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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/24 20060101AFI20230926BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A47K13/24
E03D9/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019076096
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020171572
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(72)【発明者】
【氏名】加茂 光広
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-209287(JP,A)
【文献】特開2000-134682(JP,A)
【文献】特開2000-204630(JP,A)
【文献】特開2009-125502(JP,A)
【文献】特開昭62-181017(JP,A)
【文献】特開平05-079084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じて振動する振動体と、
振動することにより音を発生させる被振動部材と、
前記振動体と前記被振動部材との間に空間が形成されるように前記振動体と前記被振動部材とを連結し、前記振動体の振動を前記被振動部材に伝達する連結部材と、
前記振動体は、前記制御信号に応じて振動する加振器と前記加振器を収容するケース部材とを含み、
前記連結部材は、前記ケース部材と前記被振動部材とを連結し、
前記ケース部材内には、前記加振器を前記ケース部材の内壁に押し付ける弾性部材が配置されている、便座装置。
【請求項2】
前記被振動部材は、前記制御信号を出力する制御回路を収容する本体を構成する部材であり、
前記制御回路と前記振動体とは、前記本体内の中空部に配置される、
請求項に記載の便座装置。
【請求項3】
前記被振動部材は、便蓋を構成する部材であり、
前記振動体は、前記便蓋内の中空部に配置される、
請求項に記載の便座装置。
【請求項4】
前記被振動部材は、便座を構成する部材であり、
前記振動体は、前記便座内の中空部に配置される、
請求項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記被振動部材は、利用者の操作を受け付ける操作ユニットを構成する部材であり、
前記振動体は、前記操作ユニット内の中空部に配置される、
請求項に記載の便座装置。
【請求項6】
前記連結部材は、前記被振動部材に立設された柱状部材である、
請求項1~のいずれか1項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ空間において、便座装置における各種機能の作動を案内する音、使用者の排泄音をマスキングするための排泄擬似音等を発生させるスピーカーを設置する場合が増えている。このようなスピーカーは便座装置の一部に設置される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、便座装置の本体に左右一対のスピーカーが内蔵されており、本体の背面には左右それぞれに音発生用の貫通穴が設けられたものが記載されている。また、特許文献2には、便座を開閉自在に覆う便蓋(被振動部材)を二重蓋構造で構成し、その二重蓋構造内に振動スピーカー(振動体)を配設し、振動スピーカーにより便蓋を振動させることで音を発生させるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4194817号公報
【文献】特開2009-125502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される構成では、音発生用の貫通穴を設ける必要がある。また、特許文献2に開示される構成では、振動スピーカーと便蓋とを直接接触させるため、振動スピーカーと便蓋との接触面の形状を一致させる必要がある。このように、従来構造においては便座装置の設計自由度が制限されるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、音を発生させる機能を有する便座装置の設計自由度を上げることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の便座装置は、制御信号に応じて振動する振動体と、振動することにより音を発生させる被振動部材と、振動体と被振動部材との間に空間が形成されるように振動体と被振動部材とを連結し、振動体の振動を被振動部材に伝達する連結部材と、を備える。これにより、振動体と被振動部材とを直接接触させることなく振動体の振動を被振動部材に伝達することができるため、被振動部材や振動体の設計自由度を上げることが可能になる。
