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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電流制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230926BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20230926BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20230926BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20230926BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
B60W10/26 900
B60L50/16 ZHV
B60L58/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019052138
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020156196
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅大
(72)【発明者】
【氏名】生駒 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】南部 壮佑
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-207312(JP,A)
【文献】実開昭55-109339(JP,U)
【文献】特開昭62-233015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60W 10/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池から出力される電流の電流値に基づいて前記電池から出力される電流を制御する電流制御装置であって、
前記電流値を二乗した電流二乗値を所定の周期ごとに時系列で取得して記憶する二乗値記憶部と、
取得した時系列の複数個の前記電流二乗値を平均して算出した1次平均値を記憶する1次平均値記憶部と、
記憶した複数個の前記1次平均値を平均して算出した2次平均値を記憶する2次平均値記憶部と、
前記1次平均値の算出に使用した前記電流二乗値を前記二乗値記憶部から消去すると共に、前記2次平均値の算出に使用した前記1次平均値を前記1次平均値記憶部から消去する消去部と、
前記1次平均値又は前記2次平均値のうち、少なくとも何れか一方が予め設定された制限しきい値以上になると、前記電池から出力される電流を前記制限しきい値未満に制限する電流制御部と、を備える
ことを特徴とする電流制御装置。
【請求項2】
前記制限しきい値は、前記1次平均値又は前記2次平均値のそれぞれに対応して設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項3】
前記制限しきい値は、前記1次平均値より前記2次平均値の方が低くなるように設定されている、
ことを特徴とする請求項2記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記2次平均値が前記制限しきい値以上となったとき、前記1次平均値に対応する前記制限しきい値を、前記2次平均値に対応する前記制限しきい値に置換する、
ことを特徴とする請求項3記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記電流制御部は、前記電池から出力される電流の制限を開始した時点から予め定められた電流制限時間が経過した後、前記電流の制限を解除する、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、前記電池から出力される電流の制限がなされている場合、前記制限しきい値以上となっていた、前記2次平均値が前記制限しきい値よりも低い制限解除しきい値を下回ると、前記電流の制限を解除する、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の電流制御装置。
【請求項7】
前記制限しきい値と前記制限解除しきい値との中間の値を中間しきい値としたとき、
前記電流制御部は、前記電池から出力される電流の制限がなされている場合、前記制限しきい値以上となっていた、前記2次平均値が前記中間しきい値以上前記制限しきい値未満の範囲になると、前記制限しきい値を元の値に戻す、
ことを特徴とする請求項4を引用する請求項6記載の電流制御装置。
【請求項8】
前記電池は、車両を駆動するモータに電流を供給するものであり、
前記車両は、エンジンにより駆動されて発電を行ない前記モータに電流を供給する発電機を備えるものであり、
前記1次平均値又は前記2次平均値のうち、少なくとも何れか一方が予め定められたエンジン始動しきい値以上かつ前記制限しきい値未満になると前記エンジンを始動させて前記発電機から前記モータに電流を供給することで前記電池から出力される電流を抑制させるエンジン制御部を更に備え、
前記エンジン始動しきい値は、前記制限しきい値よりも小さい値に設定されている、
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の電流制御装置。
【請求項9】
前記エンジン始動しきい値は、前記1次平均値および前記2次平均値のそれぞれに対応して設定されている、
ことを特徴とする請求項8記載の電流制御装置。
【請求項10】
前記エンジン始動しきい値は、前記1次平均値より前記2次平均値の方が低くなるように設定されている、
ことを特徴とする請求項9記載の電流制御装置。
【請求項11】
前記エンジン制御部は、前記2次平均値が前記エンジン始動しきい値以上かつ前記制限しきい値未満となったとき、前記1次平均値に対応する前記エンジン始動しきい値を、前記2次平均値に対応する前記制限しきい値に置換する、
ことを特徴とする請求項10記載の電流制御装置。
【請求項12】
前記エンジン制御部は、前記発電機から前記モータへの電流の供給が開始された時点から予め定められた発電時間が経過した後、前記エンジンを停止する、
ことを特徴とする請求項8から11の何れか1項記載の電流制御装置。
【請求項13】
前記エンジン制御部は、前記発電機から前記モータへの電流の供給がなされている場合、前記エンジン始動しきい値以上となっていた、前記1次平均値又は前記2次平均値のうち、少なくとも何れか一方が前記エンジン始動しきい値よりも低いエンジン停止しきい値を下回ると、前記エンジンを停止する、
