(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】動揺抑制装置および浮揚構造物
(51)【国際特許分類】
B63B 39/00 20060101AFI20230926BHJP
F16F 15/067 20060101ALI20230926BHJP
F16F 15/073 20060101ALI20230926BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B63B39/00
F16F15/067
F16F15/073
F16F1/18 Z
(21)【出願番号】P 2020024803
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523020925
【氏名又は名称】韓 佳琳
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】韓 佳琳
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05316508(US,A)
【文献】特開2018-058566(JP,A)
【文献】特開平06-270879(JP,A)
【文献】米国特許第07743720(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0067692(KR,A)
【文献】特開平07-172385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 39/00
F16F 15/067
F16F 15/073
F16F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体と、前記浮体の上方に配置される上部構造物とを連結するとともに、前記浮体と前記上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する、動揺抑制装置であって、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第1連結装置を備え、
前記第1連結装置は、
前記浮体に対して水平方向に延びる軸をX軸、水平方向に延びる軸であるとともに前記X軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として、
延びている方向の水平成分が
前記X軸に平行であるとともに、
前記Z軸方向の付勢力を発生させる板バネを含む第1付勢部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、前記第1付勢部材を支持する第1支持部と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、前記第1付勢部材を支持する第2支持部と、
を有し、
前記第1付勢部材は、
前記Z軸方向に突出するように湾曲した板バネである湾曲板バネを有し、
前記第1支持部、および前記第2支持部は、
前記Y軸方向に延びる軸回りに前記第1付勢部材を回動可能に支持し、
前記第1付勢部材は、一対の前記第1支持部によって、間隔をおいた位置が支持されているとともに、前記第2支持部によって、前記一対の第1支持部に挟まれた位置が支持されている、
動揺抑制装置。
【請求項2】
前記第1支持部は、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、
前記Y軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持される揺動部材を有し、
前記第1付勢部材は、前記揺動部材に対して、
前記Y軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持されている、
請求項1に記載の動揺抑制装置。
【請求項3】
前記第1連結装置は、
前記第1付勢部材と協動して、前記上部構造物を支持する
前記Z軸方向の付勢力を発生させる第2付勢部材を、さらに有する、
請求項1または請求項2に記載の動揺抑制装置。
【請求項4】
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第2連結装置をさらに備え、
前記第2連結装置は、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、
前記X軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持される第1連結部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、
前記X軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持される第2連結部材と、
を有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、
前記X軸方向に延びる軸回りに回動可能に連結されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動揺抑制装置。
【請求項5】
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動揺抑制装置と、を備えた、
浮揚構造物。
【請求項6】
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動揺抑制装置のうち、少なくとも一対の前記第1連結装置を有し、
前記一対の第1連結装置は、
前記X軸方向に対して平行になるように配置されるとともに、
前記Y軸方向に対して間隔をおいて配置されている、
浮揚構造物。
【請求項7】
前記Y軸方向に間隔をおいて配置される複数の浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動揺抑制装置と、を有し、
前記動揺抑制装置は、前記複数の浮体の上方にそれぞれ配置されている、
浮揚構造物。
【請求項8】
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
前記浮体と、前記上部構造物とを連結するとともに、前記浮体と前記上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する動揺抑制装置と、
を備えた浮揚構造物であって、
前記動揺抑制装置は、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第1連結装置を備え、
前記第1連結装置は、