【0009】
また、本発明の便座装置において、振動体は、制御信号に応じて振動する加振器と加振器を収容するケース部材とを含み、連結部材は、ケース部材と被振動部材とを連結するものであってもよい。これにより、加振器をケース部材で保護することが可能になる。
【0010】
また、本発明の便座装置において、ケース部材内には、加振器をケース部材の内壁に押し付ける弾性部材が配置されていてもよい。これにより、加振器とケース部材をしっかりと接触させることができるため、加振器の振動を効率よく被振動部へ伝達することが可能になる。
【0011】
また、本発明の便座装置において、振動体は、制御信号に応じて振動する加振器を含み、連結部材は、加振器と被振動部材とを連結するものであってもよい。このように、加振器をケース部材で保護する必要がない場合には、連結部材を加振器に直接連結させてもよい。これにより、ケース部材にかかるコストをカットすることが可能になる。
【0012】
また、本発明の便座装置において、被振動部材は、制御信号を出力する制御回路を収容する本体を構成する部材であり、制御回路と振動体とは、本体内の中空部に配置されていてもよい。これにより、制御回路と振動体とを同一の中空部内で接続することができるので、配線構造を簡素化することが可能になる。
【0013】
また、本発明の便座装置において、被振動部材は、便蓋を構成する部材であり、制御回路と振動体とは、便蓋内の中空部に配置されてもよい。これにより、便蓋から音を発生させることが可能になる。
【0014】
また、本発明の便座装置において、被振動部材は、便座を構成する部材であり、制御回路と振動体とは、便座内の中空部に配置されてもよい。これにより、便座から音を発生させることが可能になる。
【0015】
また、本発明の便座装置において、被振動部材は、利用者の操作を受け付ける操作ユニットを構成する部材であり、制御回路と振動体とは、操作ユニット内の中空部に配置されてもよい。これにより、操作ユニットから音を発生させることが可能になる。
【0016】
また、本発明の便座装置において、連結部材は、被振動部材に立設された柱状部材であってもよい。これにより、振動体の振動を被振動部材に伝達する部分の面積を小さく抑えることができるため、設計自由度を効果的に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は第1の実施形態にかかる便座装置の使用状態の一例を示す外観斜視図である。
図2図2は第1の実施形態にかかる本体の内部構成の一例を示す図である。
図3図3は第1の実施形態にかかる本体の中空部内構成の一例を示す図2のIII-III断面図である。
図4図4は第1の実施形態にかかる振動体の設置構造の一例を示す外観斜視図である。
図5図5は第1の実施形態にかかる振動体の設置構造の一例を示す外観側面図である。
図6図6は第1の実施形態にかかる振動体の内部構造及び設置構造の一例を示す側面断面図である。
図7図7は第2の本実施形態にかかる振動体の構造の一例を示す外観斜視図である。
図8図8は第3の実施形態にかかる振動体の設置構造の一例を示す外観斜視図である。
図9図9は第4の実施形態にかかる振動体の設置構造の一例を示す外観斜視図である。
図10図10は第5の実施形態にかかる振動体の設置構造の一例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態の便座装置10の使用状態の一例を示す外観斜視図である。
【0020】
便座装置10は、便器1の上に設置された状態で使用される。ここでは洋式の便器1に便座装置10を設置する例について説明する。本実施形態にかかる便座装置10は、図1に示すように、本体11、便座12、便蓋16、着座センサー17、及び操作ユニット18を備える。
【0021】
本体11は、便器1の後方に固定され、使用者の局部を洗浄する局部洗浄装置や、排泄音をマスキングするための擬音等を発生させる音発生機構等を内蔵するユニットである。便座12は、使用者が着座する部分であり、本体11に対して回転自在に支持されている。便蓋16は、便座12と同様に本体11に対して回転自在に支持され、便座12の上部を覆う部材である。着座センサー17は、本体11に設置され、便座12に着座した使用者を検知するデバイスである。操作ユニット18は、使用者による局部洗浄機能や擬音発生機能等に関する操作を受け付けるユニット18である。
【0022】
図2は第1の実施形態にかかる本体11の内部構成の一例を示す図である。本体11は、その外郭を構成する筐体が樹脂等により構成され、内部に中空部を有している。本体11の中空部には、着座センサー17、制御回路19、局部洗浄装置20、振動体21、配線22a,22b,22c,22d等が配置されている。
【0023】
