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特許7354603移動体用シート、及び移動体用シートセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】移動体用シート、及び移動体用シートセット
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20230926BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B60N2/14
B60N2/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019109563
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199960
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳行
(72)【発明者】
【氏名】山内 克仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】難波 祐成
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-083033(JP,U)
【文献】特開2009-067351(JP,A)
【文献】実開平06-068961(JP,U)
【文献】特開昭56-095724(JP,A)
【文献】特開平8-150862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の内部空間における側面に上下方向に離間して配置されると共に上下方向と交差する方向に延伸する第1レール及び第2レールに固定可能なフレームと、
前記フレームに対し、上下方向の回転軸を中心に回転する回転部と、
前記フレームと前記回転部との間に配置されると共に、前記回転部の前記フレームに対する回転を規制するロック状態と、前記回転の規制を解除する解除状態とに切り替わるロック機構と、
を備え、
前記フレームは、
前記第1レールに着脱可能な第1取付部と、
前記第2レールに着脱可能な第2取付部と、
前記回転部を下方から支持する支持部と、
を有し、
前記第1取付部は、前記支持部よりも上方に配置され、
前記第2取付部は、前記支持部よりも下方に配置され
前記ロック機構は、前記回転部への上下方向の荷重が一定値以上の場合に前記ロック状態となり、前記荷重が一定値未満の場合に前記解除状態となると共に前記回転部の向きを初期化する、移動体用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体用シートであって、
前記回転部は、
前記フレームに対し回転可能なシェルと、
前記シェルに支持されたパッドと、
を有する、移動体用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動体用シートであって、
前記フレームは、前記第1レール及び前記第2レールに固定された状態で、前記内部空間における床面に接触しない、移動体用シート。
【請求項4】
移動体の内部空間における側面に上下方向に離間して配置されると共に上下方向と交差する方向に延伸する第1レール及び第2レールと、
前記第1レール及び前記第2レールに固定可能なフレームと、前記フレームに対し上下方向の回転軸を中心に回転する回転部と、前記フレームと前記回転部との間に配置されると共に、前記回転部の前記フレームに対する回転を規制するロック状態と、前記回転の規制を解除する解除状態とに切り替わるロック機構と、を有する移動体用シートと、
を備え、
前記フレームは、
前記第1レールに着脱可能な第1取付部と、
前記第2レールに着脱可能な第2取付部と、
前記回転部を下方から支持する支持部と、
を有し、
前記第1取付部は、前記支持部よりも上方に配置され、
前記第2取付部は、前記支持部よりも下方に配置され
前記ロック機構は、前記回転部への上下方向の荷重が一定値以上の場合に前記ロック状態となり、前記荷重が一定値未満の場合に前記解除状態となると共に前記回転部の向きを初期化する、移動体用シートセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体用シート、及び移動体用シートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配置され、車両内で回転可能なシートが知られている(特許文献1参照)。このシートは車両の床面に配置された台座に載置され、シート全体が床面に対し回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-219770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回転式のシートでは、上述のようにシート全体が回転するため、回転機構が大型化及び重量化する。また、シートと床面との間に回転機構が配置されるため、シートの下方において着席者が足を置くことができる空間が小さくなる。