ことを特徴とする請求項8から11の何れか1項記載の電流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池からモータなどの負荷に出力される電流を制限する電流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池(以下バッテリという)から供給される電力によって駆動される電気モータが搭載された電動車や、電気モータに加え発電機を駆動するエンジンを備えるハイブリッド車が提供されている。
このようなバッテリを搭載した車両においては、バッテリからモータなどの負荷に供給される電流を制限する電流制御装置が設けられている。
電流制御装置は、バッテリから出力される電流が過大になり過ぎると、その電流を制限することでバッテリの電圧低下やバッテリから電流を負荷に供給する高電圧配線の損傷を防止し、また、バッテリにつながるモータ等の高電圧部品や、コンタクタ等のバッテリ内部部品の保護を図るものである。
このような電流制御装置として、特許文献1には、電池から放電される電流値の二乗値を時系列に沿って積算して電流二乗積算値を算出し、電流二乗算出値がしきい値を上回ると、電池から放電される電流を制限するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-149181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、電流二乗積算値を算出するに際し、一定の時間範囲にわたる電流の二乗値を記憶媒体上に大量に記憶しておく必要がある。
例えば、10msの周期で1s間の電流二乗積算値を算出する場合、1s/10ms=100個の電流の二乗値を記憶媒体上に常に記憶させておかねばならない。したがって、10s間、100s間,1000s間の電流二乗積算値を算出する場合は、それぞれ1000個、1万個、10万個の電流の二乗値を記憶させなければならず、記憶媒体の記憶領域を無駄に消費し、電流制限を行なうための処理負荷が過大となる不利がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、記憶媒体の消費量や電流制限を行なうための処理負荷を抑制する上で有利な電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、電池から出力される電流の電流値に基づいて前記電池から出力される電流を制御する電流制御装置であって、前記電流値を二乗した電流二乗値を所定の周期ごとに時系列で取得して記憶する二乗値記憶部と、取得した時系列の複数個の前記電流二乗値を平均して算出した1次平均値を記憶する1次平均値記憶部と、記憶した複数個の前記1次平均値を平均して算出した2次平均値を記憶する2次平均値記憶部と、前記1次平均値の算出に使用した前記電流二乗値を前記二乗値記憶部から消去すると共に、前記2次平均値の算出に使用した前記1次平均値を前記1次平均値記憶部から消去する消去部と、前記1次平均値又は前記2次平均値のうち、少なくとも何れか一方が予め設定された制限しきい値以上になると、前記電池から出力される電流を前記制限しきい値未満に制限する電流制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バッテリから過大な出力電流が供給されることを抑制することでバッテリや高電圧配線を保護できることは無論のこと、1次平均値の算出に使用した電流二乗値を二乗値記憶部から消去すると共に、2次平均値の算出に使用した1次平均値を1次平均値記憶部から消去するため、従来のように電流二乗積算値を算出するに際し、一定の時間範囲にわたる電流の二乗値を記憶媒体上に大量に記憶しておく場合に比較して記憶媒体の消費量が少なくて済み、電流制限を行なうための処理負荷を軽減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る車両の概略構成図である。
図2】第1の実施の形態に係る車両のシステム構成図である。
図3】(A)は電池電流値の時系列データを示す図、(B)は電流二乗値の時系列データを示す図、(C)は1次平均値の時系列データを示す図、(D)は2次平均値の時系列データを示す図である。
図4】第1の実施の形態における制限しきい値およびエンジン始動しきい値と連続通電時間との関係を示す線図である。
図5】第1の実施の形態における制限しきい値の置換を説明する線図である。
図6】第1の実施の形態における制限しきい値、制限解除しきい値、エンジン始動しきい値、エンジン停止しきい値と連続通電時間との関係を示す線図である。
図7】第1の実施の形態におけるエンジン始動しきい値の置換を説明する線図である。
図8】第1の実施の形態における電流制御装置の動作を示すフローチャートである。
図9】第2の実施の形態における置換された制限しきい値を元の値に戻す動作を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態では、車両がエンジン、モータ、モータ駆動用のバッテリを搭載しバッテリが外部充電装置によって充電可能なプラグインハイブリッド車である場合について説明するが、本発明は、ハイブリッド車、あるいは、モータとバッテリを搭載しモータのみで車両を走行させる電気自動車にも無論適用される。
【0009】
図1は、実施の形態にかかる電流制御装置が適用される車両10の構成を示す説明図である。
車両10は、エンジン12、トランスミッション14、クラッチ16、モータ18、発電機20、発電機インバータ22、モータインバータ24、バッテリ(電池)26、電流検出部28、ECU30などを含んで構成されている。
エンジン12は、発電機20を駆動して発電させるとともに、クラッチ16の締結時にトランスミッション14を介して駆動輪32(例えば前輪)を駆動するものである。
クラッチ16は、発電機20とトランスミッション14との間に設けられエンジン12の駆動力の伝達を断接切換えするものである。
モータ18は、バッテリ26から電流が供給される負荷であり、電流が供給されることで回転駆動され、トランスミッション14を介して駆動輪32を駆動するものである。なお、図中符号33は従動輪を示す。
発電機20は、エンジン12により駆動され発電を行い、発電した電力(電流)を、発電機インバータ22を介してバッテリ26に供給してバッテリ26を充電し、あるいは、モータインバータ24を介してモータ18に供給する。
【0010】
発電機インバータ22は、発電機20により発電した三相交流電力を直流電力に変換するものである。
