(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】イソインドリン誘導体
(51)【国際特許分類】
C09B 57/04 20060101AFI20230925BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20230925BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20230925BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20230925BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230925BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C09B57/04 CSP
C09D7/41
C09D11/037
C09D17/00
C09D201/00
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2022519781
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020077323
(87)【国際公開番号】W WO2021063999
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519358542
【氏名又は名称】サン ケミカル カラーズ アンド エフェクツ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Sun Chemical Colors & Effects GmbH
【住所又は居所原語表記】An der Rheinschanze 1, 67059 Ludwigshafen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ルフ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ホルツヒューター
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルデュス デ ケイザー
(72)【発明者】
【氏名】ローマン レンツ
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113671(JP,A)
【文献】特開昭50-109920(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02936748(DE,A1)
【文献】特開平07-258565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/04
C09D 7/41
C09D 11/037
C09D 17/00
C09D 201/00
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Xは、
Nであり、
Yは、
COOH、その塩、SO
3
Hもしくはその塩で置換されかつ任意にハロゲン、C
1
~C
4
-アルキルで置換されているC
6
~C
18
-アリール基であり、
R
1は、互いに独立して、ハロゲンまたはC
1~C
4-アルキルであり、前記アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており
、
nは0、1、2、3または4であ
る]のイソインドリン誘導体。
【請求項2】
Yは、COOH、その塩、SO
3Hもしくはその塩で置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニリルである、請求項
1記載のイソインドリン誘導体。
【請求項3】
Yは、SO
3Hまたはその塩で置換されているフェニルまたはナフチルである、請求項
1または
2記載のイソインドリン誘導体。
【請求項4】
誘導体が顔料形態である、請求項1から
3までのいずれか1項記載のイソインドリン誘導体。
【請求項5】
顔料組成物であって、
(a)請求項1から
4までのいずれか1項において定義される式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む、顔料組成物。
【請求項6】
イソインドリン顔料(b)が、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ66、ピグメントオレンジ69、ピグメントレッド260またはそれらの組み合わせから選択される、請求項
5記載の顔料組成物。
【請求項7】
成分(a)の量が、顔料(b)の総重量を基準にして、0.5~50重量
%である、請求項
5または
6記載の顔料組成物。
【請求項8】
請求項1から
4までのいずれか1項において定義されるイソインドリン誘導体を調製するための方法であって、前記方法は、1,3-ジイミノイソインドリン、式H
2N-Y(IV)のアミノ化合物、およびバルビツール酸をpH≦7で反応させるステップを含む、方法。
【請求項9】
前記反応を、ワンポット反応として、または
a)1,3-ジイミノイソインドリンと式H
2N-Y(IV)のアミノ化合物とを反応させるステップと、
b)ステップa)の生成物をバルビツール酸とpH≦7で反応させるステップと
を含む2段階反応で実施する、請求項
8記載の方法。
【請求項10】
高分子量有機材
料を着色するための、請求項1から
4までのいずれか1項において定義されるイソインドリン誘導体、または請求項
5から
7までのいずれか1項において定義される顔料組成物の使用。
【請求項11】
イソインドリン顔料に対する結晶成長抑制剤またはレオロジー改良剤としての、請求項1から
4までのいずれか1項において定義されるイソインドリン誘導体の使用。
【請求項12】
請求項
5から
7までのいずれか1項において定義される顔料組成物、または請求項1から
4までのいずれか1項において定義されるイソインドリン誘導体を含むレジスト配合物を用いて製造されるカラーフィルタ。
【請求項13】
高分子量有機材
料を着色するための方法であって、請求項1から
4までのいずれか1項において定義されるイソインドリン誘導体、または請求項
5から
7までのいずれか1項において定義される顔料組成物を、高分子
量有機材料に添加する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソインドリン誘導体、および当該イソインドリン誘導体をイソインドリン顔料と組み合わせて含有する顔料組成物に関する。このイソインドリン誘導体および顔料組成物は、例えば、高分子量有機材料、特に塗料、印刷インク、カラーフィルタ用途用のレジスト配合物、電子写真トナー、化粧品、プラスチック、フィルムまたは繊維の着色用として適している。
【0002】
発明の背景
顔料は、適用媒体中に分散されると、当該媒体に色を付与する。粒子サイズ、粒子サイズ分布または結晶構造のような顔料の物理的特性は、特定の用途に対する特定の顔料の有効性および適合性を決定するパラメータの一部である。このようなパラメータは、顔料誘導体を使用することによって影響を受ける可能性がある。
【0003】
顔料誘導体は、構造的に顔料と類似しており、一般に特定の効果を有する基によって置換されている。誘導体は、通常、顔料の色彩特性および/または性能特性を改善するために顔料に添加される。有機顔料と同じまたは類似の発色団を有する顔料誘導体を使用することがしばしば適している。
【0004】
イソインドリン顔料、特にバルビツール骨格を有する顔料は、加工中、例えば押出成形またはカラーフィルタ等の製造中に熱にさらされると、変色したり結晶サイズが大きくなったりする傾向にあり得る。したがって、200℃を超える温度は、所望の粒子サイズひいては色彩に悪影響を及ぼす可能性がある。特に、カラーフィルタ用途でのイソインドリン顔料の使用には、非常に小さな顔料粒子が必要である。
【0005】
さらに、イソインドリン顔料は、例えば印刷インクにおいて、そのレオロジー特性に関する要件を常に満たすとは限らない。
【0006】
このクラスで一般的に使用される顔料は、例えば、C.I.(カラーインデックス)ピグメントイエロー139およびC.I.ピグメントイエロー185である。例えば、市販のピグメントイエロー139は、カラーフィルタ用途での使用に適したIrgaphor(登録商標)Yellow S 2150 CFである。しかしながら、当該顔料は、カラーフィルタ用途で所望されるような高いコントラスト比の要件を満たさない可能性が多い。
【0007】
イソインドリン発色団に基づく特定の誘導体を含有する組成物は、当技術分野で知られている。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0017273号明細書には、カラーフィルタ用途の顔料分散体が開示されている。例えば、ピグメントレッド254、ピグメントイエロー139および式(V)のスルホン化イソインドリン誘導体を含む赤色カラーフィルタセグメント用の分散体は、1週間後にもほぼ粘度変化を有しないことが記載されている。当該分散体を含むレジスト配合物は、良好な現像性を示す。
【化1】
【0009】
特開2012-236882号公報には、式(VI)のピグメントイエロー139をベースとするスルホン化顔料誘導体をピグメントイエロー150と組み合わせて含有するカラーフィルタ用黄色感光性樹脂組成物が開示されている。当該組成物は、ピグメントイエロー150およびピグメントイエロー139を含有する組成物よりも低い粘度および良好な分散安定性を有していることが記載されている。
【化2】
【0010】
イソインドリン顔料に基づく組成物は、例えば、米国特許第4764217号明細書に記載されている。ピグメントオレンジ66およびモノスルホン化イソインドリン化合物、例えば式(VII)の化合物を含有する組成物は、アルキド塗料系に組み込むと、高い光沢および良好なオールラウンド耐性を有する強いオレンジ色の表面コーティングを提供することが記載されている。しかしながら、当該構造は、通常、バルビツール骨格を持つ黄色のイソインドリンと色調の点で相容れない。
【化3】
【0011】
