(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】歯溝加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20230926BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B23F5/16
B23Q11/00 L
(21)【出願番号】P 2019128452
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健斗
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩之
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164751(JP,A)
【文献】特開平08-243876(JP,A)
【文献】特開昭50-127291(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148862(JP,U)
【文献】特開2000-117542(JP,A)
【文献】特開2010-125552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 5/16
B23Q 11/00
B24B 5/04、5/06
B23B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の工作物を加工する加工部を有する工具を回転駆動すると共に前記工作物に対して相対移動可能に支持し、且つ、前記工作物に対して少なくとも前記工具の周囲に向けて流体を噴出可能な工具側主軸装置と、
前記工作物を回転可能に支持すると共に前記工作物を前記工具に対して相対移動可能な工作物側主軸装置と、
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置は、前記工作物に加工を開始する第一位置に前記工具を配置し、且つ、前記工具及び前記工作物を回転駆動すると共に前記流体を前記工作物に向けて噴出した状態で、前記第一位置から前記工作物の中心軸線の方向にて離間した第二位置まで前記工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物の内周及び外周のうちの一方に溝状の被加工部を加工する加工動作を行い、
前記制御装置は、前記加工動作の後の非加工状態において、前記被加工部が前記工作物の前記内周に施された場合、前記工作物の回転速度を前記加工動作における回転速度である前記工作物の基準回転速度よりも低速にし、前記被加工部が前記工作物の前記外周に施された場合、前記工作物の回転速度を前記基準回転速度よりも高速にするように、前記工作物側主軸装置に対して前記工作物の回転速度を変更する回転速度制御を実行する、歯溝加工装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記工作物を連続加工する場合において、前記加工動作が完了して前記第二位置にある前記工具を次の前記工作物の開始するために前記第一位置に戻すまでの間に前記回転速度制御を実行する、請求項1に記載の歯溝加工装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
次の前記工作物を加工しない場合において、前記加工動作が完了して前記第二位置にある前記工具を所定の原点位置に戻すまでの間に前記回転速度制御を実行する、請求項1に記載の歯溝加工装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記工作物を連続加工する場合において、前記加工動作が完了して前記第二位置にある前記工具を次の前記工作物の開始するために前記第一位置に戻すまでの間に、予め設定された時間が経過するまで前記工具の前記工作物に対する相対的な移動を停止するように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方の作動を制御する、請求項1に記載の歯溝加工装置。
【請求項5】
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置は、協働して、
前記加工動作に伴って前記第二位置に相対移動した前記工具を、前記第二位置から前記工作物の径方向に離間した第三位置に退避させる退避動作と、
前記退避動作によって前記第三位置に退避させた前記工具を、前記第三位置から前記工作物の中心軸線の方向に離間し、且つ、前記工作物よりも前記第一位置側となる第四位置に向けて戻るように送る戻し送り動作と、
前記戻し送り動作によって前記第四位置に戻した前記工具を前記第一位置に復帰させる復帰動作と、を行い、
前記制御装置は、
前記戻し送り動作において、前記回転速度制御を実行する、請求項2又は4に記載の歯溝加工装置。
【請求項6】
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置は、協働して、
前記加工動作に伴って前記第二位置に相対移動した前記工具を、前記第二位置から前記工作物の径方向に離間した第三位置に退避させる退避動作と、
前記退避動作によって前記第三位置に退避させた前記工具を、前記第三位置から前記工作物の中心軸線の方向に離間し、且つ、前記工作物よりも前記第一位置側となる第四位置に向けて戻るように送る戻し送り動作と、
前記戻し送り動作によって前記第四位置に戻した前記工具を前記第一位置に復帰させる復帰動作と、を行い、
前記制御装置は、
前記退避動作における前記回転速度制御によって変更された前記工作物の回転速度を、前記戻し送り動作において維持し、且つ、前記復帰動作において前記基準回転速度に戻す、請求項2又は4に記載の歯溝加工装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記退避動作が完了した後において、予め設定された時間が経過してから前記戻し送り動作を開始するように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方の作動を制御する、請求項5又は6に記載の歯溝加工装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記戻し送り動作において前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の速度を表す送り速度が、前記退避動作において前記工具を前記第二位置から前記第三位置に退避させる際の速度を表す基準送り速度よりも低速になるように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方に対して前記工具の前記送り速度を変更する送り速度制御を実行する、請求項5-7のうちの何れか一項に記載の歯溝加工装置。
【請求項9】
環状の工作物を加工する加工部を有する工具を回転駆動すると共に前記工作物に対して相対移動可能に支持し、且つ、前記工作物に対して少なくとも前記工具の周囲に向けて流体を噴出可能な工具側主軸装置と、
前記工作物を回転可能に支持すると共に前記工作物を前記工具に対して相対移動可能な工作物側主軸装置と、
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置は、
前記工作物に加工を開始する第一位置に前記工具を配置し、且つ、前記工具及び前記工作物を回転駆動すると共に前記流体を前記工作物に向けて噴出した状態で、前記第一位置から前記工作物の中心軸線の方向にて離間した第二位置まで前記工具を前記工作物に対して相対移動させることにより、前記工作物の内周及び外周のうちの一方に溝状の被加工部を加工する加工動作と、
前記加工動作に伴って前記第二位置に相対移動した前記工具を、前記第二位置から前記工作物の径方向に離間した第三位置に退避させる退避動作と、
前記退避動作によって前記第三位置に退避させた前記工具を、前記第三位置から前記工作物の中心軸線の方向に離間し、且つ、前記工作物よりも前記第一位置側となる第四位置に向けて戻るように送る戻し送り動作と、
