(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】走査線駆動回路およびこれを備えた表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20230925BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230925BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230925BHJP
G09G 3/3225 20160101ALI20230925BHJP
G09G 3/3266 20160101ALI20230925BHJP
G11C 19/28 20060101ALI20230925BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230925BHJP
【FI】
G09F9/00 346A
G09F9/30 338
G09F9/30 365
G09G3/20 621M
G09G3/20 622E
G09G3/20 670J
G09G3/20 680G
G09G3/3225
G09G3/3266
G11C19/28 230
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2022504765
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008640
(87)【国際公開番号】W WO2021176504
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】三谷 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】横山 真
(72)【発明者】
【氏名】上田 直樹
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012207(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/029799(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190187(WO,A1)
【文献】特表2019-532321(JP,A)
【文献】特開2010-277652(JP,A)
【文献】特開2014-056256(JP,A)
【文献】特開2006-311579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133
1/1343-1/1345
1/135-1/1368
G09F9/00-9/46
G09G3/00-3/08
3/12-3/26
3/30-5/42
H04N5/66-5/74
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位回路を多段接続した構成を有し、表示パネルと一体に形成された走査線駆動回路であって、
前記単位回路は、
一方の導通電極に第1レベルの電圧が印加され、他方の導通電極が第1ノードに接続された第1トランジスタと、
一端が前記第1ノードに接続された抵抗と、
一方の導通電極に第2レベルの電圧が印加され、他方の導通電極が前記抵抗の他端に接続された第2トランジスタと、
制御電極が前記第1ノードに接続され、一方の導通電極が出力端子に接続された出力トランジスタとを含み、
前記第1ノードは、前記第1トランジスタを介して与えられる前記第1レベルの電圧と前記第2トランジスタおよび前記抵抗を介して与えられる前記第2レベルの電圧とを選択的に保持し、
前記出力トランジスタは、前記第1レベルの電圧が前記第1ノードに与えられたときにオフし、前記第2レベルの電圧が前記第1ノードに与えられたときにオンし、
前記抵抗は、前記第1および第2トランジスタの半導体部と同じ半導体層に形成され、
前記抵抗の上に上部電極が形成されていることを特徴とする、走査線駆動回路。
【請求項2】
前記抵抗は、P型半導体を用いて形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の走査線駆動回路。
【請求項3】
前記上部電極は、前記第1および第2トランジスタの制御電極よりも上層の配線層に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の走査線駆動回路。
【請求項4】
前記上部電極は、前記第1および第2トランジスタの導通電極に接続される配線と同じ配線層に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の走査線駆動回路。
【請求項5】
前記表示パネルには発光素子のアノード電極が形成され、
前記上部電極は、前記アノード電極と同じ配線層に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の走査線駆動回路。
【請求項6】
前記抵抗の抵抗値は、0.1MΩ以上7MΩ以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項7】
前記抵抗と前記上部電極の間に、200nm以上1μm以下の厚さを有する絶縁膜が介在することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項8】
前記第1トランジスタの制御電極には前段の単位回路の出力信号が与えられ、
前記第2トランジスタの制御電極にはクロック信号が与えられていることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項9】
前記上部電極には固定の負電圧が印加されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項10】
前記負電圧は、-10V以上-5V以下であることを特徴とする、請求項9に記載の走査線駆動回路。
【請求項11】
前記負電圧は、前記単位回路に供給されるローレベル電圧に等しいことを特徴とする、請求項9に記載の走査線駆動回路。
【請求項12】
前記上部電極は、前記第1ノードに接続されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項13】
前記上部電極は、前記抵抗の他端に接続されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項14】
前記上部電極には正電圧と負電圧が切り替えて印加され、
前記第1ノードの電圧が前記第1レベルから前記第2レベルに変化するときに、前記上部電極には前記負電圧が印加されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の走査線駆動回路。
【請求項15】
前記第1ノードの電圧が前記第2レベルから前記第1レベルに変化するときに、前記上部電極には前記正電圧が印加されていることを特徴とする、請求項14に記載の走査線駆動回路。
【請求項16】
前記表示パネルには複数の発光制御線が形成されており、
前記上部電極は、前記複数の発光制御線のうち対応する発光制御線に接続されていることを特徴とする、請求項14または15に記載の走査線駆動回路。
【請求項17】
前記表示パネルには発光制御用の複数のクロック信号を伝搬する複数の配線が形成されており、
