(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】自動車両の照明システムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20230925BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
(21)【出願番号】P 2022536888
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2020084762
(87)【国際公開番号】W WO2021122071
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-13
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ファティマ、ベナマール
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127125(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184634(WO,A2)
【文献】米国特許第06144158(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0355827(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011050535(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011006570(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02700537(EP,A1)
【文献】特開2015-214281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト自動車両(1)の照明システム(3)を制御するための方法であって、前記照明システムは、垂直方向の開口角が1°未満の基本光ビーム(HD
i,j)をそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な複数の基本光源(32
i,j)を具備しており、
前記方法は、
・前記ホスト車両のセンサーシステム(2)によって目標物(5)を検出する段階(E1)と、
・前記ホスト車両における前記センサーシステムの所与の箇所(21)と、前記目標物の被検出箇所(51)との間での垂直方向角度(α)を決定する段階(E2)と、
・前記垂直方向角度から、前記ホスト車両における前記照明システムの所与の箇所(31)と、前記目標物を垂直方向で相互に縁取るように企図された上方カットオフおよび下方カットオフそれぞれとの間での下方角度(V
inf)および上方角度(V
sup)を決定する段階(E5)と、
・前記ホスト自動車両の前記照明システムにおける前記基本光源を、ピクセル化されたハイビームの光ビーム(HD)を放出するように制御する段階であって、前記下方および上方角度に応じて、実質的に前記上方カットオフと前記下方カットオフとの間に広がる暗部(Z
c)を前記光ビーム内に発生させるように前記基本光源の一部が制御される段階(E6)と、
を備
え、
前記垂直方向角度(α)を決定する段階(E2)は、前記ホスト車両(1)における前記センサーシステム(2)の前記所与の箇所(21)と、前記目標物(5)の前記被検出箇所(51)との間の、所与の時点(t)での垂直方向角度を決定する段階であり、当該方法は、前記所与の時点に対する未来の時点(t+Δt)での前記垂直方向角度の値(α’)を予測する段階(E4)を備え、
前記予測段階(E4)は、前記目標物(5)の垂直方向角速度(θ
・
)を決定する段階を備え、未来の時点(t+Δt)での前記垂直方向角度の値(α’)の予測(E4)は、前記目標物の前記垂直方向角速度を用いて行われる、方法。
【請求項2】
前記目標物を検出する段階(E1)は、前記目標物(5)の光源(51)を検出することを備え、前記被検出箇所は当該光源の箇所である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記垂直方向角度(α)を下方閾値(α
min)および上方閾値(α
max)と比較する中間段階(E3)を備え、前記下方(V
inf)および上方(V
sup)角度を決定する段階(E5)の実行は、前記垂直方向角度が前記下方閾値と前記上方閾値との間にあることを条件とするものである、請求項1から2のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記垂直方向角度(α)を決定する段階は、前記ホスト車両(1)と前記目標物(5)とを隔てる距離(D