前記戻し送り動作によって前記第四位置に戻した前記工具を前記第一位置に復帰させる復帰動作と、を行い、
前記制御装置は、
前記工作物から切屑を除去するために、前記戻し送り動作において前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の速度を表す送り速度が、前記退避動作において前記工具を前記第二位置から前記第三位置に退避させる際の速度を表す基準送り速度よりも低速になるように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方に対して前記工具の前記送り速度を変更
して、前記戻し送り動作において前記流体を前記工作物に向けて噴出する送り速度制御を実行する、歯溝加工装置。
【請求項10】
前記工具側主軸装置は、
前記工具の軸方向の先端に形成され、前記工具の径方向外側に向けて且つ前記工具の周囲に向けて前記流体を噴出する第一噴出穴と、
前記工具の前記加工部よりも軸方向の基端側に形成され、前記工具の軸方向に向けてかつ前記工具の周囲に向けて前記流体を噴出する第二噴出穴と、を備える、請求項9に記載の歯溝加工装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記戻し送り動作において第一モードと第二モードとを切替可能に構成され、
前記第一モードにおいて、前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の速度を表す送り速度が前記基準送り速度よりも低速になるように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方に対して前記工具の前記送り速度を変更する送り速度制御を実行し、
前記第二モードにおいて、前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の速度を表す送り速度が、前記第一モードにおいて前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の送り速度よりも高速になるように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方に対して前記工具の前記送り速度を変更する送り速度制御を実行する、請求項9又は10に記載の歯溝加工装置。
【請求項12】
前記第二モードにおいて、前記工具を前記第三位置から前記第四位置に送る際の速度を表す送り速度が前記基準送り速度になるように、前記工具側主軸装置及び前記工作物側主軸装置の少なくとも一方に対して前記工具の前記送り速度を変更する送り速度制御を実行する、請求項11に記載の歯溝加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯溝加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された歯溝加工装置が知られている。この従来の歯溝加工装置は、工具に工具刃に向かう方向へ流体を噴出可能な吐出孔が設けられており、噴出された流体が工具刃による工作物の加工位置から工具の工作物に対する相対的な送り進行方向に移動するようになっている。これにより、従来の歯溝加工装置においては、切削加工により発生した切屑が吐出孔から噴出される流体の圧力により送り進行方向に噴き飛ばすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工作物の内周面を加工して内周側に切屑が存在する場合、切屑が工作物を共に高速回転している状態では切屑に遠心力が作用して工作物の内周に張り付く。又、工作物の外周面を加工して外周側に切屑が存在する場合、切屑に作用する遠心力が小さい状態では切屑が工作物から外方に飛ばされず工作物に張り付いたままになる。上記従来の歯溝加工装置においては、流体の圧力によって切屑を噴き飛ばすようになっているが、切屑の除去性能を向上させるためには、切屑に遠心力が作用した状態を考慮する必要がある。
【0005】
本発明は、加工によって発生した屑を除去する除去性能を向上させる歯溝加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯溝加工装置は、環状の工作物を加工する加工部を有する工具を回転駆動すると共に工作物に対して相対移動可能に支持し、且つ、工作物に対して少なくとも工具の周囲に向けて流体を噴出可能な工具側主軸装置と、工作物を回転可能に支持すると共に工作物を工具に対して相対移動可能な工作物側主軸装置と、工具側主軸装置及び工作物側主軸装置の作動を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
工具側主軸装置及び工作物側主軸装置は、工作物に加工を開始する第一位置に工具を配置し、且つ、工具及び工作物を回転駆動すると共に流体を工作物に向けて噴出した状態で、第一位置から工作物の中心軸線の方向にて離間した第二位置まで工具を工作物に対して相対移動させることにより、工作物の内周及び外周のうちの一方に溝状の被加工部を加工する加工動作を行う。
【0008】
制御装置は、加工動作の後の非加工状態において、被加工部が工作物の内周に施された場合、工作物の回転速度を加工動作における回転速度である工作物の基準回転速度よりも低速にし、被加工部が工作物の外周に施された場合、工作物の回転速度を基準回転速度よりも高速にするように、工作物側主軸装置に対して工作物の回転速度を変更する回転速度制御を実行する。
【0009】
これによれば、加工動作の後の非加工状態において、制御装置は、回転速度制御を実行することにより、工作物の回転速度を変更することができる。この場合、工作物の内周に被加工部を形成する場合には、制御装置は、工作物の回転速度を基準回転速度よりも低速にすることができる。これにより、加工によって生じた屑に作用する遠心力を低減し、屑の被加工部への張り付きを抑制することができる。従って、遠心力が低減された屑が工作物の内部に落下しやすくなり、更には遠心力が低減された屑に流体を当てることにより、屑を工作物から除去することができる。従って、加工によって発生した屑を除去する除去性能を向上させることができる。
【0010】
又、工作物の外周に被加工部を形成する場合には、制御装置は、工作物の回転速度を基準回転速度よりも高速にすることができる。これにより、加工によって生じた屑に作用する遠心力を増大させ、屑が被加工部から外方に剥がれやすくすることができる。従って、遠心力が増加された屑が工作物Wの外部に飛び出しやすくなり、更には遠心力が増加された屑に流体を当てることにより、屑を工作物から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】加工装置の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の加工装置の概略構成及び制御装置を示す図である
【
図3】工作物保持具の概略構成を示す断面図である。
【
図4】工具の概略構成を径方向に見た断面図である。
【
図5】
図1の工具の概略構成を刃側から軸線方向に見た図である。
【
図6】歯溝加工方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】回転速度制御及び送り速度制御を説明するための表である。
【
図9】回転速度制御及び送り速度制御を説明するための表である。
【
図10】内歯加工動作の具体例を説明するための表である。
【
図12】回転速度制御及び送り速度制御を説明するための表である。
【
図13】回転速度制御及び送り速度制御を説明するための表である。
【
図14】外歯加工動作の具体例を説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.対象の工作物)
歯溝加工装置による加工対象である工作物について説明する。工作物は、環状に形成されており、内周面又は外周面に歯溝を有する。当該歯溝が、歯溝加工装置による溝状の被加工部となる。