前記上部電極は、前記複数の配線のうち対応する配線に接続されていることを特徴とする、請求項14に記載の走査線駆動回路。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の走査線駆動回路を備えた、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査線駆動回路に関し、特に、表示パネルと一体に形成された走査線駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:以下、ELという)表示装置は、薄型、軽量、高画質の表示装置として広く利用されている。典型的な有機EL表示装置は、表示部、走査線駆動回路、データ線駆動回路、および、発光制御線駆動回路を備えている。表示部は、有機ELパネル上に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFTという)を用いて形成される。走査線駆動回路は、複数の単位回路を多段接続した構成を有する。また、走査線駆動回路を有機ELパネルと一体に形成する技術(ゲートドライバモノリシック技術)が実用化されている。なお、走査線はゲート線、走査線駆動回路はゲートドライバとも呼ばれる。
【0003】
有機ELパネルと一体に形成された走査線駆動回路については、従来から各種の単位回路が知られている。
図24は、従来の走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
図24に示す単位回路91は、TFT:Q1、Q5と抵抗R9を含むレシオ回路を含んでいる。単位回路91は、ノードn9の電圧をハイレベルにするセット動作と、ノードn9の電圧をローレベルにするリセット動作とを行う。
【0004】
入力信号INとクロック信号CK1がローレベルのときに、TFT:Q1、Q5はオンする。このとき、ノードn9には、TFT:Q1を介してハイレベル電圧VGHが印加されると共に、TFT:Q5と抵抗R9を介してローレベル電圧VGLが印加される。抵抗R9の抵抗値はTFT:Q1のオン時の抵抗値よりも十分に大きいので、ノードn9の電圧はハイレベルになる。このように単位回路91は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルのときにセット動作を行う。
【0005】
入力信号INがハイレベルでクロック信号CK1がローレベルのときに、TFT:Q1はオフし、TFT:Q5はオンする。このとき、ノードn9にはTFT:Q5と抵抗R9を介してローレベル電圧VGLが印加されるので、ノードn9の電圧はローレベルになる。このように単位回路91は、入力信号INがハイレベルでクロック信号CK1がローレベルのときにリセット動作を行う。
【0006】
セット動作とリセット動作を高速に行うために、抵抗R9には数100kΩから数MΩの高い抵抗値を有するものが使用される。走査線駆動回路を有機ELパネルと一体に形成する場合、単位回路91は表示部に含まれる画素回路と共にPチャネル型TFTを用いて形成される。この場合、抵抗R9は、高い抵抗値を有するP型半導体を用いて形成される。レシオ回路を含む単位回路を備えた走査線駆動回路は、例えば、特許文献1および2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2016/175117号
【文献】国際公開2016/190187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の走査線駆動回路では、時間の経過と共に抵抗R9の抵抗値が大きくなる。抵抗R9の抵抗値が大きくなると、ノードn9の電圧が低下するのにかかる時間が長くなる。このため、単位回路91がリセット動作を行ったときに、ノードn9の電圧が所望の時間内にローレベルに低下しない現象(以下、リセット不良という)が発生する。走査線駆動回路でリセット不良が発生すると、表示画面にちらつきなどの表示不良が発生する。
【0009】
それ故に、単位回路内の抵抗の特性変動に起因する動作不良を防止できる走査線駆動回路を提供することが課題として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、例えば、複数の単位回路を多段接続した構成を有し、表示パネルと一体に形成された走査線駆動回路であって、前記単位回路は、一方の導通電極に第1レベルの電圧が印加され、他方の導通電極が第1ノードに接続された第1トランジスタと、一端が前記第1ノードに接続された抵抗と、一方の導通電極に第2レベルの電圧が印加され、他方の導通電極が前記抵抗の他端に接続された第2トランジスタと、制御電極が前記第1ノードに接続され、一方の導通電極が出力端子に接続された出力トランジスタとを含み、前記抵抗は、前記第1および第2トランジスタの半導体部と同じ半導体層に形成され、前記抵抗の上に上部電極が形成されている走査線駆動回路によって解決することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記の走査線駆動回路によれば、抵抗の上に上部電極を形成することにより、抵抗の上に形成された絶縁膜などに捕捉された電荷の影響を抵抗が受けることを防止し、抵抗の特性変動を小さくすることができる。したがって、抵抗の特性変動に起因する走査線駆動回路の動作不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す走査線駆動回路を含む有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
【
図4】
図1に示す走査線駆動回路のタイミングチャートである。
【
図5】
図3に示す単位回路のタイミングチャートである。
【
図6】
図3に示す単位回路の一部を示すレイアウト図である。
【
図7】
図6に示すレイアウト図に含まれる半導体層のパターンを示す図である。
【
図9A】
図1に示す走査線駆動回路を含む有機ELパネルの製造工程を示す図である。
【
図10】従来の走査線駆動回路の課題を説明するための図である。
【
図11】
図1に示す走査線駆動回路の効果を説明するための図である。
【
図12】第1の実施形態の変形例に係る走査線駆動回路の単位回路の断面図である。
【
図13】第2の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図13に示す走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
【
図16】第3の実施形態に係る走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
【
図18】第4の実施形態に係る走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
【
図19】第5の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【
図20】
図19に示す走査線駆動回路のタイミングチャートである。
【
図21】
図19に示す走査線駆動回路の単位回路のタイミングチャートである。
【
図22】第6の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【
図23】
図22に示す走査線駆動回路の単位回路のタイミングチャートである。
【