前記浮体に対して水平方向に延びる軸をX軸、水平方向に延びる軸であるとともに前記X軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として、
延びている方向の水平成分が
前記X軸または
前記Y軸に平行であるとともに、
前記Z軸方向の付勢力を発生させる板バネを含む第1付勢部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、前記第1付勢部材を支持する第1支持部と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、前記第1付勢部材を支持する第2支持部と、を有し、
前記浮体は、
第1浮体と、
前記第1浮体を挟むように配置されるとともに、前記第1浮体に対してそれぞれ
前記Y軸方向に間隔をおいて配置される複数の第2浮体を有し、
前記第2浮体は、前記第1浮体に対して、前記X軸回りの動揺、および/または、前記Y軸回りの動揺が可能であり、
前記動揺抑制装置は、
前記第1浮体に配置される第1の前記第1連結装置と、
前記複数の第2浮体に跨るように配置される第2の前記第1連結装置と、を有し、
前記第1の第1連結装置は、
前記第1付勢部材が延びている方向が
前記X軸と平行になるように配置されており、
前記第2の第1連結装置は、
前記第1付勢部材が延びている方向が
前記Y軸と平行になるように配置されている、
浮揚構造物。
【請求項9】
前記動揺抑制装置は、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第2連結装置をさらに備え、
前記第2連結装置は、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、
前記X軸方向および
前記Y軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持される第1連結部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、
前記X軸方向および
前記Y軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持される第2連結部材と、
を有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、
前記X軸方向および
前記Y軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に連結されている、
請求項8に記載の浮揚構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体と、浮体の上方に配置される上部構造物とを連結するとともに、浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する動揺抑制装置、および、浮体と上部構造物とを動揺抑制装置で連結した浮揚構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロートに対する主船体の相対的な揺れを制限して、乗り心地を悪化させる不要な運動を排除するようにした船が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された船は、サスペンションを介して主船体をフロートで支える構成を有している。このサスペンションは、アッパーアームとロアアームとを有する複数のアーム機構を備えている。複数のアーム機構は、主船体とフロートとの相対変位の運動を許容・抑制する方向を運動の方向ごとに異ならせている。アッパーアームは、前後左右の異なる位置に配置されており、主船体側に揺動可能に連結されている。ロアアームは、一端がフロート側に揺動可能に連結されており、他端がアッパーアームに相対揺動可能に連結されている。
【0004】
また、特許文献1に開示されたサスペンションは、主船体のロールが可能となるように、アッパーアームとロアアームの一方が、前後方向に沿うピンにより、主船体またはフロートに対して揺動可能に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、浮体と、浮体の上方に配置される上部構造物の相対的な運動は、波エネルギーのよるものであり、この波エネルギーを利用して発電等を行うことが可能である。浮体と上部構造物の相対的な運動を利用する場合、利用可能な運動まで排除しないことが望ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたサスペンションは、アーム機構が主船体またはフロートに対してピンで揺動可能に接続されなければ、フロートに対する主船体のロールが制限される。フロートと主船体の相対的な運動を利用するという点では、特許文献1に開示されたサスペンションは、フロートと主船体の相対的な運動を必要以上に排除することとなる。
【0008】
また、特許文献1に開示されたサスペンションは、アーム機構が主船体またはフロートに対してピンで揺動可能に接続されることにより、フロートに対する主船体のロールが許容される。しかしながら、ロールの中心(ロールセンター)がピン位置に固定されるため、フロートに対する主船体のロールは、ピンを中心とした点対称の回転運動に拘束される。つまり、波エネルギーによって生じた主船体のロール運動の一部が、乗り心地を悪化させる不要な運動として排除されている。
【0009】
このため、特許文献1に開示されたサスペンションは、フロートに対する主船体のロールが許容された状態においても、フロートと主船体の相対的な運動を利用するという点では、フロートと主船体の相対的な運動を必要以上に排除することとなる。
【0010】
本発明は、浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制するとともに、波エネルギーによって生じた上部構造物の運動を必要以上に排除しないようにした、動揺抑制装置および浮揚構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の動揺抑制装置は、
浮体と、前記浮体の上方に配置される上部構造物とを連結するとともに、前記浮体と前記上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する、動揺抑制装置であって、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第1連結装置を備え、
前記第1連結装置は、
前記浮体に対して水平方向に延びる軸をX軸、水平方向に延びる軸であるとともに前記X軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として、