米国特許出願公開第2016/0327710号明細書には、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(ピグメントグリーン58)、ピグメントイエロー150および顔料分散剤として式(VIII)の酸性イソインドリン誘導体を含むカラーフィルタ用着色組成物が開示されている。エポキシ基含有化合物をフタルイミドと組み合わせて使用することによって、カラーフィルタセグメントの加熱中の針状結晶の発生を効果的に抑制することができる。酸性誘導体は、通常、カラーフィルタポイントに望ましくない赤色シフト(reddish shift)を付与する。
【化4】
【0012】
同様の酸性イソインドリン誘導体は、特開2006-146078号公報に開示されている。ピグメントイエロー185およびピグメントイエロー139に基づくカラーフィルタ組成物は、良好な分散安定性および高いコントラストを有することが記載されている。酸性誘導体は、通常、カラーフィルタポイントに望ましくない赤色シフトを付与する。
【0013】
特開2019-113671号公報には、式(1)でBがピリミジン-2,4,6-トリオンを表してよく、X1が-O-または-NH-を表し、Yがアルキレンまたはアリーレンを表し、R1が任意に置換されたアルキルを表す、有機顔料および顔料分散剤を含有するカラーフィルタ用着色組成物が開示されている。特開2018-062644号公報には、カラーフィルタに使用可能な化合物を含む着色組成物が開示されている。特開2007-112876号公報には、カラーフィルタに使用可能なイソインドリン顔料が開示されている。米国特許第4866113号明細書には、高分子材料または印刷インクを彩色するのに適した顔料が開示されている。英国特許出願公開第2177105号明細書には、式(III)でRが-CONH2または2-ベンズイミダゾリルを表してよい顔料が開示されている。米国特許第4340735号明細書には、印刷インクおよびプラスチックに使用可能な顔料が開示されている。独国特許出願公開第2936748号明細書には、式(I)でYがピリミジン-2,4,6-トリオンを表してよい化合物が開示されている。米国特許第4237293号明細書には、XがNに相当する、印刷インクに使用可能な化合物が開示されている。
【0014】
しかしながら、イソインドリン顔料に基づく顔料組成物は、カラーフィルタ、インクまたはプラスチック用途のような用途に必要なすべての要件、例えば、高い彩度、正確な色点、高い透過率、高いコントラスト比、熱安定性、高分散性および高分散安定性のような加工容易性を満たさない。
【0015】
それゆえ、各種適用媒体において、イソインドリン顔料、特にバルビツール骨格を有するイソインドリン顔料の色彩特性を適切に改善する顔料誘導体が依然として必要とされている。
【0016】
したがって、本発明の目的は、イソインドリン顔料の結晶サイズおよび/またはイソインドリン顔料に基づく組成物のレオロジー挙動を調節する顔料誘導体を提供することである。
【0017】
さらに、本発明の目的は、改善された色彩、特に改善された色の濃さを有しかつ/または黄色顔料、特にピグメントイエロー139もしくはピグメントイエロー185に色彩的に近いイソインドリン顔料に基づく顔料組成物を提供することである。
【0018】
さらに、本発明の目的は、加工段階(分散体の適用から完全硬化まで)中に熱処理を施した場合に、改善された色彩特性、特に高いコントラスト比を示すカラーフィルタを製造するための顔料組成物を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の目的は、容易に加工可能であるカラーフィルタまたは印刷インクを製造するための顔料組成物を提供することである。
【0020】
さらに、本発明の目的は、例えば、イソインドリン顔料、特にピグメントイエロー139またはピグメントイエロー185に基づく組成物に対して、成長抑制剤および/またはレオロジー調整剤として使用される顔料誘導体を提供することである。
【0021】
さらに、本発明の目的は、各種顔料、特に赤色、橙色、緑色または青色の顔料をシェーディングするための着色剤を提供することである。
【0022】
発明の概要
現在、イソインドリン誘導体は、イソインドリン顔料の成長抑制剤および/またはイソインドリン顔料を含有する組成物中のレオロジー調整剤として有用であることが見出されている。さらに、イソインドリン誘導体は、着色剤、特に顔料として適している。
【0023】
したがって、第1の態様において、本発明は、式(I)
【化5】
[式中、
Xは、N、C-CNまたはC-COR
2であり、
Yは、酸性基または塩基性基を有する基であり、
R
1は、互いに独立して、ハロゲンまたはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、
R
2は、C
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、
nは0、1、2、3または4であり、
ただし、XがC-CNまたはC-COR
2である場合、Yは酸性基を含まない]のイソインドリン誘導体に関する。
【0024】
更なる態様において、本発明は、
(a)本明細書で定義される式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む顔料組成物に関する。
【0025】
更なる態様において、本発明は、本明細書で定義されるイソインドリン誘導体を調製するための方法に関し、この方法は、1,3-ジイミノイソインドリン、式H2N-Y(IV)のアミノ化合物、およびバルビツール酸をpH≦7で反応させるステップを含む。
【0026】
更なる態様において、本発明は、高分子量有機材料を着色するための、本明細書で定義されるイソインドリン誘導体、または本明細書で定義される顔料組成物の使用に関する。
【0027】
更なる態様において、本発明は、イソインドリン顔料のための結晶成長抑制剤またはレオロジー改良剤としての、本明細書で定義されるイソインドリン誘導体の使用に関する。
【0028】
更なる態様において、本発明は、本明細書で定義される顔料組成物、または本明細書で定義されるイソインドリン誘導体を含むレジスト配合物を用いて製造されるカラーフィルタに関する。
【0029】
更なる態様において、本発明は、高分子量有機材料を着色するための方法であって、本明細書で定義されるイソインドリン誘導体、または本明細書で定義される顔料組成物を、高分子量有機材料に添加する、方法に関する。
【0030】
発明の詳細な説明
アルキル、例えば、C1~C4-アルキルは、可能であれば、線状または分岐状の炭素原子の所定の範囲内にあり得る。例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチルおよびt-ブチル、好ましくはメチルおよびエチル、より好ましくはメチルが挙げられる。各アルキルは、ハロゲン、例えば、I、Br、ClまたはF、好ましくはClで1回以上置換されていてよい。
【0031】
アルキレン、例えば、C1~C6-アルキレンまたはC1~C4-アルキレン、好ましくはC1~C4-アルキレンは、上記で定義されるアルキルから、当該アルキルの任意の末端炭素原子から水素原子を引き抜くことによって誘導されてよい。例としては、メチレン、1,2-エタンジイル、1,1-エタンジイル、1,1-プロパンジイル、1,2-プロパンジイル、2,2-プロパンジイル、1,3-プロパンジイル、2-メチル-2,3-プロパンジイル、1,1-ブタンジイル、1,2-ブタンジイル、2,2-ブタンジイル、2,3-ブタンジイル、1,3-ブタンジイル、1,4-ブタンジイル、1,5-ペンタンジイルおよび1,6-ヘキサンジイルが挙げられる。これらのアルキレン基は、1個以上のNHの基を含んでいてよい。
【0032】
アリール、例えば、C6~C18-アリール、またはC6~C12-アリールは、フェニル、フルオレニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルの炭素原子の所定の範囲内にあり、インダニルなどの縮合環を有していてよい。好ましい例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、3-または4-ビフェニリルが挙げられる。各アリールは、非置換またはハロゲンもしくはC1~C4-アルキルで1回以上置換されていてよい。
【0033】
ヘテロアリール、例えば、C3~C18-ヘテロアリールまたはC6~C18-ヘテロアリールは、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、キサンテニル、ジベンゾフラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、ピリミジニル、ピラジニル、イソインドリル、インドリル、3H-インドリル、キノキサリニル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリル、フェナジニル、フェノチアジニル、またはフェノキサジニルの炭素原子の所定の範囲内であり得る。各ヘテロアリールは、非置換またはハロゲンもしくはC1~C4-アルキルで1回以上置換されていてよい。「ヘテロアリール」という用語は、上記のヘテロアリール基と1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,8-ナフチレン、1,4-ナフチレンまたは2,6-ナフチレンのようなアリーレン基の組み合わせも含み得る。
【0034】
ハロゲン(Hal)は、I、Br、ClまたはFを示し、好ましくはアルキル上のClおよびアリール上のClまたはBrを示す。
【0035】
DおよびR4によって形成される5員または6員環の例としては、3~6個の炭素原子および任意にO、SまたはNR7から選択される追加の1個のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルカンまたはヘテロシクロアルケンが挙げられる。
【0036】
R5およびR6によって形成される5員または6員環の例としては、3~6個の炭素原子および任意に1個のNR8を有するヘテロシクロアルカンまたはヘテロシクロアルケンが挙げられる。
【0037】
このような5員または6員環の適切な例としては、
【化6】
が挙げられる。
【0038】
「置換された」という用語は、「1回以上置換された」、すなわち、可能であれば、1~3回、好ましくは1または2回、より好ましくは1回置換されたことを意味する。置換基が1つの基中に2回以上出現する場合、各出現箇所において異なっていてよい。
【0039】
式(I)のイソインドリン誘導体は、好ましくは、式(I)の着色剤である。
