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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】電子部品収納ケース
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20230926BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20230926BHJP
   E05B 19/00 20060101ALI20230926BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20230926BHJP
   H05K 5/06 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
H05K5/02 P
H05K5/00 A
E05B19/00 J
E05B19/00 F
H01M50/202 501B
H05K5/06 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019122957
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021009922
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 成幸
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-199869(JP,A)
【文献】特開2000-151134(JP,A)
【文献】特開平06-243848(JP,A)
【文献】実開昭54-018347(JP,U)
【文献】特開平11-239200(JP,A)
【文献】特開2013-174051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 5/00
E05B 19/00
H01M 50/20
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電池を含む電子部品を収納可能な収納部を有し、第1ケース部材と第2ケース部材とに分離可能に構成された電子部品収納ケースであって、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とを分離可能に結合する嵌合部と、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能な硬貨挿入部と、を備え、
前記硬貨挿入部は、少なくとも、前記硬貨挿入部の入口側に設けられた第1挿入部と、前記第1挿入部に連通し前記第1挿入部よりも奥側に設けられた第2挿入部と、を有し、
前記第1挿入部と前記第2挿入部とを接続する接続部の幅寸法は前記硬貨挿入部の入口の幅寸法よりも小さく構成されているとともに、
前記第2挿入部の幅寸法は、当該第2挿入部の全体に亘って前記第1挿入部の幅寸法よりも小さく構成されている、
電子部品収納ケース。
【請求項2】
内部に電池を含む電子部品を収納可能な収納部を有し、第1ケース部材と第2ケース部材とに分離可能に構成された電子部品収納ケースであって、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とを分離可能に結合する嵌合部と、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能な硬貨挿入部と、を備え、
前記硬貨挿入部は、少なくとも、前記硬貨挿入部の入口側に設けられた第1挿入部と、前記第1挿入部に連通し前記第1挿入部よりも奥側に設けられた第2挿入部と、を有し、
前記第1挿入部と前記第2挿入部とを接続する接続部の幅寸法は前記硬貨挿入部の入口の幅寸法よりも小さく構成されているとともに、
前記第1挿入部及び前記第2挿入部のうち少なくとも前記第2挿入部は、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている、
電子部品収納ケース。
【請求項3】
前記第1挿入部及び前記第2挿入部の少なくとも一方又は両方は、前記硬貨挿入部の幅方向に位置する面に設けられ前記硬貨の縁部に係止可能な係止部を更に有している、
請求項1又は2に記載の電子部品収納ケース。
【請求項4】
内部に電池を含む電子部品を収納可能な収納部を有し、第1ケース部材と第2ケース部材とに分離可能に構成された電子部品収納ケースであって、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とを分離可能に嵌合する嵌合部と、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能な硬貨挿入部と、を備え、
前記硬貨挿入部は、前記硬貨挿入部の幅方向に位置する面を前記幅方向の外側へ向かって窪ませて形成された溝部を有している、
電子部品収納ケース。
【請求項5】
内部に電池を含む電子部品を収納可能な収納部を有し、第1ケース部材と第2ケース部材とに分離可能に構成された電子部品収納ケースであって、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とを分離可能に嵌合する嵌合部と、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能な硬貨挿入部と、を備え、
前記硬貨挿入部は、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている、
電子部品収納ケース。
【請求項6】
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材は、相互に結合された状態において矩形状に形成されており、
