(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】車両運転支援方法及び車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20230926BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230926BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20230926BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230926BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/09 V
G08G1/0968 B
G09B29/10 A
G09B29/00 A
(21)【出願番号】P 2019092482
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】志野 達弥
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/09
G08G 1/0968
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1地図データ上に設定された、車両が走行を予定する走行経路に基づいて、前記第1地図データよりも高い精度を有する第2地図データ上に前記車両の運転経路を生成する車両運転支援方法であって、
前記走行経路のうち、前記車両の位置と、前記車両の進行方向に前記車両の位置から第1距離だけ前記走行経路上を進んだ地点とで挟まれる経路を変換対象経路として設定し、前記変換対象経路上の分岐合流地点を抽出し、
抽出された前記分岐合流地点がある場合には、前記分岐合流地点
における車線同士の接続関係を示す分岐合流情報を少なくとも含む属性に基づいて、前記第2地図データから前記変換対象経路に対応する前記運転経路を抽出し、
抽出された前記分岐合流地点がない場合、前記変換対象経路がリセットされた場合、前記走行経路が新たに生成される場合のいずれかに該当する場合には、前記第1地図データ上に設定された前記車両の位置情報に基づいて、前記第2地図データから前記変換対象経路に対応する前記運転経路を抽出すること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運転支援方法であって、
前記走行経路上を、前記車両が進む毎に、走行後の前記車両の位置を基準として、前記変換対象経路を更新し、
更新後の前記変換対象経路に対応する前記運転経路を抽出すること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両運転支援方法であって、
前記車両の進行方向に前記車両の位置から、前記第1距離よりも短い第2距離だけ前記走行経路上を進んだ地点の位置情報に基づいて、前記第2地図データから前記変換対象経路に対応する前記運転経路を抽出すること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両運転支援方法であって、
前記走行経路は、走行経路生成部により設定され、
前記運転経路は、前記走行経路生成部と通信路によって接続された運転経路生成部において生成されること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両運転支援方法であって、
前記走行経路生成部は、先進運転支援システムインタフェース仕様(ADASIS)に定められたプロトコルに基づいた通信によって前記運転経路生成部に前記属性、又は、前記車両の位置情報を送信すること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両運転支援方法であって、
抽出した前記運転経路を、前記車両の走行を自動制御する制御部に送信すること
を特徴とする車両運転支援方法。
【請求項7】
第1地図データ上に、車両が走行を予定する走行経路を設定する走行経路生成部と、
前記第1地図データよりも高い精度を有する第2地図データ上に前記車両の運転経路を生成する、前記走行経路生成部に接続された運転経路生成部と、
を備える車両運転支援装置であって、
前記走行経路生成部は、
前記走行経路のうち、前記車両の位置と、前記車両の進行方向に前記車両の位置から第1距離だけ前記走行経路上を進んだ地点とで挟まれる経路を変換対象経路として設定し、前記変換対象経路上の分岐合流地点を抽出し、
抽出された前記分岐合流地点がある場合には、抽出した前記分岐合流地点
における車線同士の接続関係を示す分岐合流情報を少なくとも含む属性を前記運転経路生成部に送信し、
抽出された前記分岐合流地点がない場合、前記変換対象経路がリセットされた場合、前記走行経路生成部が起動直後の場合のいずれかに該当する場合には、前記第1地図データ上に設定された前記車両の位置情報を前記運転経路生成部に送信し、
前記運転経路生成部は、
前記走行経路生成部より受信した前記属性、又は、受信した前記車両の位置情報に基づいて、前記第2地図データから前記変換対象経路に対応する前記運転経路を抽出すること
を特徴とする車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援方法及び車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置と高精度地図情報管理装置とを備えた自動運転可否通知システムであって、ナビゲーション装置で生成した、車両が走行を予定する走行経路の中から高精度地図データが対応している区間を抽出し、走行経路よりも高精度の運転経路を生成するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、高精度地図情報管理装置が有する高精度地図データは、ナビゲーション装置が有する地図データと比較してより高い精度を有している。そのため、走行経路の中から高精度地図データが対応している区間を抽出するためには、走行経路を高精度地図データ上に投影する必要がある。