【0040】
基(R1)nは、好ましくは、nが0である基、またはR1がCl、Brもしくはメチルであり、nが1もしくは2、特に1である基(R1)nである。より好ましくは、基(R1)nは、nが0である基である。
【0041】
したがって、イソインドリン誘導体は、好ましくは、nが0である式(I)のイソインドリン誘導体である。
【0042】
酸性基は、COOH、その塩、SO3Hまたはその塩から選択されてよく、例えば、SO3H基またはその塩が挙げられる。酸性基は、1回以上、より好ましくは1回または2回、特に1回存在してよい。例えば、式(I)のイソインドリン誘導体内には、1つのSO3Hまたはその塩が存在する。
【0043】
式(I)内の基=X-Yは、例えば、=N-Yであってよい。
【0044】
したがって、好ましい実施形態において、イソインドリン誘導体は、式(I)
【化7】
[式中、
XはNであり
Yは、酸性基または塩基性基を有する基であり、
R
1は、互いに独立して、ハロゲンまたはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、
nは0、1、2、3または4であり、好ましくは、nは0、1または2であり、より好ましくは、nは0である]のものである。
【0045】
式(I)内の基=X-Yは、例えば、=N-Yであってよく、式中、Yは、COOH、その塩、SO
3Hもしくはその塩で置換されているC
6~C
18-アリールまたはC
3~C
18-ヘテロアリール基である。C
6~C
18-アリールまたはC
3~C
18ヘテロアリール基は、例えば、ハロゲン、C
1~C
4-アルキルまたは
【化8】
の基でさらに置換されていてよく、式中、
R
3は、互いに独立して、ハロゲンまたはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、mは0、1、2、3または4である。
【0046】
したがって、好ましい実施形態において、イソインドリン誘導体は、式(I)
[式中、
XはNであり、
Yは、COOH、その塩、SO
3Hもしくはその塩で置換されかつ任意にハロゲン、C
1~C
4-アルキルで置換されているC
6~C
18-アリールもしくはC
3~C
18-ヘテロアリール基、または
【化9】
[式中、
R
3は、互いに独立して、ハロゲンもしくはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換もしくはハロゲンで置換されており、
mは0、1、2、3または4である]の基である]のものである。
【0047】
基(R3)mは、好ましくは、mが0である基、またはR3がCl、Brもしくはメチルであり、mが1もしくは2、特に1である基(R3)mである。より好ましくは、基(R3)mは、mが0である基である。
【0048】
例えば、イソインドリン誘導体は、式(I)[式中、XはNであり、
Yは、COOH、その塩、SO3Hもしくはその塩で置換されかつ任意にBr、Clもしくはメチルで置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニリルである]のものである。
【0049】
好ましいのは、式(I)[式中、XはNであり、
Yは、SO3Hまたはその塩で置換されているフェニルまたはナフチルである]のイソインドリン誘導体である。
【0050】
酸性基で置換されているC
6~C
18-アリール基の例としては、式
【化10】
[式中、
R
9は、互いに独立して、各出現箇所においてCl、Brまたはメチルから選択されてよく、pは0、1または2であってよく、特にpは0または1である]の基を挙げることができる。
【0051】
特にpは0である。
【0052】
酸性基で置換されているC
3~C
18-ヘテロアリール基の例としては、式
【化11】
[式中、
R
10は、互いに独立して、各出現箇所においてCl、Brもしくはメチルから選択されてよく、pは0、1もしくは2であってよく、特にpは0もしくは1であり、特にpは0であり、R
11は、水素もしくはC
1~C
4-アルキルであるか、
または酸性基がSO
3Hの代わりにCOOHである式(Xa)~(Xn)の対応する基である]の基を挙げることができる。
【0053】
酸性基で置換されているC
6~C
18-アリール基の好ましい例としては、式
【化12】
または酸性基がSO
3Hの代わりにCOOHである(IXi)~(IXs)の対応する基を挙げることができる。
【0054】
酸性基で置換されているC6~C18-アリール基のより好ましい例としては、SO3H基を有する式(IXi)~(IXs)の基を挙げることができる。
【0055】
酸性基で置換されているC
6~C
18-ヘテロアリール基の好ましい例としては、式
【化13】
または酸性基がSO
3Hの代わりにCOOHである式(Xo)~(Xr)の対応する基を挙げることができる。
【0056】
酸性基で置換されているC6~C18-アリール基のより好ましい例としては、SO3H基を有する式(IXi)~(IXs)の基を挙げることができる。
【0057】
式(I)内の基=X-Yは、例えば、式
【化14】
の基であってよい。
【0058】
あるいは式(I)内の基=X-Yは、例えば、式
【化15】
[式中、
R
2は、非置換またはハロゲンで置換されているC
1~C
4-アルキルであり、
R
4は、HまたはC
1~C
4-アルキルであり、
Dは、塩基性基、好ましくはアミノ基を含む]の基であってよい。
【0059】
したがって、好ましい態様において、本発明は、式(I)
[式中、
Xは、C-CNもしくはC-COR2であり、
Yは、式-A-D(III)の基であり、式中、
Aは、-CO-NR4-もしくは-SO2-NR4-であり、
Dは、-(C1~C6-アルキレン)-NR5R6もしくは-(C1~C6-アルキレン)-NH-NR5R6であり、当該C1~C6-アルキレンは、NHによって中断されていてよく、
R2は、C1~C4-アルキルであり、
R4は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはDとR4とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、C1~C4-アルキルによって置換されかつ/もしくはNR7、OもしくはSによって中断されていてよく、
R5およびR6は、互いに独立して、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはR5とR6とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、NR8によって中断されかつ任意にC1~C4-アルキルによって置換されており、
R7は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
R8は、H、C1~C4-アルキルもしくはフェニルである]のイソインドリン誘導体に関する。
【0060】
基Dは、例えば、-(C1~C4-アルキレン)-N(C1~C4-アルキル)2、好ましくは-(C2~C4-アルキレン)-N(C1~C4-アルキル)2であってよい。
【0061】
基R4は、好ましくはH、メチルまたはエチル、特にHである。
【0062】
さらに好ましいのは、式(I)
[式中、
XはC-CNであり、
Yは式-A-D(III)の基であり、式中
Aは-CO-NR4-であり、
Dは、-(C1~C6-アルキレン)-NR5R6もしくは-(C1~C6-アルキレン)-NH-NR5R6であり、当該C1~C6-アルキレンは、NHによって中断されていてよく、
R4は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはDとR4とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、C1~C4-アルキルによって置換されかつ/もしくはNR7、OもしくはSによって中断されていてよく、
R5およびR6は、互いに独立して、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはR5とR6とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、NR8によって中断されかつ任意にC1~C4-アルキルによって置換されており、
R7は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
R8は、H、C1~C4-アルキルもしくはフェニルである]のイソインドリン誘導体である。
【0063】
さらに好ましいのは、式(I)
[式中、
XはC-CNであり、
Yは式-A-D(III)の基であり、式中、
Aは-CO-NR4-または-SO2-NR4-であり、
Dは-(C1~C6-アルキレン)-NR5R6であり、当該C1~C6-アルキレンはNHで中断されていてよく、
R4はHであり、
R5およびR6は、互いに独立して、HまたはC1~C4-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチルである]のイソインドリン誘導体である。
【0064】
さらに好ましいのは、式(I)
[式中、
XはC-CNであり、
Yは式-A-D(III)の基であり、式中、
Aは-CO-NR4-であり、
Dは-(C1~C6-アルキレン)-NR5R6であり、
R4はHであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1~C4-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチルである]のイソインドリン誘導体である。
【0065】
式-A~D(III)の例としては、例えば、-SO
2NH(CH
2)
3N(CH
3)
2、-SO
2NH(CH
2)
3N(C
2H
5)
2、-SO
2NH(CH
2)
3N(nC
4H
9)
2、-CONH(CH
2)
3N(CH
3)
2、-CONH(CH
2)
3N(C
2H
5)
2、-CONH(CH
2)
3N(nC
4H
9)
2、
【化16】
を挙げることができる。
【0066】
式-A~D(III)の基の好ましい例としては、式
【化17】
[式中、
R
12は、HまたはC
1~C
4-アルキル、好ましくはHまたはメチル、特にHである]の基を挙げることができる。
【0067】
イソインドリン誘導体は、1,3-ジイミノイソインドリン、式H2N-Y(IV)のアミノ化合物、およびバルビツール酸を酸性条件下で反応させることによって調製することができる。