前記硬貨挿入部は、矩形状の隅部に設けられている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子部品収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばホームセキュリティーの分野などで用いられる無線タグは、外部の機器に対して無線通信を行うため、小型で携帯可能なケースの内部に無線通信用の回路基板と電池とを収納して構成されている。電池は、例えば入手性の良いボタン電池などが用いられる。電池は消耗品であるため適宜交換する必要があるが、この電池の交換は、ユーザ自身がケースを開いて行われることが多い。そのため、無線タグなどに用いられるケースは、電池交換のし易さの観点から見れば、ユーザによって簡単に開けることができる構成が要求される。
【0003】
一方で、例えばボタン電池は小型であることから、例えば乳幼児などが無線タグで遊んでいる最中に誤ってケースが開いてしまうと、乳幼児が電池を取り出して誤飲してしまう可能性が高まる。そのため、無線タグなどに用いられるケースは、乳幼児などによる電池の誤飲を防止するという観点から見れば、乳幼児などでは簡単に開けることができない構成とすることが重要である。
【0004】
そこで、従来構成では、例えば図14に示すようにケース80に溝81を設け、その溝81例えばユーザが普段持っていると想定される硬貨90などを差し込んでケース80を開ける構成が考えられている。これによれば、ケース80を開ける際には溝81に硬貨90などを差し込むという所定の操作が必要になるため、乳幼児などが無線タグで遊んでいる際中に誤ってケース80を開けてしまうことを防ぐことができ、その結果、電池の誤飲を抑制することができる。
【0005】
ここで、例えば日本国内においては、図15に示すように1円~500円の6種類の硬貨が一般に流通しており、その硬貨の種類に応じて直径D及び厚みTも異なっている。この場合、ユーザがどの硬貨を用いてもケース80を開くことができるようにするため、ケース80に設けられる溝81の幅寸法は、6種類の異なる厚み寸法の硬貨に対応させる必要がある。そのため、従来構成において、溝81の幅寸法は、6種類の硬貨のうち最も厚み寸法の大きい500円に合わせて、1.8mmよりもやや大きい値に設定されている。
【0006】
このような従来構成において、図14(A)に示すように、6種類の硬貨のうち厚み寸法Tが最も大きい500円硬貨91を使用した場合には、溝81と硬貨91との間の隙間Sが小さい。このため、ユーザが硬貨91に対して図14(A)の矢印で示す方向へ力を加えた場合に、硬貨91は、溝81に対する傾き角度が比較的小さい状態で溝81の入口部分に接触する。これにより、ユーザから硬貨91に加えられた矢印方向の力がケース80に十分に伝えられて、ケース80を容易に開けることができる。
【0007】
しかしながら、図14(B)に示すように、例えば1円、5円、10円など6種類の硬貨のうち厚み寸法Tが小さい硬貨92を使用した場合、溝81と硬貨92との間の隙間Sが500円硬貨91の場合に比べて大きくなる。このため、ユーザが硬貨92に対して図14(B)の矢印で示す方向へ力を加えた場合に、硬貨92が溝81の入口部分に接触する際の硬貨92の傾き角度が比較的大きくなる。すると、図14(B)の二点鎖線で示すように硬貨92の縁部が滑ってしまい、硬貨92に加えられた矢印方向の力がケース80に十分に伝えられず、その結果、ケース80が開け難くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-299803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を用いた場合でも簡単に開けることができる電子部品収納ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(請求項1)
請求項1に係る電子部品収納ケースは、内部に電池を含む電子部品を収納可能な収納部を有し、第1ケース部材と第2ケース部材とに分離可能に構成されている。電子部品収納ケースは、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とを分離可能に結合する嵌合部と、前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能な硬貨挿入部と、を備える。前記硬貨挿入部は、少なくとも、前記硬貨挿入部の入口側に設けられた第1挿入部と、前記第1挿入部に連通し前記第1挿入部よりも奥側に設けられた第2挿入部と、を有している。前記第1挿入部と前記第2挿入部とを接続する接続部の幅寸法は前記硬貨挿入部の入口の幅寸法よりも小さく構成されているとともに、前記第2挿入部の幅寸法は、当該第2挿入部の全体に亘って前記第1挿入部の幅寸法よりも小さく構成されている。
【0011】
この構成によれば、ユーザが電子部品収納ケースを開けようとする場合、つまり第1ケース部材と第2ケース部材とを分離させる場合には、電子部品収納ケースの側面に形成された硬貨挿入部に硬貨を挿入し、てこの原理で第1ケース部材及び第2ケース部材に力を加える。このとき、硬貨挿入部に挿入される硬貨が厚み寸法Tの大きい500円硬貨などである場合には、その500円硬貨は第1挿入部に挿入される。そして、ユーザは、500円硬貨を動かし、これにより、てこの原理によって第1ケース部材11及び第2ケース部材12に力を加える。
【0012】
また、硬貨挿入部に挿入される硬貨が厚み寸法Tの小さい例えば1円、5円、10円硬貨などである場合、その硬貨は第1挿入部の奥方の第2挿入部まで挿入される。そしてユーザは、第2挿入部に挿入された厚み寸法Tの小さい硬貨を動かし、これにより、てこの原理によって第1ケース部材11及び第2ケース部材12に力を加える。
【0013】
ここで、本構成において、第1挿入部と第2挿入部とを接続する接続部の幅寸法は硬貨挿入部の入口の幅寸法よりも小さく構成されているとともに、第2挿入部の幅寸法は、当該第2挿入部の全体に亘って第1挿入部の幅寸法よりも小さく構成されている。そのため、第2挿入部に挿入された厚み寸法Tの小さい硬貨は、傾き角度が比較的小さい状態で硬貨挿入部の入口部分に接触することができる。
【0014】
