼本体の開口を部分的に閉じる下蓋とを備えていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項7】
請求項1の室内冷暖房システムにおいて、
チャンバーが複数設けられていることを特徴とする室内冷暖房システム。
【請求項8】
室の床部に複数の中空構造の根太鋼と、該根太鋼に直交状に交差して配置され、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼とが設けられ、
上記根太鋼は、上記大引鋼との交差部で根太鋼の内部が大引鋼の内部と連通していない構造であり、
床部下側の床下空間には、空気調和装置からの空調空気をダクトを介して流入させるチャンバーが設けられ、
上記各根太鋼は、上記チャンバー内の温調空気を直接に各根太鋼内に流入させる流入口と、各根太鋼内の温調空気床下空間に噴き出す噴出口とを備え、
チャンバー内の温調空気を各根太鋼内のみに流入口により流入させ、該各根太鋼内の温調空気を噴出口から床下空間へ噴出させるように構成されていることを特徴とする熱伝達床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内冷暖房システム及びその熱伝達床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の室内冷暖房システムとして、室内空間の空気を空気調和装置に吸い込んで所定温度の温調空気を生成し、その温調空気をダクトを介して床下空間に流入させて温調空気により床部を下側から加熱した後、床下空間の温調空気を床部等の還流口から室内空間に還流させ、床下空間からの床部の冷却又は加熱によって室内空間の冷暖房を行うようにしたものは知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、床部の構造材である複数の鋼製の中空状大引鋼の上に同様の複数の中空状根太鋼を配置し、空気調和装置からの温調空気をチャンバー内から大引鋼に流入させた後に大引鋼から上側の根太鋼に流入させ、その根太鋼の導出孔から温調空気を床下空間に床材裏面に沿って流れるように噴き出させるようにしたシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-112566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のものでは、チャンバーに各大引鋼が接続され、その各大引鋼に各根太鋼が接続されており、温調空気はチャンバー内から大引鋼内に入った後に各根太鋼に流れ、各根太鋼から床下空間に噴き出した後に床下空間を巡り、最後に室内空間に出てくるようになっている。このように温調空気は最終的に根太鋼から床下空間に出るにも拘わらず、その温調空気の流路において根太鋼の上流側に大引鋼が介在していることで、温調空気が大引鋼からそれよりも小さい断面積の根太鋼に行くときに大きな流動抵抗が生じる。このことで、温調空気の移動がスムーズに行われずにその圧力が下がり、その分、空調空気の搬送エネルギーのロスが生じるのは避けられないという問題がある。
【0006】
また、床部では、根太鋼に比べ大引鋼の方が使用本数が少ないため、空気調和装置からの温調空気がチャンバー内を経て最初に大引鋼に導入されることで、床部の温度分布にムラが生じ易いという問題も生じる。
【0007】
さらには、大引鋼から根太鋼に温調空気を流す構造のため、チャンバーと大引鋼とを接続する作業だけでなく、大引鋼と根太鋼との双方にそれぞれ連絡孔(開口)を空け、それらを空気漏れのないように一致させて施工する作業も必要となり、その大引鋼と根太鋼との接続作業が面倒で施工に手間がかかるのは避けられない。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、温調空気を床下空間に流した後に室内に還流させる室内冷暖房システムに工夫を加えることにより、温調空気の搬送エネルギーのロスを低減し、床部の温度分布にムラが生じるのを防ぐとともに、施工の手間を低減して施工性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の達成のため、この発明では、チャンバー内から温調空気を大引鋼を経由して根太鋼に流すのではなく、チャンバー内の温調空気を直接根太鋼に流すことで、チャンバーから小さい断面積の根太鋼に温調空気が分流される回数を1回に低減するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、空気調和装置において床部上側の室内空間の空気を吸い込んで温調空気を生成し、該温調空気を床部下側の床下空間にダクトを介して流入させた後に元の室内空間に戻すようにした室内冷暖房システムが対象である。
【0011】
上記床部は、床材を固定支持する複数の中空構造の根太鋼と、該根太鋼に直交状に交差して配置され、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼とを備えており、上記根太鋼は、上記大引鋼との交差部で根太鋼の内部が大引鋼の内部と連通していない構造である。上記床下空間に、上記空気調和装置からの温調空気をダクトを介して流入させるチャンバーが上記複数の根太鋼に亘るように配置され、上記各根太鋼は、上記チャンバー内の温調空気を直接に各根太鋼内に流入させる流入口と、各根太鋼内の温調空気を床下空間に噴き出す噴出口とを備え、上記チャンバー内の温調空気を各根太鋼内のみに流入口により流入させ、該各根太鋼内の温調空気を噴出口から床下空間へ噴出させた後に室内空間に還流させるように構成されていることを特徴とする。尚、上記「チャンバー」は空間ではなく、空間を内部に有する空間形成体をいうものとする。
【0012】
この第1の発明では、空気調和装置で生成された空調空気は、ダクトを介してチャンバー内に流入し、このチャンバー内から直接に、大引鋼に載置支持された各根太鋼内に流入口により流入する。次いで、各根太鋼内の空調空気は噴出口から床下空間へ上側にある床材を「なめる」ように噴き出して、その床材を下側から加熱又は冷却する。その後、床下空間の温調空気は室内空間に還流され、室内空間を加熱又は冷却する。