【0005】
本開示の一局面は、軽量化を図りつつ、足元の空間を確保できる回転式の移動体用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、移動体(100)の内部空間(110)における天面(111)又は側面(113A,113B)に配置されると共に上下方向と交差する方向に延伸する少なくとも1つのレール(12,13)に固定可能なフレーム(2)と、フレーム(2)に対し、上下方向の回転軸を中心に回転する回転部(3)と、を備える移動体用シート(1)である。
【0007】
このような構成によれば、移動体用シート(1)の一部(つまり回転部(3))のみが床面に対して回転するため、回転機構を小型化できる。その結果、移動体用シート(1)が軽量化される。
【0008】
また、フレーム(2)が移動体(100)の天面(111)又は側面(113A,113B)に配置されたレール(12,13)に固定されるので、移動体(100)の床面(112)にシート固定用の設備を設けることなく、移動体用シート(1)を内部空間(110)に設置することができる。これにより、足元の空間を確保することができる。その結果、着席者の居住性が向上すると共に、床面(112)の清掃が容易になる。
【0009】
本開示の一態様では、回転部(3)は、フレーム(2)に対し回転可能なシェル(31)と、シェル(31)に支持されたパッド(32)と、を有してもよい。このような構成によれば、着席者が接触するパッド(32)をシェル(31)によって支持しつつ、パッド(32)をフレーム(2)に対して回転させることができる。その結果、移動体用シート(1)の軽量化を図りつつ、着席部分の剛性を維持することができる。
【0010】
本開示の一態様では、フレーム(2)は、少なくとも1つのレール(12,13)として、側面(113A,113B)において上下方向に離間して配置された2つのレール(12,13)に固定可能であってもよい。このような構成によれば、足元の空間を確保しつつ、移動体用シート(1)の安定性を高めることができる。
【0011】
本開示の一態様では、フレーム(2)は、少なくとも1つのレール(12,13)に固定された状態で、内部空間(110)における床面(112)に接触しなくてもよい。このような構成によれば、移動体(100)の床面(112)に移動体用シート(1)を取り付けるためのスペースを確保できない場合でも、移動体用シート(1)を内部空間(110)に配置することができる。
【0012】
本開示の一態様は、フレーム(2)と回転部(3)との間に配置されると共に、回転部(3)のフレーム(2)に対する回転を規制するロック状態と、回転の規制を解除する解除状態とに切り替わるロック機構(4)をさらに備えてもよい。ロック機構(4)は、回転部(3)への上下方向の荷重が一定値以上の場合にロック状態となり、荷重が一定値未満の場合に解除状態となってもよい。このような構成によれば、回転部(3)のロック及びロックの解除を、特別な操作を伴わずに切り替えることができる。
【0013】
本開示の別の態様は、移動体(100)の内部空間(110)における天面(111)又は側面(113A,113B)に配置されると共に上下方向と交差する方向に延伸する少なくとも1つのレール(12,13)と、少なくとも1つのレール(12,13)に固定可能なフレーム(2)と、フレーム(2)に対し上下方向の回転軸を中心に回転する回転部(3)とを有する移動体用シート(1)と、を備える移動体用シートセットである。
【0014】
このような構成によれば、回転機構を小型化できるので、移動体用シート(1)が軽量化される。また、移動体(100)の床面(112)を介さずに移動体用シート(1)を内部空間(110)に設置することができるので、足元の空間を確保することができる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、実施形態における移動体及びレールの模式的な側面図であり、図1Bは、図1Aの模式的な正面図であり、図1Cは、図1Aの模式的な平面図である。
図2図2Aは、図1Aの移動用キャビンにおけるレールの模式的な側面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
図3図3A及び図3Bは、実施形態における移動体用シートの模式的な斜視図である。
図4図4Aは、図3Aの移動体用シートの解除状態を示す模式図であり、図2Bは、図3Aの移動体用シートのロック状態を示す模式図である。
図5図5は、図3Aとは異なる実施形態における移動体用シートの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態の移動体用シートセットは、図1A,1B,1Cに示す複数のレール(つまり、第1レール11、第2レール12、第3レール13、第4レール14、第5レール15、及び第6レール16)と、図3A,3Bに示す移動体用シート1とを備える。