【0068】
したがって、更なる態様において、本発明は、本明細書で定義されるイソインドリン誘導体を調製するための方法に関し、この方法は、pH≦7で1,3-ジイミノイソインドリン、式H2N-Y(IV)のアミノ化合物、およびバルビツール酸を反応させるステップを含む。
【0069】
本方法は、ほぼ等モル量の1,3-ジイミノイソインドリン、式H2N-Y(IV)のアミノ化合物およびバルビツール酸の懸濁液を、通常pH≦7、特に2~7の範囲で反応させるワンポット反応として実施することができる。X=Nの式(I)のイソインドリン誘導体の場合、この方法は、より好ましくは3~6の範囲のpHで実施することができる。
【0070】
酸性条件は、酢酸、ギ酸、ブタン酸または硫酸のようなブレンシュテット酸で、任意に水との混合において調整してよい。しかしながら、ルイス酸を用いてもよい。酸を溶媒として使用してもよいし、追加の溶媒を使用してもよい。溶媒の適切な例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールのようなアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのようなジアルコール、水、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
反応は、通常、40~150℃、特に70~120℃の範囲の温度で行われる。反応時間は、典型的には、酸の量および/または反応温度に応じて2~24時間で変化する。
【0072】
あるいは本方法は2段階反応で実施され得、この場合、反応は、
a)1,3-ジイミノイソインドリンと式H2N-Y(IV)のアミノ化合物とを反応させるステップと、
b)ステップa)の生成物をバルビツール酸とpH≦7で反応させるステップと
を含む。
【0073】
ステップa)は、通常、ほぼ等モル量の1,3-ジイミノイソインドリンと式H2N-Y(IV)のアミノ化合物とを、室温~約100℃の範囲の温度で反応させることによって実施される。所望される場合、溶媒の適切な例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールのようなアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのようなジアルコール、水またはそれらの混合物が挙げられる。反応時間は、典型的には、反応温度に応じて2~24時間で変化する。
【0074】
ステップb)は、通常pH≦7、特に2~7の範囲で実施される。X=Nである式(I)のイソインドリン誘導体の場合、本方法は、より好ましくは3~6の範囲のpHで実施することができる。
【0075】
酸性条件は、酢酸、ギ酸、硫酸のようなブレンシュテット酸で調整してもよい。酸を溶媒として使用してもよいし、追加の溶媒を使用してもよい。溶媒の好適な例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールのようなアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのようなジアルコール、水、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0076】
反応は、通常、40~150℃、特に70~120℃の範囲の温度で行われる。反応時間は、通常、酸の量および/または反応温度に応じて2~24時間で変化する。
【0077】
酸性基を有する式(I)のイソインドリン誘導体は、例えば、酢酸中で反応が行われる場合、中性形態で、または少なくとも部分的に対応するアンモニウム塩の形態で得ることができる。アンモニウム対イオンは、当技術分野で公知の方法によって、適切なカチオンで置き換えることができる。適切なカチオンは、例えば、金属カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、もしくは1/2カルシウムのようなアルカリ金属もしくは1/2アルカリ土類金属カチオン、または有機アンモニウムイオンである。
【0078】
置換アンモニウムカチオンの例としては、+N(CH3)2(C18H37)2、+NH(CH3)2(C18H37)、+N(CH3)2(C12H25)2、+NH(CH3)2(C12H25)、+N(CH3)2(C10H21)2、+NH(CH3)2(C10H21)、+N(CH3)2(C8H17)2、+NH(CH3)2(C8H17)、+NH(C8H17)3、+NH(C10H21)3、+NH(C12H25)3および+NH(C18H35)3が挙げられる。
【0079】
塩基性基を有する式(I)のイソインドリン誘導体は、通常、中性形態で得られたが、対応するアンモニウム化合物に転移することもできる。
【0080】
式(I)のイソインドリン誘導体は、着色剤として、好ましくは顔料形態で、例えば、黄色もしくは橙色着色剤として、好ましくは黄色もしくは橙色顔料として、または赤色、橙色、緑色または青色の顔料のような更なる着色剤に対するシェーディング成分として使用することができる。
【0081】
したがって、好ましい態様において、本明細書に記載されるイソインドリン誘導体は、顔料形態である。
【0082】
シェーディングするのに適した顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド242、254、255、すなわち、3,6-ジ(4’-ブロモ-フェニル)-2,5-ジヒドロピロロ[3,4-c]ピロール-1,4-ジオンまたは3,6-ジ(4’-シアノフェニル)-2,5-ジヒドロピロロ[3,4c]ピロール-1,4ジオンに基づくDPP顔料、ピグメントレッド177、C.I.ピグメントオレンジ71、73、C.I.ピグメントグリーン7、36、58;およびC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6である。
【0083】
式(I)のイソインドリン誘導体は、一般に、着色剤、好ましくは顔料として使用するのに適した形態で得られた。しかしながら、イソインドリン誘導体はまた、湿式粉砕、ソルトミリング(salt milling)、ソルトニーディング(salt kneading)などのような、通常のコンディショニングプロセスによってさらに処理されてもよい。
【0084】
一般に、イソインドリン誘導体は、通常溶解しない約1~9のpHを有する適用媒体中で顔料として使用することができる。
【0085】
式(I)のイソインドリン誘導体は、顔料、例えば、イソインドリン顔料と組み合わせてさらに使用することができる。
【0086】
したがって、更なる態様において、本発明は、
(a)本明細書で定義される式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む顔料組成物に関する。
【0087】
イソインドリン顔料(b)は、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ66、ピグメントオレンジ69、ピグメントレッド260またはそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0088】
好ましくは、イソインドリン顔料は、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185またはそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0089】
本発明の顔料組成物を調製するために、イソインドリン顔料として、任意の仕上げされたイソインドリン顔料、例えば、イソインドリン顔料をコンディショニングするための一般的に使用される方法によって仕上げされたものを使用することができる。あるいは市販の任意のイソインドリン顔料を使用してもよい。また、粗製イソインドリン顔料を使用することも可能である。
【0090】
顔料組成物だけでなく単一成分も、好ましくは細かく分割された形態で使用され、この場合、凝集の形成が回避されるべきである。
【0091】
一般に、顔料組成物は、他の任意の化合物を少量含むだけである。好ましくは、本発明の顔料組成物は、本質的に成分(a)および(b)からなる。各成分の製造プロセスからの添加剤または成分のような任意の成分の量は、顔料組成物の総重量を基準にして、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%であり得る。
【0092】
顔料組成物は、通常、(a)式(I)のイソインドリン誘導体を、イソインドリン顔料(b)の総重量を基準にして、0.5~50重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~15重量%の量で含有する。
【0093】
顔料組成物は、成分(a)および(b)を所望の比率で混合して物理的なブレンドを形成することによって調製してよい。
【0094】
あるいは顔料組成物は、成分(a)および(b)を混合し、混合物を微粉砕ステップに付すことによって調製してよい。
【0095】
したがって、更なる態様において、本発明は、
(a)式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む顔料組成物を調製するための方法に関し、
この方法は、成分a)およびb)を混合するステップと、任意に混合物を微粉砕ステップに付すステップとを含む。
【0096】
顔料組成物の所望の適用特性を得るために、最終用途に応じて、顔料のコンディショニングまたは仕上げの既知のプロセスの任意のステップを使用することができる。成分(a)もしくは(b)または両成分は、例えば、水性プレスケーキの形態で使用することができる。
【0097】
好ましくは、微粉砕ステップは、ソルトニーディング、無機塩の非存在下または存在下での乾式粉砕、または湿式粉砕のような公知の方法、より好ましくは湿式粉砕またはソルトニーディング、より好ましくはソルトニーディングによって実施することができる。
【0098】
ソルトニーディングは、無機塩または有機酸の塩と、顔料と無機塩または有機酸の塩が実質的に不溶性である有機液体との存在下で実施することができる。ソルトニーディングには、当技術分野で公知の任意のニーダを用いることができ、例えば、Zブレードニーダのような一般的な二軸ニーダが挙げられるが、一軸ニーダ、高速ミキサまたは押出機も同様に可能である。式(I)のイソインドリン誘導体または式(I)のイソインドリン誘導体を含む顔料組成物は、好ましくは乾燥形態で使用され、各々それぞれの成分を基準にして、各々最大5重量%の液体の残留量を有する。