延びている方向の水平成分がX軸またはY軸に平行であるとともに、Z軸方向の付勢力を発生させる板バネを含む第1付勢部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、前記第1付勢部材を支持する第1支持部と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、前記第1付勢部材を支持する第2支持部と、
を有する。
【0012】
また、本発明の浮揚構造物は、
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
動揺抑制装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動揺抑制装置および浮揚構造物によれば、浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる
。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る浮揚構造物を+Y方向から見た側面図である。
【
図2】
図2は、浮揚構造物を+Z方向から見た平面図である。
【
図3】
図3は、浮揚構造物を+X方向から見た正面図である。
【
図4】
図4は、浮揚構造物の動作を示す側面図である。
【
図5】
図5は、浮揚構造物の動作を示す正面図である。
【
図6】
図6は、浮揚構造物の動作を示す側面図である。
【
図7】
図7は、浮揚構造物の動作を示す正面図である。
【
図8】
図8は、浮揚構造物の動作を示す正面図である。
【
図9】
図9は、浮揚構造物の動作を示す側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態2に係る浮揚構造物を+Y方向から見た側面図である。
【
図12】
図12は、浮揚構造物を+Z方向から見た平面図である。
【
図13】
図13は、浮揚構造物を+X方向から見た正面図である。
【
図14】
図14は、第1の第1連結装置および第2の第1連結装置を+Y方向から見た拡大側面図である。
【
図15】
図15は、第1の第1連結装置および第2の第1連結装置を+X方向から見た拡大正面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態3に係る浮揚構造物を+Y方向から見た側面図である。
【
図17】
図17は、浮揚構造物を+Z方向から見た平面図である。
【
図18】
図18は、浮揚構造物を+X方向から見た正面図である。
【
図19】
図19は、浮揚構造物を+X方向から見た正面図である。
【
図20】
図20は、浮揚構造物を+Z方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる動揺抑制装置は、
浮体と、前記浮体の上方に配置される上部構造物とを連結するとともに、前記浮体と前記上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する、動揺抑制装置であって、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第1連結装置を備え、
前記第1連結装置は、
前記浮体に対して水平方向に延びる軸をX軸、水平方向に延びる軸であるとともに前記X軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として、
延びている方向の水平成分がX軸またはY軸に平行であるとともに、Z軸方向の付勢力を発生させる板バネを含む第1付勢部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、前記第1付勢部材を支持する第1支持部と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、前記第1付勢部材を支持する第2支持部と、
を有する(第1の構成)。
【0016】
上記構成によれば、第1連結装置を構成する第1付勢部材は、Z軸方向の付勢力を発生させる板バネを含むとともに、第2方向に延びる軸回りに回動可能に浮体および上部構造物に支持されている。
このため、第1連結装置は、浮体と上部構造物の相対的なZ軸方向の揺れを許容する一方、第1付勢部材が延びる方向と直交する方向に沿った相対的な揺れを抑制するとともに、Z軸回りの相対的な回転方向の揺れを抑制することができる。
【0017】
上記第1の構成において、
前記第1付勢部材は、Z軸方向に突出するように湾曲した板バネである湾曲板バネを有してもよい(第2の構成)。
【0018】
上記構成によれば、第1付勢部材は、Z軸方向に突出するように湾曲した湾曲板バネを有している。
このため、第1付勢部材は、浮体と上部構造物の相対的なZ軸方向の揺れを許容する一方、第1付勢部材が延びる方向と直交する方向に沿った相対的な揺れを抑制するとともに、Z軸回りの相対的な回転方向の揺れを抑制することができる。
【0019】
上記第1または第2の構成において、
前記第1支持部、および/または前記第2支持部は、X軸方向またはY軸方向に延びる軸回りに前記第1付勢部材を回動可能に支持されてもよい(第3の構成)。
【0020】
上記構成によれば、第1支持部、および/または第2支持部は、X軸方向またはY軸方向に延びる軸回りに第1付勢部材を回動可能に支持している。
このため、浮体と上部構造物の相対的なZ軸方向の揺れ、および第1付勢部材を支持する軸回りの相対的な回転方向の揺れを許容する一方、第1付勢部材を支持する軸が延びる方向に沿った相対的な揺れを抑制するとともに、Z軸回りの相対的な回転方向の揺れを抑制することができる。
また、第1付勢部材の板バネが変形することにより、相対的な回転方向の揺れは、回転中心が第1支持部および/または前記第2支持部に固定されずに変動させることができる。
このため、波エネルギーによって生じた上部構造物の運動を必要以上に排除しないようにすることができる。
【0021】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記第1付勢部材は、
一対の前記第1支持部によって、間隔をおいた位置が支持されているとともに、
前記第2支持部によって、前記一対の第1支持部に挟まれた位置が支持されていてもよい(第4の構成)。
【0022】
上記構成によれば、一対の第1支持部、および一対の第1支持部に挟まれた第2支持部によって浮体と上部構造物が連結される。
このため、浮体と上部構造物に対する第1連結装置の連結箇所を少なくしながら、浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる。
【0023】
上記第4の構成において、
前記第1支持部は、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持される揺動部材を有し、
