(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】三次元積層装置及び三次元積層方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/20 20210101AFI20230926BHJP
B22F 10/60 20210101ALI20230926BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230926BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230926BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20230926BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230926BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20230926BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230926BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230926BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20230926BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230926BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230926BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B22F12/20
B22F10/60
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/141
B29C64/209
B29C64/268
B29C64/393
B33Y50/02
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/00 P
B23K15/00 501D
(21)【出願番号】P 2019051149
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】廣野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6452920(JP,B1)
【文献】特許第6196391(JP,B1)
【文献】国際公開第2008/143106(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061061(US,A1)
【文献】特開2015-196264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00 - 12/90
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B29C 64/141
B29C 64/209
B29C 64/268
B29C 64/393
B33Y 50/02
B23K 26/34
B23K 26/21
B23K 26/00
B23K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を噴射する粉末噴射口、及び光ビームを照射する光ビーム照射口が設けられて、溶融した前記粉末が固化した積層体を成形する積層ヘッドと、
前記積層体の形状を測定する形状測定部と、
前記積層体を冷却する積層体冷却部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記形状測定部に前記積層体の形状を測定させる測定制御部と、
前記形状測定部が測定した前記積層体の形状に基づき、前記積層体を冷却するかを判断する冷却判断部と、
前記冷却判断部が前記積層体を冷却すると判断した場合に、
前記積層ヘッドによる成形が停止された状態で前記積層体冷却部に前記積層体を冷却させる冷却制御部と、
を有する、
三次元積層装置。
【請求項2】
前記形状測定部は、前記積層体の形状として、前記積層体の高さを測定する、請求項1に記載の三次元積層装置。
【請求項3】
前記冷却判断部は、前記形状測定部が測定した前記積層体の高さと、予め設定した基準高さとの差分が、所定値以上である場合に、前記積層体を冷却すると判断する、請求項2に記載の三次元積層装置。
【請求項4】
前記測定制御部は、前記積層ヘッドによる積層数が予め定めた基準積層数に達した場合に、前記形状測定部に前記積層体の高さを測定させ、前記冷却判断部が、前記積層体を冷却するかを判断する、請求項2又は請求項3に記載の三次元積層装置。
【請求項5】
前記測定制御部は、
前記形状測定部に、前記積層ヘッドが成形するビードの幅方向に沿って前記積層体の高さを測定させて、前記積層体の高さが最大となる前記ビードの幅方向における位置である最大高さ位置を検出し、
前記形状測定部に、前記最大高さ位置から前記ビードの長手方向に沿って前記積層体の高さを測定させる、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項6】
前記冷却判断部は、前記形状測定部による、前記最大高さ位置から前記ビードの長手方向に沿った前記積層体の高さの測定結果のうちの、最大高さ、又は平均高さに基づき、前記積層体を冷却するかを判断する、請求項5に記載の三次元積層装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記積層体の成形を制御する成形制御部をさらに有し、
前記成形制御部は、前記冷却制御部が前記積層体冷却部により前記積層体を冷却している期間には、前記積層ヘッドによる成形を停止させる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項8】
前記積層体の温度を測定する温度測定部をさらに有し、
前記冷却制御部は、前記温度測定部が測定した前記積層体の温度が、予め定めた基準温度以下となった場合に、前記積層体冷却部による前記積層体への冷却を終了する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項9】
前記積層体が成形される基台部に冷却水を供給する基台冷却部をさらに有し、前記積層体冷却部は、前記積層体に冷却気体を噴射するものであり、
前記冷却制御部は、
前記積層ヘッドによる成形時には、前記基台冷却部に前記冷却水を供給させて、前記積層体冷却部に前記冷却気体を噴射させず、
前記冷却判断部が前記積層体を冷却すると判断した場合には、前記基台冷却部による前記冷却水の供給を続けつつ、前記積層体冷却部に前記冷却気体を噴射させる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項10】
粉末を噴射する粉末噴射口、及び光ビームを照射する光ビーム照射口が設けられて、溶融した前記粉末が固化した積層体を成形する積層ヘッドを有する三次元積層装置による三次元積層方法であって、
前記積層体の形状を測定する形状測定ステップと、
前記形状測定ステップで測定した前記積層体の形状に基づき、前記積層体を冷却するかを判断する冷却判断ステップと、
前記冷却判断ステップで前記積層体を冷却すると判断した場合に、
前記積層ヘッドによる成形が停止された状態で前記積層体を冷却する冷却ステップと、
を有する、
