(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K15/04 E
(21)【出願番号】P 2019019615
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0040859(US,A1)
【文献】特開2010-239740(JP,A)
【文献】特開2013-034330(JP,A)
【文献】特開2013-158129(JP,A)
【文献】特開2015-023771(JP,A)
【文献】特開2004-032892(JP,A)
【文献】特開2010-239737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びるスロットを有する電機子コアと、前記電機子コアの軸方向に沿って延びる一対の脚部および前記一対の脚部同士を接続する渡り部を有する複数相のセグメント導体を含み、前記軸方向の一方側に配置された前記脚部と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部とが接合された、互いに異なる相の前記渡り部同士が径方向に隣り合うコイルとを備える、電機子の製造方法であって、
前記径方向となる方向において、前記一対の脚部と前記渡り部との相対位置が互いに異なる複数の種類の前記セグメント導体を含む、前記複数相のセグメント導体を形成する工程と、
前記複数相のセグメント導体を形成する工程の後、互いに異なる前記スロットに配置された前記セグメント導体の前記径方向に隣り合う互いに異なる相の前記渡り部同士の第1距離が、同一の前記スロットに配置された前記セグメント導体の前記径方向に隣り合う互いに同じ相の前記脚部同士の第2距離よりも大きくなり、かつ、前記軸方向の一方側の前記脚部または前記軸方向の他方側の前記脚部の少なくとも一方が前記スロットに配置されるように、前記相対位置が互いに異なる複数の種類の前記複数相のセグメント導体を前記電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する工程と、
前記複数相のセグメント導体を配置する工程の後、前記軸方向の一方側に配置された前記脚部と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部とを接合する工程とを備え
、
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記複数相のセグメント導体を前記電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する前に前記軸方向の一方側および他方側の各々の前記渡り部の同じ部分に、絶縁部を設ける工程を含む、電機子の製造方法。
【請求項2】
前記複数相のセグメント導体を形成する工程は、前記径方向となる方向において、前記渡り部の前記脚部に対する接続部の傾斜度合が互いに異なる前記複数のセグメント導体を形成することにより、前記相対位置が互いに異なる前記複数の種類のセグメント導体を含む、前記複数相のセグメント導体を形成する工程である、請求項1に記載の電機子の製造方法。
【請求項3】
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記複数相のセグメント導体のうちの前記傾斜度合が小さい前記セグメント導体ほど、前記径方向の一方側に配置され、かつ、前記傾斜度合が大きい前記セグメント導体ほど、前記径方向の他方側に配置されることにより、前記渡り部同士の前記第1距離が前記脚部同士の前記第2距離よりも大きくなるように、前記複数相のセグメント導体を配置する工程である、請求項2に記載の電機子の製造方法。
【請求項4】
前記複数相のセグメント導体を形成する工程は、前記傾斜度合が0の前記セグメント導体が、最も前記径方向の一方側に配置され、前記径方向の一方側から他方側に向かって徐々に前記傾斜度合が大きい前記セグメント導体が配置されるように、前記複数のセグメント導体を配置する工程である、請求項3に記載の電機子の製造方法。
【請求項5】
前記複数相のセグメント導体を形成する工程は、絶縁性を有する被膜が設けられた複数の導線をそれぞれ屈曲させることにより、前記相対位置が互いに異なる前記複数の種類のセグメント導体を含む、前記複数相のセグメント導体を形成する工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電機子の製造方法。
【請求項6】
前記複数相のセグメント導体のそれぞれの前記渡り部のうちの、少なくとも、異なる相の前記渡り部に隣接する部分の前記被膜の表面に、絶縁部を設ける工程をさらに備える、請求項5に記載の電機子の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁部を設ける工程は、前記複数相のセグメント導体を形成する工程の後、前記複数相のセグメント導体を配置する工程に先立って、前記渡り部に前記絶縁部を設ける工程であり、
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記径方向に隣り合う前記絶縁部が設けられた前記渡り部の導体部分同士の距離である前記第1距離が前記径方向に隣り合う前記脚部の導体部分同士の前記第2距離よりも大きくなるように、前記複数相のセグメント導体を前記電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する工程である、請求項6に記載の電機子の製造方法。
【請求項8】
前記複数相のセグメント導体を形成する工程の後で、かつ、前記複数相のセグメント導体を配置する工程に先立って、前記渡り部同士の前記第1距離が前記脚部同士の前記第2距離よりも大きくなるように、前記複数相のセグメント導体を円環状に組み合わせることにより、軸方向に一対の環状アッセンブリを形成する工程をさらに備え、
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記一対の環状アッセンブリを軸方向両側から前記電機子コアに対して軸方向に移動させることにより、前記一対の環状アッセンブリを前記電機子コアに配置する工程である、請求項1~7のいずれか1項に記載の電機子の製造方法。
【請求項9】
前記複数相のセグメント導体を形成する工程の後で、かつ、前記複数相のセグメント導体を配置する工程に先立って、前記渡り部同士の前記第1距離が前記脚部同士の前記第2距離よりも大きくなるように、前記複数相のセグメント導体を円環状に組み合わせることにより、軸方向に一対の環状アッセンブリを形成する工程と、
前記一対の環状アッセンブリを形成する工程の後、前記複数相のセグメント導体を配置する工程に先立って、前記環状アッセンブリに含まれる互いに異なる相の前記渡り部同士の間に、絶縁部を設ける工程とをさらに備え、
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記一対の環状アッセンブリを軸方向両側から前記電機子コアに対して軸方向に移動させることにより、前記一対の環状アッセンブリを前記電機子コアに配置する工程である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電機子の製造方法。
【請求項10】
前記複数相のセグメント導体を配置する工程は、前記軸方向の一方側に配置された前記脚部の先端部の第1面と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部の先端部の第2面とが径方向に対向するように、前記複数相のセグメント導体を配置する工程であり、