【0013】
ここで、歯溝は、歯車の溝、スプラインの溝、キー溝等を含む。歯車及びスプラインにおいては、周方向に位置する複数の歯溝のそれぞれが被加工部となる。キー溝は、周方向に1つの溝、及び、複数の溝を含む。又、歯溝の側面は、インボリュート曲線や、直線を含む。
【0014】
(2.歯溝加工装置の概要)
歯溝加工装置は、環状の工作物に上記の歯溝を加工するための加工装置である。歯溝加工装置は、工作物の周方向に複数の歯溝を加工するスカイビング加工が可能な切削装置、及び、スカイビング加工と同様の動作による研削が可能な研削装置を含む。
【0015】
ここで、スカイビング加工は、工作物の軸線と周方向に複数の凸刃を有する工具の軸線とに交差角を与えた状態で、双方を歯数比に応じた回転比で同期回転させながら工具を工作物の軸線方向に送る加工方法である。スカイビング加工は、工作物を高速回転させながら、工作物が1回転する際に、工作物の複数の歯溝の中で一の歯溝が複数の凸刃の中で1つの凸刃のみにより加工される加工方法である。又、切削装置と研削装置とは、工具が切削工具であるか、研削工具(砥石車)であるかが相違するのみであり、工作物と工具の加工動作については同一である。
【0016】
又、切削工具は、周方向に複数の凸刃を備える工具であり、例えば、スカイビングカッタを挙げることができる。尚、切削工具は、1つの凸刃のみを備える工具とすることもできる。又、研削工具(砥石車)についても、切削工具と同様に、スカイビングカッタのような複数の凸刃を備える砥石車や、1つの凸刃のみを備える砥石車を適用することができる。
【0017】
歯溝加工装置は、工作物と工具とが相対的に上記動作を行うことができる装置であれば良い。例えば、歯溝加工装置は、移動軸として直交3軸及び回転2軸を有する5軸マシニングセンタや、更に工作物用の1軸を有する6軸マシニングセンタを適用できる。又、歯溝加工装置は、5軸マシニングセンタの他に、軸構成が異なるギヤスカイビング専用加工機を適用することもできる。
【0018】
(3.歯溝加工装置1の構成)
歯溝加工装置1の一例について、
図1及び
図2を参照して説明する。歯溝加工装置1は、歯車を加工する装置を例に挙げる。歯溝加工装置1は、内歯車である工作物Wの被加工部Wwである内歯、又は、外歯車である工作物Wの被加工部Wwである外歯を創成するために、切削加工を行うものである。歯溝加工装置1は、
図1に示すように、例えば、直交3軸(X軸線、Y軸線、Z軸線)方向の移動、C軸線(工作物Wの中心軸線Cw)回りの回転、及び、A軸線(C軸線に直交する軸線)回りの揺動が可能な5軸マシニングセンタである。
【0019】
歯溝加工装置1は、5軸マシニングセンタとして、横型マシニングセンタ及び立型マシニングセンタの何れを適用することもできる。又、直交3軸線及びA軸線の構成は、工作物Wと工具Tとが相対的に移動できれば良く、工作物Wと工具Tの何れを移動させても良い。本例における歯溝加工装置1は、工作物Wを、Z軸線及びA軸線に移動可能な構成とし、工具Tを、X軸線及びY軸線に移動可能な構成とする。
【0020】
歯溝加工装置1は、
図1及び
図2に示すように、ベッド10と、工具側主軸装置Gと、工作物側主軸装置Hと、制御装置100と、を含んで構成される。工具側主軸装置Gは、コラム20、サドル30及び回転主軸40で構成される。工作物側主軸装置Hは、テーブル50、チルトテーブル60、ターンテーブル70及び工作物保持具80で構成される。尚、図示を省略するが、ベッド10と並んで周知の自動工具交換装置が設けられている。
【0021】
ベッド10は、矩形状からなり、床上に配置される。尚、ベッド10の形状は矩形状に限定されないことは言うまでもない。ベッド10の上面には、コラム20が摺動可能な一対のX軸ガイドレール11a,11bが、X軸線の方向(水平方向)に延びるように、且つ、互いに平行に設けられている。更に、ベッド10には、一対のX軸ガイドレール11a,11bの間に、コラム20をX軸線の方向に駆動するための、図示省略のX軸ボールねじが配置され、このX軸ボールねじを回転駆動するX軸モータ11cが配置されている。
【0022】
コラム20の底面には、一対のX軸ガイド溝21a,21bがX軸線の方向に延びるように、且つ、互いに平行に設けられている。コラム20は、ベッド10に対してX軸線の方向に移動可能なように、一対のX軸ガイド溝21a,21bが一対のX軸ガイドレール11a,11b上にボールガイド22a,22bを介して嵌め込まれ、コラム20の底面がベッド10の上面に密接されている。
【0023】
又、コラム20のX軸に平行な側面(摺動面)20aには、サドル30が摺動可能な一対のY軸ガイドレール23a,23bがY軸線の方向(鉛直方向)に延びるように、且つ、互いに平行に設けられている。更に、コラム20には、一対のY軸ガイドレール23a,23bの間に、サドル30をY軸線の方向に駆動するための、図示省略のY軸ボールねじが配置され、このY軸ボールねじを回転駆動するY軸モータ23cが配置されている。
【0024】
コラム20の摺動面20aに対向するサドル30の側面30aには、一対のY軸ガイド溝31a,31bがY軸線の方向に延びるように、且つ、互いに平行に設けられている。サドル30は、コラム20に対してY軸線の方向に移動可能なように、一対のY軸ガイド溝31a,31bが一対のY軸ガイドレール23a,23bに嵌め込まれ、サドル30の側面30aがコラム20の摺動面20aに密接されている。
【0025】
工具側主軸としての回転主軸40は、サドル30内に収容された主軸モータ41により回転駆動されるようになっており、工具Tを支持している。工具Tは、工具ホルダ42に保持されて回転主軸40の先端に固定され、回転主軸40に回転に伴って回転する。又、工具Tは、コラム20及びサドル30の移動に伴ってベッド10に対してX軸線の方向及びY軸線の方向に移動する。尚、工具Tについては、後に詳述する。
【0026】
又、ベッド10の上面には、テーブル50が摺動可能な一対のZ軸ガイドレール12a,12bがX軸線の方向と直交するZ軸線の方向(水平方向)に延びるように、且つ、互いに平行に設けられている。更に、ベッド10には、一対のZ軸ガイドレール12a,12bの間に、テーブル50をZ軸線の方向に駆動するための、図示省略のZ軸ボールねじが配置され、このZ軸ボールねじを回転駆動するZ軸モータ12cが配置されている。
【0027】
テーブル50は、ベッド10に対してZ軸線の方向に移動可能なように、一対のZ軸ガイドレール12a,12b上に設けられている。テーブル50の上面には、チルトテーブル60を支持するチルトテーブル支持部63が設けられている。そして、チルトテーブル支持部63には、チルトテーブル60が水平方向のA軸線の回りで回転(揺動)可能に設けられている。チルトテーブル60は、テーブル50内に収容されたA軸モータ61により回転(揺動)される。
【0028】
チルトテーブル60には、ターンテーブル70がA軸線に直角なC軸線の回りで回転可能に設けられている。ターンテーブル70には、工作物Wを保持する工作物保持具80が装着されている。ターンテーブル70は、工作物W及び工作物保持具80と共にC軸モータ62により回転される。
【0029】
工作物保持具80は、切削加工される環状(中空円筒状)の工作物Wを保持する治具である。工作物保持具80は、
図3に示すように、第一保持具81と、第一保持具81に対して軸線方向に工作物Wを挟むように配置される第二保持具82と、第一保持具81に対して径方向の外側に配置される第三保持具83とで構成される。
【0030】
第一保持具81は、切削加工により工作物Wを加工したときに発生する切屑を第一保持具81の内部に溜め、第一保持具81の内部から第三保持具83側へ排出するための治具である。第三保持具83は、第一保持具81の内部から排出される切屑を第三保持具83の外部に排出するための治具である。又、第一保持具81及び第二保持具82は、工作物Wをターンテーブル70に対して軸線方向に位置決めして保持するための治具でもある。第三保持具83は、工作物Wをターンテーブル70に対して径方向に位置決め(芯出し)して保持するための治具でもある。