【0005】
一般に、ナビゲーション装置及び高精度地図情報管理装置が保持又は処理できるデータ量や、ナビゲーション装置から高精度地図情報管理装置へ単位時間あたりに送信できるデータ量には制限がある。
【0006】
そのため、ナビゲーション装置で設定された走行経路のうち、車両の位置から車両の進行方向に沿って所定範囲内にある経路を変換対象経路として、変換対象経路上の分岐合流地点(車線の分岐また合流が生じる地点)の属性を、ナビゲーション装置から高精度地図情報管理装置へ送信し、送信された分岐合流地点の属性に基づいて、高精度地図情報管理装置は、変換対象経路を高精度地図データ上に投影する。
【0007】
しかしながら、システムの起動直後の場合や、ナビゲーション装置で新たに生成(リルート)された走行経路のうち変換対象経路上に分岐合流地点が存在しない場合には、高精度地図情報管理装置が変換対象経路を高精度地図データ上に投影することができないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、システムの起動直後の場合や、地図データ上に新たに生成された走行経路のうち変換対象経路上に分岐合流地点が存在しない場合であっても、高精度地図データ上に高精度の運転経路を生成することができる車両運転支援方法及び車両運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するために、本発明の一態様に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置は、第1地図データ上に設定された、車両が走行を予定する走行経路のうち、車両の位置から所定範囲の経路を変換対象経路として設定し、変換対象経路上の分岐合流地点を抽出し、抽出された分岐合流地点がある場合には、分岐合流地点の属性に基づいて、第1地図データよりも高い精度を有する第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出し、変換対象経路上に分岐合流地点がない場合、変換対象経路がリセットされた場合、走行経路が新たに生成される場合のいずれかに該当する場合には、第1地図データ上に設定された車両の位置情報に基づいて、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、システムが起動直後の場合や、地図データ上に新たに生成された走行経路のうち変換対象経路上に分岐合流地点が存在しない場合であっても、変換対象経路を高精度地図データ上に投影して、高精度地図データ上に高精度の運転経路を生成することができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、第1地図データ上に設定された走行経路上に分岐合流地点がある場合の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、分岐合流地点がある場合に、第2地図データから抽出される運転経路の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第1地図データ上に設定された走行経路上に分岐合流地点がない場合の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、分岐合流地点がある場合に、第2地図データから抽出される運転経路の一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第1地図データ上に設定された走行経路上に追加地点がある場合の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、追加地点がある場合に、第2地図データから抽出される運転経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0013】
[車両運転支援装置の構成]
図1は、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両運転支援装置は、ナビゲーション装置200(走行経路生成部)と、高精度地図情報管理装置300(運転経路生成部)とを備えており、ナビゲーション装置200と高精度地図情報管理装置300は、CAN(Controller Area Network)およびEthernetのような通信路によって接続されている。その他、車両運転支援装置は、車両の走行を自動制御する自動運転装置400を備えるものであってもよい。
【0014】
ナビゲーション装置200は、コントローラ(制御部または処理部の一例)を備えている。コントローラは、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラには、ナビゲーション装置として機能させるためのコンピュータプログラム(ナビゲーションプログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラは、複数の情報処理回路(210、220、230、240、250)として機能する。
【0015】
なお、ここでは、ソフトウェアによってナビゲーション装置200が備える複数の情報処理回路(210、220、230、240、250)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(210、220、230、240、250)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(210、220、230、240、250)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(210、220、230、240、250)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0016】
