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特許7354454妊娠中毒症診断用バイオマーカー組成物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】妊娠中毒症診断用バイオマーカー組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230925BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230925BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/50 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022540880
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 KR2020019201
(87)【国際公開番号】W WO2021137553
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179979
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】515042476
【氏名又は名称】ユニバーシティ-インダストリー コオペレーション グループ オブ キョン ヒ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ヒュン ミー
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジ ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,クワン ピョ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/048927(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ANXA3、A2M、APOB、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、SHBG、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む、妊娠中毒症診断用組成物。
【請求項2】
前記タンパク質またはその断片のレベルを測定する製剤は、タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、請求項1に記載の妊娠中毒症診断用組成物。
【請求項3】
前記妊娠中毒症は、慢性高血圧、妊娠性高血圧、前子癇症、子癇症及び複合子癇前症からなる群のうちから選択された1以上である、請求項1に記載の妊娠中毒症診断用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含む、妊娠中毒症診断用キット。
【請求項5】
前記キットは、ELISA(enzyme-linked immune sorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(multiple reaction monitoring)キットである、請求項4に記載の妊娠中毒症診断用キット。
【請求項6】
(a)個体から分離された生物学的試料において、ANXA3、A2M、APOB、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、SHBG、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
(b)前記測定されたタンパク質またはその断片の発現レベルを、対照群試料のタンパク質またはその断片の発現レベルと比較する段階と、を含む、妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
【請求項7】
前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたANXA3、A2M、APOB、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、及びSHBGからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが、対照群に比べて上昇された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含む、請求項6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
【請求項8】
前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたHBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが、対照群に比べて低下された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含む、請求項6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
【請求項9】
前記タンパク質の発現レベルは、ウェスタンブロット(western blotting)、ELISA(enzyme-linked immuno sorbent assay)、放射線免疫分析(RIA)、放射免疫拡散法(radial immunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィ法(immunochromatography)、FACS分析法(fluorescence activated cell sorter analysis)及びタンパク質チップ分析法(protein chip technology assay)によって構成された群のうちから選択されるいずれか一つを利用して測定される、請求項6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月31日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0179979号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
