(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電子機器の壁掛構造
(51)【国際特許分類】
H04M 1/11 20060101AFI20230926BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H04M1/11 B
H05K5/02 B
H05K5/02 E
(21)【出願番号】P 2019053666
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181994(JP,A)
【文献】米国特許第04588866(US,A)
【文献】特開2005-268942(JP,A)
【文献】米国特許第05807012(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第2016-0000278(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/02- 1/23
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の壁掛構造であって、
電子機器本体と、
前記電子機器本体の底面において壁掛使用する際の上下方向に回動可能に設けられたスタンドと、
前記電子機器本体の底面に形成され、壁に固定された第1の被取付部材に係合する第1の壁掛用取付部と、
前記スタンドの底面に形成され、前記壁に前記第1の被取付部材よりも上方に固定された第2の被取付部材に係合する第2の壁掛用取付部と、を備え、
前記第1の壁掛用取付部は、弾性変形可能な底面を有する舌状凹部と、前記第1の被取付部材を挟み込む挟み込み部と、を有し、
前記第2の壁掛用取付部は、前記第2の被取付部材に係合する係合部を有
し、
さらに、前記電子機器本体の底面及び前記スタンドの底面の一方に形成された係合リブ
と、他方に形成された切欠き部と、を備え、前記スタンドを折り畳んだ状態で前記係合リ
ブが前記切欠き部に係合されることを特徴とする電子機器の壁掛構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の壁掛構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器、例えば電話機において、壁掛状態及び卓上状態の両方で使用可能な壁掛卓上兼用電話機が知られている。壁掛卓上兼用電話機としては、卓上使用の際は電話機本体の底面側に設けられたスタンドを起立させて電話機に角度を持たせて机に載置し、壁掛使用の際はそのスタンドを折り畳んで電話機を壁に掛けるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1では、壁掛使用の際、壁に設置されるスイッチボックスが取り付けられる2つのネジのピッチに合わせて設けられた壁掛け用の上下2つの被取付部材に対し、壁に取り付ける際に上部の位置にあたる係合部は電話機本体のロアケースの裏側に取り付けられるスタンドの裏側に形成され、下部の位置にあたる係合部は電話機本体のロアケースの裏側に形成されている。
【0004】
このような構造の壁掛卓上兼用電話機において、壁に取り付ける場合、上述したように、上部の係合部と下部の係合部を壁に取り付けられた取付部材に引っ掛けて固定されるが、上部の係合部を取付部材に引っ掛ける際に、取付部材を係合部に形成されている弾性係合片に反しかつ弾性係合片に形成されている突部からなる規制片を乗り越えた位置までスライドさせることにより固定が完了する。ユーザの動作的には電話機を上から壁に沿って下にスライドさせることとなる。さらにこのとき同時に下部の係合部も壁に取り付けられた下側の取付部材に引っ掛けて固定する必要がある。
【0005】
しかしながら、このとき上部の取付部材に対して係合部を所定位置までスライドさせようとしたときに規制片を乗り越える必要があるためユーザは強い力や勢いが必要で、スタンドがロアケースから外れてしまうという問題があった。さらには、本来、上部と下部の係合部が壁側のそれぞれの取付部材に係合する必要があるが、上部の係合だけでもある程度固定できてしまうため、上部のみ係合した状態で気付かずに使用し、使用中に係合が外れたり、脚部と本体とが外れて、本体が落下し、最悪の場合は電話機が破損したりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、電子機器を壁に取り付ける際に、スタンドが電子機器本体から外れたり、電子機器本体が落下したりすることを防止する電子機器の壁掛構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明は、以下の態様によって把握される。
