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特許7354440高耐熱低誘電ポリイミドフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】高耐熱低誘電ポリイミドフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230925BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230925BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230925BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B15/08 Q
B32B27/34
C08G73/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022526307
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2019016848
(87)【国際公開番号】W WO2021091011
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0141458
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】ピーアイ アドヴァンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PI Advanced Materials CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク・ソン-ユル
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ミン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム・キ-フン
(72)【発明者】
【氏名】リ・キル-ナム
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179150(JP,A)
【文献】特開昭62-161831(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043186(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184406(US,A1)
【文献】特開昭62-208690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08J 5/18
B32B 15/08
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)からなる群から選ばれる2種以上を含む酸二無水物成分と、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(PPD)を含むジアミン成分とを含むポリアミド酸溶液をイミド化反応させて得られ、
前記ジアミン成分の総含量100モル%を基準に、前記m-トリジンの含量が20モル%以上40モル%以下であり、前記パラフェニレンジアミンの含量が60モル%以上80モル%以下であり、
前記酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が10モル%以上40モル%以下であり、
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が30モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
2つ以上のブロックからなるブロック共重合体を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第1ブロック;及び
ピロメリト酸二無水物を含む酸二無水物成分と、m-トリジンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第2ブロック;を含むブロック共重合体を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
ガラス転移温度(Tg)が320℃以上であり、
吸湿率が0.4%以下であり、
誘電損失率(Df)が0.004以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
(a)第1酸二無水物成分及び第1ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第1ポリアミド酸を製造する段階;
(b)第2酸二無水物成分及び第2ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第2ポリアミド酸を製造する段階;
(c)前記第1ポリアミド酸及び第2ポリアミド酸を有機溶媒中で共重合して第3ポリアミド酸を製造する段階;及び
(d)前記第3ポリアミド酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化する段階を含み、
前記第1酸二無水物成分及び第2酸二無水物成分は、それぞれ、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)からなる群から選ばれる2種以上を含み、
前記第1ジアミン成分及び第2ジアミン成分は、それぞれ、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(PPD)からなる群から選ばれる1種以上を含み、
前記第1ジアミン成分及び前記第2ジアミン成分の総含量100モル%を基準に、前記m-トリジンの含量が20モル%以上40モル%以下であり、前記パラフェニレンジアミンの含量が60モル%以上80モル%以下であり、
