(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2022527114
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043240
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔一
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161969(JP,A)
【文献】特開2014-143789(JP,A)
【文献】特開2008-210390(JP,A)
【文献】特開2008-271375(JP,A)
【文献】特開2015-037762(JP,A)
【文献】特開2003-075516(JP,A)
【文献】国際公開第2004/070402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられた無停電電源装置であって、
商用交流電源からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータによって生成された直流電力または電力貯蔵装置から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、
前記インバータの出力電圧が入力されて、常時定格回転数で回転して、前記筐体内の温度を下げるための冷却ファンと、
前記無停電電源装置の初期動作時の前記冷却ファンに流れるファン電流の高調波成分と、診断時の前記冷却ファンに流れる電流の高調波成分とに基づいて、前記冷却ファンの劣化を診断する制御装置と、
前記冷却ファンに流れる電流を検出する電流検出器と
、を備え、
前記制御装置は、前記診断時において前記電流検出器によって検出されたファン電流の高調波成分の比率と、前記初期動作時において前記電流検出器によって検出されたファン電流の前記高調波成分の比率とが相違するときに、前記冷却ファンが劣化していると診断する
、無停電電源装置。
【請求項2】
筐体内に設けられた無停電電源装置であって、
商用交流電源からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータによって生成された直流電力または電力貯蔵装置から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、
前記インバータの出力電圧が入力されて、常時定格回転数で回転して、前記筐体内の温度を下げるための冷却ファンと、
前記無停電電源装置の初期動作時の前記冷却ファンに流れるファン電流の高調波成分と、診断時の前記冷却ファンに流れる電流の高調波成分とに基づいて、前記冷却ファンの劣化を診断する制御装置と、を備え、
前記冷却ファンに流れる電流を検出する電流検出器と
、を備え、
前記制御装置は、前記診断時において前記電流検出器によって検出されたファン電流の振幅が最大の高調波成分の次数と、前記初期動作時において前記電流検出器によって検出されたファン電流の振幅が最大の高調波成分の次数とが相違するときに、前記冷却ファンが劣化していると診断する
、無停電電源装置。
【請求項3】
筐体内に設けられた無停電電源装置であって、
商用交流電源からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータによって生成された直流電力または電力貯蔵装置から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、
前記インバータの出力電圧が入力されて、常時定格回転数で回転して、前記筐体内の温度を下げるための冷却ファンと、
前記無停電電源装置の初期動作時の前記冷却ファンに流れるファン電流の高調波成分と、診断時の前記冷却ファンに流れる電流の高調波成分とに基づいて、前記冷却ファンの劣化を診断する制御装置と、
前記インバータから出力されるインバータ電流を検出する第1の電流検出器と、
前記負荷に流れる負荷電流を検出する第2の電流検出器と、
を備え、
前記制御装置は、前記初期動作時において前記第1の電流検出器によって検出されたインバータ電流から前記第2の電流検出器によって検出された負荷電流を減算した結果を前記初期動作時のファン電流として推定し、前記診断時において前記第1の電流検出器によって検出されたインバータ電流から前記第2の電流検出器によって検出された負荷電流を減算した結果を前記診断時のファン電流として推定し、
前記診断時のファン電流の高調波成分の比率と、前記初期動作時のファン電流の高調波成分の比率とが相違するときに、前記冷却ファンが劣化していると診断する
、無停電電源装置。
【請求項4】
筐体内に設けられた無停電電源装置であって、
商用交流電源からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータによって生成された直流電力または電力貯蔵装置から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、
前記インバータの出力電圧が入力されて、常時定格回転数で回転して、前記筐体内の温度を下げるための冷却ファンと、
前記無停電電源装置の初期動作時の前記冷却ファンに流れるファン電流の高調波成分と、診断時の前記冷却ファンに流れる電流の高調波成分とに基づいて、前記冷却ファンの劣化を診断する制御装置と、
前記インバータから出力されるインバータ電流を検出する第1の電流検出器と、