ナビゲーション装置200は、複数の情報処理回路(210、220、230、240、250)として、地図データベース210と、自車位置計算部220と、経路生成部230と、状態判定部240と、出力部250と、を備えている。
【0017】
地図データベース210は、出発地と目的地とを結ぶ最適な走行経路を算出する経路探索動作、経路探索によって得られた走行経路に沿って車両の走行を案内する経路誘導動作(案内動作)などに必要な第1地図データを記憶している。
【0018】
第1地図データは、例えば、道路形状の情報、たとえばカーブ、坂道、交差点、インターチェンジ、狭路、直線路、路肩構造物に関する属性を含む情報である。その他、第1地図データには、分岐合流地点(車線の分岐また合流が生じる地点)の属性(特に、分岐合流地点での車線同士の接続関係を示す分岐合流情報や、経度・緯度などの位置情報、各車線についての右左折あるいは直進などの進路情報)が含まれる。
【0019】
なお、地図データベース210に記憶される第1地図データは、自動運転に必要な高精度地図情報ほどの精度は要求されていない。地図データベース210は、ハードディスク装置や半導体メモリによって、あるいは、DVDとその読み取り装置によって実現される。また、地図データベース210を通信装置に置き換えて、図示しない外部の地図配信サーバから第1地図データを取得するようにしてもよい。
【0020】
自車位置計算部220は、図示しないGPS受信機から出力される検出データに基づいて車両の位置を計算するとともに、計算した車両の位置が第1地図データの道路上にない場合には、車両の位置を修正するマップマッチング処理を行う。なお、一例として、GPS受信機を用いて車両の位置を検出するようにしたが、方位センサ、距離センサなどを用いた自立航法センサを併用して検出精度を上げるようにしてもよい。
【0021】
経路生成部230は、出発地から目的地までの車両の走行経路を、指定された探索条件を用いた経路探索処理によって算出し、第1地図データ上に新たに走行経路を生成する。なお、経路生成部230によって生成される走行経路は、出発地から目的地まで車両が移動する際のコスト(移動距離もしくは移動時間など)を最小にするものとして生成されるものであってもよいし、車両の乗員からの指示に基づいて設定されるものであってもよい。
【0022】
状態判定部240は、経路生成部230で生成された走行経路のうち、車両の位置から所定範囲の経路を変換対象経路として設定し、変換対象経路上の分岐合流地点を抽出する。
【0023】
ここで、変換対象経路を設定する際の「所定範囲」とは、ナビゲーション装置200及び高精度地図情報管理装置300が保持又は処理できるデータ量や、ナビゲーション装置200から高精度地図情報管理装置300へ単位時間あたりに送信できるデータ量に基づいて決定されるものであってもよい。「所定範囲」の長さ(第1距離)は、典型的には、7km程度の大きさで設定されるが、これに限定されない。
【0024】
また、状態判定部240は、車両が進むたびに、上記所定範囲が維持されるように、走行後の車両の位置を基準として、変換対象経路を更新するものであってもよい。
【0025】
また、状態判定部240は、変換対象経路がリセットされたか否かを判定するものである。ナビゲーション装置200が起動直後であるか否かを判定するものであってもよい。
【0026】
その他、抽出された分岐合流地点が存在するか否かを判定するものであってもよい。すなわち、状態判定部240は、変換対象経路上に分岐合流地点が存在するか否かを判定するものであってもよい。
【0027】
出力部250は、状態判定部240によって設定された変換対象経路に関する情報を出力する。特に、出力部250は、変換対象経路の情報として、変換対象経路上の分岐合流地点の属性(分岐合流地点での車線同士の接続関係を示す分岐合流情報や、経度・緯度などの位置情報、各車線についての右左折あるいは直進などの進路情報など)を出力する。
【0028】
例えば、出力部250は、ADASIS(Advanced Driver Assistance Systems Interface Specifications;先進運転支援システムインタフェース仕様)に基づいて、変換対象経路に関する情報を出力する。
【0029】
ここで、ADASISとは、自動車産業を代表するメンバーを中心として定期的に開催されているADASISフォーラムにおいて、予測型道路データへのアクセスに対応した予測型マップベース運転支援システムの開発および適用を促進するために設けられた規格である。
【0030】
ADASISに準拠した情報は、車両の走行予定の道路に関する道路形状(カーブ、交差点、勾配)および道路形状の位置が基点からの距離(オフセット)および緯度経度として出力される。また、車両の車速および方位情報のみならず、規制速度(制限速度)および道路種別などの道路情報も併せて出力される。
【0031】
ADASISに準拠した情報では、車両の走行予定の道路に関する静的な情報(道路情報、道路形状情報、勾配情報)および動的な情報(例えば、信号情報)が道路上の基点を0としたオフセットでソートされたリスト情報として提供される。車両の走行経路は、MPP(Most Probable Path)と呼ばれる。
【0032】
ADASISに準拠して送信される情報の種別を示すメッセージ名称には、例えば、「POSITION」、「SEGMENT」、「STUB」、「PROFILE LONG」、「PROFILE SHORT」などがある。
【0033】
