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  • 特許-ロールの回転装置 図1
  • 特許-ロールの回転装置 図2
  • 特許-ロールの回転装置 図3
  • 特許-ロールの回転装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ロールの回転装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 26/00 20060101AFI20230926BHJP
   B65H 23/192 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B65H26/00
B65H23/192
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017206470
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019077543
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 晨
(72)【発明者】
【氏名】前田 光右
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 康裕
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-237980(JP,A)
【文献】特開2010-184277(JP,A)
【文献】特開2002-35808(JP,A)
【文献】特開昭62-72943(JP,A)
【文献】特開平2-7886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
B21B 37/00-37/78
B21B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを搬送するロールと、
ロールの左右両側から突出した回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持するボールベアリングと、
前記回転軸を所定の回転速度で回転させるモータと、
前記モータの出力軸と前記回転軸との間に設けられたトルク計と、
制御部と、
を有し、
前記トルク計は、回転する前記回転軸の捩れ歪みから前記回転軸の検出トルク値を検出するものであり、
前記回転軸が回転したときに、基準時間内に前記検出トルク値が基準トルク値を超えた回数が、規定回数以上の場合を前記ロールと前記ボールベアリングと前記回転軸とが共振した状態とし、
前記制御部は、前記共振した状態が発生していないときの前記回転速度を初期設定の前記回転速度とし、初期設定の前記回転速度で前記回転軸を回転させ、前記共振した状態か否かを、前記検出トルク値に基づいて判断するものであり、
前記検出トルク値が基準時間内に基準トルク値を超えた回数が、規定回数以上のときに前記回転軸が前記共振した状態であるとして初期設定の前記回転速度を変更する、
ロールの回転装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出トルク値が前記基準時間内に前記基準トルク値を超えた回数が、前記規定回数以上のときに、前記ロールの初期設定の前記回転速度を予め定めた減速幅だけ減速させる、
請求項1に記載のロールの回転装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出トルク値が前記基準時間内に前記基準トルク値を超えた回数が、前記規定回数以上のときに、前記ロールの初期設定の前記回転速度を予め定めた増速幅だけ増速させる、
請求項1に記載のロールの回転装置。
【請求項4】
前記トルク計と前記モータの間に減速機が設けられている、
請求項1に記載のロールの回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの回転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺状のウエブなどを搬送するロールは、その回転軸を左右一対のボールベアリングで受け、回転軸の一方をモータによって回転させ、ロールを所定の回転速度で回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-143712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなロールの回転装置において、ロールを所定の回転速度で回転させていると、ロールが振動を始め共振を起こすことがあるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ロール、ロールを支持している部品の共振を防止できるロールの回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウエブを搬送するロールと、ロールの左右両側から突出した回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持するボールベアリングと、前記回転軸を所定の回転速度で回転させるモータと、前記モータの出力軸と前記回転軸との間に設けられたトルク計と、制御部と、を有し、前記トルク計は、回転する前記回転軸の捩れ歪みから前記回転軸の検出トルク値を検出するものであり、前記回転軸が回転したときに、基準時間内に前記検出トルク値が基準トルク値を超えた回数が、規定回数以上の場合を前記ロールと前記ボールベアリングと前記回転軸とが共振した状態とし、前記制御部は、前記共振した状態が発生していないときの前記回転速度を初期設定の前記回転速度とし、初期設定の前記回転速度で前記回転軸を回転させ、前記共振した状態か否かを、前記検出トルク値に基づいて判断するものであり、前記検出トルク値が基準時間内に基準トルク値を超えた回数が、規定回数以上のときに前記回転軸が前記共振した状態であるとして初期設定の前記回転速度を変更する、ロールの回転装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロールの回転装置の共振を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示す回転装置の説明図である。