【0031】
ここで、工作物保持具80が切屑を外部に排出する構造及び工作物Wを位置決めする構造の一例を示し、簡単に説明しておく。先ず、切屑を外部に排出する構造から説明する。
【0032】
第一保持具81は、工作物Wの外径より若干大径の円筒状に台座84と、工作物Wの外径より若干小径で台座84と同軸に配置されるリング状の天板85と、台座84と天板85との間に挟持された複数のファン86とで構成される。そして、ファン86とファン86との間隙は、切削加工により工作物Wを加工した時に発生する切屑やクーラントを排出する排出穴87として機能する。又、第三保持具83は、第一保持具81の外径より若干大径の中空円筒状に形成されており、周壁には第一保持具81の排出穴87に対応する位置に排出穴88が穿設されている。
【0033】
これにより、第一保持具81が回転すると、台座84と天板85との間の空気は、第一保持具81の中央から各ファン86に当たることにより、各排出穴87を通って第一保持具81の外部に渦巻き状に流れ出る。このため、台座84と天板85との間に溜められた切屑は、クーラントと共に渦巻き状の気流に押されて各排出穴87から第三保持具83側へ排出される。そして、第三保持具83が第一保持具81と共に回転すると、第一保持具81の排出穴87から排出される切屑及びクーラントは、第三保持具83の排出穴88を通って第三保持具83の外部へ排出される。
【0034】
次に、位置決めの機能について説明する。第二保持具82は、工作物Wの外径より大径のリング状に形成され、一端面側に工作物Wの外径より若干大径のリング状の凹部が形成されている。第二保持具82は、凹部に対して工作物Wを密着させた状態で第三保持具83の端面にボルト等により締結固定される。これにより、工作物Wは、第一保持具81の天板85と第二保持具82との間に挟持固定されるため、ターンテーブル70に対する軸方向位置が位置決めされる。
【0035】
又、第三保持具83の周壁には、第一保持具81の天板85と第二保持具82との間に挟持固定される工作物Wに対応する位置にねじ穴が穿孔されており、ねじ穴にボルト89が螺合されるようになっている。これにより、工作物Wは、螺合されたボルト89に押されて径方向に移動可能となるため、ターンテーブル70に対する径方向位置が位置決め(芯出し)される。
【0036】
制御装置100は、主軸モータ41を制御することにより、工具Tを回転させる。又、制御装置100は、X軸モータ11c、Z軸モータ12c、Y軸モータ23c、A軸モータ61及びC軸モータ62を制御することにより、工作物Wと工具TとがX軸線の方向、Z軸線の方向、Y軸線の方向、A軸線の回り、及び、C軸線の回りに相対移動させる。更に、制御装置100は、C軸モータ62を制御することにより、工作物保持具80に支持された工作物Wの回転速度を制御して回転させる。
【0037】
ここで、制御装置100は、工具T及び工作物Wを高速回転させながらで同期させると共に、工具Tを工作物Wの中心軸線の方向に相対移動させる。この場合、制御装置100は、A軸モータ61を駆動制御して、チルトテーブル60上に支持されている工作物WをA軸線の回りに揺動させ、工作物Wの中心軸線と工具Tの中心軸線とを交差角だけ傾斜させることが可能である。これにより、歯溝加工装置1は、スカイビング加工により、環状の工作物Wである内歯車又は外歯車に被加工部Wwである内歯又は外歯を創成することが可能となる。
【0038】
更に、制御装置100は、スカイビング加工において、工具Tの逃げ角を確保するために上述した交差角を有した状態で、工具Tを工作物Wの周方向にオフセット角だけずらすことも可能である。尚、以下の説明においては、後述する第一位置としての加工初期位置にて工具Tが交差角を有する状態で切削加工する場合を例示する。
【0039】
(4.工具Tの具体例)
工具Tは、
図4及び
図5に示すように、加工部として凸刃の工具刃Taを備えている。工具刃Taは、加工される工作物Wとしての内歯車の被加工部である内歯の形状を同一形状に形成されている。工具刃Taは、1つ以上の凸刃を備えており、全周にわたって等間隔となるように凸刃を有している。又、工具Tには、回転軸線方向に貫通するボルト穴Tbが穿設されている。これにより、工具Tは、ボルト穴Tbを通るボルト90の雄ねじ部91を工具ホルダ42の先端に設けられた雌ねじ部43に螺合することにより締結固定されている。
【0040】
工具ホルダ42には、雌ねじ部43から工具ホルダ42の後端まで工具Tの軸線の方向にて回転主軸40まで延びる穴44が穿設されている。又、ボルト90には、雄ねじ部91の先端から頭部92側の穴93の先端から頭部92の外周まで(周囲まで)工具Tの径方向に等間隔で放射状に延びる八つの噴出穴94が穿設されている。尚、
図4及び
図5に示すように、回転主軸40の工具側端面40aには、穴44に連通し、回転主軸40の径方向に等間隔で放射状に延びる八つの噴出穴45が穿設されている。
【0041】
これにより、噴出穴94、穴93及び穴44は連通することができる。又、噴出穴45及び穴44は連通することができる。このため、ポンプ等で加圧された流体(加工に用いられる切削油剤である、所謂、クーラント)が穴44から流体として供給されることにより、
図4及び
図5の矢印Uに示すように、クーラントを各噴出穴94から工具刃Taの周囲に向けて噴出(吐出)させて工具刃Taに当てることができる。又、
図4及び
図5の矢印Vに示すように、切削加工時において、クーラントを各噴出穴45から軸線の方向へ工具刃Taの周囲に向けて噴出(吐出)させることができる。尚、流体としては、クーラントに限定されるものではなく、液体の切削油剤や研削油剤等を用いたり、気体の圧縮空気等を用いることができる。
【0042】
これにより、工具Tの工具刃Taにおいて切削加工により発生した切屑は、工具刃Ta及び被加工部Wwからクーラントの圧力により、工作物保持具80側に噴き飛ばされて除去される。このとき、流体であるクーラントの圧力は比較的高圧であり、噴出穴94から噴出されるクーラントの圧力は1.5MPa以上が望ましく、噴出穴45から噴出されるクーラントの圧力は0.8MPa以上が望ましい。
【0043】
(5.歯溝加工装置1による内歯加工の動作)
次に、歯溝加工装置1が内歯加工を行う場合の動作である加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作について、
図6及び
図7を用いて説明する。尚、以下の説明においては、加工初期位置である第一位置P1にて工具Tが工作物Wの中心軸線Cwに対して所定の交差角を有する状態で配置され、且つ、工具Tと工作物Wとが高速回転させながら回転同期する場合を例示する。
【0044】
(5-1.基本サイクル)
制御装置100は、
図6に示す歯溝加工方法としての「切削加工プログラム」を実行することにより、工具側主軸装置G及び工作物側主軸装置Hを協働して作動させ、歯溝加工装置1に加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作をさせる。ここで、制御装置100は、加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作において、高圧のクーラントを継続して噴出穴94及び噴出穴45から噴出する状態を維持する。
【0045】
制御装置100は、「切削加工プログラム」の実行をステップS10にて開始する。続いて、制御装置100は、ステップS11にて、切削加工により工作物Wである内歯車に被加工部Wwである内歯を創成する(加工工程)。加工工程においては、制御装置100は、
図7に示すように、加工初期位置である第一位置P1に配置した工具Tを加工終了位置である第二位置P2まで工作物Wの中心軸線Cwの方向に工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、加工工程において加工動作を行う。
【0046】
ステップS11にて加工工程を行うと、制御装置100は、ステップS12にて、