前記負荷に流れる負荷電流を検出する第2の電流検出器と、
を備え、
前記制御装置は、前記初期動作時において前記第1の電流検出器によって検出されたインバータ電流から前記第2の電流検出器によって検出された負荷電流を減算した結果を前記初期動作時のファン電流として推定し、前記診断時において前記第1の電流検出器によって検出されたインバータ電流から前記第2の電流検出器によって検出された負荷電流を減算した結果を前記診断時のファン電流として推定し、
前記診断時のファン電流の振幅が最大の高調波の次数と、前記初期動作時のファン電流の振幅が最大の高調波の次数とが相違するときに、前記冷却ファンが劣化していると診断する
、無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピュータシステムなど重要な負荷に対して電力を安定的に供給するために無停電電源が用いられている。無停電電源装置は、一般的に、商用交流電力を直流電力に変換するコンバータと、バッテリなどの電力貯蔵装置と、コンバータから生成した直流電力あるいは電力貯蔵装置からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータとを備える。無停電電源装置が電力貯蔵装置の直流電力を変換するチョッパをさらに備えていることもある。無停電電源装置は、無停電電源装置の本体部が収納された筐体内を冷却するための冷却ファンを備える。
【0003】
冷却ファンの劣化を診断する機能を有する無停電電源装置が知られている。たとえば、特許文献1には、FANに流れる電流を電圧信号に変換して出力するFAN電流検出部、FAN電流検出部が検出した電圧信号波形をFAN回転数の検出に適した信号波形に変換する波形成形部、および波形成形部から出力される信号波形に基づいてFANの動作状態を診断するFAN状態診断部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の無停電電源装置は、劣化に応じて回転数が変化する冷却ファンを診断の対象としており、常時定格回転数で回転する冷却ファンの劣化を診断することができない。
【0006】
それゆえに、本開示の目的は、常時定格回転数で回転する冷却ファンの劣化を診断することができる無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の筐体内に設けられた無停電電源装置は、商用交流電源からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、コンバータによって生成された直流電力または電力貯蔵装置から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、常時定格回転数で回転して、筐体内の温度を下げるための冷却ファンと、無停電電源装置の初期動作時の冷却ファンに流れるファン電流と、診断時の冷却ファンに流れる電流とに基づいて、冷却ファンの劣化を診断する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の無停電電源装置によれば、常時定格回転数で回転する冷却ファンの劣化を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】実施の形態1における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【
図3】実施の形態2における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【
図4】(a)は、初期動作時のファン電流If1の基本波、および振幅が最大の高調波を表わす図である。(b)は、診断時のファン電流If2の基本波、および振幅が最大の高調波を表わす図である。
【
図5】実施の形態3における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【
図6】実施の形態4による無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。
【
図7】実施の形態4における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【
図8】実施の形態5における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【
図9】実施の形態6における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1による無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。無停電電源装置1は、商用交流電源21から供給される三相交流電力を直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷24に供給するものである。
図1では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(たとえばU相)に対応する部分の回路のみが示されている。
【0011】
図1において、この無停電電源装置1は、交流入力端子T1、バイパス入力端子T2、バッテリ端子T3、および交流出力端子T4を備える。
【0012】
交流入力端子T1は、商用交流電源21から商用周波数の交流電力を受ける。