図24】従来の走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、各実施形態に係る走査線駆動回路、および、これを備えた表示装置について説明する。以下の説明では、mおよびnは2以上の整数、iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数であるとする。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る走査線駆動回路10の構成を示すブロック図である。
図1に示す走査線駆動回路10は、(m+1)個の単位回路11を多段接続した構成を有する。単位回路11は、初期化端子INIT、クロック端子CK1、CK2、入力端子IN、制御電圧端子CV、および、出力端子OUTを有する。単位回路11には、図示しない配線を用いてハイレベル電圧VGHとローレベル電圧VGLが供給される。
【0015】
図2は、走査線駆動回路10を含む有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
図2に示す有機EL表示装置1は、表示部2、表示制御回路3、走査線駆動回路10、データ線駆動回路4、および、発光制御線駆動回路5を備えている。表示部2は、TFTを用いて有機ELパネル8上に形成される。走査線駆動回路10と発光制御線駆動回路5は、TFTを用いて有機ELパネル8と一体に形成される。データ線駆動回路4は、有機ELパネル8とは別に形成される。なお、データ線駆動回路4の全部または一部をTFTを用いて有機ELパネル8と一体に形成してもよく、発光制御線駆動回路5の全部または一部を有機ELパネル8とは別に形成してもよい。
【0016】
表示部2は、(m+1)本の走査線G0~Gm、n本のデータ線S1~Sn、m本の発光制御線E1~Em、および、(m×n)個の画素回路6を含んでいる。走査線G0~Gmと発光制御線E1~Emは、互いに平行に配置される。データ線S1~Snは、走査線G0~Gmと直交するように、互いに平行に配置される。走査線G1~Gmとデータ線S1~Snは、(m×n)箇所で交差する。(m×n)個の画素回路6は、走査線G1~Gmとデータ線S1~Snの交点に対応して配置される。画素回路6は、発光素子として有機EL素子7を含んでいる。i行j列目の画素回路6は、走査線Gi-1、Gi、データ線Sj、および、発光制御線Eiに接続される。なお、i行j列目の画素回路6を走査線Gi-1に接続しなくてもよく、i行j列目の画素回路6を他の配線に接続してもよい。
【0017】
表示制御回路3は、走査線駆動回路10に対して制御信号CS1を出力し、データ線駆動回路4に対して制御信号CS2と映像信号DSを出力し、発光制御線駆動回路5に対して制御信号CS3を出力する。走査線駆動回路10は、制御信号CS1に基づき、走査線G0~Gmを駆動する。データ線駆動回路4は、制御信号CS2と映像信号DSに基づき、データ線S1~Snを駆動する。発光制御線駆動回路5は、制御信号CS3に基づき、発光制御線E1~Emを駆動する。
【0018】
より詳細には、走査線駆動回路10は、制御信号CS1に基づき走査線G0~Gmの中から1本の走査線を順に選択し、選択した走査線に選択電圧(ここではローレベル電圧)を印加し、残余の走査線に非選択電圧(ここではハイレベル電圧)を印加する。これにより、i番目の水平期間では、i行目の画素回路6(n個の画素回路)が一括して選択される。データ線駆動回路4は、制御信号CS2に基づき、映像信号DSに応じたn個の電圧をデータ線S1~Snにそれぞれ印加する。これにより、選択されたn個の画素回路6にn個の電圧がそれぞれ書き込まれる。有機EL素子7には画素回路6に書き込まれた電圧に応じた量の電流が流れ、有機EL素子7は流れる電流の量に応じた輝度で発光する。
【0019】
画素回路6の各行に対して、発光期間と非発光期間が設定される。発光制御線駆動回路5は、i行目の画素回路6の発光期間では発光制御線Eiに発光電圧(ここではローレベル電圧)を印加し、i行目の画素回路6の非発光期間では発光制御線Eiに非発光電圧(ここではハイレベル電圧)を印加する。
【0020】
以下、(m+1)個の単位回路11を接続順に0~m段目の単位回路という。表示制御回路3は、走査線駆動回路10に対して制御信号CS1として、初期化信号INIT、ゲートクロックGCK1、GCK2、ゲートスタートパルスGSP、および、制御電圧CVを出力する。初期化信号INITは、各段の単位回路11の初期化端子INITに供給される。ゲートクロックGCK1は、偶数段目の単位回路11のクロック端子CK1と奇数段目の単位回路11のクロック端子CK2とに供給される。ゲートクロックGCK2は、偶数段目の単位回路11のクロック端子CK2と奇数段目の単位回路11のクロック端子CK1とに供給される。ゲートスタートパルスGSPは、0段目の単位回路11の入力端子INに供給される。制御電圧CVは、各段の単位回路11の制御電圧端子CVに供給される。各段の単位回路11の出力端子OUTは、次段の単位回路11の入力端子INと走査線G0~Gmのうち対応する走査線とに接続される。
【0021】
図3は、単位回路11の回路図である。
図3に示すように、単位回路11は、9個のTFT:M1~M9、抵抗R1、および、2個のコンデンサC1、C2を含んでいる。TFT:M1~M9は、Pチャネル型TFTである。抵抗R1は、TFT:M1~M9の半導体部と同じ半導体層にP型半導体(P型ポリシリコン)を用いて形成される。
【0022】
抵抗R1の一端(
図3では右端)、TFT:M1、M3のドレイン電極、TFT:M9のソース電極、および、TFT:M4、M7のゲート電極は、ノードn1に接続される。TFT:M5のソース電極は、抵抗R1の他端に接続される。TFT:M6の一方の導通電極(
図3では右側の導通電極)とTFT:M8のゲート電極は、ノードn2に接続される。TFT:M2のソース電極とTFT:M4のドレイン電極は、TFT:M6の他方の導通電極に接続される。TFT:M9のゲート電極は、初期化端子INITに接続される。TFT:M5のゲート電極は、クロック端子CK1に接続される。TFT:M8のドレイン電極は、クロック端子CK2に接続される。TFT:M1、M2のゲート電極は、入力端子INに接続される。TFT:M3のゲート電極、TFT:M7のドレイン電極、および、TFT:M8のソース電極は、出力端子OUTに接続される。TFT:M1、M3、M4、M7のソース電極には、ハイレベル電圧VGHが印加される。TFT:M2、M5、M9のドレイン電極とTFT:M6のゲート電極には、ローレベル電圧VGLが印加される。コンデンサC1は、TFT:M7のゲート電極とソース電極の間に設けられる。コンデンサC2は、TFT:M8のゲート電極とソース電極の間に設けられる。抵抗R1の上には上部電極UEが形成され、上部電極UEは制御電圧端子CVに接続される。
【0023】
TFT:M1は、ソース電極にハイレベル電圧VGHが印加され、ドレイン電極がノードn1に接続された第1トランジスタとして機能する。抵抗R1の一端は、ノードn1に接続されている。TFT:M5は、ドレイン電極にローレベル電圧VGLが印加され、ソース電極が抵抗R1の他端に接続された第2トランジスタとして機能する。TFT:M1、M5と抵抗R1は、レシオ回路を構成する。TFT:M7は、ゲート電極がノードn1に接続され、ドレイン電極が出力端子OUTに接続された出力トランジスタとして機能する。抵抗R1は、第1および第2トランジスタの半導体部と同じ半導体層に形成される。
【0024】
初期化信号INITは、走査線駆動回路10の初期化期間ではローレベルになり、それ以外ではハイレベルになる。初期化期間では、TFT:M9はオンし、ノードn1の電圧はローレベルに初期化される。初期化期間以外では、TFT:M9はオフする。TFT:M6のゲート電極にはローレベル電圧VGLが固定的に印加されるので、TFT:M6は常にオンする。したがって、TFT:M6、M9は、単位回路11の通常時の動作に影響を与えない。