【0099】
ソルトニーディングに適した塩は、少なくとも10g/100mlの水への溶解度を有する水溶性塩である。適切な例としては、結晶水を伴うかまたは伴わない、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。好ましい無機塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムであり、より好ましくは塩化ナトリウムである。典型的には、先行する微粉化を伴うかまたは伴わないテクニカルグレードの塩が用いられる。塩は、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~50μmの平均粒子サイズを有する。さらに、塩は、適切には、有機溶媒中で100mg/l、特に10mg/l(いずれの場合も20℃)の溶解度を有する。塩は、好ましくは有機溶媒中で実質的に不溶性である。
【0100】
ソルトニーディングに使用するのに適した液体は、液体、好ましくは有機溶媒または粉砕中に液化する低融点固体であり、この液体中に有機顔料および塩は実質的に不溶性であるが、粗製顔料を本顔料組成物に物理的に変換することが可能である。有機溶媒の例としては、アルコール、低級有機酸、エーテルまたはオリゴおよびポリグリコールエーテル、ケトン、芳香族溶媒;エステル、アミド、スルホンまたはスルホキシドが挙げられる。特に適切な溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはジアセトンアルコールである。
【0101】
微粉砕のプロセスまたは最終用途に応じて、微粉砕ステップの前または後に、顔料組成物に特定量のテクスチャ改良剤を添加することが有利であり得る。適切なテクスチャ改良剤は、特に、脂肪酸、例えば、ステアリン酸またはベヘン酸またはそのアミドもしくは塩、可塑剤、ワックス、アビエチン酸などの樹脂酸、天然ロジン、変性ロジン、アミンロジンおよび高分子ロジンなどのロジン、アルキルフェノールまたは脂肪族アルコールまたはドデカン-1,2-ジオールなどのビシナルジアルコールである。さらに、高分子分散剤、例えば、Disperbyk(登録商標)111、160、161、162、163、164、166、168、170、171、182、2000、2001、2070、2150、2163;EFKA(登録商標)PX 4300、PX 4310、PX 4320、PX 4330、PX 4340、PX 4350、PA 4400、PA 4401、PA 4402、PA 4403、PA 4450、PX 4700、PX 4701、PX 4731、PX 4732、Dispex(登録商標)Ultra 4585、Solsperse(登録商標)24000、32550、Ajisper(登録商標)PB 821、PB-822およびPB-823の商品名で入手可能な高分子分散剤およびそれらの組み合わせが適している。
【0102】
高分子分散剤は、好ましくはコポリマーである。コポリマーは、例えば、重合性または重縮合性の酸、エステル、グリコール、イソシアネート、ニトリル、アミド、イミド、オレフィン、エポキシドまたはアジリジンから誘導される繰り返し単位を有することができる。
【0103】
アクリレートまたはウレタンに基づくコポリマーが一般に使用される。好ましい高分子分散剤は、通常、顔料親和性基を有するブロックまたはグラフトコポリマーである。顔料親和性基は、一般に極性基であり、好ましくはN-含有基である。N-含有基の例としては、第二級アミン、第三級アミンまたは芳香族アミンが挙げられる。
【0104】
好ましい高分子分散剤は、例えば、アクリレートまたはウレタンに基づくブロックコポリマーであって、顔料親和性基、好ましくは顔料親和性のあるN-含有基を有するものである。
【0105】
好ましいのは、アビエチン酸などの樹脂酸、天然ロジン、変性ロジン、アミンロジンなどのロジン、高分子ロジン、高分子分散剤、好ましくは顔料親和性のあるN-含有基を有するブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせである。
【0106】
特に好ましいのは、アビエチン酸などの樹脂酸、天然ロジン、変性ロジン、アミンロジンおよび高分子ロジンなどのロジンである。あるいは好ましいのは、高分子分散剤、好ましくは顔料親和性のあるN-含有基を有するブロックコポリマーと、樹脂酸またはロジンから選択される群の1つの成分との組み合わせである。
【0107】
テクスチャ改良剤は、顔料組成物の総重量を基準にして、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは2~15重量%の量で添加してよい。
【0108】
一般に、ニーディング塊状物は、式(I)のイソインドリン顔料およびイソインドリン誘導体ならびにテクスチャ改良剤のような任意の添加剤の合計質量1g当たり、1~15g、好ましくは2~15gの無機塩または有機酸の塩および0.3~2g、好ましくは0.5~2gの有機液体を含有する。
【0109】
ニーディング温度は、一般に20~150℃、好ましくは30~110℃、より好ましくは30~90℃である。
【0110】
ソルトニーディングステップは、粒子が最適な安定性、顔料サイズおよび分布を達成し得るように十分な期間実施されることが望ましい。その期間は重要ではなく、2~24時間、好ましくは2~12時間、特に2~8時間の範囲であってよい。
【0111】
速度または回転数は、ニーディング塊状物が均質かつ均一な剪断力を伴って移動するように適切に選択される。
【0112】
ソルトニーディング後に得られた生成物は、塩および有機液体を除去するために水中で撹拌および造粒し、濾過、通常塩を含まない水による洗浄および乾燥のような一般的な方法によって、好ましくは50~90℃の温度で単離することができる。
【0113】
湿式粉砕は、好ましくは、水性媒体中、好ましくは水中で実施することができる。水性媒体に適した有機溶媒は、原則として、ソルトニーディングに挙げた溶媒であり、好ましくは水混和性の溶媒である。粉砕装置は、パールミル、ボールミル、振動型ミル、サンドミル、撹拌型ミル、遠心ボルテックスミル、またはアトライタのように、温度制御および高剪断の適用を可能にする限りにおいて、任意のものを使用することができる。適切な粉砕媒体は、例えば、典型的には0.2~3mm、好ましくは0.3~1.8mmの直径を有する鋼球、セラミックビーズまたはガラスビーズである。
【0114】
水性媒体中の顔料組成物の総量は、有利には、粉砕ペーストの総重量に基づいて、5~25重量%、好ましくは5~15重量%である。好ましくは、顔料組成物は、湿式粉砕のステップの前に、均一な水性分散体を形成するために、典型的には0.5~2時間で水中に予め分散される。粉砕温度は、一般に10~100℃、好ましくは20~80℃である。速度または回転数は、粉砕塊状物が均質かつ均一な剪断力を伴って移動するように適切に選択される。粉砕ステップは、粒子が最適な安定性、顔料サイズおよび分布を達成し得るように十分な期間実施されることが望ましく、典型的には操作モードに依存する。この期間は重要ではなく、30分~15時間、好ましくは1~10時間、特に2~5時間の範囲であってよい。
【0115】
湿式粉砕後に得られた生成物は、濾過、通常は水による洗浄および乾燥のような一般的な方法によって、好ましくは50~90℃の温度で単離することができる。
【0116】
したがって、更なる好ましい態様において、本発明は、
(a)式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む顔料組成物を調製するための方法に関し、
この方法は、成分a)およびb)を混合するステップと、混合物を、好ましくはソルトニーディングまたは湿式粉砕、より好ましくはソルトニーディングによる微粉砕ステップに付すステップとを含む。
【0117】
より好ましくは、本発明は、
(a)式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む顔料組成物を調製するための方法に関し、
この方法は、成分a)およびb)を混合するステップと、混合物を、好ましくはソルトニーディングまたは湿式粉砕、より好ましくはテクスチャ改良剤の存在下でのソルトニーディングによる微粉砕ステップに付すステップとを含む。
【0118】
したがって、更なる好ましい態様において、本発明は、
(a)本明細書で定義される式(I)のイソインドリン誘導体、
(b)イソインドリン顔料、および
(c)テクスチャ改良剤
を含む顔料組成物に関し、
ここで、テクスチャ改良剤は、顔料組成物の総重量を基準にして、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは2~15重量%の量で存在する。
【0119】
特に好ましいのは、
(a)本明細書で定義される式(I)のイソインドリン誘導体、
(b)イソインドリン顔料、および
(c)テクスチャ改良剤
を含む顔料組成物であって、
ここで、テクスチャ改良剤は、顔料組成物の総重量を基準にして、0.1~20重量%、より好ましくは2~15重量%の量で存在し、かつ
テクスチャ改良剤は、樹脂酸、ロジン、変性ロジン、アミンロジン、高分子ロジン、高分子分散剤、好ましくは顔料親和性のあるN-含有基を有するブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0120】
本発明の顔料組成物は、一般に、流動性のある、粉状の粘稠度を持つ固体系として、顆粒として、または水性プレスケーキとして、好ましくは粉体または顆粒として使用される。
【0121】
(a)および(b)ならびに任意にテクスチャ改良剤のような添加剤を含む顔料組成物は、カラーフィルタ用途またはインクジェットインク用途で使用される場合、一般に≦100nm、好ましくは10~100nmの平均粒子サイズを有する。
【0122】
他の印刷インク用途、コーティングまたはプラスチックのような用途では、粒子サイズはより大きくてよく、例えば10~600nmの範囲、好ましくは40~400nmの範囲である。
【0123】