前記軸方向の一方側に配置された前記脚部と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部とを接合する工程は、前記渡り部を押圧せずに、前記軸方向の一方側に配置された前記脚部の先端部の第1面と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部の先端部の第2面とを径方向に押圧することにより、前記軸方向の一方側に配置された前記脚部と前記軸方向の他方側に配置された前記脚部とを接合する工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載の電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる相の渡り部同士が径方向に隣り合うコイルを備える、電機子の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、互いに異なる相のコイルエンド部(渡り部)同士が径方向に隣り合うコイルを備えるステータの製造方法が開示されている。このコイルエンド部は、挿入側エンド部と、互いに接合される接合側エンド部とを含む。そして、このステータの製造方法では、まず、一端に接合側エンド部が設けられているとともに、直線状に延びる一対のスロット挿入部と、一対のスロット挿入部の他端同士を連結する挿入側エンド部とによりU字形状を有する複数のセグメント導体が形成される。そして、複数のセグメント導体の挿入側エンド部に絶縁性の粉体塗装膜が形成される。その後、接合側エンド部がステータコアのスロットを軸方向に通過するように、複数のセグメント導体がステータコアに配置される。そして、接合側エンド部に粉体塗装膜が形成される。その後、接合側エンド部が周方向に屈曲され、互いに異なるセグメント導体の接合側エンド部の先端部同士が接合される。これにより、径方向に隣り合う互いに異なる相のコイルエンド部の導体部分同士の径方向の距離が、粉体塗装膜が設けられる分大きくなることにより、互いに異なる相のコイルエンド部の導体部分同士の絶縁性能が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のようなステータでは、粉体塗装膜が形成されているコイルエンド部の径方向の厚みは、粉体塗装膜の厚みの分、スロット挿入部の径方向の厚みよりも大きくなる。このため、比較的大きい厚みを有するコイルエンド部が径方向に隣接されることにより、このコイルエンド部に連続するスロット挿入部の径方向の距離も、比較的大きくなる。この場合、スロット挿入部の径方向の距離が大きいことに起因して、ステータコアのスロットが大型化し、ステータコアが大型化する。したがって、上記特許文献1に記載されているような従来のステータ(電機子)の製造方法では、互いに異なる相のコイルエンド部(渡り部)同士の絶縁性能を確保するために、ステータコア(電機子コア)が大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、互いに異なる相の渡り部同士の絶縁性能を確保しながら、電機子コアが大型化するのを防止することが可能な電機子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における電機子の製造方法は、軸方向に沿って延びるスロットを有する電機子コアと、電機子コアの軸方向に沿って延びる一対の脚部および一対の脚部同士を接続する渡り部を有する複数相のセグメント導体を含み、軸方向の一方側に配置された脚部と軸方向の他方側に配置された脚部とが接合された、互いに異なる相の渡り部同士が径方向に隣り合うコイルとを備える、電機子の製造方法であって、径方向となる方向において、一対の脚部と渡り部との相対位置が互いに異なる複数の種類のセグメント導体を含む、複数相のセグメント導体を形成する工程と、複数相のセグメント導体を形成する工程の後、互いに異なる前記スロットに配置されたセグメント導体の径方向に隣り合う互いに異なる相の渡り部同士の第1距離が、同一のスロットに配置されたセグメント導体の径方向に隣り合う互いに同じ相の脚部同士の第2距離よりも大きくなり、かつ、軸方向の一方側の脚部または軸方向の他方側の脚部の少なくとも一方がスロットに配置されるように、相対位置が互いに異なる複数の種類の複数相のセグメント導体を電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する工程と、複数相のセグメント導体を配置する工程の後、軸方向の一方側に配置された脚部と軸方向の他方側に配置された脚部とを接合する工程とを備え、複数相のセグメント導体を配置する工程は、複数相のセグメント導体を電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する前に軸方向の一方側および他方側の各々の渡り部の同じ部分に、絶縁部を設ける工程を含む。
【0008】
この発明の一の局面による電機子の製造方法は、上記のように、径方向に隣り合う互いに異なる相(以下、「異相」という)の渡り部同士の第1距離が径方向に隣り合う互いに同じ相(以下、「同相」という)の脚部同士の第2距離よりも大きくなり、かつ、軸方向の一方側の脚部または軸方向の他方側の脚部の少なくとも一方がスロットに配置されるように、相対位置が互いに異なる複数の種類の複数相のセグメント導体を電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置する。これにより、必要とされる絶縁距離が比較的大きい異相の渡り部同士の第1距離を大きく構成しながら、必要とされる絶縁距離が比較的小さい同相の脚部同士の第2距離を小さく構成することができる。このため、異相の渡り部同士の絶縁性能を確保しながら、少なくとも一方が電機子コアのスロットに配置される脚部同士の径方向の第2距離を小さくすることができる。また、本発明では、複数相のセグメント導体を電機子コアの一方側および他方側にそれぞれ配置し、軸方向の一方側に配置された脚部と軸方向の他方側に配置された脚部とを接合することにより、軸方向の一方側のみ配置された渡り部(両端部)同士を接合する場合と異なり、スロット内に渡り部(渡り部となる部分)を通過させる必要がない。このため、スロットの径方向の寸法を第1距離ではなく、比較的小さい第2距離に合わせて構成することができるので、スロットが径方向に大型化するのを防止することができる。この結果、電機子コアが径方向に大型化するのを防止することができる。したがって、互いに異なる相の渡り部同士の絶縁性能を確保しながら、電機子コアが大型化するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、互いに異なる相の渡り部同士の絶縁性能を確保しながら、電機子コアが大型化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態によるステータ(回転電機)の構成を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態によるステータの構成を示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態によるステータコアの構成を示す部分平面図である。
【
図5】第1実施形態によるスロット内の構成を示す断面図である。
【
図6】
図1の1000-1000線に沿った断面図である。
【
図7】第1実施形態による平角導線の横断面図であり、
図7(A)は、第1脚部および第2脚部の横断面図であり、
図7(B)は、第1渡り部および第2渡り部の横断面図である。
【
図8】第1実施形態によるコイル部の結線構成を示す回路図である。
【
図9】第1実施形態による互いに異なる相の第1渡り部の配置を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態による第1導体の構成を示す正面図である。
【
図11】第1実施形態による第2導体の構成を示す正面図である。
【
図12】第1実施形態による径方向に並んで配置される第1渡り部および第2渡り部の断面図、および、径方向に並んで配置される第1脚部および第2脚部の横断面図である。
【
図13】第1実施形態によるセグメント導体を周方向に見た図であり、
図13(A)は、第1導体を周方向に見た図であり、
図13(B)は、第2導体を周方向に見た図である。
【
図14】第1実施形態によるステータの製造工程を示すフロー図である。
【
図15】第1実施形態によるセグメント導体を形成する工程を説明するための図である。
【
図16】第2実施形態によるセグメント導体を形成する工程を説明するための図である。
【
図17】第3実施形態によるセグメント導体を形成する工程を説明するための図である。
【
図18】第1~第3実施形態の第1変形例によるステータ(A)および第2変形例によるステータ(B)の構成を示す図である。
【
図19】第1~第3実施形態の第3変形例によるステータの構成を示す図である。
【
図20】第1~第3実施形態の第4変形例によるステータの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(ステータの全体構造)
図1~
図13を参照して、第1実施形態によるステータ100の構造について説明する。ステータ100は、中心軸線Cを中心に円環形状を有する。なお、ステータ100は、特許請求の範囲の「電機子」の一例である。
【0013】
本願明細書では、「軸方向」とは、