バイパス入力端子T2は、バイパス交流電源22から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス交流電源22は、商用交流電源であってもよいし、発電機であっても構わない。
【0013】
バッテリ端子T3は、バッテリ(電力貯蔵装置)23に接続される。バッテリ23は、直流電力を蓄える。バッテリ23の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。
【0014】
交流出力端子T4は、負荷24に接続される。負荷24は、交流電力によって駆動される。
【0015】
無停電電源装置1は、さらに、電磁接触器2,8,14,17、電流検出器3,11,15、コンデンサ4,9,13、リアクトル5,12、コンバータ6、双方向チョッパ7、インバータ10、半導体スイッチ16、操作部18、および制御装置19を備える。
【0016】
電磁接触器2の第1端子は交流入力端子T1に接続され、電磁接触器2の第2端子(ノードND1)はリアクトル5の第1端子に接続される。リアクトル5の第2端子はコンバータ6の交流端子6aに接続される。コンデンサ4は、ノードND1と中性点NPとの間に接続される。中性点NPは、たとえば接地電圧を受ける。電磁接触器2は、無停電電源装置1の使用時にオンされ、たとえば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフされる。
【0017】
ノードND1に現れる交流入力電圧Viの瞬時値は、制御装置19によって検出される。交流入力電圧Viの瞬時値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。電流検出器3は、ノードND1に流れる交流入力電流Iiを検出し、その検出値を示す信号を制御装置19に与える。
【0018】
コンデンサ4およびリアクトル5は、交流フィルタF1を構成し、商用周波数の交流電力を通過させるとともに、コンバータ6で発生するスイッチング周波数の電流が商用交流電源21に通過することを防止する。
【0019】
コンバータ6は、制御装置19によって制御され、商用交流電源21から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源21の健全時)には、交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1に出力する。商用交流電源21から交流電力が正常に供給されなくなった場合(商用交流電源21の停電時)には、コンバータ6の運転は停止される。コンバータ6の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0020】
コンデンサ9は、直流ラインL1に接続され、直流ラインL1の電圧を平滑化させる。直流ラインL1に現れる直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置19によって検出される。直流ラインL1は双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードは電磁接触器8を介してバッテリ端子T3に接続される。
【0021】
電磁接触器8は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置1およびバッテリ23のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T3に現れるバッテリ23の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置19によって検出される。
【0022】
双方向チョッパ7は、制御装置19によって制御され、商用交流電源21の健全時には、コンバータ6によって生成された直流電力をバッテリ23に蓄え、商用交流電源21の停電時には、バッテリ23の直流電力を直流ラインL1を介してインバータ10に供給する。
【0023】
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ23に蓄える場合には、直流ラインL1の直流電圧VDCを降圧してバッテリ23に与える。双方向チョッパ7は、バッテリ23の直流電力をインバータ10に供給する場合には、バッテリ23の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力する。直流ラインL1は、インバータ10の入力ノードに接続されている。
【0024】
インバータ10は、制御装置19によって制御され、コンバータ6または双方向チョッパ7から直流ラインL1を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。すなわち、インバータ10は、商用交流電源21の健全時には、コンバータ6から直流ラインL1を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、商用交流電源21の停電時には、バッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ10の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0025】