前記第1酸二無水物成分及び前記第2酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が10モル%以上40モル%以下であり、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が30モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムの造方法。
【請求項6】
前記第1ポリアミド酸は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを含むジアミン成分とを含み、
前記第2ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物を含む酸二無水物成分と、m-トリジンを含むジアミン成分とを含む、請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
ガラス転移温度(Tg)が320℃以上であり、
吸湿率が0.4%以下であり、
誘電損失率(Df)が0.004以下である、請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項記載のポリイミドフィルムと熱可塑性樹脂層を含む、多層フィルム。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項記載のポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔を含む、軟性金属箔積層板。
【請求項10】
請求項記載の軟性金属箔積層板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱特性、低誘電特性及び低吸湿特性を兼備したポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(polyimide,PI)は、剛直な芳香族主鎖と共に、化学的安全性に非常に優れたイミド環を基礎とし、有機材料の中でも最高レベルの耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐化学性、耐候性を有する高分子材料である。
特に、優れた絶縁特性、すなわち低い誘電率のような優れた電気的特性のため、電気、電子、光学分野などに至るまで、高機能性高分子材料として脚光を浴びている。
近年、電子製品が軽量化、小型化しつつあることに伴い、集積度が高く柔軟な薄型の回路基板が活発に開発されている。
このような薄型回路基板は、優れた耐熱性、耐低温性及び絶縁特性を有しながらも曲げやすいポリイミドフィルム上に金属箔を含む回路が形成されている構造が多く活用される傾向にある。
このような薄型回路基板としては、軟性金属箔積層板が主に用いられており、例えば、金属箔として薄い銅板を用いる軟性銅箔積層板(Flexible Copper Clad Laminate,FCCL)が含まれる。その外にも、ポリイミドを薄型回路基板の保護フィルム、絶縁フィルムなどとして活用することもある。
【0003】
一方、近年、電子機器に様々な機能が組み込まれることにより、前記電子機器に速い演算速度及び通信速度が要求されており、これを満たすために、高周波で高速通信可能な薄型回路基板が開発されている。
しかしながら、通常のポリイミドは、誘電特性が高周波通信において十分な絶縁性を保持できる程度に優れているレベルでないのが現状である。
また、絶縁体が低誘電特性を有するほど、薄型回路基板において不所望の浮遊容量(stray capacitance)及びノイズの発生を減少させることができ、通信遅延の原因を相当解消できることが知られている。
したがって、低誘電特性のポリイミドが、薄型回路基板の性能に何より重要な要因として認識されている実情である。
特に、高周波通信では、必然的にポリイミドによる誘電損失(dielectric dissipation)が発生するが、誘電損失率(dielectric dissipation factor;Df)は、薄型回路基板における電気エネルギーの浪費程度を意味し、通信速度を決める信号伝達遅延と密接に関係しているので、ポリイミドの誘電損失率を極力低く保持することも、薄型回路基板の性能に重要な要因として認識されている。
また、ポリイミドフィルムに湿気が多く含まれるほど、誘電定数が大きくなり、誘電損失率が増加する。ポリイミドフィルムは、優れた固有の特性から薄型回路基板の素材として適している反面、極性を帯びるイミド基により湿気に相対的に弱いため、絶縁特性が低下することがある。
したがって、ポリイミドの特有の機械的特性、熱的特性及び耐化学特性を一定レベルに保持しながらも、誘電特性、特に低誘電損失率のポリイミドフィルムの開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、前記のような問題を解決するために、高耐熱特性、低誘電特性及び低吸湿特性を兼備したポリイミドフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、その具体的な実施例を提供することに実質的な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記のような目的を達成するための本発明の一実施形態は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Benzophenonetetracarboxylic dianhydride,BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyltetracarboxylic dianhydride,BPDA)及びピロメリト酸二無水物(Pyromellitic dianhydride,PMDA)からなる群から選ばれる2種以上の酸二無水物成分と、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(p-Phenylenediamine,PPD)からなるジアミン成分とを含むポリアミド酸溶液をイミド化反応させて得られ、