前記第1付勢部材は、前記揺動部材に対して、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持されていてもよい(第5の構成)。
【0024】
上記構成によれば、第1支持部の揺動部材を介して、第1付勢部材が浮体または上部構造物に支持される。浮体と上部構造物の相対的な上下方向の揺れは、上下方向の揺れが比較的小さく、揺動部材の回動と第1付勢部材の変形の双方によって許容される状態と、上下方向の揺れが比較的大きくなって、第1付勢部材の変形が大きくなり、揺動部材が浮体または上部構造物に接触した状態となる場合がある。揺動部材が回動不能になると、第1連結装置の上下方向におけるバネ定数は、揺動部材が回動可能な状態におけるバネ定数よりも上昇する。
このため、上下方向の揺れが大きくなった場合には、バネ定数を上昇させながら、浮体と上部構造物の相対的な上下方向の揺れをさらに許容するため、上部構造物の底付き(ボトムアウト)を抑制し、上部構造物に生じる衝撃を緩和することができる。
【0025】
上記第1から第5のいずれかの構成において、
前記第1連結装置は、
前記第1付勢部材と協動して、前記上部構造物を支持するZ軸方向の付勢力を発生させる第2付勢部材を、さらに有してもよい(第6の構成)。
【0026】
上記構成によれば、第1付勢部材と協動して上部構造物を支持する第2付勢部材をさらに有している。
このため、浮体と上部構造物の相対的な運動を許容しながら、上部構造物を安定して支持することができる。
【0027】
本発明の一実施形態にかかる動揺抑制装置は、
浮体と、前記浮体の上方に配置される上部構造物とを連結するとともに、前記浮体と前記上部構造物との相対的な運動の一部を抑制する、動揺抑制装置であって、
前記浮体と前記上部構造物とを相対変位可能に連結する第2連結装置を備え、
前記第2連結装置は、
前記浮体に対して水平方向に延びる軸をX軸、水平方向に延びる軸であるとともに前記X軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか一方に対して、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持される第1連結部材と、
前記浮体および前記上部構造物のいずれか他方に対して、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に支持される第2連結部材と、
を有し、
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能に連結されている(第7の構成)。
【0028】
上記構成によれば、第2連結装置は、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に延びる軸回りに回動可能な、第1連結部材および第2連結部材を有している。
このため、第1連結装置は、浮体と上部構造物の相対的な上下方向の揺れを許容する一方、軸に沿った相対的な揺れを抑制するとともに、Z軸回りの相対的な回転方向の揺れを抑制することができる。
【0029】
本発明の一実施形態にかかる浮揚構造物は、
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
上記第1から第7のいずれかの構成の動揺抑制装置と、
を備える(第8の構成)。
【0030】
上記構成によれば、動揺抑制装置によって、浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる。
【0031】
本発明の一実施形態にかかる浮揚構造物は、
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
上記第1から第6のいずれかの構成の動揺抑制装置のうち、少なくとも一対の前記第1連結装置を有し、
前記一対の第1連結装置は、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方に対して平行になるように配置されるとともに、X軸方向およびY軸方向のいずれか他方に対して間隔をおいて配置されている(第9の構成)。
【0032】
上記構成によれば、動揺抑制装置は、浮体と上部構造物の相対的なZ軸方向の揺れを許容する一方、第1付勢部材が延びる方向と直交する方向に沿った相対的な揺れを抑制するとともに、Z軸回りの相対的な回転方向の揺れを抑制することができる。
また、第1付勢部材の板バネが変形することにより、相対的な回転方向の揺れは、回転中心が固定されずに変動させることができる。
このため、波エネルギーによって生じた上部構造物の運動を必要以上に排除しないようにすることができる。
【0033】
本発明の一実施形態にかかる浮揚構造物は、
前記Y軸方向に間隔をおいて配置される複数の浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
上記第1から第7のいずれかの構成の動揺抑制装置と、を有し、
前記動揺抑制装置は、前記複数の浮体の上方にそれぞれ配置されている(第10の構成)。
【0034】
上記構成によれば、動揺抑制装置によって、複数の浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる。
【0035】
本発明の一実施形態にかかる浮揚構造物は、
浮体と、
前記浮体の上方に配置される上部構造物と、
上記第1から第6のいずれかの構成の動揺抑制装置と、
を備えた浮揚構造物であって、
前記浮体は、
第1浮体と、
前記第1浮体を挟むように配置されるとともに、前記第1浮体に対してそれぞれY軸方向に間隔をおいて配置される複数の第2浮体を有し、
前記第2浮体は、前記第1浮体に対して、前記X軸回りの動揺、および/または、前記Y軸回りの動揺が可能であり、
前記動揺抑制装置は、
前記第1浮体に配置される第1の前記第1連結装置と、
前記複数の第2浮体に跨るように配置される第2の前記第1連結装置と、を有し、
前記第1の第1連結装置は、
前記第1付勢部材が延びている方向がX軸と平行になるように配置されており、
前記第2の第1連結装置は、
前記第1付勢部材が延びている方向がY軸と平行になるように配置されている(第11の構成)。
【0036】
上記構成によれば、直交するように配置された第1連結装置により、第1浮体および第2浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる。
【0037】
上記第11の構成において、
上記第7の構成の動揺抑制装置をさらに備えてもよい(第12の構成)。
【0038】
上記構成によれば、直交するように配置された第1連結装置に加えて、第2連結装置により、第1浮体および第2浮体と上部構造物との相対的な運動の一部を抑制することができる。