三次元積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層装置及び三次元積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粉末などの粉末を原料として積層体を成形する積層体成形方法が実用化されている。例えば特許文献1には、積層ヘッドから光ビームを照射しつつ粉末を噴射することで積層体を製造する、デポジション方式の三次元積層装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元積層装置は、粉末を溶融して積層を行うため、積層体の温度が高くなることにより、いわゆる熱ダレを生じて、積層体の高さが想定より低くなるおそれがある。従って、熱ダレを抑制するために、積層工程中に積層体を冷却する場合がある。しかし、積層体を冷却するタイミングが不適切である場合、積層体を適切に成形できなくなるおそれがある。例えば冷却するタイミングが遅いと、熱ダレの影響が大きくなり、積層体の寸法精度が低下してしまい、冷却するタイミングが早すぎると、積層体の製造時間が長くなってしまう。従って、積層体を冷却するタイミングを適切に設定して、積層体を適切に成形することが求められている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、積層体を適切に成形できる三次元積層装置及び三次元積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る三次元積層装置は、粉末を噴射する粉末噴射口、及び光ビームを照射する光ビーム照射口が設けられて、溶融した前記粉末が固化した積層体を成形する積層ヘッドと、前記積層体の形状を測定する形状測定部と、前記積層体を冷却する積層体冷却部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記形状測定部に前記積層体の形状を測定させる測定制御部と、前記形状測定部が測定した前記積層体の形状に基づき、前記積層体を冷却するかを判断する冷却判断部と、前記冷却判断部が前記積層体を冷却すると判断した場合に、前記積層ヘッドによる成形が停止された状態で前記積層体冷却部に前記積層体を冷却させる冷却制御部と、を有する。
【0007】
この三次元積層装置は、積層体の形状に基づき積層体を冷却するかを判断するため、積層体を冷却するタイミングを適切に設定して、積層体を適切に成形することができる。
【0008】
前記形状測定部は、前記積層体の形状として、前記積層体の高さを測定することが好ましい。この三次元積層装置は、積層体の高さに基づき積層体を冷却するかを判断するため、積層体を冷却するタイミングを適切に設定して、積層体を適切に成形することができる。
【0009】
前記冷却判断部は、前記形状測定部が測定した前記積層体の高さと、予め設定した基準高さとの差分が、所定値以上である場合に、前記積層体を冷却すると判断することが好ましい。この三次元積層装置は、積層体の高さと基準高さとの差分が所定値以上である場合に、積層体を冷却すると判断するため、熱ダレの影響を勘案して、積層体を冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0010】
前記測定制御部は、前記積層ヘッドによる積層数が予め定めた基準積層数に達した場合に、前記形状測定部に前記積層体の高さを測定させ、前記冷却判断部が、前記積層体を冷却するかを判断することが好ましい。この三次元積層装置によると、積層体を冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0011】
前記測定制御部は、前記形状測定部に、前記積層ヘッドが成形するビードの幅方向に沿って前記積層体の高さを測定させて、前記積層体の高さが最大となる前記ビードの幅方向における位置である最大高さ位置を検出し、前記形状測定部に、前記最大高さ位置から前記ビードの長手方向に沿って前記積層体の高さを測定させることが好ましい。この三次元積層装置によると、積層体を冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0012】
前記冷却判断部は、前記形状測定部による、前記最大高さ位置から前記ビードの長手方向に沿った前記積層体の高さの測定結果のうちの、最大高さ、又は平均高さに基づき、前記積層体を冷却するかを判断することが好ましい。この三次元積層装置によると、積層体を冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0013】
前記制御部は、前記積層体の成形を制御する成形制御部をさらに有し、前記成形制御部は、前記冷却制御部が前記積層体冷却部により前記積層体を冷却している期間には、前記積層ヘッドによる成形を停止させることが好ましい。この三次元積層装置によると、積層体の成形を停止して冷却を行うため、積層体を適切に冷却できる。
【0014】
前記積層体の温度を測定する温度測定部をさらに有し、前記冷却制御部は、前記温度測定部が測定した前記積層体の温度が、予め定めた基準温度以下となった場合に、前記積層体冷却部による前記積層体への冷却を終了することが好ましい。この三次元積層装置によると、積層体の温度に応じて冷却を停止させるため、積層体の成形を適切なタイミングで再開して、積層体を適切に成形することができる。
【0015】
前記積層体が成形される基台部に冷却水を供給する基台冷却部をさらに有し、前記積層体冷却部は、前記積層体に冷却気体を噴射するものであり、前記冷却制御部は、前記積層ヘッドによる成形時には、前記基台冷却部に前記冷却水を供給させて、前記積層体冷却部に前記冷却気体を噴射させず、前記冷却判断部が前記積層体を冷却すると判断した場合には、前記基台冷却部による前記冷却水の供給を続けつつ、前記積層体冷却部に前記冷却気体を噴射させることが好ましい。この三次元積層装置1によると、積層体Aを適切に冷却して、積層体Aを適切に成形することができる。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る三次元積層方法は、粉末を噴射する粉末噴射口、及び光ビームを照射する光ビーム照射口が設けられて、溶融した前記粉末が固化した積層体を成形する積層ヘッドを有する三次元積層装置による三次元積層方法であって、前記積層体の形状を測定する形状測定ステップと、前記形状測定ステップで測定した前記積層体の形状に基づき、前記積層体を冷却するかを判断する冷却判断ステップと、前記冷却判断ステップで前記積層体を冷却すると判断した場合に、前記積層ヘッドによる成形が停止された状態で前記積層体を冷却する冷却ステップと、を有する。三次元積層方法によると、積層体の形状に基づき積層体を冷却するかを判断するため、積層体を冷却するタイミングを適切に設定して、積層体を適切に成形することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、積層体を適切に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る形状測定部による形状測定を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、積層体の熱ダレを説明する模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図6】
図6は、積層数について説明する模式図である。
【
図7】
図7は、積層体の高さ測定の方法の例を示す図である。
【
図8】
図8は、積層体の高さ測定の方法の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る積層体の積層工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0020】
図1は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。ここで、本実施形態では、水平面内の一方向を方向X、水平面内において方向Xと直交する方向を方向Y、方向X及び方向Yのそれぞれと直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。また、方向Yに沿う方向のうち一方の方向を、方向Y1とし、方向Yに沿う方向のうち他方の方向、すなわち方向Y1の反対方向を、方向Y2とする。本実施形態においては、三次元積層装置1の方向Y2側が、三次元積層装置1の正面側であり、三次元積層装置1の方向Y1側が、三次元積層装置1の背面側である。三次元積層装置1の正面側とは、例えば、作業者が積層体を成形するために三次元積層装置1を操作する側である。また、方向Zに沿う方向のうち一方の方向を、方向Z1とし、方向Zに沿う方向のうち他方の方向、すなわち方向Z1の反対方向を、方向Z2とする。本実施形態では、方向Z1が鉛直方向上方に向かう方向であり、方向Z2が鉛直方向下方に向かう方向である。
図1は、本実施形態に係る三次元積層装置1を方向Yから見た模式図である。
【0021】
図1に示すように、三次元積層装置1は、三次元積層室R内に、台部10と、基台移動部12と、基台部14と、台部16と、積層ヘッド18と、回転機構20と、ヘッド移動部22と、管24A、24B、24Cと、基台冷却部24Dと、形状測定部26と、温度測定部28と、積層体冷却部30と、を備える。また、三次元積層装置1は、光源部32と、粉末供給部34と、冷却水供給部36と、冷却気体供給部37と、制御装置38とを備える。本実施形態では、光源部32と、粉末供給部34と、冷却水供給部36と、冷却気体供給部37と、制御装置38とは、三次元積層室Rの外部に設けられる。
【0022】