インバータ10の交流端子10aは、リアクトル12の第1端子に接続され、リアクトル12の第2端子(ノードND2)は、電磁接触器14の第1端子に接続され、電磁接触器14の第2端子(ノードND3)は交流出力端子T4に接続される。コンデンサ13は、ノードND2と中性点NPとの間に接続される。中性点NPは、たとえば接地電圧を受ける。
【0026】
電流検出器11は、インバータ10の出力電流(交流出力電流、インバータ電流)Ioの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置19に与える。ノードND2に現れる交流出力電圧Voの瞬時値は、制御装置19によって検出される。
【0027】
リアクトル12およびコンデンサ13は、交流フィルタF2を構成し、インバータ10で生成される商用周波数の交流電力を交流出力端子T4に通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の電流が交流出力端子T4に通過することを防止する。
【0028】
電磁接触器14は、制御装置19によって制御され、インバータ10によって生成された交流電力を負荷24に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。電流検出器15は、ノードND3と交流出力端子T4との間に流れる負荷電流ILの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置19に与える。
【0029】
半導体スイッチ16は、互いに逆並列に接続された一対のサイリスタを含み、バイパス入力端子T2とノードND3との間に接続される。電磁接触器17は、半導体スイッチ16に並列接続される。半導体スイッチ16は、制御装置19によって制御され、通常はオフされ、インバータ10が故障した場合には瞬時にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する。半導体スイッチ16は、オンしてから所定時間経過後にオフする。
【0030】
電磁接触器17は、インバータ10によって生成された交流電力を負荷24に供給するインバータ給電モード時にはオフされ、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給するバイパス給電モード時にはオンされる。
【0031】
電磁接触器17は、インバータ10が故障した場合にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する。つまり、インバータ10が故障した場合には、半導体スイッチ16が瞬時に所定時間だけオンするとともに電磁接触器17がオンする。これは、半導体スイッチ16が過熱されて破損するのを防止するためである。
【0032】
操作部18は、無停電電源装置1の使用者によって操作される複数のボタンを含む。使用者が操作部18を操作することにより、無停電電源装置1の電源をオンおよびオフしたり、バイパス給電モードおよびインバータ給電モードのうちのいずれか一方のモードを選択したりすることが可能となる。
【0033】
制御装置19は、操作部18からの信号、交流入力電圧Vi、交流入力電流Ii、直流電圧VDC、バッテリ23の端子間電圧VB、インバータ10の出力電流Io、交流出力電圧Vo、および負荷電流ILなどに基づいて無停電電源装置1全体を制御する。すなわち、制御装置19は、交流入力電圧Viの検出値に基づいて停電が発生したか否かを検出し、交流入力電圧Viの位相に同期してコンバータ6およびインバータ10を制御する。
【0034】
制御装置19は、交流入力電圧Vi、交流入力電流Ii、および直流電圧VDCに基づいてコンバータ6を制御する。制御装置19は、商用交流電源21の健全時には、直流電圧VDCが所望の目標電圧VDCTになるようにコンバータ6を制御し、商用交流電源21の停電時には、コンバータ6の運転を停止させる。
【0035】
制御装置19は、直流電圧VDCおよびバッテリ23の端子間電圧VBに基づいて双方向チョッパ7を制御する。制御装置19は、商用交流電源21の健全時には、バッテリ23の端子間電圧VBが所望の目標端子間電圧VBTになるように双方向チョッパ7を制御し、商用交流電源21の停電時には、直流電圧VDCが所望の目標電圧VDCTになるように双方向チョッパ7を制御する。
【0036】
制御装置19は、交流出力電流Ioおよび交流出力電圧Voに基づいて、交流出力電圧Voが所望の目標電圧VoTになるようにインバータ10を制御する。制御装置19は、負荷電流ILを常時監視し、たとえば負荷電流ILが過大になった場合には電磁接触器14,17および半導体スイッチ16をオフさせて無停電電源装置1を保護する。
【0037】
無停電電源装置1は、さらに、冷却ファン51と、電磁接触器20と、電流検出器52と、表示装置53を備える。
【0038】
電磁接触器20の第1端子はノードND3に接続され、電磁接触器20の第2端子は、冷却ファン51に接続される。
【0039】
冷却ファン51は、電磁接触器20がオンすることにより、インバータ10から供給される交流電力を受ける。冷却ファン51は、この交流電力を用いて動作して、無停電電源装置1が収容される筐体の内部の温度を下げる。
【0040】
電流検出器52は、冷却ファン51に流れる電流(以下、ファン電流)Ifの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置19に与える。
【0041】
冷却ファン51には、常時一定電圧が入力され、常時定格回転数で回転する。そのため、冷却ファン51の劣化が進むと、冷却ファン51の回転数を維持するため、ファン電流Ifが増加する。