HC)を決定する段階(E2)を備え、前記下方角度(V
inf)の値は、前記決定された距離を用いて決定される、請求項1から
3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記垂直方向角度(α)を決定する段階は、前記目標物(5)の高さ(H
c)を決定する段階(E2)を備え、前記上方角度(V
sup)の値は、前記下方角度(V
inf)の値と前記決定された高さとを用いて決定される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記目標物(5)を検出する段階(E1)は、所定の目標物の型の集まりの中で前記目標物の型を分類することを備え、前記目標物(5)の高さ(H
c)は、前記分類された目標物の型に応じて決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスト車両(1)の前記照明システム(3)における前記基本光源(32
i,j)を制御する段階(E6)は、前記上方カットオフと前記下方カットオフとの間の基本光ビーム(HD
i,j)をそれぞれが放出することのできる一部の基本光源を消灯することを備えている、請求項1から
6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
センサーシステム(2)と照明システム(3)と制御器(4)とを備え、前記制御器は請求項1から
7のうちのいずれか一項に記載の方法を実施するように設計されている、自動車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の照明の分野に関するものである。具体的には本発明は、非幻惑性のピクセル化されたハイビームの光ビームを作り出すように自動車両の照明システムを制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車両には、幻惑されるべきでない道路上の目標物を検出するためのセンサーシステムと、この目標物の位置に応じて非幻惑性のビームを放出するための照明システムとを備え付ける慣行が知られている。
【0003】
その目的のために、これらの照明システムは、水平方向にセグメント化された道路照明ビームを放出することができると共に、このビームの各セグメントを形成する基本光ビームのそれぞれを点灯および/または消灯し、および/または、それぞれの光強度を変更することのできる制御ユニットが設けられている。かくして、この種の照明システムは、目標物の高さを中心に照明ビーム全体に亘って垂直方向へ広がる光セグメントを消灯するように制御されるのが常であることが知られている。そのような照明システムはかくして、他の道路使用者らを幻惑することなく、従来のロービームの照明ビームよりもしっかりと道路を照らすことができるのである。
【0004】
しかしながら、現在の照明システムの技術は、ピクセル化されたビームを水平方向にも垂直方向にも放出することを可能とし、その垂直方向の解像度が特に高いものである。この種の技術については、次のようなピクセル化された道路照明ビームを作り出すように照明システムを制御することに関心がある。即ち、目標物の高さにある暗部を特徴としながら、この暗部の上下に明かりを残している照明ビームである。具体的には、そのようなピクセル化された照明ビームは、セグメント化されたやり方で制御されるビームとは違って、運転者が跨線橋型の交通標識を認識したり近視界にある道路上の物体や路面標示を認識したりすることや、目標物が移動するにつれてその目標物の跡を追うように照明ビーム内で暗部が移動するときに運転者を困らせないことを可能とするであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、そのようなピクセル化されたビーム内で、目標物を縁取る上方と下方のカットオフを有しながら、この目標物の上下に明かりを残すように、この暗部の生成を制御するのを可能とする方法に対しての要求が存在するのである。本発明は、この要求に取り組むことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それらの目的のために、本発明の1つの主題は、ホスト(主体側)自動車両の照明システムを制御するための方法であって、照明システムは、垂直方向の開口角が1°未満の基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な複数の基本光源を具備しており、
a.ホスト車両のセンサーシステムによって目標物を検出する段階と、
b.ホスト車両におけるセンサーシステムの所与の箇所と、目標物の被検出箇所との間での垂直方向角度を決定する段階と、