【0013】
こうして、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼が根太鋼に交差して配置されていても、大引鋼との交差部で根太鋼の内部は大引鋼の内部と連通していないことから、チャンバー内から各根太鋼内に至る温調空気の流路に当該大引鋼は存在せず、チャンバー内の温調空気がそれよりも小さい断面積の各根太鋼内に直接流入することで、温調空気が大断面積のチャンバー内から小断面積の根太鋼に分流するのは1回だけとなり、温調空気がチャンバー内から大引鋼を介して根太鋼に行くときのような大きな流動抵抗は生じなくなる。そのため、温調空気の移動がスムーズに行われ、温調空気の圧力が下がり難くなり、空調空気の搬送エネルギーのロスが生じるのを避けることができる。
【0014】
また、大引鋼に比べ根太鋼の方が使用本数が多く、この数の多い根太鋼に空気調和装置からの温調空気がチャンバーを経て直接に導入されることで、床部の温度分布にムラが生じ難くなる。
【0015】
さらに、チャンバー内の温調空気を直接根太鋼のみに流すので、チャンバーに流出口を、また根太鋼に流入口をそれぞれ開口させて、それらを空気漏れのないように一致させて接続するだけで施工が済むこととなる。従って、従来のように、大引鋼と根太鋼との間で温調空気を流す構造のように、各大引鋼と各根太鋼との双方にそれぞれ連絡孔(開口)を空けて、それらを空気漏れのないように一致させて施工する作業は不要となり、作業が容易となって施工性が向上する。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、複数の根太鋼の内部同士を連通して該根太鋼間で温調空気を拡散させる、大引鋼とは異なる中空構造の根太連結部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この第2の発明では、複数の根太鋼同士が大引鋼とは異なる中空の根太連結部材で連通しているので、小断面積の根太鋼、或いは長さの長い根太鋼であっても、それら全体で温調空気の偏りを小さくすることができる。
【0018】
第3の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、各根太鋼の噴出口は、床材と接する上面の角部に設けられていることを特徴とする。
【0019】
この第3の発明では、根太鋼の床材と接する上面の角部に噴出口が設けられていることにより、噴出口から床下空間に噴き出される温調空気は床材の下面に確実に当たってから該下面に沿った方向に流れるようになり、温調空気による床材に対する加熱又は冷却が効率よく行われる。また、噴出口が根太鋼の角部に開口しているので、その噴出口は床材で塞がれることはなく、噴出口の開口面積を確保して温調空気を安定して噴き出させることができる。さらに、根太鋼の床材と接する上面角部を切欠き加工するだけで、噴出口を形成することができ、その加工も容易となる。
【0020】
第4の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、床材においてチャンバーと反対側位置に、床下空間の温調空気を室内空間に還流する還流口が開口していることを特徴とする。
【0021】
この第4の発明では、床部に還流口が形成されているので、床部以外の他の部分に還流口を形成する場合のような大掛かりな構造は不要となる。また、この還流口はチャンバーと反対側位置にある床材に開口しているので、チャンバーから還流口までの距離が長くなり、その分、温調空気がチャンバー内から根太鋼の内部を流れた後に噴出口を経由して床下空間に出て還流口に至るまでの行程の長さを大に確保することができる。そのため、温調空気を複数の根太鋼全体に均等に流すことができ、床部の温度分布の偏りを低減することができる。
【0022】
第5の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、チャンバーは、根太鋼に支持されていることを特徴とする。
【0023】
この第5の発明では、チャンバーと、該チャンバーから温調空気が流入する根太鋼とを近接して配置することができ、空調空気の搬送エネルギーのロスや、温度分布のムラの低減をさらに有効に実現することができる。
【0024】
第6の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、各根太鋼は、下側に開口する根太鋼本体と、該根太鋼本体の開口を部分的に閉じる下蓋とを備えていることを特徴とする。
【0025】
この第6の発明では、根太鋼本体の開口のうち下蓋で閉じられている閉じ部分は、その下蓋を流路壁として根太鋼本体と下蓋とで囲まれる温調空気の流路となり、下蓋のない開口部分は流入口として、チャンバー内に連通させることができる。このことで、下側に開口する根太鋼本体を利用して、流入口を有する根太鋼を容易に作製することができる。また、仮に施工現場でチャンバーに接続する流入口の位置がずれた場合でも、流入口は下蓋の位置をずらすだけで変えることができ、その変更に容易に対処することができる。尚、噴出口は根太鋼本体に形成される。
【0026】
第7の発明は、第1の発明の室内冷暖房システムにおいて、チャンバーが複数設けられていることを特徴とする。
【0027】
この第7の発明では、複数のチャンバーが根太鋼に接続されているので、根太鋼の長さが長いために、その内部の温調空気の流れが不足する場合であっても、複数のチャンバー内から根太鋼内に温調空気を入れることで温調空気の流れを確保することができる。
【0028】