三次元積層装置1は、基台部14に、三次元形状物である積層体Aを成形する装置である。基台部14は、積層体Aが成形される土台となる部材である。本実施形態の基台部14は、板状の部材である。なお、基台部14は、これに限定されない。基台部14は、積層体Aとは別体として積層体Aの土台となる部材であるが、積層体Aと結合されて積層体Aの一部となる部材であってもよい。
【0023】
台部10は、基台移動部12や基台部14などを支持する台である。基台移動部12は、台部10上に設けられ、基台部14を支持する。基台移動部12は、制御装置38の制御により、基台部14を移動させる機構である。基台移動部12は、第1移動部12Aと、第2移動部12Bと、回転部12Cとを有する。第1移動部12Aは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第1方向に基台部14を移動させる機構である。本実施形態では、第1移動部12Aは、基台部14を方向Yに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第1移動部12A上に、第2移動部12B、回転部12C、及び基台部14が配置され、第1移動部12Aは、第2移動部12B、回転部12C、及び基台部14を、方向Yに沿って移動させる。
【0024】
第2移動部12Bは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第2方向に基台部14を移動させる機構であり、第2方向は、第1方向に直交する方向である。本実施形態では、第2移動部12Bは、基台部14を方向Xに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第2移動部12B上に、回転部12C及び基台部14が配置され、第2移動部12Bは、回転部12C及び基台部14を方向Xに沿って移動させる。なお、本実施形態では、第1移動部12Aと第2移動部12Bは、上部に載せた基台部14を移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。
【0025】
回転部12Cは、基台部14が配置される回転テーブルである。回転部12Cは、少なくとも1つの回転軸を中心として回転することで、上部に配置されている基台部14を回転させる。本実施形態では、回転部12Cは、互いに直交する3つの回転軸を回転中心として基台部14を回転させる。
【0026】
このように、基台移動部12は、第1移動部12Aと第2移動部12Bとにより、基台部14を方向X及び方向Yに沿って移動させる。さらに、基台移動部12は、回転部12Cにより、基台部14を3つの回転軸を回転中心として回転させる。すなわち、基台移動部12は、基台部14を、2つの軸に沿って移動させ3つの回転軸を中心に回転させる、5軸の移動機構である。ただし、基台移動部12は、5軸の移動機構に限られず、例えば、基台部14を方向X及び方向Yに沿って移動させる2軸の移動機構であってもよい。
【0027】
台部16は、三次元積層室R内に設けられる台座であり、本実施形態ではヘッド移動部22が設けられている。
【0028】
積層ヘッド18は、基台部14の方向Z1側、すなわち基台部14の鉛直方向上方側に設けられる。積層ヘッド18は、光ビーム照射口42Bから、基台部14に向けて光ビームLを照射し、粉末噴射口44Bから、基台部14に向けて粉末Pを噴射することで、基台部14上で積層体を形成する。すなわち、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド18を備えるデポジション方式の三次元積層装置である。
【0029】
図2は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。
図2に示すように、積層ヘッド18は、内管42と外管44とを有する。外管44は、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管42も、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管42は、外管44の内部に挿入されているため、内管42と外管44とで、二重管を構成している。積層ヘッド18は、内管42の内周面側の空間が、光ビームLが通過するビーム経路42Aとなる。また、積層ヘッド18は、内管42の外周面と外管44の内周面との間の空間が、粉末Pが通過する粉末流路44Aとなる。すなわち、粉末流路44Aは、ビーム経路42Aの周囲を囲う形状の流路となる。本実施形態では、粉末流路44Aは、ビーム経路42Aの外周に同心円状に配置される。
【0030】
積層ヘッド18は、方向Z2側の端部40Aに、光ビーム照射口42Bが開口している。また、積層ヘッド18は、方向Z1側の端部40B、すなわち端部40Aとは反対側の端部に、ファイバー接続口48が設けられる。ファイバー接続口48は、端部40Bに設けられた開口である。光ビーム照射口42Bとファイバー接続口48とは、ビーム経路42Aを介して連通している。すなわち、光ビーム照射口42Bは、ビーム経路42Aの方向Z2側の開口であり、ファイバー接続口48は、ビーム経路42Aの方向Z1側の開口である。また、積層ヘッド18は、ビーム経路42Aの光ビーム照射口42Bとファイバー接続口48との間の位置に、光学素子46が設けられる。光学素子46は、例えば、光ビームLをコリメートするコリメートレンズと、コリメートした光ビームLを集光する集光レンズと、を備える。ただし、光学素子46の構成はこれに限られず任意である。
【0031】
ファイバー接続口48には、ファイバーである管24Aが接続される。管24Aは、光ビームLの光源となる光源部32に接続されるファイバーであり、端部がファイバー接続口48に接続される。管24Aは、光源部32からの光ビームLが入射され、入射した光ビームLをファイバー接続口48に接続される端部まで導き、端部から積層ヘッド18のビーム経路42A内に光ビームLを出射する。ビーム経路42A内に出射された光ビームLは、ビーム経路42A内を方向Z2に向けて進行し、光学素子46を通って、光ビーム照射口42Bから積層ヘッド18の外部に出射される。光ビーム照射口42Bから出射された光ビームLは、方向Z2に向けて進み、基台部14に向けて照射される。
【0032】
また、積層ヘッド18は、方向Z2側の端部40Aに、粉末噴射口44Bが開口している。粉末噴射口44Bは、光ビーム照射口42Bを囲うように開口する。また、積層ヘッド18は、方向Z1側の端部40Bに、管接続口49が設けられる。管接続口49は、端部40Bに設けられた開口である。粉末噴射口44Bと管接続口49とは、粉末流路44Aを介して連通している。すなわち、粉末噴射口44Bは、粉末流路44Aの方向Z2側の開口であり、管接続口49は、粉末流路44Aの方向Z1側の開口である。
【0033】
管接続口49には、管24Bが接続される。管24Bは、粉末Pが貯留されるタンクである粉末供給部34に接続される管であり、端部が管接続口49に接続される。管24Bは、粉末供給部34からの粉末Pを管接続口49に接続される端部まで導き、端部から積層ヘッド18の粉末流路44A内に粉末Pを供給する。粉末流路44A内に供給された粉末Pは、粉末流路44A内を方向Z2に向けて流れ、粉末噴射口44Bから積層ヘッド18の外部に噴射される。粉末噴射口44Bから噴射された粉末Pは、方向Z2に向けて進み、基台部14に向けて噴射される。
【0034】
ここで、光ビームLは、所定のスポット径をもって基台部14に向かって照射される。
図2の例では、光ビームLは、基台部14上の基材Mに、スポット径、すなわち光ビームの収束位置が重なるように、照射される。基材Mは、積層体の母材となる部材であるが、三次元積層装置1によって成形されている最中の積層体であってもよい。基材Mは、光ビームLによって溶融され、基材Mが溶融した溶融プールを形成する。また、粉末Pは、所定の収束径をもって、基台部14に向かって噴射される。粉末Pは、溶融プールに向けて、すなわち収束位置が溶融プールと重なるように噴射される。従って、粉末噴射口44Bから噴射された粉末Pは、溶融プール内で溶融される。そして、基台部14は、積層ヘッド18に対して移動するため、光ビームLが照射される位置が変化する。従って、光ビームLが照射されて溶融プールを形成していた箇所は、光ビームLが照射されなくなることで冷却されて固化して、ビードBを形成する。このビードBを三次元状に積層することで、積層体Aが成形される。
【0035】
なお、本実施形態における光ビームLは、レーザ光であるが、レーザ光に限られず、例えば電子ビームなどであってもよい。また、本実施形態における粉末Pは、金属粉末であるが、粉末であれば、金属粉末に限られない。
【0036】
なお、
図2の例では、光ビームLを伝送する管24Aと、粉末Pを供給する管24Bとが、積層ヘッド18に接続されているが、