【0018】
複数のレール11,12,13,14,15,16及び移動体用シート1は、図1A,1B,1Cに示す移動体100に配置される。
【0019】
<移動体>
移動体100は、キャビン101と、プラットフォーム102とを備える。
キャビン101は、移動体100の一部を構成する直方体状の箱体である。具体的には、キャビン101は、地上を自走する移動体100(例えば自動車)の客室を構成する。
【0020】
キャビン101は、移動体100のプラットフォーム102に連結されている。プラットフォーム102は、複数のタイヤ102A,102B,102C,102Dと、これらのタイヤを駆動させる動力源(図示省略)とを有する。
【0021】
プラットフォーム102の動力源としては、例えばモータ、エンジン等が使用される。キャビン101は、プラットフォーム102に載置されており、プラットフォーム102と共に移動する。なお、プラットフォーム102とキャビン101との連結形態は本実施形態のものに限定されない。例えば、プラットフォーム102は、キャビン101の走行方向の前方又は後方に連結されてもよい。
【0022】
キャビン101は、内部空間110を画定する天面111と、床面112と、第1側面113Aと、第2側面113Bと、第3側面113Cと、第4側面113Dとを有する。天面111と床面112とは対向するように配置されている。各側面113A,113B,113C,113Dは、天面111と床面112とを上下方向に連結している。キャビン101の内部空間110は、1つの地点に固定されない移動可能な空間(つまりモビリティ空間)である。
【0023】
第1側面113A及び第2側面113Bは、それぞれ移動体100の移動方向と平行な面であり、互いに対向している。第3側面113C及び第4側面113Dは、それぞれ第1側面113Aと第2側面113Bとを連結する面であり、互いに対向している。
【0024】
なお、キャビン101において、天面111、床面112、側面113A,113B,113C,113Dを構成する壁は、少なくとも一部が例えばガラス等の透明な部材(つまり窓)で構成されてもよい。また、天面111、床面112、側面113A,113B,113C,113Dの少なくとも一部には、キャビン101の出入り口(つまりドア)を構成する開閉可能な部位が設けられる。
【0025】
<レール>
複数のレール11,12,13,14,15,16は、上下方向と交差する方向、具体的には水平方向に延伸している。つまり、複数のレール11,12,13,14,15,16の長手方向は、水平方向と平行である。
【0026】
第1レール11は、第1側面113Aのうち天面111との接続部分(つまり上端部)に配置されている。第1レール11は、少なくとも第1側面113Aに固定されている。第1レール11は、第1側面113Aと天面111との双方に固定されてもよい。第1レール11は、第1側面113Aの水平方向における一方の端部から他方の端部まで配置されている。
【0027】
第2レール12は、第1側面113Aのうち床面112との接続部分(つまり下端部)に配置されている。第2レール12は、少なくとも第1側面113Aに固定されている。第2レール12は、第1側面113Aと床面112との双方に固定されてもよい。第2レール12は、第1レール11と平行に、かつ、第1側面113Aの水平方向における一方の端部から他方の端部まで配置されている。
【0028】
第3レール13は、第1側面113Aのうち第1レール11と第2レール12との間の領域に配置されている。第3レール13は、第1側面113Aに固定されている。第3レール13は、第1レール11及び第2レール12と平行に、かつ、第1側面113Aの水平方向における一方の端部から他方の端部まで配置されている。
【0029】
第1レール11、第2レール12及び第3レール13は、第1側面113Aにおいて互いに上下方向に離間して配置されている。
【0030】
第4レール14は、第2側面113Bのうち天面111との接続部分に配置されている。第4レール14は、第1レール11を水平方向に反転したものであり、第1レール11と向かい合っている。
【0031】
第5レール15は、第2側面113Bのうち床面112との接続部分に配置されている。第5レール15は、第2レール12を水平方向に反転したものであり、第2レール12と向かい合っている。
【0032】
第6レール16は、第2側面113Bのうち第4レール14と第5レール15との間の領域に配置されている。第6レール16は、第3レール13を水平方向に反転したものであり、第3レール13と向かい合っている。
【0033】