発電機インバータ22には、発電機20を制御する発電機コントロールユニット20Aが内蔵されており、発電機コントロールユニット20AはECU30からの制御信号に基づいて発電機20の出力(発電電力)を制御する。
すなわち、発電機インバータ22は、ECU30からの制御信号に基づいて発電機20から発電機インバータ22を介してバッテリ26あるいはモータ18に供給される発電機20の出力電流を制御する。
【0011】
モータインバータ24は、バッテリ26あるいは発電機インバータ22から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ18に供給するものである。
モータインバータ24には、モータ18を制御するモータコントロールユニット24Aが内蔵されており、モータコントロールユニット24AはECU30からの制御信号に基づいてモータ18の出力を制御する。
すなわち、モータコントロールユニット24Aは、ECU30からの制御信号に基づいてバッテリ26からモータインバータ24を介してモータ18に供給されるバッテリ26の出力電流を制御する。
【0012】
バッテリ26は、リチウムイオンバッテリなどの二次バッテリ(バッテリセル)を複数備えたバッテリモジュールを複数備えて構成されている。
また、バッテリ26には、バッテリセルの充放電状態(SOC)や温度などを監視し、バッテリセルのバランシング放電を行なうセル制御ユニット(不図示)が設けられている。
【0013】
電流検出部28は、バッテリ26から出力される出力電流およびバッテリ26に入力される入力電流を検出し、検出結果をECU30に供給するものである。
バッテリ26からモータインバータ24を介してモータ18に供給される出力電流は正の値で示され、発電機20から発電機インバータ22を介してバッテリ26に入力される入力電流は負の値で示される。
また、バッテリ26、電流検出部28、モータインバータ24、モータ18は、電力供給用の高電圧配線(高電圧ケーブル)25によって接続されている。
【0014】
ECU30は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
ECU30は、CPUが制御プログラムを実行することにより、車両10全体の制御を行なうことに加え、発電機コントロールユニット22Aおよびモータコントロールユニット24Aを制御すると共に、エンジン12の始動、停止を制御するものであり、本発明の電流制御装置30Aを構成している。
また、ECU30に含まれるRAMは、ECU30により後述する1乃至N次平均値A1-A5を算出する際にデータが記憶される記憶媒体を構成し、言い換えると、後述する二乗値記憶部36、1次乃至4次平均値記憶部40A-40Dを構成している。
なお、記憶媒体としてRAM以外の従来公知の様々な記憶媒体が使用可能である。
【0015】
図2は、電流制御装置30Aの機能的構成を示すブロック図である。
ECU30は、エンジン12、発電機インバータ22、モータインバータ24、バッテリ26、電流検出部28と接続され、これらの機器の検出情報および作動情報が入力される。
【0016】
また、ECU30は、上記機器からの各種検出量及び各種作動情報に基づいて、車両10の走行に必要な車両要求出力を算出し、エンジン12、クラッチ16、発電機インバータ22、モータインバータ24に制御信号を送信して、走行モード(EVモード、シリーズモード、パラレルモード)を切り換えるとともに、エンジン12、モータ18、発電機20の出力を制御する。
【0017】
ここで、ハイブリッド車両10の走行モードについて説明する。
EVモードでは、エンジン12を停止し、バッテリ26から供給される電力によってモータ18を駆動して走行させる。また、バッテリ26からモータ18に供給される電力がモータ18に対する要求出力に足りない場合は、次に説明するシリーズモードに切り替えてエンジン12を始動し発電機20によって発電された電力もモータ18の駆動に用いる。
シリーズモードでは、クラッチ16を切断し、エンジン12の駆動力を全て発電機20に付与する。そして、発電機20によって発電された電力によりモータ18を駆動して走行させる。この時、発電機20の発電電力がモータ18に対する要求出力に足りない場合は、バッテリ26に蓄電された電力もモータ18の駆動に用いる。また、発電機20の発電電力がモータ18に対する要求出力よりも大きい場合には、余剰電力をバッテリ26に供給してバッテリ26を充電する。
【0018】
パラレルモードでは、エンジン12の動力とモータ18の動力とを併せて駆動輪32を駆動させる。すなわち、クラッチ16を接続し、エンジン12の動力をトランスミッション14を介して駆動輪32を駆動させるとともに、エンジン12により発電機20を作動させて発電した電力およびバッテリ26から供給される電力によってモータ18を駆動して走行させる。
ECU30は、高速走行時のように、エンジン12の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、すなわち中低速走行時には、バッテリ26の充電率に基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
また、ECU30は、バッテリ26の充電率が許容範囲より低下したときには、シリーズモードでエンジン12を駆動して発電機20により発電を行い、バッテリ26を充電させる。
なお、以下の動作説明では、車両10はEVモードで走行しており、バッテリ26の出力電流の状況によって走行モードをシリーズモードに切り替える場合について説明する。
【0019】
ECU30は、CPUが制御プログラムを実行することにより、電流検出部28で検出された電流値に基づいてバッテリ26から出力される電流を制限する電流制御装置30Aとして機能する。
電流制御装置30Aは、二乗値算出部34、二乗値記憶部36、1次乃至5次平均値算出部38A-38E、1次乃至4次平均値記憶部40A-40D、消去部42、電流制御部44、エンジン制御部46を含んで構成されている。
二乗値算出部34は、図3(A)、(B)、(C)に示すように、電流検出部28で検出された電流値iを二乗した電流二乗値iを所定周期(本実施の形態では10ms)ごとに時系列に算出するものである。
二乗値記憶部36は、二乗値算出部34で算出された複数の時系列の電流二乗値iを取得して記憶するものである。
1次平均値算出部38Aは、二乗値記憶部36に記憶された複数の時系列の電流二乗値iを第1の時間範囲Δt1で平均した1次平均値A1を算出するものである。
本実施の形態では、所定周期を10msとし第1の時間範囲Δt1を100msとし、したがって、1次平均値A1は10個の電流二乗値iの平均値となる。
そのため、二乗値記憶部36で記憶する電流二乗値iは10個で足りる。