図1に示すように、ステータ100の中心軸線C(ロータ101の回転軸線)に沿った方向(Z方向)を意味する。軸方向の一方側とは、Z2方向側を意味し、軸方向の他方側とは、Z1方向側を意味する。また、「周方向」とは、ステータ100の周方向(A1方向、A2方向)を意味する。また、「径方向」とは、ステータ100の半径方向(R方向)を意味する。また、「径方向内側」とは、径方向に沿ってステータ100の中心軸線Cに向かう方向(R1方向)を意味する。また、「径方向外側」とは、径方向に沿ってステータ100の外に向かう方向(R2方向)を意味する。
【0014】
ステータ100は、ロータ101と共に、回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成される。ステータ100は、
図1に示すように、永久磁石(図示せず)が設けられるロータ101の径方向外側に配置されている。すなわち、第1実施形態では、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。
【0015】
図2に示すように、ステータ100は、ステータコア10と、スロット絶縁部材20と、コイル部30とを備える。スロット絶縁部材20は、スロット12を構成するティース13とコイル部30との間に配置され、ステータコア10とコイル部30とを電気的に絶縁する機能を有する。
図3に示すように、コイル部30は、第1アッセンブリ30a(反リード側コイル)と第2アッセンブリ30b(リード側コイル)とを含む。また、コイル部30は、複数のセグメント導体40からなる。なお、ステータコア10は、特許請求の範囲の「電機子コア」の一例である。また、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bは、特許請求の範囲の「一対の環状アッセンブリ」の一例である。
【0016】
(ステータコアの構造)
図3に示すように、ステータコア10は、中心軸線C(
図1参照)を中心軸とした円筒形状を有する。また、ステータコア10は、たとえば、複数枚の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が軸方向に積層されることにより、形成されている。
【0017】
図4に示すように、ステータコア10は、軸方向に見て円環状を有するバックヨーク11と、バックヨーク11の径方向内側に設けられ、軸方向に延びる複数のスロット12とが設けられている。そして、ステータコア10には、スロット12の周方向両側に複数のティース13が設けられている。スロット12は、径方向外側に設けられたバックヨーク11の壁部11aと、2つのティース13の周方向側面13aとに囲まれた部分である。そして、スロット12には、径方向内側に開口する開口部12aが設けられている。また、スロット12は、軸方向両側のそれぞれに開口している。ティース13は、バックヨーク11から径方向内側に突出するように形成されており、径方向内側の先端部にスロット12の開口部12aを構成する凸部13bが形成されている。
【0018】
開口部12aは、周方向に開口幅W1を有する。ここで、開口幅W1は、ティース13の凸部13bの先端部同士の距離に対応する。また、スロット12のコイル部30が配置される部分の幅W2は、開口幅W1よりも大きい。すなわち、スロット12は、セミオープン型のスロットとして構成されている。ここで、幅W2は、スロット12の周方向両側に配置されているティース13の周方向側面13a同士の距離に対応する。また、スロット12の幅W2は、径方向に亘って略一定である。
【0019】
(コイル部の構造)
図3に示すように、コイル部30は、軸方向他方側(Z2方向側)に設けられた第1アッセンブリ30aと、軸方向一方側(Z1方向側)に設けられた第2アッセンブリ30bとが、軸方向に組み合わされるとともに、接合されて形成されている。
【0020】
また、
図5に示すように、コイル部30は、複数のセグメント導体40の後述する第1脚部71と第2脚部81とが、接合部90において接合されて形成されている。たとえば、接合部90には、導電性接合剤91が設けられており、導電性接合剤91を介して、第1脚部71と第2脚部81とが接合されている。また、コイル部30は、たとえば、波巻きコイルとして構成されている。
図6に示すように、コイル部30は、たとえば、8ターンのコイルとして構成されている。すなわち、コイル部30は、スロット12内に、径方向に8個のセグメント導体40が並列して配置されて構成されている。
【0021】
図7に示すように、コイル部30は、平角導線31により構成されている。たとえば、
図7(A)に示すように、平角導線31は、略矩形状の断面を有し、銅またはアルミニウムにより構成されている内部導体31a、および、内部導体31aの外周表面を被膜するとともに絶縁性を有する材料(たとえば、ポリイミド等)により構成されている絶縁被膜31bにより構成されている。なお、平角導線31は、特許請求の範囲の「導線」の一例である。また、内部導体31aは、特許請求の範囲の「導体部分」の一例である。また、絶縁被膜31bは、特許請求の範囲の「被膜」の一例である。
【0022】
図8に示すように、コイル部30では、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。具体的には、コイル部30は、3相のY結線により接続(結線)されている。すなわち、コイル部30は、U相コイル部30Uと、V相コイル部30Vと、W相コイル部30Wとを含む。そして、コイル部30には、複数(たとえば、2つ)の中性点Nが設けられている。すなわち、コイル部30には、U相コイル部30Uを構成するU相用のセグメント導体40、V相コイル部30Vを構成するV相用のセグメント導体40、および、W相コイル部30Wを構成するW相用のセグメント導体40が含まれる。以下の説明では、U相用のセグメント導体40、V相用のセグメント導体40、および、W相用のセグメント導体40を、単に「複数相のセグメント導体40」として説明する。
【0023】
図2に示すように、コイル部30は、ステータコア10に対して分布巻きにより取り付けられている。すなわち、コイル部30のコイルピッチは1よりも大きく、たとえば、6である。そして、
図9に示すように、1つのスロット12において、同相のセグメント導体40のみが配置されている。たとえば、セグメント導体40は、スロット12に、周方向に沿って、U相、U相、V相、V相、W相、W相…(以下このサイクルを繰り返す)の順で配置されている。これにより、後述する第1渡り部72(第2渡り部82)は、自身の相と異なる相のセグメント導体40が配置されたスロット12を越えるように配置される。そして、径方向に隣り合う第1渡り部72の第1直線部72b同士(第2渡り部82の第2直線部82b同士)が互いに異なる相となる。なお、
図9では、スロット12内にU相のセグメント導体40(第1脚部71および第2脚部81)が配置される例を示しているが、V相またはW相のセグメント導体40の場合であっても、径方向に隣り合う第1渡り部72(第2渡り部82)同士は、互いに異なる相となる。また、複数のスロット12における相の並びは、これに限られない。また、第1実施形態においては、第1渡り部72(第2渡り部82)は、セグメント導体40のうちのステータコア10よりも軸方向外側に配置された部分を意味するものとする。
【0024】
〈第1アッセンブリおよび第2アッセンブリの構造〉
図3に示すように、第1アッセンブリ30aは、複数の第1セグメント導体70(以下、「第1導体70」とする)から構成されている。また、第2アッセンブリ30bは、複数(たとえば、3つ)の動力導体50と、複数(たとえば、2つ)の中性点導体60と、第2セグメント導体80(以下、「第2導体80」とする)とを含む。
【0025】
〈第1導体および第2導体の構造〉
図3に示すように、コイル部30は、ステータコア10の軸方向の一方側(Z2方向側)に配置された第1導体70と、他方側(Z1方向側)に配置された第2導体80とを含む。第1導体70は、軸方向に沿って延びる一対の第1脚部71を含む。第2導体80は、軸方向に沿って延びる一対の第2脚部81を含む。第1脚部71の軸方向の長さL1(
図10参照)は、第2脚部81の軸方向の長さL2(
図11参照)よりも小さい。また、長さL1は、ステータコア10の軸方向の長さL3(端面10aと端面10bとの距離)よりも小さい。また、長さL2は、長さL3よりも小さい。
【0026】
第1脚部71の軸方向の先端部分71aには、径方向内側を向く第1面71bが設けられている。第2脚部81の軸方向の先端部分81aには、径方向外側を向くとともに、第1面71bに径方向に対向する位置に第2面81bが設けられている。そして、
図6に示すように、第1面71bと第2面81bとが、スロット12内において、導電性接合剤91(たとえば、銀ナノペーストを含む接合剤)を介して接合されて接合部90が形成されている。また、複数の接合部90は、径方向から見て、互いにオーバラップするように設けられている。なお、先端部分71aおよび81aは、特許請求の範囲の「脚部の先端部」の一例である。