図1に示すように、管24Cも、積層ヘッド18に接続されている。管24Cは、冷却水Wを循環するチラーである冷却水供給部36に接続される管であり、端部が積層ヘッド18に接続される。管24Cは、冷却水供給部36からの冷却水Wを端部まで導き、端部から積層ヘッド18内に冷却水Wを供給する。積層ヘッド18内に供給された冷却水Wは、積層ヘッド18内の冷却水W用に設けられた流路を流れて、積層ヘッド18を冷却する。冷却水W用に設けられた流路には、基台冷却部24Dが接続される。基台冷却部24Dは、一方の端部が積層ヘッド18の冷却水W用に設けられた流路に接続される管であり、一方の端部から、積層ヘッド18内の流路を流れた冷却水Wが供給される。また、基台冷却部24Dは、他方の端部が基台部14に接続される。基台冷却部24Dの他方の端部は、基台部14内の、冷却水W用に設けられた流路に接続される。積層ヘッド18から基台冷却部24Dに供給された冷却水Wは、基台冷却部24Dの他方の端部から基台部14内の流路に流入し、基台部14を冷却する。基台部14内に供給された冷却水Wは、図示しない配管を通って、冷却水供給部36に戻り、循環して、再度、積層ヘッド18及び基台部14を冷却する。
【0037】
なお、基台部14には、積層体Aが積層されるため、積層体Aは、基台冷却部24Dから基台部14内に供給された冷却水Wにより、基台部14を介して間接的に冷却される。なお、基台冷却部24Dから基台部14に供給される冷却水Wは、積層ヘッド18を通った後の冷却水であるが、基台冷却部24Dは、積層ヘッド18を通らない冷却水Wを基台部14に供給してもよい。また、冷却水Wは、本実施形態では水であるが、基台部14などを冷却可能な冷媒であれば、水に限られない。
【0038】
また、積層ヘッド18には、積層ヘッド18に気体を供給する管が接続されていてもよい。積層ヘッド18に接続される管により供給される気体としては、粉末流路44Aに供給されて粉末Pを流すためのキャリアガスや、粉末P及び光ビームLが供給される箇所の外周を覆うように供給される不活性ガスなどが挙げられる。
【0039】
図1に戻り、回転機構20は、積層ヘッド18に接続され、方向Zに交差する回転軸を中心として積層ヘッド18を回転させる機構である。回転機構20は、第1板部20Aと、第2板部20Bと、接続部20Cとを有する。第1板部20Aは、ヘッド移動部22を介して台部16に取付けられている。第2板部20Bは、表面が第1板部20Aの表面に回転可能に取り付けられている。接続部20Cは、第2板部20Bと積層ヘッド18とを接続する部材である。接続部20Cは、例えば、第2板部20Bの背面と、積層ヘッド18の側面(ここでは方向X側の面)とを接続する。接続部20Cは、第2板部20Bと積層ヘッド18とを、互いの相対位置が固定されるように接続する。すなわち、積層ヘッド18は、第2板部20Bに対して位置が固定されている。従って、積層ヘッド18は、第2板部20Bと共に、第1板部20A、すなわち台部16に対して、方向Zに交差する回転軸、ここでは方向Xに沿った軸を回転軸として、回転する。ただし、回転機構20は、必須の構成でなく、積層ヘッド18は、回転しなくてもよい。
【0040】
ヘッド移動部22は、積層ヘッド18を方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部22は、台部16に取付けられている。ヘッド移動部22は、回転機構20と、回転機構20に接続される積層ヘッド18とを、方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部22は、回転機構20と積層ヘッド18とを移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。また、ヘッド移動部22は、台部16に取付けられることに限られず、取付け位置は任意である。また、例えば回転機構20が設けられない場合、ヘッド移動部22は、積層ヘッド18に直接接続されていてもよい。
【0041】
形状測定部26は、積層体Aの形状を測定するセンサである。
図1に示すように、形状測定部26は、基台部14よりも方向Z1側に設けられている。更に言えば、形状測定部26は、積層ヘッド18に取付けられており、ここでは積層ヘッド18の側面(ここでは方向X側の面)に取付けられている。ただし、形状測定部26は、積層ヘッド18に取付けられていることに限られず、設けられる位置は任意である。
【0042】
図3は、本実施形態に係る形状測定部による形状測定を説明する模式図である。本実施形態では、形状測定部26は、積層体Aの高さを測定する。積層体Aの高さとは、積層体Aの方向Zに沿った長さ(厚み)を指す。さらに言えば、
図3に示すように、積層体Aの高さDは、積層体Aの方向Z1側の表面A1と、積層体Aの方向Z2側の表面A2との間の、方向Zにおける長さである。形状測定部26は、積層体Aに対して照射した光の反射光を受光することで、積層体Aの高さDを測定する。
図3に示すように、形状測定部26は、出射部26Aから、積層体Aの表面A1に向けて測定光E1を照射する。測定光E1は、例えばレーザ光である。測定光E1は、積層体Aの表面A1で反射され、反射光E2として、形状測定部26の受光部26Bに受光される。受光部26Bから積層体Aまでの距離が変化すると、反射光E2の像の受光部26B上での結像位置が変化するため、この位置の変化量を、積層体Aの表面A1までの距離に換算することができる。例えば積層体Aの成形前に、基材Mの表面M1(又は基台部14の表面)までの距離を予め測定しておき、積層体Aの表面A1までの距離と、基材Mの表面M1(又は基台部14の表面)までの距離との差分を算出することで、積層体Aの高さDを測定することができる。ただし、積層体Aの高さDの測定方法は、このように測定光E1の反射光E2を受光する方式に限られず、任意である。例えば、形状測定部26は、積層体Aの表面A1を撮像して(すなわち可視光の反射光を受光して)、その撮像した画像に基づき、積層体Aの高さDを測定してもよい。
【0043】
図1に戻り、温度測定部28は、積層体Aの温度を測定するセンサである。温度測定部28は、三次元積層室Rの方向Y2(正面側)のカバーに設けられており、さらに言えばそのカバーの方向Y1側の面、すなわち三次元積層室R内側の面に設けられている。ただし、温度測定部28が設けられる位置は任意である。温度測定部28は、非接触式の温度センサであり、検出素子が基台部14上の積層体Aに向くように設けられる。温度測定部28は、例えば積層体Aからの赤外線量を検出し、赤外線量を温度に換算することで温度測定を行う。例えば、温度測定部28は、積層体Aの位置毎の温度分布を示す画像を取得するサーモグラフィであってよい。ただし、積層体Aの温度測定方法は、このような赤外線量の検出に限られず、任意の方法であってよい。
【0044】
積層体冷却部30は、積層体Aを冷却する機構である。積層体冷却部30は、冷却気体Gを供給するポンプなどである冷却気体供給部37に接続される管である。積層体冷却部30は、冷却気体供給部37から供給された冷却気体Gを、端部の開口30Aから噴射する。積層体冷却部30の開口30Aは、積層体Aに対向するように設けられるため、開口30Aから噴射された冷却気体Gは、積層体Aに吹き当てられる。積層体Aは、この冷却気体Gによって冷却される。積層体冷却部30は、このように、積層体Aに冷却気体Gを噴射することで、積層体Aを直接冷却する。本実施形態では、積層体冷却部30は、複数(ここでは3つ)設けられているが、設けられる数は任意である。また、積層体冷却部30は、折り曲げなど変形可能な部材で形成されているため、変形されることで、積層体Aに対する開口30Aの位置を変化させることができる。ただし、積層体冷却部30は、積層体Aを冷却する機構であれば、以上説明した構成に限られない。また、冷却気体Gは、本実施形態では空気であるが、気体の種類はそれに限られず任意であり、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスであってもよい。
【0045】
図4は、積層体の熱ダレを説明する模式図である。三次元積層装置1は、粉末Pを溶融させた後固化させることで、ビードBを形成し、ビードBを積層することで、積層体Aを形成する。すなわち、ビードBは、溶融された粉末Pが固化して生成されるため、十分に冷却されるまでの間、高温となる。従って、ビードBは、いわゆる熱ダレが起こり、高さが想定より低くなるおそれがある。
図4の例では、熱ダレを考慮しない場合のビードの形状をビードB0として破線で示しており、熱ダレが生じた場合のビードの形状をビードBとして実線で示している。ビードB0は、例えば設計上で想定していたビードBの形状を指す。
図4の例においては、基台部14を方向Yに沿って移動させつつビードBを形成した例を示している。すなわち、
