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特許7354433ポリプロピレン粒子、この製造方法、これを使用して製造されたバイポーラプレート及びこれを含むレドックスフロー電池
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  • 特許-ポリプロピレン粒子、この製造方法、これを使用して製造されたバイポーラプレート及びこれを含むレドックスフロー電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】ポリプロピレン粒子、この製造方法、これを使用して製造されたバイポーラプレート及びこれを含むレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230925BHJP
   H01M 8/0223 20160101ALN20230925BHJP
【FI】
C08J3/12 101
C08J3/12 CES
H01M8/0223
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022521008
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2020013655
(87)【国際公開番号】W WO2021071242
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0126385
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0126202
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0151167
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0128950
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510244710
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ハン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ-ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ジェ・コン
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/048041(WO,A1)
【文献】特表2020-509144(JP,A)
【文献】特開2002-283341(JP,A)
【文献】特開2020-181658(JP,A)
【文献】特開2006-012798(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123807(WO,A1)
【文献】特開2016-041806(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016808(WO,A1)
【文献】特表2018-534398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- C08J 3/28
H01M 8/0223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂から形成される粒子であって、
前記粒子を150ないし250℃の温度条件及び大気圧ないし15MPaの圧力条件で再溶融させた時、溶融指数(melting index、M.I.)が1000g/10min(分)以上であ
前記粒子はポリプロピレン樹脂から連続的なマトリクス(matrix)相に形成され、1ないし100μmの粒径を持つことを特徴とする、ポリプロピレン粒子。
【請求項2】
前記粒子は25ないし50μmの平均粒径(D50)を持つことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項3】
前記粒子は10ないし25μmの累積体積10%の粒径(D10)及び80ないし150μmの累積体積90%の粒径(D90)を持つことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項4】
前記粒子は下記算式1によって計算されるD値が5ないし15であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子:
【数1】
ここで、D10は累積体積10%の粒径で、D50は平均粒径で、D90は累積体積90%の粒径である。
【請求項5】
粒子が、前記粒子25重量%を黒鉛粒子75重量%と混合した後、200℃の温度を2分間維持し、16kg/cmの圧力を2分間加えた後、常温に冷却して製造された1.0mm厚さの成形物の電気抵抗が4.0mΩcm以下となる粒子であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項6】
前記成形物の電気抵抗値は、前記成形物を4点電気抵抗測定方法で測定したことを特徴とする請求項に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項7】
前記粒子の安息角が45°以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項8】
前記安息角は安息角測定機(Angle of Repose Tester)を使用して測定したことを特徴とする請求項に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項9】
前記粒子は20ないし30秒の流下時間を持つことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン粒子。
【請求項10】
(1)ポリプロピレン樹脂を押出機に供給して押し出す段階;