【0025】
図4は、走査線駆動回路10のタイミングチャートである。
図4に示すように、ゲートクロックGCK1、GCK2は、周期が2水平期間(2H)のクロック信号である。ゲートクロックGCK1、GCK2のハイレベル期間の長さは3/2水平期間であり、ローレベル期間の長さは1/2水平期間である。ゲートクロックGCK2は、ゲートクロックGCK1よりも1水平期間遅れている。ゲートスタートパルスGSPは、1フレーム期間に1回、ゲートクロックGCK1がローレベルのときにローレベルになり、それ以外ではハイレベルになる。制御電圧CVは、ローレベル電圧VGLよりも少し高い固定の負電圧である。制御電圧CVは、各段の単位回路11内の上部電極UEに印加される。
【0026】
図5は、単位回路11のタイミングチャートである。
図5において、時刻t1~t6の間隔はいずれも1/2水平期間である。上部電極UEの電圧は、ローレベル電圧VGLよりも少し高い固定の負電圧である。以下、ある端子経由で入力または出力される信号をその端子と同じ名称で呼ぶ。例えば、クロック端子CK1経由で入力される信号をクロック信号CK1という。
【0027】
時刻t1の直前では、クロック信号CK1、CK2、入力信号IN、ノードn2の電圧、および、出力信号OUTはハイレベル、ノードn1の電圧はローレベルである。したがって、TFT:M1~M3、M5、M8はオフ状態、TFT:M4、M7はオン状態である。
【0028】
時刻t1において、クロック信号CK1と入力信号INはローレベルに変化する。これに伴い、TFT:M1、M2、M5はオンする。ノードn1には、TFT:M1を介してハイレベル電圧VGHが印加されると共に、TFT:M5と抵抗R1を介してローレベル電圧VGLが印加される。抵抗R1の抵抗値は、TFT:M1のオン時の抵抗値よりも十分に大きい。このため、ノードn1の電圧は時刻t1以降にハイレベルに変化し、TFT:M4、M7はオフする。ノードn2には、TFT:M2を介してローレベル電圧VGLが印加される。このため、TFT:M4がオフすると、ノードn2の電圧はローレベルに変化し、これに伴いTFT:M8はオンする。次に時刻t2において、クロック信号CK1と入力信号INはハイレベルに変化する。これに伴い、TFT:M1、M2、M5はオフする。
【0029】
次に時刻t3において、クロック信号CK2はローレベルに変化する。このときTFT:M8はオン状態であるので、出力信号OUTはローレベルに変化する。TFT:M8のゲート電極とソース電極の間には、コンデンサC2が設けられている。このため、出力信号OUTがローレベルである間、ノードn2の電圧は通常のローレベルよりも低いレベルになる。したがって、出力信号OUTのローレベル電圧は、TFT:M8の閾値電圧分だけ上昇することなく、クロック信号CK2のローレベル電圧と同じレベルになる。出力信号OUTがローレベルに変化すると、TFT:M3はオンする。TFT:M3は、出力信号OUTがローレベルである間、ノードn1にハイレベル電圧VGHを印加する。
【0030】
次に時刻t4において、クロック信号CK2はハイレベルに変化する。このときTFT:M8はオン状態であるので、出力信号OUTはハイレベルに変化する。これに伴い、ノードn2の電圧は通常のローレベルに変化し、TFT:M3はオフする。
【0031】
次に時刻t5において、クロック信号CK1はローレベルに変化する。これに伴い、TFT:M5はオンする。ノードn1にはTFT:M5と抵抗R1を介してローレベル電圧VGLが印加されるので、ノードn1の電圧はローレベルに変化する。これに伴い、TFT:M4、M7はオンし、ノードn2の電圧はハイレベルに変化する。次に時刻t6において、クロック信号CK1はハイレベルに変化し、これに伴いTFT:M5はオフする。
【0032】
このように単位回路11は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルのときに、ノードn1の電圧をハイレベルにするセット動作を行い、入力信号INがハイレベルでクロック信号CK1がローレベルのときに、ノードn1の電圧をローレベルにするリセット動作を行う。ノードn1の電圧は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t1以降にハイレベルに変化し、入力信号INがハイレベルである間にクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t5以降にローレベルに変化する。ノードn2の電圧は、ノードn1の電圧がローレベルのときにハイレベルになり、それ以外のときにローレベルになる。出力信号OUTは、入力信号INよりも1水平期間遅れて1/2水平期間だけローレベルになる。
【0033】
0~m段目の単位回路11の出力端子OUTは、それぞれ、走査線G0~Gmに接続される。このため、
図4に示すように、走査線G0の電圧は、ゲートスタートパルスGSPの電圧よりも1水平期間遅れて1/2水平期間だけローレベルになる。走査線Giの電圧は、走査線Gi-1の電圧よりも1水平期間遅れて1/2水平期間だけローレベルになる。したがって、走査線G0~Gmの電圧は、1水平期間ずつ順に遅れて1/2水平期間だけローレベルになる。
【0034】
以下、抵抗R1と上部電極UEについて説明する。
図6は、単位回路11の一部を示すレイアウト図である。
図6には、TFT:M1、M5、抵抗R1、および、上部電極UEのレイアウトパターンが記載されている。以下、TFT:M1~M9の半導体層が形成される配線層を半導体層、TFT:M1~M9のゲート電極が形成される配線層をゲート配線層、TFT:M1~M9のソース電極またはドレイン電極に接続された配線が形成される配線層をソース配線層、有機EL素子7のアノード電極が形成される配線層をアノード電極層という。ゲート配線層は半導体層よりも上層にあり、ソース配線層はゲート配線層よりも上層にあり、アノード電極層はソース配線層よりも上層にある。
【0035】
図6において、右下がり斜線を付した領域は半導体層のパターンを示し、クロスハッチを付した領域はゲート配線層のパターンを示し、左下がり斜線を付した領域はソース配線層のパターンを示し、バツ印を付した長方形は半導体層とソース配線層を電気的に接続するコンタクトホールを示す。なお、図面の理解を容易にするために、
図6では、半導体層、ゲート配線層、および、ソース配線層以外の層のパターンは省略されており、パターンの近くには当該パターンに印加される電圧または当該パターンが接続される端子の名称が記載されている。
【0036】
図7は、
図6に示すレイアウト図に含まれる半導体層のパターンを示す図である。
図7に示すように、TFT:M5の位置には、p+領域、n領域、および、p+領域が形成されている。抵抗R1の位置には、p-領域が形成されている。TFT:M1の位置には、p+領域、p-領域、n領域、p-領域、および、p+領域が形成されている。なお、p+領域はP型
不純物を相対的に多い量だけ含む領域であり、p-領域はP型
不純物を相対的に少ない量だけ含む領域である。n領域は、チャネル領域として機能する。
【0037】
図8は、
図6のA-A’線断面図である。
図8に示すように、抵抗R1の上に上部電極UEが形成されている。上部電極UEは、ソース配線層に形成されている。抵抗R1の抵抗値は、例えば、0.1MΩ以上7MΩ以下である。抵抗R1と上部電極UEの間には、絶縁膜104と層間絶縁膜111、112が介在する。これらの絶縁膜の厚さの合計は、例えば、200nm以上1μm以下である。