このため、例えば第2挿入部まで挿入された厚み寸法Tの小さい硬貨の縁部が第2挿入部との接触面に対して滑ってしまうことが抑制される。その結果、厚み寸法Tの小さい硬貨に加えられた力が第1ケース部材及び第2ケース部材に効率的に伝わり、これにより、ユーザは、厚み寸法Tの大きい500円硬貨等を用いた場合だけでなく、厚み寸法Tの小さい例えば1円、5円、10円硬貨等を用いた場合においても、第1ケース部材及び第2ケース部材を簡単に開けることができる。このように、本構成の電子部品収納ケースによれば、厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を用いた場合でも簡単に開けることができる。
【0015】
また、この構成によれば、例えばバネなどのように補助的な力を作用させるための部品を追加することなく、厚みの異なる複数種類の硬貨に対応することができる。したがって、上記構成を実現するために部品点数や組立工数が増加すること等を抑制できる。
【0016】
(請求項2)
請求項2の構成によれば、前記第1挿入部と前記第2挿入部とを接続する接続部の幅寸法は前記硬貨挿入部の入口の幅寸法よりも小さく構成されている。この構成において、ユーザが厚み寸法Tの大きい例えば500円硬貨を用いて電子部品収納ケースを開けようとする場合、その厚み寸法Tの大きい硬貨は、第1挿入部に挿入される。また、ユーザが厚み寸法Tの小さい例えば1円、5円、10円硬貨を用いて電子部品収納ケースを開けようとする場合、その厚み寸法Tの小さい硬貨は、第2挿入部に挿入される。そのため、本構成によっても、上述した請求項1の構成と同様の作用効果が得られる。
【0017】
また、本構成によれば、更に、第1挿入部及び第2挿入部のうち少なくとも第2挿入部は、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている。すなわち、第2挿入部の一方又は両方の面が、奥方へ行くほど相互に離間する傾斜面に形成されている。これによれば、第2挿入部に挿入された硬貨を、電子部品収納ケースを開く方向へ動かした際に、その硬貨の縁部を、第2挿入部の傾斜面に対して面で接触させることができる。
【0018】
そのため、硬貨と第2挿入部との接触部分の摩擦抵抗を増大させることができ、これにより、第2挿入部に厚みの薄い硬貨を挿入して電子部品収納ケースを開ける方向に硬貨を動かした際に、その硬貨の縁部を更に滑り難くすることができる。したがって、本構成によれば、厚みの薄い硬貨を用いた場合に、ユーザが硬貨に加えた力を更に効率よく第2ケース部材に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合、すなわち、厚み寸法の大きい500円硬貨だけでなく、厚み寸法の小さい1円、5円、10円硬貨を用いた場合であっても、より簡単に電子部品収納ケースを開けることができる。
【0019】
なお、第1挿入部についても、第2挿入部と同様に、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されていても良い。これによれば、厚み寸法Tの大きい500円硬貨を用いた場合に、更に電子部品収納ケースが開け易くなる。
【0020】
(請求項3)
本願発明者は、図15に示すように、硬貨の縁部に僅かな段部901を有している点に着目した。すなわち、請求項3の構成によれば、電子部品収納ケースは、前記第1挿入部及び前記第2挿入部の少なくとも一方又は両方は、前記硬貨挿入部の幅方向に位置する面に設けられ前記硬貨の縁部に係止可能な係止部を更に有している。
【0021】
この構成によれば、係止部によって、硬貨90の縁の段部901を引っ掛けて係止することで、硬貨90を更に滑り難くすることができる。したがって、本実施形態によっても、ユーザが硬貨90に加えた力を更に効率よく電子部品収納ケースに伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単に電子部品収納ケースを開けることができる。
【0022】
(請求項4)
また、請求項4の構成によれば、前記硬貨挿入部は、前記硬貨挿入部の幅方向に位置する面を前記幅方向の外側へ向かって窪ませて形成された溝部を有している。これによれば、溝部によって、硬貨90の縁の段部901を引っ掛けて係止することで、硬貨90を更に滑り難くすることができる。したがって、本実施形態によっても、ユーザが硬貨90に加えた力を更に効率よく第1ケース部材及び第2ケース部材に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単に電子部品収納ケースを開けることができる。
【0023】
(請求項5)
また、請求項5の構成によれば、前記硬貨挿入部は、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている。これによれば、硬貨挿入部に挿入された硬貨を、電子部品収納ケースが開く方向へ動かした際に、硬貨の縁部と、硬貨挿入部を構成する周囲の面との接触面積を極力増やすことができる。これにより、上記各構成ほどではないものの、硬貨を滑り難くすることができ、ユーザが硬貨に加えた力を従来構成に比べて効率よく第1ケース部材及び第2ケース部材に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単に電子部品収納ケースを開けることができる。
【0024】
(請求項6)
ここで、例えば電子部品収納ケース内に収納される電子部品として回路基板が用いられるが、通常、回路基板は、同一形状のものを複数枚一括して製造するため、矩形形状のものが多い。そのため、電子部品収納ケース及びその内部の収納部を矩形にすることで、電子部品収納ケース内に矩形の電子基板をスペースの無駄無く配置することができる。しかし、電子部品収納ケース内に収納される例えばボタン電池は円板状であるため、電子部品収納ケースを矩形にすると、角部つまり隅部がデッドスペースとなって無駄になる。
【0025】