図4の例では、積層ヘッド18の方向Yが走査方向であり、ビードBの長手方向であるといえる。また、方向Yに交差する方向Xが、ビードBの幅方向であるといえる。
図4に示すように、ビードBは、熱ダレにより、ビードB0に比べ、高さ、すなわち方向Zに沿った長さが短くなっており、幅、すなわち方向Xに沿った長さが長くなっている。このように、ビードBの形状が、想定していたビードB0の形状と異なることにより、ビードBで形成される積層体Aの形状が想定と異なるものとなり、積層体Aの寸法精度が低下するおそれがある。すなわち、三次元積層装置1においては、光ビームLの焦点位置や粉末Pの収束位置などの条件を加味して、積層ヘッド18と積層体Aとの位置関係を設定しており、具体的には、1層積層した後、積層ヘッド18をZ方向に一定量移動させている。従って、ビードBの形状が想定と異なると、次の層の積層時に、積層ヘッド18と積層体Aとの位置関係が不適切となり、積層を適切に実施できなくなる可能性が生じる。その結果として、積層体Aの寸法精度が低下したり、積層体の品質が悪化したりするおそれが生じる。それに対し、本実施形態に係る三次元積層装置1は、制御装置38の制御により、熱ダレによって寸法精度が低下するおそれがある状態を検出して、その場合に積層体Aの冷却を行わせることで、寸法精度の低下を抑制する。
【0046】
制御装置38は、三次元積層装置1を制御する装置、ここではコンピュータである。
図5は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図5に示すように、制御装置38は、入力部50と、出力部52と、記憶部54と、制御部56とを有する。入力部50は、ユーザの操作を受け付ける入力装置である。出力部52は、制御部56の制御内容などを表示する表示装置である。記憶部54は、制御部56の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。制御部56は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。
【0047】
記憶部54は、積層体Aの成形条件を記憶する。成形条件とは、積層体Aを成形するための三次元積層装置1の動作条件、すなわちレシピである。成形条件は、どのような積層体Aを製造するかの情報に基づき設定される。成形条件としては、例えば、積層パス、レーザ出力、送り速度、焦点位置、ビーム径、粉末Pの供給速度、粉末Pのキャリアガスの流量、粉末Pの材質、インナーガスの流量、アウターガスの流量、ビード間のオーバーラップ量などが挙げられる。例えば、積層パスとは、ビードBをどのような方向に沿って形成し、ビードBをどのように積層するかなどの、ビードBの経路を指す。また、例えば、レーザ出力とは、光ビームLの出力であり、送り速度とは、積層中の走査速度を指し、言い換えれば、積層ヘッド18に対する基台部14の移動速度である。また例えば、焦点位置とは、光ビームL及び粉末Pが収束する位置であり、粉末Pの供給速度とは、積層ヘッド18から噴射される粉末Pの噴射速度であり、粉末Pのキャリアガスの流量とは、粉末Pを流すためのキャリアガスの流量であり、インナーガス及びアウターガスの流量とは、粉末P及び光ビームLが供給される箇所の外周を覆うように供給される不活性ガスの流量であり、ビード間のオーバーラップ量とは、ビードBとそのビードBに隣り合うビードが重なる長さである。ただし、成形条件は、これらに限られない。
【0048】
制御部56は、成形制御部60と、測定制御部62と、冷却判断部64と、温度測定制御部66と、冷却制御部68とを有する。成形制御部60と、測定制御部62と、冷却判断部64と、温度測定制御部66と、冷却制御部68とは、制御部56が記憶部54に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出すことで実現されて、後述する処理を実行する。
【0049】
成形制御部60は、積層体Aの成形を制御する。成形制御部60は、成形条件設定部70と、成形実行部72とを有する。成形条件設定部70は、これから成形する積層体Aの成形条件を設定する。成形条件は、例えば、積層体Aの設計情報に基づき設定される。積層体Aの設計情報とは、CADモデルなどの製造しようとする積層体Aの形状情報や、積層体Aの材料の情報などである。成形条件設定部70は、積層体Aの設計情報に基づき成形条件を設定してもよいし、記憶部54に記憶された設定済みの成形条件を読み出し、読み出した成形条件を、積層体Aの成形条件として設定してもよい。
【0050】
成形実行部72は、成形条件設定部70が設定した成形条件で三次元積層装置1を制御することで、積層体Aの成形を実行する。成形実行部72は、基台移動部12を制御して基台部14を移動させ、積層ヘッド18などを制御して積層ヘッド18から光ビームLを照射させつつ粉末Pを噴射させて、積層体Aを成形する。本実施形態の例では、成形実行部72は、積層パスに基づき、基台部14を移動させながら、積層ヘッド18から光ビームLを照射させて粉末Pを噴射させることにより、ビードBを成形する。成形実行部72は、1つのビードBの成形が終わったら、次のビードBを成形することを続ける。例えば、成形実行部72は、同一面上に、1つ又は複数のビードBを成形することで、成形体を成形する。そして、成形実行部72は、成形体の上に、すなわち成形体の方向Z1側の表面上に、さらに成形体を成形することで、成形体同士を積層して、積層体Aを成形する。すなわち、積層体Aは、成形体を積層したものであるといえる。そして、本実施形態では、成形体が積層される方向、すなわち積層方向は、方向Zである。従って、本実施形態において、積層体Aの高さDは、積層体Aの積層方向における長さであるということもできる。
【0051】
また、成形実行部72は、ヘッド移動部22を制御して積層ヘッド18を方向Zに移動させたり、光源部32を制御して光ビームLの出力を制御したり、粉末供給部34を制御して粉末Pの種類や流量などを制御したり、キャリアガスや冷却水供給部36を制御したり、インナーガス及びアウターガスの流量を制御したりするなど、積層体Aの成形のための各種制御を実行する。
【0052】
測定制御部62は、形状測定部26を制御して、形状測定部26に、積層体Aの形状、ここでは高さDを測定させる。なお、形状測定部26は、ユーザが入力部50を操作することによっても制御可能である。すなわち、ユーザがマニュアルで形状測定部26の測定位置などを制御して、形状測定部26に積層体Aの高さDを測定させてもよい。
【0053】
測定制御部62は、測定判断部80と、測定実行部82とを有する。測定判断部80は、積層ヘッド18による成形体の積層数に基づき、積層体Aの形状測定を行うかを判断する。
図6は、積層数について説明する模式図である。上述のように、積層体Aは、1つ又は複数のビードBで成形された成形体が、方向Zに沿って積層されたものである。積層数とは、積層方向(ここでは方向Z)に沿って重なる成形体の数、すなわち成形体の積層数である。
図6の例では、成形体C1の方向Z1側に成形体C2が積層され、成形体C2の方向Z1側に成形体C3が積層されているため、この場合の積層数は、3となる。以下、成形体同士を区別しない場合は、成形体Cと記載する。
【0054】
測定判断部80は、成形実行部72から、積層数を取得する。すなわち、成形実行部72は、積層ヘッド18に積層体Aの成形を実行させつつ、成形体Cの積層数をカウントする。測定判断部80は、成形実行部72がカウントした積層数の情報を取得する。測定判断部80は、取得した積層数が、予め定めた基準積層数に達したかを判断する。基準積層数は、例えば粉末Pの材質や光ビームLの出力などの、積層条件に基づき、測定判断部80が設定してよい。また、測定判断部80は、予め設定されて記憶部54に記憶されていた基準積層数の情報を取得してもよい。測定判断部80は、積層数が、基準積層数に達している場合、すなわち現在の積層数が基準積層数以上となっている場合、積層体Aの形状測定を実行すると判断する。
【0055】
測定実行部82は、測定判断部80が積層体Aの形状測定を実行すると判断した場合に、形状測定部26に、積層体Aの形状、ここでは積層体Aの高さDを測定させる。すなわち、測定実行部82は、形状測定部26に、積層数が基準積層数に達した時点における、積層体Aの高さDを測定させる。例えば基準積層数が3である場合、測定実行部82は、積層数が3となった時点における積層体Aの高さDを測定させる。なお、本実施形態においては、測定制御部62が、形状測定部26の測定データ(例えば反射光E2の結像位置のデータ)に基づき高さDを算出するが、形状測定部26が、測定データ(例えば反射光E2の結像位置のデータ)に基づき高さDを算出して、測定制御部62が、形状測定部26が算出した高さDの情報を取得してもよい。