本発明は、妊娠中毒症診断用バイオマーカー組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠中毒症は、妊娠20週以後、炎症、低酸素症、酸化的ストレスのような多様な原因により、蛋白尿(>300mg/day)を伴う高血圧(>140/90mmHg)疾患であり、妊婦と胎児との生命まで脅かす。しかしながら、今のところ、これと言った治療剤はなく、予防が最善の方案であると知られている。
【0003】
妊娠中毒症を予防して診断するための方便として、パーキンエルマー(PerkinElmer)DELFIA(登録商標) Xpress PlGFキットが販売されているが、5%偽陽性率から、44%の低検出率を示し、実際の診断に有用に使用されえず、Alere Triage(登録商標) PLGF検査も、臨床的診断の効用性を立証するには不十分である。
【0004】
そのような技術的背景下において、前述の疾病につき、遺伝子分析を介し、事前に疾病いかんを知ることができる分析方法に係わる研究が活発に進められている(韓国公開特許10-2019-0003987)が、いまだに整っていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN1、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む妊娠中毒症診断用組成物を提供するものである。
【0006】
他の態様は、前記組成物を含む妊娠中毒症診断用キットを提供するものである。
【0007】
さらに他の態様は、(a)個体から分離された生物学的試料において、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
(b)前記測定されたタンパク質またはその断片の発現レベルを、対照群試料のタンパク質またはその断片の発現レベルと比較する段階と、を含む妊娠中毒症診断のための情報提供方法を提供するのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様は、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む妊娠中毒症診断用組成物を提供する。
【0009】
前記ANXA3は、アネキシン(Annexin)A3とも言う。前記A2Mは、α-2-マクログロブリン(Macroglobulin)またはα2Mとも言う。前記APOBは、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Bとも言う。前記PZPは、PZP α-2-マクログロブリン(macroglobulin)likeまたはpregnancy zone proteinとも言う。前記FETUBは、フェツイン(Fetuin)Bとも言う。前記FN1は、フィブロネクチン(Fibronectin)1とも言う。前記LCN2は、リポカリン(Lipocalin)2とも言い、癌遺伝子(oncogene)24p3またはNGAL(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)とも知られている。前記APOMは、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Mとも言う。前記QSOX1は、Quiescin sulfhydryl oxidase 1またはQuiescin Q6とも言う。前記TGOLN2は、Trans-golgi network protein 2とも言う。前記F10は、coagulation factor Xとも言う。前記SERPINA11は、Serpin Family A Member 11とも言う。前記PRG2は、プロテオグリカン(Proteoglycan)2、pro eosinophil major basic proteinとも言う。前記SHBGは、Sex hormone binding globulinとも言う。前記TNCは、テネイシン(Tenascin)Cとも言う。前記HBDは、Hemoglobin subunit deltaとも言う。前記AGTは、アンジオテンシノーゲン(Angiotensinogen)とも言う。前記CPは、セルロプラスミン(ceruloplasmin)とも言う。前記HEXBは、Hexosaminidase subunit betaとも言う。前記SERPINA4は、Serpin Family A Member 4またはKallistatinとも言う。前記VWFは、フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)とも言う。前記タンパク質、またはそれをコーディングする遺伝子の配列は、Ensembl Genome BrowserまたはBLASTのような公知のデータベースから確認することができる。
【0010】
用語「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味し、妊娠中毒症関連疾患の発病いかん、または発病可能性いかんを確認することを含む意味でもある。
【0011】
用語「レベル測定」は、妊娠中毒症関連疾患を診断するために、生物学的試料において、妊娠中毒症関連疾患に係わるマーカーの発現または活性の程度を測定することを含むものでもある。前記マーカーは、代謝物質、遺伝物質であるDNAまたはRNAなどでもあり、前記遺伝物質から発現されるタンパク質または断片であるペプチドでもある。
【0012】
用語「妊娠中毒症」とは、妊娠と合併された高血圧性疾患を意味する。また、前記妊娠中毒症は、高血圧と共に、蛋白尿が生じる疾患でもある。具体的には、前記妊娠中毒症は、慢性高血圧、妊娠性高血圧、病態がさらに進んだ形態である前子癇症及び子癇症を含む概念でもある。前記妊娠中毒症の症状としては、頭痛、浮腫、吐き気、嘔吐、泡尿などがある。
【0013】
前記慢性高血圧は、妊娠前あるいは妊娠20週以前に生じた高血圧を意味する。前記妊娠性高血圧は、妊娠20週以後、新たに高血圧が生じ、出産12週内に、血圧が正常化される疾患を意味する。前述の「血圧が正常」とは、収縮期血圧が140mmHg未満であり、弛緩期血圧が90mmHg未満であるものを意味する。前記前子癇症は、高血圧及び蛋白尿が同時に生じる疾患を意味する。前記子癇症は、高血圧、蛋白尿及び痙攣が同時に生じる疾患を意味する。