図7に示すように、第二位置P2まで相対移動した工具Tを、退避位置である第三位置P3に向けた退避動作により、退避させる(退避工程)。退避工程においては、制御装置100は、
図7に示すように、加工終了位置である第二位置P2にある工具Tを、工作物Wの中心軸線Cwの方向に向けて工作物Wに対して相対移動させて、退避位置である第三位置P3に配置する。従って、歯溝加工装置1は、退避工程において退避動作を行う。
【0047】
続いて、制御装置100は、ステップS13にて、
図7に示すように、第三位置P3に退避した工具Tを、戻し位置である第四位置P4に向けた戻し送り動作により、戻す(戻し送り工程)。戻し送り工程においては、制御装置100は、
図7に示すように、退避位置である第三位置P3に配置した工具Tを戻り位置である第四位置P4まで工作物Wの中心軸線Cwの方向に工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、戻し送り工程において、戻し送り動作を行う。
【0048】
ステップS13にて戻し送り工程を行うと、制御装置100は、ステップS14にて、
図7に示すように、第四位置P4に戻した工具Tを、第一位置P1に向けた復帰動作により、復帰させる(復帰工程)。復帰工程においては、制御装置100は、
図7に示すように、戻し送り位置である第四位置P4に配置した工具Tを加工開始位置である第一位置P1まで工作物Wの中心軸線Cwから離間する方向に工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、復帰工程において復帰動作を行う。
【0049】
ここで、歯溝加工装置1が工作物Wを連続して加工する連続加工においては、工具Tを第一位置P1に復帰させることにより、次の工作物Wを加工することができる。一方、連続加工において最後の工作物Wを加工する場合のように、次に加工する工作物Wがない場合には、制御装置100は、工具Tを第一位置P1に復帰させず、例えば、第一位置P1とは異なる、
図7に示す原点位置P5に工具Tを移動させる。原点位置P5は、工具Tと工作物Wとが離れた位置であって、例えば、第四位置P4より更に離れた所定の位置に設定される。尚、原点位置が第一位置P1と同一となる場合であっても良い。
【0050】
(5-2.内歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御について)
次に、内歯を創成する際に制御装置100によって実行される回転速度制御及び送り速度制御について説明する。これらの各制御は、工作物Wの加工動作の後の非加工状態、即ち、連続加工の場合においては加工動作が完了してから工具Tが次の工作物Wを切削加工するために第一位置P1に移動するまでの間に行われる。ここで、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作は、加工動作が完了してから工具Tが次の工作物Wを切削加工するために第一位置P1に移動するまでの間に行われる動作である。
【0051】
以下、回転速度制御及び送り速度制御について、
図8に示すパターンAの場合と、
図9に示すパターンBの場合とを順番に説明する。ここで、以下の説明において、
図8及び
図9に示す回転速度に関し、「回転速度VR1a」を「基準回転速度」とする。そして、「回転速度VR1a」は「回転速度VR1b」よりも高速であるとする。
【0052】
又、以下の説明において、
図8及び
図9に示す送り速度に関し、「送り速度VS1c」を「基準送り速度」とする。そして、「送り速度VS1a」、「送り速度VS1b」及び「送り速度VS1c」の速度の大きさについては、「送り速度VS1b」は「送り速度VS1a」以上であり、「送り速度VS1c」は「送り速度VS1b」よりも大きいとする。即ち、送り速度に関しては、「送り速度VS1c」が最も高速であり、次いで「送り速度VS1b」が高速であり、「送り速度VS1a」が最も低速であるとする。
【0053】
(5-2-1.パターンA)
パターンAでは、制御装置100は、加工動作において、工作物Wを基準回転速度である回転速度VR1aで高速回転させる。又、パターンAでは、制御装置100は、加工動作において、工作物Wの中心軸線Cwの方向にて工具Tを工作物Wに対して送り速度VS1aにより低速で相対的に移動させる。
【0054】
そして、パターンAでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、工作物Wの被加工部Wwをクーラントの圧力によって洗浄する洗浄時には、工作物Wを回転速度VR1aよりも低速の回転速度VR1bで回転させる。又、制御装置100は、洗浄時には、送り速度VS1a以上且つ送り速度VS1c未満となる送り速度VS1bで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる(
図8を参照)。
【0055】
このように、洗浄時において、加工動作の場合に比べて工作物Wを低速で回転させることにより、加工動作(加工工程)において発生した切屑に作用する遠心力を低減することができる。その結果、切屑は、自重により被加工部Wwから工作物Wの内部に落下し易くなる。又、切屑が落下し易くなっている状態において、基準送り速度(送り速度VS1c)よりも低速な送り速度VS1bで工具Tを移動させることにより、切屑にクーラントを比較的長く当てることができる。従って、自重により落下し易くなっている(被加工部Wwから剥がれ易くなっている)切屑を、クーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。
【0056】
又、パターンAでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、工作物Wの被加工部Wwをクーラントの圧力によって洗浄しない非洗浄時には、工作物Wを高速の回転速度VR1aで回転させる。又、制御装置100は、非洗浄時には、最も高速の基準送り速度である送り速度VS1cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる。
【0057】
このように、非洗浄時において工作物Wを高速の回転速度VR1aで回転させることにより、特に、次の加工開始時において工作物Wの回転速度を高速に変更する必要がない。又、非洗浄時において工具Tを最も高速な送り速度VS1cで移動させることができる。これにより、第二位置P2から第三位置P3及び第四位置P4を通って第一位置P1に工具Tを戻す(復帰させる)途中で洗浄を行った場合であっても、工具Tを素早く戻す(復帰させる)ことができる。従って、歯溝加工装置1のタクトタイムを短縮することができ、工作物Wの生産性を向上させることができる。
【0058】
ここで、工作物Wの回転速度を変更する場合、制御装置100は、工具Tの回転速度が工作物Wの回転速度に同期するように、工具側主軸装置Gの作動を制御する。これにより、工作物Wと工具Tとの間に回転方向における位相差が生じることを防止することができ、次の加工開始時において工作物Wと工具Tとの間の位相差を調整する必要がない。従って、歯溝加工装置1の生産性を損なうことがない。
【0059】
(5-2-2.パターンB)
パターンBは、上述したパターンAに比べて、洗浄時における送り速度のみが異なる。即ち、パターンBでは、制御装置100は、洗浄時において、送り速度VS1aよりも大きな基準送り速度である送り速度VS1cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる(
図9を参照)。
【0060】
このように、洗浄時において、加工動作の場合に比べて工作物Wを低速で回転させることにより、切屑が落下し易くなっている状態において、最も高速な送り速度VS1cで工具Tを移動させても、切屑にクーラントを当てることができる。従って、パターンBの場合であっても、自重により落下し易くなっている(被加工部Wwから剥がれ易くなっている)切屑を、クーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。