【0038】
図9A~
図9Mは、走査線駆動回路10を含む有機ELパネル8の製造工程を示す図である。始めに、ポリイミド基板101上にバックコート102を堆積させ、半導体層のパターンを形成する位置にアモルファスシリコン103を堆積させ、二酸化ケイ素(SiO
2 )を用いて絶縁膜104を成膜する(
図9A)。次に、基板上のアモルファスシリコン103にエキシマレーザLSを順に照射することにより、アモルファスシリコン103をポリシリコン105に改質させる(
図9B)。次に、TFTを形成する位置にモリブデンを用いてTFTのゲート電極106を形成する(
図9C)。次に、ホウ素イオンを照射することにより、基板上のポリシリコン105にホウ素を注入する。この工程により、基板上のポリシリコン105のうち、ゲート電極106によって覆われていない部分はp-領域107になり、ゲート電極106によって覆われている部分はn領域108になる(
図9D)。
【0039】
次に、抵抗R1を形成する位置Pos_R1などにレジスト109を塗布し、ホウ素イオンをさらに照射する。この工程により、p-領域107のうちレジスト109によって覆われていない部分は、p+領域110に変化する(
図9E)。次に、レジスト109を剥離する(
図9F)。製造された有機ELパネル8では、位置Pos_R1のp-領域107は抵抗R1として機能する。次に、窒化ケイ素(SiN
x )を用いて層間絶縁膜111を形成し、窒化ケイ素および酸化ケイ素(SiO
x )を用いて層間絶縁膜112を形成する(
図9G)。次に、TFTのドレイン電極とソース電極を形成する位置に、絶縁膜104と層間絶縁膜111、112を貫通するコンタクトホール113を開口する(
図9H)。
【0040】
次に、基板上の所定位置に
チタン/アルミニウム/チタンを用いて各種の配線を形成する(
図9I)。この工程により、ハイレベル電圧VGHを供給する配線114、ローレベル電圧VGLを供給する配線115、TFTの電極間を接続する配線116などが形成される。また、コンタクトホール113に上記の金属材料が充填され、TFTのドレイン電極117とソース電極118が形成される。ドレイン電極117とソース電極118は、p+領域110と配線114~116を電気的に接続する。抵抗R1の上には、抵抗R1を覆うように上部電極UEが形成される。
【0041】
次に、ポリイミドを用いて平坦化膜119を形成する(
図9J)。次に、基板上の所定位置にスルーホールを開口し、基板上の所定位置に
チタン/アルミニウム/チタンを用いて配線120を形成する(
図9K)。次に、ポリイミドを用いて平坦化膜121を形成し、基板上の所定位置に銀を用いてアノード電極122を成膜する(
図9L)。次に、基板上の所定位置にポリイミドを用いてバンク123を形成する(
図9M)。
【0042】
以上の工程により、
図8に示す基板が得られる。
図8に示す基板に対して、有機EL層、カソード電極、および、封止膜を順に形成することにより、走査線駆動回路10を含む有機ELパネル8を製造することができる。なお、上記の材料は一例であり、上記以外の材料を用いてもよい。
【0043】
以下、
図24に示す単位回路91を備えた従来の走査線駆動回路と対比して、本実施形態に係る走査線駆動回路10の効果を説明する。
図10は、従来の走査線駆動回路の課題を説明するための図である。
図11は、走査線駆動回路10の効果を説明するための図である。
図10および
図11には、走査線駆動回路の単位回路内の抵抗付近の断面が記載されている。なお、図面の対比を容易にするために、対応する構成要素には同じ参照符号を付している。
【0044】
従来の走査線駆動回路(
図10)では、抵抗R9の上に上部電極は形成されていない。このため、抵抗R9の上に形成された絶縁膜(平坦化膜119、
121)やその界面に電荷ECが捕捉されたときに、電荷ECから出た電気力線は半導体層に形成された抵抗R9に入る。したがって、抵抗R9に誘起されるキャリアが変動し、抵抗R9の抵抗値は変動する。抵抗R9の抵抗値は、時間の経過と共に大きくなる。従来の走査線駆動回路では、抵抗R9の抵抗値が大きくなると、リセット不良が発生する。よって、従来の走査線駆動回路を備えた有機EL表示装置では、表示画面にちらつきなどの表示不良が発生する。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る走査線駆動回路10(
図11)では、抵抗R1の上に上部電極UEが形成されている。このため、抵抗R1の上に形成された絶縁膜やその界面に電荷ECが捕捉されたときに、電荷ECから出た電気力線は上部電極UEの作用によって抵抗R1には入らない。したがって、抵抗R1に誘起されるキャリアは変動せず、抵抗R1の抵抗値は変動しない。よって、走査線駆動回路10によれば、抵抗R1の特性変動に起因するリセット不良を防止することができる。また、走査線駆動回路10を備えた有機EL表示装置1によれば、表示画面にちらつきなどの表示不良が発生することを防止することができる。
【0046】
走査線駆動回路10では、抵抗R1はP型半導体を用いて形成されており、上部電極UEには固定の負電圧(制御電圧CV)が印加されている。上部電極UEの電圧を低くすると、抵抗R1の抵抗値は小さくなる。抵抗R1の抵抗値が小さいほど、ノードn1の電圧はハイレベルからローレベルに変化しやすい。したがって、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。よって、抵抗R1の特性変動に起因するリセット不良をより効果的に防止することができる。また、上部電極UEはソース配線層に形成されるので、抵抗R1と上部電極UEの間に水分や電荷を含みやすい有機膜を含まない。したがって、走査線駆動回路10をより安定的に動作させることができる。
【0047】
以上に示すように、本実施形態に係る走査線駆動回路10は、複数の単位回路11を多段接続した構成を有し、表示パネル(有機ELパネル8)と一体に形成されている。単位回路11は、一方の導通電極(ドレイン電極)に第1レベルの電圧(ハイレベル電圧VGH)が印加され、他方の導通電極(ドレイン電極)が第1ノード(ノードn1)に接続された第1トランジスタ(TFT:M1)と、一端が第1ノードに接続された抵抗R1と、一方の導通電極(ドレイン電極)に第2レベルの電圧(ローレベル電圧VGL)が印加され、他方の導通電極(ソース電極)が抵抗R1の他端に接続された第2トランジスタ(TFT:M5)と、制御電極(ゲート電極)が第1ノードに接続され、一方の導通電極(ドレイン電極)が出力端子OUTに接続された出力トランジスタ(TFT:M7)とを含んでいる。抵抗R1は、第1および第2トランジスタの半導体部と同じ半導体層に形成され、抵抗R1の上に上部電極UEが形成されている。
【0048】
走査線駆動回路10によれば、抵抗R1の上に上部電極UEを形成することにより、抵抗R1の上に形成された絶縁膜などに捕捉された電荷の影響を抵抗が受けることを防止し、抵抗R1の特性変動を小さくすることができる。したがって、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路10の動作不良を防止することができる。
【0049】