【0039】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る動揺抑制装置10、および浮揚構造物100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0040】
[全体構成]
まず、浮揚構造物100の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る浮揚構造物100を+Y方向から見た側面図である。
図2は、浮揚構造物100を+Z方向から見た平面図である。
図3は、浮揚構造物100を+X方向から見た正面図である。
図1から
図3に示すように、浮揚構造物100は、浮体110、上部構造物130、および動揺抑制装置10を備えている。
【0041】
本実施形態に係る浮揚構造物100は、浮体110と上部構造物130とが動揺抑制装置10で連結されている。乗り心地向上や波エネルギー吸収のためには、浮体110と上部構造物130の相対的な運動を抑制したり増幅することが必要である。本実施形態に係る浮揚構造物100および動揺抑制装置10は、浮体110と上部構造物130の相対的な運動のうち、一部の運動を抑制することで、残りの運動を分離するものである。
【0042】
本実施形態では、浮体110は、第1浮体111および第2浮体112を有している。第1浮体111および第2浮体112は、平面視で船首尾線L方向に長細い同一の船型を有している。浮体110は、第1浮体111および第2浮体112の船首尾線Lが互いに平行になるように配置され、かつ、第1接続部121および第2接続部122によって互いに連結された双胴船型である。喫水線WLは、浮揚構造物100が水面に浮かんだ状態における喫水線を示している。なお、浮体の形状は限定されず、船型でなくてもよい。また、浮体は、水面に浮くだけでなく、没水型や半没水型であってもよい。
【0043】
以下の図では、第1浮体111および第2浮体112の船首尾線Lが水平に延びている方向に沿った軸をX軸、水平方向に延びるとともにX軸に直交する軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸として説明する。
【0044】
浮体110に対する上部構造物130の相対的な運動として、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)、およびZ軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)がある。本発明では、これらの相対的な運動の一部を抑制(拘束)し、残りの相対的な運動を許容する。
【0045】
図1から
図3に示すように、上部構造物130は、浮体110の上方に配置されている。本実施形態の上部構造物130は、平面視で長方形の板状である。上部構造物130は、例えば作業台とされたり、乗員が搭乗するキャビン(図示せず)が設けられる。
【0046】
動揺抑制装置10は、浮体110と上部構造物130とを連結する装置である。動揺抑制装置10は、浮体110と上部構造物130との相対的な運動の一部を抑制することで、残りの運動を分離する。動揺抑制装置10は、第1連結装置11および第2連結装置12を有している。
【0047】
図1は、浮揚構造物100を+Y方向から見た側面図である。
図1では、第2連結装置12を省略している。
図1に示すように、第1連結装置11は、第1付勢部材31、第2付勢部材32、第1支持部51、および第2支持部52を有している。
【0048】
本実施形態では、第1連結装置11は、一対設けられており、それぞれ第1浮体111および第2浮体112に設けられている(
図2参照)。一対の第1連結装置11は同一の構成を有しているため、以下では、第2浮体112に設けられた第1連結装置11について説明する。
【0049】
第1連結装置11は、第1付勢部材31、一対の第1支持部51、および第2支持部52を有している。
【0050】
第1付勢部材31は、Z軸方向の付勢力を発生させる板バネ33を含んでいる。本実施形態で用いられている板バネ33は、-Z方向に突出するように湾曲した湾曲板バネである。第1付勢部材31は、板バネ33が延びている方向の水平成分がX軸に平行になるように配置されている。
【0051】
一対の第1支持部51は、第1付勢部材31の両端部を、上部構造物130に対してY軸回りに回動可能に支持している。
【0052】
第1支持部51は、揺動部材53を有している。揺動部材53は、板バネ33と同程度の幅を有する板状体である。揺動部材53の一端部は、上部構造物130に対して回動可能に支持されている。揺動部材53は、上部構造物130に対してY軸方向に延びる軸531回りに回動可能である。揺動部材53の他端部は、第1付勢部材31の端部を回動可能に支持している。第1付勢部材31は、揺動部材53に対して、Y軸方向に延びる軸532回りに回動可能に支持されている。
【0053】
第2支持部52は、第1付勢部材31を、第2浮体112に対してY軸回りに回動可能に支持している。第2支持部52は、X軸方向において一対の第1支持部51に挟まれる位置に配置されている。本実施形態では、第2支持部52は、第1付勢部材31の中間位置を支持している。第1付勢部材31は、第2浮体112に対して、Y軸方向に延びる軸521回りに回動可能に支持されている。
【0054】
第2付勢部材32は、第1付勢部材31と協動して、上部構造物130を支持する上下方向の付勢力を発生させる。本実施形態では、第2付勢部材32としてコイルバネを用いている。本実施形態では、第1付勢部材31、および第2付勢部材32の上下方向の付勢力によって、浮体110に対して上部構造物130を相対運動可能に支持している。
【0055】
第2付勢部材32は、第1浮体111および第2浮体112にそれぞれ2本ずつ配置されている(
図2参照)。第2付勢部材32は、第1付勢部材31の+X軸側と、‐X軸側にそれぞれ配置されている。なお、第2付勢部材32の配置位置や数はこれに限定されない。例えば、第1付勢部材31を支持する第2支持部52の上方に重ねるように第2付勢部材32を配置してもよい。この場合、第2付勢部材32をコンパクトに配置することができる。
【0056】
図2は、浮揚構造物100を+Z方向から見た平面図である。
図2では、上部構造物130を仮想線で示している。
図2に示すように、一対の第1連結装置11は、それぞれ第1浮体111および第2浮体112に設けられている。一対の第1連結装置11は、それぞれX軸に平行に配置され、かつ、Y軸方向に間隔をおいて配置されている。
【0057】