前記ジアミン成分の総含量100モル%を基準に、前記m-トリジンの含量が20モル%以上40モル%以下であり、前記パラフェニレンジアミンの含量が60モル%以上80モル%以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
前記酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、10モル%以上40モル%以下であり、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が30モル%以上80モル%以下であってよい。
【0006】
また、前記ポリイミドフィルムは、2つ以上のブロックからなるブロック共重合体を含んでよい。
すなわち、前記ポリイミドフィルムは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第1ブロック;及び、ピロメリト酸二無水物を含む酸二無水物成分と、m-トリジンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第2ブロック;を含むブロック共重合体を含む、ブロック共重合体を含んでよい。
【0007】
前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が320℃以上であり、吸湿率が0.4%以下であり、誘電損失率(Df)が0.004以下であってよい。
【0008】
本発明の他の実施形態は、(a)第1酸二無水物成分及び第1ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第1ポリアミド酸を製造する段階;
(b)第2酸二無水物成分及び第2ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第2ポリアミド酸を製造する段階;
(c)前記第1ポリアミド酸及び第2ポリアミド酸を有機溶媒中で共重合して第3ポリアミド酸を製造する段階;及び
(d)前記第3ポリアミド酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化する段階を含み、
前記第1酸二無水物成分及び前記第2酸二無水物成分は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)からなる群から選ばれる2種以上を含み、
前記第1ジアミン成分及び第2ジアミン成分は、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(PPD)からなる群から選ばれる1種以上を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
以上で説明した通り、本発明は、特定の成分及び特定の組成比からなるポリイミドフィルム及びその製造方法により、高耐熱特性、低誘電特性及び低吸湿特性を兼備したポリイミドフィルムを提供することによって、これらの特性が要求される様々な分野、特に軟性金属箔積層板などの電子部品などに有用に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る「ポリイミドフィルム」及び「ポリイミドフィルムの製造方法」の順に発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
これに先立って、本明細書及び請求範囲に使われる用語や単語は、通常又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎないもので、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な様々な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
本明細書において、単数の表現は、文脈において特に断りのない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」、又は「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すためのもので、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、構成要素、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
本明細書において、量、濃度、又は他の値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値の列挙として与えられる場合に、範囲が別に開示されるか否かにかかわらず、任意の一対の任意の上の範囲の限界値又は好ましい値、及び任意の下の範囲の限界値又は好ましい値で形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解しなければならない。
数値の範囲が本明細書で言及される場合、別に断らない限り、その範囲は、その終点及びその範囲内のすべての整数と分数を含むものと意図される。本発明の範疇は、範囲を定義するときに言及される特定の値に限定されないものと意図される。
【0011】
本明細書において、「酸二無水物」は、その前駆体又は誘導体を含むものと意図されるが、これらは技術的には酸二無水物でないかもしれないが、それにもかかわらず、ジアミンと反応してポリアミド酸を形成するはずであり、このポリアミド酸はさらにポリイミドに変換され得る。
本明細書において、「ジアミン」は、その前駆体又は誘導体を含むものと意図されるが、これらは技術的にはジアミンでないかもしれないが、それにもかかわらず、ジアンハイドライドと反応してポリアミド酸を形成するはずであり、このポリアミド酸はさらにポリイミドに変換され得る。
【0012】