【0042】
制御装置19は、無停電電源装置1の初期動作時のファン電流If1と、診断時のファン電流If2とを監視することによって、冷却ファン51の劣化を診断する。無停電電源装置1の初期動作時において、冷却ファン51は劣化していないことを前提としている。
【0043】
本実施の形態では、制御装置19は、診断時において電流検出器52によって検出されたファン電流If2の実効値IE2から初期動作時において電流検出器52によって検出されたファン電流If1の実効値IE1を減算した結果dIEが、閾値以上のときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。
【0044】
表示装置53は、冷却ファン51の劣化の有無などを通知する。
図2は、実施の形態1における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0045】
ステップS101において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If1の大きさを表わす信号を受けて、初期動作時のファン電流If1の実効値IE1を算出し、記憶する。
【0046】
ステップS102において、診断時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If2の大きさを表わす信号を受けて、診断時のファン電流If2の実効値IE2を算出する。
【0047】
ステップS103において、制御装置19は、診断時のファン電流If2の実効値IE2から初期動作時のファン電流If1の実効値IE1を減算して、差分値dIEを算出する。
【0048】
ステップS104において、差分値dIEが閾値THX以上のときには、処理がステップS105に進む。
【0049】
ステップS105において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、冷却ファンに流れる電流を監視することによって、冷却ファンの劣化を簡易に診断することができる。
【0051】
[実施の形態2]
実施の形態2の無停電電源装置1の構成は、実施の形態1の無停電電源装置1の構成と同様である。
【0052】
本実施の形態では、制御装置19は、診断時において、電流検出器52によって検出されたファン電流If2のi次の高調波成分の比率R2(i)と、初期動作時において電流検出器52によって検出されたファン電流If1のi次の高調波成分の比率R1(i)とが相違するときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。i=2~nのいずれかである。nはファン電流の高調波成分の最大の次数である。たとえば、初期動作時の7次の高調波の比率R1(7)が20%であるのに対して、診断時の7次の高調波の比率R2(7)が30%のときに、冷却ファン51が劣化していると診断される。
【0053】
図3は、実施の形態2における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0054】
ステップS201において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If1の大きさを表わす信号を受けて、初期動作時のファン電流If1の2~n次の高調波の比率R1(2)~R1(n)を算出して、記憶する。
【0055】
ステップS202において、診断時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If2の大きさを表わす信号を受けて、診断時のファン電流If2の2~n次の高調波の比率R2(2)~R2(n)を算出する。
【0056】
ステップS203において、初期動作時のファン電流If1のi次の高調波の比率R1(i)と診断時のファン電流If2のi次の高調波の比率R2(i)とが相違するときに、処理がステップS204に進む。ここで、i=2~nのいずれかである。
【0057】
ステップS204において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0058】
[実施の形態3]
実施の形態3の無停電電源装置1の構成は、実施の形態1の無停電電源装置1の構成と同様である。
【0059】
本実施の形態では、制御装置19は、診断時において、電流検出器52によって検出されたファン電流If2の振幅が最大の高調波の次数N2と、初期動作時において電流検出器52によって検出されたファン電流If1の振幅が最大の高調波の次数N1とが相違するときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。
【0060】
図4(a)は、初期動作時のファン電流If1の基本波、および振幅が最大の高調波を表わす図である。
図4(b)は、診断時のファン電流If2の基本波、および振幅が最大の高調波を表わす図である。
図4(a)に示すように、初期動作時においてファン電流If1の振幅が最大の高調波の次数は「7」である。
図4(b)に示すように、診断時においてファン電流If2の振幅が最大の高調波の次数は「11」である。
【0061】
図5は、実施の形態3における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0062】