粒子サイズは、粒子の等価直径と理解され、これは、例えば、Joyce-Loebl社製ディスク型遠心分離機または動的レーザー放射散乱によって決定することができる。多くの場合、透過型電子顕微鏡(TEM)画像の評価も適切である。粒子サイズの平均化は、重量を基準にして実施すべきである(すなわち、すべてのサイズの大きい粒子について、同じ等価直径の粒子の総重量をこの等価直径に対してプロットすると、平均粒子サイズは、得られた重量分布の算術平均である-Alan Rawle博士による「粒子サイズ分析の基本原理(basic principles of particle size analysis)」参照、Malvern Instruments社から入手可能)。
【0124】
この粒子サイズは、前で説明したように、仕上げプロセスによって調整することができる。
【0125】
物理的なブレンドとして使用される場合、顔料誘導体の粒子サイズは、合成条件を適切に調整することによって、および/またはさらに適切な微粉砕ステップによって得ることができる。通常、所望の粒子サイズを有する式(I)のイソインドリン誘導体は、所望の粒子サイズを有する既に仕上げされたイソインドリン顔料と組み合わされる。
【0126】
本発明の式(I)のイソインドリン誘導体または式(I)のイソインドリン誘導体を含む顔料組成物は、すべての着色剤、特に顔料の最終用途、特に天然および合成起源の有機または無機材料の着色、例えば、
a)ポリマー、例えば、フィルムおよび繊維を含む樹脂、ゴムまたはプラスチックの形態における原料着色のため、
b)塗料、塗料系、例えば、自動車用、建築用または工業用塗料の調製のため、
c)インクジェットインクを含む印刷インクならびに電子写真におけるトナー、例えば、レーザープリンタ用および現像剤用のトナーのため、
d)顔料および染料などの着色剤への添加剤として、
e)カラーフィルタ組成物の着色のため
に非常に適している。
【0127】
顔料組成物は、当技術分野で一般的な技術によって、様々な適用媒体に組み込むことができる。
【0128】
顔料組成物は、最終用途に応じて、着色すべき材料の総重量に基づいて、0.01~75重量%、好ましくは0.01~50重量%の量で使用することができる。
【0129】
更なる態様において、本発明は、高分子量有機材料、好ましくは塗料、印刷インク、カラーフィルタ用途用のレジスト配合物、電子写真トナー、化粧品、プラスチック、フィルムまたは繊維を着色または彩色するための、本明細書における上述の任意の態様に定義されるイソインドリン誘導体、または本明細書における上述の任意の態様に定義される顔料組成物の使用に関する。
【0130】
更なる態様において、本発明は、高分子量有機材料、好ましくは塗料、印刷インク、カラーフィルタ用途用のレジスト配合物、電子写真トナー、化粧品、プラスチック、フィルムまたは繊維を着色するための方法に関する。
【0131】
更なる態様において、本発明は、イソインドリン顔料に対する結晶成長抑制剤またはレオロジー改良剤としての、本明細書における上述の任意の態様で定義されるイソインドリン誘導体の使用に関する。
【0132】
式(I)のイソインドリン誘導体は、着色剤、好ましくは顔料として、様々な適用媒体において、例えば、赤色、橙色、緑色または青色の顔料のような更なる着色剤のシェーディング成分として適切に使用することができる。
【0133】
本顔料組成物は、黄色または橙色の着色剤として、様々な適用媒体、好ましくは印刷インク、プラスチック、またはカラーフィルタ用途用のレジスト配合物において、より好ましくは、例えば赤色または緑色のカラーフィルタセグメントのための、赤色または緑色の顔料のような更なる着色剤のシェーディング成分として使用することができる。
【0134】
好ましくは、式(I)の顔料組成物またはイソインドリン誘導体は、カラーフィルタを製造するための感光性レジスト配合物、特にディスプレイデバイスの分野における素子を着色するために使用される。
【0135】
したがって、更なる態様において、本発明は、本明細書における上述の任意の態様で定義される顔料組成物、または本明細書における上述の任意の態様で定義されるイソインドリン誘導体を含むレジスト配合物を用いて製造されるカラーフィルタに関する。
【0136】
放射線硬化性組成物、特にレジスト配合物の成分、およびその製造は、当業者に公知である。好ましい方法および成分は、例えば、国際出願PCT/EP2019/066256号明細書、国際公開第2013/179237号または国際公開第08/101841号に記載されている。一般に、顔料分散体は、本顔料組成物を1つ以上のポリマー分散剤および溶媒で分散させることによって形成される。次に、この顔料分散体は、樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和モノマー、溶媒および任意の添加剤をさらに含む感光性レジスト配合物の製造に使用される。適切な成分は当技術分野で知られている。
【0137】
通常、カラーフィルタは、本明細書において上記で定義される感光性レジスト配合物を基材上にコーティングした後、乾燥、露光、現像および任意にポストベークしてフィルムを形成することによって製造される。
【0138】
特に、レジスト配合物は、前述のように、ソルトニーディングまたは湿式粉砕された顔料組成物を用いて着色され、好ましくはソルトニーディングされた顔料組成物で着色される。
【0139】
したがって、好ましい態様において、本発明は、本明細書における上述の任意の態様で定義されるソルトニーディングされた顔料組成物を含むレジスト配合物を用いて製造されるカラーフィルタに関する。
【0140】
式(I)のイソインドリン誘導体は、成長抑制剤として、好ましくはイソインドリン顔料と一緒に使用するのに特に適している。したがって、顔料組成物は、熱処理が適用される用途で使用される場合に優れている。顔料組成物の所望の粒子サイズは、このような処理の後でも保持される。
【0141】
さらに、式(I)のイソインドリン誘導体は、色が望まれる任意の用途において、黄色、橙色または赤色の着色剤として使用するのに適している。
【0142】
イソインドリン誘導体を含まない組成物と比較して、本顔料組成物を含有する組成物、例えば、塗料および印刷インクは、改善された色彩特性、特に改善された色の濃さを有する。
【0143】
特に、本顔料組成物を含有するレジスト配合物は、高いコントラスト比を有し、また他の要件、例えば高い熱安定性、高い彩度および高い明度を満たすカラーフィルタセグメントを提供する。コントラスト比は、ソルトニーディングまたは湿式粉砕された顔料組成物、好ましくはソルトニーディングされた顔料組成物を使用する場合に高めることができる。
【0144】
有利には、約230℃以上の熱処理を施した後に高いコントラスト比を得ることができる。
【0145】
緑色および赤色のカラーフィルタセグメント用のシェーディング顔料組成物として使用する場合、このようなセグメントは、熱処理後にも、高い透過率で高飽和の所望の色点を提供する。したがって、広い色域を提供することができる。
【0146】
レジスト配合物は、容易に加工可能であり、特に高い分散性を示す。さらに、高い分散安定性および高い再結晶安定性のような、高いレオロジー挙動を示す。
【0147】
特に、本顔料組成物を含有する塗料および印刷インクは、改善されたレオロジー挙動および優れた分散安定性を有する。
【0148】
本明細書で前述した顔料について与えられた定義および選好は、任意の組み合わせで適用され、本発明の他の態様についても任意の組み合わせで適用される。
【0149】
本発明は、示されるような依存関係および後方参照から得られた以下の一連の実施形態および実施形態の組み合わせによってさらに説明される。特に、例えば「実施形態1から3までのいずれか1つ記載のイソインドリン誘導体」などの用語の文脈で、実施形態の範囲が言及される各例において、この範囲内のすべての実施形態が当業者に明示的に開示されることを意味し、すなわち、この用語の文言は「実施形態1、2および3のいずれか1つ記載のイソインドリン誘導体」と同義であると当業者によって理解されるべきことが留意される。さらに、以下の一連の実施形態は、保護の範囲を決定する請求項のセットではなく、本発明の一般的かつ好ましい態様に向けられた説明の適切に構成された部分を表すことが明示的に留意される。
【0150】
1.式(I)
【化18】
[式中、
Xは、N、C-CNまたはC-COR
2であり、
Yは、酸性基または塩基性基を有する基であり、
R
1は、互いに独立して、ハロゲンまたはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、
R
2は、C
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換またはハロゲンで置換されており、
nは0、1、2、3または4であり、
ただし、XがC-CNまたはC-COR
2である場合、Yは酸性基を含まない]のイソインドリン誘導体。
【0151】
2.XはNであり、
Yは、COOH、その塩、SO
3Hもしくはその塩で置換されかつ任意にハロゲン、C
1~C
4-アルキルで置換されているC
6~C
18-アリールもしくはC
3~C
18-ヘテロアリール基、または
【化19】
[式中、
R
3は、互いに独立して、ハロゲンもしくはC
1~C
4-アルキルであり、当該アルキルは、非置換もしくはハロゲンで置換されており、
mは0、1、2、3または4である]の基である、実施形態1記載のイソインドリン誘導体。
【0152】
3.Yは、COOH、その塩、SO3Hもしくはその塩で置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニリルである、実施形態2記載のイソインドリン誘導体。
【0153】
4.Yは、SO3Hまたはその塩で置換されているフェニルまたはナフチルである、実施形態2または3記載のイソインドリン誘導体。
【0154】
5.Xは、C-CNもしくはC-COR2であり、
Yは、式-A-D(III)の基であり、式中、
Aは、-CO-NR4-もしくは-SO2-NR4-であり、
Dは、-(C1~C6-アルキレン)-NR5R6もしくは-(C1~C6-アルキレン)-NH-NR5R6であり、当該C1~C6-アルキレンは、NHによって中断されていてよく、
R2は、C1~C4-アルキルであり、
R4は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはDとR4とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、C1~C4-アルキルによって置換されかつ/もしくはNR7、OもしくはSによって中断されていてよく、