本発明に係る態様は、電子機器の壁掛構造であって、電子機器本体と、前記電子機器本体の底面において壁掛使用する際の上下方向に回動可能に設けられたスタンドと、前記電子機器本体の底面に形成され、壁に固定された第1の被取付部材に係合する第1の壁掛用取付部と、前記スタンドの底面に形成され、前記壁に前記第1の被取付部材よりも上方に固定された第2の被取付部材に係合する第2の壁掛用取付部と、を備え、前記第1の壁掛用取付部は、弾性変形可能な底面を有する舌状凹部と、前記第1の被取付部材を挟み込む挟み込み部と、を有し、前記第2の壁掛用取付部は、前記第2の被取付部材に係合する係合部を有し、さらに、前記電子機器本体の底面及び前記スタンドの底面の一方に形成され
た係合リブと、他方に形成された切欠き部と、を備え、前記スタンドを折り畳んだ状態で
前記係合リブが前記切欠き部に係合される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子機器を壁に取り付ける際に、スタンドが電子機器本体から外れたり、電子機器本体が落下したりすることを防止する電子機器の壁掛構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子機器(電話機)を上方右側から見た図であって、スタンドが起立した状態を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子機器(電話機)を上方から見た図であって、スタンドが起立した状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る電子機器(電話機)を後上方右側から見た図であって、スタンドが起立した状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る電子機器(電話機)を後上方右側から見た図であって、スタンドが折り畳まれた状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る電子機器(電話機)を後方から見た図であって、スタンドが折り畳まれた状態を示す。
【
図6】
図5のA-A線断面図であって、スタンドが折り畳まれた状態を示す。
【
図7】
図5のB-B線断面図であって、(a)はスタンドが折り畳まれた状態を、(b)はスタンドが起立した状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明するが、各図において、同一符号は同一又は対応する部分を示す。また、本発明は、以下の説明からも明らかなようにこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において当業者であれば種々の変形が可能である。
【0013】
本実施形態は、電子機器の壁掛構造であって、電子機器本体と、電子機器本体の底面において壁掛使用する際の上下方向に回動可能に設けられたスタンドと、電子機器本体の底面に形成され、壁に固定された第1の被取付部材に係合する第1の壁掛用取付部と、スタンドの底面に形成され、壁に第1の被取付部材よりも上方に固定された第2の被取付部材に係合する第2の壁掛用取付部と、を備え、第1の壁掛用取付部は、弾性変形可能な底面を有する舌状凹部と、第1の被取付部材を挟み込む挟み込み部と、を有し、第2の壁掛用取付部は、第2の被取付部材に係合する係合部を有する。
【0014】
電子機器の壁掛構造は、さらに、電子機器本体の底面及びスタンドの底面の一方に形成された係合リブと、他方に形成された切欠き部と、を備え、スタンドを折り畳んだ状態で係合リブが切欠き部に係合される。
【0015】
本実施形態は、卓上使用及び壁掛使用の両方に対応する電子機器であれば特に限定はないが、以下では、電子機器としての電話機について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る電話機を上方右側から見た図(スタンドが起立した状態)、
図2は同じく電話機を上方から見た図(スタンドが起立した状態)、
図3は同じく電話機を後上方右側から見た図(スタンドが起立した状態)、
図4は同じく電話機を後上方右側から見た図(スタンドが折り畳まれた状態)、
図5は同じく電話機を後方から見た図(スタンドが折り畳まれた状態)、
図6は
図5のA-A線断面図(スタンドが折り畳まれた状態)、
図7は
図5のB-B線断面図((a)はスタンドが折り畳まれた状態、(b)はスタンドが起立した状態)をそれぞれ示している。