第3レール13は、図2A,2Bに示すように、後述する移動体用シート1が任意の位置に着脱可能な着脱機構11Aを有する。本実施形態の着脱機構11Aは、第3レール13の長手方向に延伸する空洞11Bと、空洞11Bと第3レール13の外部とを連通する溝11Cと、溝11Cと連続して設けられた挿入口11Dとを有する。
【0034】
溝11Cの上下方向の幅は、空洞11Bの上下方向の幅よりも小さい。また、空洞11Bの上端は溝11Cよりも上方に位置し、空洞11Bの下端は溝11Cよりも下方に位置する。挿入口11Dは、溝11Cの上下方向の幅を空洞11Bの上下方向の幅まで広げた開口である。
【0035】
空洞11Bには、後述する移動体用シート1における第1取付部21の端部21Aが格納される。端部21Aの上下方向の幅は、溝11Cの上下方向の幅よりも大きい。そのため、端部21Aは、溝11Cから引き抜くことはできない。
【0036】
空洞11Bに配置された端部21Aは、空洞11Bの内壁へ当接するため、端部21Aの第3レール13の長手方向と平行な軸を中心とする回転が抑制される。その結果、端部21Aが第3レール13によって保持される。
【0037】
また、端部21Aは、溝11Cに沿って第3レール13の長手方向にスライド可能である。端部21Aのスライドによって、第3レール13によって移動体用シート1を保持したまま、移動体用シート1を任意の位置に配置し直すことができる。
【0038】
第1取付部21の端部21Aは、挿入口11Dから空洞11Bに挿入され、第3レール13の長手方向に沿って溝11Cと重なる位置までスライドされることで、第3レール13に保持される。なお、挿入口11Dは、溝11Cの第3レール13の長手方向における端部に限定されず、任意の位置に設けることができる。また、着脱機構11Aは、必ずしも挿入口11Dを有しなくてもよい。
【0039】
例えば、端部21Aは、第1取付部21に設けられたレバーの操作により、下部21Bが上方に移動する変形機構を有してもよい。この変形機構によれば、下部21Bを溝11Cの下端よりも上方に移動させた状態で溝11Cから空洞11B内に端部21Aを挿入できる。空洞11Bへの挿入後、下部21Bを溝11Cの下端よりも下方に突出させることで、端部21Aを第3レール13に保持させることができる。第3レール13から端部21Aを取り外す時は、下部21Bを上方へ移動させて端部21Aを空洞11B内で回転させることで、空洞11Bから端部21Aを引き抜くことができる。
【0040】
第1レール11、第2レール12、第4レール14、第5レール15、及び第6レール16は、第3レール13と同様の着脱機構11Aをそれぞれ有する。これらのレールには、移動体用シート1の第1取付部21又は第2取付部22が着脱される。
【0041】
なお、着脱機構11Aは、第1取付部21又は第2取付部22が着脱可能であれば、上述の構成に限定されない。また、着脱機構11Aは、機械的な構造に限定されず、磁力によって移動体用シート1を保持してもよい。例えば、着脱機構11Aは、電流の供給の切り替えによって第1取付部21又は第2取付部22を着脱する電磁石を有してもよい。
【0042】
各レールの着脱機構11Aは、移動体用シート1の第1取付部21又は第2取付部22と同等の機構を有するアタッチメントを着脱することもできる。このようなアタッチメントとしては、例えば、シート以外の家具、電子機器等の内部空間110用の内装品が挙げられる。
【0043】
各レールは、例えば金属で形成され、移動体用シート1を安定的に保持できる剛性を有する。これにより、移動体用シート1に必要とされる剛性を低減できるので、移動体用シート1の軽量化及び構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、各レールは、移動体用シート1への給電、移動体用シート1との電気通信等を行うための配線、移動体用シート1を上記配線に対し電気的に接続する電極等を有してもよい。
【0045】
<移動体用シート>
図3Aに示す移動体用シート1は、キャビン101の内部空間110に配置されるキャビン用アタッチメントである。
【0046】
移動体用シート1は、複数のレール11,12,13,14,15,16のいずれかに取り付けられることで、内部空間110に配置される。移動体用シート1は、フレーム2と、回転部3と、ロック機構4(図4A参照)とを備える。
【0047】
(フレーム)
フレーム2は、回転部3を支持する部位であり、第2レール12及び第3レール13に固定可能である。フレーム2は、第1取付部21と、第2取付部22と、支持部23とを有する。
【0048】
第1取付部21は、第3レール13の着脱機構11Aによって、第3レール13に着脱可能な部位である。第2取付部22は、第2レール12の着脱機構11Aによって、第2レール12に着脱可能な部位である。第1取付部21及び第2取付部22は、シート幅方向に延伸している。
【0049】
支持部23は、後述する回転部3を下方から支持する板状の部位である。支持部23は、内部空間110の床面112から離間している。第1取付部21及び第2取付部22は、それぞれ、支持部23に連結されている。第1取付部21は、支持部23の上方に配置され、第2取付部22は、支持部23の下方に配置されている。