出力部250は、変換対象経路を車線に沿って走査し、上述したメッセージ等を出力する。
【0034】
一方、出力部250は、自車位置計算部220によって算出された現在の車両の位置情報を常に出力するものではない。なお、ここで述べる現在の車両の位置情報とは上記「POSITION」メッセージのことを示すのではなく、より位置を詳細に特定できる情報である。例えば、緯度経度情報がこれにあたる。この理由として、車両の位置情報を常に出力し続けた場合、ナビゲーション装置200と高精度地図情報管理装置300を接続する通信路の帯域を圧迫し、負荷が増大してしまうためである。その他の理由として、ナビゲーション装置200及び高精度地図情報管理装置300が保持又は処理できるデータ量には制限があるためである。
【0035】
状態判定部240により、変換対象経路がリセットされたと判定された場合、もしくは、ナビゲーション装置200が起動直後であると判定された場合に、明示的に、出力部250は、地図データベース210に記憶された第1地図データ上での現在の車両の位置情報を出力する。緯度経度等の現在の車両の位置情報を送信するメッセージとしては、「PROFILE LONG」を使用することが可能であるが、これに限定されない。なお、変換対象経路がリセットされるケースとして、走行経路の変更(リルート)が挙げられる。
【0036】
その他、出力部250は、変換対象経路上の地点であって、車両の位置から離れた地点を追加地点として、追加地点の位置情報を出力するものであってもよい。車両の位置と追加地点の間の距離(第1距離よりも短い第2距離)は、典型的には、2km程度の大きさで設定されるが、これに限定されない。
【0037】
次に、高精度地図情報管理装置300は、コントローラ(制御部または処理部の一例)を備えている。コントローラには、高精度地図情報管理装置として機能させるためのコンピュータプログラム(高精度地図情報管理プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラは、複数の情報処理回路(310、320、330、340)として機能する。
【0038】
なお、ここでは、ソフトウェアによって高精度地図情報管理装置300が備える複数の情報処理回路(310、320、330、340)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(310、320、330、340)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(310、320、330、340)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(310、320、330、340)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0039】
高精度地図情報管理装置300は、複数の情報処理回路(310、320、330、340)として、高精度地図データベース310と、入力部320と、経路変換部330と、出力部340と、を備えている。
【0040】
高精度地図データベース310は、自動運転に必要な高精度な地図データである第2地図データを記憶している。第2地図データは、地図データベース210に記憶される第1地図データよりも高い精度を有している。また、第2地図データは、地図データベース210より多くのかつ詳細な地図情報を有している。
【0041】
高精度地図データベース310は、ナビゲーション装置200に備わった地図データベース210と同様に、ハードディスク装置や半導体メモリによって、あるいは、DVDとその読み取り装置によって実現される。また、高精度地図データベース310を通信装置に置き換えて、図示しない外部の地図配信サーバから第2地図データを取得するようにしてもよい。
【0042】
入力部320は、ナビゲーション装置200の出力部250によって出力された情報を受信する。
【0043】
経路変換部330は、入力部320を介して出力部250から取得した、変換対象経路に関する情報(分岐合流地点に関する属性、車両の位置情報、追加地点の位置情報の少なくともいずれかを含む情報)に基づいて、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出する。運転経路の抽出については、後述する。
【0044】
出力部340は、経路変換部330によって抽出した運転経路に沿った高精度地図データを送信する。出力部340は、抽出した運転経路に沿った高精度地図データを自動運転装置400に送信するものであってもよい。
【0045】
[変換対象経路に関する情報に基づく運転経路の抽出]
次に、
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bを用いて、経路変換部330で行われる、運転経路の抽出について説明する。
【0046】
図2Aは、第1地図データ上に設定された走行経路上に分岐合流地点がある場合の一例を示す図である。
図2Bは、分岐合流地点がある場合に、第2地図データから抽出される運転経路の一例を示す図である。一方、
図3Aは、第1地図データ上に設定された走行経路上に分岐合流地点がない場合の一例を示す図である。
図3Bは、分岐合流地点がない場合に、第2地図データから抽出される運転経路の一例を示す図である。
【0047】
図2Aに示す場面において、地点P11に車両が存在するとする。このとき、状態判定部240は、地点P11と、地点P11から距離L1だけ車両の進行方向に進んだ地点とで挟まれる範囲の経路を変換対象経路(車線T11、車線T12、車線T13)として設定し、変換対象経路上の分岐合流地点P12及び分岐合流地点P13を抽出する。
図2Aでは、分岐合流地点P12を始点とする車線Q11、および、分岐合流地点P13を始点とする車線Q12が示されている。
【0048】