そこで、上記各構成において、前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材は、相互に結合された状態において矩形状に形成されており、前記硬貨挿入部は、矩形状の隅部に設けられている。これによれば、第1ケース部材及び第2ケース部材を矩形状に形成することで、回路基板等の矩形状の電子部品を効率良くスペースの無駄なく配置することができる。更に、硬貨挿入部は、矩形状の角部に設けられている。このように、電子部品収納ケースを矩形にした場合にデッドスペースになりがちな角部に硬貨挿入部を設けることで、電子部品収納ケース内部のスペースを有効活用でき、その結果、電子部品収納ケースの大型化を抑制しつつ、硬貨挿入部の領域を極力広く確保して電子部品収納ケースを開ける際の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態による電子部品収納ケースの一例について、上ケース部材を取り外した状態を示す平面図
図2】第1実施形態による電子部品収納ケースの一例について、図1のX2-X2線に沿って示す断面図
図3】第1実施形態による電子部品収納ケースの一例について、図1のX3-X3線に沿って示す断面図
図4】第1実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示す図
図5】第1実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図6】第2実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示す図
図7】第2実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図8】第3実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示す図
図9】第3実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図10】第4実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示す図
図11】第4実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図12】第5実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示す図
図13】第5実施形態による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図14】従来例による電子部品収納ケースの一例について、硬貨挿入部周辺を拡大して示すものであって、(A)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図であり、(B)は厚み寸法の大きい硬貨を用いてケースを開ける際の状態を示した図
図15】硬貨の一例として日本国に流通している硬貨の種類とサイズを示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1図5を参照して説明する。図1に示す電子部品収納ケース10(以下、ケース10と称する)は、例えば樹脂製であって、全体として矩形の板状又はブロック状に構成されている。本実施形態の場合、ケース10は、全体として正方形の板状又はブロック状に形成されている。また、本実施形態の場合、ケース10の4つの隅部は、角が落とされて湾曲したいわゆるR形状に形成されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、ケース10は、内部に収納部101を備えている。収納部101は、例えば矩形状の空間である。この場合、図1に示すように、収納部101の4つの隅部のうち1つは、隅切部102として形成されている。隅切部102は、矩形状の収納部101の角を落としていわゆる隅切した形状に形成されている。収納部101には、電池51を含む電子部品52が収納される。
【0030】
図2及び図3にも示すように、ケース10は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とを備えている。なお、図1は、第2ケース部材12が取り外された状態を示しており第2ケース部材12は表されていないが、説明を容易にするため、第2ケース部材12に関する構成については二点鎖線の引き出し線で符号を付している。
【0031】
第1ケース部材11と第2ケース部材12とは、外力が加えられることによって相互に分離可能に構成されている。この場合、収納部101は、第1ケース部材11と第2ケース部材12との間に設けられた空間、すなわち、周囲を第1ケース部材11及び第2ケース部材12に囲まれた空間である。
【0032】
収納部101内に収納される電池51は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とのうちいずれか一方に、直接的又は電子部品52等を介して着脱可能に固定される。また、収納部101内に収納される電子部品52は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とのうちいずれか一方に着脱不可能に固定される。この場合、第1ケース部材11と第2ケース部材12とのうち、電池51及び電子部品52が固定される方を下ケース部材と称し、電池51及び電子部品52が固定されない方を上ケース部材と称することもできる。
【0033】
本実施形態の場合、図2及び図3に示すように、電子部品52は、第1ケース部材11に設けられた取付部111を介して第1ケース部材11に固定されている。また、電池51は、電子部品52に着脱可能に設けられている。
【0034】
ケース10は、嵌合部13を備えている。嵌合部13は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とを分離可能に結合させる機能を有する。嵌合部13は、爪部131と受け部132とを有して構成されている。爪部131は、第1ケース部材11又は第2ケース部材12の一方に設けられている。また、受け部132は、第1ケース部材11及び第2ケース部材12のうちの他方つまり爪部131が設けられていない方に設けられている。本実施形態の場合、爪部131は第1ケース部材11に設けられており、受け部132は第2ケース部材12に設けられている。この場合、爪部131と受け部132とは、相互に対向する位置に設けられている。