c.垂直方向角度から、ホスト車両における照明システムの所与の箇所と、目標物を垂直方向で相互に縁取るように企図された上方カットオフおよび下方カットオフそれぞれとの間での下方角度および上方角度を決定する段階と、
d.ホスト車両の照明システムにおける基本光源を、ピクセル化されたハイビームの光ビームを放出するように制御する段階であって、上記下方および上方角度に応じて、実質的に上方カットオフと下方カットオフとの間に広がる暗部を光ビーム内に発生させるように基本光源の一部が制御される段階と、
を備えた方法となっている。
【0007】
本発明の効により、その上方および下方カットオフが目標物を枠付けたり縁取ったりする暗部を形成するように、ホスト車両の照明システムによって放出されるピクセル化された光ビーム内における一定のピクセルを消灯することが可能となるが、これらのカットオフの位置は、ホスト車両に対する目標物の垂直方向の位置に関する情報に基づいて定められている、ということを理解されたい。
【0008】
目標物を検出する段階は、目標物の光源を検出することを備え、被検出箇所は当該光源の箇所であることが有利である。例えば、ホスト車両のセンサーシステムは、カメラとコンピューターとを備え、そのコンピューターが、目標物の光源を検出するように当該カメラによって取得された画像を処理する1つないし複数の方法を実施するように設計されている。例えば、その光源は、目標自動車両のヘッドライトやテールライトとすることができるかもしれない。
【0009】
当該方法は、垂直方向角度を下方閾値および上方閾値と比較する中間段階を備え、下方および上方角度を決定する段階の実行は、垂直方向角度が下方閾値と上方閾値との間にあることを条件とするものであることが好ましい。下方閾値は、例えば-1°を超える角度、特に-0.7°であってよい。上方閾値は、例えば+5°未満の角度、特に+4.8°であってよい。この比較段階は、ホスト車両が十分に高い速度で走行している場合にのみアダプティブ(配光可変)道路照明機能を発動させることができることに源を発している。しかしながら、自動車両が高速で走行しがちな道路の勾配を考慮すれば、ホスト車両のライトシステムと、前方の目標車両のリアウインドウの上方箇所との間の角度は、1°未満であったり5°を超えたりすることはあり得ない。従って、垂直方向角度が下方閾値と上方閾値との範囲内にない場合には、ピクセル化された光ビーム内に暗部を生成する必要は無い。この場合には、ホスト車両がアダプティブ道路照明機を発動し得るに足る速度で走行することはあり得ないからである。
【0010】
上記垂直方向角度を決定する段階は、ホスト車両におけるセンサーシステムの上記所与の箇所と、目標物の上記被検出箇所との間の、所与の時点での垂直方向角度を決定する段階であり、当該方法は、所与の時点に対する未来の時点での上記垂直方向角度の値を予測する段階を備えていることが有利である。所与の時点は、例えばセンサーシステムによる目標物の検出の時点に相当し、下方および上方角度は当該垂直方向角度の予測値から決められてよい。この特徴によって、自動車両のセンサーシステムおよび照明システムにおけるレイテンシ(待ち時間)を埋め合わせることが可能となる。具体的には、センサーシステムによって目標物が検出された所与の時点と、照明システムによって放出される光ビーム内に暗部が作り出される時点との間に、もはや暗部が目標物を実質的に縁取らないようにその目標物が移動していて、その目標物が光ビームによって幻惑されてしまうかもしれないのである。かくして、未来の時点での垂直方向角度の値を予測することによって、この未来の時点における目標物の所に、暗部の上方および下方カットオフを位置決めすることが可能となる。
【0011】
適切な場合には、予測段階は、目標物の垂直方向角速度を決定する段階を備え、未来の時点での垂直方向角度の値の予測は、目標物の垂直方向角速度を用いて行われてもよい。例えば垂直方向角速度は、時を経た垂直方向角度の値を導き出すことによって決められ得る。
【0012】
本発明の一実施形態において、垂直方向角度を決定する段階は、ホスト車両と目標物とを隔てる距離を決定する段階を備え、下方角度の値は、当該決定された距離を用いて決定される。例えば、ホスト車両と目標物とを隔てる距離は、ホスト車両のカメラによって取得された画像を処理するための、センサーシステムのコンピューターによって実施される方法を用いて得られてよい。下方角度の値は、ホスト車両のセンサーシステムを中心とする座標系からホスト車両の照明システムを中心とする座標系へと変更することによる垂直方向角度の変換によって得られてよい。例えば、下方角度の値は、次の等式を用いて決められてもよい:
【0013】
【数1】
ここで、V
infは下方角度、αは垂直方向角度の値、D
HCはホスト車両と目標物とを隔てる距離、H
camは道路に対するホスト車両のセンサーシステムの高さ、H
HLは道路に対するホスト車両の照明システムの高さ、D