図2Aに示す場面において、分岐合流地点P12における車線T11、車線T12、車線Q11同士の接続関係、分岐合流地点P12の位置情報、車線T11から見て、車線T12は右左折又は直進方向のいずれであるかの進路情報を、出力部250は出力する。同様に、分岐合流地点P13における車線T12、車線T13、車線Q12同士の接続関係、分岐合流地点P13の位置情報、車線T12から見て、車線T13は右左折又は直進方向のいずれであるかの進路情報を、出力部250は出力する。
【0049】
経路変換部330は、出力部250から出力された情報に基づき、車線T11、車線T12、車線T13、車線Q11、車線Q12で構成される変換対象経路と同じトポロジーを有する経路を、第2地図データ上から抽出する。抽出にあたり、分岐合流地点P12及び分岐合流地点P13の位置情報を用いて、第2地図データ上で経路を探索する範囲を限定する。
【0050】
第1地図データと第2地図データは精度が異なるため、第1地図データ上における分岐合流地点P12及び分岐合流地点P13の位置は、第2地図データ上における分岐合流地点P12及び分岐合流地点P13の位置から、ずれてしまっている可能性がある。しかしながら、変換対象経路および変換対象経路と分岐合流地点で接続する車線で構成されるトポロジーに着目することで、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出することができる。
図2Bに示された車線で構成されるトポロジーは、
図2Aに示された車線で構成されるトポロジーと同じになっている。
【0051】
次に、変換対象経路上の分岐合流地点が存在しない場合を検討する。
図3Aに示す場面では、地点P21に車両が存在するとする。また、車両の走行経路上に分岐合流地点P22が存在しているが、変換対象経路上には分岐合流地点P22が存在しないとする。
【0052】
図3Aに示す場面では、状態判定部240は、変換対象経路上の分岐合流地点を抽出することができない。仮に、経路変換部330により、車線T21と同じトポロジーを有する経路を、第2地図データ上で探索すると、
図3Bに示すように、車線T21A、車線T21B、車線T21C、車線T21Dのような複数の候補が存在し、一意に決定できない場合がある。したがって、変換対象経路上の分岐合流地点が存在しない場合、変換対象経路を第2地図データ上に投影することができない。
【0053】
このような場合、つまり現在の車両位置より前方の分岐合流地点を抽出することが出来ない場合においても、以前送られた現在の車両位置より後方の分岐合流地点情報を用いることで、変換対象経路上の変換対象経路を第2地図データ上に投影することは可能となる。
【0054】
しかしながら、変換対象経路がリセットされた場合、もしくは、ナビゲーション装置200が起動直後の場合、以前送られた現在の車両位置より後方の分岐合流地点の情報を用いることが出来ないため、変換対象経路を第2地図データ上に投影することができない。そこで、状態判定部240により、変換対象経路がリセットされたと判定された場合もしくはナビゲーション装置200が起動直後の場合には、出力部250は、第1地図データ上の車両の位置情報として、地点P21の位置情報を出力する。
【0055】
また、状態判定部240によって変換対象経路上の分岐合流地点が存在しないと判定された場合においても、出力部250は、第1地図データ上の車両の位置情報として、地点P21の位置情報を出力してもよい。
【0056】
経路変換部330は、第1地図データ上の地点P21の位置情報に基づいて、第2地図データ上の地点P21A、地点P21B、地点P21C、地点P21Dのうち、いずれが地点P21に近接するかを決定する。そして、地点P21Aが最も地点P21に近接する位置情報を有していると決定された場合には、車線T21Aを、変換対象経路に対応する運転経路として抽出する。このように、第1地図データ上の車両の位置情報を合わせて使用することにより、第2地図データ上の運転経路を一意に特定できない問題を解消することができる。
【0057】
[追加地点に基づく運転経路の抽出]
次に、
図4A、
図4Bを用いて、経路変換部330で行われる、追加地点に基づく運転経路の抽出について説明する。
【0058】
図4Aに示す場面において、地点P31に車両が存在するとする。このとき、状態判定部240は、地点P31と、地点P31から所定距離だけ車両の進行方向に進んだ地点とで挟まれる範囲の経路を変換対象経路(車線T31、車線T32)として設定し、変換対象経路上の分岐合流地点P32を抽出する。
図4Aでは、分岐合流地点P32を始点とする車線Q3が示されている。
【0059】
図4Aに示す場面において、分岐合流地点P32における車線T31、車線T32、車線Q3同士の接続関係、分岐合流地点P32の位置情報、車線T31から見て、車線T32は右左折又は直進方向のいずれであるかの進路情報を、出力部250は出力する。
【0060】
経路変換部330において、既に説明した、変換対象経路に関する情報に基づく運転経路の抽出が正しく行われれば、車線T31、車線T32、車線Q3で構成される変換対象経路と同じトポロジーを有する経路を第2地図データ上から抽出して、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出することができる。
【0061】
しかしながら、ナビゲーション装置200及び高精度地図情報管理装置300の間の通信路において情報の欠落が生じる場合、分岐合流地点P32の属性が正しく送信されない場合が起こりうる。例えば、ナビゲーション装置200と高精度地図情報管理装置300の間の通信路にCANが存在する場合、情報の欠落への対策が必要になる場合がある。
【0062】