制御回路19は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を備える。制御回路19は、配線22aを介して着座センサー17と接続しており、着座センサー17からの検知信号を入力する。また、制御回路19は、配線22bを介して操作ユニット18と接続しており、操作ユニット18に設けられた各操作スイッチからの操作信号を入力する。操作ユニット18には、例えば、局部洗浄装置20による洗浄動作を開始させる洗浄作動スイッチ18a、洗浄動作を停止させる洗浄停止スイッチ18b、振動体21の作動による擬音の発生を開始させる擬音発生スイッチ18c、擬音の発生を停止させる擬音停止スイッチ18d等の操作スイッチが設けられている。
【0024】
また、制御回路19は、配線22cを介して局部洗浄装置20と接続し、配線22dを介して振動体21と接続している。制御回路19は、着座センサー17からの検出信号、操作ユニット18からの操作信号等に基づいて、局部洗浄装置20を制御する制御信号、振動体21を制御する制御信号等を出力する。
【0025】
上記のように構成された便座装置10では、振動体21を用いて音を発生させる動作が次のように行われる。例えば、制御回路19は、操作ユニット18の擬音発生スイッチ18cが操作された場合に、振動体21に擬音を発生させるための振動を行わせるための制御信号を出力する。振動体21は制御回路19からの制御信号に応じて振動し、本体11は振動体21の振動を受けて振動する。これにより、本体11から擬音が発生される。このとき、制御回路19は、着座センサー17からの検知信号に基づいて、使用者の着座が検知されていることを振動体21の作動条件としてもよい。あるいは、便座装置10が、擬音を自動で発生させる自動擬音モードを有するものとし、その自動擬音モードでは、制御回路19は、使用者の着座が検知されると振動体21の振動を開始させるものとしてもよい。また、制御回路19は、振動体21の作動中に操作パネル18の擬音停止スイッチ18dが操作されたと判定すると、振動体21の振動を停止させる。また、制御回路19は、使用者の着座が検知されていることを振動体21の作動条件とする場合には、使用者の着座が検知されなくなった場合に振動体21の作動を停止させればよい。
【0026】
図3は第1の実施形態にかかる本体11の中空部内構成の一例を示す図2のIII-III断面図である。本体11の中空部には、振動体21が配置されている。本実施形態にかかる振動体21は、本体11の外郭を構成する筐体の内壁面14に、後述する連結部材32を介して固定される。振動体21の振動が連結部材32を介して本体11(内壁面14)に伝達し、本体11が振動することにより、本体11から擬音等の音が発生する。
【0027】
以下に、図4図6を参照して振動体21の設置構造の詳細な説明を行う。
【0028】
図4は第1の実施形態にかかる振動体21の設置構造の一例を示す外観斜視図である。図5は第1の実施形態にかかる振動体21の設置構造の一例を示す外観側面図である。図6は第1の実施形態にかかる振動体21の内部構造及び設置構造の一例を示す断面図である。
【0029】
本実施形態にかかる振動体21は、図6に示すように、加振器30とケース部材31を含んでいる。振動体21は、連結部材32を介して本体11の内壁面14に固定されている。
【0030】
加振器30は、制御回路19から出力された制御信号に応じて振動するデバイスである。加振器30の具体的な構成は特に限定されるべきものではないが、例えば、制御回路19から出力される制御信号(例えば駆動電流、駆動電圧等の電気信号)に応じて作動する圧電素子等を用いて構成することができる。
【0031】
ケース部材31は、加振器30を収容する部材である。加振器30をケース部材31内に収容し、加振器30の露出を避けることにより、水滴等から加振器30を保護し、加振器30の劣化や故障の発生を抑制することができる。ケース部材31の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば硬質樹脂等の素材から構成される。ケース部材31の素材は、例えば、被振動部材である本体11の筐体と同一であってもよい。
【0032】
連結部材32は、加振器30を収容したケース部材31と内壁面14を連結させる部材である。ケース部材31には、連結部材32を結合するための結合部50が備えられている。結合部50に連結部材32の一端部35を結合し、内壁面14に連結部材32の他端部36を結合する。このように、ケース部材31と内壁面14とを連結部材32を介して連結させることにより、ケース部材31と内壁面14との間には空間40が形成される。加振器30の振動は、ケース部材31と連結部材32を介して内壁面14へ伝達される。
【0033】
ケース部材31の内部には、弾性部材33が配置されている。弾性部材33は、加振器30をケース部材31の内壁面にしっかりと押し付ける作用を有する。加振器30がケース部材31に押し付けられることで、加振器30の振動を効率よくケース部材31と連結部材32を介して本体11(内壁面14)へ伝達させることができる。弾性部材33の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えばゴムやスポンジといった素材から構成される。