第8の発明は熱伝達床構造に係り、この熱伝達床構造では、室の床部に複数の中空構造の根太鋼と、該根太鋼に直交状に交差して配置され、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼とが設けられ、上記根太鋼は、上記大引鋼との交差部で根太鋼の内部が大引鋼の内部と連通していない構造であり、床部下側の床下空間には、空気調和装置からの空調空気をダクトを介して流入させるチャンバーが設けられ、上記各根太鋼は、上記チャンバー内の温調空気を直接に各根太鋼内に流入させる流入口と、各根太鋼内の温調空気床下空間に噴き出す噴出口とを備え、チャンバー内の温調空気を各根太鋼内のみに流入口により流入させ該各根太鋼内の温調空気を噴出口から床下空間へ噴出させるように構成されていることを特徴とする。この第8の発明でも、第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した如く、本発明によると、空気調和装置で生成された温調空気を床部下側の床下空間にダクトを介して流入させた後に床部上側の室内空間に戻すようにした室内冷暖房システムとして、ダクトに連通するチャンバーを床下空間に設け、床部に流入口と噴出口とを有する複数の中空構造の根太鋼と、該根太鋼に交差して配置され、根太鋼を載置支持する複数の大引鋼とを配置し、各根太鋼は、大引鋼との交差部で根太鋼の内部が大引鋼の内部と連通していない構造とし、各根太鋼の流入口をチャンバーに、また噴出口を床下空間にそれぞれ連通するように配置し、チャンバー内の温調空気を直接根太鋼のみに流入させた後に床下空間に噴き出させるようにした。このことにより、チャンバー内から根太鋼への温調空気の移動がスムーズに行われ、その空調空気の搬送エネルギーのロスや床部の温度分布のムラを低減することができる。また、チャンバーに流出口を、また根太鋼に流入口をそれぞれ開口させてそれらを空気漏れのないように一致させて施工するだけで済み、作業が容易となって施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る室内冷暖房システムにおける床構造を示す平面図である。
図2図2は、床構造を示す斜視図である。
図3図3は、床構造を図2とは異なる方向から見て示す斜視図である。
図4図4は、床構造に床材が施工された床部を示す図3相当図である。
図5図5は、床スラブ上に大引鋼を介して施工される根太鋼を示す斜視図である。
図6図6は、チャンバーの構造を示す断面図である。
図7図7は、チャンバーの構造の変形例1を示す図6相当図である。
図8図8は、チャンバーの構造の変形例2を示す図6相当図である。
図9図9は、大引鋼間に配置されるチャンバーと根太鋼との関係を示す斜視図である。
図10図10は、図1のX-X線断面図である。
図11図11は、各根太鋼とチャンバーとの接続部を拡大して示す断面図である。
図12図12は、各根太鋼とチャンバーとの接続部の変形例を示す図11相当図である。
図13図13は、根太鋼の拡大断面図である。
図14図14は、根太鋼の分解斜視図である。
図15図15は、根太鋼に対する根太連結部材の連結構造を上側から見て示す斜視図である。
図16図16は、根太鋼に対する根太連結部材の連結構造を下側から見て示す斜視図である。
図17図17は、根太鋼の変形例1を示す図5相当図である。
図18図18は、根太鋼の変形例2を示す斜視図である。
図19図19は、実施形態2を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0032】
(実施形態1)
図1図4において、1は例えば体育館や屋内トレーニング施設、ダンススタジオ施設等の建物に設けられた壁部、2は壁部1内の矩形状の床部であって、壁部1で囲まれた建物内空間は、この床部2により床部2上側の室内空間R1(床上空間)と下側の床下空間R2とに仕切られている(図6参照)。
【0033】
上記床部2は、互いに平行に配置される複数本の鋼製の大引鋼10,10,…を備え、各大引鋼10は、その長さ方向の両端部及び途中部分で床スラブSL上に支持台6を介して支持されている。これらの大引鋼10,10,…の上には、その大引鋼10,10,…よりも多い複数本の鋼製の根太鋼15,15,…が大引鋼10と直交するように載置されて固定され、この根太鋼15,15,…の上に床材25が固定支持されている。図6図8に示すように、床材25は床下地材26と、該床下地材26の上面に施工された床仕上げ材27とを備えている。尚、鋼製の大引鋼10に鋼製の根太鋼15を載置して固定するとき、及びその根太鋼15の上側に床材25を施工するときには、同じ技術分野で通常一般に採用される構造や締結手段等が用いられる。
【0034】
図5に示すように、上記支持台5は、床スラブSLにアンカーボルト(図示せず)により固定される支持脚6と、この支持脚6の上部に高さ調整可能に螺合締結された支持ボルト7と、支持ボルト7の上端に連結された大引受8(図6図8に記載)とを備え、大引受8に大引鋼10が載置されて移動不能に固定されている。支持台5は、各大引鋼10において、数本置きの根太鋼15,15,…との交差部に配置される。
【0035】
上記各大引鋼10は、断面が略C字状(コ字状)のリップ鋼(Cチャンネル鋼)からなる鋼鉄製の長尺材である。リップ鋼は、四周壁部のうちの1つの壁部が長さ方向全体に亘り開放されかつ開放口の両側に内向きフランジ部10a,10aが形成されたもので、このリップ鋼からなる各大引鋼10は、開放口を下側に向けた状態で支持台5上に固定されている。尚、大引鋼10は角筒状の中空鋼であってもよい。
【0036】
図13及び図14に示すように、上記各根太鋼15は中空構造の鋼鉄製の長尺材からなり、その内部に空気通路が形成されている。具体的には、根太鋼15は根太鋼本体16と下蓋17とを備えている。根太鋼本体16は断面略ハット形状のハット鋼からなり、その長さ方向の全体に亘って下側に開口し、開口の両側には外向きに水平に延びるフランジ部16a,16aが形成されている。根太鋼本体16の幅は例えば62mm、高さは例えば40mmである。
【0037】
