(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】軸受け部品を機械加工するためのホーニング工具および方法
(51)【国際特許分類】
B24B 33/08 20060101AFI20230925BHJP
B24B 33/02 20060101ALI20230925BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B24B33/08
B24B33/02
B24B55/02 Z
(21)【出願番号】P 2022525952
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 DE2020100865
(87)【国際公開番号】W WO2021089082
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】102019129874.1
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アール ナーガ ブーシャナン ヴィンドゥーラ
(72)【発明者】
【氏名】ディーパック アガヴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラジ ジョーシー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャイ アナンド ラジキショア
(72)【発明者】
【氏名】ハリシュ シャー
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-027850(JP,A)
【文献】特開2012-187682(JP,A)
【文献】特開2001-353655(JP,A)
【文献】特開2009-248246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0051857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 33/08
B24B 33/02
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直線セクション(17)と、前記第1のセクションに接続されており、前記第1のセクションに対して斜めに位置決めされている2つのセクション(23、24)と、これらのセクション(23、24)に隣接し、前記第1のセクション(17)に平行な平面内に配置されており、かつ前記第1のセクション(17)から離間している2つの移行セクション(27、28)と、を有する分岐潤滑剤ダクト(16)が配置されているホーニング砥石ホルダ(7)を有し、開放端部セクション(31、32)が、前記移行セクション(27、28)から続いており、前記端部セクションは、前述の平面に平行に配置され、かつ前記潤滑剤ダクト(16)の前記第1のセクション(17)が位置する平面に向けられている、ホーニング工具(3)。
【請求項2】
ホーニング砥石(8)は、共通の平面内、かつ前記第1のセクション(17)に平行に位置する前記潤滑剤ダクト(16)の前記2つの移行セクション(27、28)の間において、前記ホーニング砥石ホルダ(7)に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のホーニング工具(3)。
【請求項3】
前記潤滑剤ダクト(16)の前記2つの端部セクション(31、32)は、前記ホーニング砥石(8)の長手方向に配向されていることを特徴とする、請求項2に記載のホーニング工具(3)。
【請求項4】
前記第1のセクション(17)は、最長セクションを表し、前記2つの端部セクション(31、32)は、前記潤滑剤ダクト(16)の最短セクションを表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のホーニング工具(3)。
【請求項5】
前記2つの斜めに位置決めされたセクション(23、24)は、前記第1のセクション(17)に直交するように配向された横断セクション(20)を介して、前記第1のセクション(17)に接続されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のホーニング工具(3)。
【請求項6】
前記横断セクション(20)および前記2つの斜めに位置決めされたセクション(23、24)は、各々、片側において、ねじ(21、25、26)によって閉鎖されていることを特徴とする、請求項5に記載のホーニング工具(3)。
【請求項7】
軸受け部品(2)、特に車輪軸受けを機械加工するための方法であって、