【0034】
上記のような構成により、振動体21(ケース部材31)と内壁面14とを直接接触させずに振動体21(加振器30)の振動を被振動部材である本体11に伝達できるため、振動体21の形状と本体11(内壁面14)の形状とを一致させる必要がなくなる。例えば、図3図5、及び図6に示すように、直方体形状の振動体21を本体11の曲面部に設置することが可能となる。このように、本実施形態によれば、振動体21及び被振動部材である本体11の設計自由度が上げることが可能になる。
【0035】
なお、上記においては、連結部材32が本体11及びケース部材31から独立した部材である例を示したが、連結部材32の構成はこれに限定されるものではない。例えば、連結部材32は本体11と一体であってもよいし、ケース部材31と一体であってもよい。
【0036】
以下に他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1の実施形態と同一又は同様の作用効果を有する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0037】
(第2の実施形態)
図7は第2の本実施形態にかかる振動体21の構造の一例を示す外観斜視図である。
【0038】
本実施形態にかかる振動体21は、ケース部材31を用いない点で第1の実施形態と相違する。本実施形態においては、加振器30自体が振動体21となっており、連結部材32は加振器30に直接固定される。連結部材32の一端部35は、加振器30に形成された結合部51に結合し、連結部材32の他端部36は、内壁面14に結合している。
【0039】
このように加振器30へ連結部材32を直接固定してもよい。このような構造とすることにより、ケース部材31と弾性部材33を不要とし、コストカットが可能になる。
【0040】
(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態にかかる振動体21の設置構造の一例を示す図である。
【0041】
本実施形態は、振動体21が便蓋16に設置されている点で第1の実施形態と相違する。本実施形態にかかる便蓋16は、本体11に対して回転自在に支持され、便座12を覆う部材であり、内部に中空部を有している。本実施形態にかかる振動体21は、便蓋16の中空部において便蓋16の筐体の内壁面に固定されている。これにより、振動体21の振動を、連結部材32を介して便蓋16に伝達することができる。
【0042】
上記のような構成とすることにより、便蓋16を被振動部材として利用し、便蓋16から音を発生させることが可能になる。
【0043】
(第4の実施形態)
図9は第4の実施形態にかかる振動体21の設置構造の一例を示す図である。
【0044】
本実施形態は、振動体21が便座12に設置されている点で第1の実施形態と相違する。本実施形態にかかる便座12は、本体11に対して回転自在に支持され、使用者が着座する部材であり、内部に中空部を有している。本実施形態にかかる振動体21は、便座12の中空部において便座12の筐体の内壁面に固定されている。これにより、振動体21の振動を、連結部材32を介して便座12に伝達することができる。
【0045】
上記のような構成とすることにより、便座12を被振動部材として利用し、便座12から音を発生させることが可能になる。
【0046】
(第5の実施形態)
図10は第5実施形態にかかる振動体21の設置構造の一例を示す図である。
【0047】
本実施形態は、振動体21が操作ユニット18に設置されている点で第1の実施形態と相違する。本実施形態にかかる操作ユニット18は、本体11に設置され、使用者による局部洗浄機能や擬音発生機能等に関する操作を受け付けるユニットであり、内部に中空部を有している。本実施形態にかかる振動体21は、操作ユニット18の中空部において操作ユニット21の筐体の内壁面に固定されている。これにより、振動体21の振動を、連結部材32を介して操作ユニット18に伝達することができる。
【0048】
上記のような構成とすることにより、操作ユニット18を被振動部材として利用し、操作ユニット18から音を発生させることが可能になる。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 便器、10 便座装置、11 本体、12 便座、14 内壁面、16 便蓋、17 着座センサー、18 操作ユニット、19 制御回路、20 局部洗浄装置、21 振動体、22a,22b,22c,22d 配線、30 加振器、31 ケース部材、32 連結部材、33 弾性部材、35 一端部、36 他端部、40 空間、50,51 結合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10