一方、上記下蓋17は、根太鋼本体16の両フランジ部16a,16a先端間の寸法よりも大きい幅を有する長尺の鋼鉄製の板材であり、例えば下蓋17の上面に根太鋼本体16が重ねられた状態で下蓋17の幅方向端部を折り返して根太鋼本体16の両フランジ部先端を挟み込むことで、根太鋼本体16に一体的に固定されている。根太鋼本体16のフランジ部16a先端は下蓋17の折り返し部分に気密状に挟み込まれており、このことで根太鋼本体16と下蓋17とによって中空構造の根太鋼15が形成されている。尚、後述するように、下蓋17は根太鋼本体16にその長さ方向の全体に亘り設けられておらず、根太鋼本体16には下蓋17のない部分があり、その欠落部分で根太鋼15が開口して流入口19とされている。また、各根太鋼15の長さ方向の両端部は閉塞部材21(図9参照)で気密状に閉じられている。
【0038】
図1図4に示すように、床部2の対向する二辺の一方に当たる一側部(図1では上側部)には、床下空間R2に位置する断熱性を有するチャンバー30が施工されている。このチャンバー30は、床部2の一辺に相当する長さの有端の細長い箱状のもので、床部2の一側部に位置する隣り合う1対の大引鋼10,10間に、それら両大引鋼10,10間に位置する複数の根太鋼15,15,…に亘って各根太鋼15と重なるように配置されている。チャンバー30の内部は空気流路となっており、このチャンバー30の断面積(詳しくは内部の空気流路の断面積)は各根太鋼15の断面積よりも遥かに大きく、必要に応じた所定値に設定されている。
【0039】
図6図9図12に示すように、チャンバー30は、上側に開口するチャンバー本体31と、その開口を断続的(部分的)に閉じる複数の蓋部32,32,…とを備えている。チャンバー本体31は、例えばポリイソシアネートフォーム等の断熱材からなる板材の両面にアルミ箔を接合一体化した厚さ20mmの不燃板材を折り曲げることで、上側に開口する細長い矩形の箱構造とされ、水平に延びる下壁部と、下壁部の四周縁部から起立する側壁部とを有する。このチャンバー本体31は、上側に開口した長尺の箱体であるが、各根太鋼15の両側に位置する部分の開口は上記蓋部32,32,…により閉じられている。各蓋部32は、例えばケイカル板等からなる矩形板材であり、その互いに対向する2対の側辺部のうちの一方の対の側辺部、つまり大引鋼10に沿った方向の側辺部はチャンバー本体31の側壁部上面に対し接着剤やビスにより気密状に固定されて一体化されている。また、図11に示すように、各蓋部32において、上記互いに対向する2対の側辺部のうちの他方の対の側辺部、つまり根太鋼15に沿った方向の側辺部は、根太鋼15における根太鋼本体16のフランジ部16a上側に該フランジ部16aと重なるように配置されて、蓋部32及びフランジ部16aを貫通するビスVによりフランジ部16aに気密状に固定されている。このことで、チャンバー本体31を含むチャンバー30は根太鋼15に対し、該チャンバー本体31と一体化されている各蓋部32にて気密状に固定されて吊り下げ支持されている。このように、根太鋼15,15間に位置する部分のチャンバー本体31の上側開口は蓋部32で気密状に閉じられており、各根太鋼15に対応する部分のみが蓋部32がなく、この蓋部32のない部分の開口により流出口34が形成されている。また、チャンバー30の長さ方向端部は根太鋼15の位置よりも突出し、その突出部分の開口は蓋部32により気密状に閉塞されている。この蓋部32は、その一辺部が上記のように根太鋼15における根太鋼本体16のフランジ部16aに固定されている。
【0040】
また、図6に示すように、チャンバー30は、そのチャンバー本体31の側壁部において大引鋼10に対し大引鋼10に沿って延びる長尺のパッキン材37を介して固定されている。
【0041】
以上の構造のチャンバー30を1対の大引鋼10,10間に施工する場合、例えば各大引鋼10にパッキン材37を固定した後、そのパッキン材37に断面コ字状のチャンバー本体31を側壁部でビス等により固定して、固定部分の隙間をコーキング材や気密テープ等のシーリング材で塞ぐ。このことでチャンバー本体31が大引鋼10に固定される。その後、蓋部32を根太鋼15,15間に配置して、その対向する側辺部を根太鋼本体16のフランジ部16aに重なるように載せ、その重なり部分でビスVにより固定するとともに、蓋部32の残りの対向する側辺部は、チャンバー本体31の側壁部上面に固定すればよい。
【0042】
尚、チャンバー30を根太鋼15に気密状に固定して吊り下げ支持する場合、図11に示す構造の他、図12に示す構造の変形例を採用することもできる。この変形例では、チャンバー本体31の所定位置に蓋部32が固定されてチャンバー30が形成され、そのチャンバー30の蓋部32に根太鋼15における根太鋼本体16のフランジ部16aが上側から重ねられてビスVにより固定されており、蓋部32は、図11に示す構造とは逆に、根太鋼本体16のフランジ部16aの下側に位置している。この構造を施工する場合、予め蓋部32をチャンバー本体31にビスや接着剤で固定してチャンバー30を形成しておき、大引鋼10にパッキン材37を固定した後、そのパッキン材37にチャンバー30をそのチャンバー本体31の側壁部でビス等により固定して、固定部分の隙間をコーキング材や気密テープで塞ぐ。しかる後に、その蓋部32に根太鋼本体16のフランジ部16aを重ねてビスVにより固定することとなる。
【0043】
図11及び図12にそれぞれ示す構造のいずれであっても、チャンバー30は、各根太鋼15の後述する流入口19への連通部分である各流出口34と、縦ダクト50との連通部分である入口部とを除く部分に開口部や隙間がなく、全体として気密状態の密閉構造とされている。
【0044】
また、チャンバー30の構造としては図6に示されているものに限らず、例えば図7及び図8にそれぞれ示す変形例1及び変形例2を採用することができる。図7に示す変形例1では、例えば厚さ0.4mmの薄肉の気密性を有するシートを上側に開口する細長い袋体に形成して、その長尺の袋体をチャンバー本体31として用いている。この袋状のチャンバー本体31の上端部は、根太鋼15における根太鋼本体16のフランジ部16a(下蓋17を含む部分)にビス止めした断面L字状のランナー38(Lアングル)に気密状に固定されており、ランナー38は大引鋼10に沿って延びる長尺材である。このことでチャンバー本体31は根太鋼15に固定されて吊下げ支持されている。