R5およびR6は、互いに独立して、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
またはR5とR6とは連結窒素とともに5員もしくは6員環を形成し、当該5員もしくは6員環は、NR8によって中断されかつ任意にC1~C4-アルキルによって置換されており、
R7は、HもしくはC1~C4-アルキルであり、
R8は、H、C1~C4-アルキルもしくはフェニルである、実施形態1記載のイソインドリン誘導体。
【0155】
6.誘導体が顔料形態である、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のイソインドリン誘導体。
【0156】
7.顔料組成物であって、
(a)実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義される式(I)のイソインドリン誘導体、および
(b)イソインドリン顔料
を含む、顔料組成物。
【0157】
8.イソインドリン顔料(b)が、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ66、ピグメントオレンジ69、ピグメントレッド260またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態9記載の顔料組成物。
【0158】
9.成分(a)の量が、顔料(b)の総重量を基準にして、0.5~50重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%である、実施形態7または8記載の顔料組成物。
【0159】
10.実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義されるイソインドリン誘導体を調製するための方法であって、この方法は、1,3-ジイミノイソインドリン、式H2N-Y(IV)のアミノ化合物、およびバルビツール酸をpH≦7で反応させるステップを含む、方法。
【0160】
11.反応を、ワンポット反応として、または
a)1,3-ジイミノイソインドリンと式H2N-Y(IV)のアミノ化合物とを反応させるステップと、
b)ステップa)の生成物をバルビツール酸とpH≦7で反応させるステップと
を含む2段階反応で実施する、実施形態10記載の方法。
【0161】
12.高分子量有機材料、好ましくは塗料、印刷インク、カラーフィルタ用途用のレジスト配合物、電子写真トナー、化粧品、プラスチック、フィルムまたは繊維を着色するための、実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義されるイソインドリン誘導体、または実施形態7から9までのいずれか1つにおいて定義される顔料組成物の使用。
【0162】
13.イソインドリン顔料に対する結晶成長抑制剤またはレオロジー改良剤としての、実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義されるイソインドリン誘導体の使用。
【0163】
14.実施形態7から9までのいずれか1つにおいて定義される顔料組成物、または実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義されるイソインドリン誘導体を含むレジスト配合物を用いて製造されるカラーフィルタ。
【0164】
15.高分子量有機材料、好ましくは塗料、印刷インク、カラーフィルタ用途用のレジスト配合物、電子写真トナー、化粧品、プラスチック、フィルムまたは繊維を着色するための方法であって、実施形態1から6までのいずれか1つにおいて定義されるイソインドリン誘導体、または実施形態7から9までのいずれか1つにおいて定義される顔料組成物を、高分子有機材料に添加する、方法。
【0165】
次に、本発明を以下の実施例を参照してより詳細に説明する。これらの実施例は、限定的に解釈されるべきではない。特に明記しない限り、「%」は常に重量%(wt%)である。
【0166】
実施例
実施例で使用した成分:
Paliotol(登録商標)Yellow K 1841:ピグメントイエロー139、BASF社から市販されている
Irgaphor(登録商標)S2150CF:ピグメントイエロー139、BASF社から市販されている
Paliotol(登録商標)Yellow D 1819(ピグメントイエロー139、BASF社から市販されている)
1,3-ジイミノイソインドリン(Sitaram Chemicals社から市販されている)
【0167】
合成例1 1,3-ジイミノイソインドリン溶液の合成
メタノール150ml中のo-フタロジニトリル100g(0.76モル)の懸濁液を、室温(20~23℃)でエタノール酸ナトリウムの30%溶液3.35mlで処理した。次に、アンモニアガス16.25g(0.96モル)を2時間かけて添加し、反応混合物をゆっくりと60℃に加熱した。この混合物を60℃で2時間撹拌し、次に室温に冷却した。アルゴンフラックスを溶液にバブリングして、過剰のアンモニアをすべて放出し、ジイミノイソインドリンの溶液を形成した。
【0168】
実施例1
a)合成例1で調製した溶液66g(0.19モル)に、スルファニル酸33.8g(0.19モル)を室温で添加し、メタノール50mlを添加した。黄色がかった懸濁液を室温で一晩撹拌した後、50℃で1時間撹拌した。懸濁液を室温に冷却し、濾過した。固体を脱イオン水で洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XVIa)の生成物48.4gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-300e/z、M
+302e/z)により確認した。
【化20】
【0169】
b)実施例1a)の生成物40.0g(0.13モル)とバルビツール酸16.9g(0.13モル)とを氷酢酸1lに懸濁した。黄色の懸濁液を110℃で一晩撹拌し、40℃に冷却し、濾過した。固体をメタノールで洗浄し、70℃/100mbarで乾燥し、式(XVIb)の黄色の生成物48.4gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-411e/z、M
+413e/z)により確認した。
【化21】
【0170】
実施例2
a)合成例1で調製した溶液66g(0.19モル)に、3-アミノベンゼンスルホン酸34.3g(0.19モル)を室温で添加し、メタノール50mlを添加した。黄色がかった懸濁液を室温で一晩撹拌した後、メタノール100mlを添加し、50℃で1時間撹拌した。懸濁液を室温に冷却し、濾過した。固体を脱イオン水で洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XVIIa)の生成物36.3gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-300e/z、M
+302e/z)により確認した。
【化22】
【0171】
b)実施例2a)の生成物30.0g(0.10モル)とバルビツール酸16.9g(0.10モル)とを氷酢酸500mlに懸濁した。黄色の懸濁液を110℃で一晩撹拌し、40℃に冷却し、濾過した。固体をメタノールで洗浄し、70℃/100mbarで乾燥し、式(XVIIb)の黄色の生成物37.3gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-411e/z、M
+414e/z)により確認した。
【化23】
【0172】
実施例3-1
a)ジイミノイソインドリン65g(0.45モル)と5-アミノナフトスルホン酸(>90%)100g(0.45モル)との混合物をメタノール350mlに懸濁した。混合物を撹拌しながら加熱還流した。5時間後、混合物を室温に冷却し、固体を濾過し、水1000mlで洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XVIIIa)の茶色がかった黄色の生成物87gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。収量145g(84%)。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-351e/z、M
+352e/z)により確認した。
【化24】
【0173】
b)実施例3a)の生成物100.0g(0.29モル)とバルビツール酸36.5g(0.29モル)とを氷酢酸350mlに懸濁した。この懸濁液を還流で5時間撹拌した後、室温に冷却し、濾過した。茶色がかった黄色の固体を水200mlで洗浄し、80℃/125mbarで乾燥し、式(XVIIIb)の黄色がかった生成物99gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MS(M
-461e/z、M
+463e/z)により確認した。
【化25】
【0174】
実施例3-2(ワンポット法)
1,3-ジイミノイソインドリン108.3g(0.7モル)を氷酢酸1.3lに懸濁し、5-アミノナフトスルホン酸176g(0.7モル)を添加した後、バルビツール酸94g(0.7モル)を添加した。この混合物を一晩撹拌し、次に100℃に加熱した。酢酸0.5lを添加し、混合物を7時間撹拌した。混合物を濾過し、固体を酢酸350mlおよび水で洗浄した。固体を70℃/100mbarで48時間乾燥し、式(XVIIIb)の赤味黄色の生成物344gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。
【0175】
実施例4
a)2,4-ジアミノ-ベンゼンスルホン酸(98%)10g(0.05モル)と1,3-ジイミノイソインドリン15.4g(0.11モル)とをメタノール100mlに室温で懸濁した。この懸濁液を撹拌しながら6時間加熱還流した。懸濁液を室温に冷却し、濾過した。固体を脱イオン水で洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XIXa)の生成物18gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MSにより確認した。
【化26】
【0176】
b)実施例7a)の生成物10g(0.023モル)とバルビツール酸5.8g(0.05モル)とを酢酸200mlに懸濁し、この混合物を撹拌しながら6時間加熱還流した。茶色がかった懸濁液を室温に冷却し、濾過し、固体を水200mlで洗浄し、70℃/100mbarで乾燥し、式(XIXb)の橙色の生成物12.6gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MSにより確認した。