【0035】
図2に示すように、第1ケース部材11と第2ケース部材12とが結合された状態において、爪部131と受け部132とは、ケース10の面方向に並んで対向している。本実施形態の場合、第1ケース部材11に設けられた爪部131は、第2ケース部材12に設けられた受け部132の内側に配置されている。爪部131と受け部132とは、それぞれケース10の面方向へ突出及び窪んだ形状に形成されている。
【0036】
この構成において、嵌合部13つまり爪部131及び受け部132は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とが接近する方向への力が作用することにより、相互に嵌合する。これにより第1ケース部材11と第2ケース部材12とは、爪部131と受け部132との作用により結合される。また、嵌合部13つまり爪部131及び受け部132は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とが離間する方向への力が作用することにより、嵌合が解除される。これにより、第1ケース部材11と第2ケース部材12とが分離されて、収納部101が外部に露出する。
【0037】
また、ケース10は、図1等に示すように、穴部14を有している。穴部14は、例えば図示しないキーリングを挿入するための穴であり、キーリング穴とも称する。穴部14は、矩形状この場合正方形状のケース10において、硬貨挿入部20の対角となる角部に設けられており、第1ケース部材11及び第2ケース部材12をケース10の厚み方向に貫いて形成されている。
【0038】
ケース10は、硬貨挿入部20を備えている。硬貨挿入部20は、ケース10を開ける際、つまり第1ケース部材11と第2ケース部材12とを相互に分離させる際に、例えば図15に示す硬貨90を挿入してケース10に外力を加えるための構成である。本実施形態の場合、硬貨挿入部20は、図1に示すように、ケース10の4つの角部つまり隅部のうちの1つに設けられている。
【0039】
硬貨挿入部20は、図3及び図4に示すように、第1ケース部材11及び第2ケース部材12のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されており、第1ケース部材11と第2ケース部材12とに囲まれて構成されている。この場合、側面とは、ケース10の四方の側面、つまりケース10において電池51の径方向の外側に位置する面である。本実施形態の場合、硬貨挿入部20は、第1ケース部材11及び第2ケース部材12の隅部つまり角部の側面からケース10の中心方向へ平面視で円弧状に窪ませて形成されている。なお、硬貨挿入部20は、第1ケース部材11及び第2ケース部材12のうち一方の側面を窪ませて形成されたものでも良い。
【0040】
硬貨挿入部20は、厚み寸法の異なる複数種類の硬貨、例えば図15に示す1円~500円硬貨を挿入可能に構成されている。ここで、6種類の硬貨のうち1円、5円、10円硬貨の3種類は、その厚み寸法Tが約1.5mmである。また、6種類の硬貨のうち50円、100円、500円硬貨は、その厚み寸法Tが約1.7mm又は約1.8mmである。そこで、本実施形態では、図15に示す6種類の硬貨のうち、1円、5円、10円を厚み寸法Tの小さい硬貨に分類し、50円、100円、500円を、厚み寸法Tの大きい硬貨に分類する。
【0041】
硬貨挿入部20は、少なくとも幅寸法の異なる2つの挿入部を有している。本実施形態の場合、硬貨挿入部20は、図4に示すように、第1挿入部21及び第2挿入部22を有している。第1挿入部21は、硬貨挿入部20の入口201側、つまりケース10において中心Oに対する外側部分に設けられている。第1挿入部21は、主に厚み寸法Tの大きい硬貨である50円、100円、500円硬貨の挿入を受け付ける。第2挿入部22は、第1挿入部21に連通して形成され、第1挿入部21よりも奥側つまりケース10の中心O側に設けられている。第2挿入部22は、主に厚み寸法Tの小さい硬貨である、1円、5円、10円硬貨の挿入を受け付ける。
【0042】
図4に示すように、硬貨挿入部20の入口201の幅寸法を幅寸法W1とし、第1挿入部21と第2挿入部22とを接続する接続部202の幅寸法を幅寸法W2とする。この場合、接続部202の幅寸法W2は、硬貨挿入部20の入口201の幅寸法W1よりも小さく設定されている。これにより、第1挿入部21と第2挿入部22とは、段差形状の接続部202を境界にして接続されている。なお、本実施形態において、硬貨挿入部20の入口201の幅方向、及び接続部202の幅方向とは、ケース10の厚み方向つまり図4の紙面の上下方向を意味する。
【0043】
入口201の幅寸法W1は、厚み寸法の小さい硬貨つまり1円、5円、10円硬貨の厚み寸法約1.5mmよりも大きく、かつ、厚み寸法が最大となる500円硬貨の厚み寸法約1.8mmよりも僅かに大きい値に設定されている。本実施形態の場合、入口201の幅寸法W1は、500円硬貨の厚み約1.8mmに所定のクリアランスを加えた値、例えば2.0mm程度に設定されている。この場合、所定のクリアランスは0.2mmとなる。
【0044】
一方、接続部202における幅寸法W2は、厚み寸法Tの小さい硬貨である1円、5円、10円硬貨の厚み寸法約1.5mmよりも僅かに大きく、かつ、厚み寸法が最大となる500円硬貨の厚み約1.8mmよりも小さい値に設定されている。本実施形態の場合、接続部202における幅寸法W2は、厚み寸法Tの小さい硬貨である1円、5円、10円硬貨の厚み寸法約1.5mmに所定のクリアランスを加えた値で、かつ、1.8mm以下となる値に設定されている。所定のクリアランスが0.2mmであれば、接続部202の幅寸法W2は、例えば1.7mm程度に設定される。
【0045】
この場合、第1挿入部21における幅方向の両側の面211、212は、ケース10の平面方向に平行であって、かつ、相互に対向して平行に配置されている。そして、対向する2つの面211、212間の距離は、第1挿入部21の全体に亘って入口201の幅寸法W1に等しく設定されている。すなわち、第1挿入部21の幅寸法は、当該第1挿入部21全体に亘って硬貨挿入部20の入口201の幅寸法W1に等しい。