【0027】
図10に示すように、第1導体70は、一対の第1脚部71のZ2方向側の部分同士を接続するとともに、複数のスロット12に渡るように配置される第1渡り部72を含む。そして、複数相の第1導体70の各々は、互いに異なるスロット12に配置される一対の第1脚部71が第1渡り部72によって接続されることにより、径方向に見てU字状(略U字状)を有するように形成されている。また、第1渡り部72の第1接続部73は、一対の第1脚部71に対して接続されている部分である。
【0028】
また、第1渡り部72は、一対の第1脚部71が延びる方向(軸方向)に対して周方向に折れ曲がる屈曲形状を有する。具体的には、第1渡り部72は、第1渡り部72の中央において屈曲している第1屈曲部72aを有する。また、第1渡り部72は、第1屈曲部72aから一対の第1脚部71側に直線状に延びる一対の第1直線部72bを有する。また、第1屈曲部72aは、軸方向から見て、径方向に1本のセグメント導体40の幅分、階段状に屈曲するクランク状(
図1参照)に形成されている。
【0029】
図11に示すように、複数相の第2導体80の各々は、第1導体70と同様に、一対の第2脚部81同士を接続する第2渡り部82を含む。また、第2渡り部82は、第1渡り部72と同様に、第2屈曲部82aと、一対の第2直線部82bとを有する。また、第2渡り部82の第2接続部83は、一対の第2脚部81に対して接続されている部分である。
【0030】
図7(A)に示すように、第1脚部71(第2脚部81)には、厚みt1を有する絶縁被膜31bが設けられている。厚みt1は、たとえば、同相間絶縁性能(第1脚部71同士の絶縁)を確保することが可能な程度に設定されている。また、
図7(B)に示すように、第1渡り部72(第2渡り部82)には、絶縁被膜31bの外周表面にさらに厚みt2を有する付加絶縁部31cが設けられている。なお、第2渡り部82は、第1渡り部72と同様に構成されているため、第1渡り部72についてのみ説明し、第2渡り部82についての説明を省略する。
【0031】
付加絶縁部31cは、第1渡り部72のうちの少なくとも第1直線部72bに設けられている。たとえば、付加絶縁部31cの厚みt2は、絶縁被膜31bの厚みt1よりも大きい(たとえば、約1.5倍)である。そして、厚みt2に厚みt1を加えた大きさは、異相間絶縁性能を確保することが可能な程度に設定されている。なお、付加絶縁部31cは、絶縁被膜31bと同じ材質(たとえばポリイミド等の絶縁材料)により形成されている。
【0032】
図9に示すように、第1渡り部72は、スロット12よりも軸方向の他方側(Z2方向側)において、径方向に並んで配置されている。ここで、第1渡り部72は、異なる相の第1渡り部72同士が隣り合うように配置されている部分を有する。具体的には、第1渡り部72のうち、一対の第1直線部72bは、異なる相の第1渡り部72の第1直線部72bと(径方向および軸方向に)隣接するように設けられている。
【0033】
また、第1実施形態では、
図12に示すように、径方向に隣り合う第1渡り部72同士の距離D1は、径方向に隣り合う第1脚部71同士の距離D2よりも大きい。ここで、距離D1およびD2とは、内部導体31aの端面同士の距離を意味する。より詳細には、距離D1は、第1直線部72bの内部導体31aの端面同士の距離を意味する。すなわち、第1直線部72b同士が接触している場合には、厚みt1と厚みt2とを合わせた大きさの2倍の大きさが距離D1に対応し、第1脚部71同士が接触している場合には、厚みt1の2倍の大きさが距離D2に対応する。また、径方向に隣り合う第1渡り部72同士の距離D1は、全て略同一の大きさである。また、径方向に隣り合う第1脚部71同士の距離D2は、全て略同一の大きさである。なお、距離D1は、特許請求の範囲の「第1距離」の一例である。また、距離D2は、特許請求の範囲の「第2距離」の一例である。
【0034】
図13に示すように、径方向に配列されている複数の第1渡り部72のうちの最も径方向内側の第1渡り部72の第1脚部71に対する接続部分である第1接続部73は、軸方向に沿って延びている。すなわち、この第1接続部73は、軸方向に対して径方向外側に向かう傾斜角度θは、略0である。なお、傾斜角度θとは、特許請求の範囲の「傾斜度合」の一例である。
【0035】
また、最も径方向内側の第1渡り部72よりも径方向外側に配置された第1渡り部72の第1接続部73は、軸方向に対して径方向外側に向かって傾斜している。これにより、第1渡り部72、第1接続部73および第1脚部71は、周方向に見て、略S字状に形成されている。そして、径方向に並んで配置された第1渡り部72のうち、より径方向外側に配置されている第1渡り部72の第1接続部73の傾斜角度θほど、大きい。また、最も径方向外側の第1渡り部72の傾斜角度θは、90度以下である。
【0036】
[第1実施形態のステータの製造方法]
次に、第1実施形態によるステータ100の製造方法について説明する。
図14には、ステータ100の製造工程のフローチャートが示されている。
【0037】
(セグメント導体の形成工程)
まず、ステップS1において、複数相のセグメント導体40が形成される。すなわち、動力導体50と、中性点導体60と、第1導体70と、第2導体80とが形成される。具体的には、
図10および
図11に示すように、直線状の一対の第1脚部71(第2脚部81)と、一対の第1脚部71(第2脚部81)同士を接続する第1渡り部72(第2渡り部82)とにより構成された第1導体70(第2導体80)が形成される。なお、この工程の説明において、「第1脚部71が延びる方向」とは、
図15中の「E方向」を意味するものとし、「周方向となる方向」とは、
図15中の「F方向」を意味するものとし、「径方向となる方向」とは、
図15中の「G方向」を意味するものとする。
【0038】
ここで、第1実施形態では、径方向となる方向において、一対の第1脚部71(第2脚部81)と第1渡り部72(第2渡り部82)との相対位置が互いに異なる複数の種類の第1導体70(第2導体80)を含む、複数相のセグメント導体40が形成される。ここで、相対位置とは、第1導体70において、第1脚部71の径方向中心の位置P1(
図13参照)と、第1渡り部72の第1直線部72b(第1直線部72bの第1接続部73側の端部)の径方向中心の位置P2との径方向のずれ量である。なお、第2導体80を形成する方法は、第1導体70を形成する方法と同様であるため、第1導体70を形成する方法のみを説明し、第2導体80を形成する方法の説明を省略する。
【0039】
詳細には、径方向となる方向において、第1渡り部72の第1脚部71に対する第1接続部73の傾斜角度θが互いに異なる複数の第1導体70を形成することにより、相対位置が互いに異なる複数の種類の第1導体70を含む、複数相のセグメント導体40が形成される。具体的には、
図15に示すように、絶縁被膜31bが設けられた複数の平角導線31をそれぞれ屈曲させることにより、相対位置が互いに異なる複数の種類の第1導体70を含む、複数相の第1導体70が形成される。
【0040】
まず、
図15に示すように、絶縁被膜31bを有する平角導線31が準備され、この平角導線31が所定の長さに切断される。たとえば、この所定の長さは、ステータコア10の径方向外側に配置されるセグメント導体40を構成する平角導線31ほど大きく、径方向内側に配置されるセグメント導体40を構成する平角導線31ほど小さい。
【0041】
その後、図示しない成形治具に平角導線31が配置され、
図15に示すように、第1渡り部72となる部分が成形治具により屈曲されることにより、第1渡り部72と一対の第1脚部71とを含む第1導体70が形成される。そして、図示しない成形治具により、この第1導体70がステータコア10に配置された際に径方向となる方向に、第1渡り部72が一対の第1脚部71に対してずれるように、成形治具により第1渡り部72が押圧される。これにより、第1渡り部72の一対の第1脚部71に対する第1接続部73が傾斜するように、屈曲される。たとえば、周方向となる方向に見て、第1脚部71と第1接続部73と第1渡り部72とは、S字状(
図13参照)に形成される。この工程において、第1接続部73における傾斜角度θが調整される。たとえば、第1実施形態では、径方向外側に配置される第1導体70ほど、傾斜角度θが大きくなるように成形治具が構成されている。
【0042】
そして、図示しない切削装置により、絶縁被膜31bおよび内部導体31aの一部が切削されることによって、第1脚部71の先端部分71aに第1面71bが形成され、第2脚部81の先端部分81aに第2面81bが形成される。