-軸受け部品(2)、つまり外輪を提供するステップであって、前記外輪を通して転動体のための2つのレースウェイ(10、11)が形成される、提供するステップと、
-クランク状のホルダ(7)およびその中に固定されたホーニング砥石(8)から形成されているホーニング工具(3)を提供するステップであって、前記ホルダ(7)の長手方向が、前記ホルダ(7)のシャフト(15)によって与えられ、前記ホーニング砥石(8)が、前記ホルダ(7)の前記長手方向と直角を成す細長い直方体として設計されており、前記ホルダ(7)が、前記ホルダ(7)の内部で分岐する潤滑剤ダクト(16)によって横断されており、前記潤滑剤ダクト(16)の出口開口部が、前記ホーニング砥石(8)の隣に配置されている、提供するステップと、
-前記外輪(2)の第1のレースウェイ(10)を前記ホーニング工具(3)で機械加工するステップであって、冷却潤滑剤(13)が、前記潤滑剤ダクト(16)を通過し、前記ホーニング砥石(8)の前記長手方向に、機械加工されている表面上に向けられる、機械加工するステップと、
-前記外輪(2)の第2のレースウェイ(11)を前記ホーニング工具(3)で機械加工するステップであって、同様に冷却潤滑剤(13)が、前記潤滑剤ダクト(16)を通過し、前記ホーニング砥石(8)の前記長手方向に、機械加工されている前記表面上に向けられる、機械加工するステップと、を有する、方法。
【請求項8】
前記第1のレースウェイ(10)の前記ホーニング
工具(3)による機械加工中および前記第2のレースウェイ(11)の前記ホーニング
工具(3)による機械加工中に、前記ホーニング工具(3)が、前記外輪(2)に、同じ端面から係合することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却潤滑剤をワークピースに供給することを可能にするホーニング工具に関する。本発明は、ホーニングによって、軸受け部品、具体的には、車輪軸受けを機械加工するための方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
ホーニング工具は、例えば、DE3336626A1から既知である。既知のホーニング工具は、加圧されたホーニング油源への接続のために提供される。ホーニング油は、ホーニング砥石の作業面から磨耗を洗い流すことを目的としている。
【0003】
切削液用の供給ダクトを含む別のホーニング装置は、CN202399128Uに開示されている。切削液用の供給ダクトは、入口および二重出口を有する。
【0004】
リング形状のワークピース、特に軸受けリングを仕上げるためのDE102009040062A1で既知の装置は、ホーニング砥石ホルダの振動運動を生成するための振動駆動装置を有するショートストロークホーニングのための装置を含む。さらに、ハードターニング工具を収容するように設計されている工具ホルダが提供される。
【0005】
回転対称のワークピースの表面の機械的な仕上げのためのさらなる装置は、DE102007054897B4に記載されている。機械加工されるワークピースは、複列球面ころ軸受け用の軸受けリングであり得る。既知の機械加工装置の工具キャリアは、様々な駆動装置を活用して、ショートストローク振動運動およびロングストローク振動運動の両方を実行することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特に、車輪軸受け要素などの軸受け部品をホーニングするときに、効率的でプロセスの信頼性の高い生産に関して、引用された従来技術を超える進歩を達成するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するホーニング工具によって達成される。本目的はまた、軸受け部品、特に車輪軸受けの機械加工、すなわちホーニングのための、請求項7に記載の方法によっても達成される。機械加工方法に関連して以下に説明される本発明の構成および利点はまた、ホーニング工具にも同様に適用され、逆も同様である。
【0008】
ホーニング工具は、第1の直線セクションと、第1のセクションに接続されており、第1のセクションに対して斜めに位置決めされている2つのセクションと、これらの斜めに位置決めされたセクションに隣接し、第1のセクションに平行な平面内に配置されており、かつ第1のセクションから離間している2つの移行セクションと、を有する、分岐潤滑剤ダクトが位置する、ホーニング砥石ホルダを含み、開放端部セクションは、移行セクションから続いており、該端部セクションは、移行セクションの位置によって画定される前述の平面に平行であり、かつ潤滑剤ダクトの第1のセクションが位置する平面に面法線的に向けられている。移行セクションという用語は、潤滑剤ダクトの他のセクションとの区別のために選択されたものであり、移行セクションの幾何学的設計の逸脱に関する情報を意味するものではない。