(2)押し出されたポリプロピレン樹脂及び空気をノズルに供給し、ポリプロピレン樹脂と空気を接触させてポリプロピレン樹脂を粒子化した後、粒子化されたポリプロピレン樹脂を吐出する段階;及び
(3)吐出されたポリプロピレン粒子を冷却器に供給してポリプロピレン粒子を冷却した後、冷却されたポリプロピレン粒子を収得する段階を含む、請求項1に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記(2)段階において、ノズルに供給される押し出されたポリプロピレン樹脂は0.5ないし20Pa・sの溶融粘度を持つことを特徴とする請求項10に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記(2)段階において、ノズルの断面を基準にして空気は中心部と外郭部に供給され、押し出されたポリプロピレン樹脂は中心部と外郭部の間に供給されることを特徴とする請求項10に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【請求項13】
前記(2)段階において、ノズルの断面を基準にして外郭部に供給された空気と中心部と外郭部との間に供給された押し出されたポリプロピレン樹脂の断面積比は4:1ないし6:1であることを特徴とする請求項12に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【請求項14】
前記(2)段階において、ノズルの内部は250ないし350℃に維持されることを特徴とする請求項10に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【請求項15】
前記(2)段階において、ノズルの吐出部は下記算式5によって計算される温度で維持されることを特徴とする請求項14に記載のポリプロピレン粒子の製造方法:
算式5]
吐出部温度=ガラス転移温度(T)+(分解温度(T)-ガラス転移温度(T))×B
前記算式5でガラス転移温度及び分解温度はポリプロピレンに対する値で、前記Bは0.5ないし1.5である。
【請求項16】
前記ポリプロピレン樹脂の溶融指数(melting index、M.I.)が100g/10min(分)以上であることを特徴とする請求項10に記載のポリプロピレン粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン粒子及びこの製造方法に係り、より具体的には、溶融状態で高い流動性を持って、高い粉末の流れ性と混錬性を持つことで、炭素材混合工程で炭素材との混錬性が増加し、バイポーラプレートで製造する場合、低い電気抵抗値を持つバイポーラプレート製造用ポリプロピレン粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在二次電池に対する研究が活発に行われているが、二次電池が大容量電力貯蔵用で使われるためには、エネルギー貯蔵密度が高くなければならない。これに対し、最も適した高容量及び高効率の二次電池としてレドックスフロー二次電池が脚光を浴びている。
【0003】
レドックスフロー二次電池において、バイポーラプレートは正極及び負極電解質が流れる流路を提供し、電子が移動する役目を遂行する。これによって、前記バイポーラプレートは電解液に対する耐腐食性に優れ、電子移動性に優れる素材を使用することが好ましい。常用される黒鉛系バイポーラプレートの場合、電子移動性は優れるものの電解質に対する耐腐食性が低くて、レドックスフロー二次電池を長期間駆動する場合に電解液によって電気化学的に腐食する現象が発生するので、その使用が非常に制限的である。よって、バイポーラプレートの耐腐食性を向上させるための研究が必要である。
【0004】
前記バイポーラプレートの耐腐食性を向上させる場合、常用される黒鉛系バイポーラプレートに比べて耐腐食性は向上されることに対し、比抵抗が増加する現象が発生することがある。この場合、レドックスフロー二次電池に適用する時、エネルギー効率が低下する短所がある。このような点を考慮して、従来のバイポーラプレートは、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、プロピレン‐エチレン共重合樹脂、フッ素樹脂にカーボンブラック、グラファイトまたは金属粉末など導電性物質を添加して造成された合成樹脂組成物で成形加工して製造している。
【0005】
前記バイポーラプレート用で使われるポリプロピレンは粒子形態で提供されて加工され、加工時に黒鉛のようなバイポーラプレート素材と混合されることができる。ポリプロピレン粒子を製造するためには、従来は主に下記3種の方法が活用された。具体的に、前記ポリプロピレン粒子の製造方法としては、凍結粉砕として代表される粉砕法;高温の溶媒に溶解した後、冷却して析出させたり溶媒に溶解した後貧溶媒を添加して析出させる溶媒溶解析出法;及び混合機内で熱可塑性樹脂及び非常用樹脂を混合して熱可塑性樹脂を分散相に、熱可塑性樹脂と非常用樹脂を連続相に持つ組成物を形成させた後、非常用樹脂を取り除くことで熱可塑性樹脂粒子を得る溶融混錬法などが存在する。
【0006】
このような熱可塑性高分子樹脂粒子と無機物質粒子との溶融混合を進行する工程は無機物質粒子の混錬度が製品の性能に大きい影響を及ぼす。熱可塑性高分子樹脂粒子の無機物質粒子との溶融混合製品は、自動車軽量化素材、電磁波遮蔽素材、バッテリー分離膜などに活用されることができる。一般に、熱可塑性高分子樹脂粒子と無機物質粒子の溶融混合は熱可塑性高分子樹脂粒子と無機物質粒子の大きさが互いに似ていて、2つの粒子の大きさを最大限に小さくして混合物の混錬性を増加させる。しかし、熱可塑性高分子樹脂粒子と無機物質粒子の大きさを互いに類似にして最大限に小さく設定することは、費用が多く消耗され、混錬性増加の効果が少ない。
【0007】