【0056】
図7及び
図8は、積層体の高さ測定の方法の例を示す図である。本実施形態においては、測定実行部82は、形状測定部26に、積層体の高さDを以下のように測定させる。すなわち、測定実行部82は、測定判断部80が積層体Aの形状測定を実行すると判断した場合、形状測定部26に、ビードBの幅方向に沿って積層体Aの高さDを測定させる。ビードBの幅方向とは、ビードBの長手方向に交差する方向であり、さらに言えば、ビードBの長手方向と積層方向とに直交する方向である。また、ビードBの長手方向は、ビードBの成形時に、基台部14が積層ヘッド18に対して相対移動する方向であるともいえる。測定実行部82は、基台移動部12により、ビードBの幅方向に沿って基台部14を移動させつつ、形状測定部26により、積層体Aの表面A1に測定光E1を照射させて反射光E2を受光する。これにより、形状測定部26は、ビードBの幅方向に沿った各位置における積層体Aの高さDを測定する。測定実行部82は、積層体AのビードBの幅方向での一方の端部から他方の端部までわたって、積層体Aの高さDを測定させる。
図7は、ビードBの長手方向が方向Yに沿い、ビードBの幅方向が方向Xに沿う場合の例を示している。
図7の例では、測定実行部82は、積層体Aが積層された基台部14を、方向Xに沿って移動させつつ、形状測定部26により、積層体Aの表面A1に測定光E1を照射させて反射光E2を受光させる。従って、
図7の例では、形状測定部26は、方向Xに沿った各位置における積層体Aの高さDを測定する。
【0057】
測定実行部82は、ビードBの幅方向に沿って積層体Aの高さDを測定する際には、ビードBの幅方向における形状測定部26と積層体Aとの相対位置を移動させるが、ビードBの長手方向における形状測定部26と積層体Aとの相対位置は、固定させてよい。言い換えれば、測定実行部82は、積層体Aの表面A1上の測定光E1の照射位置は、ビードBの幅方向において移動するが、ビードBの長手方向においては固定されてよい。ビードBの長手方向における、積層体Aの表面A1上の測定光E1の照射位置は、任意であるが、例えばビードBの始点位置であってよい。ビードBは、始点位置から、ビードBの長手方向に沿って、ビードBの終点位置まで形成されるため、ビードBの始点位置とは、ビードBの長手方向においてビードBの成形が開始された位置であるともいえる。ビードBは、始点位置での高さが高くなる傾向がある。従って、ビードBの長手方向におけるビードBの始点位置に測定光E1を照射させつつ、ビードBの幅方向に沿って測定光E1の照射位置を移動させることで、積層体Aの高さDを適切に測定できる。なお、測定光E1の照射位置は、形状測定部26によって高さDが測定される積層体Aの表面A1上の位置であると言い換えてもよい。
【0058】
測定実行部82は、ビードBの幅方向に沿った積層体Aの高さDの測定結果、すなわちビードBの幅方向に沿った各位置における積層体Aの高さDの測定結果を、取得する。そして、測定実行部82は、ビードBの幅方向に沿った各位置における積層体Aの高さDを比較して、最大高さ位置を検出する。最大高さ位置とは、ビードBの幅方向に沿った各位置のうち、積層体Aの高さDが最大となる位置を指す。
図7の例では、ビードBの幅方向(ここでは方向X)における各位置の高さDのうち、位置APでの高さDが最大となるため、最大高さ位置は、位置APとなる。
【0059】
最大高さ位置を検出したら、測定実行部82は、最大高さ位置から、ビードBの長手方向に沿って、積層体Aの高さDを測定させる。測定実行部82は、ビードBの幅方向における測定光E1の照射位置(高さDの測定位置)を、最大高さ位置に固定させたまま、基台移動部12により、ビードBの長手方向に沿って基台部14を移動させつつ、形状測定部26により、積層体Aの表面A1に測定光E1を照射させて反射光E2を受光する。これにより、形状測定部26は、最大高さ位置からビードBの長手方向に沿った各位置における積層体Aの高さDを測定する。測定実行部82は、ビードBの幅方向における最大高さ位置において、積層体AのビードBの長手方向での一方の端部から他方の端部までわたって、積層体Aの高さDを測定させる。
図8は、
図7のA-A断面、すなわち方向X(ビードBの幅方向)での最大高さ位置における積層体Aの断面を示している。
図8の例では、測定実行部82は、方向X(ビードBの幅方向)における最大高さ位置において、積層体Aが積層された基台部14を、方向Yに沿って移動させつつ、形状測定部26により、積層体Aの表面A1に測定光E1を照射させて反射光E2を受光させる。従って、
図7の例では、形状測定部26は、方向X(ビードBの幅方向)における最大高さ位置において、方向Yに沿った各位置における積層体Aの高さDを測定する。
【0060】
測定実行部82は、ビードBの幅方向における最大高さ位置においての、ビードBの長手方向に沿った積層体Aの高さDの測定結果、すなわちビードBの長手方向に沿った各位置における積層体Aの高さDの測定結果を、取得する。測定実行部82は、ビードBの長手方向に沿った各位置における積層体Aの高さDの測定結果に基づき、冷却要否の判断に用いるための積層体Aの高さD0を算出する。測定実行部82は、ビードBの長手方向に沿った各位置における積層体Aの高さDのうちの最大値を、高さD0としてもよいし、ビードBの長手方向に沿った各位置における積層体Aの高さDの平均値を、高さD0としてもよい。
【0061】
測定実行部82は、以上のようにして、形状測定部26に積層体Aの高さDを測定させ、高さDに基づき、冷却要否の判断に用いるための積層体Aの高さD0を算出する。ただし、形状測定部26による積層体Aの高さDの測定方法は、以上のような方法に限られず任意である。例えば、測定実行部82は、形状測定部26に、積層体Aの所定の1つの位置における積層体Aの高さDを測定させて、その1つの位置における積層体Aの高さDを、冷却要否の判断に用いるための積層体Aの高さD0としてもよい。
【0062】
図5に戻り、冷却判断部64は、測定実行部82の制御により形状測定部26が測定した積層体Aの形状、ここでは積層体Aの高さD0に基づき、積層体Aを冷却するかを判断する。本実施形態においては、冷却判断部64は、高さD0と、予め設定した基準高さとの差分が、所定値以上である場合に、積層体Aを冷却すると判断する。一方、冷却判断部64は、高さD0と、予め設定した基準高さとの差分が、所定値より小さい場合には、積層体Aを冷却しないと判断する。基準高さは、形状測定部26が高さ測定を行った時点まで成形が進んだ際の、積層体Aの想定される高さである。例えば成形体Cが3層積層された時点で高さ測定が行われた場合、基準高さは、成形体Cが3層積層された場合の積層体Aの想定高さである。冷却判断部64は、例えば、積層体Aの設計情報(例えば積層体AのCADモデル等の形状情報)に基づき、基準高さを設定する。また、冷却判断部64は、例えば積層パスや粉末Pの材質や光ビームLの出力などの、積層条件に基づき、基準高さを設定してもよい。また、冷却判断部64は、予め設定されて記憶部54に記憶されていた基準高さの情報を取得してもよい。
【0063】
冷却判断部64は、積層体Aの高さと基準高さとの差分が所定値以上である場合は、熱ダレが生じて積層体Aの寸法精度が低下するおそれがあるとして、積層体Aの成形を停止して積層体Aを冷却すると判断する。一方、冷却判断部64は、積層体Aの高さと基準高さとの差分が所定値より低い場合は、熱ダレの影響が少なく、現時点では積層体Aの寸法精度が低下するおそれが少ないとして、積層体Aの成形を続けさせる。
【0064】
温度測定制御部66は、温度測定部28を制御して、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させる。温度測定制御部66は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断したことをトリガとして、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させる。温度測定制御部66は、温度測定部28による積層体Aの温度の測定結果を取得して、後述の冷却制御部68に出力する。温度測定制御部66は、冷却制御部68が積層体冷却部30により積層体Aを冷却させている期間中、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させ続ける。なお、温度測定制御部66は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断していない場合にも、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させてもよく、積層体冷却部30により積層体Aを冷却していない期間にも、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させてよい。例えば、温度測定制御部66は、積層ヘッド18によって積層体Aを成形している期間にも、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させていてもよい。