【0045】
図8に示す変形例2では、例えばポリイソシアネートフォーム等の断熱材製の基材両面にアルミ箔を接合一体化した厚さ20mmの不燃板材をチャンバー本体31の四周の側壁部として用い、大引鋼10に沿って延びる各側壁部(不燃板材)の上端部は、根太鋼15に固定した断面コ字状のランナー38に嵌合されている。ランナー38は、大引鋼10に沿って延びる長尺のもので、その内部にシーラー39が収容されており、このシーラー39によりチャンバー本体31の側壁部は根太鋼15に対して気密状に連結されている(尚、こうして内部にシーラー39を有するランナー38を大引鋼10に固定してもよい)。一方、側壁部の下端部は床スラブSLに固定した断面コ字状の床側ランナー40に嵌合されて床スラブSLに対し気密状に封鎖されている。この床側ランナー40も大引鋼10に沿って延びる長尺のものである。このことで、チャンバー本体31の下壁部は床スラブSLで構成されている。この変形例2では、床側ランナー40は床スラブSLに直接固定しているが、その他、例えば床スラブSLに断面矩形状の木製のコマ材を接着剤やアンカーボルト等を用いて固定し、そのコマ材に床側ランナー40をビス止め等して固定することもできる。
【0046】
以上の変形例1及び2のチャンバー30の蓋部32は、図6に示すチャンバー30と同じである。
【0047】
さらに、この他、図示しないが、チャンバー30は、上下壁部及び両側壁部で閉じられた閉断面構造の角筒状の断熱性筒体で構成することもできる。この筒体のチャンバー30に流出口34を形成するために、その筒体の上壁部において根太鋼15に対応する部分に開口を切り込んで流出口34とすればよい。しかし、この構造では、チャンバー30を根太鋼15に取り付けるときに流出口34を根太鋼15の流入口19に位置合わせして取り付ける必要があり、その取付作業が面倒になる。これに対し、上記のようにチャンバー30をチャンバー本体31と蓋部32とで構成すると、チャンバー本体31を根太鋼15に取り付けた後に根太鋼15,15間の開口部分を蓋部32により封じればよく、上記切り込んで形成した流出口34と根太鋼15の位置合わせする場合よりも施工が楽になる。
【0048】
そして、チャンバー30の長さ方向の一端部(図1では左側端部)は床部2よりも突出し、この突出部分に蓋部32がなくて上側に開口し、その開口部分は縦ダクト50の下端(下流端)に気密状に接続されている。一方、チャンバー30の長さ方向の他端部は閉塞されている。上記縦ダクト50は、床部2の側方位置を上下方向に延びるもので、その上端(上流端)は、室内空間R1の空気を吸い込んで冷却又は加熱して所定温度の温調空気を生成する空気調和装置55に接続されており、空気調和装置55で生成された温調空気を縦ダクト50を介してチャンバー30内にその長さ方向の一端部から流入させるようになっている。空気調和装置55は、例えば建物の小屋裏等に設置される。
【0049】
一方、図10及び図11に示すように、上記各根太鋼15において、チャンバー30に対応する部分(チャンバー30と重なる端部)は下蓋17がなく、その下蓋17の欠落部分は開口して流入口19が形成されている。各根太鋼15を下側から見たとき、下蓋17の欠落部分は根太鋼本体16のフランジ部16a,16aが剥き出しになって、両フランジ部16a,16a間に流入口19が開口しており、この流入口19が上記チャンバー30の流出口34に外部に空気漏れがないように気密状に連通している。このことで、チャンバー30内に流入した温調空気が、その上側に位置する各根太鋼15内に長さ方向の一端部からチャンバー30の流出口34及び各根太鋼15の流入口19を通して流入するようになっている。
【0050】
すなわち、縦ダクト50を複数の根太鋼15,15,…の各々に直接接続できないことから、温調空気をダクト50からチャンバー30を介して根太鋼15,15,…に分配させるようにしており、チャンバー30の役割は温調空気をダクト50から各根太鋼15に分配させることにある。
【0051】
図9及び図13に示すように、上記各根太鋼15において根太鋼本体16の上壁部の幅方向両側の角部には、根太鋼15内の温調空気を床下空間R2に噴き出すための複数の噴出口20,20,…が根太鋼15内外を連通するように開口されている。各噴出口20は、根太鋼本体16において上側の床材25と接する上面の角部に上壁部と側壁部とに跨がるように形成されている。各噴出口20は、例えば根太鋼本体16の角部を上壁部では6mmだけ、また側壁部では4mmだけそれぞれ矩形状に切り欠くことで矩形状の開口からなっている。各噴出口20の根太鋼15の長さ方向に沿った寸法は、例えば50mmである。
【0052】
各根太鋼15の上壁部には床材25の床下地材26が当接して載置されるので、噴出口20のうち上壁部の開口部分は大半が床材25で閉塞されるが、根太鋼15内の温調空気は、噴出口20のうち床材25で閉塞されない側壁部の開口部分から床下空間R2に噴き出され、この噴出口20から噴き出された温調空気が床材25下面に確実に当たるように吹き付けられてから該床材25の下面に沿った方向に流れるようになっている。このように根太鋼本体16の角部を切り欠くだけで噴出口20を形成できるので、その加工が容易となる利点がある。
【0053】
上記複数の噴出口20,20,…は、根太鋼15の上壁部の角部に根太鋼15の長さ方向に一定の間隔をあけて配置されている。根太鋼15の上壁部の幅方向一方の角部と他方の角部にそれぞれ形成される噴出口20,20の位置は、根太鋼15の幅方向に対向せず、根太鋼15の長さ幅方向に一定寸法ずつずれており、根太鋼15全体の噴出口20,20,…はいわゆる千鳥配置となっている。そして、チャンバー30内から上側の各根太鋼15内の長さ方向の一端部に流入した温調空気が各根太鋼15内を長さ方向の他端に向かい、その途中で上記各噴出口20から床下空間R2に噴き出されるとき、複数の噴出口20,20,…が千鳥配置にあることにより、各噴出口20から噴き出された温調空気が他の根太鋼15の噴出口20からの温調空気の流れと干渉しないようにしている。
【0054】