上述した問題点などによって、前記無機物質粒子と混合する場合、混錬性を増加させることができる熱可塑性高分子樹脂粒子の物性を改善することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001‐288273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は溶融状態で高い流動性と混錬性を持つことにより、無機物質との溶融混合を進める工程の混錬度を増加させ、製造物の電気抵抗のような性能を向上させることができるポリプロピレン粒子及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明はポリプロピレン樹脂から形成される粒子として前記粒子を150ないし250℃の温度条件、大気圧ないし15MPaの圧力条件で再溶融させた時、溶融指数(melting index、M.I.)が1000g/10min以上であるポリプロピレン粒子を提供する。
【0011】
また、本発明は(1)ポリプロピレン樹脂を圧出器に供給して圧出する段階;
(2)圧出されたポリプロピレン樹脂及び空気をノズルに供給し、ポリプロピレン樹脂と空気を接触させてポリプロピレン樹脂を粒子化した後、粒子化されたポリプロピレン樹脂を吐出する段階;及び(3)吐出されたポリプロピレン粒子を冷却器に供給してポリプロピレン粒子を冷却した後、冷却されたポリプロピレン粒子を収得する段階を含む前記ポリプロピレン粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるポリプロピレン粒子は溶融状態で高い流動性と混錬性を持つことで、無機物質との溶融混合を進行する工程の混錬度を増加させることができるだけでなく、ポリプロピレン粒子を溶融させて使用する工程内で溶融状態のポリプロピレンの流れ性が増加して、レドックス電池用バイポーラプレートで製造した場合、バイポーラプレートの耐腐食性を向上させ、電気抵抗を減らすことができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のポリプロピレン粒子の形状を簡略に示すイメージである。
図2】本発明によるポリプロピレン粒子の製造方法を簡略に示す工程フローチャートである。
図3】本発明の具体例によってノズルにポリプロピレン樹脂及び空気の供給位置を示すノズル吐出部の断面図である。
図4】本発明の具体例によって製造されたバイポーラプレートを示す模式図である。
図5】本発明の具体例による安息角の測定方法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によって提供される具体例は下記説明によっていずれも達成されることができる。下記説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解しなければならず、本発明が必ずこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0015】
以下、明細書における数値範囲について、「ないし」の表現は範囲の上限と下限をいずれも含む意味として使われ、上限または下限を含まない場合は、含むか否かを具体的に示すために「未満」、「超」、「以下」または「以上」の表現が使われる。
【0016】
本発明は従来粒子の製造方法によっては収得できなかったレドックスフロー電池のバイポーラプレート製造などに活用するのに適する物性を持つポリプロピレン粒子を提供する。以下では本発明によるポリプロピレン粒子について具体的に説明する。
【0017】
ポリプロピレン粒子
本発明はポリプロピレン樹脂を圧出した後、空気と接触させて微粒化して製造されたポリプロピレン粒子を提供する。本発明によるポリプロピレン粒子の製造方法は、既存の粉砕法、溶媒溶解析出法、及び溶融混錬法に比べて改善された方法であって、具体的な製造方法は下記「ポリプロピレン粒子の製造方法」部分で説明する。
【0018】
本発明によるポリプロピレン粒子はポリプロピレン樹脂から形成される粒子であって、前記粒子を150ないし250℃の温度条件、大気圧ないし15MPaの圧力条件で再溶融させた時、溶融指数(melting index、M.I.)が1000g/10min以上であり、好ましくは1500ないし2000g/10min、より好ましくは1800ないし2000g/10minである。溶融指数(melting index、M.I.)とは、決まった一定条件下で溶融物をピストンから圧出した時の流量で、溶融物の流れの容易性を表す指数を言う。ここで溶融指数の単位はg/10min(230℃、2.16kg)で表記することができる。本発明によるポリプロピレン粒子は前記のような特徴を持つので、ポリプロピレン粒子を溶融させて使用する工程内で溶融状態のポリプロピレンの流れ性が増加することができる。また、本発明によるポリプロピレン粒子は前記温度条件、前記圧力条件で再溶融させた時、溶融指数がポリプロピレン粒子形成前のポリプロピレン樹脂(すなわち、本発明のポリプロピレン粒子製造時に使われる原料であるポリプロピレン樹脂)の溶融指数対比90%ないし110%のもの、好ましくは100%ないし110%のものを特徴とする。前記粒子の再溶融の溶融指数がポリプロピレン粒子の形成前のポリプロピレン樹脂の溶融指数対比110%を超える場合、工程中に物質が最初樹脂に比べて分解されて平均分子量が減少するので、最初樹脂より高いM.I.を持つようになってポリプロピレンの機械的物性が落ちる問題がある。また、前記粒子の再溶融の溶融指数がポリプロピレン粒子の形成前のポリプロピレン樹脂の溶融指数対比90%未満の場合、流れ性がよくない問題がある。
【0019】
また、本発明によるポリプロピレン粒子は一種類のプロピレン単量体が重合されて形成された同種(homo)重合体粒子である。つまり、前記プロピレン単量体は他の単量体との混合がない純粋プロピレン単量体を使用することができる。
【0020】