【0014】
一具体例において、前記タンパク質またはその断片のレベルを測定する製剤は、タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含むことでもある。
【0015】
前記タンパク質またはその断片のレベルを測定する製剤は、タンパク質と特異的に結合するオリゴペプチド、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメリック抗体、リガンド、PNAまたはアプタマーでもある。また、前記タンパク質またはその断片のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片を発現させる代謝物質または遺伝物質であるDNA、RNAなどのレベルを測定する製剤によっても代替される。
【0016】
前記抗体は、当該分野で公知された用語であり、抗原性部位について指示される特異的なタンパク質分子を意味する。各遺伝子を、一般的な方法により、発現ベクターにクローニングし、前記マーカー遺伝子によってコーディングされるタンパク質を得て、得られたタンパク質から一般的な方法によっても製造される。前記抗体の形態としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体またはキメリック抗体でもあり、選択的には、ヒト化抗体などの特殊抗体も含まれうる。
【0017】
前記アプタマーとは、一本鎖ヌクレオチドを意味するものであり、所定の標的分子に係わる結合活性を有する核酸分子を言う。前記アプタマーは、その塩基配列により、多様な三次元構造を有することができ、抗原・抗体反応のように、特定物質について高い親和力を有することができる。該アプタマーは、所定の標的分子に結合することにより、所定の標的分子の活性を阻害することができる。
【0018】
一具体例において、前記妊娠中毒症は、慢性高血圧、妊娠性高血圧、前子癇症、子癇症及び複合子癇前症からなる群のうちから選択された1以上でもある。
【0019】
他の態様は、前記組成物を含む妊娠中毒症診断用キットを提供する。
【0020】
前述の用語「妊娠中毒症」、「診断」などに係わる説明は、前述の通りである。
【0021】
一具体例において、前記キットは、ELISA(enzyme-linked immune sorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(multiple reaction monitoring)キットでもある妊娠中毒症診断用キットでもある。
【0022】
前記キットは、前記遺伝子からコーディングされるタンパク質のレベルを測定するためのタンパク質チップキットでもある。前記キットは、抗体の免疫学的検出のために、基材、適切な緩衝溶液、発色酵素または蛍光物質で標識された二次抗体、発色基質などを含むものでもある。前記基材は、ニトロセルロース膜、ポリビニル樹脂によって合成された96ウェルプレート、ポリスチレン樹脂によって合成された96ウェルプレート、またはガラスからなるスライドグラスでもある。前記発色酵素は、ペルオキシダーゼ(peroxidase)またはアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)でもある。前記蛍光物質は、FITCまたはRITCでもある。前記発色基質は2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(BTS)またはo-フェニレンジアミン(OPD)、TMB(テトラメチルベンジジン)でもある。
【0023】
さらに他の態様は、(a)個体から分離された生物学的試料において、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
(b)前記測定されたタンパク質またはその断片の発現レベルを、対照群試料のタンパク質またはその断片の発現レベルと比較する段階と、を含むものである妊娠中毒症診断のための情報提供方法を提供する。
【0024】
前述の用語「妊娠中毒症」、「診断」、「キット」などに係わる説明は、前述の通りである。
【0025】
用語「個体」は、妊娠中毒症の発病いかんまたは発病可能性を確認するか、あるいは発病危険度を予測する個体を意味する。前記個体は、脊椎動物でもあり、具体的には、哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類などでもあり、さらに具体的には、哺乳動物でもあり、例えば、ヒト(Homo sapiens)でもある。
【0026】
用語「生物学的試料」は、個体から分離された全血、血清、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、細胞、組織などを含むものでもあり、望ましくは、生体から分泌される試料、さらに具体的には、個体から分離された鼻水、唾液、尿、喀痰またはリンパ液でもある。
【0027】
用語「対照群」は、妊娠中毒症患者ではない個体を意味しうる。
【0028】
一具体例において、前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG及びTNCからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが、対照群に比べて上昇された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含むものである、妊娠中毒症診断のための情報提供方法でもある。
【0029】
一具体例において、前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたHBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが対照群に比べて低下された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含むものである、妊娠中毒症診断のための情報提供方法でもある。
【0030】