【0050】
したがって、移動体用シート1をキャビン101に設置する際に、フレーム2は、第1取付部21及び第2取付部22によって、第3レール13と第2レール12とに跨るように取り付けられる。
【0051】
また、フレーム2は、移動体用シート1をキャビン101に設置する際に、第3レール13及び第2レール12のみに固定され、キャビン101には直接固定されない。したがって、フレーム2は、第3レール13及び第2レール12に固定された状態で、内部空間110における床面112に接触しない。
【0052】
(回転部)
回転部3は、フレーム2に対し、上下方向の回転軸を中心に回転する。例えば、回転部3は、図3Aに示される着席者が内部空間110の内側を向く位置から、図3Bに示される着席者が移動体100の進行方向又は進行方向とは反対方向を向く位置に回転によって変化する。
【0053】
回転部3は、シェル31と、パッド32と、軸部33(図4A参照)とを有する。
シェル31は、フレーム2に対し回転可能な部位である。本実施形態では、シェル31の回転軸は、床面112と垂直である。つまり、シェル31は、移動体用シート1における着席者の視野が水平方向に変化するように回転する。シェル31の回転可能角度は例えば180°である。
【0054】
パッド32は、着席者が接触する部位であり、弾性を有する素材で構成されている。本実施形態では、パッド32は、着席者の臀部等を支持するクッション部32Aと、着席者の背部を支持するバック部32Bとを有する。クッション部32A及びバック部32Bは、それぞれ、シェル31に支持されている。
【0055】
軸部33は、図4Aに示すように、シェル31をフレーム2に回転可能に連結している。軸部33は、シェル31及びフレーム2のうちの一方の部材に固定され、他方の部材に設けられた軸受に挿入されている。軸部33の軸心Oは、回転部3の回転軸を構成する。
【0056】
(ロック機構)
ロック機構4は、フレーム2と回転部3との間に配置されている。ロック機構4は、図4Bに示す回転部3のフレーム2に対する回転を規制するロック状態と、図4Aに示す回転部3の回転の規制を解除する解除状態とに切り替わる。
【0057】
具体的には、ロック機構4は、第1ロック歯41と、第2ロック歯42とを有する。
第1ロック歯41は、回転部3の下面(具体的には、シェル31のクッション部32Aと重なる部位の下面)に固定されている。
【0058】
第2ロック歯42は、フレーム2の支持部23の上面において、第1ロック歯41と上下方向に重なる位置に固定されている。第2ロック歯42は、第1ロック歯41と上下方向に嵌合することで、水平方向の動きが規制される。
【0059】
第1ロック歯41及び第2ロック歯42は、回転部3の軸部33を囲むように円環状に配置されている。第1ロック歯41は、シェル31と一体成形されるとよい。また、第2ロック歯42は、フレーム2と一体成形されるとよい。これらの一体成形により、製造工程が削減できると共に、移動体用シート1のリサイクル効率が向上する。
【0060】
回転部3に上下方向の荷重が加わっていない場合、つまり、移動体用シート1に人が着席していない場合は、第1ロック歯41と第2ロック歯42とは、図4Aに示すように上下方向に離間される。
【0061】
具体的には、第1ロック歯41及びシェル31を第2ロック歯42に対し上方に持ち上げる力が第1ロック歯41又はシェル31に加えられる。第1ロック歯41を持ち上げる力としては、弾性体等の復元力、又は電気、空気、油圧等の駆動力が用いられる。なお、復元力を用いる場合は、人の体重による荷重よりも小さい復元力が用いられる。
【0062】
一方、回転部3に上下方向の荷重が加わっている場合、つまり、人が着席している場合は、図4Aに示すように第1ロック歯41と第2ロック歯42とが上下方向に噛み合い、第1ロック歯41と第2ロック歯42との相対的な移動が規制される。
【0063】
したがって、ロック機構4は、回転部3への上下方向の荷重が一定値以上の場合にロック状態となり、上下方向の荷重が一定値未満の場合に解除状態となる。つまり、人が移動体用シート1に着席している場合は、回転部3の回転が規制される。一方、人が移動体用シート1から離れると、回転部3を手動又は電動により自在に回転できる。
【0064】
ロック機構4は、さらに、解除状態において回転部3を予め決められた指定位置まで回転させる機能を有してもよい。つまり、ロック機構4は、人が離席したときに、回転部3の向きを自動で初期化する初期化機能を有してもよい。この初期化機能は、弾性体等の復元力、又は電気、空気、油圧等の駆動力によって回転部3を強制回転させることで実現される。
【0065】