【0020】
1次平均値記憶部40Aは、1次平均値算出部38Aで算出された複数の1次平均値A1を時系列に取得して記憶するものである。
2次平均値算出部38Bは、図3(D)に示すように、1次平均値記憶部40で記憶された複数の時系列の1次平均値A1を第1の時間範囲Δt1のn倍(nは2以上の自然数であり本実施の形態では10倍)である第2の時間範囲Δt2(本実施の形態では1s)で平均した2次平均値A2を算出するものである。
そのため、1次平均値記憶部40Aで記憶する1次平均値A1は10個で足りる。
【0021】
2次平均値記憶部40Bは、2次平均値算出部38Bで算出された複数の2次平均値A2を時系列に取得して記憶するものである。
3次平均値算出部38Cは、2次平均値記憶部40Bで記憶された複数の時系列の2次平均値A2を第2の時間範囲Δt2のn倍(nは2以上の自然数であり本実施の形態では10倍)である第3の時間範囲Δt3(本実施の形態では10s)で平均した3次平均値A3を算出するものである。
そのため、2次平均値記憶部40Bで記憶する2次平均値A2は10個で足りる。
【0022】
3次平均値記憶部40Cは、3次平均値算出部38Cで算出された複数の3次平均値A3を時系列に取得して記憶するものである。
4次平均値算出部38Dは、3次平均値記憶部40Cで記憶された複数の時系列の3次平均値A3を第3の時間範囲Δt3のn倍(nは2以上の自然数であり本実施の形態では10倍)である第4の時間範囲Δt4(本実施の形態では100s)で平均した4次平均値A4を算出するものである。
そのため、3次平均値記憶部40Cで記憶する3次平均値A3は10個で足りる。
【0023】
4次平均値記憶部40Dは、4次平均値算出部38Dで算出された複数の4次平均値A4を時系列に取得して記憶するものである。
5次平均値算出部38Eは、4次平均値記憶部40Dで記憶された複数の時系列の4次平均値A4を第4の時間範囲Δt4のn倍(nは2以上の自然数であり本実施の形態では10倍)である第5の時間範囲Δt5(本実施の形態では1000s)で平均した5次平均値A4を算出するものである。
そのため、4次平均値記憶部40Dで記憶する4次平均値A4は10個で足りる。
したがって、平均値の次数が高くなるほど長時間の時間範囲の電流二乗値の平均値が得られることになる。
また、各平均値算出部がそれぞれ平均値を算出するにあたっては必要最小限の平均値のデータ(例えば10個)が記憶媒体に記憶されていればよく、1次平均値算出部38Aが1次平均値A1を求めた後であれば、それに使用した電流二乗値iの平均値10個は削除すればよく、また、2次以降の平均値算出部がn+1次の平均値を求めた後であれば、それに使用したn次の平均値10個は削除すればよいことになる。
消去部42は、二乗値記憶部36、1次乃至4次平均値記憶部40A-40Dに記憶されていた電流二乗値i、1次乃至4次平均値A1-A4を消去するものである。
具体的には、1次平均値算出部38Aで1次平均値A1が算出されると、二乗値記憶部36に記憶されていた10個の電流二乗値i、言い換えると、1次平均値A1の算出に使用された10個の電流二乗値iは消去部42によって消去される。
また、2次平均値算出部38Bで2次平均値A2が算出されると、1次平均値記憶部40Aに記憶されていた10個の1次平均値A1、言い換えると、2次平均値A2の算出に使用された10個の1次平均値A1は消去部42によって消去される。
また、3次平均値算出部38Cで3次平均値A3が算出されると、2次平均値記憶部40Bに記憶されていた10個の2次平均値A2、言い換えると、3次平均値A3の算出に使用された10個の2次平均値A2は消去部42によって消去される。
以下同様に、3次平均値記憶部40Cに記憶されていた10個の3次平均値A3、4次平均値記憶部40Dに記憶されていた10個の4次平均値A4は消去部42によって消去される。
なお、所定周期、1次平均値A1を算出するための電流二乗値iの数、各時間範囲Δt1-Δt5、2次乃至5次平均値A2-A5を算出するための平均値のデータの数は上記の数値に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0024】
本実施の形態では、二乗値算出部34により電流二乗値iを算出し、1次乃至5次平均値算出部38A-38Eにより1次乃至5次平均値A1-A5を算出する場合について説明するが、本発明の電流制限装置30Aは、少なくとも電流二乗値i、1次、2次平均値A1、A2を算出し、記憶部として、二乗値記憶部36、1次、2次平均値記憶部40A、40Bがあれば足りる。
また、6次以上の平均値算出部、平均値記憶部を更に設けても良く、平均算出部、平均値記憶部の数を増やすほど長時間の時間範囲の平均値を得ることができる。
言い換えると、電流制御装置30Aは、1次平均値算出部38Aと、Nを1から始まる連続した2つ以上の整数としたとき、N次平均値を時系列に取得すると共に、取得した時系列のN次平均値を第Nの時間範囲ΔtNのn倍(nは2以上の自然数)である第(N+1)の時間範囲Δt(N+1)で平均した(N+1)次平均値A(N+1)を算出する少なくとも1つ以上の(N+1)次平均値算出部とを備えている。また、それら1つ以上の(N+1)次平均値算出部に対応した次数の平均値記憶部を備えている。
【0025】
電流制御部44は、1次乃至5次平均値A1-A5の何れか1つが予め定められた制限しきい値以上になるとバッテリ26から実際に出力される出力電流(実電流)をリアルタイムで制限しきい値未満に制限するものであり、本実施の形態では、電流制御部44がモータインバータ24(モータコントロールユニット24A)を制御することでバッテリ26の出力電流を制限する。
【0026】
ここで、制限しきい値について説明する。
図4はバッテリ26とモータ18との間をモータインバータ24を介して接続する高電圧配線25の仕様と、制限しきい値と、後述するエンジン12始動しきい値との関係を模式的に示す線図である。
横軸は連続通電時間(秒)を示し、縦軸は電流二乗値iおよび電流二乗値iの平均値(A)を示す。
実線は高電圧配線25の仕様、すなわち、高電圧配線25に流すことが許容される電流二乗値iの上限値を示しており、本実施の形態では、連続通電時間が長くなるほど許容される電流二乗値iの上限値が低下する傾向となっている。
すなわち、大電流の場合は短時間で高電圧配線の発熱限界に達し、小電流の場合でも長時間継続した場合は発熱限界に達するためである。
ここで、高電圧配線25に電流が流れた場合の発熱量は、電流二乗値i(A)×抵抗値(Ω)×時間(s)で示される。
なお、高電圧配線25の性能によっては、一定の連続通電時間以上においては上限値が横ばいになるなど種々の仕様があり得る。