第2付勢部材32は、第1付勢部材31の+X軸側と‐X軸側において、第1浮体111および第2浮体112を連結する第1接続部121および第2接続部122の上部に配置されている。
【0058】
第2連結装置12は、浮体110と上部構造物130とを相対変位可能に連結するものである。本実施形態では、第2連結装置12は一対設けられており、それぞれ第1連結装置11の+X軸側と‐X軸側であって、第1浮体111および第2浮体112の間に配置されている。一対の第2連結装置12は、同一の構成を有しているため、以下では、+X軸側に設けられた第2連結装置12について説明する。
【0059】
図3は、浮揚構造物100を+X方向から見た正面図である。
図3では、+X軸側に設けられた第2連結装置12と、-X軸側に設けられた第2連結装置12が重なって見えている。第2連結装置12は、ヒンジ状のリンク部材であり、第1連結部材41、および第2連結部材42を有している。第1連結部材41および第2連結部材42は、同程度の幅を有する板状体である。第1連結部材41は、浮体110に対して、X軸方向に延びる軸411回りに回動可能に支持されている。第2連結部材42は、上部構造物130に対して、X軸方向に延びる軸421回りに回動可能に支持されている。また、第1連結部材41および第2連結部材42は、X軸方向に延びる軸422回りに回動可能に連結されている。
【0060】
[動作]
次に、浮揚構造物100の動作について
図4から
図10を用いて説明する。
図4から
図10では、浮揚構造物100の動作を説明するために、静止した浮体110に対して上部構造物130が変位した状態を示している。実際に浮揚構造物100が波等を受けた場合には、主に浮体110が動揺し、動揺抑制装置10によって浮体110と上部構造物130の相対的な運動のうち、一部の運動を抑制することで、残りの運動を分離するものである。
【0061】
本実施形態の動揺抑制装置10のうち、一対の第1連結装置11は、浮体110と上部構造物130の相対的な運動のうち、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、およびY軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容し、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。なお、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)は、第1付勢部材31の変形によって許容される。
【0062】
また、本実施形態の動揺抑制装置10のうち、一対の第2連結装置12は、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、および、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)、を許容し、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。
【0063】
このため、本実施形態の浮揚構造物100では、浮体110と上部構造物130の相対的な運動のうち、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、および、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容し、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。
【0064】
図4および
図5は、浮体110に対して上部構造物130がZ軸方向の揺れ(上下揺、heave)を生じている状態を示している。
【0065】
図6は、浮体110に対して上部構造物130が沈み込み、第1連結装置11の揺動部材53が上部構造物130に接触している状態を示している。
【0066】
浮体110と上部構造物130の相対的な上下方向の揺れは、上下方向の揺れが比較的小さく、揺動部材53の回動と第1付勢部材31の変形の双方によって許容される状態(
図4、
図5参照)と、
図6に示すように、上下方向の揺れが比較的大きくなって、第1付勢部材31の変形が大きくなり、揺動部材53が浮体110に接触した状態となる場合がある。揺動部材53が回動不能になると、第1連結装置11の上下方向におけるバネ定数は、揺動部材53が回動可能な状態におけるバネ定数よりも上昇する。このため、上下方向の揺れが大きくなった場合には、バネ定数を上昇させながら、浮体110と上部構造物130の相対的な上下方向の揺れをさらに許容するため、上部構造物130の底付き(ボトムアウト)を抑制し、上部構造物130に生じる衝撃を緩和することができる。
【0067】
図7および
図8は、浮体110に対して上部構造物130がX軸回りの回転揺れ(横揺、roll)を生じている状態を示している。
図7では、上部構造物130の回転揺れの中心が、上部構造物130のY軸方向における中点付近にある状態を示している。一方、
図8では、上部構造物130の回転揺れの中心が、上部構造物130の+Y軸方向における端部付近にある状態を示している。このように、一対の第1連結装置11、および、一対の第2連結装置12が協動してX軸回りの回転揺れ(横揺、roll)を許容するため、浮体110と上部構造物130の相対的なX軸回りの回転揺れ(横揺、roll)は、回転中心が固定されずに変動させることができる。このため、波エネルギーによって生じた上部構造物130の運動を必要以上に排除しないようにすることができる。
【0068】
図9および
図10は、浮体110に対して上部構造物130がY軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を生じている状態を示している。
図9では、上部構造物130の回転揺れの中心が、上部構造物130のX軸方向における中点付近にある状態を示している。一方、
図10では、上部構造物130の回転揺れの中心が、上部構造物130の-X軸方向における端部付近にある状態を示している。このように、一対の第1連結装置11、および、一対の第2連結装置12が協動してY軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容するため、浮体110と上部構造物130の相対的なY軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)は、回転中心が固定されずに変動させることができる。このため、波エネルギーによって生じた上部構造物130の運動を必要以上に排除しないようにすることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、第1連結装置11の第1付勢部材31は、第2支持部52によって浮体110に対してY軸回りに回動可能に支持されている。第2支持部52を用いずに第1付勢部材31を直接浮体110に取り付けた場合には、一対の第2連結装置12は、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)も抑制することとなる。