【0009】
フォーク形状を表す、ホーニング砥石ホルダ内の潤滑剤ダクトのこの設計により、自動車用の車輪軸受けの外輪の両方の転がり軸受けレースウェイをホーニングするために、特に、ホーニング砥石ホルダへのホーニング砥石の取り付けを変更せずに、1つの同じホーニング工具を使用することができる。ホーニング工具およびワークピースまたはベアリング部品、特に車輪軸受け外輪の、機械加工中の移動に関しては、原則として、ホーニング中に共通のプロセスを実装することができる。
【0010】
一般に、ホーニングプロセスは、
-軸受け部品、特に車輪軸受け、つまり一体外輪を提供するステップであって、一体外輪を通して転動体のための2つのレースウェイが形成される、提供するステップと、
-クランク状のホルダおよびその中に固定されたホーニング砥石から形成されているホーニング工具を提供するステップあって、ホルダの長手方向が、ホルダのシャフトによって与えられ、ホーニング砥石が、ホルダの長手方向と直角を成す細長い直方体として設計されており、ホルダが、ホルダ内で分岐する潤滑剤ダクトによって横断され、潤滑剤ダクトの出口開口部が、ホーニング砥石の隣に配置されている、提供するステップと、
-外輪の第1のレースウェイをホーニング工具で機械加工するステップであって、冷却潤滑剤が、潤滑剤ダクトを通過し、ホーニング砥石の長手方向に、機械加工されている表面上に向けられる、機械加工するステップと、
-外輪の第2のレースウェイをホーニング工具で機械加工するステップであって、同様に冷却潤滑剤が、潤滑剤ダクトを通過し、ホーニング砥石の長手方向に、機械加工されている表面上に向けられる、機械加工するステップと、を含む。
【0011】
ホーニング砥石に関連する「細長い直方体」の表示は、ホーニング砥石の基本的な形状を指す。特に機械加工領域では、ホーニング砥石の形状は、直方体の形状から逸脱し得る。
【0012】
車輪軸受けの外輪の設計に関しては、例えば、DE102009051930A1に言及されている。例えば、DE102010055405A1に開示されているように、2列を超える転動体を備える車輪軸受けも、ホーニング工具で機械加工することができる。
【0013】
市販の車輪軸受けの両方のレースウェイをホーニングするための有用性にとって重要であるホーニング砥石ホルダのクランク状の形状は、ホーニング砥石ホルダの全体的な形状、およびホーニング砥石ホルダ内に走る部分的に分割された潤滑剤ダクトの経路の両方において明らかである。ホーニング砥石は、好ましくは、共通の平面内に、かつ第1のセクションに平行に置かれている、潤滑剤ダクトの2つの移行セクション間において、ホーニング砥石ホルダに固定される。ホーニング砥石を固定するためには、ホーニング砥石ホルダ内に配置されており、ねじ機構で調整することができる圧力ブロックが特に好適である。
【0014】
潤滑剤ダクトの2つの端部セクションは、そこからホーニングに使用される冷却潤滑剤が現れ、通常、ホーニング砥石の長手方向に、したがってホーニング砥石ホルダのシャフトを横切って並べられている。潤滑剤ダクトの第1の直線セクション、すなわちシャフト内を走るセクションは、通常、潤滑剤ダクトの任意の他のセクションよりも長い。対照的に、2つの端部セクションは、好ましくは、潤滑剤ダクトの最短セクションである。
【0015】
2つの斜めに位置決めされたセクションは、好ましくは、第1のセクションに直交するように配向された横断セクションを介して、第1のセクションに接続されている。ホーニング砥石ホルダの製造に関する限り、製造技術の観点から有利である様式で、横断セクションは、2つの斜めに位置決めされたセクションと同様に、片側においてねじによって閉鎖されている。
【0016】
ホーニング工具は、外輪の第1のレースウェイを機械加工するために、および外輪の第2のレースウェイを機械加工するために、外輪の同じ端面から外輪に次々に取り付けて、部分的に挿入することができるという点で、特に効率的に使用することができる。特に車輪軸受けのための機械加工される軸受け部品は、通常、2列玉軸受けとして設計された転がり軸受けである。
【0017】
以下では、本発明の例示的な実施形態が、図面によって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ホーニング工具のホーニング砥石ホルダを斜視図で示す。
【
図3】第1の機械加工段階における、ホーニング工具を用いた車輪軸受け外輪の機械加工を示す。
【
図4】第2の機械加工段階における、ホーニング工具による車輪軸受け外輪の機械加工を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ワークピース2、すなわち車輪軸受け外輪を機械加工するための、全体として参照記号3によって識別されるホーニング工具が提供される。