【化27】
【0177】
実施例5
a)3-ジエチルアミノプロピルアミン26.0g(0.20モル)をシアノ酢酸メチル19.8g(0.20モル)に窒素雰囲気下で5分以内に添加した。得られた黄色の溶液の温度は68℃まで上昇した。室温で一晩撹拌した後、形成されたメタノールを50℃および30mbarで蒸発除去し、3-ジエチルアミノプロピルシアノアセトアミドの低粘度の黄色の油33.3gを得た。NMR(1H,400MHz,CDCl3):8.94(1H,br s);3.42(2H,m);3.31(2H,s);2.58(2H,m);2.57(4H,q,7.2Hz);1.67(2H,m);1.06(6H,t,7.2Hz)。
【0178】
b)エチレングリコール40gに懸濁した1,3-ジイミノイソインドリン14.5g(0.10モル)を、脱イオン水180g中の実施例5a)の生成物19.7g(0.10モル)の溶液に添加し、室温で一晩撹拌した。それにより、緑がかった黄色の沈殿物が形成された。約70gの1N硫酸の添加によってpHを6.5に調整し、茶色の溶液が形成された。20℃を維持するための氷冷下、約40gの1N硫酸の更なる添加によって、pHを2.0に下げた。次に、バルビツール酸12.8gを添加し、1N硫酸(約6g)を滴加してpHを2.0~2.1に保ちながら65℃まで加熱した。65℃で1時間撹拌した後、得られた黄色の沈殿物を氷浴中で30℃に冷却し、濾過し、脱イオン水で洗浄した。60℃/150mbarで乾燥後、黄色の粉末として式(XX)の生成物38.1gを得た。NMR(1H,400MHz,D2SO4):8.60(1H,br d);8.24(1H,br d);7.64(2H,m);5.79(ca.1H,br);3.45(2H,m);2.92(6H,m);1.90(2H,m);1.02(6H,t,7.2Hz)。
【化28】
【0179】
比較例1
a)スルファニル酸30.0g(0.17モル)とシアノ酢酸エチル17.6g(0.16モル)(99%)とを、N-メチルピロリドン(NMP)50mlとキシレン50mlとの混合物中で150℃にて縮合が完了するまで反応させた。キシレンと形成されたエタノールとの混合物を2時間かけて留去した。この混合物を180℃に30分間加熱し、90℃に冷却した後、水50mlを添加した。15分後、1,3-ジイミノイソインドリン1当量を添加し、得られた混合物を90℃で1.5時間撹拌し、次に0℃に冷却した。得られた黄色の懸濁液を氷酢酸10mlの添加後に濾過し、固体を氷水で2回洗浄した。黄色の生成物を60℃/100mbarで乾燥し、式(XXIa)の生成物14gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。
【化29】
【0180】
b)比較例1a)で生成した化合物13g(0.04モル)とバルビツール酸1当量との混合物を酢酸200mlに懸濁した。この混合物を撹拌しながら加熱還流したところ、橙色になった。6時間後、混合物を室温に冷却し、1時間撹拌し、固体を濾過し、水50mlで2回洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XXIb)の黄-赤色の生成物15gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MSにより確認した。
【化30】
【0181】
比較例2
a)5-アミノ-ナフトスルホン酸36.0g(0.12モル)とシアノ酢酸エチル36g(0.13モル)とを、NMP100mlとキシレン50mlとの混合物中で150℃にて縮合が完了するまで反応させた。キシレンと形成されたエタノールとの混合物を3時間かけて留去した。この混合物を180℃に30分間加熱し、90℃に冷却した後、水50mlを添加した。15分後、1,3-ジイミノイソインドリン1当量を添加し、得られた混合物を90℃で1.5時間撹拌し、次に0℃に冷却した。得られた黄色の懸濁液を氷酢酸25mlの添加後に濾過し、氷水で洗浄した。茶色がかった赤色の生成物を60℃/100mbarで乾燥し、式(XXIIa)の生成物21gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。
【化31】
【0182】
b)比較例2a)の生成物18g(0.05モル)とバルビツール酸6g(0.05モル)との混合物を酢酸200mlに懸濁した。この混合物を撹拌しながら加熱還流したところ、橙色になった。6時間後、混合物を室温に冷却し、1時間撹拌し、固体を濾過し、水50mlで2回洗浄し、60℃/100mbarで乾燥し、式(XXIIb)の橙色の生成物15gを得た。これは対応するアンモニウム塩として部分的に存在し得る。生成物の分子量は、MALDI-TOF-MSにより確認した。
【化32】
【0183】
実施例6
ピグメントイエロー139(Paliotol(登録商標)K 1841)80重量%、実施例1の生成物10%およびアビエチン樹脂誘導体(ロジンアミン、CAS 61790-47-4)10%の混合物を、従来のソルトニーディング条件(塩/顔料比12:1、ジエチレングリコール中、40℃で8時間以内)でニーディングすることによって微細な顔料組成物に変換した。
【0184】
実施例7、8-1、8-2、9および10
実施例1の生成物の代わりに実施例2、3-1、3-2、5および5の生成物を使用したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0185】
実施例11
ピグメントイエロー185(Paliotol(登録商標)D 1155)80重量%、実施例1の生成物10%およびアビエチン樹脂誘導体(CAS 61790-47-4)10%の混合物を、従来のソルトニーディング条件(塩/顔料比12:1、ジエチレングリコール中、40℃で8時間以内)でニーディングすることによって微細な顔料組成物に変換した。
【0186】
実施例12、13-1、13-2、14および15
実施例1の生成物の代わりに実施例2、3-1、3-2、4および5の生成物を使用したことを除いて、実施例11の手順を繰り返した。
【0187】
実施例16
ピグメントイエロー139(Paliotol(登録商標)K 1841)80重量%、実施例3-2の生成物10%およびアビエチン樹脂誘導体(ロジンアミン、CAS 61790-47-4)7.0%の混合物を、従来のソルトニーディング条件でニーディングすることによって微細な顔料組成物に変換した。16時間後、Disperbyk 168を3重量%添加した(塩/顔料比12:1、ジエチレングリコール中、40℃で18時間以内)。
【0188】
比較例3および4
実施例1の生成物の代わりに比較例1および2の生成物を使用したことを除いて、実施例6の手順を繰り返した。
【0189】
比較例5および6
実施例1の生成物の代わりに比較例1および2の生成物を使用したことを除いて、実施例11の手順を繰り返した。
【0190】
応用例A:カラーフィルタの製造
実施例8-2の生成物(実施例3-2のソルトニーディングされた生成物)1.0g、EFKA(登録商標)4701(BASF社製)0.8g、コポリマー(メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸ヒドロキシエチルとのコポリマーであって、モル比6:1、分子量Mw=約32kDa、酢酸1-メトキシ-2-プロピル中38重量%)2.38gおよび酢酸1-メトキシ-2-プロピル12.4gを、Skandex(登録商標)装置で酸化ジルコニウムビーズ(直径0.5mm)を用いて15時間分散させた。この分散体をガラス上にスピンコートした(2000rpmで30秒)。80℃で5分間乾燥した後、230℃のホットプレート上で15分間ベーク処理を行って、赤味黄色の透明なカラーフィルタを形成した。
【0191】
色度:色度(Y,x,y)はハロゲンランプを用いて測定し、CIE 1931 XYZ表色系に従い、C光源を用いてx=0.4640で算出した。
【0192】
コントラスト比:コントラスト比は、コントラスト比測定デバイス(CT-1、最大輝度30,000:1、壺阪電機株式会社製)を用いて測定した。
【0193】
Irgaphor S2150CF 1gと比較した結果を表1に示す。
【表1】
【0194】
実施例8-2および16のカラーフィルタは、y値がそれに近いIrgaphor S2150CFと比較して高いコントラスト比を示した。比較例3、4を用いたカラーフィルタと比較して、赤色シフトは観察され得ない。比較例3、4は、着色用途における黄色着色剤として、特に現在使用されている顔料としてのIrgaphor S2150CFの代替品として使用するには、赤色シフトが大きすぎる。
【0195】
応用例B:UV硬化型インク
Paliotol(登録商標)Yellow D 1819(ピグメントイエロー139、BASF社製)25gと実施例3-1の生成物0.5gとの混合物を、高分子顔料分散剤の存在下でアクリレートビヒクル中に分散させることによってミルベースを調製した。分散ステップは、400mlのガラス瓶にガラスビーズ200gを入れ、LAU社製分散機で4時間実施した。ミルベースの組成は、以下の表2に記載している。
【表2】
【0196】
ミルベースB-1は非常に良質であり、優れた顔料分散性およびレオロジーを示す。粉砕後、得られたミルベースを、篩い分けによってガラスビーズと分離した。次に、このミルベースを、下記表3に記載したように、レットダウンワニスで希釈することによって、紫外線硬化型インクジェットインクに12%(同一の顔料装填量)で配合した。
【表3】
【0197】
得られたインクを自己粘着性ビニル基材(Orajet 3105)上に6μmの巻き線バーを用いて適用した。次に、得られたドローダウンを、2×120W/cmの水銀ランプを備えたUV硬化ユニット(IST)を用いて硬化させ、乾燥したインクドローダウンの色彩特性を、X-Rite分光光度計(D50/2°視野)を用いてテストする。
【0198】
ミルベースB-1を用いたインクは、ミルベースB-2を用いたインク(100%)に対して、改善された色強度を提供した(106%)。両インクを密閉したガラス容器に入れ、60℃のオーブンで1週間保管に付した。1週間後、インクの粘度を検査した(Brookfield社製レオメータ)。ミルベースB-1を用いたインクは、粘度の変化を示さなかった。