【0070】
[実施形態2]
実施形態2の浮揚構造物100Aは、第1の第1連結装置11Aおよび第2の第1連結装置11Bが交差するように配置されている点が実施形態1と異なっている。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0071】
図11は、本発明の実施形態2に係る浮揚構造物100Aを+Y方向から見た側面図である。
図12は、浮揚構造物100Aを+Z方向から見た平面図である。
図13は、浮揚構造物100Aを+X方向から見た正面図である。
図14は、第1の第1連結装置11Aおよび第2の第1連結装置11Bを+Y方向から見た拡大側面図である。
図15は、第1の第1連結装置11Aおよび第2の第1連結装置11Bを+X方向から見た拡大正面図である。
【0072】
図11から
図13に示すように、本実施形態では、浮体110Aは、第1浮体113および一対の第2浮体114、115を有している。第1浮体113は、平面視で船首尾線方向に長細い船型を有している。第2浮体114、115は、第1浮体113よりも小型であり、平面視で船首尾線方向に長細い、相互に同一の船型を有している。浮体110Aは、第1浮体113および一対の第2浮体114、115が互いに平行になるように配置され、かつ、第3接続部123によって互いに連結されている。第3接続部123は、ロッドエンドベアリング124によって一対の第2浮体114、115に接続されている。このため、一対の第2浮体114、115は、それぞれ第1浮体113に対して、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)が許容されている。
【0073】
上部構造物130Aは、浮体110Aの上方に配置されている。
【0074】
動揺抑制装置10Aは、浮体110Aと上部構造物130Aとを連結する装置である。動揺抑制装置10Aは、浮体110Aと上部構造物130との相対的な運動の一部を抑制することで、残りの運動を分離する。動揺抑制装置10Aは、第1の第1連結装置11A、および第2の第1連結装置11Bを有している。
【0075】
第1の第1連結装置11Aは、第1付勢部材131、一対の第1支持部151、および第2支持部152を有している。第1付勢部材131は、X軸に平行になるように配置されている。
【0076】
一対の第1支持部151は、第1付勢部材131の両端部を、第1浮体113に対してY軸回りに回動可能に支持している。
【0077】
第2支持部152は、第1付勢部材131を、上部構造物130Aに対してY軸回りに回動可能に支持している。
【0078】
第2の第1連結装置11Bは、第1付勢部材231、一対の第1支持部251、および第2支持部252を有している。第1付勢部材231は、Y軸に平行になるように配置されている。
【0079】
一対の第1支持部251は、第1付勢部材231の両端部を、第2浮体114、115に対してX軸回りに回動可能に支持している。
【0080】
第2支持部252は、第1付勢部材231を、上部構造物130Aに対してX軸回りに回動可能に支持している。
【0081】
ここで、
図14および
図15に示すように、第1の第1連結装置11A、および第2の第1連結装置11Bは、互いに干渉しないように上部構造物130Aと連結されている。具体的には、第2の第1連結装置11Bを構成する第2支持部252が、第1の第1連結装置11Aを構成する第2支持部152を跨ぐように構成されている。このため、直交するように配置される第1付勢部材131および第1付勢部材231の干渉が回避されている。
【0082】
第2付勢部材32は、第1浮体113および一対の第2浮体114、115にそれぞれ2本ずつ配置されている(
図12参照)。なお、第2付勢部材32の配置位置や数はこれに限定されない。
【0083】
[動作]
次に、浮揚構造物100Aの動作について説明する。本実施形態の動揺抑制装置10Aのうち、第1の第1連結装置11Aは、第1浮体113と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、および、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容し、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。なお、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)は、第1付勢部材131の変形によって許容される。
【0084】
また、本実施形態の動揺抑制装置10Aのうち、第2の第1連結装置11Bは、第2浮体114、115と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、を許容し、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。
【0085】
なお、本実施形態では、第2の第1連結装置11Bは、一対の第1支持部251に設けられる第1付勢部材231の両端部を、第2浮体114、115に対してX軸回りに回動可能に支持している。これをさらにY軸回りにも回動可能にすることで、第2浮体114、115について、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容することも可能である。
【0086】
また、第1浮体113と上部構造物130Aの間に、第2連結装置12(ヒンジ状のリンク部材)を設け、第2連結装置12の回転軸をX軸に平行に配置することにより、第1浮体113と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)を抑制することが可能になる。
【0087】
[実施形態3]
実施形態3の浮揚構造物100Bは、一対の第2浮体114、115が第4接続部125によって互いに連結されているが、一対の第2浮体114、115と第1浮体113が連結されていない点が実施形態2と異なっている。以下の説明において、実施形態2と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0088】
図16は、本発明の実施形態3に係る浮揚構造物100Bを+Y方向から見た側面図である。
図17は、浮揚構造物100Bを+Z方向から見た平面図である。
図18は、浮揚構造物100Bを+X方向から見た正面図である。