【0043】
(絶縁部を設ける工程)
ステップS2において、複数相のセグメント導体40のそれぞれの第1渡り部72(第2渡り部82)のうちの、少なくとも、異なる相の第1渡り部72(第2渡り部82)に隣接する部分の絶縁被膜31bの表面に、付加絶縁部31cが設けられる(形成される)。たとえば、全ての第1導体70の渡り部72の第1直線部72bの全体に、付加絶縁部31cが設けられるとともに、全ての第2導体80の渡り部82の第2直線部82bの全体に付加絶縁部31cが設けられる。また、第1屈曲部72aおよび第2屈曲部82aにも、付加絶縁部31cが設けられる。
【0044】
具体的には、第1渡り部72(第2渡り部82)が流動性を有する絶縁材料に浸されるか、第1渡り部72(第2渡り部82)にスプレー等により絶縁材料が塗布されるか、第1渡り部72(第2渡り部82)に熱収縮チューブが装着されるか、または、第1渡り部72(第2渡り部82)に絶縁性のテープが巻き付けられることにより、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが設けられる。
【0045】
好ましくは、第1導体70の第1渡り部72および第2導体80の第2渡り部82に一斉に、付加絶縁部31cが設けられる。
【0046】
(導電性接合剤を塗布する工程)
ステップS3において、第1導体70の先端部分71aおよび第2導体80の先端部分81aの少なくとも一方に導電性接合剤91が塗布される。たとえば、先端部分71aの第1面71bおよび先端部分81aの第2面81bの両方に、導電性接合剤91が塗布される。
【0047】
(環状アッセンブリを形成する工程)
ステップS4において、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bが形成される。第1実施形態では、
図12に示すように、第1渡り部72同士(第2渡り部82同士)の距離D1が、第1脚部71同士(第2脚部81同士)の距離D2よりも大きくなるように、複数相のセグメント導体40を円環状に組み合わせることにより、軸方向に一対の第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bが形成される。
【0048】
たとえば、第1アッセンブリ30aは、ステータコア10のZ2方向側からステータコア10に配置されるセグメント導体40の全てを含む。また、第2アッセンブリ30bは、ステータコア10のZ1方向側からステータコア10に配置されるセグメント導体40の全てを含む。そして、第1アッセンブリ30a(第2アッセンブリ30b)は、複数相のセグメント導体40がステータコア10に配置された際の配列(位置関係)と同様に配列されている。すなわち、8個のセグメント導体40が径方向に並んで配置されているとともに、ステータコア10における複数のスロット12と同様の周方向の配置位置で組み合わされるように、各セグメント導体40が配置されている。
【0049】
(コア脚部絶縁部材をスロットに配置する工程)
ステップS5において、
図2に示すように、スロット絶縁部材20が各スロット12に挿入される。
【0050】
(セグメント導体を配置する工程)
ステップS6において、複数相のセグメント導体40がステータコア10に配置される。具体的には、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bが軸方向両側からステータコア10に向かって軸方向に移動されることにより、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bがステータコア10に配置される。すなわち、第1実施形態では、全ての第1導体70が一斉にステータコア10に配置され、全ての第2導体80が一斉にステータコア10に配置される。
【0051】
ここで、第1実施形態では、径方向に隣り合う互いに異なる相の第1渡り部72の内部導体31a(第2渡り部82の内部導体31a)同士の距離D1が径方向に隣り合う互いに同じ相の第1脚部71の内部導体31a(第2脚部81の内部導体31a)同士の距離D2よりも大きくなり、かつ、第1脚部71および第2脚部81がスロット12内に配置されるように、径方向位置P1とP2との相対位置が互いに異なる複数の種類の複数相の第1導体70(第2導体80)が、ステータコア10の一方側および他方側にそれぞれ配置される。
【0052】
また、複数相の第1導体70(第2導体80)のうちの傾斜角度θが略0の第1接続部73(第2接続部83)を有する第1導体70(第2導体80)が、最も径方向内側に配置され、この第1導体70(第2導体80)から径方向外側に向かって徐々に傾斜角度θが大きい第1接続部73(第2接続部83)を有する第1導体70(第2導体80)が配置されるように、複数の第1導体70(第2導体80)がステータコア10に配置される。すなわち、傾斜角度θが小さい第1接続部73(第2接続部83)を有する第1導体70(第2導体80)ほど、径方向内側に配置され、かつ、傾斜角度θが大きい第1接続部73(第2接続部83)を有する第1導体70(第2導体80)ほど、径方向外側に配置されることにより、距離D1が距離D2よりも大きくなる。
【0053】
そして、
図6に示すように、スロット12内において、第1脚部71の先端部分71aの第1面71bと第2脚部81の先端部分81aの第2面81bとが、径方向に対向するように、複数相の第1導体70(第2導体80)が配置される。
【0054】
(第1脚部と第2脚部とを接合する工程)
ステップS7において、第1脚部71と第2脚部81とが接合される。具体的には、
図6に示すように、加熱装置(たとえば、誘導加熱装置)により、接合部90が加熱されながら、押圧治具110により、接合部90径方向に押圧されることにより、導電性接合剤91が硬化される。詳細には、押圧治具110により、第1渡り部72および第2渡り部82は押圧されずに、接合部90(第1脚部71または第2脚部81)を押圧治具110とバックヨーク11の壁部11aとにより径方向に挟み込むように、接合部90が径方向に押圧される。これにより、径方向に対向して配置されている第1面71bと第2面81bとが径方向に押圧し合う状態となり、硬化される導電性接合剤91により、第1面71bと第2面81bとが接合される。これにより、第1アッセンブリ30aと第2アッセンブリ30bとが電気的に接続され、コイル部30が完成する。その後、ステータ100が完成する。また、ステータ100がロータ101と組み合わされることにより、回転電機102が完成される。
【0055】
[第2実施形態]
次に、
図16を参照して、第2実施形態によるステータ100の製造方法について説明する。この第2実施形態の製造方法では、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bを形成する前に、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが形成されていた第1実施形態の製造方法と異なり、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bが形成された後に、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが形成される。なお、上記第1実施形態と同一の構造および工程については、同じ符号(ステップ番号)を付し、その説明を省略する。
【0056】
図16に示すように、第2実施形態によるステータ100の製造方法では、ステップS1の後に、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bを形成する工程(ステップS101)が実施され、その後、付加絶縁部31cを取り付ける工程(ステップS102)が実施され、それよりも後に、セグメント導体40をステータコア10に配置する工程(ステップS6)が実施される。
【0057】
ステップS101において、付加絶縁部31cが設けられていない状態の第1導体70が組み合わされ、第1アッセンブリ30aが形成され、付加絶縁部31cが設けられていない状態の第2導体80等が組み合わされ、第2アッセンブリ30bが形成される。
【0058】
そして、ステップS102において、第1アッセンブリ30aの第1渡り部72(第2アッセンブリ30bの第2渡り部82)が流動性を有する絶縁材料に浸されるか、または、第1アッセンブリ30aの第1渡り部72(第2アッセンブリ30bの第2渡り部82)にスプレー等により絶縁材料が塗布されるかにより、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが設けられる(取り付けられる)。なお、その他の製造工程は、第1実施形態と同様である。