capotは照明システムからセンサーシステムを隔てる距離(例えば、ホスト車両のボンネットの長さ)である。
【0014】
上記の等式によって特に、暗部の下方カットオフを、実質的に目標物の被検出箇所(例えば、目標車両のヘッドライトやテールライト)の所に位置決めすることが可能となる。所望ならば、下方角度の値は、所定の余地が差し引かれる座標系の上記変更を通じて垂直方向角度を変換することによって得られてもよい。このようにして、当該被検出箇所の下(例えば、目標車両のシルの高さの所)にカットオフを位置決めすることが可能である。
垂直方向角度を決定する段階は、目標物の高さを決定する段階を備え、上方角度の値は、下方角度の値と当該決定された高さとを用いて決定されることが有利である。
【0015】
目標物を検出する段階は、所定の目標物の型の集まりの中で目標物の型を分類することを備え、目標物の高さは、分類された目標物の型に応じて決定されることが有利である。例えば、センサーシステムのコンピューターによって実施される、ホスト車両のカメラによって取得された画像に基づいて目標物の形状を認識するための方法を用いて、目標物の型が得られてもよい。適切な場合には、所定の目標物の型の集まりが、特に歩行者、自転車、自動車、またはトラックを含んでいて、所定の目標物の型それぞれが、所定の目標物の高さと関連付けられていてもよい。
【0016】
変形例として、センサーシステムのコンピューターによって実施される、ホスト車両のカメラによって取得された画像を処理するための方法を用いて、目標物の高さが得られてもよい。
【0017】
例えば、上方角度の値は、次の等式を用いて決められてもよい:
【0018】
【数2】
ここで、V
supは上方角度、αは垂直方向角度の値、D
HCはホスト車両と目標物とを隔てる距離、H
cは目標物の高さ、H
HLは道路に対するホスト車両の照明システムの高さ、V
infは下方角度の値、D
capotは照明システムからセンサーシステムを隔てる距離(例えば、ホスト車両のボンネットの長さ)である。
【0019】
ホスト車両の照明システムにおける基本光源を制御する段階は、上方カットオフと下方カットオフとの間の基本光ビームをそれぞれが放出することのできる一部の基本光源を消灯することを備えていることが有利である。例えば、各基本光源は、自らの所与の開口角と自らの発光の方向とによって定まる所与の発光円錐にて光ビームを放出することができるので、当該制御段階は、その発光円錐が垂直方向で少なくとも部分的に、下方および上方角度によって画定される間隔内にある基本光源を選択する段階を備えていてよい。適切な場合には、基本光源を制御する段階は、上方カットオフと下方カットオフとの間、および目標物を縁取る側方カットオフ同士の間の基本光ビームをそれぞれが放出することのできる一部の基本光源を消灯することを備えていてもよい。例えば、センサーシステムの所与の箇所と目標物の被検出箇所との間の横方向角度から、照明システムの所与の箇所と、目標物を横方向に縁取るように企図された左右の側方カットオフそれぞれとの間の2つの横方向角度を決めることが可能となるであろう。
【0020】
本発明のもう1つの主題は、センサーシステムと照明システムと制御器とを備え、制御器は本発明による方法を実施するように設計されている、自動車両である。
【0021】
照明システムは、垂直方向の開口角が1°未満の基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な複数の基本光源を備えているのが有利である。適切な場合には、全ての基本光源が、水平線を基準として垂直方向で-1°から+5°の範囲内に広がるピクセル化された光ビームを放出することができてもよい。
【0022】
基本光源は、それらの放出することのできる基本光ビームの垂直方向開口角が、ピクセル化された光ビームの上部へ向かって増大するように配置されるのが有利である。所望ならば、照明システムは:
a.垂直方向の開口角が略0.25°である基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な第1の複数の基本光源であって、そのうちの全ての光源が、垂直方向で-1°から+1°の範囲内に広がる第1のピクセル化された光サブビームを放出することのできる、第1の複数の基本光源と、
b.垂直方向の開口角が略0.3°である基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な第2の複数の基本光源であって、そのうちの全ての光源が、垂直方向で+1°から+2°の範囲内に広がる第2のピクセル化された光サブビームを放出することのできる、第2の複数の基本光源と、
c.垂直方向の開口角が略0.35°である基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な第3の複数の基本光源であって、そのうちの全ての光源が、垂直方向で+2°から+3°の範囲内に広がる第3のピクセル化された光サブビームを放出することのできる、第3の複数の基本光源と、