【0046】
また、第2挿入部22における幅方向の両側の面221、222は、ケース10の平面方向に平行であって、かつ、相互に対向して平行に配置されている。そして、対向する2つの面221、222間の距離は、第2挿入部22の全体に亘って接続部202の幅寸法W2に等しく設定されている。すなわち、第2挿入部22の幅寸法は、当該第2挿入部22全体に亘って接続部202の幅寸法W2に等しい。したがって、第2挿入部22の幅寸法W2は、当該第2挿入部22の全体に亘って第1挿入部21の幅寸法W1よりも小さく設定されている。
【0047】
また、図1に示すように、第1挿入部21と第2挿入部22とは同心円を有する円弧状に配置されている。すなわち、硬貨挿入部20の奥側の壁部つまり第2挿入部22の奥側の壁部となる奥壁部203、及び接続部202は、いずれも平面視において円弧状に形成されている。そして、接続部202は、平面視において、奥壁部203と同一の中心を有しかつ半径の小さい同心円の円弧状の形成されている。
【0048】
本実施形態のケース10は、例えば無線タグ装置1に適用することができる。無線タグ装置1は、例えばホームセキュリティシステムの一部を構成するもので、防犯センサ等の警備機器を制御する制御装置に対し、各種設定や警備状態の解除等の操作を行う際の認証に用いるためのものである。無線タグ装置1は、ケース10の収納部101内に、上述した電池51及び電子部品52の他、防水部材15を収納して構成されている。すなわち、ケース10は、防水部材15を更に備えている。
【0049】
電池51は、例えば円板状のいわゆるボタン電池やその他の円柱状の小型の電池であり、適宜の交換が必要な消耗品である。電池51は、電子部品52を動作させるための電力を供給する。電池51は、電子部品52の基板上に着脱可能に取り付けられている。本実施形態の場合、電池51は、ボタン電池であり、電子部品収納ケース10の中心位置つまり収納部101の中心位置に配置されている。すなわち、電池51の中心位置は、電子部品収納ケース10の中心位置つまり収納部101の中心位置Oとほぼ一致している。電子部品52は、例えば基板に半導体素子等を実装した電子回路であり、外部の機器との無線通信を行う機能等を有する。
【0050】
電池51、電子部品52、及び防水部材15は、ケース10の収納部101内に収納されている。防水部材15は、防水性、柔軟性、及び弾性を有する例えばゴム材で構成されている。防水部材15は、ケース10外部の水分が収納部101内に侵入することを抑制する又は防ぐ機能を有する。防水部材15は、容器部151と、シール部152と、を一体に有している。容器部151は、図2及び図3等に示すように、収納部101の内側に沿った容器状に形成されており、第2ケース部材12側が開放されている。容器部151は、収納部101内に配置されている。そして、電池51、電子部品52は、防水部材15のうち容器部151内に収納されている。すなわち、防水部材15の容器部151は、電池51及び電子部品52と、第1ケース部材11との間に設けられている。
【0051】
シール部152は、容器部151の上端の縁部からケース10の平面方向の外側へ向かって延び出ており、その先端部が例えば略円柱形に膨らんでいる。この場合、シール部152を含む防水部材15は、嵌合部13の内側つまり嵌合部13に対してケース10の中心O側に設けられている。換言すれば、嵌合部13は、防水部材15に対してケース10における外側に設けられている。
【0052】
第1ケース部材11と第2ケース部材12とが結合されている状態において、シール部152は、第1ケース部材11と第2ケース部材12との間に押し潰されて挟み込まれている。このため、第1ケース部材11と第2ケース部材12とはシール部152を介して水密に密着しており、これにより、第1ケース部材11と第2ケース部材12との隙間から水分が侵入することが抑制又は防止される。なお、防水部材15は、弾性及び柔軟性をそれほど有さない部材、例えばプラスチック等で構成されていても良い。また、シール部152は、例えば金属製のシールリングで構成しても良い。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、ケース10は、内部に電池51を含む電子部品52を収納可能な収納部101を有し、第1ケース部材11と第2ケース部材12とに分離可能に構成されている。ケース10は、嵌合部13と、硬貨挿入部20と、を備える。嵌合部13は、第1ケース部材11と第2ケース部材12とを分離可能に結合する。硬貨挿入部20は、第1ケース部材11及び第2ケース部材12のいずれか一方又は両方の側面を窪ませて形成されて、厚み寸法の異なる複数種類の硬貨を挿入可能に構成されている。
【0054】
硬貨挿入部20は、少なくとも、硬貨挿入部20の入口201側に設けられた第1挿入部21と、第1挿入部21に連通し第1挿入部21よりも奥側に設けられた第2挿入部22と、を有している。第2挿入部22と第1挿入部21とを接続する接続部202の幅寸法W2は、硬貨挿入部20の入口201の幅寸法W1よりも小さく構成されている。そして、第2挿入部22の幅寸法W2は、当該第2挿入部22の全体に亘って第1挿入部21の幅寸法W1よりも小さく構成されている。
【0055】
この構成によれば、ユーザがケース10を開けるつまり第1ケース部材11と第2ケース部材12とを分離させる場合には、例えば図5の(A)、(B)に示すように、ユーザは、ケース10の側面に形成された硬貨挿入部20に、例えば硬貨90を挿入し、てこの原理で第1ケース部材11及び第2ケース部材12に力を加える。このとき、例えば図5の矢印方向に硬貨90を動かすと、硬貨90の上面が、硬貨挿入部20の入口201に接触する。このときの硬貨90と入口201との接触箇所を接触点Pとする。
【0056】