【0061】
又、パターンBでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、洗浄時及び非洗浄時に拘わらず、最も高速の送り速度VS1cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる。これにより、パターンBの場合には、パターンAの場合に比べて、工具Tを素早く戻す(復帰させる)ことができるため、歯溝加工装置1のタクトタイムを短縮することができ、工作物Wの生産性を向上させることができる。
【0062】
(5-3.内歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御の具体例)
次に、内歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御の具体例について、荒切削及び仕上げ切削の場合を例示して説明する。尚、この具体例においては、回転速度制御及び送り速度制御が戻し送り動作にて行われる場合を例示して説明する。
【0063】
制御装置100は、
図10に示すように、荒切削及び仕上げ切削の両方で上述したパターンAに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。これにより、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に作用する遠心力が低減されて切屑が落下すると共に、方向U及び方向Vに噴出したクーラントを切屑に長く当てることができる。このため、工作物Wから切屑を除去することができると共に、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0064】
又、制御装置100は、
図10に示すように、荒切削でパターンAに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行し、仕上げ切削で上述したパターンBに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合では、荒切削において多く発生した大きな切屑は遠心力が低減されているため自重で被加工部Wwから落下する。加えて、荒切削では、工具Tが送り速度VS1bで送られるため、被加工部Wwに残った切屑に方向U及び方向Vに噴出したクーラントを長く当ててクーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0065】
一方、仕上げ切削においては、荒切削に比べて発生する切屑の大きさが小さくなると共に発生する切屑の量が少なくなる。このため、工作物Wを回転速度VR1bで低速回転させて遠心力を低減した状態でクーラントを当てることによって、切屑を容易に噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0066】
又、制御装置100は、
図10に示すように、荒切削でパターンBに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行し、仕上げ切削でパターンAに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合でも、荒切削において多く発生した大きな切屑は遠心力が低減されているため自重で被加工部Wwから落下する。そして、この場合、荒切削では工具Tが最も高速な送り速度VS1cで送られる。しかし、被加工部Wwに残った大きな切屑に方向U及び方向Vに噴出したクーラントを当てることができるため、クーラントの圧力によって切屑を噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0067】
一方、仕上げ切削においては、荒切削に比べて発生する切屑の大きさが小さくなると共に発生する切屑の量が少なくなる。このため、工作物Wを回転速度VR1bで低速回転させて遠心力を低減した状態で、工具Tを送り速度VS1bで戻すことにより、クーラントを長く当てることができるため、切屑を確実に噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0068】
更に、制御装置100は、
図10に示すように、荒切削及び仕上げ切削の両方でパターンBに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合においても、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に作用する遠心力が低減されて切屑が落下すると共に、方向U及び方向Vに噴出したクーラントを切屑に当てることができる。このため、工作物Wから切屑を除去することができると共に、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0069】
又、制御装置100は、加工動作の完了後、次の加工開始までの間、即ち、非加工状態において、予め設定された時間が経過するまで工具Tの工作物Wに対する相対的な移動を停止する、所謂、ドウエル(NCコードでG04等)を行うことができる。
【0070】
例えば、戻し送り動作(戻し送り工程)において、洗浄を行う場合、制御装置100は、退避動作(退避工程)にて工作物Wを回転速度VR1bで回転させ、且つ、ドウエルを行う。そして、制御装置100は、ドウエルを行った後に、工具Tを第二位置P2から第三位置P3に戻す。或いは、制御装置100は、退避動作(退避工程)から戻し送り動作(戻し送り工程)に移行する際に工作物Wを回転速度VR1bで回転させ、且つ、ドウエルを行う。
【0071】
このように、非加工状態においてドウエルを行うことにより、洗浄時における工作物Wを確実に基準回転速度である回転速度VR1aよりも低速な回転速度VR1bで回転させることができる。そして、ドウエルの予め設定された時間分だけ、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に対してクーラントを長時間当てることができる。これにより、クーラントの圧力によって発生した切屑を確実に落下させることができる。
【0072】
(6.歯溝加工装置1による外歯加工の動作)
次に、歯溝加工装置1が外歯加工を行う場合の動作である加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作について、
図6及び
図11を用いて説明する。尚、以下の説明においては、加工初期位置である第一位置P1にて工具Tが工作物Wの中心軸線Cwに対して交差角を有する状態で配置され、且つ、工具Tと工作物Wとが高速回転させながら回転同期する場合を例示する。
【0073】
(6-1.基本サイクル)
制御装置100は、
図6に示す「切削加工プログラム」を実行することにより、工具側主軸装置G及び工作物側主軸装置Hを協働して作動させ、歯溝加工装置1に加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作をさせる。ここで、制御装置100は、加工動作、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作において、高圧のクーラントを継続して噴出穴94及び噴出穴45から噴出する状態を維持する。
【0074】
制御装置100は、「切削加工プログラム」の実行をステップS10にて開始する。続いて、制御装置100は、ステップS11にて、切削加工により工作物Wである外歯車に被加工部Wwである外歯を創成する(加工工程)。加工工程においては、制御装置100は、
図11に示すように、加工初期位置である第一位置P1に配置した工具Tを加工終了位置である第二位置P2まで工作物Wの中心軸線Cwの方向に工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、加工工程において加工動作を行う。
【0075】
ステップS11にて加工工程を行うと、制御装置100は、ステップS12にて、