図4に示すように(図1図3では仮想線にて示している)、床部2において上記チャンバー30と反対側に位置する他側部には、床部2下側の床下空間R2と同上側の室内空間R1とを連通する複数の還流口28,28,…がチャンバー30及び大引鋼10と平行に並ぶように配置されて開口している。各還流口28は、チャンバー30及び大引鋼10と平行に延びる細長い矩形状であり、床部2の床下地材26及び床仕上げ材27を貫通しており、各還流口28にはグリル28aが嵌め込まれている。還流口28,28,…は、床部2の他側部に位置する1対の大引鋼10,10間に配置され、この各還流口28は室内空間R1の設置物によって塞がれない位置に設けられており、複数の根太鋼15,15,…の噴出口20,20,…から床下空間R2に噴き出された温調空気を床下空間R2から床材25の還流口28,28,…により室内空間R1に還流させるようになっている。
【0055】
以上の構造により、空気調和装置55において床部2上側の室内空間R1の空気を吸い込んで温調空気を生成し、その温調空気をチャンバー30内に供給して、そのチャンバー30内の温調空気を各根太鋼15内にその流入口19により流入させ、該各根太鋼15内の温調空気を上部の角部の噴出口20,20,…から床下空間R2へ噴出させた後に床材25の還流口28,28,…から室内空間R1に還流させるようにした室内冷暖房システムが構成されている。
【0056】
また、床下空間R2には、空気調和装置55からの空調空気をダクト50を介して流入させるチャンバー30が、また床部2に、複数の中空構造の根太鋼15,15,…と、それら根太鋼15,15,…上に敷設される床材25とがそれぞれ設けられており、チャンバー30内の温調空気を、該チャンバー30に連通する流入口19により各根太鋼15内に流入させ、各根太鋼15内の温調空気が噴出口20から床下空間R2へ噴出させるようにした熱伝達床構造が構成されている。
【0057】
さらに、上記のように床部2の一側部に位置するチャンバー30と、他側部に位置する還流口28,28,…との間には、例えば1本の中空構造の根太連結部材44が複数の根太鋼15,15,…と交差した状態に配置されている。この根太連結部材44は、根太鋼15,15,…の内部同士を長さ方向の中間部で互いに連通させて温調空気を根太鋼15間で拡散させるもので、複数の根太鋼15,15,…に亘り該各根太鋼15にその下側から重なるように配置されている。
【0058】
図15及び図16に示すように、根太連結部材44は、根太鋼15と同様に中空構造の鋼鉄製の長尺材からなり、その内部に空気通路が形成されている。具体的には、根太連結部材44は、根太鋼15を上下反転させた構造のものであり、連結部材本体45と上蓋46とを備えている。連結部材本体45はハット鋼からなり、その長さ方向の全体に亘って上側に開口し、開口の両側には外向きに水平に延びるフランジ部45a,45aが形成されている。上蓋46は、この連結部材本体45の上側の開口を部分的に閉じるもので、この上蓋46と連結部材本体45との連結構造は、根太鋼15における根太鋼本体16と下蓋17との連結構造と同じである(図13及び図14参照)。
【0059】
そして、根太連結部材44において、各根太鋼15に対応する部分(各根太鋼15と重なる部分)に上蓋46がなく、その上蓋46の欠落部分は開口して連結部材側連通口(図示せず)が形成されている。根太連結部材44を上側から見たとき、上蓋46の欠落部分は連結部材本体45のフランジ部45a,45aが剥き出しになって、両フランジ部45a,45a間に連結部材側連通口が開口している。また、各根太鋼15において、根太連結部材44と重なる部分にも、チャンバー30との重なり部分と同様に下蓋17がなく、根太側連通口(図示せず)が開口している。この各根太鋼15の根太側連通口と、根太連結部材44の連結部材側連通口とは互いに気密状に接続されており、この接続構造は、各根太鋼15とチャンバー30との接続構造と同様である。そして、このような接続構造により、複数の根太鋼15,15,…をその長さ方向中間部で根太連結部材44により互いに連通させ、根太鋼15を流れる温調空気が途中で他の根太鋼15に流れるようにすることで、複数の根太鋼15,15,…内の温調空気の圧力を同等にして、各根太鋼15の噴出口20から温調空気が床部2全体で見て均一に噴き出すようにしている。
【0060】
根太連結部材44の長さ方向の両端部(小口)の開口は閉塞部材47で閉塞されている。また、図示しないが、根太連結部材44は、各根太鋼15と重なる位置において、大引鋼10と同様に床スラブSL上に支持台5により支持されている。尚、根太連結部材44は、例えば根太鋼15の長さが一定長さを超える位置毎等に設定されるのが好ましい。そのため、根太連結部材44の設置本数は複数本であってもよい。
【0061】
以上により、この実施形態の室内冷暖房システム及び熱伝達床構造では、室内空間R1の空気が空気調和装置55に吸い込まれて冷却又は加熱されることにより、その空気調和装置55で所定温度の空調空気が生成され、この空調空気は空気調和装置55から縦ダクト50の上流端に吐出される。この縦ダクト50に吐出された空調空気は、ダクト50の下流端から床部2の一側の床下空間R2に位置するチャンバー30内に一端部から流入してチャンバー30内を他端部に向かって流れる。このチャンバー30の上側には複数の根太鋼15,15,…の一端部が重なって配置され、この重なり部分において、各根太鋼15の下端部の流入口19と、チャンバー30上部の流出口34とが連通しているので、チャンバー30内を他端部に向かう温調空気は流出口34から各根太鋼15の流入口19を通って該根太鋼15内に流入する。この各根太鋼15に流入した温調空気は、根太鋼15内を他端部に向かって流れ、その他端部に到達する前に、各根太鋼15の上部に開口している多数の噴出口20,20,…から噴出して床材25の下面に向けて吹き付けられ、該床材25を「なめる」ように流れ、この温調空気により床材25の下面に接触する一定温度の温調空気層が形成される。こうして温調空気が吹き付けられた床材25は温調空気層の温度によって下面から冷却又は加熱され、このことで床部2上側の室内空間R1が床部2から冷却又は加熱される。各根太鋼15から室内空間R1に噴き出された温調空気は、床部2の他側の床下空間R2に集まり、床材25に開口する還流口28,28,…から室内空間R1に還流され、その室内空間R1から再度空気調和装置55に吸い込まれる。以後、同様の流れが繰り返される。