【0027】
本実施の形態では、一点鎖線で示す制限しきい値は、許容される電流電流二乗値iの上限値に定数(例えば0.9)を乗算した値として設定されている。
また、二点鎖線で示す後述するエンジン始動しきい値は、許容される電流二乗値iの上限値に定数(例えば0.8)を乗算した値として設定され、制限しきい値よりもエンジン始動しきい値は低い値である。
したがって、本実施の形態では、制限しきい値、エンジン始動しきい値は、平均値の次数が高くなるにつれて次第に低くなるように設定されている。
また、本実施の形態では、1次乃至5次平均値A1-A5のうち、1次平均値A1を除く残りの2次乃至5次平均値A2-A5に対応してそれぞれ制限しきい値が設定されているが、1次平均値A1に対応して制限しきい値を設定してもよいことは無論である。
すなわち、図4において、横軸の連続通電時間の1s,10s、100s、1000sのそれぞれに対応して合計4つの制限しきい値および合計4つのエンジン始動しきい値が設定されており、制限しきい値、エンジン始動しきい値は、平均値の次数が高くなるにつれて次第に低くなるように設定されている。
なお、図4において制限しきい値、エンジン始動しきい値を示す線は連続的に描かれているが、実際に使用される制限しきい値、エンジン始動しきい値は、連続通電時間の1s、10s、100s、1000sのそれぞれに対応する1つの値として決定されている。なお、連続通電時間は上記の値に限定されるものではなく任意に設定可能である。
また、制限しきい値、エンジン始動しきい値は、上記許容される電流二乗値iの上限値に定数を乗算して得ることに限定されず、一定値を減算するなど種々の方法で設定すればよい。
【0028】
本実施の形態では、電流制御部44は、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかが制限しきい値以上となったとき、当該次数および当該次数より低い次数の平均値に対応する制限しきい値を当該次数より1つ上の次数の平均値に対応する制限しきい値に置換する。
例えば、図5に示すように、黒点で示すように、2次平均値A2(時間範囲Δt2:1s)は2次平均値A2に対応する制限しきい値を下回っているが、3次平均値A3(時間範囲Δt3:10s)が、3次平均値A3に対応する制限しきい値以上となった場合、3次平均値A3に対応する制限しきい値および2次平均値A2に対応する制限しきい値を当該次数(3次)より1つ上の次数の4次平均値A4(時間範囲Δ4:100s)の制限しきい値Xに置換する。したがって、2次、3次、4次平均値A2、A3、A4の全ての制限しきい値が4次平均値A4の制限しきい値Xと同じ値に置換される。
したがって、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大することで次数の低い平均値が次数の高い平均値よりも先行して制限しきい値以上となるような、言い換えると、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大する傾向にある場合に、制限しきい値がより低い値に置換されやすくなる。
なお、上述した電流制御部44による制限しきい値を置換する制御は、省略してもよい。
【0029】
また、電流制御部44は、電流制限を開始した後、電流制限解除条件が成立すると、バッテリ26から出力される出力電流の電流制限を解除する。
電流制限解除条件としては以下の2つが例示される。
(1)電流制御部44は、バッテリ26から出力される電流の制限を開始した時点から予め定められた電流制限時間が経過したと判定されたならば、電流の制限を解除する。
(2)図6に示すように、予め電流の制限を解除する制限解除しきい値(制限しきい値よりも低い値)を設定しておき、電流制御部44は、電流制御部44は、モータ18への電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかが制限しきい値よりも低い制限解除しきい値を下回ったと判定されたとき、バッテリ26の出力電流の制限を解除する。
すなわち、図6に示すように、3次平均値A3がいったん制限しきい値以上となり、電流制御部44によりバッテリ26の出力電流が制限されたのち、3次平均値A3が制限解除しきい値を下回ったならば、電流制御部44により電流の制限を解除する。
なお、制限解除しきい値は、各制限しきい値に対応して設定され、制限解除しきい値は制限しきい値と同様に、高電圧配線25の許容される電流二乗値iの上限値に定数を乗算して決定するなど任意である。
【0030】
エンジン制御部46は、1次乃至N次平均値A1-A5の何れか1つが予め定められたエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満になるとエンジン12を始動させて発電機20からモータ18に電流を供給することでバッテリ26から出力される電流を抑制させるものである。
本実施の形態では、図4に示すように、1次乃至5次平均値A1-A5のうち、1次平均値A1を除く残りの2次乃至5次平均値A2-A5に対応してそれぞれエンジン始動しきい値が設定されているが、1次平均値A1に対応してエンジン始動しきい値を設定してもよいことは無論である。
すなわち、図4において、横軸の連続通電時間の1s,10s、100s、1000sのそれぞれに対応して合計4つのエンジン始動しきい値が設定されている。
図4に示すように、エンジン始動しきい値は、平均値の次数が高くなるにつれて次第に低くなるように設定されている。
なお、エンジン始動しきい値は、制限しきい値と同様に、高電圧配線25の許容される電流二乗値iの上限値に定数を乗算して決定するなど任意である。
【0031】
また、本実施の形態では、エンジン制御部46は、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかがエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満となったとき、当該次数および当該次数より低い次数の平均値に対応するエンジン始動しきい値を当該次数より1つ上の次数の平均値に対応するエンジン始動しきい値に置換する。
そして、置換した制限しきい値に基づいてバッテリ26の出力電流の制限を行なう。
例えば、図7に黒点で示すように、2次平均値A2(時間範囲Δt2:1s)が2次平均値A2に対応するエンジン始動しきい値を下回っているが、3次平均値A3(時間範囲Δt3:10s)が、3次平均値A3に対応するエンジン始動しきい値以上となった場合、3次平均値A3に対応するエンジン始動しきい値および2次平均値A2に対応するエンジン始動しきい値を当該次数(3次)より1つ上の次数の4次平均値A4(時間範囲Δ4:100s)のエンジン始動しきい値Yに置換する。したがって、2次、3次、4次平均値A2、A3、A4の全てのエンジン始動しきい値が4次平均値A4のエンジン始動しきい値Yと同じ値に置換される。