【0065】
冷却制御部68は、冷却判断部64による積層体Aの冷却要否の判断結果を取得する。冷却制御部68は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合に、積層体冷却部30に、積層体Aを冷却させる。一方、冷却制御部68は、冷却判断部64が積層体Aを冷却しないと判断した場合には、積層体冷却部30に、積層体Aを冷却させない。また、冷却制御部68は、冷却判断部64による積層体Aの冷却要否の判断結果に関わらず、基台冷却部24Dに冷却水Wを供給させて基台部14を冷却させ続けてもよい。すなわち、本実施形態においては、冷却制御部68は、積層ヘッド18による積層体Aの成形時には、基台冷却部24Dに冷却水Wを供給させて基台部14を冷却するが、積層体冷却部30に冷却気体Gを噴射させずに、積層体冷却部30によって積層体Aを冷却させない。一方、冷却制御部68は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合には、基台冷却部24Dによる冷却水Wの供給を続けて基台部14を冷却させつつ、積層体冷却部30に冷却気体Gを噴射させて、積層体冷却部30によって積層体Aを冷却させる。
【0066】
上述のように、温度測定制御部66は、積層体冷却部30が積層体Aを冷却している期間中、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させている。冷却制御部68は、温度測定部28による積層体Aの温度測定の結果を取得して、積層体Aの温度が基準温度以下であるかを判断する。冷却制御部68は、積層体Aの温度が基準温度より高い場合、積層体冷却部30に積層体Aの冷却を続けさせる。冷却制御部68は、積層体Aの温度が基準温度以下である場合、積層体冷却部30に積層体Aの冷却を停止させる。基準温度は、例えば粉末Pの材質や光ビームLの出力などの、積層条件に基づき、冷却制御部68が設定してよい。また、冷却制御部68は、予め設定されて記憶部54に記憶されていた基準温度の情報を取得してもよい。
【0067】
制御装置38は、以上のような構成となっている。次に、制御装置38による積層体Aの成形工程をフローチャートで説明する。
図9は、本実施形態に係る積層体の積層工程を説明するフローチャートである。
図9に示すように、制御装置38は、成形制御部60により、成形条件に基づき、積層ヘッド18などを制御して積層体Aを成形する(ステップS10)。制御装置38は、測定判断部80により、成形体Cの積層数を取得し(ステップS12)、成形体Cの積層数が基準積層数に達したかを判断する(ステップS14)。例えば、測定判断部80は、成形制御部60により成形体Cが1層成形される毎に、積層数を取得する。積層数が基準積層数に達していない場合(ステップS14;No)、すなわち積層数が基準積層数より小さい場合、測定判断部80は、積層体Aの高さDの測定が不要であるとしてステップS10に戻り、積層数が基準積層数に達するまで、積層体Aの成形を続ける。
【0068】
積層数が基準積層数に達した場合(ステップS14;Yes)、測定判断部80は、成形制御部60による積層体Aの成形を停止させ(ステップS16)、測定実行部82は、形状測定部26に積層体Aの高さ測定を実行させる(ステップS18)。ここでは、形状測定部26は、完成する前の、すなわち成形途中の積層体Aの高さDを測定する。本実施形態では、測定実行部82は、ビードBの幅方向に沿って積層体Aの高さDを測定させて最大高さ位置を検出する。そして、測定実行部82は、最大高さ位置からビードBの長手方向に沿って積層体Aの高さDを測定させることで、冷却要否の判断に用いる積層体Aの高さD0を算出する。
【0069】
そして、冷却判断部64は、積層体Aの高さと基準高さとを比較して、積層体Aの高さと基準高さとの差分値が所定値以上であるかを判断する(ステップS20)。本実施形態では、冷却判断部64は、積層体Aの高さD0と基準高さとの差分値が所定値以上であるかを判断する。冷却判断部64は、形状測定部26が積層体Aの高さDを測定する毎に、言い換えれば、積層数が基準積層数に達する毎に、積層体Aを冷却するかを判断する。
【0070】
差分が所定値以上である場合(ステップS20;Yes)、冷却制御部68は、積層体冷却部30に、積層体Aを冷却させる(ステップS22)。そして、温度測定制御部66は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合に、温度測定部28に積層体Aの温度を測定させ、冷却制御部68は、積層体Aの温度測定結果を取得する(ステップS24)。積層体Aの温度が基準温度以下でない場合(ステップS26;No)、すなわち積層体Aの温度が基準温度より高い場合、ステップS22に戻り、積層体Aの温度が基準温度以下となるまで、積層体冷却部30による積層体Aの冷却を続ける。一方、積層体Aの温度が基準温度以下となった場合(ステップS26;Yes)、積層体冷却部30による積層体Aの冷却を終了し、積層体Aの成形を終了する場合(ステップS28;Yes)、本処理を終了し、積層体Aの成形を終了しない場合(ステップS28;No)、ステップS10に戻り、成形制御部60による積層体Aの成形を再開させる。すなわち、成形制御部60は、積層数が基準積層数に達して冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断してから、積層体Aの冷却が終了するまでの期間、積層体Aの成形を停止する。なお、ステップS10を実行中に、積層体Aが完成するなどして、積層体Aの成形を終了する場合にも、本処理を終了する。
【0071】
一方、ステップS20において差分が所定値より小さい場合(ステップS20;No)、制御装置38は、基準積層数及び成形条件を設定して(ステップS30)、ステップS10に戻り、積層体Aの成形を続ける。すなわち、制御装置38は、積層数が基準積層数に達してから、冷却判断部64が積層体Aを冷却しないと判断するまでの期間、積層体Aの成形を停止する。ステップS30において、測定判断部80は、これまで積層体Aの高さ測定の要否に用いていた基準積層数に対し、基準積層数を設定し直す。測定判断部80は、設定し直す基準積層数を、これまでの基準積層数よりも小さい値としてよい。すなわち、積層体Aの高さと基準高さとの差分が所定値以内に収まって、現時点では冷却が不要である場合においても、測定判断部80は、すでに一度は基準積層数まで積層を行っており高温になっていると判断して、基準積層数を低く設定し直して、冷却要否の判定の頻度を多くする。なお、ステップS10に戻って積層体Aの成形を再開する場合は、積層数のカウントは、最初からやり直してよい。すなわち、例えば5層積層して基準積層数に達した後に、ステップS10に戻って積層体Aの成形を再開した場合、次に1層積層された際の積層数は、6でなく1としてよい。
【0072】
また、測定判断部80は、形状測定部26による積層体Aの高さDの測定結果に基づき、基準積層数を設定し直してよい。例えば、測定判断部80は、積層体Aの高さと基準高さとの差分値に基づき基準積層数を設定し、さらに言えば、この差分値が大きいほど、設定し直す基準積層数を少なくしてよい。すなわち、現時点では冷却が不要である場合においても、積層体Aの高さと基準高さとの差分がある程度ある場合には、熱ダレの傾向が見られるとして、基準積層数を低く設定し直して、冷却要否の判定の頻度を多くする。ただし、測定判断部80は、基準積層数を再設定せず、これまで積層体Aの高さ測定の要否に用いていた基準積層数を、そのまま次の高さ測定の要否に用いる基準積層数としてもよい。また、測定判断部80は、ステップS30を経て基準積層数を設定し直した後に、ステップS14で積層数が設定し直した基準積層数に達した場合、積層体Aの高さDを測定せず、ステップS22に進み、積層体Aを冷却してもよい。すなわち、この場合は、基準積層数に達するまでの積層工程が複数回(ここでは2回)繰り返されており、積層体Aが高温になっていることが予測されるため、高さDに関わらず、ステップS22に進み、積層体Aを冷却してもよい。
【0073】