【0062】
したがって、この実施形態では、上記したように、チャンバー30内から温調空気がそれよりも小さい断面積の各根太鋼15内に直接流入する。つまり大断面積のチャンバー30内から小断面積の各根太鋼15に分流するのは1回だけとなる。すなわち、従来のようにチャンバー30内から各根太鋼15内に至る温調空気の流路に大引鋼が存在しないこととなり、その大引鋼による温調空気大きな流動抵抗は生じなくなる。その結果、根太鋼15に流れる温調空気の移動がスムーズに行われ、温調空気の圧力が下がり難くなり、空調空気の搬送エネルギーのロスが生じるのを避けることができる。
【0063】
しかも、複数の根太鋼15,15,…は、長さ方向の中間位置で中空構造の根太連結部材44で接続されているので、それら根太鋼15,15,…の内部同士が根太連結部材44により互いに連通して温調空気が根太鋼15,15,…間で拡散される。その結果、小断面積の根太鋼15,15,…であっても、それら全体で空気の偏りを小さくすることができる。
【0064】
そして、床下空間R2からの温調空気を室内空間R1に還流させる還流口28,28,…が床材25に開口しているので、床部2以外の他の部分に還流口28を形成する場合のような大掛かりな構造は不要となる。
【0065】
また、その還流口28は、床材25においてチャンバー30と反対側に形成されているので、チャンバー30から還流口28までの距離は長くなり、その分、温調空気がチャンバー30から根太鋼15の内部を流れた後に噴出口20,20,…により床下空間R2に出て還流口28に至るまでの行程の長さを大に確保することができる。このことで、温調空気を複数の根太鋼15,15,…全体に均等に流すことができ、床部2の温度分布の偏りを低減することができる。
【0066】
また、大引鋼10,10,…に比べ根太鋼15,15,…の方が使用本数が多く、この数の多い根太鋼15,15,…にチャンバー30内の温調空気が導入される。この多数の根太鋼15,15,…内を温調空気が流れることで、床部2の温度分布にムラが生じ難くなる。
【0067】
さらに、チャンバー30の温調空気を直接に各根太鋼15内に流すので、チャンバー30に流出口34を、また各根太鋼15に流入口19をそれぞれ開口して、それらを空気漏れのないように一致させて接続すれば施工が済む。すなわち、大引鋼と根太鋼15との間で温調空気を流す従来の構造のように、各大引鋼と各根太鋼15との双方にそれぞれ連絡孔を空けて、それらを空気漏れのないように一致させて施工する必要がなくなる。その結果、施工が容易となって施工性が向上する。
【0068】
また、各根太鋼15において根太鋼15内の温調空気を床下空間R2に噴き出すための複数の噴出口20,20,…は、床下地材26と接する上面の角部に切欠状に形成されているので、各噴出口20から床下空間R2に噴き出される温調空気は床材25の下面に確実に当たってから該下面に沿った方向に流れるようになり、温調空気による床材25に対する加熱又は冷却を効率よく行うことができる。
【0069】
また、各噴出口20が根太鋼15の角部に開口しているので、その噴出口20は床材25で塞がれることはなく、噴出口20の開口面積を確保して温調空気の噴出しを確保することができるとともに、根太鋼15の床下地材26と接する上面角部を切欠き加工するだけで、噴出口20を形成することができ、その加工も容易に行うことができる。つまり、根太鋼15の側壁部の上部に特定して孔開け加工する場合に比べ、上面角部を切欠き加工する方が加工は容易となる。
【0070】
また、各根太鋼15は、下側に開口するハット鋼からなる根太鋼本体16と、該根太鋼本体16の開口を部分的に閉じる下蓋17とで構成されているので、根太鋼本体16の開口のうち下蓋17で閉じられている閉じ部分は、下蓋17が流路壁となって該下蓋17と根太鋼本体16とで囲まれる温調空気の流路とし、蓋のない開口部分は流入口19として、チャンバー30内に連通させることができる。このことで、下側に開口する根太鋼本体16を利用して、流入口19を有する根太鋼15を容易に作製することができる。しかも、仮に施工現場でチャンバー30の流出口34に接続する流入口19の位置がずれた場合でも、流入口19は下蓋17の位置をずらすだけで変えることができ、その変更を容易に対処することができる。
【0071】
さらに、チャンバー30がその上部で根太鋼15に支持されていることで、チャンバー30と、該チャンバー30内から温調空気が流入する根太鋼15とを近接して配置することができ、空調空気の搬送エネルギーのロスや、温度分布のムラの低減をさらに有効に実現することができる。
【0072】
尚、上記各根太鋼15は、ハット鋼からなる根太鋼本体16と、その下側の開口を部分的に閉じる下蓋17とで構成されている構造であるが、図17図18に示す構造のものを採用することもできる(根太鋼15の同じ部分については同じ符号を付して説明する)。
【0073】
図17は根太鋼15の変形例1を示し、根太鋼15は、支持台5上の大引鋼10に載置固定された状態で示している。この変形例1の根太鋼15は、断面矩形状の角パイプを使用したもので、その上壁部の両角部には噴出口20,20,…が上記と同様に切り欠いて形成されている。また、この根太鋼15において、チャンバー30に重なる部分の下壁部には、チャンバー30の流出口34に対応する矩形状の流入口19(図17には示されていない)が孔開け加工により開口している。この場合、角パイプ製の根太鋼15に流入口19や噴出口20を孔開け加工する必要がある。
【0074】