d.垂直方向の開口角が略0.4°である基本光ビームをそれぞれが放出することのできる選択的に制御可能な第4の複数の基本光源であって、そのうちの全ての光源が、垂直方向で+3°から+5°の範囲内に広がる第4のピクセル化された光サブビームを放出することのできる、第4の複数の基本光源と、
を備えていてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、照明システムは、マトリックス・アレイに配列された複数の基本発光体を含むピクセル化光源と、当該ピクセル化光源と関連付けられた投射光学素子とを備えたライト(灯火)モジュールを具備している。基本発光体のそれぞれが、基本光源を形成して、1つの基本光ビームを放出するよう選択的に作動させることができるようになっている。投射光学素子は、当該基本光ビームのそれぞれを道路上へと投射するためのものである。例えば、ピクセル化光源は、発光素子同士の少なくとも1つのマトリックス・アレイ(モノリシック・アレイと称される)、特に発光素子同士の少なくとも1つのモノリシック・マトリックス・アレイ(これもまた、モノリシック・アレイと称される)を備えている。
【0024】
変形例としてライトモジュールは、例えば、少なくとも1つの発光ダイオードと、光電子素子のマトリックス・アレイ(例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD))とで形成される光源を備えていてもよい。その光電子素子のマトリックス・アレイは、当該少なくとも1つの光源から出力された光源を、反射によって投射光学素子の方へ差し向けるものである。
【0025】
ここで、単なる実例であって決して本発明の範囲を限定するものではない見本として、添付図面を参照して本発明を説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による自動車両を模式的かつ部分的に示す図。
【
図2】
図1の自動車両によって実施される、本発明の一実施形態による方法を示す図。
【
図3】
図1の車両による
図2の方法の実施中における道路現場の側面図。
【
図4】
図1の車両による
図2の方法の実施中における道路現場の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明において、構造または機能の点で同等であって種々の図面に現れる要素同士には、別様に示されない限り同じ参照符号が付されている。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態によるホスト自動車両1を示している。ホスト自動車両1は、カメラ21とコンピューター22とを備えたセンサーシステム2を具備している。そのカメラ21は例えば、車両1前方の道路の画像を取得できるように車両1の車内リアビューミラー(バックミラー)の高さの所に配置されている。またコンピューター22は、これらの画像を処理するための種々の方法を実施するように設計されている。ホスト車両1はまた、例えば車両1のヘッドライト内に配置された、ライトモジュール31を備えている。ライトモジュール31は特に、レンズ33と関連付けられたピクセル化光源32を備えている。説明される例において、ピクセル化光源32は、モノリシックなピクセル化された発光ダイオードである。それの発光素子のそれぞれが基本光源32
i,jを形成している。その基本光源32
i,jは、レンズ33に向かって光を放出するよう、組込型制御器によって選択的に作動させて制御することのできるものである。かくしてレンズ33は、光強度を制御可能な基本光ビームHD
i,jを道路上へと投射する。各基本光ビームHD
i,jは、レンズによって、所与の発光方向と所与の開口角とによって定められる所与の発光円錐内に投射される。従って説明される例においては、かくして基本光ビームHD
i,jの全てによって、-1°から+5°の角度の垂直方向範囲に亘って垂直方向に広がる25列20行に亘って分布した500ピクセルを特徴とするピクセル化された光ビームHDが形成される。そのビームの各ピクセルは、これらの基本光ビームHD
i,jのうちの1つによって形成されている。
【0029】
光源32における基本光源32i,jのうちの1つによって放出される各基本光ビームHDi,jは、1°未満の垂直方向開口角を有している。具体的には、光源32の基本光源32i,jは、それらの放出することのできる基本光ビームHDi,jの垂直方向開口角が、ピクセル化された光ビームの上部へ向かって増大するように配置されている。特に:
a.発光円錐が-1°から+1°の角度の垂直方向範囲内にある基本光源のそれぞれが、垂直方向の開口角が略0.25°である基本光ビームを放出することができ、