例えば、分岐合流地点P32の属性が不足した場合、経路変換部330は、第2地図データ上において、車線T31と車線Q3で構成される経路と、車線T31と車線T32で構成される経路のうちいずれの経路が、変換対象経路に対応するのかを特定することができない。
【0063】
そこで、ナビゲーション装置200の出力部250は、変換対象経路上の地点であって、車両が位置する地点P32から距離L2だけ車両の進行方向に進んだ地点P33を追加地点とし、地点P33の位置情報を出力する。
【0064】
地点P33の位置情報に基づき、経路変換部330は、車線T31と車線T32で構成される経路が変換対象経路に対応していると特定することができる。
【0065】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置は、第1地図データ上に設定された、車両が走行を予定する走行経路のうち、車両の位置から所定範囲の経路を変換対象経路として設定し、変換対象経路上の分岐合流地点を抽出し、抽出された分岐合流地点がある場合には、分岐合流地点の属性に基づいて、第1地図データよりも高い精度を有する第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出し、変換対象経路上に分岐合流地点がない場合、変換対象経路がリセットされた場合、走行経路が新たに生成される場合のいずれかに該当する場合には、第1地図データ上に設定された車両の位置情報に基づいて、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出する。
【0066】
これにより、第1地図データ上に新たに生成された走行経路のうち変換対象経路上に分岐合流地点が存在しない場合であっても、変換対象経路を第1地図データよりも高い精度を持つ第2地図データ上に投影して運転経路を得ることができる。また、変換対象経路上に分岐合流地点がない場合およびナビゲーション装置でリルートが発生した直後や、システムの起動直後において、第1地図データ上に設定された車両の位置情報を用いるため、システムで処理・保持すべきデータ量を抑えつつ、変換対象経路を第2地図データ上に投影して運転経路を得ることができる。
【0067】
また、走行経路のうち変換対象経路上における分岐合流地点の有無にかかわりなく、第2地図データ上に運転経路を生成することができるため、ナビゲーション装置でリルートが発生した直後や、システムの起動直後においても、第2地図データ上の高い精度の運転経路に基づく、車両の制御を開始することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置は、走行経路上を車両が進む毎に、走行後の車両の位置を基準として、変換対象経路を更新し、更新後の変換対象経路に対応する運転経路を抽出するものであってもよい。これにより、車両の走行中においても、逐一、車両の走行経路に沿って第2地図データ上の運転経路が作成され、第2地図データ上の高い精度の運転経路に基づく、車両の制御を継続することができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置は、車両の進行方向に車両の位置から、第1距離よりも短い第2距離だけ走行経路上を進んだ地点の位置情報に基づいて、第2地図データから変換対象経路に対応する運転経路を抽出するものであってもよい。これにより、変換対象経路上の分岐合流地点に関する属性に欠落が生じた場合であっても、変換対象経路に対応する第2地図データ上の運転経路を確実に生成することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置において、走行経路は、走行経路生成部により設定され、運転経路は、走行経路生成部と通信路によって接続された運転経路生成部において生成されるものであってもよい。これにより、精度の低い第1地図データに基づいて走行経路の生成を行うことができ、ルート選択やリルート時の負荷を軽減することができる。また、ルート選択やリルート時の負荷軽減と両立させて、第1地図データの精度よりも高い精度を有する第2地図データ上における、効率的な運転経路の生成を実現することができる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置において、走行経路生成部は、先進運転支援システムインタフェース仕様(ADASIS)に定められたプロトコルに基づいた通信によって運転経路生成部に変換対象経路上の分岐合流地点の属性、又は、車両の位置情報を送信するものであってもよい。標準化された仕様を利用することで、システムを構成する部品の設計コストや調達コストを低減することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る車両運転支援方法及び車両運転支援装置において、抽出した運転経路を、車両の走行を自動制御する制御部に送信するものであってもよい。これにより、ナビゲーション装置でリルートが発生した直後や、システムの起動直後においても、第2地図データ上の高い精度の運転経路に基づく、車両の制御を開始することができる。
【0073】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0074】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述および図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0075】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0076】
200 ナビゲーション装置
210 地図データベース
220 自車位置計算部
230 経路生成部
240 状態判定部
250 出力部
300 高精度地図情報管理装置
310 高精度地図データベース
320 入力部
330 経路変換部
340 出力部
400 自動運転装置