【0059】
[第3実施形態]
次に、
図17を参照して、第3実施形態によるステータ100の製造方法について説明する。この第3実施形態の製造方法では、セグメント導体40がステータコア10に配置される前に、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが形成されていた第1実施形態および第2実施形態の製造方法と異なり、セグメント導体40がステータコア10に配置された後に、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが形成される。なお、上記第1および第2実施形態と同一の構造および工程については、同じ符号(ステップ番号)を付し、その説明を省略する。
【0060】
図17に示すように、第3実施形態によるステータ100の製造方法では、ステップS1の後に、第1アッセンブリ30aおよび第2アッセンブリ30bを形成する工程(ステップS201)が実施され、それよりも後に、セグメント導体40をステータコア10に配置する工程(ステップS6)が実施され、それよりも後に、付加絶縁部31cを取り付ける工程(ステップS202)が実施される。
【0061】
ステップS201において、付加絶縁部31cが設けられていない状態の第1導体70が組み合わされ、第1アッセンブリ30aが形成され、付加絶縁部31cが設けられていない状態の第2導体80等が組み合わされ、第2アッセンブリ30bが形成される。
【0062】
そして、ステップS202において、ステータコア10から軸方向に突出する第1渡り部72(第2渡り部82)が流動性を有する絶縁材料に浸されるか、または、ステータコア10から軸方向に突出する第1渡り部72(第2渡り部82)にスプレー等により絶縁材料が塗布されるかにより、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cが設けられる(取り付けられる)。なお、その他の製造工程は、第1実施形態と同様である。
【0063】
[上記実施形態の効果]
上記実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
上記実施形態では、径方向に隣り合う互いに異なる相(以下、「異相」という)の渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)が径方向に隣り合う互いに同じ相(以下、「同相」という)の脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくなり、かつ、軸方向の一方側の脚部(71)または軸方向の他方側の脚部(81)の少なくとも一方がスロット(12)に配置されるように、相対位置(P1、P2)が互いに異なる複数の種類の複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)の一方側および他方側にそれぞれ配置する。これにより、必要とされる絶縁距離が比較的大きい異相の渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を大きく構成しながら、必要とされる絶縁距離が比較的小さい同相の脚部(71、81)同士の第2距離(D2)を小さく構成することができる。このため、異相の渡り部(72、82)同士の絶縁性能を確保しながら、少なくとも一方が電機子コア(10)のスロット(12)に配置される脚部(71、81)同士の径方向の第2距離(D2)を小さくすることができる。また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)の一方側および他方側にそれぞれ配置し、軸方向の一方側に配置された脚部(71)と軸方向の他方側に配置された脚部(81)とを接合することにより、軸方向の一方側のみ配置された渡り部(両端部)同士を接合する場合と異なり、スロット(12)内に渡り部(72、82)(渡り部(72、82)となる部分)を通過させる必要がない。このため、スロット(12)の径方向の寸法を第1距離(D1)ではなく、比較的小さい第2距離(D2)に合わせて構成することができるので、スロット(12)が径方向に大型化するのを防止することができる。この結果、電機子コア(10)が径方向に大型化するのを防止することができる。したがって、互いに異なる相の渡り部(72、82)同士の絶縁性能を確保しながら、電機子コア(10)が大型化するのを防止することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)において、相対位置(P1、P2)が互いに異なる複数の種類の複数相のセグメント導体(70、80)を形成することにより、相対位置(P1、P2)が同一の複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)に配置した後に、相対位置(P1、P2)が変化するように成形する場合と異なり、成形するためのスペースを容易に確保することができる。この結果、渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも容易に大きくすることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)は、径方向となる方向において、渡り部(72、82)の脚部(71、81)に対する接続部(73、83)の傾斜度合(θ)が互いに異なる複数のセグメント導体(70、80)を形成することにより、相対位置(P1、P2)が互いに異なる複数の種類のセグメント導体(70、80)を含む、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)である。このように構成すれば、接続部(73、83)の傾斜度合(θ)によって、脚部(71、81)に対する渡り部(72、82)の相対位置(P1、P2)のずれ量を容易に調整することができる。これにより、複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)に配置した際に、渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を、脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも容易に大きく構成することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)は、複数相のセグメント導体(70、80)のうちの傾斜度合(θ)が小さいセグメント導体(70、80)ほど、径方向の一方側に配置され、かつ、傾斜度合(θ)が大きいセグメント導体(70、80)ほど、径方向の他方側に配置されることにより、渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)が脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくなるように、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)である。このように構成すれば、電機子コア(10)に複数のセグメント導体(70、80)が配置された状態で、傾斜度合(θ)が互いに異なる渡り部(72、82)同士を径方向に隣り合うように配置することができる。これにより、径方向に隣り合う渡り部(72、82)同士の接続部(73、83)の角度差を略均一にすることができる。この結果、径方向に隣り合う渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくしながら、径方向に隣り合う渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を略均一にすることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)は、傾斜度合(θ)が0のセグメント導体(70、80)が、最も径方向の一方側に配置され、径方向の一方側から他方側に向かって徐々に傾斜度合(θ)が大きいセグメント導体(70、80)が配置されるように、複数のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)である。このように構成すれば、径方向の一方側に渡り部(72、82)が突出するのを防止しながら、径方向に隣り合う渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)を脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくすることができる。これにより、径方向の一方側に他の部材(101)が配置される場合でも、渡り部(72、82)と他の部材(101)とが機械的に干渉するのを防止することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)は、絶縁性を有する被膜(31b)が設けられた複数の導線(31)をそれぞれ屈曲させることにより、相対位置(P1、P2)が互いに異なる複数の種類のセグメント導体(70、80)を含む、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)である。ここで、一般的には、セグメント導体(70、80)の渡り部(72、82)は、導線(31)が脚部(71、81)に対して屈曲されることにより形成される。この点に着目して、上記実施形態のように構成すれば、複数の導線(31)をそれぞれ屈曲することにより、渡り部(72、82)を脚部(71、81)に対して容易に傾斜させることができる。この結果、導線(31)を屈曲することにより、セグメント導体(70、80)の渡り部(72、82)を形成する際に併せて、渡り部(72、82)を脚部(71、81)に対して傾斜させて、相対位置(P1、P2)を変更することができる。この結果、相対位置(P1、P2)が互いに異なる複数の種類のセグメント導体(70、80)を、容易に形成することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)のそれぞれの渡り部(72、82)のうちの、少なくとも、異なる相の渡り部(72、82)に隣接する部分の被膜(31b)の表面に、絶縁部を設ける工程(S2)をさらに備える。このように構成すれば、脚部(71、81)を構成する導線(31)の被膜(31b)と、渡り部(72、82)を構成する導線(31)の被膜(31b)とを共通化しながら、絶縁部(31c)により渡り部(72、82)の絶縁性能を向上させることができる。この結果、脚部(71、81)を構成する導線(31)の被膜(31b)と、渡り部(72、82)を構成する導線(31)の被膜(31b)とが異なる厚みを有するように、専用の導線を準備する必要がなく、汎用の導線(31)を用いて、絶縁部(31c)により渡り部(72、82)の絶縁性能を向上させることができる。これにより、セグメント導体(70、80)の製造工程を複雑化するのを防止しながら、渡り部(72、82)の絶縁性能を向上させることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、絶縁部(31c)を設ける工程(S2)は、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)の後、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)に先立って、渡り部(72、82)に絶縁部(31c)を設ける工程(S2)であり、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)は、径方向に隣り合う絶縁部(31c)が設けられた渡り部(72、82)の導体部分(31a)同士の距離である第1距離(D1)が径方向に隣り合う脚部(71、81)の導体部分(31a)同士の第2距離(D2)よりも大きくなるように、複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)の一方側および他方側にそれぞれ配置する工程である。ここで、複数相のセグメント導体(70、80)を電機子コア(10)の一方側および他方側にそれぞれ配置した後に、渡り部(72、82)に絶縁部(31c)を設ける場合には、比較的重量が大きい電機子コア(10)とともに、複数相のセグメント導体(70、80)を移動させて、複数相のセグメント導体(70、80)を、絶縁部(31c)を設ける工程(S2)を行う場所に搬送させる必要がある。この結果、電機子(100)の製造設備における搬送装置が大型化すると考えられる。これに対して、上記実施形態では、比較的重量が大きい電機子コア(10)に複数相のセグメント導体(70、80)を配置する前に絶縁部(31c)が設けられるので、電機子コア(10)とは別個に複数相のセグメント導体(70、80)を、絶縁部(31c)を設ける工程(S2)を行う場所に、容易に搬送させることができる。この結果、電機子(100)の製造設備における搬送装置が大型化するのを防止することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)の後で、かつ、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)に先立って、渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)が脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくなるように、複数相のセグメント導体(70、80)を円環状に組み合わせることにより、軸方向に一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を形成する工程(S4)をさらに備え、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)は、一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を軸方向両側から電機子コア(10)に対して軸方向に移動させることにより、一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を電機子コア(10)に配置する工程である。このように構成すれば、環状アッセンブリ(30a、30b)を構成する複数のセグメント導体(70、80)を一括して電機子コア(10)に配置することができるので、セグメント導体(70、80)を個別に電機子コア(10)に配置する場合に比べて、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)の工程数を削減することができる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を形成する工程(S1)の後で、かつ、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)に先立って、渡り部(72、82)同士の第1距離(D1)が脚部(71、81)同士の第2距離(D2)よりも大きくなるように、複数相のセグメント導体(70、80)を円環状に組み合わせることにより、軸方向に一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を形成する工程(S101)と、一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を形成する工程の後、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)に先立って、環状アッセンブリ(30a、30b)に含まれる互いに異なる相の渡り部(72、82)同士の間に、絶縁部(31c)を設ける工程(S2)とをさらに備え、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)は、一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を軸方向両側から電機子コア(10)に対して軸方向に移動させることにより、一対の環状アッセンブリ(30a、30b)を電機子コア(10)に配置する工程である。このように構成すれば、環状アッセンブリ(30a、30b)を構成する複数のセグメント導体(70、80)の各渡り部(72、82)に一括して、絶縁部(31c)を設けることができる。この結果、セグメント導体(70、80)の渡り部(72、82)に、個別に(1つずつ)絶縁部(31c)を設ける場合と異なり、絶縁部(31c)を設ける工程(S2)の工程数が増大するのを防止することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)は、軸方向の一方側に配置された脚部(71、81)の先端部(71a)の第1面(71b)と軸方向の他方側に配置された脚部(71、81)の先端部(81a)の第2面(81b)とが径方向に対向するように、複数相のセグメント導体(70、80)を配置する工程(S6)であり、軸方向の一方側に配置された脚部(71)と軸方向の他方側に配置された脚部(81)とを接合する工程は、渡り部(72、82)を押圧せずに、軸方向の一方側に配置された脚部(71)の先端部(71a)の第1面(71b)と軸方向の他方側に配置された脚部(71、81)の先端部(81a)の第2面(81b)とを径方向に押圧することにより、軸方向の一方側に配置された脚部(71、81)と軸方向の他方側に配置された脚部(71、81)とを接合する工程である。