図2】ロールがウエブを搬送している状態の側面図である。
図3】検出トルク値と時間の経過を示すグラフである。
図4】変更例の回転装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のロール10の回転装置12について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
本発明の実施形態1のロール10の回転装置12について図1図3を参照して説明する。回転装置12はロール10を回転させて、長尺状のウエブWを搬送させるものである。ウエブWとしては、フィルム、紙、布帛、金属箔、金属メッシュなどである。
【0011】
(1)ロール10の回転装置12の構造
ロール10の回転装置12の構造について図1図2を参照して説明する。ロール10は、金属ロール、又はゴムロールであって、左右両端部から左右一対の回転軸14,16が突出している。
【0012】
回転装置12は、基台18から左右一対の支持脚20,22が立設され、支持脚20,22の上部にボールベアリング24,26が設けられ、左右一対の回転軸14,16を水平に回転自在に支持している。一方の回転軸16は、ボールベアリング26からさらに突出し、トルク計28に連結されている。トルク計28には、モータ30の出力軸32も連結され、トルク計28は、モータ30の出力軸32の回転を回転軸16に伝達すると共に、回転軸16の捩れから歪みを検出し、検出トルク値として出力する。
【0013】
コンピュータよりなる制御部34は、モータ30の回転速度を制御すると共に、トルク計28から検出トルク値が入力する。
【0014】
(2)回転装置12の動作制御
回転装置12の動作制御について説明する。まず、ロール10の回転装置12において、ロール10を所定の回転速度で回転させていると、ロール10が振動を始め共振を起こすことがある。これは、ロール10自身の固有振動値、回転軸14,16の固有振動値、ボールベアリング24,26の固有振動値などが合致し、共振を起こすからである。この共振の計測をどのようにするかを発明者は、検討及び実験を行い、共振を、回転軸14,16における捩れ歪みから発生するトルク値で計測することを創作した。すなわち、発明者は、回転軸14,16などに共振が発生すると、回転軸14,16の捩れ歪みが異常に増大するという現象に着目し、その現象をトルク計28で検出して、共振を計測することを創作した。これを前提に制御部34は、回転装置12の動作制御を行う。
【0015】
まず、回転装置12を動作させる場合には、初期設定を行う。制御部34は、モータ30の回転速度を段階的に変更し、ウエブWの搬送速度を所定の減速幅、又は、増速幅で変更していく。この変更方法としては、例えば図3における第1速度V1から第2速度V2、第3速度V3と回転速度を段階的に上げていく。
【0016】
共振を起こさない回転速度であると、図3に示すように、検出トルク値は所定の幅内で振れる。例えば、第1速度V1から第3速度V3、第5速度V5と第6速度V6は、共振を起こさない正常状態である。しかし、共振が起こった場合には、検出トルク値が激しく振れ、予め定めた基準トルク値を大きく超える共振状態となる。これは図3においては、例えば第4速度V4で回転させた場合である。制御部34は、共振状態が基準時間(例えば、10秒間)内に検出トルク値が基準トルク値を超えた回数が、規定回数以上の場合には、共振が起こっているとして、この第4速度V4でロール10を回転させるのを避けるように、回転速度を例えば、第3速度V3に初期設定する。
【0017】
初期設定が終わり、制御部34が、通常運転を行う場合には、初期設定された第3速度V3でロール10を回転させ、共振を防止する。この通常運転において、制御部34は、トルク計28からの検出トルク値をさらに常に検出している。そして、制御部34は、検出トルク値が基準トルク値を基準時間内に超えた回数が、規定回数以上の場合には共振状態が発生したとして、第3速度V3から所定の減速幅(例えば、5m/分)で減速させて第2速度V2で回転させる。このようにする理由は、初期設定において共振状態の回転速度が避けられていても、運転によるロール10、回転軸14,16、ボールベアリング24,26の経年劣化により各振動固有値が変化し、共振が起こる第4速度V4とは異なる回転速度で共振を発生させる可能性があるからである。制御部34は、この新たに定めた共振を行う回転速度(例えば、第3速度V3)を避けるように、モータ30を回転させるため、所定の減速幅で減速させる。
【0018】
(3)効果
本実施形態によれば、初期設定において共振が発生する回転速度を発見し、通常の運転状態において、この共振が発生する回転速度を避けてロール10を回転させるため、共振が起こらない。
【0019】
また、通常の運転においてロール10、回転軸14,16、ボールベアリング24,26などが経年劣化により、それぞれの固有振動値が変化しても、制御部34は、トルク計28の検出トルク値を常に監視しているため、それに併せて回転速度を変化させ、共振が起こらないようにできる。
【実施形態2】
【0020】
本発明の実施形態2のロール10の回転装置12について図4を参照して説明する。実施形態1では、図1に示すようにトルク計28にモータ30の出力軸32を直接連結している。
【0021】
これに代えて、本実施形態では、図4に示すように、トルク計28に減速機36の出力軸を連結し、減速機36の入力軸にプーリ38を接続し、モータ30にプーリ40を連結し、プーリ38とプーリ40との間にベルト42を設けてもよい。この場合には、モータ30の出力は、プーリ38,40を経て減速機36で減速され、トルク計28に至り、減速された速度で回転軸16を回転させることができる。
【0022】
本実施形態であっても、トルク計28の検出トルク値を制御部34が監視することにより、共振が発生する回転速度を見つけることができる。
【変更例】
【0023】
上記実施形態では、共振が起こらないように回転速度を変更するときに、制御部34は、回転速度を所定の減速幅で減速させたが、逆に共振が発生する回転速度(例えば、第4速度V4)から所定の増速幅で増速させてもよい。
【0024】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
10・・・ロール、12・・・回転装置、14・・・回転軸、16・・・回転軸、28・・・トルク計、30・・・モータ、32・・・出力軸、34・・・制御部
図1
図2
図3
図4