一具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルは、ウェスタンブロット(western blotting)、ELISA(enzyme-linked immuno sorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radial immunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィ法(immunochromatography)、FACS分析法(fluorescence activated cell sorter analysis)及びタンパク質チップ分析法(protein chip technology assay)によって構成された群のうちから選択されるいずれか一つを利用して測定されるものである、妊娠中毒症診断のための情報提供方法でもある。
【0031】
一実施例によれば、前記妊娠中毒症が診断される個体は、生物学的試料から測定されたANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG及びTNCのタンパク質またはその断片の発現レベルが対照群に比べて有意に高く示される。
【0032】
一実施例によれば、前記妊娠中毒症が診断される個体は、生物学的試料から測定されたHBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFのタンパク質またはその断片発現レベルが対照群に比べて有意に低下されて示される。
【0033】
さらに他の態様は、前記組成物を含む妊娠中毒症を診断するのに使用するためのキットを提供する。
【0034】
さらに他の態様は、妊娠中毒症を診断するためのANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する、製剤の用途を提供する。
【0035】
さらに他の態様は、(a)個体から分離された生物学的試料において、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
(b)前記測定されたタンパク質またはその断片の発現レベルを、対照群試料のタンパク質またはその断片の発現レベルと比較する段階と、を含むものである、妊娠中毒症を診断するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
妊娠中毒症診断用組成物、キット、それを利用した妊娠中毒症診断方法、及び該診断に必要な情報を得る方法によれば、個体の妊娠中毒症を正確であって敏感に診断するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】妊娠中毒症に該当する個体において、15種のタンパク質であるANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNCの発現が、上向き調節されたところを示した結果である。
図1B図1Aの続きである。
図1C図1Bの続きである。
図2】妊娠中毒症に該当する個体において、6種のタンパク質であるHBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4、VWFの発現が上向き調節されたところを示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1:患者の血液試料におけるタンパク質分離及びペプチド化
患者選定基準は、次の通りである。妊娠中毒症の代表症状である、妊娠20週以後、蛋白尿(≧300mg/day)を伴う高血圧(≧140/90mmHg)症状を示す産婦25名を疾患群として選定し、妊娠全過程において、胎児と産婦とのいずれにも、臨床的特異症状なしに、末期に正常に分娩した産婦29名を正常群として選定した。
【0040】
産婦からの生物学的試料である血液試料の採取過程は、次の通りである。10cc EDTAチューブに採血された産婦血液を、一次遠心分離過程(8,000rpm、15分)を経るようにさせた後、分離された上澄み液(血漿)を、さらに二次遠心分離過程(13,000rpm、10分)を経らせるようにし、最終的に実験に使用される血漿を確保した。
【0041】
タンパク質分離とペプチドとの実験過程は、下記のようになされた。LC-MS/MS分析の敏感度低下をもたらす14個の多量の(high-abundant)タンパク質(アルブミン(albumin)、[0075]IgG、アンチトリプシン(antitrypsin)、IgA、トランスフェリン(transferrin)、ハプトグロビン(haptoglobin)、フィブリノゲン(fibrinogen)、α2-マクログロブリン(macroglobulin)、α1-酸性糖タンパク質(acid glycoprotein)、IgM、アポリポタンパク質(apolipoprotein)AI、アポリポタンパク質(apolipoprotein)AII、complement C3、トランスサイレチン(transthyretin))を、IGY Column(P/N SEP030-1KT、Sigma)利用して除去した。除去後、全体血液タンパク質の5%未満に存在するタンパク質のみを利用して分析した。
【0042】
質量分析機を利用した検証方法であるMRM(multiple reaction monitoring)のために、タンパク質をペプチド単位に切る過程が必要であり、酵素(トリプシン(trypsin))を利用して切片化を実施した。豊富タンパク質(abundant protein)を除去した後に残った50μgのタンパク質に、50μlの6M尿素バッファ(urea buffer)(0.1M DTT、50mM ABC)を入れ、1時間37℃で培養した。前記50μlのサンプルに、5μlの0.5M IAAを処理した後、暗室で30分間反応させた。反応後、50mM ABC 400μlを利用し、尿素濃度を1M以下にした後、トリプシン2μgを入れ、12時間37℃で培養した。インキュベーション後、反応に使用された塩を使われた除去し、ペプチドのみを確保するために、piercec-18 spin columns(P/N:89870、Theromo)を利用して塩を除去した。
【0043】
実施例2:MRM(multiple reaction monitoring)を使用したバイオマーカーの確認
バイオマーカー候補の検証は、下記のようになされた。該バイオマーカー候補検証のための候補群のMRMトランジション(transition)を選定した。MRMトランジションの選定は、全てのペプチドにつき、MS基盤の検証データを保有したSRM Atlas(www.srmatlas.org)を利用した。このとき、該選定基準は、次の通りである。