b.発光円錐が+1°から+2°の角度の垂直方向範囲内にある基本光源のそれぞれが、垂直方向の開口角が略0.3°である基本光ビームを放出することができ、
c.発光円錐が+2°から+3°の角度の垂直方向範囲内にある基本光源のそれぞれが、垂直方向の開口角が略0.35°である基本光ビームを放出することができ、
d.発光円錐が+3°から+5°の角度の垂直方向範囲内にある基本光源のそれぞれが、垂直方向の開口角が略0.4°である基本光ビームを放出することができる。
【0030】
ライトモジュール31は、ピクセル化光源32の組込型制御器を制御するように設計された制御器34を備えている。その制御は、ホスト車両1の制御器4から受けた命令に応じて、基本光ビームHDi,jそれぞれの点灯、消灯、および光強度の変更を選択的に制御するようなものである。これらの命令は特に、ホスト車両のセンサーシステム2のコンピューター22によってもたらされる情報に基づいて決定されている。
【0031】
説明される例においては、カメラ21が高さHcamの所に設置され、ライトモジュール31が高さHHLの所に設置されているが、これらの高さがホスト車両1の走行している道路に対して計測されていることに留意されたい。更に、カメラ21とライトモジュール31とは距離Dcapot だけ隔てられている。
【0032】
図2は、ホスト車両1の照明システム3を制御するための方法を示している。その方法は、照明システム3が、目標物5にとって非幻惑性であるハイビームの光ビームを放出することを可能とするものであり、制御器4によって、センサーシステム2を用いて実施される。
図3および
図4は、この方法の実施中にこの光ビームが投射される道路現場の側面図および正面図を示している。これらの
図3および
図4は、この光ビームの部分的な図しか示していないことに留意されたい。
【0033】
第1段階E1においては、センサーシステム2が道路上の目標物5(この場合は、目標車両5)の存在を検出する。説明される例においては、コンピューター22が、カメラ21によって取得された画像を処理するための1つないし複数の方法を実施する。当該方法は、これらの画像内で光源が検出されるのを、従って目標車両5のテールライト51の存在が検出されるのを可能とするものである。
【0034】
第2段階E2においては、コンピューター22が、ホスト車両1のカメラ21と目標車両5のテールライト51との間の垂直方向角度α、および目標車両5のテールライト51からホスト車両のカメラ21を隔てる距離DHCを決定する。また、コンピューター22は、所定の車両の型の集まりの中で目標車両の型を分類すると共に、選択された目標車両5の型に基づいて、目標車両5の高さHcを決定する。これらの作業のそれぞれが、カメラ21によって取得された画像を処理するための1つないし複数のアルゴリズムによって成し遂げられ、コンピューター22によって実施され得る。この情報α、DHC、Hcの全てが、コンピューター22によって制御器4へと送信される。
【0035】
段階E3においては、制御器4が、垂直方向角度αの値を、下方閾値αmin(例えば、-0.7°)および上方閾値αmax(例えば、+4.8°)と比較する。角度αがαminとαmaxとの間にない場合には、ホスト車両1や目標車両5が、非幻惑性のハイビーム機能を可能とはしないか、或いは必要とはしない勾配の道路上を走行しているものと推定することができることから、当該方法が停止する。垂直方向角度αがαminとαmaxとの間にある場合には、当該方法は次の段階へ移る。
【0036】
コンピューター22によって決定されている垂直方向角度αは、その角度が決定されるのを可能とした画像のカメラ21による取得の時点tにおける目標車両5の位置に関するものである。しかしながら、センサーシステム2のコンピューター22によって実施される種々の方法と、照明システム3によって非幻惑性のハイビームが作り出されるのを可能とする(下記で説明されることとなる)本発明による方法との両者が、その後に実際にビームが放出される所与の実行時間Δtを必要とする。この時間Δtの間に目標車両5が移動してしまって、垂直方向角度αの値がもはや、ビームが放出される時点での目標車両5の実際の位置には対応しなくなっているであろう。
【0037】
このレイテンシを埋め合わせるため段階E4において、制御器4は、段階E2で垂直方向角度αが決定されるのを可能とした画像のカメラ21による取得の時点tに対する未来の時点t+Δtにおける、ホスト車両1のカメラ21と目標車両のテールライト51との間の垂直方向角度α’の値を予測する。それらの目的のために制御器4は、先に段階E2で決定された垂直方向角度αの種々の値から値を導き出すことによって、目標車両の垂直方向角速度θ・(ニュートンの記法による「θの時間微分」の表記)を決定する。かくして予測値α’は、以下の等式を用いて得られるであろう:
【0038】
【数3】
ここで、αは段階E2で決定された時点tでの垂直方向角度の値、α’は未来の時点t+Δtでの垂直方向角度の予測値、θ
・は目標車両5の垂直方向角速度、Δtは本発明による方法のレイテンシの時間である。
【0039】
段階E5においては、制御器4が、ライトモジュール31と目標車両5のテールライト51との間の下方角度Vinfを決定する。制御器4はかくして、以下の等式を用いて、ホスト車両における、センサーシステム2のカメラ21を中心とする座標系から、照明システム3のライトモジュール31を中心とする座標系へと変更することによって、予測垂直方向角度α’を変換する:
【0040】
【数4】
ここで、V
infは下方角度、α’は段階E4で予測された垂直方向角度の値、D
HCは段階E2で決定されたホスト車両1と目標車両5とを隔てる距離、H
camは道路に対するホスト車両1のセンサーシステム2の高さ、H
HLは道路に対するホスト車両1の照明システム3の高さ、D
capotは照明システム3からセンサーシステム2を隔てる距離である。
【0041】
値Hcam、HHL、およびDcapotは前もって知られており、制御器4のメモリ内に記憶されている。
【0042】
更に、なおも段階E5においては、制御器4が、先に得られた下方角度Vinfの値と、段階E2で決定された目標車両の高さHcとから、上方角度Vsupを、例えば以下の等式を用いて決定する:
【0043】
【数5】
ここで、V
supは上方角度、αは段階E4で予測された垂直方向角度の値、D
HCはホスト車両1と目標車両5とを隔てる距離、H
cは段階E2で決定された目標車両の高さ、H
HLは道路に対するホスト車両の照明システムの高さ、V
infは下方角度の値、D
capotは照明システム3からセンサーシステム2を隔てる距離である。
【0044】
段階E5の完了時に制御器4は、下方Vinfと上方Vsupの角度同士の対を、ライトモジュール31の制御器34へと送信する。更に、説明しない諸段階において制御器4は、目標車両5の各テールライト51の位置から、それぞれ右VLDと左VLGの側方角度同士の対を決定すると共に、この角度同士の対を制御器34へと送信する。
【0045】
段階E6においては、制御器34が、光源32における次のような基本光源32i,jを選択する。即ち、自らの発光円錐が、垂直方向で少なくとも部分的に下方Vinfと上方Vsupの角度同士の間で、水平方向で少なくとも部分的に右VLDと左VLGの側方角度同士の間にある基本光源32i,jである。制御器34はかくして、これらの選択された基本光源32i,jの消灯を制御する一方で、その他の基本光源の点灯を制御する。ライトモジュール1はかくして、目標車両5を中心とした暗部Zcの形成されているピクセル化されたハイビームの光ビームHDを放出する。その暗部Zcは、それぞれライトモジュール1と垂直方向角度を成す下方と上方のカットオフ同士によって垂直方向に画定されて、それぞれの垂直方向角度の値が実質的にVinfおよびVsupであると共に、それぞれライトモジュール1と水平方向角度を成す右と左の側方カットオフ同士によって水平方向に画定されて、それぞれの水平方向角度の値が実質的にVLDおよびVLGである。用語「実質的に」は、ここではピクセル化された光ビームHDの垂直方向および水平方向の解像度との関連において解釈されるべきものであることに留意されたい。
【0046】
以上の説明は、本発明が如何にして設定目標を達成するかを明確に説明している。それは特に、ホスト車両の照明システムを制御するための、照明システムにおける各基本光源の点灯や消灯を制御する方法を提供することによるものである。その制御は、上方カットオフと下方カットオフとによって画定されるピクセル化された光ビーム内の暗部を作り出すようなものであり、それらのカットオフの位置は、ホスト車両のセンサーシステムからの情報に基づいて決定されるが、それらの位置は特に、幻惑されるべきでない道路上の目標物の垂直方向位置に関連している。
【0047】
如何なる場合にも、本発明は、この文書で具体的に説明された実施形態に限定されるものと見做されるべきでなく、特に如何なる等価な手段や、これらの手段同士の技術的に使用可能な如何なる組合せにも及ぶものである。特に、説明されたもの以外の型式のライトモジュール、とりわけ光源と選択的に作動可能なマイクロミラーのマトリックス・アレイとを備えたライトモジュールを考えることが可能である。下方および上方角度の値が決定されるのを可能とする等式や、説明されてきたもの以外の等式ですら用いられる種々の値を決定するための、他の方法を考えることも可能であろう。それらの等式は特に、ピクセル化された光ビーム内の暗部における上方および下方カットオフの位置を垂直方向に移動させることを可能とする余地の総和を示すものである。