本発明に係るポリイミドフィルムは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)からなる群から選ばれる2種以上の酸二無水物成分と、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(PPD)からなるジアミン成分とを含むポリアミド酸溶液をイミド化反応させて得られ、前記ジアミン成分の総含量100モル%を基準に、前記m-トリジンの含量が20モル%以上40モル%以下であり、前記パラフェニレンジアミンの含量が60モル%以上80モル%以下である。
特に、m-トリジンの含量は、30モル%以上40モル%以下が好ましい。m-トリジンは、特に疎水性を帯びるメチル基を有するので、ポリイミドフィルムの低吸湿特性に寄与する。
また、前記酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が10モル%以上40モル%以下であり、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が30モル%以上80モル%以下であってよい。
特に、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が15モル%以上35モル%以下、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が35モル%以上75モル%以下であることが好ましい。
前記酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、前記ピロメリト酸二無水物の含量が50モル%以下であってよく、全く含まれなくてもよい。
【0013】
本発明では、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来するポリイミド鎖は、電荷移動錯体(CTC:Charge transfer complex)と命名された構造、すなわち、電子供与体(electron donnor)と電子受容体(electron acceptor)が互いに近接して位置する規則的な直線構造を有し、分子間相互作用(intermolecular interaction)が強化される。
また、カルボニル基を有するベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物もビフェニルテトラカルボン酸二無水物と同様、CTCの発現に寄与する。
このような構造は、水分との水素結合を防止する効果があるので、吸湿率を下げることに影響を与え、ポリイミドフィルムの吸湿性を下げる効果を極大化させることができる。
特に、前記酸二無水物成分としてピロメリト酸二無水物をさらに含んでよい。ピロメリト酸二無水物は、相対的に剛直な構造を有する酸二無水物成分であって、ポリイミドフィルムに適切な弾性を付与できる点で好ましい。
ポリイミドフィルムが適切な弾性と吸湿率を同時に満たすためには、酸二無水物の含量比が特に重要である。例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量比が減少するほど、前記CTC構造による低い吸湿率が期待しにくくなる。
また、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物は、芳香族部分に該当するベンゼン環を2個含むが、ピロメリト酸二無水物は、芳香族部分に該当するベンゼン環を1個含む。
酸二無水物成分においてピロメリト酸二無水物の含量の増加は、同一の分子量を基準にしたとき、分子内のイミド基が増加するものと理解してよく、これは、ポリイミド高分子鎖に、前記ピロメリト酸二無水物に由来するイミド基の割合がビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物に由来するイミド基に比べて相対的に増加することと理解してよい。
すなわち、ピロメリト酸二無水物の含量の増加は、ポリイミドフィルム全体に対しても、イミド基の相対的な増加と見なしてよく、これにより、低い吸湿率が期待しにくくなる。
逆に、ピロメリト酸二無水物の含量比が減少すると、相対的に剛直な構造の成分が減少し、ポリイミドフィルムの機械的特性が所望のレベル以下に低下し得る。
このような理由から、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が前記範囲を上回ると、ポリイミドフィルムの機械的物性が低下し、軟性金属箔積層板を製造するのに適切なレベルの耐熱性を確保することができない。
逆に、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が前記範囲を下回るか、又はピロメリト酸二無水物の含量が前記範囲を上回ると、適切なレベルの誘電定数、誘電損失率及び吸湿率の達成がしにくいので好ましくない。
【0014】
一方、前記ポリイミドフィルムは、2個以上のブロックからなるブロック共重合体を含んでよく、特に2個のブロックを含んでよい。
前記2個のブロックは、それぞれベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第1ブロック;及び、ピロメリト酸二無水物を含む酸二無水物成分と、m-トリジンを含むジアミン成分とをイミド化反応させて得られた第2ブロックであってよい。
【0015】
前記ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が320℃以上であり、吸湿率が0.4%以下であり、誘電損失率(Df)が0.004以下であってよい。
これと関連して、誘電損失率(Df)、ガラス転移温度及び吸湿率をすべて満たすポリイミドフィルムは、軟性金属箔積層板用の絶縁フィルムとして活用できる上に、製造された軟性金属箔積層板が10GHz以上の高周波で信号を伝送する電気的信号の伝送回路として使用される場合にも、それの絶縁安全性が確保でき、信号伝達遅延も最小化できる。
前記条件をすべて満たすポリイミドフィルムは、これまで知られていない新規のポリイミドフィルムであり、以下、誘電損失率(Df)及び吸湿率について詳細に説明する。
【0016】
<誘電損失率>