また、本発明によるポリプロピレン粒子は1ないし100μm、より具体的には5ないし80μmの粒径を持つ。前記粒子が1μm未満の粒径を持つ場合、粒子の一塊になる現象のため黒鉛のようなバイポーラプレート素材と効果的に混合されにくいし、これを適用したバイポーラプレートの機械的強度が低下する問題点がある。前記粒子が100μm超の粒径を持つ場合、粒子が大きすぎて黒鉛のようなバイポーラプレート素材を効率的に分散しにくく、これを適用したバイポーラプレートの電気抵抗が低下する問題点がある。前記ポリプロピレン粒子は25ないし50μm、より具体的には35ないし40μmの平均粒径(D50)(または累積体積50%の粒径)を持つ。前記粒子が上述した範囲の平均粒径を満たす場合、黒鉛のようなバイポーラプレート素材を素材間で適当に距離を維持しながら、均一に分散させることができる。前記ポリプロピレン粒子は10ないし25μm、より具体的には15ないし25μmの累積体積10%の粒径(D10)を持つ。前記ポリプロピレン粒子は80ないし150μm、より具体的には90ないし120μmの累積体積90%の粒径(D90)を持つ。本明細書において、ポリプロピレン粒子の粒度分布は粒度分析機(Microtrac社、S3500)を使用して湿式法で測定されたし、具体的な方法については、以下の実施例で記載する。ここで、D10、D50、D90は粒子の累積体積分布において累積体積百分率がそれぞれ10%、50%、90%に相当する粒径を意味する。ポリプロピレン粒子の粒度分布と係わって、本発明によるポリプロピレン粒子は5ないし15、より具体的には7ないし12のD値を持ち、前記D値は下記の算式1によって計算される。
【0021】
【数1】
【0022】
前記D値は平均粒径(D50)を持つ粒子を基準にして、より大きい累積体積90%の粒径(D90)を持つ粒子と、より小さい累積体積10%の粒径(D10)を持つ粒子がどこに位置するかを数値化した値である。ここで、相対的に大きい粒径を持つ粒子は平均粒径を持つ粒子とともに適用する時、平均粒径を持つ粒子を支持する役目をし、相対的に小さい粒径を持つ粒子は平均粒径を持つ粒子とともに適用する時、平均粒径を持つ粒子の間の空隙を埋める役目をする。D値が小さいほど粒子の粒径は平均粒径に近く分布され、D値が大きいほど粒子の粒径は平均粒径から遠く分布される。D値が小さいと、平均粒径に近い粒子の割合が高くなって粒子の大きさの多様性による効果を得にくいし、一方、D値が大きければ、平均粒径から遠い粒子の割合が高くなって基準となる粒子の大きさを算定して適用することが難しい。平均粒径の前記粒子が上述した範囲のD値を満たす場合、平均粒径を中心にして大きい粒子と小さい粒子が適当な割合で粒子が分布され、レドックスフロー電池用バイポーラプレートなどに適用する時、優れる物性を示すことができる。
【0023】
本発明において、粒子の形状は下記アスペクト比(aspect ratio)及び球形度(roundness)によって評価され、アスペクト比及び球形度が1に近いほど粒子の形状は球形に近いと解釈される。前記アスペクト比は下記の算式2によって計算される。
【0024】
[算式2]
アスペクト比(aspect ratio)=長軸(major axis)/短縮(minor axis)
【0025】
また、前記球形度は下記の算式3によって計算される。
【0026】
[算式3]
球形度(roundness)=4×面積(area)/(π×長軸^2)
【0027】
前記算式について具体的に説明するために、ポリプロピレン粒子を簡略に示した図1を提供する。図1によると、前記算式2及び3において、「長軸」は前記ポリプロピレン粒子の2Dイメージ(断面)の平行な二つの接線間の垂直距離(d)の中で最も長い距離を意味し、「短縮」は前記ポリプロピレン粒子の2Dイメージ(断面)の平行な二つの接線間の垂直距離(d)の中で最も短い距離を意味する。また、前記算式3において「面積」は、前記ポリプロピレン粒子の長軸を含む断面積を意味する。図1は前記ポリプロピレン粒子の平行な二つの接平面間の垂直距離(d)が長軸である場合の例示として、面積(A)を示したものである。
【0028】
本発明の一具体例によると、本発明によるポリプロピレン粒子は1.00以上1.05未満、より具体的には1.02以上1.05未満のアスペクト比を持ってもよく、0.95ないし1.00、より具体的には0.98ないし1.00の球形度を持つことができる。前記ポリプロピレン粒子の形状が上述したアスペクト比及び球形度の範囲を満たす場合、ポリプロピレン粒子の流れ性及び均一度が高くなってバイポーラプレートなどに適用するにあたって粒子の取り扱いが容易であり、前記粒子が適用されたバイポーラプレートなどは粒子の優れる流れ性及び分散性によって品質が向上されることができる。
【0029】
前記算式2及び3による数値はポリプロピレン粒子のイメージをImageJ(National Institutes of Health(NIH))を使用してイメージ処理(Binaryイメージに変換した後、個別粒子の球形化度合いを数値化)することで測定可能である。
【0030】
本発明によるポリプロピレン粒子はポリプロピレン樹脂から連続的なマトリックス(matrix)相に形成された粒子である。ポリプロピレン樹脂から連続的なマトリックス相に形成されるということは、ポリプロピレン樹脂を追加成分なくても連続的に密集された構造を形成することを意味する。ポリプロピレン樹脂を圧出し、溶融した後で溶融物を空気に粒子化することで、ポリプロピレン粒子は密集された構造を持って連続的に生成される。これと違って、従来の製造方法によると、追加成分を投入して粒子が形成されたり冷却・粉砕の不連続的過程を通じて粒子が形成されるため、連続的なマトリックス相に粒子が形成されない。
【0031】
ポリプロピレン樹脂から連続的なマトリックス相に形成された粒子は、基本的に粒子の製造過程で不純物が混入されないので、高い純度を持つ。ここで、「不純物」は粒子を製造する時に混入されることができるポリプロピレン以外の成分を意味する。例示的な不純物として、ポリプロピレン樹脂を分散させるための溶媒、粉砕またはグラインディング過程で含まれる重金属成分、及び重合過程で含まれる未反応単量体などがある。本発明の一具体例によると、本発明のポリプロピレン粒子の不純物含量は50ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。
【0032】