したがって、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大することで次数の低い平均値が次数の高い平均値よりも先行してエンジン始動しきい値以上となるような、言い換えると、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大する傾向にある場合に、エンジン始動しきい値がより低い値に置換される。
なお、上述したエンジン制御部46によるエンジン始動しきい値を置換する制御は、省略してもよい。
【0032】
また、エンジン制御部46は、発電機20による発電を開始した後、エンジン停止条件が成立すると、エンジン12を停止して発電機20による発電を停止する。
エンジン停止条件としては以下の2つが例示される。
(1)エンジン制御部46は、発電機20による発電を開始した時点から予め定められた発電時間が経過したと判定されたならば、エンジン12を停止して発電機20による発電を停止する。
(2)図6に示すように、予めエンジン12を停止するエンジン停止しきい値(エンジン始動しきい値よりも低い値)を設定しておき、エンジン制御部46は、エンジン12が動作している(発電している)場合、エンジン始動しきい値以上となっていた、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかがエンジン停止しきい値を下回ると、エンジン12を停止する。
なお、エンジン停止しきい値は、各エンジン始動しきい値に対応して設定され、エンジン停止しきい値は制限しきい値と同様に、高電圧配線25の許容される電流二乗値iの上限値に定数を乗算して決定するなど任意である。
【0033】
次に図8のフローチャートを参照して電流制御装置30Aの動作について説明する。
予め車両10はEVモードで走行するように設定されているものとする。
車両10の走行中、図8のフローチャートで示す処理が繰り返して実行される。
まず、1次平均値算出部38Aにより電流検出部28で検出された電流値iを二乗した電流二乗値iを所定の所定周期で時系列に取得し1次平均値A1を算出し、次いで、2次乃至5次平均値算出部38A-38Eにより2次乃至5次平均値A2-A5を算出する(ステップS10、S12)。
次いで、電流制御部44は、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかがエンジン始動しきい値未満であるか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14が肯定ならば、バッテリ26の出力電流に対する電流制限およびエンジン12の始動が必要ないため、ステップS10に戻る。
ステップS14が否定ならば、エンジン制御部46は、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかがエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満であるか否かを判定する(ステップS16)。
ステップS16が肯定ならば、エンジン制御部46は、エンジン12を始動して発電機20による発電を開始し発電機20で発電された電流をモータ18に供給することでバッテリ26からの出力電流の抑制を図る(ステップS18)。
次いで、エンジン制御部46は、エンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満となった次数の平均値および当該次数より低い次数の平均値に対応するエンジン始動しきい値を当該次数より1つ上の次数の平均値に対応するエンジン始動しきい値に置換する(ステップS20)。なお、前述したようにエンジン制御部46によるエンジン始動しきい値を置換するステップS20は省略可能である。
次いで、エンジン制御部46は、前述したエンジン停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS22)。
ステップS22が否定ならばステップS22に戻り、ステップS22が肯定ならばエンジン制御部46はエンジン12を停止させ(ステップ24)、ステップS20で置換されていたエンジン始動しきい値を元の値、すなわち初期値に戻し(ステップS26)、ステップS10に戻る。なお、ここで言う初期値とは図4で示されている値をいう。
【0034】
また、ステップS16が否定ならば、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかが制限しきい値以上となっているので、電流制御部44は、バッテリ26の出力電流が、制限しきい値以上となった平均値に対応する制限しきい値未満となるように電流制限を行なう(ステップS28)。
次いで、電流制御部44は、2次乃至5次平均値A2-A5のうち制限しきい値以上となった次数の平均値および当該次数より低い次数の平均値に対応する制限しきい値を当該次数より1つ上の次数の平均値に対応する制限しきい値に置換する(ステップS30)。なお、前述したように電流制御部44による制限しきい値を置換するステップS30は省略可能である。
次いで、電流制御部44は、前述した電流制限解除条件が成立したか否かを判定する(ステップS32)。
ステップS32が否定ならばステップS32に戻り、ステップS32が肯定ならば、電流制御部44はバッテリ26の出力電流の制限を解除し(ステップS36)、ステップS30で置換されていた制限しきい値を元の値、すなわち初期値に戻し(ステップS36)、ステップS10に戻る。なお、ここで言う初期値とは図4で示されている値をいう。
【0035】
以上説明したように本実施の形態によれば、1次乃至5次平均値A1-A5のうち、少なくとも何れか1つが予め設定された制限しきい値以上になると、電流制御部44によってバッテリ26から出力される電流を制限しきい値未満に制限するようにしたので、バッテリ26から過大な出力電流が供給されることを抑制することでバッテリ26や高電圧配線25を保護できることは無論のこと、1次平均値A1の算出に使用した電流二乗値iを二乗値記憶部36から消去すると共に、2次乃至5次平均値A2-A5の算出に使用した1次乃至4次平均値A1-A4を1次平均値記憶部40A-40Dから消去するため、従来のように電流二乗積算値を算出するに際し、一定の時間範囲にわたる電流の二乗値を記憶媒体上に大量に記憶しておく場合に比較して記憶媒体の消費量が少なくて済み、電流制限を行なうための処理負荷を軽減する上で有利となる。