「誘電損失率」は、分子の摩擦が、交番電界により引き起こされた分子運動を妨害するとき、誘電体(又は絶縁体)により消滅する力を意味する。
誘電損失率の値は、電荷の消失(誘電損失)の容易性を示す指数として通常用いられており、誘電損失率が高いほど電荷が消失しやすくなり、逆に誘電損失率が低いほど電荷が消失しにくくなり得る。すなわち、誘電損失率は電力損失の尺度であるため、誘電損失率が低いほど、電力損失による信号伝送遅延が緩和し、通信速度を速く保つことができる。
これは、絶縁フィルムであるポリイミドフィルムに強く要求される事項であり、本発明に係るポリイミドフィルムは、10GHzの非常に高い周波数下で誘電損失率が0.004以下であってよい。
【0017】
<吸湿率>
吸湿率は、材料に含まれた水分量を示す割合であって、一般に、吸湿率が高いときに誘電定数及び誘電損失率が増加するものと知られている。
一般に、水が固体状のときに誘電定数が100以上であり、液体状のときに約80であり、気体状の水蒸気のときに1.0059と知られている。
すなわち、水蒸気などがポリイミドフィルムに吸湿された状態で水は液体状で存在するが、このような場合、ポリイミドフィルムの誘電定数と誘電損失率は飛躍的に高くなり得る。
すなわち、微量の水分吸湿だけでもポリイミドフィルムの誘電定数と誘電損失率は急変し得る。
本発明に係るポリイミドフィルムは、吸湿率が0.4重量%以下であってよく、その達成は、本発明に係るポリイミドフィルムの構成的特徴に起因する。
これに関しては、後により具体的に説明するが、本発明に係るポリイミドフィルムの分子構造中に非極性部分が含まれていることに起因すると見なされる。
以上のように、本発明に係るポリイミドフィルムは、前記の条件をすべて満たすことにより、軟性金属箔積層板用の絶縁フィルムとして活用できる上に、高周波でも絶縁安全性が確保でき、信号伝達遅延も最小化できる。
【0018】
本発明においてポリアミド酸の製造は、例えば、
(1)ジアミン成分の全量を溶媒中に入れ、その後、酸二無水物成分をジアミン成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(2)酸二無水物成分の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン成分を酸二無水物成分と実質的に等モルとなるように添加して重合する方法;
(3)ジアミン成分のうち一部の成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して酸二無水物成分のうち一部の成分を約95~105モル%の割合で混合した後、残りのジアミン成分を添加し、続いて、残りの酸二無水物成分を添加して、ジアミン成分及び酸二無水物成分が実質的に等モルとなるようにして重合する方法;
(4)酸二無水物成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物のうち一部の成分を95~105モル%の割合で混合した後、他の酸二無水物成分を添加し、続いて、残りのジアミン成分を添加して、ジアミン成分及び酸二無水物成分が実質的に等モルとなるように重合する方法;
(5)溶媒中で、一部のジアミン成分と一部の酸二無水物成分とをいずれか一方が過量となるように反応させて、第1組成物を形成し、さらに他の溶媒中で、一部のジアミン成分と一部の酸二無水物成分とをいずれか一方が過量となるように反応させて、第2組成物を形成した後、第1、第2組成物を混合し、重合を完結する方法であって、そのとき、第1組成物を形成する際にジアミン成分が過剰であれば、第2組成物においては酸二無水物成分を過量とし、第1組成物において酸二無水物成分が過剰であれば、第2組成物においてはジアミン成分を過量として第1、第2組成物を混合し、これらの反応に用いられる全体のジアミン成分と酸二無水物成分とが実質的に等モルとなるようにして重合する方法などが挙げられる。
ただし、前記重合方法は以上の例に限定されず、前記第1~第3ポリアミド酸の製造は、公知のいかなる方法も使用可能であることは勿論である。
【0019】
具体的な一例において、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、
(a)第1酸二無水物成分及び第1ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第1ポリアミド酸を製造する段階;
(b)第2酸二無水物成分及び第2ジアミン成分を有機溶媒中で重合して第2ポリアミド酸を製造する段階;
(c)前記第1ポリアミド酸及び第2ポリアミド酸を有機溶媒中で共重合して第3ポリアミド酸を製造する段階;及び
(d)前記第3ポリアミド酸を含む前駆体組成物を支持体上に製膜した後、イミド化する段階を含み、
前記第1酸二無水物成分及び第2酸二無水物成分は、それぞれベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリト酸二無水物(PMDA)からなる群から選ばれる2種以上を含み、
前記第1ジアミン成分及び第2ジアミン成分は、m-トリジン(m-tolidine)及びパラフェニレンジアミン(PPD)からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。
前記第1ジアミン成分及び第2ジアミン成分の総含量100モル%を基準に、前記m-トリジンの含量が20モル%以上40モル%以下であり、前記パラフェニレンジアミンの含量が60モル%以上80モル%以下であり、
前記第1酸二無水物成分及び第2酸二無水物成分の総含量100モル%を基準に、前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の含量が10モル%以上40モル%以下であり、前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含量が30モル%以上80モル%以下であってよい。
好ましくは、前記第1ポリアミド酸は、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、パラフェニレンジアミンを含むジアミン成分とを含み、前記第2ポリアミド酸は、ピロメリト酸二無水物を含む酸二無水物成分と、m-トリジンを含むジアミン成分とを含んでよい。