また、前記粒子は純度だけでなく、他の特性をさらに持つことができる。このような特性の一つとして前記ポリプロピレン粒子は示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)によって10℃/minの昇温分析で導出されたDSC曲線でガラス転移温度(T)と融点(T)の間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れる。ポリプロピレン粒子は常温で球形の固体粒子である。このような粒子を示差走査熱量計を利用して昇温分析する場合、温度が上がることにつれ流動性が段々増加するようになる。この時、前記ポリプロピレン粒子はガラス転移温度(T)と融点(T)の間の温度で冷結晶化温度(Tcc)のピークが表れ、これはつまり、前記ポリプロピレン粒子が溶融される前に発熱する特性を持つことを意味する。本発明の一具体例によると、前記冷結晶化温度(Tcc)はガラス転移温度(T)と融点(T)の間の30%ないし70%区間で表れる。前記区間で0%はガラス転移温度(T)で、100%は融点(T)である。また、前記DSC曲線によると、前記ポリプロピレン粒子は吸熱量(ΔH1)と発熱量(ΔH2)の差(ΔH1‐ΔH2)の値が3ないし100J/gである。このような特徴によって前記ポリプロピレン粒子が加熱工程に活用される場合、同種のポリプロピレン粒子の加工温度に比べて低温で加工可能な利点を得ることができる。
【0033】
本発明のポリプロピレン粒子は従来のポリプロピレン粒子と類似な水準の圧縮度を持つ。前記圧縮度は下記算式4によって計算されることができるし、本発明の一具体例によると、前記ポリプロピレン粒子は10ないし20%の圧縮度を持つ。
【0034】
[算式4]
圧縮度=(P-R)/P×100
前記算式4において、Pは圧縮バルク密度を意味し、Rは弛緩バルク密度を意味する。
【0035】
上述したように、本発明によるポリプロピレン粒子は流れ性がよいため、粒子の間の空隙をよく埋めることができるし、これによって一定水準以上の圧縮度が維持される。ポリプロピレン粒子の圧縮度は粒子を通じた製品の製造時に製品の品質に影響を及ぼすことができる。本発明のように一定以上の圧縮度を持つポリプロピレン粒子を使用する場合、成形品の場合は製品内で発生し得る空隙を最小化する効果を持つことができる。本発明の一具体例によると、前記ポリプロピレン粒子は0.45ないし0.6g/cmの圧縮バルク密度を持つ。
【0036】
本発明によるポリプロピレン粒子は20ないし30秒の流下時間を持つ。前記流下時間は粉体の流動性を示す数値である。前記流下時間が短いということは粒子間の摩擦抵抗が少ないことを意味し、粒子間の摩擦抵抗が少ないと前記粒子を取り扱いやすい。本発明によるポリプロピレン粒子は従来のポリプロピレン粒子と対比して短い流下時間を持つので、流動性がよくて粒子の取り扱いが容易である。
【0037】
本発明によるポリプロピレン粒子は5ないし10%の結晶化度を持つ。前記ポリプロピレン粒子の結晶化度はペレット形態の大口径粒子よりは低い値であり、低い結晶化度によって本発明によるポリプロピレン粒子は加工が容易である。
【0038】
また、本発明によるポリプロピレン粒子は、バイポーラプレートで製造した時の電気抵抗を最小化することを特徴とし、具体的に前記ポリプロピレン粒子25重量%を無機粒子75重量%と混合した後、前記ポリプロピレン粒子25重量%を無機粒子75重量%と混合し、200℃の温度を2分間維持した後、16kg/cmの圧力を2分間加えた後、常温に冷却して製造された1.0mm厚さの成形物が4.0mΩcm以下の低い電気抵抗を示す。この時、前記成形物の電気抵抗の値は、業界の通常的な方法を使用して測定することができるし、好ましくは前記成形物を4点電気抵抗測定方法で測定することができる。
【0039】
前記無機粒子はバイポーラプレートに使われるものであれば特に限定せずに使用することができるし、好ましくは黒鉛、カーボンパウダー(Carbon powder)、カーボンブラック(Carbon black)、コーク-グラファイト(Coke-Graphite)のような黒鉛系材料や、セルロースファイバー(Cellulose Fiber)、コットンフロック(Cotton flock)のような物質を使用することができる。
【0040】
本発明によるポリプロピレン粒子はポリプロピレン樹脂から形成され、安息角が45°以下であることを特徴とする。
【0041】
本発明において、安息角とは、粒子を水平板の上に積み上げた時、その傾斜を維持する最大勾配角を意味し、例えば、分子粒子を積む場合、その斜面と水平面からなる角をいう。安息角の測定法としては、排出法、落下法、注入法、傾斜法などがある。安息角測定は化学分析や粒度分析で確認されていない粉体の特性を把握するためのものであって、微粒子の粒径が小さいほど、また、角立つものであるほど安息角は大きくなる。安息角の測定は多様な装備及び方法で測定することができるし、例えば、安息角測定機(Angle of Repose Tester)を使用して測定することができる。
【0042】
このような安息角によって微粒子の流れ性が予測できるので、本発明によるポリプロピレン粒子は表面の質感などが安息角の調節において重要な要素になることができる。安息角は粒子の大きさや形態によって大きく変わるし、安息角が適切な範囲を満たすことができない場合、よく流れることができず粒子どうしでくっつくことがある。
【0043】
したがって、本発明によるポリプロピレン粒子は安息角を45°以下に、好ましくは安息角を40°以下、より好ましくは35°以下、最も好ましくは30°以下にすることで適切な流れ性を確保することができるし(この時、安息角が0°のものは除く)、炭素材混合工程で炭素材との混錬性を増加させることができる。
【0044】
上述した特徴を持つポリプロピレン粒子は下記の製造方法によって製造される。以下では本発明によるポリプロピレン粒子の製造方法について具体的に説明する。
【0045】
ポリプロピレン粒子の製造方法
図2は前記製造方法に対する工程フローチャートを簡略に示す。前記製造方法はポリプロピレン樹脂を圧出器に供給して圧出する段階(S100);圧出されたポリプロピレン樹脂及び空気をノズルに供給し、ポリプロピレン樹脂と空気を接触させてポリプロピレン樹脂を粒子化した後、粒子化されたポリプロピレン樹脂を吐出する段階(S200);及び吐出されたポリプロピレン粒子を冷却器に供給してポリプロピレン粒子を冷却した後、冷却されたポリプロピレン粒子を収得する段階(S300)を含む。以下では前記製造方法の各段階について具体的に説明する。
【0046】