図3および4にスケッチされた、ワークピース2、すなわち、車輪軸受け部品、およびホーニング工具3を含む配置は、全体として、機械加工配置1と称される。
図3には、半径方向の力を吸収する加圧ローラ6も示されている。
【0020】
機械加工されるワークピース2は、車輪軸受けが取り付けられたときに、ホイールキャリアに接続されるフランジ4を有する。フランジ4のボアは、5で示される。フランジ4は、ホーニング工具3を用いて機械加工される、第1のレースウェイ10および第2のレースウェイ11が形成されている円筒セクション12に一体で接続されている。車輪軸受けの完成された状態では、ボールは、それ自体が既知である様式で、レースウェイ10、11上を転動体として転動する。全体として、車輪軸受け部品2を含む車輪軸受けは、O配置の複列アンギュラ形ころ軸受けとして設計されている。そのような車輪軸受けの基本的な構造に関しては、冒頭で引用した先行技術に言及されている。
【0021】
ホーニング工具3は、
図1および2に分離された状態で示されるホーニング砥石ホルダ7を含み、これは、略してホルダとも称される。ホーニング工具3を使用する場合、圧力ブロック9を活用して、ホーニング砥石8をホルダ7に固定する。ホーニング砥石ホルダ7は、以下でより詳細に考察される、全体として16で示され、部分的に2つのアームに分割されるダクト、すなわち、潤滑剤ダクトによって横断される。
【0022】
冷却潤滑剤13は、略して潤滑剤とも称され、ホーニングに使用され、ダクト16を通過する。潤滑剤13は、接続部品18を介して、ダクト16の直線の長いセクション17に導入される。ダクト16の第1の直線セクション17は、ホーニング砥石ホルダ7のシャフト15を通過する。シャフト15は、接続部品18の反対側のその端部で、拡張セクション19に合流する。この拡張セクション19には、第1のセクション17に隣接し、ダクト16にも割り当てられている横方向ダクト20が存在する。横方向ダクト20の両端は、斜めのダクト23、24に接続されており、斜めのダクト23、24は、シャフト15およびそれに接続された拡張セクション19から形成される、ホルダ7の領域から、斜めに曲がる中間セクション22に位置する。
【0023】
横方向ダクト20は、横断セクションとも称され、ホルダ7の側面上にねじ21によって閉鎖された止まり孔として設計されている。対応する様式で、2つの斜めのダクト23、24、すなわち、潤滑剤ダクト16の、斜めに位置決めされたセクションは、ねじ25、26によって閉鎖されている。
【0024】
斜めに位置決めされたセクション23、24は各々、ねじ25、26の少し前で、直線の短いセクション27、28に合流する。2つの直線の短いセクション27、28は、移行セクションとも称され、ダクト16の第1の直線セクション17が位置する平面に平行に配置されている平面を画定する。短いセクション27、28の各々は、ねじ29、30によって閉鎖されており、ねじ29、30は、
図1による配置に基づいて、ホーニング砥石ホルダ7の下側に配置されている。
【0025】
ねじ29、30よりも上で、一端部セクション31、32は、直線の短いセクション27、28から直角に分岐している。冷却潤滑剤13は、ホーニング砥石8に沿って機械加工領域に供給されるように、端部セクション31、32から現れる。レースウェイ10、11の形態である2つの機械加工領域は、中央内壁領域14によって互いに分離されている。潤滑剤ダクト16を含むホーニング砥石ホルダ7のクランク状の形状により、ワークピース2の同じ端面から、各レースウェイ10、11に到達することができ、潤滑剤13は、いずれの場合にも、対象をしぼった様式でそれぞれの機械加工領域に供給される。
【符号の説明】
【0026】
1 機械加工配置
2 軸受け部品、ワークピース
3 ホーニング工具
4 フランジ
5 ボア
6 加圧ローラ
7 ホルダ、ホーニング砥石ホルダ
8 ホーニング砥石
9 加圧ブロック
10 第1のレースウェイ
11 第2のレースウェイ
12 ワークピースの円筒セクション
13 潤滑剤
14 中央内壁領域
15 シャフト
16 ダクト、潤滑剤ダクト
17 直線の長いセクション
18 コネクタ
19 拡張セクション
20 横方向ダクト、横断セクション
21 ねじ
22 中間セクション
23 ダクトの斜めに位置決めされたセクション
24 ダクトの斜めに位置決めされたセクション
25 ねじ
26 ねじ
27 直線の短いセクション、移行セクション
28 直線の短いセクション、移行セクション
29 ねじ
30 ねじ
31 端部セクション
32 端部セクション