【0020】
本発明では、前記のようなポリアミド酸の重合方法を任意(random)の重合方式と定義でき、前記のような過程で製造された本発明のポリアミド酸から製造されたポリイミドフィルムは、誘電損失率(Df)及び吸湿率を下げる本発明の効果を極大化させる側面で、好ましく適用可能である。
ただし、前記重合方法は、先に説明した高分子鎖内の反復単位の長さが相対的に短く製造されるため、酸二無水物成分に由来するポリイミド鎖が有するそれぞれの優れた特性を発揮するには限界があり得る。したがって、本発明において、特に好ましく用いられるポリアミド酸の重合方法は、ブロック重合方式であってよい。
【0021】
一方、ポリアミド酸を合成するための溶媒は、特に限定されるものではなく、ポリアミド酸を溶解させる溶媒であればいかなる溶媒も使用できるが、アミド系溶媒であることが好ましい。
具体的には、前記溶媒は、有機極性溶媒であってよく、詳細には、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってよく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)からなる群から選ばれる一つ以上であってよいが、これに制限されるものではなく、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用してよい。
一例として、前記溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドが特に好ましく使用されてよい。
【0022】
また、ポリアミド酸の製造工程では、摺動性、熱伝導性、コロナ耐性、ループ硬度などのフィルムの様々な特性を改善する目的で、充填材を添加してもよい。添加される充填材は、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
充填材の粒径は、特に限定されるものではなく、改質すべきフィルムの特性と添加する充電材の種類によって決定すればいい。一般には、平均粒径が0.05~100μm、好ましくは0.1~75μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~25μmである。
粒径がこの範囲を下回ると、改質効果が得にくく、この範囲を上回ると、表面性を大きく損傷させるか、又は機械的特性が大きく低下することがある。
また、充填材の添加量に対しても特に限定されるものではなく、改質すべきフィルムの特性や充填材の粒径などによって決定すればいい。一般に、充填材の添加量は、ポリイミド100重量部に対して0.01~100重量部、好ましくは0.01~90重量部、さらに好ましくは0.02~80重量部である。
充填材の添加量がこの範囲を下回ると、充填材による改質効果が得にくく、この範囲を上回ると、フィルムの機械的特性が大きく損傷する可能性がある。充填材の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法を用いてもよい。
【0023】
本発明の製造方法において、ポリイミドフィルムは、熱イミド化法及び化学的イミド化法によって製造されてよい。
また、熱イミド化法及び化学的イミド化法が併用される複合イミド化法によって製造されてもよい。
前記熱イミド化法とは、化学的触媒を排除し、熱風や赤外線乾燥器などの熱源でイミド化反応を誘導する方法である。
前記熱イミド化法は、前記ゲルフィルムを100~600℃の範囲の可変的な温度で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミド酸基をイミド化することができ、詳細には、200~500℃、より詳細には、300~500℃で熱処理して、ゲルフィルムに存在するアミド酸基をイミド化することができる。
ただし、ゲルフィルムを形成する過程においても、アミド酸のうち一部(約0.1モル%~10モル%)がイミド化されてよく、そのために50℃~200℃の範囲の可変的な温度でポリアミド酸組成物を乾燥させることができ、これも前記熱イミド化法の範疇に含まれ得る。
化学的イミド化法の場合、当業界に公知の方法により、脱水剤及びイミド化剤を用いてポリイミドフィルムを製造することができる。
複合イミド化法の一例としては、ポリアミド酸溶液に脱水剤及びイミド化剤を投入した後、80~200℃、好ましくは100~180℃で加熱して部分的に硬化及び乾燥後に、200~400℃で5~400秒間加熱することによって、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0024】
以上のような製造方法により製造された本発明のポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が320℃以上であり、吸湿率が0.4%以下であり、誘電損失率(Df)が0.004以下であってよい。
【0025】
本発明は、前述したポリイミドフィルムと熱可塑性樹脂層を含む多層フィルム、及び前述したポリイミドフィルムと電気伝導性の金属箔を含む軟性金属箔積層板を提供する。
前記熱可塑性樹脂層としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂層などが適用されてよい。
使用する金属箔としては、特に限定されるものではないが、電子機器又は電気機器の用途に本発明の軟性金属箔積層板を用いる場合には、例えば、銅又は銅合金、ステンレス鋼又はその合金、ニッケル又はニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む金属箔であってよい。
一般の軟性金属箔積層板では、圧延銅箔、電解銅箔という銅箔が多く用いられ、本発明でも好ましく用いることができる。また、これら金属箔の表面には防錆層、耐熱層又は接着層が塗布されていてもよい。
本発明において、前記金属箔の厚みには特に限定がなく、その用途に応じて十分な機能が発揮できる厚みであればいい。