【0016】
なお、
図1から
図7では、電話機のうち電話機本体1のロアケース2を図示しており、送受話器は省略している。また、アッパケースの符号は示していない。本実施形態がロアケース2とアッパケースに分かれていない電子機器に適用される場合は、以下の説明において、ロアケース2は、電子機器本体と読み替えるものとする。
【0017】
また、
図1に示すように、以下の説明では、省略した送受話器やアッパケースが配置される側を「前」、スタンド5が設けられている側を「後」、スタンド5が折り畳まれる方向R2を「上」、その反対側を「下」、「前」から見て向かって左側を「左」、「前」から見て向かって右側を「右」とする。これらの方向は互いに相対的なものであり、電話機本体1の配置状態に応じて合理的に解釈されるものである。
【0018】
図1及び
図2に示すように、電話機の概要は、次のとおりである。すなわち、電話機は、電話機本体1のロアケース2と、その底面2a(背面、後面ともいう)に設けられたスタンド5とを備える。スタンド5は、後述するように壁掛使用する際の上下方向に回動可能であるように設けられており、方向R1に向かって起立可能であるとともに、方向R2に向かって折畳み可能である。電話機を卓上使用する際には、スタンド5を所望の角度に起立させて使用し、電話機を壁掛使用する際には、スタンド5を折り畳んで使用する。以下、詳しく説明する。
【0019】
図3に示すように、電話機本体1は、ロアケース2の底面2aには、後側に向かって突出する突出部3が設けられている。突出部3は、電話機本体1に内蔵された各種要素を保護するとともに、スタンド5を折り畳んだ際に、電話機本体1が載置又は配置される机や壁などの対象物に対して平行になるように設定されている。
【0020】
突出部3には、電話機本体1を壁に取り付ける際、あらかじめ壁に固定された図示しない一対の被取付部材のうちの下方に位置する第1の被取付部材Xに係合するための第1の壁掛用取付部4が形成されている。第1の壁掛用取付部4の詳細は、後述する。また、突出部3には、電話機本体1が卓上使用される場合にスタンド5を起立するように回動させるための左右一対の軸受部3a,3aが形成されている。
【0021】
スタンド5は、その基端側に左右一対の軸部5a,5aを有しており、突出部3の左右一対の軸受部3a,3aに回動自在に軸支されている。スタンド5は、電話機本体1を卓上使用する場合には、軸部5a,5aを回動させることにより所望の角度に起立させて使用され、電話機本体1を壁掛使用する場合には、ロアケース2の底面2aに接するように折り畳んだ状態で使用される。スタンド5を起立させる態様としては、無段階で停止できるようにしてもよいし、所定の複数の角度に段階的に係止できるようにしてもよい。
【0022】
スタンド5の軸部5a,5aと反対側の上端側の底面には、電話機本体1を壁に取り付ける際、あらかじめ壁に固定された図示しない一対の被取付部材のうち上方に位置する第2の被取付部材Yに係合するための第2の壁掛用取付部6が形成されている。第2の壁掛用取付部6の詳細は、後述する。
【0023】
また、スタンド5の表面5bの基端側には、その中央寄りに、左右一対の延在部5d,5dが設けられており、延在部5d,5dには、それぞれ、切欠き部5c,5cが形成されている。切欠き部5c,5cは、スタンド5を折り畳んだ際、ロアケース2の底面2aに設けられている左右一対の係合リブ2b,2bに係合する。なお、
図3では、右側の係合リブ2bのみが描画されているが、左側にも同様に係合リブ2bが設けられている。
【0024】
スタンド5を折り畳んだ際に切欠き部5c,5cと係合リブ2b,2bが係合することにより、スタンド5の第2の壁掛用取付部6を上方の第2の被取付部材Yに取り付ける際に、スタンド5の軸部5a,5aがロアケース2の軸受部3a,3aから外れてしまうことを防止することができる。
【0025】
なお、ここでは、スタンド5の側に切欠き部5c,5cを、ロアケース2の底面2aの側に係合リブ2b,2bを設けた態様を示したが、凹凸の関係は、逆であってもよい。すなわち、ロアケース2の底面2a及びスタンド5の延在部5d,5dの一方に係合リブ2b,2bを、その他方に切欠き部5c,5cを設けることにより、スタンド5を折り畳んだ状態で、いずれか一方に設けられた係合リブ2b,2bが他方に設けられた切欠き部5c,5cに挿入されればよい。
【0026】
次に、
図4を参照して、第1の壁掛用取付部4と第2の壁掛用取付部6について、説明する。まず、第1の壁掛用取付部4は、弾性変形可能な底面を有する舌状凹部4aと、舌状凹部4aとの間で第1の被取付部材Xを挟み込んで第1の被取付部材Xに係合する挟み込み部4bとで構成されている。