本発明によってポリプロピレン粒子を製造するために、先ず、原料のポリプロピレン樹脂を圧出器に供給して圧出する。ポリプロピレン樹脂を圧出することによって、ポリプロピレン樹脂はノズルでの粒子加工に適する物性を持つ。原料で使われるポリプロピレン樹脂は溶融指数(melting index、M.I.)が100g/10min以上のものを使用することができるし、好ましくは100ないし2000g/10min、より好ましくは500ないし2000g/10min、最も好ましくは500ないし2000g/10minの溶融指数を持つポリプロピレン樹脂を使用することができる。
【0047】
また、原料として使われるポリプロピレン樹脂は、製造された粒子の適正な物性を考慮して10,000ないし200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を持つものが好ましい。
【0048】
前記ポリプロピレン樹脂が供給される圧出器はポリプロピレン樹脂を加熱及び加圧してポリプロピレン樹脂の粘度などの物性を調節する。ノズルで粒子化するのに適する物性で調節可能であれば、前記圧出器の種類は特に限定されない。本発明の一具体例によると、前記圧出器は効率的な圧出のために二軸スクリュー圧出器が使われることができる。前記圧出器の内部は150ないし300℃、具体的には170ないし270℃、より具体的には200ないし250℃で維持されることが好ましい。前記圧出器の内部温度が150℃未満であればポリプロピレン樹脂の粘度が高くてノズルでの粒子化に適しないだけでなく、圧出器内でポリプロピレン樹脂の流れ性が低くて圧出に効率的ではない。また、前記圧出器の内部温度が300℃超であればポリプロピレン樹脂の流れ性が高くて効率的な圧出が可能であるが、ノズルでポリプロピレン樹脂が粒子化される時、微細な物性調節が難しい。
【0049】
ポリプロピレン樹脂の圧出量は、圧出器のサイズを考慮してポリプロピレン樹脂の物性調節が容易となるように設定される。本発明の一具体例によると、ポリプロピレン樹脂は1ないし10kg/hrの速度で圧出される。圧出されたポリプロピレン樹脂の粘度は0.5ないし20Pa・s、具体的には1ないし15Pa・s、より具体的には2ないし10Pa・sである。ポリプロピレン樹脂の粘度が0.5Pa・s未満であればノズルで粒子を加工しにくいし、ポリプロピレン樹脂の粘度が20Pa・s超であればノズルでポリプロピレン樹脂の流れ性が低くて加工効率が落ちる。圧出されたポリプロピレン樹脂の温度は150ないし250℃である。
【0050】
圧出器で圧出されたポリプロピレン樹脂はノズルに供給される。前記ポリプロピレン樹脂とともに空気もノズルに供給される。前記空気はノズル内でポリプロピレン樹脂と接触してポリプロピレン樹脂を粒子化する。ポリプロピレン樹脂の物性を適切に維持できるようにノズルには高温の空気が供給される。本発明の一具体例によると、前記空気の温度は250ないし450℃、好ましくは260ないし400℃、より好ましくは270ないし350℃である。前記空気の温度が250℃未満であるか450℃超であれば、ポリプロピレン樹脂でポリプロピレン粒子が製造される時に空気と接触された表面の物性を好ましくない方向に変化させることがあって問題になる。特に、空気の温度が450℃を超えると空気との接触面に過度な熱が供給されて粒子の表面でポリプロピレンの分解現象が発生することがある。
【0051】
ノズルに供給されるポリプロピレン樹脂及び空気はポリプロピレン粒子が適切な大きさ及び形状を持つことができるし、形成された粒子が均一に分散されるように供給位置が設定される。図3はノズル吐出部の断面図を示し、本発明の一具体例によるポリプロピレン樹脂及び空気の供給位置は図3を通じて具体的に説明される。本明細書において、具体的な説明のためにノズルの位置を「注入部」、「吐出部」及び「末端部」などで表現する。ノズルの「注入部」はノズルが始まる位置を意味し、ノズルの「吐出部」はノズルが終わる位置を意味する。また、ノズルの「末端部」はノズルの3分の2地点から吐出部までの位置を意味する。ここで、ノズルの0地点はノズルの注入部で、ノズルの1地点はノズルの吐出部である。
【0052】
図3に示されたように、ポリプロピレン樹脂及び空気の流れ方向と垂直の断面は円形である。前記空気は前記円形の中心に供給される第1空気の流れ40と前記円形の外郭部に供給される第2空気の流れ20を通じて供給され、前記ポリプロピレン樹脂は第1空気の流れ40と第2空気の流れ20の間に供給される。ポリプロピレン樹脂及び空気がノズルの注入部に供給される時からノズルの吐出部の直前まで各供給の流れ(ポリプロピレン樹脂の流れ30、第1空気の流れ40及び第2空気の流れ20)はノズル内部の構造によって分離される。ノズルの吐出部直前でポリプロピレン樹脂の流れと第2空気の流れが合ってポリプロピレン樹脂と空気が接触し、これによってポリプロピレン樹脂は粒子化される。これと違って、第1空気の流れはポリプロピレン樹脂及び空気がノズルから吐出されるまでポリプロピレン樹脂の流れ及び第2空気の流れとはノズルの内部構造によって分離される。第1空気の流れは第2空気の流れによって粒子化されたポリプロピレン樹脂の粒子がノズルの吐出部で粘着されることを防止し、ノズルから吐出した後、冷却器に供給される前に吐出された粒子を均一に分散させる役目をする。
【0053】
圧出器で圧出されたポリプロピレン樹脂は、いずれもノズルの上述した位置に供給され、ノズルに供給される空気の流量は圧出されたポリプロピレン樹脂の流量によって調節されることができる。本発明の一具体例によると、前記空気は1ないし300m/hr、具体的には30ないし240m/hr、より具体的には60ないし180m/hrの流量でノズルに供給される。前記空気の流量範囲内で空気は第1空気の流れと第2空気の流れに分離して供給される。上述したように、ポリプロピレン樹脂は第2空気の流れによって粒子化され、第2空気の流れの温度だけでなくポリプロピレン樹脂と第2空気の流れの割合が粒子の物性を決めることができる。本発明の一具体例によると、ノズルの吐出部断面を基準にしてポリプロピレン樹脂と第2空気の流れの断面積比は4:1ないし6:1、具体的には4.3:1ないし5:1である。前記範囲内でポリプロピレン樹脂と第2空気の流れの割合が調節される場合、バイポーラプレートなどに活用性が高い適正大きさ及び形態のポリプロピレン粒子を製造することができる。