例えば、従来のように、10msの所定周期で1000s間の電流二乗積算値を算出する場合、1000s/10ms=10万個の電流二乗値を記憶媒体上に常に記憶させておかねばならない。
これに対して、本実施の形態では、10msの所定周期で電流二乗値を取得し最大1000sの5次平均値A5を得るためには、1次乃至5次平均値としてそれぞれ10個のデータ、合計50個のデータを記憶媒体上に記憶させておけば足りる。
【0036】
また、本実施の形態では、制限しきい値は、1次乃至5次平均値A1-A5のそれぞれに対応して設定されているので、バッテリ26の出力電流の状況に応じてモータ18への電流制限をきめ細かく行えるので、バッテリ26、高電圧配線25の保護を図りつつ、電流制限による速度の低下を抑制でき、ドライブフィーリングに与える影響を抑制する上で有利となる。
【0037】
また、本実施の形態では、制限しきい値は、平均値の次数が高くなるにつれて次第に低くなるように設定されているので、バッテリ26、高電圧配線25の保護を図りつつ、モータ18への電流供給を確保してドライブフィーリングへの影響を抑制する上でより有利となる。
また、本実施の形態では、電流制御部44は、1次乃至5次平均値A1-A5の何れかが制限しきい値以上となったとき、当該次数および当該次数より低い次数の平均値に対応する制限しきい値を、当該次数より1つ上の次数の平均値に対応する制限しきい値に置換するようにした。
したがって、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大することで次数の低い平均値が次数の高い平均値よりも先行して制限しきい値以上となるような、言い換えると、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大する傾向にある場合に、制限しきい値がより低い値に置換されるため、バッテリ26の出力電流をより大きく制限することができ、バッテリ26、高電圧配線25の保護を図る上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態では、電流制御部44は、バッテリ26から出力される電流の制限を開始した時点から予め定められた電流制限時間が経過した後、電流の制限を解除するようにした。
したがって、電流制限の解除処理を簡単、確実に行なう上で有利となる。
【0039】
また、本実施の形態では、電流制御部44は、モータ18への電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、1次乃至5次平均値A1-A5の何れかが制限しきい値よりも低い制限解除しきい値を下回ると、電流の制限を解除するようにした。
したがって、バッテリ26、高電圧配線25の保護を図りつつ、電流制限の解除処理をきめ細かく行なえ、モータ18への電流供給を確保してドライブフィーリングへの影響を抑制できる。
【0040】
また、本実施の形態では、エンジン制御部46は、1次乃至5次平均値A1-A5の何れか1つが予め定められたエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満になるとエンジン12を始動させて発電機20からモータ18に電流を供給することでバッテリ26から出力される電流を抑制させ、エンジン始動しきい値は、制限しきい値よりも小さい値に設定した。
したがって、1次乃至5次平均値A1-A5が上昇した場合、発電機20により発電された電流をモータ18に供給することで直ちに電流制限を行なうことを回避でき、ドライブフィーリングへの影響を軽減する上で有利となる。
【0041】
また、本実施の形態では、エンジン始動しきい値は、1次乃至5次平均値A1-A5のそれぞれに対応して設定されているので、1次乃至5次平均値A1-A5のそれぞれに対応してモータ18へ供給される電流を確保できるため、ドライブフィーリングへの影響を抑制する上で有利となる。
また、本実施の形態では、エンジン始動しきい値は、平均値の次数が高くなるにつれて次第に低くなるように設定されているので、1次乃至5次平均値A1-A5のそれぞれに対応してモータ18へ供給される電流を確保できるため、ドライブフィーリングへの影響を抑制する上でより有利となる。
【0042】
また、本実施の形態では、エンジン制御部46は、1次乃至5次平均値A1-A5の何れかがエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満となったとき、当該次数および当該次数より低い次数の平均値に対応するエンジン始動しきい値を、当該次数より1つ上の次数の平均値に対応する制限しきい値に置換するようにした。
したがって、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大することで次数の低い平均値が次数の高い平均値よりも先行してエンジン始動しきい値以上となるような、言い換えると、バッテリ26からの出力電流が時間経過と共に増大する傾向にある場合に、エンジン始動しきい値がより低い値に置換される。
そのため、発電機20からモータ18に供給される電流をより大きく確保できるので、バッテリ26の出力電流の電流制限を回避できるため、ドライブフィーリングへの影響を抑制する上で有利となる。
【0043】
また、本実施の形態では、エンジン制御部46は、発電機20からモータ18への電流の供給が開始された時点から予め定められた発電時間が経過した後、エンジン12を停止するようにした。
したがって、エンジン制御部46による発電機20の発電動作の停止処理を簡単、確実に行なう上で有利となる。
【0044】
また、本実施の形態では、エンジン制御部46は、発電機20からモータ18への電流の供給がなされている場合、エンジン始動しきい値以上となっていた、1次乃至5次平均値A1-A5の何れかがエンジン始動しきい値よりも低いエンジン停止しきい値を下回ると、エンジン12を停止するようにした。
したがって、1次乃至5次平均値A1-A5に応じて発電機20の発電の停止処理をきめ細かく行なえ、発電機20からモータ18への電流供給を確保しつつ、エンジン12および発電機20を効率よく動作させる上で有利となる。
【0045】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例である。
第2の実施の形態は、電流制御部44によっていったん置換された制限しきい値を元の値に戻す際の条件が第1の実施の形態と異なっており、その他の点については第1の実施の形態と同様である。
図9に示すように、制限しきい値と制限解除しきい値との中間の値を中間しきい値として設定する。