【0026】
本発明に係る軟性金属箔積層板は、前記ポリイミドフィルムの一面に金属箔がラミネートされているか、又は前記ポリイミドフィルムの一面に熱可塑性ポリイミド含有の接着層が付加されており、前記金属箔が接着層に付着された状態でラミネートされている構造であってよい。
【0027】
本発明は、また、前記軟性金属箔積層板を電気的信号の伝送回路として含む電子部品を提供する。前記電気的信号の伝送回路は、少なくとも2GHzの高周波、詳細には少なくとも5GHzの高周波、より詳細には少なくとも10GHzの高周波で信号を伝送する電子部品であってよい。
前記電子部品は、例えば、携帯端末機用の通信回路、コンピュータ用の通信回路、又は宇宙航空用の通信回路であってよいが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0028】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用及び効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるものではない。
【0029】
<実施例1>
撹拌機及び窒素注入・排出管を備えた500mlの反応器に窒素を注入しながらNMPを投入し、反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンと、酸二無水物成分としてベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物を投入し、完全に溶解したことを確認する。窒素雰囲気下に40℃に昇温して加熱しながら120分間撹拌し続けた後、23℃での粘度が200,000cPを示す第1ポリアミド酸を製造した。
撹拌機及び窒素注入・排出管を備えた500mlの反応器に窒素を注入しながらNMPを投入し、反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン成分としてm-トリジン、酸二無水物成分としてピロメリト酸二無水物を投入し、完全に溶解したことを確認する。窒素雰囲気下に40℃に昇温して加熱しながら120分間撹拌し続けた後、23℃での粘度が200、000cPを示す第2ポリアミド酸を製造した。
次に、前記第1ポリアミド酸及び第2ポリアミド酸を窒素雰囲気下に40℃に昇温して加熱しながら120分間撹拌し続けた後、23℃での最終粘度が200,000cPを示し、ジアミン成分及び酸二無水物成分を下記表1のように含む、第3ポリアミド酸を製造した。
前記で製造された第3ポリアミド酸を、1,500rpm以上の高速回転により気泡を除去した。その後、スピンコータを用いて、ガラス基板に、脱泡されたポリイミド前駆体組成物を塗布した。その後、窒素雰囲気下及び120℃の温度で30分間乾燥させてゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを450℃まで2℃/分の速度で昇温し、450℃で60分間熱処理し、30℃まで2℃/分の速度で冷却させてポリイミドフィルムを得た。
その後、蒸溜水にディッピング(dipping)してガラス基板からポリイミドフィルムを剥離させた。製造されたポリイミドフィルムの厚みは15μmであった。製造されたポリイミドフィルムの厚みは、フィルム厚み測定器(Electric Film thickness tester、Anritsu社製)を用いて測定した。
【0030】
<実施例2~実施例4、及び比較例1~比較例7>
実施例1において成分及びその含量をそれぞれ下記表1のように変更した以外は、実施例1と同一の方法によりポリイミドフィルムを製造した。下記表1中のODAはオキシジアニリンを表す。
【0031】
【表1】
【0032】
<実験例1>誘電損失率、ガラス転移温度及び吸湿率の評価
実施例1~実施例4、比較例1~比較例7でそれぞれ製造したポリイミドフィルムに対して誘電損失率及びガラス転移温度を測定し、その結果を下記表2に示した。
(1)誘電損失率の測定
誘電損失率(Df)は、抵抗計Agilent 4284Aを用いて軟性金属箔積層板を72時間放置して測定した。
(2)ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(Tg)は、DMAを用いて各フィルムの損失弾性率と貯蔵弾性率を求め、それらのタンジェントグラフから、変曲点をガラス転移温度として測定した。
(3)吸湿率の測定
吸湿率は、ASTMD 570方法に基づき、ポリイミドフィルムをサイズ5cm×5cmの正方形に切断して試片を製造し、切断された試片を50℃のオーブンで24時間以上乾燥後に重さを測定し、重さを測定した試片を24時間23℃の水に浸漬した後、再び重さを測定し、ここで得られた重さの差を%で示して測定した。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すように、本発明の実施例によって製造されたポリイミドフィルムは、誘電損失率が0.004以下と、顕著に低い誘電損失率を示す他、ガラス転移温度も所望のレベルであることが確認できる。
また、吸湿率もいずれも0.4重量%以下であることを確認した。
このような結果は、本願で特定された成分及び組成比によって達成されるものであり、各成分の含量が決定的な役割を果たすということが分かる。
一方、実施例と異なる成分を有する比較例1~比較例7のポリイミドフィルムは、実施例に比べて、誘電損失率が高く或いはガラス転移温度が低く測定された。したがって、比較例は、ギガ単位の高周波で信号の伝送が行われる電子部品に使用しにくいことが予想される。
以上、本発明の実施例を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、特定の成分及び特定の組成比からなるポリイミドフィルム及びその製造方法により高耐熱特性、低誘電特性及び低吸湿特性を兼備したポリイミドフィルムを提供することによって、それらの特性が要求される様々な分野、特に軟性金属箔積層板などの電子部品などに有用に適用可能である。