【0027】
挟み込み部4bは、第1の被取付部材Xを誘い込み易いように、下方に向かって拡開する末広がり状に形成されることが好ましい。また、舌状凹部4aの底面には、第1の被取付部材Xが係合した後に外れてしまうことを阻止するため、外側(後側)に向かって突出する突出阻止部4cが形成されることが好ましい。
【0028】
次に、第2の壁掛用取付部6は、U字状に形成された係合部6aを有しており、スタンド5の表面5bと係合部6aの間に形成された空間に、第2の被取付部材Yを引っ掛けることで係合される。
【0029】
上記のように構成された電話機本体1を壁掛使用する際の壁への取り付け方について、
図5から
図7を参照して説明する。
【0030】
図5は電話機本体1をスタンドが折り畳まれた状態で後方から見た図である。すなわち、この状態で、第1の壁掛用取付部4は第1の被取付部材Xに、第2の壁掛用取付部6は第2の被取付部材Yに係合される。この状態を、
図5のA-A線(中央線)の断面で示すと、
図6のとおりである。
【0031】
図6に示すように、第1の壁掛用取付部4においては、舌状凹部4aの窪みに第1の被取付部材Xが係合される。舌状凹部4aの底面は、その上端がロアケース2の突出部3の枠体から開放されており、第1の被取付部材Xとの当接に対し弾性変形可能に構成される。これにより、電話機本体1を壁に掛ける際の力を吸収することができる。舌状凹部4aの底面の略中央には突出阻止部4cが外側(後方)に向かって突出しており、第1の被取付部材Xからの脱落を阻止する。
【0032】
第2の壁掛用取付部6においては、それによって形成されている空間に第2の被取付部材Yが挿入され、係合部6aに係合される。
【0033】
実際に、電話機本体1を壁に取り付けて使用する場合には、ユーザは、スタンド5をロアケース2の底面2aに付けるように折り畳んで、壁に取り付けられている2つの被取付部材X,Yのうちの下方の第1の被取付部材Xに第1の壁掛用取付部4を係合すると同時に、上方の第2の被取付部材Yには第2の壁掛用取付部6を係合する。
【0034】
このとき、第2の壁掛用取付部6は、第1の壁掛用取付部4の舌状凹部4aや突出阻止部4cのような弾性変形可能な部材ではなく、第2の被取付部材YにU字状の係合部6aを引っ掛けるだけであることから、係合したとしても安定せず、ユーザは第1の壁掛用取付部4を第1の被取付部材Xに係合する必要があることに気付くことになる。また、第2の壁掛用取付部6を取り付ける際には、舌状凹部4aや突出阻止部4cを乗り越える力を必要としないため、スタンド5に無理な力がかからず、スタンド5が外れて電話機本体1が落下することを防止することができる。
【0035】
また、万が一、ユーザが取り付けの際に強い力で下方にスライドさせたとしても、
図5のB-B線(中央線であるA-A線から外側に偏位した線)の断面を示した
図7(a)に示すように、スタンド5の切欠き部5c,5cとロアケース2の係合リブ2b,2bとが係合し、スライド方向の動きを規制するため、スタンド5が外れて本体が落下してしまうことがない。
図7(b)は、スタンド5の切欠き部5c,5cとロアケース2の係合リブ2b,2bの位置関係を示すため、スタンド5が起立した状態で示したものである。
【0036】
ここで、第1の壁掛用取付部4には付勢力に抗して第1の被取付部材Xに取り付けるため、第2の壁掛用取付部6を取り付ける以上の力で取り付ける必要がある。しかしながら、第1の壁掛用取付部4は、電話機本体側1のロアケース2の底面2aに形成されているため、力を入れて取り付けたとしても問題ない。
【0037】
以上のような構成としたことから、本実施形態に係る電子機器の壁掛構造は、電子機器本体を壁に取り付ける際に、スタンドが電子機器本体から外れたり、電子機器本体が落下したりすることを防止することができる。
【0038】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行ったものも含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1…電話機本体(電子機器本体)
2…ロアケース(電子機器本体)
2a…底面
2b…係合リブ
3…突出部
3a,3a…軸受部
4…第1の壁掛用取付部
4a…舌状凹部
4b…挟み込み部
4c…突出阻止部
5…スタンド
5a…軸部
5b…表面
5c…切欠き部
5d…延在部
6…第2の壁掛用取付部
6a…係合部
X…下方の第1の被取付部材
Y…上方の第2の被取付部材