抵抗R1は、P型半導体(P型ポリシリコン)を用いて形成されている。したがって、抵抗R1を含む単位回路11を備えた走査線駆動回路10を表示パネルと一体に形成することができる。上部電極UEは、第1および第2トランジスタの制御電極(ゲート電極)よりも上層の配線層、具体的には、第1および第2トランジスタの導通電極(ソース電極およびドレイン電極)に接続される配線114~116と同じ配線層(ソース配線層)に形成されている。したがって、抵抗R1と上部電極UEの間に水分や電荷を含みやすい有機膜を含まないので、走査線駆動回路10をより安定的に動作させることができる。
【0050】
抵抗R1の抵抗値は、0.1MΩ以上7MΩ以下であることが好ましい。このような抵抗値を有する抵抗R1を用いることにより、単位回路11はセット動作とリセット動作を高速に行うことができる。抵抗R1と上部電極UEの間には、200nm以上1μm以下の厚さを有する絶縁膜(層間絶縁膜111、112)が介在することが好ましい。このような厚さを有する絶縁膜を設けることにより、抵抗R1と上部電極UEを好適な間隔を空けて配置することができる。
【0051】
第1トランジスタの制御電極(ゲート電極)には前段の単位回路の出力信号OUTが与えられ、第2トランジスタの制御電極にはクロック信号(ゲートクロックGCK1またはGCK2)が与えられている。これにより、第1および第2トランジスタを好適なタイミングでオンさせて、走査線駆動回路10を正しく動作させることができる。
【0052】
上部電極UEには固定の負電圧(制御電圧CV)が印加されており、負電圧は例えば-10V以上-5V以下である。上部電極UEにこのような負電圧を印加することにより、抵抗R1の抵抗値は小さくなる。したがって、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。
【0053】
図12は、本実施形態の変形例に係る走査線駆動回路の単位回路の断面図である。
図12に示す単位回路では、上部電極UEは、ソース配線層ではなく、有機EL素子7のアノード電極122と同じ配線層に形成されている。この場合、抵抗R1と上部電極UEの間には、絶縁膜として、層間絶縁膜111、112と平坦化膜119、121が介在する。変形例に係る走査線駆動回路によれば、第1の実施形態に係る走査線駆動回路10と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路の動作不良を防止することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
図13に示す走査線駆動回路20は、(m+1)個の単位回路21を多段接続した構成を有する。単位回路21は、初期化端子INIT、クロック端子CK1、CK2、入力端子IN、および、出力端子OUTを有する。以下、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0055】
図14は、単位回路21の回路図である。単位回路21では、抵抗R1の上に形成された上部電極UEには、ローレベル電圧VGLが固定的に印加されている。
図15は、単位回路21のタイミングチャートである。
図15に示すように、上部電極UEの電圧は、常にローレベル電圧VGLに等しい。
【0056】
このように上部電極UEにローレベル電圧VGLを印加しても、抵抗R1の上に形成された絶縁膜などに捕捉された電荷の影響を抵抗R1が受けることを防止し、抵抗R1の特性変動を小さくすることができる。したがって、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路20の動作不良を防止することができる。また、走査線駆動回路20には、制御電圧CVを供給する配線を設ける必要がない。
【0057】
本実施形態に係る走査線駆動回路20では、上部電極UEには単位回路21に供給されるローレベル電圧VGLに等しい固定の負電圧が印加されている。走査線駆動回路20によれば、制御電圧CVを供給する配線を設けることなく、第1の実施形態と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路10の動作不良を防止することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る走査線駆動回路は、第2の実施形態に係る走査線駆動回路20(
図13)において単位回路21を他の単位回路に置換したものである。以下、第2の実施形態との相違点を説明する。
【0059】
図16は、本実施形態に係る走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
図16に示す単位回路31では、抵抗R1の上に形成された上部電極UEは、ノードn1に接続されている。ノードn1は、TFT:M1のドレイン電極、抵抗R1の一端(
図16では右端)、TFT:M7のゲート電極などに接続されている。上部電極UEの電圧は、ノードn1の電圧に等しい。
【0060】
図17は、単位回路31のタイミングチャートである。
図17に示すように、上部電極UEの電圧は、ノードn1の電圧と同様に変化する。より詳細には、上部電極UEの電圧は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t1以降にハイレベルに変化し、入力信号INがハイレベルである間にクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t5以降にローレベルに変化する。時刻t1は単位回路31がセット動作を開始する時刻であり、時刻t5は単位回路31がリセット動作を開始する時刻である。
【0061】
第1の実施形態に係る走査線駆動回路10では、上部電極UEには固定の負電圧が印加されている。このため、抵抗R1の抵抗値は小さくなり、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。しかしながら、抵抗R1の抵抗値を小さくすると、単位回路11はセット動作を行いにくくなる。抵抗R1の抵抗値は、リセット動作のためには小さいことが好ましく、セット動作のためには大きいことが好ましい。
【0062】
そこで、本実施形態に係る走査線駆動回路では、上部電極UEはノードn1に接続されている。時刻t1において単位回路31がセット動作を開始すると、上部電極UEの電圧はノードn1の電圧と共に上昇してハイレベルになる。このため、単位回路31がセット動作を行っている間、上部電極UEに正電圧が印加され、抵抗R1の抵抗値は大きくなる。したがって、単位回路31はセット動作を容易に行うことができる。
【0063】
また、時刻t5において単位回路31がリセット動作を開始すると、上部電極UEの電圧はノードn1の電圧と共に下降してローレベルになる。このため、単位回路31がリセット動作を行っている間、上部電極UEに負電圧が印加され、抵抗R1の抵抗値は小さくなる。したがって、単位回路31はリセット動作を容易に行うことができる。
【0064】
本実施形態に係る走査線駆動回路では、上部電極UEは、第1トランジスタの他方の導通電極(TFT:M1のドレイン電極)と抵抗R1の一端に接続された第1ノード(ノードn1)に接続されている。本実施形態に係る走査線駆動回路によれば、第1の実施形態と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路の動作不良を防止することができる。また、単位回路31がセット動作を行うときには上部電極UEに正電圧を印加し、単位回路31がリセット動作を行うときには上部電極UEに負電圧を印加することにより、単位回路31はリセット動作とセット動作の両方を容易に行うことができる。