【0054】
ノズルでポリプロピレン樹脂は粒子化されるので、ノズルの内部はポリプロピレン樹脂が粒子化されるに適した温度に調節される。急な温度上昇はポリプロピレンの構造を変化させることがあるので、圧出器からノズルの吐出部までの温度は段階的に上昇されることができる。したがって、ノズルの内部温度は平均的に圧出器の内部温度より高い範囲で設定される。ノズルの末端部に対する温度は以下で別途定義しているので、本明細書でノズルの内部温度は特に言及しないと、ノズルの末端部を除いたノズルの残りの部分の平均温度を意味する。本発明の一具体例によると、ノズルの内部は250ないし350℃で維持されることができる。ノズルの内部温度が250℃未満であれば、ポリプロピレン樹脂に粒子化する時、物性を満たすための十分な熱が伝達されないし、ノズルの内部温度が350℃超であれば、ポリプロピレン樹脂に過度な熱が供給されてポリプロピレンの構造を変化させることができる。
【0055】
ノズルの末端部は生成された粒子の外的及び内的物性を向上させるためにノズル内部の平均温度より高い温度で維持されることができる。ノズル末端部の温度はポリプロピレンのガラス転移温度(T)と熱分解温度(T)の間で決まることができて、具体的には下記算式5によって決まることができる。
【0056】
[算式5]
末端部温度=ガラス転移温度(T)+(熱分解温度(T)-ガラス転移温度(T))×B
【0057】
ここで、前記Bは0.5ないし1.5、具体的には0.85ないし1.45、より具体的には1.2ないし1.4である。前記Bが0.5未満であれば、ノズルの末端部の温度上昇による粒子の外的及び内的物性の向上を期待しにくいし、前記Bが1.5超であれば、ノズルの末端部からポリプロピレンに実質的に伝達される熱が過度に増加してポリプロピレンの構造が変形されることがある。前記ガラス転移温度及び熱分解温度は高分子の種類、重合度、構造などによって変わることができる。本発明の一具体例によると、本発明のポリプロピレンは0ないし50℃のガラス転移温度を持って、250ないし350℃の熱分解温度を持つポリプロピレンが使われることができる。ノズルの末端部はノズルの平均温度より高く維持されるので、場合によってノズルの末端部にはさらに加熱手段が備えられることができる。
【0058】
ノズルから吐出されたポリプロピレン粒子は冷却器に供給される。ノズルと冷却器は離隔して位置させることができるし、この場合、吐出されたポリプロピレン粒子が冷却器に供給される前に周辺空気によって1次的に冷却される。ノズルではポリプロピレン粒子だけでなく高温の空気も一緒に排出されるが、ノズルと冷却器を離隔させることによって高温の空気を冷却器ではなく外部に排出することができるので、冷却器で冷却効率を高めることができる。本発明の一具体例によると、冷却器はノズルと100ないし500mm、具体的には150ないし400mm、より具体的には200ないし300mm離隔して位置する。前記距離より離隔距離が短い場合は冷却チャンバー内に多量の高温の空気が注入されて冷却効率が低いし、前記距離より離隔距離が長い場合は周辺空気によって冷却される量が大きくなって冷却チャンバーによる急速冷却が行われない。また、ノズルからポリプロピレン粒子を吐出する時、噴射角は10ないし60°であって、該当角度でポリプロピレン粒子を吐出する場合、ノズルと冷却器の離隔による効果を倍加することができる。
【0059】
冷却器は冷却器内部に低温の空気を供給して前記空気とポリプロピレン粒子を接触させることでポリプロピレン粒子を冷却することができる。前記低温の空気は冷却器内で回転気流を形成し、前記回転気流によって冷却器内でポリプロピレン粒子の滞留時間を十分確保することができる。冷却器に供給される空気の流量はポリプロピレン粒子の供給量によって調節されることができるし、本発明の一具体例によると、前記空気は1ないし10m/minの流量で冷却器に供給されることができる。前記空気は-30ないし-20℃の温度を持つことが好ましい。冷却器に供給されるポリプロピレン粒子と対比して極低温の空気を冷却器内に供給することで、ポリプロピレン粒子が急速冷却されて吐出時に高温のポリプロピレン粒子の内部構造を適当に維持することができる。ポリプロピレン粒子は製品の製造のために実際適用する時、再度加熱されるが、この時再加熱されたポリプロピレン粒子は加工に有利な物性を持つ。低温の空気によって冷却されたポリプロピレン粒子は40℃以下に冷却して排出されるし、排出された粒子はサイクロンまたはバックフィルターを通じて捕集する。
【実施例
【0060】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されない。
【0061】
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂(PolyMirae、MF650Y、Mw:約90,000g/mol、ガラス転移温度(T):約10℃、熱分解温度(T):約300℃、M.I.:1800g/10min(230℃、2.16kg))100重量%を二軸スクリュー圧出器(直径(D)=32mm、長さ/直径(L/D)=40)に供給した。前記二軸スクリュー圧出器は約220℃の温度条件及び約15kg/hrの圧出量の条件で設定して圧出した。圧出されたポリプロピレン樹脂は約10Pa・sの粘度を持って、前記圧出されたポリプロピレン樹脂を約300℃の内部温度及び約400℃の末端部温度(算式5によるB値は約1.34である)に設定されたノズルに供給した。また、約350℃の空気を約7m/minの流量でノズルに供給した。前記空気はノズル断面の中心部と外郭部に供給され、前記圧出されたポリプロピレン樹脂は空気が供給されるノズルの中心部と外郭部の間に供給された。外郭部に供給された空気と空気が供給された中心部と外郭部の間に供給されて圧出されたポリプロピレンの断面積比は約4.3:1であった。ノズルに供給されたポリプロピレン樹脂は高温の空気と接触して微粒化され、微粒化された粒子がノズルから噴射された。ノズルからの噴射角は約45°で、噴射された粒子はノズルから約200mm離隔された冷却チャンバー(直径(D)=1,100mm、長さ(L)=3,500mm)に供給された。また、前記冷却チャンバーは噴射された粒子が供給される前から-25℃の空気を約6m/minの流量で注入して回転気流を形成するように調節した。冷却チャンバー内で40℃以下に充分冷却された粒子はサイクロンまたはナックフィルターを通じて捕集された。