このように回転部3の向きを初期化することで、移動体100から人が降りる際に、複数の移動体用シート1の向きを揃えることができる。また、移動体用シート1の移動体100への取り付け作業及び取り外し作業を行う際に、回転部3が不要に回転することを抑制できる。その結果、作業性や安全性が高まる。
【0066】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)移動体用シート1の一部(つまり回転部3)のみが床面112に対して回転するため、回転機構を小型化できる。その結果、移動体用シート1が軽量化される。
【0067】
(1b)フレーム2が移動体100の側面113A,113Bに配置されたレール12,13に固定されるので、移動体100の床面112にシート固定用の設備を設けることなく、移動体用シート1を内部空間110に設置することができる。これにより、足元の空間を確保することができる。その結果、着席者の居住性が向上すると共に、床面112の清掃が容易になる。
【0068】
(1c)回転部3がシェル31とパッド32とを有することで、着席者が接触するパッド32をシェル31によって支持しつつ、パッド32をフレーム2に対して回転させることができる。その結果、移動体用シート1の軽量化を図りつつ、着席部分の剛性を維持することができる。
【0069】
(1d)フレーム2が上下方向に離間して配置された2つのレール12,13に固定可能であることで、足元の空間を確保しつつ、移動体用シート1の安定性を高めることができる。
【0070】
(1e)フレーム2が内部空間110における床面112に接触しないため、移動体100の床面112に移動体用シート1を取り付けるためのスペースを確保できない場合(例えば、電気を動力とするプラットフォーム102を備える場合)でも、移動体用シート1を内部空間110に配置することができる。
【0071】
(1f)回転部3への荷重によってロック状態と解除状態とが切り替わるロック機構4によって、回転部3のロック及びロックの解除を、特別な操作を伴わずに切り替えることができる。
【0072】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0073】
(2a)上記実施形態の移動体用シートセットにおいて、第1レール11、第2レール12及び第3レール13は、第3側面113C又は第4側面113Dに配置されてもよい。また、各レールは、複数の側面に跨って配置されてもよい。
【0074】
(2b)上記実施形態の移動体用シートセットは、第1レール11、第2レール12、第3レール13、第4レール14、第5レール15及び第6レール16のうち、一部のレールのみを備えてもよい。また、移動体用シートセットは、第1レール11、第2レール12、第3レール13、第4レール14、第5レール15及び第6レール16以外のレールを備えてもよい。さらに、移動体用シートセットは、キャビン101の天面111に配置されるレールを備えてもよい。また、移動体用シートセットは、1つのレールのみを備えてもよい。
【0075】
(2c)上記実施形態の移動体用シート1において、フレーム2は、必ずしも第2レール12と第3レール13とに固定可能でなくてもよい。例えば、図5に示すように、フレーム2は、第1レール11と第3レール13とに固定可能であってもよい。また、フレーム2は、3つ以上のレールに固定可能であってもよいし、1つのレールのみに固定可能であってもよい。
【0076】
(2d)上記実施形態の移動体用シート1は、着席者の臀部を支持するシートクッション部分のみを有してもよい。つまり、パッド32は、必ずしもバック部32Bを有しなくてもよい。
【0077】
(2e)上記実施形態の移動体用シート1において、ロック機構4の構成は一例である。したがって、ロック機構4は、2つのロック歯41,42を必ずしも有しなくてもよい。また、移動体用シート1は、必ずしもロック機構4を備えなくてもよい。
【0078】
(2f)上記実施形態の移動体用シートセットが適用される移動体100は、地上を走行するものに限定されない。移動体100は、例えば、船舶、航空機、宇宙船等であってもよい。
【0079】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…移動体用シート、2…フレーム、3…回転部、4…ロック機構、
11…第1レール、11A…着脱機構、11B…空洞、11C…溝、11D…挿入口、
12…第2レール、13…第3レール、14…第4レール、15…第5レール、
16…第6レール、21…第1取付部、21A…端部、21B…下部、
22…第2取付部、23…支持部、31…シェル、32…パッド、
32A…クッション部、32B…バック部、33…軸部、41…第1ロック歯、
42…第2ロック歯、100…移動体、101…キャビン、
102…プラットフォーム、102A,102B,102C,102D…タイヤ、
110…内部空間、111…天面、112…床面、113A…第1側面、
113B…第2側面、113C…第3側面、113D…第4側面。
図1
図2
図3
図4
図5