【0065】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る走査線駆動回路は、第2の実施形態に係る走査線駆動回路20(
図13)において単位回路21を他の単位回路に置換したものである。以下、第3の実施形態との相違点を説明する。
【0066】
図18は、本実施形態に係る走査線駆動回路の単位回路の回路図である。
図18に示す単位回路41では、抵抗R1の上に形成された上部電極UEは、抵抗R1の他端(
図18では左端)に接続されている。抵抗R1の他端は、TFT:M5のソース電極に接続されている。
【0067】
抵抗R1に電流が流れていないとき、TFT:M5のソース電極の電圧はノードn1の電圧に等しい。したがって、本実施形態に係る走査線駆動回路のタイミングチャートは、
図17に示すタイミングチャートとほぼ同じになる。上部電極UEを抵抗R1の他端に接続した単位回路41は、上部電極UEをノードn1に接続した第3の実施形態に係る単位回路31と同様に動作する。
【0068】
本実施形態に係る走査線駆動回路では、上部電極UEは、第2トランジスタの他方の導通電極(TFT:M5のソース電極)に接続された抵抗R1の他端に接続されている。本実施形態に係る走査線駆動回路によれば、第3の実施形態と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路の動作不良を防止することができる。また、単位回路41はリセット動作とセット動作の両方を容易に行うことができる。
【0069】
(第5の実施形態)
図19は、第5の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
図19に示す走査線駆動回路50は、(m+1)個の単位回路11を多段接続した構成を有する。以下、第1の実施形態との相違点を説明する。なお、走査線駆動回路50を備えた有機EL表示装置では、走査線駆動回路50と発光制御線駆動回路5を表示部2の同じ側に配置することが好ましい。
【0070】
表示制御回路3は、走査線駆動回路50に対して制御信号CS1として、初期化信号INIT、ゲートクロックGCK1、GCK2、および、ゲートスタートパルスGSPを出力する。これらの制御信号は、第1の実施形態と同様に、単位回路11の対応する端子に供給される。各段の単位回路11の出力端子OUTは、第1の実施形態と同様に、次段の単位回路11の入力端子INと走査線G0~Gmのうち対応する走査線とに接続される。
【0071】
発光制御線駆動回路5は、(m+1)個の単位回路9を多段接続した構成を有する。単位回路9は、初期化端子INIT、クロック端子CK1、CK2、入力端子IN、および、出力端子OUTを有する。以下、(m+1)個の単位回路9を接続順に0~m段目の単位回路といい、0段目の単位回路9の出力端子OUTが接続される配線をE0という。
【0072】
表示制御回路3は、発光制御線駆動回路5に対して制御信号CS3として、初期化信号INIT、エミッションクロックEMCK1、EMCK2、および、エミッションスタートパルスEMSPを出力する。これらの制御信号は、
図19に示すように、単位回路9の対応する端子に供給される。各段の単位回路9の出力端子OUTは、次段の単位回路9の入力端子INと、配線E0および発光制御線E1~Emのうち対応する配線とに接続される。0~m段目の単位回路11の制御電圧端子CVは、それぞれ、0~m段目の単位回路9の出力端子OUTに接続される。このため、0段目の単位回路11内の上部電極UEは配線E0に接続され、i段目の単位回路11内の上部電極UEは発光制御線Eiに接続される。
【0073】
図20は、走査線駆動回路50のタイミングチャートである。
図20において、n1_0~4は、それぞれ、0~4段目の単位回路11のノードn1の電圧を示す。
図20において、ゲートスタートパルスGSP、ゲートクロックGCK1、GCK2、および、走査線G0~Gmの電圧は、
図4に示すタイミングチャートと同様に変化する。
【0074】
エミッションクロックEMCK1、EMCK2は、周期が2水平期間のクロック信号である。エミッションクロックEMCK1、EMCK2のハイレベル期間の長さは3/2水平期間であり、ローレベル期間の長さは1/2水平期間である。エミッションクロックEMCK1は、ゲートクロックGCK1よりも3/4水平期間遅れている。エミッションクロックEMCK2は、エミッションクロックEMCK1よりも1水平期間遅れている。エミッションスタートパルスEMSPは、ゲートスタートパルスGSPがローレベルに変化する時刻よりも9/4水平期間早い時刻から3水平期間に亘ってハイレベルになる。
【0075】
単位回路9は、入力信号INがハイレベルである間にクロック信号CK1がローレベルに変化したときに出力信号OUTをハイレベルに変化させ、入力信号INがローレベルである間にクロック信号CK2がローレベルに変化したときに出力信号OUTをローレベルに変化させる。このため、出力信号OUTは、入力信号INよりも1水平期間遅れて3水平期間に亘ってハイレベルになる。したがって、配線E0および発光制御線E1~Emの電圧は、1水平期間ずつ順に遅れて3水平期間に亘ってハイレベルになる。同様に、0~m段目の単位回路11内の上部電極UEの電圧は、1水平期間ずつ順に遅れて3水平期間に亘ってハイレベルになる。
【0076】
図21は、本実施形態に係る単位回路11のタイミングチャートである。
図21に示すように、上部電極UEの電圧は、時刻t11においてハイレベルに変化し、時刻t12においてローレベルに変化する。時刻t11は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t1よりも5/4水平期間早い時刻である。時刻t12は、入力信号INがハイレベルである間にクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t5よりも1/4水平期間早い時刻である。このように上部電極UEには、正電圧と負電圧が切り替えて印加される。
【0077】
上部電極UEの電圧は、ノードn1の電圧がローレベルからハイレベルに変化し始める時刻t1よりも前の時刻t11においてハイレベルに変化し、ノードn1の電圧がハイレベルからローレベルに変化し始める時刻t5よりも前の時刻t12においてローレベルに変化する。このため、上部電極UEの電圧は、ノードn1の電圧がローレベルからハイレベルに変化するときにハイレベルであり、ノードn1の電圧がハイレベルからローレベルに変化するときにローレベルである。
【0078】
時刻t1において単位回路11がセット動作を開始するより前に、上部電極UEの電圧は既にハイレベルである。このため、単位回路11がセット動作を行っている間、上部電極UEに正電圧が印加され、抵抗R1の抵抗値は大きくなる。したがって、単位回路11はセット動作を容易に行うことができる。
【0079】
また、時刻t5において単位回路11がリセット動作を開始するより前に、上部電極UEの電圧は既にローレベルである。このため、単位回路11がリセット動作を行っている間、上部電極UEに負電圧が印加され、抵抗R1の抵抗値は小さくなる。したがって、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。
【0080】