ここで、硬貨90が例えば厚み寸法Tの大きい500円硬貨91である場合、硬貨挿入部20に挿入された500円硬貨91は、図5(A)に示すように接続部202の段差形状に引っ掛かる。このため、厚み寸法Tの大きい500円硬貨91は、第1挿入部21よりも奥方の第2挿入部22までは挿入されない。そしてユーザは、硬貨91を図5の上方へ動かし、これにより、てこの原理によって第1ケース部材11及び第2ケース部材12に相互に離間する方向の力が加えられる。
【0057】
また、硬貨90が例えば厚み寸法Tの小さい10円硬貨92である場合、硬貨挿入部20に挿入された10円硬貨92は、図5(B)に示すように第2挿入部22まで挿入される。そしてユーザは、硬貨92を図5の上方へ動かし、これにより、てこの原理によって第1ケース部材11及び第2ケース部材12に相互に離間する方向の力が加えられる。
【0058】
この場合、第2挿入部22と第1挿入部21とを接続する接続部202の幅寸法W2は、硬貨挿入部20の入口201の幅寸法W1よりも小さく構成されている。そして、第2挿入部22の幅寸法W2は、当該第2挿入部22の全体に亘って第1挿入部21の幅寸法W1よりも小さく構成されている。そのため、第2挿入部22に挿入された厚みの薄い硬貨92は、第2挿入部22において硬貨92の縁部が接触している面221に対する傾き角度が比較的小さい状態で接触点Pに接触する。
【0059】
したがって、厚み寸法Tの小さい硬貨92を用いた場合であっても、硬貨92が接触点Pに接触する際の硬貨92の傾き角度を小さくすることができ、これにより硬貨92の縁部が面221に対して滑ってしまうことが抑制される。その結果、硬貨92に加えられた矢印方向の力がケース10に効率的に伝えることができる。このように、本実施形態によれば、ユーザは、厚み寸法の大きい硬貨91を用いた場合だけでなく、厚み寸法の小さい硬貨92を用いた場合においても、ケース10を簡単に開けることができる。
【0060】
また、この構成によれば、例えばバネなどのように補助的な力を作用させるための部品を追加することなく、厚みの異なる複数種類の硬貨に対応することができる。したがって、上記構成を実現するために部品点数や組立工数が増加すること等を抑制できる。
【0061】
ここで、例えばケース10内に収納される電子部品52として回路基板が用いられるが、通常、回路基板は、同一形状のものを複数枚一括して製造するため、矩形形状のものが多い。そのため、ケース10及び収納部101を矩形にすることで、収納部101内に矩形の電子基板をスペースの無駄無く配置することができる。しかし、ケース10内に収納される例えばボタン電池51は円板状であるため、ケース部材11及び収納部101を矩形にすると、角部つまり隅部がデッドスペースとなって無駄になる。
【0062】
そこで、本実施形態によれば、第1ケース部材11及び第2ケース部材12は、相互に結合された状態において矩形状に形成されている。そして、硬貨挿入部20は、矩形状の角部に設けられている。これによれば、第1ケース部材11及び第2ケース部材12を矩形状に形成することで、回路基板等の矩形状の電子部品52を効率良くスペースの無駄なく配置することができる。更に、硬貨挿入部20は、矩形状の角部に設けられている。このように、ケース10及び収納部101を矩形にした場合にデッドスペースになりがちな角部に硬貨挿入部20を設けることで、収納部101内のスペースを有効活用でき、その結果、ケース10の大型化を抑制しつつ、硬貨挿入部20の領域を極力広く確保してケース10を開ける際の操作性を向上させることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図6及び図7を参照して第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、硬貨挿入部20が第1挿入部21及び第2挿入部22を有している点においては上記第1実施形態と共通しているが、第1挿入部21及び第2挿入部22の断面形状が上記第1実施形態と異なっている。
【0064】
すなわち、上記第1実施形態と同様に、本実施形態においても、図6に示すように、第1挿入部21と第2挿入部22とを接続する接続部202の幅寸法W2は、硬貨挿入部20の入口201の幅寸法W1よりも小さく構成されている。そして、本実施形態において、第1挿入部21及び第2挿入部22の少なくとも第2挿入部22、又は第1挿入部21と第2挿入部22の両方が、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている。本実施形態の場合、第1挿入部21及び第2挿入部22の両方が、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている。
【0065】
すなわち、第1挿入部21の上下の面211、212は、第1挿入部21の奥方つまりケース10の中心O側へ向かうほど相互に離間するように傾斜している。同様に、第2挿入部22の上下の面221、222も、第2挿入部22の奥方つまりケース10の中心O側へ向かうほど相互に離間するように傾斜している。
【0066】
この場合、第1挿入部21の上下の面211、212の傾斜角度は、例えば厚み寸法Tの大きい500円硬貨91の一方の面を第1挿入部21の一方の面211、212に接触させた場合に、500円硬貨91の他方の面が硬貨挿入部20の入口201に接触する程度の角度が好ましい。また、第2挿入部22の上下の面221、222の傾斜角度は、例えば厚み寸法Tの小さい10円硬貨92の一方の面を第2挿入部22の一方の面221、222に接触させた場合に、100円硬貨92の他方の面が硬貨挿入部20の入口201に接触する程度の角度が好ましい。
【0067】
この構成において、ユーザが厚み寸法Tの大きい例えば500円硬貨91を用いてケース10を開けようとする場合、上記第1実施形態と同様に、硬貨91は、第1挿入部21に挿入される。また、ユーザが厚み寸法Tの小さい例えば10円硬貨92を用いてケース10を開けようとする場合、上記第1実施形態と同様に、硬貨92は、第2挿入部22に挿入される。そのため、この構成によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