図11に示すように、第二位置P2まで相対移動した工具Tを、退避位置である第三位置P3に向けた退避動作により、退避させる(退避工程)。退避工程においては、制御装置100は、
図11に示すように、加工終了位置である第二位置P2にある工具Tを、工作物Wの径方向外方に向けて工作物Wに対して相対移動させて、退避位置である第三位置P3に配置する。従って、歯溝加工装置1は、退避工程において退避動作を行う。
【0076】
続いて、制御装置100は、ステップS13にて、
図11に示すように、第三位置P3に退避した工具Tを、戻し位置である第四位置P4に向けた戻し送り動作により、戻す(戻し送り工程)。戻し送り工程においては、制御装置100は、
図11に示すように、退避位置である第三位置P3に配置した工具Tを戻り位置である第四位置P4まで工作物Wの中心軸線Cwの方向に工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、戻し送り工程において、戻し送り動作を行う。
【0077】
ステップS13にて戻し送り工程を行うと、制御装置100は、ステップS14にて、
図11に示すように、第四位置P4に戻した工具Tを、第一位置P1に向けた復帰動作により、復帰させる(復帰工程)。復帰工程においては、制御装置100は、
図11に示すように、戻し送り位置である第四位置P4に配置した工具Tを加工開始位置である第一位置P1まで工作物Wの径方向内方に向けて工作物Wに対して相対移動させる。従って、歯溝加工装置1は、復帰工程において復帰動作を行う。
【0078】
ここで、歯溝加工装置1が工作物Wを連続して加工する連続加工においては、工具Tを第一位置P1に復帰させることにより、次の工作物Wを加工することができる。一方、連続加工において最後の工作物Wを加工する場合のように、次に加工する工作物Wがない場合には、制御装置100は、工具Tを第一位置P1に復帰させず、例えば、第一位置P1とは異なる
図7にて図示省略の原点位置に工具Tを移動させる。尚、原点位置が第一位置P1と同一となる場合であっても良い。
【0079】
(6-2.外歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御について)
次に、外歯を創成する際に制御装置100によって実行される回転速度制御及び送り速度制御について説明する。これらの各制御は、工作物Wの加工動作の後の非加工状態、即ち、連続加工の場合においては加工動作が完了してから工具Tが次の工作物Wを切削加工するために第一位置P1に移動するまでの間に行われる。ここで、退避動作、戻し送り動作及び復帰動作は、加工動作が完了してから工具Tが次の工作物Wを切削加工するために第一位置P1に移動するまでの間に行われる動作である。
【0080】
以下、回転速度制御及び送り速度制御について、
図12に示すパターンCの場合と、
図13に示すパターンDの場合とを順番に説明する。ここで、以下の説明において、
図12及び
図13に示す回転速度に関し、「回転速度VR2a」を「基準回転速度」とする。そして、「回転速度VR2b」は「回転速度VR2a」よりも高速であるとする。
【0081】
又、以下の説明において、
図12及び
図13に示す送り速度に関し、「送り速度VS2c」を「基準送り速度」とする。そして、「送り速度VS2a」、「送り速度VS2b」及び「送り速度VS2c」の速度の大きさについては、「送り速度VS2b」は「送り速度VS2a」以上であり、「送り速度VS2c」は「送り速度VS2b」よりも大きいとする。即ち、送り速度に関しては、「送り速度VS2c」が最も高速であり、次いで「送り速度VS2b」が高速であり、「送り速度VS2a」が最も低速であるとする。
【0082】
(6-2-1.パターンC)
パターンCでは、制御装置100は、加工動作において、工作物Wを基準回転速度である回転速度VR2aで回転させる。又、パターンAでは、制御装置100は、加工動作において、工作物Wの中心軸線Cwの方向にて工具Tを工作物Wに対して送り速度VS2aにより低速で相対的に移動させる。
【0083】
そして、パターンCでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、工作物Wの被加工部Wwをクーラントの圧力によって洗浄する洗浄時には、工作物Wを回転速度VR2aよりも高速の回転速度VR2bで回転させる。又、制御装置100は、洗浄時には、送り速度VS2a以上且つ送り速度VS2c未満となる送り速度VS2bで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる(
図12を参照)。
【0084】
このように、洗浄時において、加工動作の場合に比べて工作物Wを高速で回転させることにより、加工動作(加工工程)において発生した切屑に作用する遠心力を増大することができる。その結果、切屑は、遠心力より被加工部Wwから工作物Wの外方に飛散し易くなる。又、切屑が飛散し易くなっている状態において、基準送り速度よりも低速な送り速度VS2bで工具Tを移動させることにより、切屑にクーラントを比較的長く当てることができる。従って、遠心力により飛散し易くなっている(被加工部Wwから剥がれ易くなっている)切屑を、クーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。
【0085】
又、パターンCでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、工作物Wの被加工部Wwをクーラントの圧力によって洗浄しない非洗浄時には、工作物Wを回転速度VR2aで回転させる。又、制御装置100は、非洗浄時には、最も高速の基準送り速度である送り速度VS2cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる。
【0086】
このように、非洗浄時において工作物Wを高速の回転速度VR2aで回転させることにより、特に、次の加工開始時において工作物Wの回転速度を高速に変更する必要がない。又、非洗浄時において工具Tを最も高速な送り速度VS2cで移動させることができる。これにより、第二位置P2から第三位置P3及び第四位置P4を通って第一位置P1に工具Tを戻す(復帰させる)途中で洗浄を行った場合であっても、工具Tを素早く戻す(復帰させる)ことができる。従って、歯溝加工装置1のタクトタイムを短縮することができ、工作物Wの生産性を向上させることができる。
【0087】
ここで、工作物Wの回転速度を変更する場合、制御装置100は、工具Tの回転速度が工作物Wの回転速度に同期するように、工具側主軸装置Gの作動を制御する。これにより、工作物Wと工具Tとの間に回転方向における位相差が生じることを防止することができ、次の加工開始時において工作物Wと工具Tとの間の位相差を調整する必要がない。従って、歯溝加工装置1の生産性を損なうことがない。
【0088】
(6-2-2.パターンD)
パターンDは、上述したパターンCに比べて、洗浄時における送り速度のみが異なる。即ち、パターンBでは、制御装置100は、洗浄時において、送り速度VS2aよりも大きな基準送り速度である送り速度VS2cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる(
図13を参照)。
【0089】
このように、洗浄時において、加工動作の場合に比べて工作物Wを高速で回転させることにより、切屑が飛散し易くなっている状態において、最も高速な送り速度VS2cで工具Tを移動させても、切屑にクーラントを当てることができる。従って、パターンDの場合であっても、遠心力により飛散し易くなっている(被加工部Wwから剥がれ易くなっている)切屑を、クーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。
【0090】