【0089】
図16から
図18に示すように、本実施形態では、浮体110Bは、第1浮体113および一対の第2浮体114、115を有している。浮体110Aは、第1浮体113および一対の第2浮体114、115が互いに平行になるように配置され、かつ、一対の第2浮体114、115が第4接続部125によって互いに連結されている。第4接続部125は、ベアリング126によって一対の第2浮体114、115に接続されている。このため、一対の第2浮体114、115は、それぞれ第1浮体113に対して、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、が許容されている。また、一対の第2浮体114、115が第1浮体113に対して接続されていないことにより、一対の第2浮体114、115は、上部構造物130Aに対してY軸方向の揺れ(左右揺、sway)が許容され、第1浮体113は、上部構造物130Aに対してX軸方向の揺れ(前後揺、surge)が許容されている。
【0090】
[動作]
次に、浮揚構造物100Bの動作について説明する。本実施形態の動揺抑制装置10Bのうち、第1の第1連結装置11Aは、第1浮体113と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、および、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容し、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。なお、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)は、第1付勢部材131の変形によって許容される。
【0091】
また、本実施形態の動揺抑制装置10Bのうち、第2の第1連結装置11Bは、第2浮体114、115と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)を許容し、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。
【0092】
なお、上部構造物130Aに対する一対の第2浮体114、115のY軸方向の揺れ(左右揺、sway)や、上部構造物130Aに対する第1浮体113のX軸方向の揺れ(前後揺、surge)を抑制するため、第2連結装置12(ヒンジ状のリンク部材)を設けてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、第1浮体113は水面に浮くとしたが、没水型の浮体としてもよい。この場合、第1浮体113と上部構造物130Aをリジッドに固定してもよい。
【0094】
[実施形態4]
実施形態4の浮揚構造物100Cは、平面視で円形の浮体110Cを有する点、浮体110Cと上部構造物130Cを連結する動揺抑制装置10Cが第2連結装置12で構成されている点が実施形態1と異なっている。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0095】
図19は、浮揚構造物100Cを+X方向から見た正面図である。
図20は、浮揚構造物100Cを+Z方向から見た平面図である。
【0096】
図19および
図20に示すように、本実施形態では、浮体110Cは、円柱状の形状を有している。 上部構造物130Cは、浮体110Cの上方に配置されている。
【0097】
動揺抑制装置10Cは、浮体110Cと上部構造物130Cとを連結する装置である。動揺抑制装置10Cは、浮体110Cと上部構造物130Cとの相対的な運動の一部を抑制することで、残りの運動を分離する。動揺抑制装置10Cは、第1の第2連結装置12A、第2の第2連結装置12B、第3の第2連結装置12C、第4の第2連結装置12D、および、第2付勢部材32を有している。
【0098】
図19および
図20に示すように、第1の第2連結装置12A、第2の第2連結装置12B、第3の第2連結装置12C、第4の第2連結装置12Dは、ヒンジ状のリンク部材である。第1の第2連結装置12A、および第3の第2連結装置12Cは、浮体110Cおよび上部構造物130Cに対して、X軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持されている。また、第2の第2連結装置12B、および第4の第2連結装置12Dは、浮体110Cおよび上部構造物130Cに対して、Y軸方向に延びる軸回りに回動可能に支持されている。
【0099】
第2付勢部材32は、第1の第2連結装置12A、第2の第2連結装置12B、第3の第2連結装置12C、および第4の第2連結装置12Dの間に同心円状に配置されている。
【0100】
[動作]
次に、浮揚構造物100Cの動作について説明する。本実施形態の動揺抑制装置10Cのうち、第1の第2連結装置12A、第2の第2連結装置12B、第3の第2連結装置12C、第4の第2連結装置12Dは、第1浮体113と上部構造物130Aの相対的な運動のうち、Z軸方向の揺れ(上下揺、heave)を許容し、X軸方向の揺れ(前後揺、surge)、Y軸方向の揺れ(左右揺、sway)、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、Y軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)、および、Z軸回りの回転揺れ(船首揺、yaw)を抑制する。
【0101】
なお、第1の第2連結装置12A、第2の第2連結装置12B、第3の第2連結装置12C、および第4の第2連結装置12Dと、浮体110Cとの連結部に例えばボールジョイントを用いることにより、X軸回りの回転揺れ(横揺、roll)、およびY軸回りの回転揺れ(縦揺、pitch)を許容することが可能となる。
【0102】
[変形例]
本発明に係る動揺抑制装置、および浮揚構造物は、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、第1連結装置は、上下方向に多層に組み合わせてもよい。また、X軸方向および/またはY軸方向に複数設けてもよい。また、例えば、第1連結装置、第2連結装置、第2付勢部材、第1付勢部材を回転可能に支持する第2支持部は、選択的に組み合わせるようにする。例えば、乗り心地向上を目的としての場合、第1連結装置を用いる場合が多いが、波エネルギー吸収を目的になる場合、第1連結装置は選択的であってもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
100 浮揚構造物
10 動揺抑制装置
110 浮体
130 上部構造物
11 第1連結装置
31 第1付勢部材
51 第1支持部
52 第2支持部