更に、第1挿入部21の上下の面211、212、及び第2挿入部22の上下の面221、222は、それぞれ奥方つまりケース10の中心O側へ向かうほど相互に離間するように傾斜している。これによれば、図7に示すように、第1挿入部21又は第2挿入部22に挿入された硬貨90を、ケース10が開く方向へ動かした際に、その硬貨90の縁部を、第1挿入部21の上下の面211、212又は第2挿入部22の上下の面221、222に対して面で接触させることができる。
【0069】
これにより、硬貨90と面211、212、221、222との摩擦抵抗を増大させることができ、硬貨90を更に滑り難くすることができる。したがって、本実施形態によれば、ユーザが硬貨90に加えた力を更に効率よくケース10に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単にケース10を開けることができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図8及び図9を参照して第3実施形態について説明する。
本願発明者は、図15に示すように、硬貨の縁部に僅かな段部901を有している点に着目した。本実施形態の硬貨挿入部20は、図8に示すように、第2実施形態の構成に加え、複数の係止部、この場合、第1係止部231及び第2係止部232を更に有している。
【0071】
第1係止部231は、第1挿入部21に設けられており、第1挿入部21の上下の面211、212を窪ませた段差形状に形成されている。第1係止部231は、図9(A)に示すように、第1挿入部21に厚み寸法Tの大きい硬貨91が挿入された際に、その硬貨91の縁の段部901を係止する。また、第2係止部232は、図9(B)に示すように、第2挿入部22に厚み寸法Tの小さい硬貨92が挿入された際に、その硬貨92の縁の段部901を係止する。
【0072】
この構成によっても、上記第1、2実施形態と同様の作用効果が得られる。更に、本実施形態によれば、係止部231、232によって、硬貨91、92の縁の段部901を引っ掛けて係止することで、硬貨90を更に滑り難くすることができる。したがって、本実施形態によっても、ユーザが硬貨90に加えた力を更に効率よくケース10に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、更に簡単にケース10を開けることができる。
【0073】
(第4実施形態)
次に、図10及び図11を参照して第3実施形態について説明する。
本実施形態においても、硬貨挿入部20の具体的構成が上記各実施形態と異なる。すなわち、本実施形態において、硬貨挿入部20は、1つ又は複数の溝部を有している。本実施形態の場合、硬貨挿入部20は、図10に示すように、硬貨挿入部20の幅方向に位置する面241、242に対してそれぞれ3つの溝部251、252を有している。各溝部251、252は、硬貨挿入部20の各面241、242を幅方向の外側へ向かって窪ませて形成されている。
【0074】
この構成によれば、各溝部251、252によって、硬貨91、92の縁の段部901を引っ掛けて係止することで、硬貨90を更に滑り難くすることができる。したがって、本実施形態によっても、ユーザが硬貨90に加えた力を更に効率よくケース10に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単にケース10を開けることができる。
【0075】
(第5実施形態)
次に、図12及び図13を参照して第5実施形態について説明する。
本実施形態においても、硬貨挿入部20の具体的構成が上記各実施形態と異なる。すなわち、本実施形態において、硬貨挿入部20は、奥側へ行くに従って幅寸法が大きくなる傾斜形状に形成されている。すなわち、硬貨挿入部20の上下方向の面つまり幅方向の面261、262は、硬貨挿入部20の奥方つまりケース10の中心O側へ向かうほど相互に離間するように傾斜している。そして、本実施形態における硬貨挿入部20の上下の面261、262は、全体として平坦に形成されている。
【0076】
つまり、本実実施形態の硬貨挿入部20内には、第1実施形態及び第2実施形態のような段差形状の接続部202や第3実施形態のような係止部231、232、更には第4実施形態のような溝部251、252は設けられていない。これによれば、図13(A)、(B)に示すように、硬貨90を回転させた際において、硬貨90の縁部と面261、262との接触面積を極力増やすことができる。その結果、上記各実施形態ほどではないものの、硬貨90を滑り難くすることができ、ユーザが硬貨90に加えた力を従来構成に比べて効率よくケース10に伝達することができる。その結果、異なる厚み寸法の硬貨を用いた場合であっても、簡単にケース10を開けることができる。
【0077】
なお、上記説明した各実施形態は、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
例えば上記各実施形態は、相互に組み合わせて適用することができる。
また、上記各実施形態において、硬貨挿入部20は、電子部品収納ケース10の角部に限らず、外周部分の中央部に設けられていても良い。
【0078】
また、上記各実施形態においては、本願の出願時において日本国内で製造し流通している硬貨、具体的には図15の表に示された硬貨を使用することを前提とした。しかしながら、上記各実施形態が日本国以外の国又は地域で実施される場合には、その国又は地域で流通している硬貨の使用を前提とすることができる。すなわち、上記各実施形態の具体的な寸法関係は、上記実施形態をする国や地域で流通している硬貨の規格等に合わせて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0079】
図面中、10は電子部品収納ケース、101は収納部、11は第1ケース部材、12は第2ケース部材、13は嵌合部、20は硬貨挿入部、201は入口、21は第1挿入部、22は第2挿入部、231は第1係止部(係止部)、232は第2係止部(係止部)、251、252は溝部、51は電池、52は電子部品、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15