また、ステップS30において、成形制御部60の成形条件設定部70は、これまでの積層体Aの成形に用いていた成形条件に対し、成形条件を設定し直す。成形条件設定部70は、形状測定部26による積層体Aの高さDの測定結果や、温度測定部28による積層体Aの温度の測定結果に基づき、成形条件を設定し直す。例えば、成形条件設定部70は、高さDが低い位置においては、その位置より高さDが高い位置よりも、粉末Pの供給速度を高くしたり、送り速度を遅くしたりする。また例えば、成形条件設定部70は、積層体の位置毎の温度分布と、積層体の品質との相関を示すテーブルを取得する。そして、成形条件設定部70は、温度測定部28が測定した積層体Aの位置毎の温度分布における積層体の品質が、そのテーブルにおいて基準値以下となるおそれがある場合は、積層体の品質を改善させるように(例えば積層体Aの温度が低下するように)、成形条件を再設定する。例えば、成形条件設定部70は、レーザ出力などを低下させて、積層体Aの温度が高くなり過ぎないようにする。ただし、成形条件設定部70は、成形条件を再設定せず、これまでの積層体Aの成形に用いていた成形条件を、そのまま用いてもよい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド18と、形状測定部26と、積層体冷却部30と、制御部56とを有する。積層ヘッド18は、粉末Pを噴射する粉末噴射口44B、及び光ビームLを照射する光ビーム照射口42Bが設けられて、溶融した粉末Pが固化した積層体Aを成形する。形状測定部26は、積層体Aの形状を測定する。積層体冷却部30は、積層体Aを冷却する。制御部56は、測定制御部62と、冷却判断部64と、冷却制御部68とを有する。測定制御部62は、形状測定部26に積層体Aの形状を測定させる。冷却判断部64は、形状測定部26が測定した積層体Aの形状に基づき、積層体Aを冷却するかを判断する。冷却制御部68は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合に、積層体冷却部30に積層体Aを冷却させる。
【0075】
積層体Aは、溶融された粉末Pが固化したビードBで形成されるため、高温となっていわゆる熱ダレが起こり、高さが想定より低くなるなど、寸法精度が低下するおそれがある。従って、熱ダレによる寸法精度の低下を抑制するため、積層体Aの成形中に、積層体Aを冷却することがある。しかし、積層体を冷却するタイミングが不適切である場合、積層体を適切に成形できなくなるおそれがある。それに対し、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層体Aの形状を測定して、測定した積層体Aの形状に基づき、冷却するかを判断する。例えば、積層体Aを冷却するタイミングに温度測定結果を用いることも考えられるが、積層体Aに冷却が必要な温度、すなわち熱ダレの影響が大きくなっている温度を設定することは難しく、積層体Aを冷却するタイミングを適切に設定できないおそれがある。それに対し、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層体Aの形状に基づき積層体Aを冷却するかを判断するため、積層体Aを冷却するタイミングを適切に設定して、積層体Aを適切に成形することができる。
【0076】
形状測定部26は、積層体Aの形状として、積層体Aの高さDを測定する。本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層体Aの高さDに基づき積層体Aを冷却するかを判断するため、積層体Aを冷却するタイミングを適切に設定して、積層体Aを適切に成形することができる。熱ダレが起きる場合は、積層体Aの高さが想定より低くなるため、高さDを測定することで、熱ダレの影響を勘案して冷却するタイミングを適切に設定できる。
【0077】
なお、形状測定部26は、積層体Aの形状として積層体Aの高さDを測定することに限られない。例えば、形状測定部26は、積層体Aの高さDの代わりに、ビードBの幅方向における積層体Aの長さを測定してもよい。
図2に示すように、熱ダレが起こった場合、ビードBの幅方向における長さ(
図2では方向Xに沿った長さ)が長くなる。従って、高さDの代わりにビードBの幅方向における積層体Aの長さを測定することによっても、熱ダレの影響を勘案して、積層体Aを冷却するかを決定することができる。
【0078】
冷却判断部64は、形状測定部26が測定した積層体Aの高さと、予め設定した基準高さとの差分が、所定値以上である場合に、積層体Aを冷却すると判断する。この三次元積層装置1は、積層体Aの高さと基準高さとの差分が所定値以上である場合に、積層体Aを冷却すると判断するため、熱ダレの影響を勘案して、積層体Aを冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0079】
測定制御部62は、積層ヘッド18による積層数が予め定めた基準積層数に達した場合に、形状測定部26に積層体Aの高さDを測定させ、冷却判断部64が、積層体Aを冷却するかを判断する。この三次元積層装置1は、積層数が基準積層数に達したことをトリガとして、積層体Aの高さ測定と、積層体Aの冷却要否の判断を行う。従って、この三次元積層装置1によると、積層体Aを冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0080】
測定制御部62は、形状測定部26に、積層ヘッド18が成形するビードBの幅方向に沿って積層体Aの高さDを測定させて、最大高さ位置を検出する。最大高さ位置は、積層体Aの高さDが最大となるビードBの幅方向における位置である。そして、測定制御部62は、形状測定部26に、最大高さ位置からビードBの長手方向に沿って積層体Aの高さを測定させる。この三次元積層装置1によると、積層体Aの高さDをこのように測定するため、測定した高さDに基づき、冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0081】
冷却判断部64は、形状測定部26による、最大高さ位置からビードBの長手方向に沿った積層体Aの高さDの測定結果のうちの、最大高さ(最大値)、又は平均高さ(平均値)に基づき、すなわち算出された積層体Aの高さD0に基づき、積層体Aを冷却するかを判断する。この三次元積層装置1によると、このように測定された積層体Aの高さに基づき冷却するかを判定するため、冷却するタイミングを適切に決定することができる。
【0082】
制御部56は、積層体Aの成形を制御する成形制御部60をさらに有する。成形制御部60は、積層体冷却部30により積層体Aを冷却している期間には、積層ヘッド18による積層体Aの成形を停止させる。積層ヘッド18によって積層体Aの成形をしながら、例えば冷却気体Gにより積層体Aを冷却した場合、噴射した粉末Pの流れ方向が変わってしまったり、溶融プールの形状が乱れたりするなど、成形に影響を及ぼすおそれがある。それに対し、この三次元積層装置1によると、積層体Aの成形を停止して冷却を行うため、積層体Aの成形への影響を抑えつつ、積層体Aを適切に冷却できる。
【0083】
三次元積層装置1は、積層体Aの温度を測定する温度測定部28をさらに有する。冷却制御部68は、温度測定部28が測定した積層体Aの温度が、予め定めた基準温度以下となった場合に、積層体冷却部30による積層体Aへの冷却を終了する。この三次元積層装置1によると、積層体Aの温度に応じて冷却を停止させるため、積層体Aの成形を適切なタイミングで再開して、積層体Aを適切に成形することができる。
【0084】
三次元積層装置1は、積層体Aが成形される基台部14に冷却水Wを供給する基台冷却部24Dをさらに有し、積層体冷却部30は、積層体Aに冷却気体Gを噴射するものである。冷却制御部68は、積層ヘッド18による成形時には、基台冷却部24Dに冷却水Wを供給させて、積層体冷却部30に冷却気体Gを噴射させない。一方、冷却制御部68は、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合には、基台冷却部24Dによる冷却水Wの供給を続けつつ、積層体冷却部30に冷却気体Gを噴射させる。この三次元積層装置1によると、積層体Aの成形時には、基台冷却部24Dによる間接冷却で積層体Aを冷却しつつ、冷却判断部64が積層体Aを冷却すると判断した場合には、積層体冷却部30による直接冷却を加えて、積層体Aを冷却させる。従って、この三次元積層装置1によると、積層体Aを適切に冷却して、積層体Aを適切に成形することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0086】
1 三次元積層装置
14 基台部
18 積層ヘッド
24D 基台冷却部
26 形状測定部
28 温度測定部
30 積層体冷却部
40 制御装置
42B 光ビーム照射口
44B 粉末噴射口
56 制御部
60 成形制御部
62 測定制御部
64 冷却判断部
66 温度測定制御部
68 冷却制御部
A 積層体
B ビード
C 成形体
L 光ビーム
P 粉末