電流制御部44は、モータ18への出力電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、1次乃至5次平均値A1-A5の何れかが中間しきい値以上制限しきい値未満の範囲になると、制限しきい値を元の値に戻す。
すなわち、第1の実施の形態と同様に、電流制御部44は、2次乃至5次平均値A2-A5の何れかが制限しきい値以上となったとき、当該次数および当該次数より低い次数の平均値に対応する制限しきい値を当該次数より1つ上の次数の平均値に対応する制限しきい値に置換する。
そして、置換した制限しきい値に基づいてバッテリ26の出力電流の制限を行なう。
【0046】
具体的に説明すると、図9に示すように、黒点で示すように、2次平均値A2(時間範囲Δt2:1s)が2次平均値A2に対応する制限しきい値を下回っているが、3次平均値A3(時間範囲Δt3:10s)が、3次平均値A3に対応する制限しきい値以上となった場合、3次平均値A3に対応する制限しきい値および2次平均値A2に対応する制限しきい値を当該次数(3次)より1つ上の次数の4次平均値A4(時間範囲Δ4:100s)の制限しきい値Yに置換する。したがって、2次、3次、4次平均値A2、A3、A4の全ての制限しきい値が4次平均値A4に対応する制限しきい値Yと同じ値に置換される。
【0047】
電流制御部44は、電流制御部44によりモータ18への電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、2次乃至5次平均値の何れかが中間しきい値以上制限しきい値未満の範囲になると、電流制御部44は、制限しきい値を元の値(初期値)に戻す。これによりバッテリ26の出力電流の制限が直ちにあるいは早期に解除されることになる。
これに対して第1の実施の形態では、中間しきい値が設定されていないので、電流制御部44は、制限しきい値以上となっていた、2次乃至5次平均値の何れかが制限解除しきい値を下回るまでバッテリ26の出力電流の制限が解除されない。
したがって、第2の実施の形態によれば、2次乃至5次平均値の何れかが制限解除しきい値を下回らなくても、バッテリ26の出力電流の制限が早期に緩和されるため、バッテリ26、高電圧配線25の保護を図りつつ、モータ18への電流供給を確保してドライブフィーリングへの影響を抑制する上で有利となる。
【0048】
なお、本実施の形態では、二乗値算出部34により電流二乗値iを算出し、1次乃至5次平均値算出部38A-38Eにより1次乃至5次平均値A1-A5を算出する場合について説明したが、本発明の電流制限装置は少なくとも電流二乗値i、1次、2次平均値A1、A2を算出すればよい。
その場合、記憶部としては、二乗値記憶部36、1次、2次平均値記憶部40A、40Bがあれば足り、消去部42によって二乗値記憶部36と1次平均値記憶部40Aに記憶されていた電流二乗値i、1次平均値A1を消去するようにすればよい。
また、その場合、制限しきい値は、1次平均値A1又は2次平均値A2のそれぞれに対応して設定してもよい。
また、その場合、制限しきい値は、1次平均値A1より2次平均値A2の方が低くなるように設定してもよい。
また、その場合、電流制御部44は、2次平均値A2が制限しきい値以上となったとき、1次平均値A1に対応する制限しきい値を、2次平均値A2に対応する制限しきい値に置換してもよい。
また、その場合、電流制御部44は、モータ18への電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、2次平均値A2が制限しきい値よりも低い制限解除しきい値を下回ると、電流の制限を解除してもよい。
また、その場合、電流制御部44は、モータ18への電流の制限がなされている場合、制限しきい値以上となっていた、2次平均値A2が中間しきい値以上制限しきい値未満の範囲になると、制限しきい値を元の値に戻してもよい。
また、その場合、エンジン制御部46は、1次平均値A1又は2次平均値A2のうち、少なくとも何れか一方が予め定められたエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満になるとエンジン12を始動させて発電機20からモータ18に電流を供給することでバッテリ26から出力される電流を抑制させるようにしてもよい。
また、その場合、エンジン始動しきい値は、1次平均値A1および2次平均値A2のそれぞれに対応して設定してもよい。
また、エンジン始動しきい値は、1次平均値A1より2次平均値A2の方が低くなるように設定してもよい。
また、その場合、エンジン制御部46は、2次平均値A2がエンジン始動しきい値以上かつ制限しきい値未満となったとき、1次平均値A1に対応するエンジン始動しきい値を、2次平均値A2に対応する制限しきい値に置換してもよい。
また、その場合、エンジン制御部46は、発電機20からモータ18への電流の供給がなされている場合、エンジン始動しきい値以上となっていた、1次平均値A1又は2次平均値A2のうち、少なくとも何れか一方がエンジン始動しきい値よりも低いエンジン停止しきい値を下回ると、エンジン12を停止してもよい。
【0049】
また、実施の形態では、高電圧配線25の発熱量を考慮して、高電圧配線25に流すことが許容される電流二乗値iの上限値に基づいて制限しきい値、エンジン始動しきい値を設定した場合について説明した。
しかしながら、バッテリ26の発熱量も高電圧配線25と同様に電流二乗値i(A)×抵抗値(Ω)×時間(s)で算出されるので、バッテリ26の発熱量を考慮して、バッテリ26から出力することが許容される電流二乗値iの上限値に基づいて制限しきい値、エンジン始動しきい値を設定するようにしてもよい。
なお、電流制限しきい値およびエンジン始動しきい値を設定したとしても、ショート等で電流を抑制できず配線仕様を超過するような場合は、最終的にバッテリ内のコンタクタをシャットダウンすることで、高電圧配線、モータ等の高電圧部品、コンタクタ等のバッテリ内部部品の保護を図ることができることは無論である。
また、実施の形態では、本発明の電流制御装置30Aが車両に適用された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、バッテリとバッテリから電流が供給される負荷を備える装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 車両
12 エンジン
18 モータ
20 発電機
26 バッテリ(電池)
30A 電流制御装置
36 二乗値記憶部
40A 1次平均値記憶部
40B 2次平均値記憶部
42 消去部
44 電流制御部
46 エンジン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9