ステップS501において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If1の大きさを表わす信号を受けて、初期動作時のファン電流If1の振幅が最大の高調波の次数N1を求めて、記憶する。
【0063】
ステップS502において、診断時において、制御装置19は、電流検出器52から出力される冷却ファン51に流れる電流(ファン電流)If2の大きさを表わす信号を受けて、診断時のファン電流If2の振幅が最大の高調波の次数N2を求める。
【0064】
ステップS503において、制御装置19は、診断時のファン電流If2の振幅が最大の高調波の次数N2と、初期動作時のファン電流If1の振幅が最大の高調波の次数N1とが相違するときに、処理がステップS504に進む。
【0065】
ステップS504において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0066】
[実施の形態4]
図6は、実施の形態4による無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。
【0067】
実施の形態4の無停電電源装置1は、実施の形態1~3の無停電電源装置1と相違する点は、実施の形態4の無停電電源装置1は、電流検出器52を備えない点である。これにより、実施の形態4では、無停電電源装置1の構成を簡易化できる。
【0068】
制御装置19は、初期動作時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を初期動作時のファン電流として推定する。制御装置19は、診断時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を診断時のファン電流として推定する。
【0069】
制御装置19は、推定された診断時のファン電流PIf2の実効値PIE2から、推定された初期動作時のファン電流PIf1の実効値PIE1を減算した結果dPIEが、閾値以上のときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。
【0070】
図7は、実施の形態4における冷却ファン51の劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0071】
ステップS301において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を初期動作時の推定ファン電流PIf1(=Io-IL)として算出する。
【0072】
ステップS302において、制御装置19は、初期動作時の推定ファン電流PIf1の実効値PIE1を算出して、記憶する。
【0073】
ステップS303において、診断時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を診断時の推定ファン電流PIf2(=Io-IL)として算出する。
【0074】
ステップS304において、制御装置19は、診断時の推定ファン電流PIf2の実効値PIE2を算出する。
【0075】
ステップS305において、制御装置19は、診断時の推定ファン電流の実効値PIE2から初期動作時の推定ファン電流の実効値PIE1を減算して、差分値dPIEを算出する。
【0076】
ステップS306において、差分値dPIEが閾値THZ以上のときには、処理がステップS307に進む。
【0077】
ステップS307において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0078】
以上のように、本実施の形態によれば、冷却ファンに流れる電流を検出するためのセンサを設けることなく、冷却ファンの劣化を簡易に診断することができる。
【0079】
[実施の形態5]
実施の形態5の無停電電源装置1の構成は、実施の形態4の無停電電源装置1の構成と同様である。
【0080】
制御装置19は、初期動作時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を初期動作時のファン電流として推定する。制御装置19は、診断時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を診断時のファン電流として推定する。
【0081】
制御装置19は、診断時において、推定されたファン電流PIf2のi次の高調波成分の比率PR2(i)と、初期動作時において推定されたファン電流PIf1のi次の高調波成分の比率PR1(i)とが相違するときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。i=2~nのいずれかである。nはファン電流の高調波成分の最大の次数である。
【0082】
図8は、実施の形態5における冷却ファンの劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0083】
ステップS401において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を初期動作時の推定ファン電流PIf1(=Io-IL)として算出する。
【0084】
ステップS402において、制御装置19は、初期動作時の推定ファン電流PIf1の2~n次の高調波の比率PR1(2)~PR1(n)を算出して、記憶する。
【0085】