1.メチオニン(M(methionine)及びヒスチジン(H(histidine)含有のペプチド除外
2.誤切断(miscleavage)が含まれたペプチド除外
3.P(protein)前シーケンスが、R(arginine)またはK(lysine)を有するペプチド除外
4.ペプチド長(peptide legnth)5<x<20
【0044】
選定された候補トランジションを利用し、一次ターゲット選別を先行させ、該トランジション適合性を確認した。該トランジションの確認条件は、次の通りである。
1.のような前駆イオン(precursor ion)から派生される3種のフラグメントイオン(fragment ion)が、同一溶出時間を有するか否かということ
2.3回以上の反復実験を介し、同一RT(retention time)を有するか否かということいかん
3.LOQ(limit of quantification)の条件に符合するS/N(signal to noise)>10を満足するか否かということ
【0045】
MRM分析結果は、下記の過程を介して得られた。前記条件に満足するトランジションを選定した後、準備されたペプチド試料を利用し、個別MRM分析を行った。図1Aないし図1C、及び図2に示されているように、正常産婦血液対比で、妊娠中毒症産婦において、有意性あるように発現量の違いがあるタンパク質によって検証されているのは、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFに該当するタンパク質である。15種のタンパク質は、有意味な増大を見せたタンパク質(ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN、LCN2、APOM、QSOX、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG及びTNC)であり、6種のタンパク質は、有意味な低減を示したタンパク質(HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWF)である。
(付記)
(付記1)
ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN1、LCN2、APOM、QSOX1、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤を含む、妊娠中毒症診断用組成物。
(付記2)
前記タンパク質またはその断片のレベルを測定する製剤は、タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、付記1に記載の妊娠中毒症診断用組成物。
(付記3)
前記妊娠中毒症は、慢性高血圧、妊娠性高血圧、前子癇症、子癇症及び複合子癇前症からなる群のうちから選択された1以上である、付記1に記載の妊娠中毒症診断用組成物。
(付記4)
付記1に記載の組成物を含む、妊娠中毒症診断用キット。
(付記5)
前記キットは、ELISA(enzyme-linked immune sorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(multiple reaction monitoring)キットである、付記4に記載の妊娠中毒症診断用キット。
(付記6)
(a)個体から分離された生物学的試料において、ANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN1、LCN2、APOM、QSOX1、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG、TNC、HBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する段階と、
(b)前記測定されたタンパク質またはその断片の発現レベルを、対照群試料のタンパク質またはその断片の発現レベルと比較する段階と、を含む、妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
(付記7)
前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたANXA3、A2M、APOB、PZP、FETUB、FN1、LCN2、APOM、QSOX1、TGOLN2、F10、SERPINA11、PRG2、SHBG及びTNCからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが、対照群に比べて上昇された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含む、付記6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
(付記8)
前記(b)段階において、個体から分離された生物学的試料から測定されたHBD、AGT、CP、HEXB、SERPINA4及びVWFからなる群のうちから選択された1以上のタンパク質またはその断片の発現レベルが、対照群に比べて低下された場合、妊娠中毒症と判断する段階をさらに含む、付記6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
(付記9)
前記タンパク質のレベルは、ウェスタンブロット(western blotting)、ELISA(enzyme-linked immuno sorbent assay)、放射線免疫分析(RIA)、放射免疫拡散法(radial immunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(ouchterlony immunodiffusion)、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈澱分析法(immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィ法(immunochromatography)、FACS分析法(fluorescence activated cell sorter analysis)及びタンパク質チップ分析法(protein chip technology assay)によって構成された群のうちから選択されるいずれか一つを利用して測定される、付記6に記載の妊娠中毒症診断のための情報提供方法。
図1A
図1B
図1C
図2