以上に示すように、本実施形態に係る走査線駆動回路50では、表示パネル(有機ELパネル8)には複数の発光制御線E1~Emが形成されており、上部電極UEは複数の発光制御線E1~Emのうち対応する発光制御線に接続されている。上部電極UEには正電圧(ハイレベル電圧)と負電圧(ローレベル電圧)が切り替えて印加され、第1ノード(ノードn1)の電圧が第1レベル(ハイレベル)から第2レベル(ローレベル)に変化するときに、上部電極UEには負電圧が印加されている。第1ノードの電圧が第2レベルから第1レベルに変化するときに、上部電極UEには正電圧が印加されている。
【0081】
本実施形態に係る走査線駆動回路50によれば、第1の実施形態と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路50の動作不良を防止することができる。また、単位回路11がセット動作を開始するより前に上部電極UEに正電圧を印加し、単位回路11がリセット動作を開始するより前に上部電極UEに負電圧を印加することにより、単位回路11はリセット動作とセット動作の両方を容易に行うことができる。また、上部電極UEを表示パネル(有機ELパネル8)に形成された発光制御線に接続することにより、簡単な構成で上部電極UEに正電圧と負電圧を切り替えて印加することができる。
【0082】
(第6の実施形態)
図22は、第6の実施形態に係る走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
図22に示す走査線駆動回路60は、(m+1)個の単位回路11を多段接続した構成を有する。以下、第5の実施形態との相違点を説明する。
【0083】
図22に示す発光制御線駆動回路5の構成は、第5の実施形態と同じである。表示制御回路3は、発光制御線駆動回路5に対して制御信号CS3として、初期化信号INIT、エミッションクロックEMCK1、EMCK2、および、エミッションスタートパルスEMSPを出力する。
【0084】
走査線駆動回路60の偶数段目の単位回路11の制御電圧端子CVには、表示制御回路3から出力されたエミッションクロックEMCK2が供給される。走査線駆動回路60の奇数段目の単位回路11の制御電圧端子CVには、表示制御回路3から出力されたエミッションクロックEMCK1が供給される。したがって、偶数段目の単位回路11内の上部電極UEの電圧はエミッションクロックEMCK2と同様に変化し、奇数段目の単位回路11内の上部電極UEの電圧はエミッションクロックEMCK1と同様に変化する。本実施形態に係る走査線駆動回路60のタイミングチャートは、図20に示すタイミングチャートと同じである。
【0085】
図23は、本実施形態に係る単位回路11のタイミングチャートである。上述したように、上部電極UEの電圧は、エミッションクロックEMCK1、EMCK2のいずれかと同様に変化する。
図23において、上部電極UEの電圧は、時刻t21から時刻t22までの期間、および、時刻t23から時刻t24までの期間ではローレベルであり、それ以外ではハイレベルである。時刻t21は、入力信号INとクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t1よりも1/4水平期間早い時刻である。時刻t22は、時刻t1よりも1/4水平期間遅い時刻である。時刻t23は、入力信号INがハイレベルである間にクロック信号CK1がローレベルに変化する時刻t5よりも1/4水平期間早い時刻である。時刻t24は、時刻t5よりも1/4水平期間遅い時刻である。
【0086】
上部電極UEの電圧は、ノードn1の電圧がハイレベルからローレベルに変化し始める時刻t5よりも前の時刻t23においてローレベルに変化する。このため、ノードn1の電圧がハイレベルからローレベルに変化するときに、上部電極UEの電圧はローレベルである。時刻t5において単位回路11がリセット動作を開始するより前に、上部電極UEの電圧は既にローレベルである。このため、単位回路11がリセット動作を行っている間、上部電極UEに負電圧が印加され、抵抗R1の抵抗値は小さくなる。したがって、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。
【0087】
なお、走査線駆動回路60を備えた有機EL表示装置では、発光制御線駆動回路5は必ずしも有機ELパネル8と一体に形成されている必要はない。発光制御線駆動回路5が有機ELパネル8と別に形成されている場合でも、有機ELパネル8にエミッションクロックEMCK1、EMCK2を伝搬する2本の配線を形成し、偶数段目の単位回路11の制御電圧端子CVをエミッションクロックEMCK2を伝搬する配線に接続し、奇数段目の単位回路11の制御電圧端子CVをエミッションクロックEMCK1を伝搬する配線に接続すればよい。
【0088】
以上に示すように、本実施形態に係る走査線駆動回路60では、表示パネル(有機ELパネル8)には発光制御用の複数のクロック信号(エミッションクロックEMCK1、EMCK2)を伝搬する複数の配線が形成されており、上部電極UEは複数の配線のうち対応する配線に接続されている。
【0089】
本実施形態に係る走査線駆動回路60によれば、第1の実施形態と同様に、抵抗R1の特性変動に起因する走査線駆動回路60の動作不良を防止することができる。また、単位回路11がリセット動作を開始するより前に上部電極UEに負電圧を印加することにより、単位回路11はリセット動作を容易に行うことができる。また、上部電極UEを表示パネル(有機ELパネル8)に形成された発光制御用のクロック信号を伝搬する配線に接続することにより、簡単な構成で上部電極UEに正電圧と負電圧を切り替えて印加することができる。
【0090】
以上に述べた実施形態に係る走査線駆動回路については、各種の変形例を構成することができる。例えば、変形例に係る走査線駆動回路の単位回路は、上記の態様に接続された第1トランジスタ、抵抗、第2トランジスタ、および、出力トランジスタを含み、半導体層に形成された抵抗の上に上部電極が形成されている限り、他の構成を有していてもよい。変形例に係る走査線駆動回路を備えた表示装置は、任意の画素回路を備えていてもよい。変形例に係る走査線駆動回路では、電圧制御回路が上部電極UEに正電圧と負電圧を切り替えて印加してもよい。電圧制御回路は、第1ノード(ノードn1)の電圧が第1レベル(ハイレベル)から第2レベル(ローレベル)に変化するときに、上部電極UEに負電圧を印加するように構成される。より好ましくは、電圧制御回路は、第1ノードの電圧が第2レベルから第1レベルに変化するときに、上部電極UEに正電圧を印加するように構成される。このような電圧制御回路を用いた場合でも、走査線駆動回路の単位回路はリセット動作(または、リセット動作とセット動作の両方)を容易に行うことができる。
【0091】
ここまで、発光素子を含む画素回路を備えた表示装置の例として、有機EL素子(有機発光ダイオード)を含む画素回路を備えた有機EL表示装置について説明したが、同様の方法で、無機発光ダイオードを含む画素回路を備えた無機EL表示装置や、量子ドット発光ダイオードを含む画素回路を備えたQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)表示装置や、ミニLEDまたはマイクロLEDを含む画素回路を備えたLED表示装置を構成してもよい。また、以上に述べた表示装置の特徴をその性質に反しない限り任意に組み合せて、上記実施形態および変形例の特徴を併せ持つ表示装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…有機EL表示装置
2…表示部
3…表示制御回路
4…データ線駆動回路
5…発光制御線駆動回路
6…画素回路
7…有機EL素子
8…有機ELパネル
10、20、50、60…走査線駆動回路
11、21、31、41…単位回路