図18は根太鋼15の変形例2を示し、この根太鋼15は、上側に開口しかつ開口部の両側に内向きのフランジ部16b,16bを有するリップ鋼(Cチャンネル鋼)からなる根太鋼本体16と、その根太鋼本体16の上側開口を気密状に閉じる樹脂板製の上蓋18とからなる。上蓋18の幅方向下面には、根太鋼本体16の両フランジ部16b,16bにそれを挟み込んで係合される係合部18a,18aが形成されている。また、この上蓋18の幅方向両側に、上蓋18をコ字状に切り欠いた噴出口20,20,…が形成されている。この変形例2でも、根太鋼本体16において、チャンバー30に重なる部分の下壁部には矩形状の流入口19(図18には示されていない)が孔開け加工により開口している。
【0075】
これら変形例1及び2の根太鋼15のいずれでも、実施形態1の根太鋼15と同様の作用効果が得られる。
【0076】
(実施形態2)
図19は実施形態2を示し(尚、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、チャンバー30の設置数を増やしたものである。
【0077】
この実施形態では、床部2の互いに対向する両側端寄り部分にそれぞれ位置する隣り合う1対の大引鋼10,10間にチャンバー30,30が設置されて、チャンバー30の設置数が2つとなっている。
【0078】
各チャンバー30の一端部は、床下空間R2を水平方向に延びる横ダクト51が気密状に接続され、この横ダクト51の長さ方向の一端部は縦ダクト50の下端(下流端)に気密状に接続されて連通している一方、他端部は閉塞されている。
【0079】
各チャンバー30は、複数の根太鋼15,15,…に対し各根太鋼15の長さ方向の端部で交差し、実施形態1と同様に、その交差部分にそれぞれ流出口34が形成され、各流出口34は各根太鋼15の長さ方向両端部に位置する流入口19に気密状に接続されている。このことで、横ダクト51を介して両側のチャンバー30,30内に流入した温調空気は両チャンバー30,30内から各根太鋼15内の長さ方向両端寄り部分に流入し、根太鋼15内で温調空気は大半が長さ方向の中央位置に向かって流れ、残りは根太鋼15内の長さ方向両端に向かい、その間に噴出口20,20,…から床下空間R2に噴き出されるようになっている。
【0080】
また、床部2の床材25に開口する還流口28は、横ダクト51と反対側に位置する端部の床材25に複数のものが根太鋼15と平行になるように形成されている。尚、根太連結部材44は設けられていない。
【0081】
この実施形態において、その他の構成は実施形態1と同じである。従って、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0082】
特に、この実施形態2では、同じ1つの根太鋼15に複数のチャンバー30,30内から温調空気を流入させるので、例えば床部2の面積が大きくて、その分、根太鋼15の長さが長くなり、根太鋼15の長さにより内部の温調空気の流れが不足する場合に有効であり、複数のチャンバー30,30内から根太鋼15内に温調空気を入れることによって温調空気の流れを確保することができる。
【0083】
尚、チャンバー30の設置数は3つ以上であってもよい。また、複数のチャンバー30,30,…は床部2の両側端部に加えて中間部に設置することもできる。また、複数の根太鋼15,15,…を複数のグループに分け、各グループ毎にチャンバー30を設けてもよい。すなわち、根太鋼15の長さや配置等により内部の温調空気の流れが不足する場合には、根太鋼15の途中にチャンバー30からの温調空気を入れるようにすればよい。
【0084】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、大引鋼10は根太鋼15を受けるためだけに設けられているが、この大引鋼10を根太連結部材44と同様の中空閉じ構造にして内部を空気流路とし、この大引鋼10内部を根太鋼15に連通させて、根太鋼15からその内部の温調空気を大引鋼10内に流すようにしてもよい(従来のように大引鋼10から根太鋼15に流す構造とは異なる)。大引鋼10は根太鋼15と直交しており、ここに根太鋼15の内部を連通させることで、大引鋼10が根太連結部材44と同様に根太鋼15間の圧力を均等にする役割を果たすようになる。その場合、大引鋼10は、根太連結部材44とは異なり、その大引鋼10の端部(小口)が開いており、この大引鋼10に流入した温調空気は端部の開口から床下空間R2に出るようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、温調空気の搬送エネルギーのロスや床部の温度分布のムラを低減でき、施工性の向上も図ることができるので、室内冷暖房システムの分野で極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0086】
R1 室内空間
R2 床下空間
2 床部
10 大引鋼
15 根太鋼
16 根太鋼本体
17 下蓋
19 流入口
20 噴出口
25 床材
28 還流口
30 チャンバー
31 チャンバー本体
32 蓋部
34 流出口
44 根太連結部材
50 縦ダクト
55 空気調和装置
【要約】
【課題】温調空気を床下空間R2に流した後に室内に還流させる室内冷暖房システムにおいて、温調空気の搬送エネルギーのロスを低減し、床部2の温度分布にムラが生じるのを防ぐとともに、施工の手間を低減して施工性を向上させる。
【解決手段】空気調和装置55に床部2上側の室内空間R1の空気を吸い込んで温調空気を生成し、温調空気を床部2下側の床下空間R2に流入させた後に室内空間R1に戻す。床部2は、複数の中空構造の根太鋼15と、根太鋼15上に敷設される床材25とを備える。床下空間R2に、空気調和装置55の温調空気をダクト50を介して流入させるチャンバー30が複数の根太鋼15に亘るように配置され、チャンバー30の温調空気を直接根太鋼15内に流入口19から流入させ、根太鋼15の温調空気を噴出口20から床下空間R2へ噴出させた後に床材25の還流口28から室内空間R1に還流させるようにする。
【選択図】図10
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