【0062】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂(LG化学、M1850、ガラス転移温度:10℃、熱分解温度:約280℃、M.I.:70g/10min(230℃、2.16kg)を使ったことを除いては同様の方法でポリプロピレン粒子を製造した。
【0063】
[比較例2]
末端部の温度を140℃(算式5によるB値は約0.45である)に調節したことを除いては実施例1と同様の方法でポリプロピレン粒子を製造した。
【0064】
[比較例3]
末端部の温度を460℃(算式5によるB値は約1.55である)に調節したことを除いては実施例1と同様の方法でポリプロピレン粒子を製造した。
【0065】
実験例1
実施例1と比較例1ないし2によって製造されたポリプロピレン粒子の粒度分布を測定して下記表1に示す。具体的に、粒度分布は下記2段階によって測定された。
【0066】
1)サンプル前処理:エタノールにパウダーサンプルを0.003wt%ぐらい入れて50Watt/30kHzの超音波分散機を利用して最大振幅の30%に設定、約120秒間超音波を励振してパウダーサンプルをエタノール相に分散させる。
【0067】
2)粒度分布測定:ISO 13320規格にしたがって粒度分布を測定する。
【0068】
【表1】
【0069】
前記表1によると、実施例1によって製造された粒子の粒径は比較例1ないし2によって製造された粒子の粒径とは違って、平均粒径を基準にして大きいか、または小さい方向にかたよることなく、D50/D10とD90/D50の割合が類似に維持されることを確認することができる。また、実施例1によって製造された粒子の粒径は比較例1ないし3によって製造された粒子の粒径と違って大きすぎることなく、D50/D10とD90/D50の割合が一定水準以上(約2ないし3)に維持されることを確認することができる。
【0070】
粒子が実施例1によって製造された粒子と同じ粒径分布を持つ場合、製品に適用する時平均粒径のみを持つ場合の短所を効率的に補完することができる。
【0071】
実験例2
前記実施例1及び比較例1ないし3によって製造された粒子25重量%を黒鉛粒子(GRAFGUARD、160-50N)75重量%とヘンシェルミキサー(Henschel Mixer)を使用して混合(100rpmで5分間)した後、200℃に加熱されたホットプレス機器上のバイポーラプレート製造用モールドに投入した後、ポリプロピレン粒子が溶融するために2分間待った後、16kg/cmの圧力を2分間加えた。以後、ホットプレスの外郭を流れる冷却水流路に冷却水を流して温度を常温まで冷凍させ、1.0mm厚さに製造された成形物をFPP-2000Aを使用して4点電気抵抗測定法(ISO 11359-2)で電気抵抗を測定した。
【0072】
【表2】
【0073】
前記表2で示すように、本発明のPP粒子を使った実施例1の場合、比較例1ないし3に比べて電気抵抗値が非常に低いし、これを通じて電気伝導率が優秀であることが分かって、これを通じて黒鉛粒子との混錬性が高いことが分かった。
【0074】
これを通じて実施例1のように高い溶融指数を持つポリプロピレン粒子を使用して炭素材と混合する場合、混錬性が高いので電気的物性に優れることが分かった。
【0075】
実験例3
前記実施例1及び比較例1ないし2によって製造されたポリプロピレン粒子100gを230℃の温度条件で溶融した後、2.16kgの重りで圧力を加えた時、10分間キャピラリー(Capillary)を通過する量を測定して、溶融指数(melting index、M.I.)を測定(単位、g/10min)し、その結果を下記表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
前記表3で示すように、本発明の製造方法によって製造されたPP粒子を使った実施例1の場合、比較例1ないし2に比べて再溶融M.I.値が著しく高いだけでなく、再溶融M.I./最初樹脂M.I.値が90%ないし110%の間の値を持つことが分かった。これを通じて本発明の製造方法によって製造されたPP粒子はポリプロピレン粒子を再度溶融させて使用する工程内で使用する場合、溶融状態のポリプロピレンの流れ性に優れることが分かった。
【0078】
実験例4
前記実施例1及び比較例1ないし2によって製造されたポリプロピレン粒子を使用して安息角を測定した。また、前記ポリプロピレン粒子の圧縮密度を測定した。前記結果を下記表4に示す。
【0079】
前記安息角の測定はCopley Scientific社の安息角測定機(Angle of Repose Tester)を使用して測定し、前記機械上の7.5cmの上から100g以上の粒子を水平の平板(ペトリディッシュ)の中心に一定速度で落とした時、斜面の高さと平板の半径を確認して図4のように安息角を求めて下記表4に示す。
【0080】
また、圧縮密度(Tapped density)は圧縮密度測定設備(Tapped Density Tester、モデル:JV1000、製造社:Copley(イギリス))内、機械的に圧縮可能なシリンダーに粒子を入れた後、圧縮後の密度を測定して決定した。
【0081】
【表4】
【0082】
前記表4で示すように、本発明の製造方法によって製造されたPP粒子を使った実施例1の場合、比較例1ないし2に比べて安息角が低くて、圧縮密度が高いことが分かった。
【0083】
本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になる。
【符号の説明】
【0084】
d:平行な二つの接平面の垂直距離
A:面積
10:ノズル
20:第2空気の流れ
30:ポリプロピレン樹脂の流れ
40:第1空気の流れ
図1
図2
図3
図4
図5