ここで、軸方向の一方側に配置された脚部の先端部と軸方向の他方側に配置された脚部の先端部とを、軸方向の外側から内側に押圧しながら、脚部の先端部同士を接合する場合には、先端部同士から比較的遠方に設けられた渡り部を軸方向に押圧する必要があると考えられる。この場合、接合される部分と押圧される部分とが離れていることに起因して、電機子における接合される部分における押圧力が不均一になりやすくなると考えられる。これに対して、上記施形態のように、第1面(71b)と第2面(81b)とを径方向に押圧することにより、軸方向の一方側に配置された脚部(71)と軸方向の他方側に配置された脚部(81)とを接合すれば、脚部(71、81)の先端部(71a、81a)を直接的に径方向に押圧しながら、脚部(71、81)同士を接合することができる。このため、軸方向に渡り部(72、82)を押圧する場合と異なり、脚部(71、81)同士の接合される部分(90)の近傍において、脚部(71、81)を押圧することができるので、接合される部分(90)における押圧力が不均一になるのを防止することができる。この結果、接合される部分(90)における接合品質を向上させることができる。
【0075】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0076】
(第1変形例および第2変形例)
たとえば、上記実施形態では、接合部90(第1脚部71および第2脚部81の両方)がスロット12内に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図18(A)に示す上記実施形態の第1変形例によるステータ200のように、接合部90の一部がスロット12内に配置されていてもよい。また、
図18(B)に示す上記実施形態の第2変形例によるステータ300のように、接合部90の全体がスロット12の外側に配置されていてもよい。また、接合部90の全体がスロット12の外側に配置されている場合、第1脚部71と第2脚部81とを接合する工程(S7)は、第1脚部71および第2脚部81の径方向両側に押圧部材111が配置された状態で、第1脚部71および第2脚部81が押圧された状態で加熱されることにより、接合部90が形成される。
【0077】
(第3変形例)
また、上記実施形態では、1つのスロット12において、径方向に配列されている複数の第1渡り部72(第2渡り部82)のうち、最も径方向内側の第1渡り部72(第2渡り部82)の傾斜角度θを略0とする例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、最も径方向内側の第1渡り部72(第2渡り部82)の傾斜角度θを略0ではない大きさとしてもよい。たとえば、最も径方向外側の第1渡り部72(第2渡り部82)の傾斜角度θを略0として、径方向内側の第1渡り部72(第2渡り部82)ほど、傾斜角度θを大きくしてもよい。また、
図19の第3変形例のステータ400のように、スロット12における径方向の中央部の渡り部472の傾斜角度を略0として、径方向内側および外側の渡り部472ほど、傾斜角度を大きくしてもよい。
【0078】
(第4変形例)
また、上記実施形態では、円環状の1つの第1アッセンブリ30aに全ての第1導体70が含まれ、円環状の1つの第2アッセンブリ30bに全ての第2導体80が含まれる例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、互いに径が異なる円環状の複数の第1アッセンブリのそれぞれに第1導体70が含まれ、互いに径が異なる円環状の複数の第2アッセンブリのそれぞれに第2導体80が含まれるように、第1アッセンブリおよび第2アッセンブリが形成されてもよい。この場合、
図20に示す第3変形例のステータ100の製造方法のように、第1導体70(第2導体80)同士の機械的干渉を防止するために、傾斜角度が最も大きい第1渡り部72(第2渡り部82)を含む第1アッセンブリ330a(第2アッセンブリ)が、まず、ステータコア10に配置され、その後、傾斜角度が小さい第1渡り部72(第2渡り部82)を含む第1アッセンブリ330b(第2アッセンブリ)が、ステータコア10に配置される。
【0079】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、3相のY結線を形成するように、コイル部30を構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、3相のΔ結線を形成するように、コイル部30を構成してもよいし、2相または4相以上の電力が供給されるようにコイル部30を構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、第1渡り部72(第2渡り部82)に付加絶縁部31cを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、付加絶縁部31cを設けないで、第1渡り部72(第2渡り部82)同士の間に空隙を設けることにより、距離D1を、第1脚部71(第2脚部81)同士の距離D2よりも大きく構成してもよい。また、付加絶縁部31cを設けないで、絶縁被膜31bの厚みを、第1渡り部72(第2渡り部82)に設けられている部分においては、厚みt1に厚みt2を加算した大きさに構成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、第1屈曲部72a(第2屈曲部82a)に付加絶縁部31cを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1屈曲部72a(第2屈曲部82a)同士の距離が十分(距離D1)よりも大きければ、第1屈曲部72a(第2屈曲部82a)に付加絶縁部31cが設けられていなくてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第1直線部72b(第2直線部82b)の全体に付加絶縁部31cを設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1直線部72b(第2直線部82b)のうち、異なる相の第1直線部72b(第2直線部82b)が隣り合うように設けられていない部分があれば、上記部分には付加絶縁部31cを設けなくてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、付加絶縁部31cおよび絶縁被膜31bを、互いに同じ材質により形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、付加絶縁部31cおよび絶縁被膜31bを、互いに異なる材質により形成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第1導体70の一対の第1脚部71は互いに等しい長さ(L1)を有するとともに、第2導体80の一対の第2脚部81は互いに等しい長さ(L2)を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一対の第1脚部を互いに異なる長さ有するように形成し、一対の第2脚部を互いに異なる長さを有するように形成してもよい。この場合、第1導体および第2導体は、それぞれ、J字状(略J字状)を有する。
【0085】
また、上記実施形態では、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ステータは、アウターロータ型の回転電機の一部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ステータコア(電機子コア) 12 スロット
30 コイル部
30a、330a、330b 第1アッセンブリ(環状アッセンブリ)
30b 第2アッセンブリ(環状アッセンブリ) 31 平角導線(導線)
31a 内部導体(導体部分) 31b 絶縁被膜(被膜)
31c 付加絶縁部(絶縁部) 40 セグメント導体
70 第1導体(セグメント導体) 71 第1脚部(脚部)
71a 先端部分(先端部) 71b 第1面
72、472 第1渡り部(渡り部) 73 第1接続部(接続部)
80 第2導体(セグメント導体) 81 第2脚部(脚部)
81a 先端部分(先端部) 81b 第2面
82 第2渡り部(渡り部) 83 第2接続部(接続部)
100、200、300、400 ステータ(電機子)