又、パターンDでは、制御装置100は、加工動作完了後から次の加工開始までの間にて、洗浄時及び非洗浄時に拘わらず、最も高速の送り速度VS2cで工具Tを工作物Wに対して相対的に移動させる。これにより、パターンDの場合には、パターンCの場合に比べて、工具Tを素早く戻す(復帰させる)ことができるため、歯溝加工装置1のタクトタイムを短縮することができ、工作物Wの生産性を向上させることができる。
【0091】
(6-3.外歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御の具体例)
次に、外歯加工時における回転速度制御及び送り速度制御の具体例について、荒切削及び仕上げ切削の場合を例示して説明する。尚、この具体例においては、回転速度制御及び送り速度制御が戻し送り動作にて行われる場合を例示して説明する。
【0092】
制御装置100は、
図14に示すように、荒切削及び仕上げ切削の両方で上述したパターンCに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。これにより、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に作用する遠心力が増大されて切屑が飛散すると共に、方向U及び方向Vに噴出したクーラントを切屑に長く当てることができる。このため、工作物Wから切屑を除去することができると共に、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0093】
又、制御装置100は、
図14に示すように、荒切削でパターンCに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行し、仕上げ切削で上述したパターンDに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合では、荒切削において多く発生した大きな切屑は遠心力が増大されているため被加工部Wwから飛散する。加えて、荒切削では、工具Tが送り速度VS2bで送られるため、被加工部Wwに残った切屑に方向U及び方向Vに噴出したクーラントを長く当ててクーラントの圧力によって噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0094】
一方、仕上げ切削においては、荒切削に比べて発生する切屑の大きさが小さくなると共に発生する切屑の量が少なくなる。このため、工作物Wを回転速度VR2bで高速回転させて遠心力を増大した状態でクーラントを当てることによって、切屑を容易に噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0095】
又、制御装置100は、
図14に示すように、荒切削でパターンDに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行し、仕上げ切削でパターンCに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合でも、荒切削において多く発生した大きな切屑は遠心力が増大されているため被加工部Wwから飛散する。そして、この場合、荒切削では工具Tが最も高速な送り速度VS2cで送られる。しかし、被加工部Wwに残った大きな切屑に方向U及び方向Vに噴出したクーラントを当てることができるため、クーラントの圧力によって切屑を噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0096】
一方、仕上げ切削においては、荒切削に比べて発生する切屑の大きさが小さくなると共に発生する切屑の量が少なくなる。このため、工作物Wを回転速度VR2bで高速回転させて遠心力を増大した状態で、工具Tを送り速度VS2bで戻すことにより、クーラントを長く当てることができるため、切屑を確実に噴き飛ばすことができる。そして、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0097】
更に、制御装置100は、
図14に示すように、荒切削及び仕上げ切削の両方でパターンDに従って回転速度制御及び送り速度制御を実行することができる。この場合においても、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に作用する遠心力が増大されて切屑が飛散すると共に、方向U及び方向Vに噴出したクーラントを切屑に当てることができる。このため、工作物Wから切屑を除去することができると共に、除去した切屑をクーラントの圧力により工作物保持具80を介して外部に除去することができる。
【0098】
又、制御装置100は、加工動作の完了後、次の加工開始までの間、即ち、非加工状態において、ドウエルを行うことができる。例えば、戻し送り動作(戻し送り工程)において、洗浄を行う場合、制御装置100は、退避動作(退避工程)にて工作物Wを回転速度VR2bで回転させ、且つ、ドウエルを行う。そして、制御装置100は、ドウエルを行った後に、工具Tを第二位置P2から第三位置P3に戻す。或いは、制御装置100は、退避動作(退避工程)から戻し送り動作(戻し送り工程)に移行する際に工作物Wを回転速度VR2bで回転させ、且つ、ドウエルを行う。
【0099】
このように、非加工状態においてドウエルを行うことにより、洗浄時における工作物Wを確実に基準回転速度である回転速度VR2aよりも低速な回転速度VR2bで回転させることができる。そして、ドウエルの予め設定された時間分だけ、荒切削及び仕上げ切削で発生した切屑に対してクーラントを長時間当てることができる。これにより、クーラントの圧力によって発生した切屑を確実に落下させることができる。
【0100】
(6.歯溝加工装置1による効果)
以上の説明から理解できるように、歯溝加工装置1においては、加工動作の後の非加工状態において、内歯車等の工作物Wを基準回転速度である回転速度VR1aよりも低速な回転速度VR1bで回転させることができる。又、歯溝加工装置1においては、加工動作の後の非加工状態において、外歯車等の工作物Wを回転速度VR2aよりも高速な回転速度VR2bで回転させることができる。更に、洗浄時において、適宜、工具Tを基準送り速度である送り速度VS1c(送り速度VS2c)よりも低速な送り速度VS1b(送り速度VS2b)で工作物Wに対して相対的に移動させることができる。
【0101】
従って、内歯車等の工作物Wの場合には、遠心力が低減された切屑が工作物Wの内部に落下しやすくなり、更には遠心力が低減された切屑にクーラントを当てることにより、切屑を工作物Wから除去することができる。又、外歯車等の工作物Wの場合には、遠心力が増大された切屑が工作物Wの外部に飛散しやすくなり、更には遠心力が増大された切屑にクーラントを当てることにより、切屑を工作物Wから除去することができる。従って、切削加工によって発生した切屑を除去する除去性能を向上させることができる。
【0102】
更に、内歯車等の工作物Wの場合、歯溝等の溝部に存在する切屑は、遠心力が低減された状態で、例えば、噴出穴45からクーラントを当てることにより、溝部に沿って押し出されやすくなって効率的に排出(除去)される。又、外歯車等の工作物Wの場合、歯溝等の溝部に存在する切屑は、遠心力が増大された状態で、例えば、噴出穴45からクーラントを当てることにより、溝部に沿って押し出されやすくなって効率的に排出(除去)される。これらの場合、更にはクーラント自体の潤滑作用により、切屑の排出が増進される。
【符号の説明】
【0103】
1…歯溝加工装置、10…ベッド、20…コラム、30…サドル、40…回転主軸(工具側主軸装置)、T…工具、Ta…工具刃(加工部)、42…工具ホルダ、45…噴出穴、50…テーブル(工作物側主軸装置)、60…チルトテーブル(工作物側主軸装置)、70…ターンテーブル(工作物側主軸装置)、80…工作物保持具、94…噴出穴、100…制御装置、Cw…中心軸線、G…工具側主軸装置、H…工作物側主軸装置、P1…第一位置、P2…第二位置、P3…第三位置、P4…第四位置、P5…原点位置、VR1a,VR2a…基準回転速度、VR1b,VR2b…回転速度、VS1c,VS2c…基準送り速度、VS1a,VS1b,VS2a,VS2b…送り速度、W…工作物、Ww…被加工部