ステップS403において、診断時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を診断時の推定ファン電流PIf2(=Io-IL)として算出する。
【0086】
ステップS404において、制御装置19は、診断時の推定ファン電流PIf2の2~n次の高調波の比率PR2(2)~PR2(n)を算出する。
【0087】
ステップS405において、初期動作時の推定ファン電流PIf1のi次の高調波の比率PR1(i)と診断時の推定ファン電流PIf2のi次の高調波の比率PR2(i)とが相違するときに、処理がステップS406に進む。ここで、i=2~nのいずれかである。
【0088】
ステップS406において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0089】
[実施の形態6]
実施の形態6の無停電電源装置1の構成は、実施の形態4の無停電電源装置1の構成と同様である。
【0090】
制御装置19は、初期動作時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を初期動作時のファン電流として推定する。制御装置19は、診断時において、電流検出器11によって検出されたインバータ電流Ioから電流検出器15によって検出された負荷電流ILを減算した結果を診断時のファン電流として推定する。
【0091】
制御装置19は、推定された診断時のファン電流PIf2の振幅が最大の高調波の次数PN2と、推定された初期動作時のファン電流PIf1の振幅が最大の高調波の次数PN1とが相違するときに、冷却ファン51が劣化していると診断する。
【0092】
図9は、実施の形態6における冷却ファンの劣化診断の手順を表わすフローチャートである。
【0093】
ステップS601において、初期動作時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を初期動作時の推定ファン電流PIf1(=Io-IL)として算出する。
【0094】
ステップS602において、制御装置19は、初期動作時の推定ファン電流PIf1の振幅が最大の高調波の次数PN1を特定して、記憶する。
【0095】
ステップS603において、診断時において、制御装置19は、電流検出器11から出力されるインバータ電流Ioの大きさを表わす信号と電流検出器15から出力される負荷電流ILの大きさを表わす信号とを受けて、インバータ電流Ioと負荷電流ILの差分値を診断時の推定ファン電流PIf2(=Io-IL)として算出する。
【0096】
ステップS604において、制御装置19は、診断時の推定ファン電流PIf2の振幅が最大の高調波の次数PN2を特定する。
【0097】
ステップS605において、診断時の推定ファン電流PIf2の振幅が最大の高調波の次数PN2と、初期動作時の推定ファン電流PIf1の振幅が最大の高調波の次数PN1とが相違するときに、処理がS606に進む。
【0098】
ステップS606において、制御装置19は、冷却ファン51の劣化したことを表示装置53を通じて無停電電源装置1の使用者に通知する。
【0099】
変形例.
(1)平均値
制御装置は、初期動作時におけるファン電流の実効値、高調波の比率、振幅が最大の高調波の次数を複数回算出して、それらの平均値を用いるものとしてもよい。
(2)劣化度
制御装置は、dIEとTHXの間の差の大きさ、dPIEとTHZの間の差の大きさ、R1(i)とR2(i)との間の差の大きさ、PR1(i)とPR2(i)との間の差の大きさ、R1(i)とR2(i)とが相違するiの数、PR1(i)とPR2(i)とが相違するiの数、N1とN2との間の差の大きさ、PN1とPN2との間の差の大きさが大きいほど、冷却ファン51の劣化度が大きいと判断するものとしてもよい。
(3)実施の形態の組み合わせ
実施の形態1~6を組み合わせて用いてもよい。たとえば、S104においてYES、S203においてYES、およびS503においてYESとなるときに、制御装置は、ファンの劣化を通知するものとしてもよい。また、S306においてYES、S405にいてYES、S605においてYESとなるときに、制御装置は、ファンの劣化を通知するものとしてもよい。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 無停電電源装置、2,8,14,17,20 電磁接触器、3,11,15,52 電流検出器、4,9,13 コンデンサ、5,12 リアクトル、6 コンバータ、6a,10a 交流端子、7 双方向チョッパ、10 インバータ、16 半導体スイッチ、18 操作部、19 制御装置、21 商用交流電源、22 バイパス交流電源、23 バッテリ、24 負荷、51 冷却ファン、53 表示装置、L1 直流ライン、ND1,ND2,ND3 ノード、NP 中性点、T1 交流入力端子、T2 バイパス入力端子、T3 バッテリ端子、T4 交流出力端子。
【要約】
筐体内に設けられた無停電電源装置は、商用交流電源(21)からの第1の交流電力を直流電力に変換するコンバータ(6)と、コンバータ(6)によって生成された直流電力または電力貯蔵装置(23)から供給される直流電力を第2の交流電力に変換して負荷(24)に供給するインバータ(10)と、常時定格回転数で回転して、筐体内の温度を下げるための冷却ファン(51)と、無停電電源装置の初期動作時の冷却ファン(51)に流れるファン電流と、診断時の冷却ファン(51)に流れる電流とに基づいて、冷却ファン(51)の劣化を診断する制御装置(19)とを備える。